JP2018184692A - 撥水性布帛およびその製造方法 - Google Patents

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秀樹 茶谷
Hideki Chatani
秀樹 茶谷
宏介 富樫
Kosuke Togashi
宏介 富樫
幸之助 魚住
Konosuke Uozumi
幸之助 魚住
裕香 浜口
Yuka Hamaguchi
裕香 浜口
金法 順正
Nobumasa Kanenori
順正 金法
福田 寛
Hiroshi Fukuda
福田  寛
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Abstract

【課題】環境に対する懸念が少ない非フッ素系撥水剤を付与された繊維布帛でありながら、優れた撥水性を有する撥水性布帛等を提供する。【解決手段】繊維布帛の少なくとも片面を構成している繊維の表面に、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子とが付着している。【選択図】なし

Description

本発明は、撥水性を有する撥水性布帛およびその製造方法に関する。
撥水性布帛は、繊維布帛に撥水性を付与することによって得られる。このような撥水性布帛は、カッパ、コート、ウインドブレーカー、スキーウエアー、水着、傘、鞄、靴、帽子などの様々な繊維製品に用いられている。
繊維布帛に撥水性を付与するには、例えば、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤、または、炭化水素系撥水剤等の撥水剤が用いられる。撥水剤の中でも、特に、フッ素系撥水剤は、優れた撥水性および撥油性を有するだけではなく、洗濯などに対する撥水性および撥油性の耐久性を有しているため、様々な繊維製品に広く用いられている。
近年、一般的に用いられている炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系撥水剤(C8フッ素系撥水剤)は、環境に影響を及ぼす可能性のあるパーフルオロオクタン酸が含まれているといわれているので、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系撥水剤(C6フッ素系撥水剤)が使用され始めている。
また、さらに環境への関心が高まる中で、フッ素を用いたフッ素系撥水剤を使用しない撥水剤の要望が高まってきている。
フッ素系撥水剤を使用しない撥水剤(非フッ素系撥水剤)としては、シリコーン系撥水剤またはパラフィンなどを用いた炭化水素系撥水剤が知られているが、シリコーン系撥水剤または炭化水素系撥水剤はC6フッ素系撥水剤に比べて撥水性に劣るため、様々な検討が行われている(特許文献1、2、3)。
特開2015−221952号公報 特開2015−206142号公報 特開2015−120894号公報
しかしながら、非フッ素系撥水剤を用いた繊維布帛では、いまだに十分な撥水性を有する繊維布帛は得られていない。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、環境に対する懸念が少ない非フッ素系撥水剤を付与された繊維布帛でありながら、優れた撥水性を有する撥水性布帛およびその製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明をするに至った。
(1)本発明に係る撥水性布帛は、繊維布帛の少なくとも片面を構成している繊維の表面に、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子とが付着している。
(2)さらに本発明に係る撥水性布帛において、前記疎水性シリカ粒子により前記繊維の表面に凸部が形成され、当該凸部の高さが1μm未満であることが好ましい。
(3)さらに本発明に係る撥水性布帛において、前記疎水性シリカ粒子の表面を構成するシリカが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、クロロジメチル基、ジクロロジメチル基、クロロシラン基、ジクロロシラン基、および、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するとよい。
(4)さらに本発明に係る撥水性布帛において、JIS L1092:2009 繊維製品の防水試験方法 撥水度試験(スプレー試験)での撥水度が5級であるとよい。
(5)また、本発明に係る撥水性布帛の製造方法は、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する工程と、前記処理液を付与した繊維布帛を熱処理する工程とを含む。
(6)また、本発明に係る撥水性布帛の他の製造方法は、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を含む処理液を付与する工程と、前記処理液を付与した繊維布帛の少なくとも片面に疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する工程と、前記疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与した繊維布帛を熱処理する工程とを含む。
本発明によれば、フッ素系撥水剤を含まず炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含む撥水剤を用いて加工されたものでありながら、優れた撥水性を有する撥水性布帛を得ることができる。
したがって、本発明に係る撥水性布帛を用いることにより、より環境に配慮した撥水性を有する衣服等の繊維製品を提供することができる。
<繊維布帛>
本実施の形態に係る撥水性布帛は、繊維布帛の少なくとも片面を構成している繊維の表面に、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子とが付着している。
本実施の形態における撥水性布帛に用いられる繊維布帛を構成する有用な繊維の素材としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、または、アセテートやビスコースなどのレーヨンなどがあり、さらに、これらの他に、ポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミドまたはポリフェニレンサルファイドなどの化学繊維、綿、麻、絹または羊毛などの天然繊維、あるいは、これらの素材の混繊、混紡、交織または交編品を用いることができ、特に限定されるものではない。これらの中でも、繊維の素材としては、ポリエステルまたはナイロンを含むものが好ましい。
また、繊維布帛を構成する繊維は、長繊維および短繊維いずれであってもよい。また、この繊維を用いた糸は、生糸、撚糸および加工糸のいずれであってもよい。加工糸についても特に限定されるものではなく、仮撚加工糸(ウーリー加工糸、DTY、改良仮撚加工糸など)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などを用いることができる。なお、繊維表面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を多く付着させて撥水性を高めるとの観点および引裂強力の向上の観点からは、加工糸を用いることが好ましい。
また、繊維の断面形状についても、特に限定されるものではなく、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドッグボーンなどが挙げられる。なお、繊維表面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を多く付着させて撥水性を高めるとの観点および通気度を小さくして中綿の抜け防止性の向上の観点からは、繊維の断面形状は、三角、星形、扁平、または、ドッグボーンなどであることが好ましい。つまり、異形断面糸を用いることが好ましい。
また、撥水性の向上とともに防水性を付与するため、カレンダー加工などを行い繊維布帛の表面の糸や繊維を平坦に配列させたものであってもよい。
