以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数3以上14以下の複素環基及びアミノ基は、何ら規定していなければ、それぞれ次の意味である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基又はネオペンチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基又はt−ブトキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基と、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基における炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基又は4−フェニルブチル基が挙げられる。
炭素原子数3以上14以下の複素環基は、非置換である。炭素原子数3以上14以下の複素環基としては、例えば、1個以上(好ましくは1個以上3個以下)のヘテロ原子を含み、芳香性を有する5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;又は、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基が挙げられる。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。炭素原子数3以上14以下の複素環基としては、例えば、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基又はベンズイミダゾリル基が挙げられる。
アミノ基は、非置換である。
<第一実施形態:電子写真感光体>
図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)を説明する。図1は、第一実施形態に係る感光体1の一例を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1は、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、単層(一層)である。感光層3は、いわゆる単層型感光層である。図1(a)のように、感光層3は導電性基体2上に直接的に配置されてもよい。
図1(b)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層(下引き層)4とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1(b)に示すように、感光層3は、中間層4を介して導電性基体2上に間接的に配置されてもよい。また、図1(c)に示すように、感光層3上に保護層5が設けられてもよい。
感光層3の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含む。感光層は、添加剤を更に含有してもよい。
第一実施形態に係る感光体は、長期にわたる画像形成の繰り返し使用においても、露光メモリー及び転写メモリーの発生を抑制することができる。その理由は以下のように推測される。
便宜上、まず、露光メモリー及び転写メモリーについて説明する。電子写真方式の画像形成では、例えば、以下の1)〜4)の工程を含む画像形成プロセスが実施される。
1)像担持体(感光体に相当)の表面を正極性に帯電する帯電工程、
2)帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する露光工程、
3)静電潜像をトナー像として現像する現像工程及び
4)トナー像を像担持体から転写体へ転写する転写工程
このような画像形成プロセスでは、像担持体を回転させて使用するため、露光工程に起因する露光メモリーが発生する場合がある。具体的には、以下の通りである。帯電工程において、像担持体の表面は、一様に一定の正極性の電位まで帯電される。続いて、露光工程において、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像が形成される。具体的には、像担持体の表面で露光された領域(以下、露光領域と記載することがある)の感光層中で、光電荷が発生し、キャリア(電子及び正孔)が感光層中で輸送され、静電潜像が形成される。キャリアは感光層中で残留することがある。キャリアが残留すると、露光領域は、像担持体が画像を形成した周(以下、基準周と記載することがある)を基準として次周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され難くなる。一方、非露光領域は、基準周の次周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され易い。その結果、露光領域と非露光領域とで帯電電位が異なり、像担持体の表面を一様に一定の正極性の電位まで帯電させることが困難となる場合がある。このように、像担持体の基準周の作像工程(画像形成プロセス)における露光によって電位低下の影響を受け、露光領域の帯電能が低下する場合がある。このような帯電電位に電位差が生じる現象を、露光メモリーという。
また、このような画像形成プロセスでは、像担持体を回転させて使用するため、転写工程に起因する転写メモリーが発生する場合がある。具体的には、以下の通りである。帯電工程において、像担持体の表面は、一様に一定の正極性の電位まで帯電される。続いて、露光工程及び現像工程を経て、転写工程において、帯電とは逆極性(負極性)の転写バイアスが、転写体(例えば、記録媒体)を介して像担持体に印加される。具体的には、印加された逆極性の転写バイアスの影響により、像担持体表面の非露光領域(非画像領域)の電位が大きく低下し、低下した状態が保持されることがある。この電位低下の影響を受け、非露光領域は基準周の次周帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電されにくくなる。一方、露光領域は、転写バイアスが印加された状態であっても、トナーが付着しているため、感光層に転写バイアスが直接印加されにくい。このため、露光領域は次周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電されやすい。その結果、次周の画像形成工程において露光領域と非露光領域とで帯電電位が異なり像担持体の表面を一様に一定の正極性の電位まで帯電させることが困難となる場合がある。このように、像担持体の基準周の作像工程(画像形成プロセス)における転写バイアスによって電位低下の影響を受け、非露光領域の帯電能が低下する場合がある。このような帯電電位に電位差が生じる現象を、転写メモリーという。
第一実施形態に係る感光体は、光応答時間が0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であるため、画像形成工程の露光工程で生じたキャリアが速やかに感光層の表面又は導電性基体へ到達する傾向にある。また、転写工程の転写バイアスにより生じた電荷が速やかに感光層の表面又は導電性基体へ到達する傾向にある。よって、繰り返し画像を形成しても感光層中にキャリアが残留しにくい。また、第一実施形態に係る感光体は、正極性の半減露光量EP 1/2に対する負極性の半減露光量EN 1/2の比率EN 1/2/EP 1/2が4.5以下である。このため、負極性の感度特性が正極性の感度特性に比べ小さすぎないため、電子が感光層中で残留しにくい。以上から、第一実施形態に係る感光体は、長期にわたる画像形成の繰り返しにおいても、露光メモリー及び転写メモリーの発生を抑制することができると考えられる。
(光応答時間)
光応答時間は、波長780nm及び半値幅40マイクロ秒のパルス光が表面電位+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間である。
図2を用いて光応答時間を説明する。図2は、感光層の表面電位の減衰曲線を示す。縦軸は、感光層の表面電位(単位:V)を示す。横軸は、時間を示す。感光層の表面電位の減衰曲線では、パルス光が感光層の表面に照射された時間を0.00ミリ秒とする。感光層の表面電位の減衰曲線が示すように、パルス光が感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に感光層の表面電位は+800Vから+200Vに減衰する。このとき、パルス光が感光層の表面に照射されてから感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間τを光応答時間とする。パルス光の強度は、パルス光が表面電位+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に、表面電位が+800Vから+200Vとなる強度に設定される。