また、織物の組織は、平織、綾織、朱子織、変わり織物等に限定されるものではないが、引裂強力の向上の観点からは、リップストップ組織であることが好ましい。また、編物の組織も、経編、経編等に限定されるものではない。
また、これらの繊維布帛は、あらかじめ着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。繊維布帛をあらかじめ着色する場合には、分散染料、カチオン染料、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、または、硫化染料などの染料、あるいは、蛍光増白剤、または、顔料などを用いて着色することができる。また、酸性染料を用いてナイロンを染色した場合に実施されている合成タンニン等を用いてのフィックス処理など、通常着色時に行われている各種処理を行ってもよい。なお、繊維布帛を着色するために用いられる材料は、これらのものに特に限定されるものではなく、各繊維布帛の素材に合わせて適切なものを選択すればよい。
また、着色方法は、原着、浸染、または、捺染などの方法があり、特に限定されるものではない。
また、繊維布帛には、所期の目的を逸脱しない限りにおいて、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、吸湿加工、または、親水加工などが施されていてもよい。
繊維布帛を構成する糸状の繊度は特に限定されるものではないが、得られる撥水性布帛の撥水性、防水性、引裂強度、縫目強力の観点からは、下限は10dtex以上であることが好ましい。より好ましくは20dtex以上が好ましい。上限についても特に限定されるものではないが、風合いや目付の観点からは繊維布帛を構成する糸状の繊度は、衣服用途では200dtex以下以上、鞄やテントや防護衣服では500dtex以下であることが好ましい。
本実施の形態における撥水性布帛を構成する繊維布帛の少なくとも片面を構成している繊維の表面には、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂が付着している。
炭化水素系化合物としては、撥水性樹脂として繊維の表面に付着できるものであれば、特に限定されるものではなく、特開2015−221952号公報、特開2015−206142号公報、特開2015−120894号公報、特開2015−120895号公報、特開2015−120894号公報、特開2015−120893号公報、特開2015−40365号公報、特開2015−3445号公報、特開2014−1252号公報、特開2006−328624号公報、特開2017−218713号公報、特開2017−214664号公報、特開2017−165873号公報、特開2017−165872号公報、国際公開第2015/111668号、特開2017−025440号公報、特開2017−025218号公報、特開2017−199712号公報、特表2016−517478号公報、特開2016−040380号公報などに開示されたものが挙げられる。炭化水素系化合物は、好ましくは繊維表面を覆うように被膜を形成するものであることが好ましい。
具体的には、炭化水素系化合物として、脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、オレフィン、ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルなどを用いることができる。
この場合、脂肪族系炭化水素としては、パラフィン系炭化水素またはオレフィン系炭化水素などの脂肪族系炭化水素が挙げられる。
また、脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸であってもよいし、脂肪族カルボン酸のエステル化合物であってもよい。脂肪族カルボン酸の炭素数としては12以上が好ましい。
また、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。
また、ポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルとしては、エステル結合を介して存在する炭化水素の炭素数が12以上、24以下のものを用いるとよい。この場合、炭化水素は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、あるいは、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、さらには、脂環式または芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、さらに、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。
シリコーン系化合物としては、ゲラネックスSH(松本油脂(株))、ドライポン600E(日華化学(株)製)、リケンパランSG−54(三木理研工業(株))、ライトシリコーンP−290E(北広ケミカル(株))、ポロンMR(信越化学工業(株))、ポロンMF−49(信越化学工業(株))、ネオシードNR8000(日華化学(株))、KF−96シリーズ(信越化学工業(株))、KF8005(信越化学工業(株))、SF−8417(東レ・ダウコーニング(株))、MQ−1600(東レ・ダウコーニング(株))などが挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、特開2017−218713号公報、特開2017−226946号公報、特開2017−155095号公報、特開2017−218713号公報などに開示されたものなどが挙げられる。
また、本実施の形態における撥水性布帛は、繊維布帛の少なくとも片面を構成する繊維の表面に疎水性シリカ粒子も付着している。このように、疎水性シリカ粒子が繊維の表面に付着していることにより、非フッ素系撥水剤を用いたものであっても優れた撥水性を有する撥水性布帛を得ることができる。
なお、従来、コロイダルシリカなどを用いてシリカ粒子を繊維布帛の繊維の表面に付与することにより、当該繊維布帛を縫製して得られた衣服等の縫目の強度を上げたり繊維布帛への花粉の付着を防止したりすることがなされていたが、従来の水酸基を多く有するシリカ粒子では、繊維布帛の撥水性を向上させることが難しかった。
本実施の形態で用いられる疎水性シリカ粒子としては、シリカ粒子の少なくとも表面を構成するシラノール基が化学的に変性しているものであるとよい。具体的には、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等を用いて、シリカ粒子の表面を化学的に処理したものなどである。このような処理を施すことにより、シリカ粒子の表面がいわゆるコーティング(樹脂などで覆っただけ)されたものではなく、シリカ粒子の表面で化学的結合がおこったものとすることができる。より具体的には、疎水性シリカ粒子としては、シリカが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、クロロジメチル基、ジクロロジメチル基、クロロシラン基、ジクロロシラン基、アルコキシシラン基などにて修飾されているものなどをあげることができる。
また、疎水性シリカ粒子として、本実施の形態の所期の目的を逸脱しない範囲でアミノ基を有するシランカップリング剤を用いて、シリカ粒子を化学的に表面処理したものであってもよい。アミノ基を有する疎水性シリカ粒子は、水分散性に優れるため、取り扱い易く生産性の観点から好ましい。
特に、撥水性の観点からは、疎水性シリカ粒子の表面を構成するシリカが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、クロロジメチル基、ジクロロジメチル基、クロロシラン基、ジクロロシラン基、および、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するものが好ましい。
また、本実施の形態において、疎水性シリカ粒子を構成する粒子は、1μm未満の疎水性シリカの微粒子の凝集物であるとよい。
例えば、疎水性シリカ粒子としては、日本アエロジル株式会社から市販されている、AEROSIL R972、R974、R202、R805、R812、RX200、RY200、二酸化チタンT805など、または、旭化成ワッカーシリコーン株式会社から市販されている、WACKER HDK H15、H18、H20、H30などを用いることができる。
これらの疎水性シリカ粒子の一次粒子の平均粒子径は、例えば7〜40nmである(一次粒子の粒子径は各販売会社のカタログ値。)。当該一次粒子が、1次凝集、2次凝集あるいはバインダー樹脂などにて接合され、一次粒子が凝集してなる疎水性シリカ粒子が繊維表面に付着していると、ナノメートルオーダーの細かな凹凸を有するナノメートルオーダーの疎水性シリカ粒子、および、ナノメートルオーダーの細かな凹凸を有するマイクロメートルオーダーの疎水性シリカ粒子が繊維表面に付着しているので、撥水性に優れた繊維布帛が得られる。
また、撥水性布帛は風合いの硬化、ザラツキおよび白化するおそれを防ぐとの観点からは、繊維布帛を構成する繊維の表面に付着した疎水性シリカ粒子により当該繊維の表面に凸部が形成されており、当該凸部の高さが1μm未満であることが好ましい。この凸部の高さは、より好ましくは800nm未満、さらにより好ましくは600nm未満であり、さらには500nm未満であることが好ましい。凸部の下限は、疎水性シリカ粒子による撥水性(水のはじき性)の観点から10nm以上であることが好ましい。
なお、繊維の表面に付着した疎水性シリカ粒子の凸部の高さは、前記の好ましい範囲から外れたものを多少含んでいてもよい。
なお、「凸部の高さ」とは、繊維の表面に疎水性シリカ粒子が付着したことにより、繊維の表面に形成される凸部の高さのことであって、疎水性シリカ粒子が繊維の表面に樹脂被膜にて固着されている場合には、当該樹脂被膜のベース部(疎水性シリカ粒子の存在しない個所でのほぼ均一な樹脂厚み部)となる部分の厚さを除いた、樹脂被膜から突出して凸部を形成している部分の高さのことをいう。
疎水性シリカ粒子は、前記撥水性樹脂がバインダーとなり繊維の表面に固着されていればよいが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン系樹脂などの他のバインダー樹脂を用いて繊維の表面に固着されていてもよい。
繊維布帛を構成する繊維の表面に付着した撥水性樹脂被膜の厚みおよび撥水性樹脂と他のバインダー樹脂を併用した場合には、当該他のバインダー樹脂と撥水性樹脂が構成する樹脂被膜の厚みの合計は、撥水性、特に水のはじき性の観点より、1μm以下がよく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは30nm以下である。
また、当該樹脂被膜の厚みにかかわらず、疎水性シリカ粒子による撥水性の向上の観点より、繊維の表面に付着している疎水性シリカ粒子により形成されている凸部の表面は、なるべく樹脂被膜で覆われていない状態で、疎水性シリカ粒子の一次粒子により形成する凹凸が維持されていることが好ましい。または、疎水性シリカの一次粒子による凹凸を維持できる厚みの撥水性の樹脂被膜によって疎水性シリカ粒子の表面が覆われていてもよい。
また、撥水性の洗濯耐久性の観点からは、繊維上に付着した疎水性シリカ粒子は、その高さ方向の10%以上が樹脂被膜中に埋没していることが好ましく、さらには25%以上、より好ましくは40%以上が樹脂被膜中に埋没していることが好ましい。上限は、疎水性シリカ粒子の繊維表面での分布状態にもよるが、繊維布帛の表面層に位置する繊維の表面の10%以上が樹脂被膜から露出した疎水性シリカ粒子による凸部を有しているものであればよい。
本実施の形態における疎水性シリカ粒子は、ナノメートルオーダーの一次粒子が凝集したものであるため、疎水性シリカ粒子の表面に微細な凹凸が多数ある。これにより、本実施の形態における疎水性シリカ粒子は、撥水性が向上することに加えて、少量のバインダー樹脂で繊維表面に強固に固着している。
なお、繊維布帛を構成する繊維の糸と糸の間または繊維と繊維の間の一部に撥水性樹脂が溜り、撥水性樹脂が1μm以上の厚みになることがあるが、本発明の所期の目的を達成することができれば、このような箇所が存在していてもよい。
また、繊維布帛への撥水性樹脂の付着量は、繊維布帛100g当たり0.01g〜10gがよく、より好ましくは0.05g〜5gがよい。撥水性樹脂の付着量が上限(10g)を超えると、十分な引裂強力や縫目強力が得られないおそれがあるとともにチョークマークが発生するおそれがある。
また、繊維布帛への疎水性シリカ粒子の付着量は、繊維100gあたり0.005g〜10gがよく、より好ましくは0.01g〜4gがよい。疎水性シリカ粒子の付着量が上限(10g)を超えると、繊維布帛が白化(白茶けて見える)するおそれがある。
本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1092:2009 繊維製品の防水試験方法 撥水度試験(スプレー試験)での撥水度が4級以上であり、好ましくは5級であるとよい。
非フッ素系撥水剤を用いて撥水加工された繊維布帛の撥水度は、2級または3級程度のものが多いが、本実施の形態における撥水性繊維布帛は、4級以上と優れた撥水性を付与することができ、また、その水のはじき性の観点から、優れた撥水性を有している。
さらに、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L0217 103法にて20回洗濯後の撥水度が2級以上であるとよい。さらに好ましくは3級以上、さらにより好ましくは4級以上が良い。20回洗濯後の撥水度が前記下限(2級)であれば、当該撥水性布帛を用いて得られた繊維製品が洗濯を行うものであっても、優れた撥水性を維持できる。これにより、種々の繊維製品に用いることのできる撥水性布帛が得られる。
さらに、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法によるタテ方向及びヨコ方向の引裂強さが6N以上であるとよい。引裂強さが6N以上であれば、実用的な強度を有するものを得ることができ、撥水性布帛を衣服等に用いることができる。なお、撥水性布帛をスポーツ用の衣服に用いる場合、上記引裂強さは8N以上が好ましい。
さらに、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1096:2010 B法 荷重49.0Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3.0mm以下であるとよい。撥水性布帛をブラウス等の薄地の織物に用いる場合、荷重49.0Nによる縫目の滑りが3.0mm以下であれば実用上の性能を有する。より好ましくは、撥水性布帛は、荷重117.7Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3.0mm以下であるとよい。JIS規格によれば荷重117.7Nはスラックスなどの厚地用の荷重ではあるが、荷重117.7Nによる縫目の滑りが3.0mm以下の撥水性布帛であれば、ジャンパーや作業服などの外衣に用いても十分実用的な強度を有している。なお、撥水性布帛をスポーツ用の衣服に用いる場合、縫目の滑りは2.5mm以下であることが好ましい。
また、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1096:2009 A法 フラジール形法による通気性が10cm/cm・s以下であるとよい。通気性が10cm/cm・s以下であれば、撥水性布帛を衣服等に用いた場合、風の通過を抑制し、保温性を発揮することができる。
また、通気性は、1.5cm/cm・s以下であることがより好ましい。通気性が1.5cm/cm・s以下であれば、ダウンジャケットやダウンパックや布団の側地として、内部に綿やダウン等の中綿を用いる用途で撥水性布帛を用いた場合に、中綿の抜けを防止することができる。より好ましくは、通気性は、1.0cm/cm・s以下であるとよい。