感光体の光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であり、0.05ミリ秒以上0.70ミリ秒以下であることが好ましい。
(光応答時間の測定方法)
図3を参照して、感光体の光応答時間の測定方法を説明する。図3は、感光体の光応答時間の測定装置50を示す。測定装置50は、帯電装置52と、露光装置54と、透明プローブ56と、電位検出装置58とを備える。測定装置50として、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いる。まず、感光体1を測定装置50に装着する。
帯電装置52は、感光体1の感光層3の表面3aを+800Vに帯電する。これにより、感光層3の表面3aが帯電位置Aで+800Vに帯電する。帯電位置Aは、帯電装置52と、感光層3の表面3aとが接触する位置である。
図3において実線の矢印で示す方向に感光体1を回転させて、帯電された感光層3の表面3aを、露光位置Bに移動させる。露光位置Bは、パルス光が照射される位置である。移動後、感光体1の回転を止め、感光体1の位置を固定する。感光層3の表面3aの電位(表面電位)の測定は、感光体1を固定した状態で実行される。露光装置54は、露光位置Bで帯電された感光層3の表面3aに、パルス光(波長780nm、半値幅40マイクロ秒)を照射する。既に述べたように、パルス光の強度は、パルス光が表面電位+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に、表面電位が+800Vから+200Vとなる強度に設定される。パルス光の照射は1回である(1パルスを照射する)。露光装置54の光源としてキセノンフラッシュランプ(浜松ホトニクス株式会社製「C4479」)を用いる。パルス光の波長及び光強度は、光学フィルター(不図示)により調整する。なお、厳密には、帯電装置52によって感光層3の表面3aを+800Vよりわずかに大きい値に帯電させる。次いで、所定の時間を経過させて、感光層3の表面電位が+800Vまで暗減衰した時点で、露光装置54がパルス光を感光層3の表面3aに照射する。
透明プローブ56は、感光層の表面電位を測定する。透明プローブ56は、パルス光の光軸上に配置され、パルス光を透過させる。図3中、露光装置54から感光体1へ向かう破線の矢印は、パルス光の光軸を示す。透明プローブ56として、プローブ(トレックジャパン社製「3629A」)を用いる。
電位検出装置58は、透明プローブ56と電気的に接続している。電位検出装置58は、透明プローブ56が測定した時間ごとの感光層3の表面電位を得る。これにより、感光層3の表面電位の減衰曲線が得られる。得られた減衰曲線から、パルス光が感光層3の表面に照射されてから感光層3の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間τを得る。得られた時間τを、光応答時間とする。
(半減露光量の比率)
半減露光量の比率EN 1/2/EP 1/2は、正極性の半減露光量EP 1/2に対する負極性の半減露光量EN 1/2の比率である。半減露光量EP 1/2は、波長780nmの第一露光光が+800Vに帯電された感光層の表面に10ミリ秒間照射され、第一露光光の照射開始から80ミリ秒後に表面電位が+800Vから+400Vとなる露光量である。半減露光量EN 1/2は、波長780nmの第二露光光が−800Vに帯電された感光層の表面に10ミリ秒間照射され、第二露光光の照射開始から80ミリ秒後に表面電位が−800Vから−400Vとなる露光量である。
半減露光量の比率EN 1/2/EP 1/2は、4.5以下であり、2.0以下であることが好ましく、1.3以上2.0以下であることがより好ましい。
(半減露光量の測定方法)
半減露光量の測定は、電気特性検査装置(GENTEC株式会社)を用いて、半減露光量及び露光後電位を測定する。正極性の半減露光量EP 1/2の測定方法を説明する。まず、感光体の表面電位を+800V(帯電電位)に帯電させる。次いで、表面電位が+400V(露光後電位)となるまで感光体の表面を露光する。露光光の波長は、780nmである。露光光は、電気特性検査装置に備えられた光源からバンドパスフィルターを用いて取り出される。感光体の表面電位が半減するのに必要な露光量を測定する。得られた露光量を正極性の半減露光量EP 1/2とする。
負極性の半減露光量EN 1/2の測定方法を説明する。当初の帯電電位を+800Vから−800Vに変更し、露光後電位を+400Vから−400Vに変更した以外は、正極性の半減露光量EP 1/2の測定方法と同様にして、負極性の半減露光量EN 1/2を測定する。得られたEP 1/2及びEP 1/2から、半減露光量の比率EN 1/2/EP 1/2を算出する。
以下、感光体の要素として導電性基体、電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤、バインダー樹脂及び添加剤を説明する。また、感光体の製造方法も説明する。
[1.導電性基体]
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム又はインジウムが挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼又は真鍮等)が挙げられる。これらの導電性を有する材料の中でも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。また、導電性基体は、その表面にこれら導電性を有する材料の酸化皮膜を有してもよい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
[2.電子輸送剤]
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの電子輸送剤のうち、一般式(ETM1)、一般式(ETM2)、一般式(ETM3)又は一般式(ETM4)で表される化合物(以下、それぞれ電子輸送剤(ETM1)〜(ETM4)と記載することがある)を含むことが好ましい。
一般式(ETM1)中、R61及びR64は、各々独立に、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基又は置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。R61及びR64は、互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(ETM1)中、R61及びR64が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、2−メチル−2−ブチル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM1)中、R61及びR64が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM1)中、R61及びR64が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(ETM1)中、R61及びR64が表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(ETM1)中、R61及びR64は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことがより好ましく、2−メチル−2−ブチル基を表すことが更に好ましい。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基又は置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数3以上14以下の複素環基を表す。R41、R42及びR43は、互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。