また、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲で、本実施の形態に用いられる繊維布帛の繊維の表面には、塩酸グアニジンや高級アルコール硫酸エステル塩、アミン塩、ポリエチレングリコール型、ベタイン型界面活性剤等の帯電防止剤、または、他の仕上げ剤や機能薬剤などが付着していてもよい。
また、本実施の形態における撥水性布帛は、さらに繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂皮膜を有していてもよい。また、当該樹脂皮膜は、防水性に加え、透湿性を有していてもよい。
中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂皮膜としては、ウレタン樹脂皮膜、ポリテトラフルオロエチレン皮膜、ポリエステル樹脂皮膜、アクリル樹脂皮膜、シリコーン樹脂皮膜、または、ナイロン樹脂皮膜などがあげられる。また、これらの中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜は、多孔質であってもよいし、無孔質であってもよい。
このような樹脂皮膜の厚みは、目的とする中綿抜け防止性、防風性および/または防水性に応じて任意に設定することができるが、風合いの観点からは、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有し、かつ、通気性も必要な場合には、当該樹脂皮膜を多孔質膜にしたり、当該樹脂皮膜を有する面の一部に当該樹脂皮膜が存在しない個所を有するものにしたりすればよい。なお、樹脂皮膜が存在しない個所とは、たとえば、織物では経糸と緯糸の重なり合った凸部や編物のループ同士が重なった凸部などの全部または一部、これらの凸部とは反対に凹部の全部または一部、または、当該樹脂皮膜に形成された貫通孔などが挙げられる。
また、本実施の形態における撥水性布帛が防水性を必要とする場合、耐水圧は、JIS
L1092 耐水度試験(静水圧法)A法(低水圧法)にて測定したもので、耐水圧が250mm以上であるとよい。耐水圧は、より好ましくは350mm以上、さらに好ましくは1000mm以上、さらにより好ましくは2000mm以上であるとよい。耐水圧が250mm以上であれば、雨傘用やレインコート用の素材として用いることができ、雨の衣服内への浸入を抑え、日常使用される繊維製品の防水素材として用いることができる。また、耐水圧が2000mm以上であれば、カッパ、スキーウエアーなどの素材として用いることができる。また、山岳用途やライダー用レインウエアー用途として撥水性布帛を用いる場合、耐水圧は、JIS L1092 耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)にて測定したもので、100kPa以上であるとよい。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、触媒、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、撥水剤、柔軟剤、二酸化ケイ素などの耐水性向上剤、顔料、または、赤外線吸収剤などが添加されていてもよい。
本実施の形態における撥水性布帛は、非フッ素系撥水剤を用いた撥水性布帛でありながら、優れた撥水性を有するため、一般衣服やスポーツ用衣服、テント、靴、鞄等に用いることができる。
<繊維製品>
本実施の形態における繊維製品は、前記の撥水性布帛を少なくとも一部に用いたものであり、たとえば、コート、ジャケット、ジャンパー、ダウンウエアー、帽子、手袋、スキーウエアー、ウインドブレーカー、作業着などの衣服、鞄、テント、寝袋およびダウンパックからなる群より選択された繊維製品である。
本実施の形態の繊維製品は、前記の撥水性布帛を用いたものであるので、実着用に必要な前記の種々の強度や性能を有しており、しかも、軽くて風合いも柔らかく、また、ファッション性および機能性に優れた繊維製品である。
<撥水性布帛の製造方法>
以下に、本実施の形態に係る撥水性布帛の製造方法について説明する。なお、既に説明した内容については、一部説明を省略または簡略化する。
<<製造方法1>>
実施の形態1に係る撥水性布帛の製造方法について説明する。
実施の形態1における撥水性布帛の製造方法は、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する第1工程と、前記処理液を付与した繊維布帛を熱処理する第2工程とを含む。
本実施の形態における製造方法では、まず、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する(第1工程)。
本実施の形態における撥水性布帛の製造方法に用いられる繊維布帛としては、上述したものを用いることができる。
また、処理液は、上述した撥水剤としての炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物と溶媒(分散媒も含め溶媒という。)とを含むものである。
また、処理液は、上述した疎水性シリカ粒子を含んでいる。
また、撥水性の観点、特に水のはじき性の観点からは、処理液には水溶性高分子が含まれていることが好ましい。水溶性高分子は、アニオン系化合物であることが好ましい。より具体的には、水溶性高分子は、ポリフェノール、ポリスルホン酸、ポリ硫酸エステル、ポリカルボン酸、ポリリン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を含んでいるとよい。このうち、高分子を水溶性とするために塩であることが好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。特に好ましくは、ポリカルボン酸塩がよい。ポリカルボン酸塩としては、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸単量体との共重合の塩、カボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
本実施の形態における撥水性布帛の製造方法によれば、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水剤とともに疎水性シリカ粒子を繊維布帛に付与することによって、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含む撥水剤を用いて加工されたものでありながら、優れた撥水性を有した撥水性布帛を得ることができる。
処理液に用いられる溶媒としては、水およびトルエン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソオクタン、イソノナン、イソヘプタン、イソヘプタン、ターペンなどの有機溶剤またはこれらが配合されたものを用いることができる。
また、処理液は、炭化水素系化合物等が溶媒に溶けた溶液(溶媒が水の場合には水溶液)であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、分散液であってもよい。なお、疎水性シリカ粒子は処理液中では分散している。
また、処理液のpHは特に限定されないが、水溶性高分子を含む場合には、7未満であることが好ましい。処理液をpHが7未満の酸性にしておくことにより、特に水溶性高分子を用いる場合に水溶性高分子の水への溶解性が高まり、撥水剤としての炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物と水溶性高分子とを含有する処理液が安定し、撥水性、引裂強力および縫目強力等の性能が安定した撥水性布帛を得ることができる。
また、処理液には、本実施の形態の所期の目的を逸脱しない範囲で架橋剤、触媒、疎水性シリカ粒子用のバインダー樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、引裂強力向上ための粒子や他の目的での無機粒子、または、有機粒子などが含まれていてもよい。