これらの置換基のうちハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。一般式(ETM2)中、置換基を1又は複数有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を1又は複数有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、ハロゲン原子を1つ有するフェニル基を表すことがより好ましく、クロロフェニル基を表すことが更に好ましい。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43が表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43が表す炭素原子数3以上14以下の複素環基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(ETM2)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、ハロゲン原子1若しくは複数を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、ハロゲン原子を1つ有するフェニル基又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことがより好ましく、クロロフェニル基又はt−ブチル基を表すことが更に好ましい。
一般式(ETM3)中、R39及びR40は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、置換基を1若しくは複数有してもよいアミノ基を表す。R39及びR40は、互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(ETM3)中、R39及びR40が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM3)中、R39及びR40が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM3)中、R39及びR40が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。これらの置換基のうち、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。一般式(ETM3)中、R39及びR40が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を複数有する炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を複数有するフェニル基がより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を複数有するフェニル基が更に好ましく、メチル基及びエチル基を有するフェニル基が特に好ましい。
一般式(ETM3)中、R39及びR40が表すアミノ基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が挙げられる。
一般式(ETM3)中、R39及びR40は、置換基を複数有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を複数有するフェニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を複数有するフェニル基を表すことが更に好ましく、メチル基及びエチル基を有するフェニル基を表すことが特に好ましい。
一般式(ETM4)中、R44、R45、R46及びR47は、各々独立に、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基又は置換基を1若しくは複数有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。R44、R45、R46及びR47は、互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(ETM4)中、R44、R45、R46及びR47が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、2−メチル−2−ブチル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM4)中、R44、R45、R46及びR47が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。
一般式(ETM4)中、R44、R45、R46及びR47が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(ETM4)中、R44、R45、R46及びR47が表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、置換基を1又は複数有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(ETM4)中、R44、R45、R46及びR47は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことがより好ましく、t−ブチル基を表すことが更に好ましい。
電子輸送剤(ETM1)としては、例えば、化学式(ETM−1)で表される化合物が挙げられる。電子輸送剤(ETM2)としては、例えば、化学式(ETM−2)で表される化合物が挙げられる。電子輸送剤(ETM3)としては、例えば、化学式(ETM−3)で表される化合物が挙げられる。電子輸送剤(ETM4)としては、例えば、化学式(ETM−4)で表される化合物が挙げられる。以下、化学式(ETM−1)〜(ETM−4)で表される化合物をそれぞれ電子輸送剤(ETM−1)〜(ETM−4)と記載することがある。
電子輸送剤(ETM−1)〜(ETM−4)のうち、転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、電子輸送剤(ETM−1)、(ETM−2)及び(ETM−4)が好ましく、電子輸送剤(ETM−4)がより好ましい。
電子輸送剤の含有量は、長期にわたる画像形成の繰り返し使用においても、露光メモリー及び露光メモリーの発生を更に抑制する観点から、バインダー樹脂100質量部に対して40質量部以上であることが好ましく、40質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、60質量部以上130質量部以下であることが更に好ましい。
[3.正孔輸送剤]
正孔輸送剤としては、例えば、ジアミン誘導体(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等)、オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等)、スチリル化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等)、カルバゾール化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。これらの正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの正孔輸送剤のうち、一般式(HTM1)、一般式(HTM2)、一般式(HTM3)、一般式(HTM4)、一般式(HTM5)、一般式(HTM6)、一般式(HTM7)、又は一般式(HTM8)で表される化合物(以下、それぞれ正孔輸送剤(HTM1)〜(HTM8)と記載することがある)のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。すなわち、感光層は、正孔輸送剤(HTM1)〜(HTM−8)のうち少なくとも1つを含む。感光層は、正孔輸送剤を1種含んでもよく、2種以上含んでもよい。
露光メモリーの発生を更に抑制し、感光体の感度安定性を更に向上させる観点から、感光層は2種以上の正孔輸送剤を含むことが好ましい。2種以上の正孔輸送剤としては、例えば、正孔輸送剤(HTM1)及び(HTM3)、又は正孔輸送剤(HTM1)及び(HTM6)が挙げられる。正孔輸送剤(HTM1)及び(HTM3)としては、例えば、後述する正孔輸送剤(HTM−1)と(HTM−4)との組み合わせ又は正孔輸送剤(HTM−1)と(HTM−7)との組み合わせが挙げられる。正孔輸送剤(HTM1)及び(HTM6)としては、例えば、後述する正孔輸送剤(HTM−1)と(HTM−11)との組み合わせが挙げられる。