特に、撥水性の性能の耐久性向上の観点からは、処理液は架橋剤を含むものが好ましい。架橋剤としては、たとえば、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、または、グリオキザール系架橋剤等を用いることができる。
また、撥水性等の性能の耐久性向上の観点からは、疎水性シリカ粒子を繊維に固着するためのバインダー樹脂を含むとよい。バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
繊維布帛への炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する処理液を繊維布帛に付与する方法は、ディップ−ニップ法、グラビア転写法、または、スプレー法などの公知の方法を用いることができる。生産性や加工の安定性の観点からは、ディップ−ニップ法によって繊維布帛に処理液を付与するとよい。
炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水剤と疎水性シリカ粒子とを含有する処理液を繊維布帛に付与した後は、熱処理を行う(第2工程)。この熱処理を行うことで、繊維の表面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂及び疎水性シリカ粒子を付着させることができる。
この熱処理の条件は、繊維布帛の素材や炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物と疎水性シリカ粒子を含有する処理液に含まれる化合物の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、135℃〜210℃程度で10秒から10分程度の熱処理を行うとよい。
また、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。この場合、乾燥は、熱処理よりも低温度で行うとよく、たとえば、60℃〜135℃程度で10秒〜10分程度行えばよい。熱処理の温度に比べて低温の乾燥を熱処理の前に行うことにより、撥水性樹脂および/またはシリコーン系化合物を含めたバインダー樹脂が繊維表面上に付着している疎水性シリカ粒子の凸部から繊維の表面に移動し、疎水性シリカ粒子の凸部が樹脂で厚く覆われることを抑制し、疎水性シリカ粒子の表面に存在するナノメートルオーダーの微細な凹凸を維持しやすく、撥水性の低下を抑制することができる。
処理液中の炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂の配合量は、好ましくは0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.1質量%〜5質量%であるとよい。炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物の配合量が下限値(0.01質量%)を下回ると十分な撥水性を得ることができないおそれがある。一
方、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物の配合量が上限値(10質量%)を上回ると、疎水性シリカ粒子が撥水性樹脂でえられる樹脂被膜の中に埋没してしまうおそれや、炭化水素系化合物の場合はチョークマークが発生するおそれがある。
また、処理液中の疎水性シリカ粒子の配合量は、0.02質量%〜10質量%、より好ましくは、0.1質量%〜5質量%であるとよい。疎水性シリカ粒子の配合量が下限値(0.02質量%)を下回ると十分な撥水性を得ることができないおそれがある。一方、疎水性シリカ粒子の配合量が上限値(10質量%)を上回ると、得られる撥水性布帛が白化するおそれがある。
また、水溶性高分子を用いる場合の処理液中の水溶性高分子の配合量は、0.001質量%〜1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003質量%〜0.5質量%であるとよい。水溶性高分子の配合量が上限値(1.5質量%)を上回ると処理液の安定性が低下してしまったり、得られる撥水性布帛の風合いが硬化してしまったりするおそれがある。一方、水溶性高分子の配合量が下限値(0.001質量%)を下回ると、目的とする撥水性が得られないおそれがある。
繊維布帛に、さらに、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂膜を付与する場合は、繊維布帛の繊維の表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前または後に、公知の乾式法、湿式法、ラミネート法などを用いて、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂膜を付与すればよい。
また、繊維表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前および/または後にカレンダー加工を行ってもよい。カレンダー加工を行うことにより、撥水性および引裂強力を向上させたり、通気度を抑制したり、また、チョークマークの解消効果や予防効果を向上させたりできる。
さらに、繊維の表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前および/または後に、繊維布帛に対して、消臭加工、紫外線遮蔽加工、赤外線吸収加工、抗菌防臭加工、制菌加工または、難燃加工などを施してもよい。繊維表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前に親水加工や吸湿加工を施してもよい。
<<製造方法2>>
次に、実施の形態2に係る撥水性布帛の製造方法について説明する。なお、既に説明した内容については、一部説明を省略または簡略化する。
実施の形態2における撥水性布帛の製造方法は、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を含む処理液を付与する第1工程と、前記処理を付与した繊維布帛の少なくとも片面に疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する第2工程と、前記疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与した繊維布帛を熱処理する第3工程とを含む。
本実施の形態における製造方法では、まず、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を含む処理液を付与する(第1工程)。
本実施の形態における撥水性布帛の製造方法に用いられる繊維布帛としては、上述したものを用いることができる。
また、処理液は、疎水性シリカ粒子を必須成分としない以外は上述した撥水剤としての炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物と溶媒(分散媒も含め溶媒という。)とを含むものと同様である。
また、撥水性の観点、特に水のはじき性の観点からは、処理液には水溶性高分子が含まれていることが好ましい。水溶性高分子は、上述したものを用いることができる。
また、処理液は、炭化水素系化合物等が溶媒に溶けた溶液(溶媒が水の場合には水溶液)であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、分散液であってもよい。
また、処理液のpHは前述のとおりである。
また、処理液には、本実施の形態の所期の目的を逸脱しない範囲で架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、引裂強力向上ための粒子や他の目的での無機粒子、または、有機粒子などが含まれていてもよい。
撥水性の性能の耐久性向上の観点からは、処理液は架橋剤を含むものが好ましく、前述のとおりである。
繊維布帛への炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する処理液を繊維布帛に付与する方法は、前述の炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液と同様である。
処理液を付与した後、乾燥行うとよい。乾燥は低温度で行うとよく、たとえば、60℃〜135℃程度で10秒〜10分程度行えばよい。
また、この後、135℃超で熱処理を行ってもよいが、ここで熱処理を行うと、処理液の中に架橋剤が添加されている場合やバインダー樹脂(撥水性樹脂を含む)が自己架橋型の樹脂の場合、バインダー樹脂(撥水性樹脂を含む)が架橋し、後に付与される疎水性シリカを含む処理液に含まれる有機溶剤によりバインダー樹脂被膜の溶解、膨潤、軟化が発生しにくくなるため、疎水性シリカ粒子を含む処理液にバインダー樹脂を含まない場合は、135℃超の温度での熱処理は行わない方が好ましい。
処理液中の炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物の配合量は、前述の炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液と同様である。
次に、第1工程の後は、前記処理液を付与した繊維布帛の少なくとも片面に疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する(第2工程)。
疎水性シリカ粒子は前述のものを用いることができる。
また、処理液は、疎水性シリカ粒子が分散した溶液である。処理液に用いられる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソオクタン、イソノナン、イソヘプタン、イソヘプタン、ターペンなどの有機溶剤およびこれらが配合されたものであるとよい。また、水も溶媒として用いることができる。
処理液に有機溶剤を含むことにより、当該処理液にバインダー樹脂を含まなくとも先に繊維に付与した撥水樹脂の少なくとも一部を溶解、膨潤、軟化させることにより疎水性シリカ粒子を繊維表面に固着することができ、且つ、疎水性シリカ粒子で繊維表面に形成した凸部および当該凸部の疎水性シリカ粒子の表面に有するナノメートルオーダーの凹凸が撥水性樹脂を含む樹脂で被覆されることを抑制することができ撥水性の観点、特に水のはじき性の観点から好ましい。
また、溶媒として水を用いた場合、疎水性シリカ粒子は水になじまないため、疎水性シリカ粒子を水に分散させるために、多くの界面活性剤を必要とし、得られる撥水性布帛の撥水性を阻害するおそれがある。そのため、溶媒として水を用いた場合には、処理液に含まれる界面活性剤を繊維布帛から取り除くため、下記の第3工程の後に撥水性布帛を水又はお湯で洗浄するとよい。溶媒が有機溶剤を含めば、界面活性剤を含まないか、わずかの界面活性剤でよく、撥水性を阻害するおそれが小さい。
また、処理液には、本実施の形態の所期の目的を逸脱しない範囲で疎水性シリカ粒子用のバインダー樹脂、架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、引裂強力向上ための粒子や他の目的での無機粒子、または、有機粒子などが含まれていてもよい。
撥水性能の耐久性向上の観点からは、処理液にバインダー樹脂が含まれる場合、架橋剤を含むものが好ましく、架橋剤の種類等は前述のとおりである。
疎水性シリカ粒子を含有する処理液を繊維布帛に付与する方法は、前述の炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液と同様である。
処理液中の疎水性シリカ粒子の配合量は、前述の炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含む処理液と同様である。
次に、第2工程の後は、前記疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与した繊維布帛を熱処理する(第3工程)。
この熱処理の条件は、繊維布帛の素材や処理液に含まれる溶剤の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、135℃〜210℃程度で10秒から10分程度の熱処理を行うとよい。
また、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。この場合、乾燥は、熱処理よりも低温度で行うとよく、たとえば、60℃〜135℃程度で10秒〜10分程度行えばよい。熱処理の温度に比べて低温の乾燥を熱処理の前に行うことにより、処理液の中にバインダー樹脂を含む場合には、バインダー樹脂が繊維表面上に付着している疎水性シリカ粒子の凸部から繊維の表面に移動し、疎水性シリカ粒子の凸部および当該凸部の疎水性シリカ粒子の表面に有するナノメートルオーダーの凹凸が撥水性樹脂を含む樹脂で覆われることを抑制し、撥水性の低下を抑制することができる。
実施の形態1の製造方法と同様に、繊維布帛に、さらに、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂膜を付与する場合は、繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を含む処理液を付与する工程の前または後、また、前記工程の後の場合には、前記処理液を付与した繊維布帛の少なくとも片面に疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する工程の前または後に、公知の乾式法、湿式法、ラミネート法などを用いて、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂膜を付与すればよい。
また、実施の形態1の製造方法と同様に、これらの工程の前および/または後にカレンダー加工を行ってもよい。カレンダー加工を行うことにより、撥水性および引裂強力を向上させたり、通気度を抑制したり、また、チョークマークの解消効果や予防効果を向上させたりできる。
さらに、実施の形態1の製造方法と同様に、これらの工程の前および/または後に、繊維布帛に対して、消臭加工、紫外線遮蔽加工、赤外線吸収加工、抗菌防臭加工、制菌加工、または、難燃加工などを施してもよい。また、撥水性樹脂を付着させる工程の前に親水加工や吸湿加工を施してもよい。
以下、本実施の形態における撥水性布帛の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例におけるA〜Cの各評価項目における各種物性などの測定および評価は、次の方法によって行った。また、実施例における「%」、「部」は、「質量%」、「質量部」である。
[A:撥水性]
JIS L1092:2009 繊維製品の防水試験方法 撥水度試験(スプレー試験)に準じて試験を行い、撥水性(撥水度)を確認した。
[B:洗濯処理]
JIS L0217 103法に準じて洗濯処理(洗濯液での処理→脱水→すすぎ洗い→脱水→すすぎ洗い→脱水)を20回行った。なお、乾燥は、洗濯処理の後(20回洗濯後)に1回だけ、吊り干しでの乾燥のみを行って、撥水性として撥水度を測定した(タンブラーを用いた乾燥を行わなかった。)
また、JIS L1092:2009 洗濯処理 ドライクリーニング処理 A法(バークロロエチレン法)にて準じてドライクリーング処理を10回行った。なお、10回とは、100分間処理(運転)し、脱液および乾燥は100分間処理後に1回のみ行った。なお、乾燥はライン乾燥とした。
[C:繊維布帛の疎水性シリカ粒子の観察]
電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、(株)日立サイエンスシステムズ製)を用い、撥水性布帛の表面および断面を5000〜10000倍で観察した。また、疎水性シリカ粒子により繊維の表面に形成される凸部の高さは、任意の10カ所の高さを測定し、平均値としたものである。
(実施例1)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸、緯糸とも22デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。)を酸性染料で赤色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満、おおよそ150nm程度の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。