一般式(HTM1)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q9及びQ15は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。bは、0以上5以下の整数を表す。bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ9は、互いに同一でも異なっていてもよい。cは、0以上4以下の整数を表す。cが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のQ15は、互いに同一でも異なっていてもよい。kは、0又は1を表す。
一般式(HTM1)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13及びQ14は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基を表すことが更に好ましい。b及びcは0を表すことが好ましい。
一般式(HTM2)中、Q16、Q17及びQ18は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。qは、0以上4以下の整数を表す。qが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のQ18は、互いに同一でも異なっていてもよい。m及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。mが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ17は、互いに同一でも異なっていてもよい。nが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ16は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(HTM2)中、Q16及びQ17は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。qは0を表すことが好ましい。m及びnは、各々独立に、1又は2を表すことが好ましい。
一般式(HTM3)中、Q1は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。2つのQ1は、互いに同一であっても異なってもよい。Q2は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7のうちの隣接した二つが互いに結合して環を形成してもよい。aは、0以上5以下の整数を表す。aが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ2は、互いに同一でも異なっていてもよい。tは、0以上2以下の整数を表す。2つのtは互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(HTM3)中、Q1は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するフェニル基又は水素原子を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を有するフェニル基又は水素原子を表すことがより好ましく、メチル基を有するフェニル基又は水素原子を表すことが更に好ましい。Q2は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。Q3、Q4、Q5、Q6及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表すことがより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基又はエトキシ基を表すことが更に好ましい。aは0又は1を表すことが好ましい。
一般式(HTM4)中、Q19、Q20、Q21及びQ22は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。jは0又は1を表す。
一般式(HTM4)中、Q19、Q20、Q21及びQ22は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。jは1を表すことが好ましい。
一般式(HTM5)中、Q23、Q24、Q25及びQ26は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。u、v、y及びzは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。wは2又は3を表す。
一般式(HTM5)中、Q23、Q24、Q27及びQ28は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。u、v、y及びzは、0又は1を表すことが好ましい。
一般式(HTM6)中、Q31、Q33及びQ35は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。d、e及びfは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。Q32、Q34及びQ36は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。g、h及びiは、各々独立に、0又は1を表す。
一般式(HTM6)中、Q31、Q33及びQ35は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。d、e及びfは、0を表すことが好ましい。Q32、Q34及びQ36は、水素原子を表すことが好ましい。g、h及びiは、1を表すことが好ましい。
一般式(HTM7)中、Q40、Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。n1、n2、n3、n4、n5及びn6は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。x、r及びsは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
一般式(HTM7)中、Q40及びQ43は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、n1及びn4は1を表し、n2、n3、n5及びn6は0を表し、xは2を表し、r及びsは0を表すことが好ましい。
一般式(HTM8)中、R81及びR82は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、但しR81及びR82の両方が炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す場合を除く。R83は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。p1は、0以上2以下の整数を表す。p2は、0以上5以下の整数を表す。p2が2以上の整数を表す場合、複数のR83は互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(HTM8)中、R81及びR82は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又はフェニル基を表し、但しR81及びR82の両方がフェニル基を表す場合を除くことが好ましい。p1は、1又は2を表すことが好ましい。p2は、0を表すことが好ましい。
露光メモリーの発生を更に抑制する観点から、正孔輸送剤(HTM1)〜(HTM8)のうち、正孔輸送剤(HTM1)〜(HTM3)、(HTM6)、(HTM7)又は(HTM8)が好ましく、正孔輸送剤(HTM1)、(HTM3)、(HTM6)、(HTM7)又は(HTM8)がより好ましい。転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、正孔輸送剤(HTM1)〜(HTM8)のうち、正孔輸送剤(HTM1)が好ましい。