また、得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
[炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含有する処理液]
ネオシードNR−158(撥水剤。炭化水素系化合物。日華化学(株)製。固形分30%)
5%
AEROSIL R972(メチル基を有する疎水性シリカ粒子。一次粒子径16nm。固形分100%)
1%
バインダー樹脂(アクリルシリコーン系樹脂。固形分15%) 0.5%
イソプロピルアルコール 5%
非イオン系界面活性剤 0.1%
ベッカミンM−3(メラミン系架橋剤。DIC(株)製。固形分80%) 0.3%
キャタリストACX(触媒。DIC(株)製) 0.05%
水 残部
(比較例1)
実施例1で用いた処理液から、疎水性シリカ粒子、バインダー樹脂および非イオン系界面活性剤を除いた以外は、実施例1と同様にして撥水性布帛を得た。
得られた撥水性布帛の繊維表面には、実施例1で見られるような凹凸は見られなかった。
また、得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
(実施例2)
炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含有する処理液からバインダー樹脂(アクリルシリコーン系樹脂)を除き、AEROSIL R972の量を0.5%にした以外は、実施例1と同様にして撥水性布帛を得た。
また、得られた撥水性布帛の繊維表面には、実施例1と同様に、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満、おおよそ150nm程度の凸部が確認された。また疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。
得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
(実施例3)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸、緯糸とも70デシテックス68フィラメント。生糸。丸型断面。)を酸性染料で赤色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満、おおよそ150nm程度の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。
また、得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
[炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含有する処理液]
ソルベンCOM−28(撥水剤。炭化水素系化合物。(株)京絹化成製。)
5%
AEROSIL R812(メチル基を有する疎水性シリカ粒子。一次粒子径7nm。固形分100%)
0.5%
ソルベン800(ポリウレタンアクリレート系架橋剤。(株)京絹化成製。)0.5%
ターペン 残部
(実施例4)
繊維布帛として、ナイロン織物(格子間隔がタテ・ヨコそれぞれ3mmのリップストップタフタ。経糸:17デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。緯糸:22デシテックス20フィラメント。タスラン加工糸。丸型断面。)を酸性染料で黒色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した。
[炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂剤を含有した処理液]
ネオシードNR−158 5%
ベッカミンM−3 0.3%
キャタリストACX 0.05%
水 残部
次に、この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
[疎水性シリカ粒子を含有した処理液]
AEROSIL R972(メチル基を有する疎水性シリカ粒子。一次粒子径16nm。固形分100%)
0.5%
トルエン 99.5%
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満、おおよそ200nm程度の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。また、実施例1、2、3に比べて、凸部はシャープな凹凸を有していた。これは、実施例3の凸部には撥水性樹脂を含めたバインダー樹脂がほとんど付着しておらず、実施例1等では凸部の少なくとも一部にバインダー樹脂が付着している部分があるのではないかと推測される。
また、得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
(実施例5)
実施例4の疎水性シリカ粒子を含有した処理液にバインダー樹脂としてパラクロンAS3000E(アクリル樹脂。根上工業(株)製。固形分30%)を1%と架橋剤としてコロネートHL(イソシアネート系架橋剤。東ソー(株)製)0.1%配合した以外は、実施例4と同様にして撥水性布帛を得た。
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満、おおよそ150nm程度の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。
また、得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
(実施例6)
実施例1で用いた繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した。
[疎水性シリカ粒子を含有した処理液]
KAYADEEPER1000(アミノ基を有する疎水性シリカ粒子。一次粒子径40〜50nm。疎水性シリカ粒子分5〜10%。日本化薬(株)製)
1.0%
水 99.0%
次に、この繊維布帛に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、170℃で60秒間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
[炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂剤を含有した処理液]
ネオシードNR−158 5%
メイカネートMF(ブロックドイソシアネート系架橋剤。固形分33%。明成化学工業(株))製)
1.0%
イソプロピルアルコール 0.05%
水 残部
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される50nm〜5μm程度の凝集体が繊維の表面に付着しており、疎水性シリカ粒子で形成された高さ1μm未満、おおよそ200nm程度の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成される凸部は、凹凸を有していたが、他の実施例に比べて、その表面は撥水性樹脂と推測されるもので覆われており、シャープさはあまりなかった。
得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表1に記載した。
また、引裂強力はタテ12.3N、ヨコ10.0N、縫目強度はタテ1.8mm、ヨコ1.6mmと良好であった。なお、引裂強力については、引裂強力 JIS L1096:2010 引裂強さ D法 ペンジュラム法に準じて試験を行って引裂強さを確認した。また、縫目強度については、縫目強力 JIS L1096:2010 滑脱抵抗力 縫目滑脱法 B法 に準じて試験を行い、荷重117.7Nによる縫目の滑りを確認した。
(実施例7〜11、比較例2)