正孔輸送剤(HTM1)としては、例えば、化学式(HTM−1)又は(HTM−2)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM2)としては、例えば、化学式(HTM−3)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM3)としては、例えば、化学式(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−7)又は(HTM−8)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM4)としては、例えば、化学式(HTM−6)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM5)としては、例えば、化学式(HTM−9)又は(HTM−10)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM6)としては、例えば、化学式(HTM−11)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM7)としては、例えば、化学式(HTM−12)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM8)としては、例えば、化学式(HTM−14)で表される化合物が挙げられる。以下、化学式(HTM−1)〜(HTM−12)及び(HTM−14)で表される化合物をそれぞれ正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−12)及び(HTM−14)と記載することがある。
露光メモリーの発生を更に抑制する観点から、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−12)及び(HTM−14)のうち、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)、(HTM−11)、(HTM−12)又は(HTM−14)が好ましく、正孔輸送剤(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)、(HTM−11)、(HTM−12)又は(HTM−14)がより好ましい。
転写メモリーの発生を更に向上させる観点から、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−12)及び(HTM−14)のうち、正孔輸送剤(HTM−1)が好ましい。
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、80質量部以上であることが好ましく、80質量部以上300質量部以下であることがより好ましく、110質量部以上250質量部以下であることが更に好ましい。なお、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM1)〜(HTM12)及び(HTM−14)のうちの何れか1種である場合であっても、正孔輸送剤の含有量をバインダー樹脂100質量部に対して80質量部以上とすることができる。
感光層に対する正孔輸送剤の含有率は、35質量%以上65質量%以下であることが好ましい。感光層に含まれる成分としては、例えば、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂が挙げられる。感光層に対する正孔輸送剤の含有率が35質量%以上65質量%以下である場合、露光メモリー及び転写メモリーの発生を更に抑制することができる。
電子輸送剤の含有量(質量)mETMに対する正孔輸送剤の含有量(質量)mHTMの比率mHTM/mETMは、数式(1)を満たすことが好ましい。
1.2 < mHTM/mETM < 4.0・・・(1)
比率mHTM/mETMは、数式(1)を満たす場合、露光メモリー及び転写メモリーの発生を更に抑制することができる。
[4.電荷発生剤]
電荷発生剤としては、例えば、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(より具体的には、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、又はアモルファスシリコン等)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料又はキナクリドン顔料が挙げられる。別の電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン顔料としては、例えば、金属フタロシアニン又は無金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CGM−1)で表されるチタニルフタロシアニン(以下、電荷発生剤(CGM−1)と記載することがある)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CGM−2)で表される無金属フタロシアニン(以下、電荷発生剤(CGM−2)と記載することがある)フタロシアニン顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン顔料の結晶形状(例えば、X型、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、又はY型結晶(以下、それぞれα型チタニルフタロシアニン、β型チタニルフタロシアニン及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。デジタル光学式の画像形成装置としては、例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリが挙げられる。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン顔料が好ましく、チタニルフタロシアニン又は無金属フタロシアニンがより好ましく、Y型チタニルフタロシアニンがより好ましい。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°の27.2°に主ピークを有することが好ましい。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法を説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン顔料が好適に用いられる。短波長レーザー光の波長は、例えば、350nm以上550nm以下である。
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であることが特に好ましい。
[5.バインダー樹脂]
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(より具体的には、エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物等)又はウレタン−アクリル酸系樹脂(ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的強度、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた感光層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましく、化学式(PC−1)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(PC−1)と記載することがある)がより好ましい。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、20000以上であることが好ましく、30000以上70000以下であることがより好ましく、40000以上60000以下であることが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が3000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が70000以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層を形成し易くなる。
[6.添加剤]
感光層は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤又はレベリング剤が挙げられる。
[7.感光体の製造方法]
感光体は、例えば、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させることによって製造される。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、必要に応じて添加される添加剤とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
感光層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布膜を乾燥させる方法としては、塗布膜中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
<第二実施形態:画像形成装置>
第二実施形態は画像形成装置に関する。以下、図4を参照して第二実施形態に係る画像形成装置の一態様について説明する。図4は、第二実施形態に係る画像形成装置の一例を示す図である。第二実施形態に係る画像形成装置90は、画像形成ユニット40を備える。画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体30は、第一実施形態に係る感光体である。帯電部42は、像担持体30の表面を正極性に帯電する。露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光して、像担持体30の表面に静電潜像を形成する。現像部46は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部48は、トナー像を像担持体30から記録媒体Mへ転写する。プロセス時間は100ミリ秒以下である。プロセス時間は、像担持体30の表面における所定の箇所(例えば、一点)が露光部44で露光されてから現像部46で現像されるまでの時間である。以上、第二実施形態に係る画像形成装置90の概要を記載した。
第二実施形態に係る画像形成装置90は、露光メモリー及び転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。第二実施形態に係る画像形成装置90は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、長期にわたる画像形成の繰り返し使用においても、露光メモリー及び転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置90は、露光メモリー及び転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。
露光メモリーの発生に起因する画像不良について説明する。上述のように画像形成プロセスで露光メモリーが発生すると、画像形成における感光体の基準周に対して次周の帯電工程で、像担持体30の表面が所望の電位を得られない領域は、所望の電位が得られる領域に比べ、電位が低下する傾向にある。具体的には、像担持体30の表面における基準周の露光領域は、基準周の非露光領域に比べ、基準周の次周の帯電時に電位が低下する傾向にある。このため、基準周の露光領域は、基準周の非露光領域に比べ、帯電時の電位が低下し易いため、現像時に正帯電トナーを引き付け易くなる。その結果、基準周の画像部(露光領域)を反映した画像が形成され易い。このような基準周の画像部を反映した画像が形成される画像不良が、露光メモリーに起因して発生する画像不良(以下、画像ゴーストと記載することがある)である。
図5を参照して、画像不良が発生した画像を説明する。図5は、画像ゴーストが発生した画像60を示す図である。画像60は、領域62及び領域64を含む。領域62は像担持体1周分に相当する領域であり、領域64も像担持体1周分に相当する領域である。よって、領域62の画像を形成するための感光体の周を基準周とすると、領域64の画像を形成するための感光体の周は基準周の次周となる。領域62は画像66を含む。画像66は、ドーナツ型のソリッド画像から構成される。領域64は画像68及び画像69を含む。画像68は、ドーナツ型の白抜きのハーフトーン画像である。画像68は、設計画像濃度と同等の画像濃度を有する。画像69は、領域64におけるドーナツ型のハーフトーン画像である。画像69は、画像68に比べ画像濃度が濃い。画像69は、領域62の露光領域の画像66を反映し、設計画像濃度より濃くなった画像不良(画像ゴースト)である。なお、領域64の画像は、設計画像上、全面ハーフトーン画像から構成される。
以下、画像形成装置90が備える各部について詳細に説明する。引き続き、図4を参照して第二実施形態に係る画像形成装置90を説明する。画像形成装置90は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置90は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置90がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置90は、例えば、タンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置90を例に挙げて説明する。
画像形成装置90は、転写ベルト38と、定着部36とを更に備える。画像形成装置90は、いわゆる除電レス方式を採用することができる。すわなち、除電レス方式を採用する画像形成装置90では、像担持体30は、記録媒体Mに転写し終えた領域に、除電を行うことなしに、帯電部42により再び帯電される。通常、除電レス方式を採用する画像形成装置では、露光メモリーに起因する画像不良が発生しやすい。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置90は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、長期にわたる画像形成の繰り返し使用においても、露光メモリーの発生を抑制することができる。このため、第二実施形態に係る画像形成装置90は、除電レス方式を採用しても、露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。
画像形成ユニット40は、クリーニング部(より具体的には、ブレードクリーニング部)及び除電部(ともに付図示)を更に備えることができる。画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48が設けられる。なお、画像形成ユニット40は、クリーニングブレードを備えなくてもよく、すなわちブレードクリーニングレス方式を採用することができる。
画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々によって、転写ベルト38上の記録媒体Mに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。なお、画像形成装置90がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置90は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。他の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。帯電部42は、非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電部又はスコロトロン帯電部が挙げられる。
帯電部42が印加する電圧は、特に限定されない。帯電部42が印加する電圧としては、直流電圧、交流電圧又は重畳電圧(直流電圧に交流電圧が重畳した電圧)が挙げられ、より好ましくは直流電圧が挙げられる。直流電圧は交流電圧又は重畳電圧に比べ、以下に示す優位性がある。帯電部42が直流電圧のみを印加すると、像担持体30に印加される電圧値が一定であるため、像担持体30の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部42が直流電圧のみを印加すると、感光層の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができる。