繊維布帛として、ポリエステル織物(平織物。経糸:33デシテックス72フィラメント。生糸。丸断面。緯糸:33デシテックス72フィラメント。生糸。丸断面。)を分散染料で紺色に染色し、熱セットを行ったものを用いた以外は、実施例1〜5および比較例1と同様にして撥水性布帛を得た。
実施例7〜11で得られた撥水性布帛の繊維表面には、それぞれの製造方法に対応した実施例1〜5と同様に、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、同様に各実施例に対応した疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。また、比較例2は比較例1と同様に、実施例7で見られるような凹凸はみられなかった。
また、得られた撥水性布帛のそれぞれの性能(撥水度)を表1に記載した。
Figure 2018184692
(実施例12、13)
実施例12の繊維布帛として実施例1で用いたナイロン織物を用い、また、実施例13の繊維布帛として実施例7で用いたポリエステル織物を用いた。
これらの繊維布帛に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した。
[シリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を含有した処理液]
ライトシリコーンP−290E(撥水剤。シリコーン系化合物。北広ケミカル(株)製、固形分55%) 5%
F−12E(触媒。脂肪族カルボン酸塩。北広ケミカル(株)。固形分15%) 5%
ベッカミンM−3 0.3%
キャタリストACX 0.05%
水 残部
次に、この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
[疎水性シリカ粒子を含有した処理液]
AEROSIL R972(メチル基を有する疎水性シリカ粒子。一次粒子径16nm。固形分100%)
1.0%イソプロピルアルコール 99.0%
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカ粒子により形成された、高さ1μm未満、おおよそ200nm程度の凸部が確認された。また、疎水性シリカ粒子により形成された凸部は、疎水性シリカの一次粒子や一次凝集体で形成されたと推測される微細な凹凸を有していた。また、実施例1、2、3に比べ、凸部はシャープな凹凸を有していた。
また、得られた撥水性布帛の性能(撥水度)を表2に記載した。
(比較例3、4)
疎水性シリカを含有した処理液での処理を行わなかった以外は、実施例12、13と同様にし、撥水性布帛を得た。
また、得られた布帛の性能(撥水度)を表2に記載した。
Figure 2018184692
表1に示すように、実施例1と比較例1とを比べると、JIS L1092:2009 繊維製品の防水試験方法 撥水度試験(スプレー試験)に準じた判定では、いずれも同様の4級であったが、比較例1の撥水性布帛はようやく4級を満たしているものであったが、実施例1の撥水性布帛はかるく4級の条件を満たしていた。また、試験時の水のはじき具合では、実施例1の撥水性布帛は水が玉のようにはじかれており、比較例1に比べ優れていた。したがって、撥水性の観点では実施例1の撥水性布帛が比較例1の撥水性布帛に比べて優れていることが確認された。
また、表1および表2に示すように、他の実施例においても比較例と比べて水のはじきとの観点からはJISの等級にはあらわれない優れたものであった。
(実施例14)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸:22デシテックス20フィラメント、仮撚り加工糸。緯糸:22デシテックス20フィラメント、生糸)を酸性染料で黒色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛に下記の処理液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、170℃で60秒間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
[炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂とシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子を含有する処理液]
ネオシードNR−8000(撥水剤。シリコーン系化合物および疎水性シリカ粒子。疎水性シリカ粒子分10%)
3.0%
ネオシードNR−158 5.0%
メイカネートMF(ブロックドイソシアネート。固形分33%。明成化学工業(株)製)
1.0%
スノーテックス0(コロイダルシリカ。親水性シリカ粒子分20%。日産化学工業(株)製)
0.3%
イソプロピルアルコール 0.5%
水 残部
得られた撥水性布帛の繊維表面には、疎水性シリカ粒子や親水性シリカ粒子の一次凝集体や二次凝集体の上を樹脂で厚く覆ったと思われる形成されたと推測される50nm〜5μm程度の緩やかな凹凸が見られた。実施例6と比べてその表面は撥水性樹脂と推測されるもので覆われており、シャープさはなかった。
また、得られた撥水性布帛の洗濯前の撥水性は5級、20回洗濯後の撥水性は4級、10回ドライクリーニング処理後は4級であった。
また、得られた撥水性布帛は、引裂強力が、タテ6.7N、ヨコ7.5Nで、縫目強度が、タテ1.4mm、ヨコ2.3mmであり、良好な強度を有することが分かった。
(実施例15)
繊維布帛として、ポリエステル織物(経糸、緯糸とも84デシテックス72フィラメント。仮撚り加工糸)を分散染料で青色に染色し、熱セットを行ったものを用いた以外は実施例14と同様にして撥水性布帛を得た。
得られた撥水性布帛の洗濯前の撥水性は5級、20回洗濯後の撥水性は3級、10回ドライクリーニング処理後は4級であった。
また、得られた撥水性布帛は、引裂強力が、タテ16.2N、ヨコ13.7Nで、縫目強度が、タテ1.9mm、ヨコ1.5mmであり、良好な強度を有することが分かった。
また、疎水性シリカ粒子や親水性シリカ粒の付着状態は、実施例14で得られた撥水性布帛とほぼ同等であった。

Claims (6)

  1. 繊維布帛の少なくとも片面を構成している繊維の表面に、炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子とが付着していることを特徴とする撥水性布帛。
  2. 前記疎水性シリカ粒子により前記繊維の表面に凸部が形成され、当該凸部の高さが1μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性布帛。
  3. 前記疎水性シリカ粒子の表面を構成するシリカが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、クロロジメチル基、ジクロロジメチル基、クロロシラン基、ジクロロシラン基、および、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性布帛。
  4. JIS L1092:2009 繊維製品の防水試験方法 撥水度試験(スプレー試験)での撥水度が5級であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水性布帛。
  5. 繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂と疎水性シリカ粒子とを含む処理液を付与する工程と、前記処理液を付与した繊維布帛を熱処理する工程とを含む撥水性布帛の製造方法。
  6. 繊維布帛の少なくとも片面に炭化水素系化合物および/またはシリコーン系化合物を含有する撥水性樹脂を含む処理液を付与する工程と、前記処理液を付与した繊維布帛の少なくとも片面に疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与する工程と、前記疎水性シリカ粒子を含む処理液を付与した繊維布帛を熱処理する工程とを含む撥水性布帛の製造方法。
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