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置90に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、現像剤を用いて静電潜像をトナー像として現像する。現像剤は一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよい。露光部44と現像部46との間のプロセス時間は、100ミリ秒以下である。このプロセス時間は、像担持体30の表面における所定の箇所が露光部44で露光されてから現像部46で現像されるまでの時間である。より厳密には、像担持体30の表面における所定の箇所が露光光で照射され始めてから現像され始めまでの時間である。このプロセス時間は、像担持体30の周速と対応する。
転写ベルト38は、像担持体30と転写部48との間に記録媒体Mを搬送する。転写ベルト38は、無端状のベルトである。転写ベルト38は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から記録媒体Mへ転写する。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
定着部36は、転写部48によって記録媒体Mに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部36は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Mにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Mに画像が形成される。
<第三実施形態:プロセスカートリッジ>
第三実施形態はプロセスカートリッジに関する。第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、第一実施形態に係る感光体を備える。図4を参照して、第三実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
プロセスカートリッジは、ユニット化された像担持体30を備える。プロセスカートリッジは、像担持体30に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジは、例えば、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジには、除電器(不図示)が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置90に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体30の特性(より具体的には、露光メモリー又は転写メモリーの発生の抑制する性質)が劣化した場合に、像担持体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤及びバインダー樹脂を準備した。
[1−1.電子輸送剤]
第一実施形態で説明した電子輸送剤(ETM−1)〜(ETM−4)を準備した。また、電子輸送剤(ETM−B1)を準備した。電子輸送剤(ETM−B1)は、化学式(ETM−B1)で表される。
[1−2.正孔輸送剤]
第一実施形態で説明した正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−12)及び(HTM−14)を準備した。また、比較例で使用する正孔輸送剤として、化学式(HTM−13)で表される正孔輸送剤(以下、正孔輸送剤(HTM−13)と記載することがある)を準備した。
[1−3.電荷発生剤]
[1−3−1.Y型チタニルフタロシアニン]
第一実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−2)を準備した。電荷発生剤(CGM−1)は、化学式(CGM−1)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型チタニルフタロシアニン)であった。また、電荷発生剤(CGM−2)の結晶構造はY型であった。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルチャートにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=9.2°、14.5°、18.1°、24.1°、27.2°にピークを有しており、主ピークは27.2°であった。なお、CuKα特性X線回折スペクトルは、第一実施形態で説明した測定装置及び測定条件で測定された。
Y型チタニルフタロシアニンは、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲に1つのピークを有していた。なお、示差走査熱量分析スペクトルは、第一実施形態で説明した測定装置及び測定条件で測定された。
[1−3−2.X型無金属フタロシアニン]
電荷発生剤(CGM−2)は、化学式(CGM−2)で表される無金属フタロシアニン(X型無金属フタロシアニン)であった。また、電荷発生剤(CGM−2)の結晶構造はX型であった。
[1−4.バインダー樹脂]
バインダー樹脂として第一実施形態で説明したポリカーボネート樹脂(PC−1)(粘度平均分子量:40,000)を準備した。
<2.感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)を製造した。
[2−1.感光体(A−1)の製造]
電荷発生剤(CGM−1)4質量部と、正孔輸送剤(HTM−1)145質量部と、電子輸送剤(ETM−1)80質量部と、ポリカーボネート樹脂(PC−1)100質量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部とを容器内に投入した。ボールミルを用いて、容器内の材料(電荷発生剤(CGM−1)、正孔輸送剤(HTM−1)、電子輸送剤(ETM−1)及びポリカーボネート樹脂(PC−1))と溶媒とを50時間混合して、材料を溶剤に分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体上に、ディップコート法を用いて塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を、120℃で60分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層の感光層(膜厚25μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。なお、感光体(A−1)では、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率({145質量部/(4質量部+145質量部+80質量部+100質量部)}×100)は、44%であった。また、電子輸送剤の含有量mETMに対する正孔輸送剤の含有量mHTMの比率mHTM/mETM(145質量部/80質量部)は、1.8であった。
[2−2.感光体(A−2)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)の製造]
以下の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)をそれぞれ製造した。感光体(A−1)の製造に用いた電荷発生剤(CGM−1)を、表1〜3の何れかに示す種類の電荷発生剤に変更した。感光体(A−1)の製造に用いた電子輸送剤(ETM−1)60質量部を、表1〜3の何れかに示す電子輸送剤の種類及び含有量に変更した。感光体(A−1)の製造に用いた正孔輸送剤(HTM−1)110質量部を、表1〜3の何れかに示す正孔輸送剤の種類及び含有量に変更した。
表1〜3に感光体(A−1)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)の構成を示す。表1〜3中、CGM、HTM及びETMは、それぞれ電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤を示す。表1〜3中、欄「CGM」のC−1及びC−2は、それぞれY型チタニルフタロシアニン結晶(電荷発生剤(CGM−1))及びX型無金属フタロシアニン(電荷発生剤(CGM−2))を示す。欄「HTM」のHTM−1〜HTM−13は、それぞれ正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−13)を示す。欄「HTM」の含有量(部)は、バインダー樹脂100質量部に対する正孔輸送剤の含有量(単位:質量部)を示す。欄「ETM」のETM−1〜ETM−4及びETM−B1は、それぞれ電子輸送剤(ETM−1)〜(ETM−4)及び(ETM−B1)を示す。欄「ETM」の含有量(部)は、バインダー樹脂100質量部に対する電子輸送剤の含有量(単位:質量部)を示す。欄「HTM」の含有率は、感光層での成分(電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂)の全質量に対する正孔輸送剤の質量の比率(単位:%)を示す。欄「含有量比mHTM/mETM」は、電子輸送剤の含有量に対する正孔輸送剤の含有量の比率を示す。
<3.感光体の特性>
[3−1.光応答時間の測定方法]
第一実施形態で説明した光応答時間の測定方法を用いて、感光体(A−1)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、の光応答時間を測定した。感光体の光応答性時間は、温度25℃及び相対湿度50%RHの環境下で測定された。表1〜3に光応答時間を示す。
[3−2.半減露光量の比率の算出]
第一実施形態で説明した半減露光量の測定方法を用いて、感光体(A−1)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、半減露光量を測定した。温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で、測定された。表1〜3に半減露光量を示す。
<4.感光体の評価>
[4−1.露光メモリーに起因する画像不良(画像ゴースト)の評価]
感光体(A−1)〜(A−223)及び感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、画像不良(画像ゴースト)を評価した。画像不良の評価は、温度10℃及び相対湿度15%RHの環境下で行った。
感光体を評価機に装着した。評価機は、カラー画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」改造機)を用いた。この評価機は、非接触帯電方式の帯電部としてスコロトロン帯電装置を備えていた。この評価機は、除電部と、クリーニング部としてのクリーニングブレードとを備えていなかった。帯電電位を+700Vに設定した。露光−現像プロセス時間が75ミリ秒となるように、感光体の周速を調整した。
まず、記録媒体(A4サイズ用紙)に15秒間隔で印字パターン(印字率4%)を3,000枚印刷し、印字試験を行った。その後、下記操作により評価用画像を作成した。
図6を参照して、評価用画像を説明する。図6は、評価用画像70を示す図である。評価用画像70は、領域72及び領域74を含む。領域72は、像担持体1周分に相当する領域である。領域72は、画像76を含む。画像76は、ドーナツ型のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。このソリッド画像は、2つの同心円1組から構成される。領域74は、像担持体1周分に相当する領域である。領域74は画像78を含む。画像78は、全面ハーフトーン画像(画像濃度40%)から構成される。はじめに領域72の画像76を形成し、その後、領域74の画像78を形成した。画像78が形成される感光体の周は、画像76が形成される感光体の基準周に対して次周となる。
次いで、印字試験後に得られた画像を評価用画像とした。評価用画像を目視で観察し、領域74における画像76に対応した画像の有無を確認した。ここで、目視による観察とは、肉眼での観察(肉眼観察)又はルーペ(倍率10倍、TRUSCO社製、TL−SL10K)を介した観察(ルーペ観察)である。露光メモリーに起因する画像不良(画像ゴースト)の発生の有無を確認した。評価用画像の観察結果から下記基準に基づいて画像ゴーストの発生の有無を評価した。評価結果を表1〜3に示す。なお、評価A〜Cを合格とした。
(露光メモリーに起因する画像ゴーストの評価基準)
評価A:画像76に対応する画像ゴーストが観察されなかった。
評価B:画像76に対応する画像ゴーストがわずかに観察された。
評価C:画像76に対応する画像ゴーストが観察されたが、実用上問題のない水準であった。
評価D:画像76に対応する画像ゴーストが明確に観察され、実用上問題のある水準であった。
[4−2.転写メモリーに起因する画像不良(画像ゴースト)の評価]
感光体(A−1)〜(A−24)及び感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、転写メモリーを評価した。画像不良の評価は、温度32℃及び相対湿度80%RHの環境下で行った。
感光体を評価機に装着した。評価機は、カラー画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」改造機)を用いた。この評価機は、非接触帯電方式の帯電部としてスコロトロン帯電装置を備えていた。この評価機は、除電部と、クリーニング部としてクリーニングブレードとを備えていなかった。帯電電位を+700Vに設定した。露光−現像間のプロセス時間が75ミリ秒となるように、感光体の周速を調整した。
まず、記録媒体(A4サイズ用紙)に15秒間隔で印字パターン(印字率4%)を3,000枚印刷し、印字試験を行った。その後、評価用画像を作成した。
この評価画像は、画像パターンが異なる以外は、露光メモリーに起因する画像不良の評価用画像と同じであった。詳しくは、転写メモリーに起因する画像不良の評価画像は、感光体の基準周に相当する画像(画像A)と、基準周の次周に相当する画像(画像B)とからなる。基準周に相当する画像は、ソリッド画像(画像濃度100%)と、そのソリッド画像中に長方形1つの白抜き画像(画像濃度0%)とからなる画像であった。基準周の次周に相当する画像は全面ハーフトーン画像(画像濃度40%)とからなる画像であった。
次いで、印字試験後に得られた画像を評価用画像とした。評価用画像を目視で観察し、画像Bにおいて画像Aに対応する画像(画像ゴースト)の有無を確認した。転写メモリーが発生すると、基準周の非画像部に相当する次周の画像部の画像濃度が、基準周の画像部に相当する次周の画像部の画像濃度に比べ、高くなる。ここで、目視による観察とは、肉眼での観察(肉眼観察)又はルーペ(倍率10倍、TRUSCO社製、TL−SL10K)を介した観察(ルーペ観察)である。評価用画像の観察結果から下記基準に基づいて転写メモリーに起因する画像ゴーストの発生の有無を評価した。評価結果を表1〜3に示す。なお、評価A〜Cを合格とした。
(転写メモリーに起因する画像不良の評価基準)
評価A:画像Aに対応する画像ゴーストが観察されなかった。
評価B:画像Aに対応する画像ゴーストがわずかに観察された。
評価C:画像Aに対応する画像ゴーストが観察されたが、実用上問題のない水準であった。
評価D:画像Aに対応する画像ゴーストが明確に観察され、実用上問題のある水準であった。
表1及び表2に示すように、感光体(A−1)〜(A−24)では、感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含んでいた。光応答時間は、0.21ミリ秒以上0.81ミリ秒以下であった。半減露光量の比率は、1.3以上3.5以下であった。感光体(A−1)〜(A−23)では、転写メモリーの評価が評価A、B及びCの何れかであり、画像評価が評価A、B及びCの何れかであった。
表3に示すように、感光体(B−1)〜(B−4)及び(B−6)では、光応答時間がそれぞれ0.90ミリ秒以上82.00ミリ秒以下であった。また、感光体(B−4)〜(B−6)では、半減露光量の比率は、5.2以上15.0以下であった。感光体(B−1)〜(B−3)では、露光メモリーの画像評価が評価Dであった。感光体(B−4)〜(B−6)では、転写メモリーの画像評価が評価Dであった。
感光体(A−1)〜(A−24)は、感光体(B−1)〜(B−6)に比べ、長期にわたる画像形成の繰り返しにおいても、露光メモリー及び転写メモリーの発生を抑制することができる。また、感光体(A−1)〜(A−24)の何れかを備える画像形成装置は、感光体(B−1)〜(B−6)を備える画像形成装置に比べ、画像不良の発生を抑制することができる。