JP2017145521A - 撥水性布帛およびその製造方法 - Google Patents

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順正 金法
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宏介 富樫
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Konosuke Uozumi
幸之助 魚住
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裕香 浜口
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Abstract

【課題】環境に対する懸念が少ない非フッ素系撥水剤を付与された繊維布帛でありながら、優れた撥水性や引裂強力、縫目強力を有する撥水性布帛を提供する。【解決手段】繊維布帛の繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂が付着した撥水性布帛であって、前記繊維布帛の目付が10〜100g/m2であり、前記撥水性布帛は、JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法によるタテ方向及びヨコ方向の引裂強さが6N以上であり、JIS L1096:2010 B法 荷重49.0Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3mm以下であり、JIS L1092:2009 スプレー試験で撥水度が3級以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、撥水性を有する撥水性布帛およびその製造方法に関する。
撥水性を有する撥水性布帛は、繊維布帛に撥水性を付与することによって得られる。このような撥水性布帛は、カッパ、コート、ウインドブレーカー、スキーウエアー、水着、傘、鞄、靴、帽子などの様々な繊維製品に用いられている。
繊維布帛に撥水性を付与するには、例えば、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤、または、炭化水素系撥水剤等の撥水剤が用いられる。撥水剤の中でも、特に、フッ素系撥水剤は、優れた撥水性および撥油性を有するだけではなく、洗濯などに対する撥水性および撥油性の耐久性を有しているため、様々な繊維製品に広く用いられている。
近年、一般的に用いられている炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系撥水剤(C8フッ素系撥水剤)は、環境に影響を及ぼす可能性のあるパーフルオロオクタン酸が含まれているといわれているので、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系撥水剤(C6フッ素系撥水剤)が使用され始めている。
また、さらに環境への関心が高まる中で、フッ素を用いたフッ素系撥水剤を使用しない撥水剤の要望が高まってきている。
フッ素系撥水剤を使用しない撥水剤(非フッ素系撥水剤)としては、シリコン系撥水剤またはパラフィンなどを用いた炭化水素系撥水剤が知られているが、シリコン系撥水剤または炭化水素系撥水剤は、C6フッ素系撥水剤に比べ、撥水性および撥油性に劣る。
また、薄地の織物は、一般衣服およびスポーツ用衣服をはじめとして、綿やダウンなどの中綿を有する衣服や布団側地、ダウンパックなどに使用されており、衣服の軽量化の流れにも沿って、より薄く、軽い繊維布帛が開発されている。
しかしながら、このような薄地の織物は引裂強力が弱いことが知られており、繊維の繊度を制限したり、織物の密度や目付を制限したり、シリコン系化合物を付与することによって引裂強力を向上させたりといったことが検討されている(特許文献1、特許文献2)。
特開2005−48298号公報 特開2008−101295号公報
上記のような状況のもと、撥水性が必要な衣服等の繊維製品を得るために、薄地織物にシリコン系撥水剤やパラフィン系撥水剤を付与したものは、フッ素系撥水剤を付与した薄地織物に比べて、薄地織物を構成する糸が滑りやすくなるため、小さな力で縫目の部分の糸が滑り、衣服等の繊維製品として実用的なレベルの縫目強度を維持することできないという問題が生じてきた。
そこで、縫目の強度を上げるため、薄地織物に付与するシリコン系撥水剤やパラフィン系撥水剤の付与量を減らすことが考えられるが、シリコン系撥水剤やパラフィン系撥水剤はフッ素系撥水剤に比べて撥水性能が低いので、シリコン系撥水剤やパラフィン系撥水剤の付与量を減らすと、十分な撥水性が発揮できなくなるという問題がある。また、シリコン系撥水剤やパラフィン系撥水剤の付与量を減らすと、シリコン系化合物やパラフィン系化合物の付与効果(糸の滑り効果)にて維持していた引裂強力の実用的なレベルの強度も維持できなくなるという問題がある。
本発明では、上記の課題を解決するものであり、環境に対する懸念が少ない非フッ素系撥水剤を付与された繊維布帛でありながら、優れた撥水性や引裂強力、縫目強力を有する撥水性布帛を提供することを目的としている。
なお、上記において「シリコン系撥水剤」および「シリコン系化合物」とは、特許文献1等に合わせた記載表現であり、より明確には「シリコーン系化合物」等である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明をするに至った。
(1)本発明に係る撥水性布帛は、繊維布帛の繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂が付着した撥水性布帛であって、前記繊維布帛の目付が10〜100g/mであり、前記撥水性布帛は、JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法によるタテ方向及びヨコ方向の引裂強さが6N以上であり、JIS L1096:2010 B法 荷重49.0Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3mm以下であり、JIS L1092:2009 スプレー試験で撥水度が3級以上である。
(2)さらに、本発明に係る撥水性布帛において、前記撥水性布帛は、JIS L0217 103法にて10回洗濯後の撥水度が2級以上であるとよい。
(3)さらに、本発明に係る撥水性布帛において、前記繊維布帛を構成する糸状の繊度は45dtex以下であるとよい。
(4)さらに、本発明に係る撥水性布帛において、JIS L1096:2009 A法 フラジール形法による通気性は1.5cm/cm・s以下であるとよい。
(5)さらに、本発明に係る繊維製品は、上記いずれかの撥水性布帛を少なくとも一部に用いた、衣服、鞄、テント、寝袋およびダウンパックからなる群より選択される繊維製品である。
(6)また、本発明に係る撥水性布帛の製造方法は、炭化水素系化合物によって構成された撥水剤と水溶性高分子とを含有する樹脂液を繊維布帛に付与し、熱処理し、前記繊維布帛の繊維の表面に撥水性樹脂を付着させる工程を有する。
(7)さらに、本発明に係る撥水性布帛の製造方法において、前記水溶性高分子はアニオン系化合物であるとよい。
(8)さらに、本発明に係る撥水性布帛の製造方法において、前記樹脂液のpHは7未満であるとよい。
(9)さらに、本発明に係る撥水性布帛の製造方法において、前記水溶性高分子が、ポリフェノール、ポリスルホン酸、ポリ硫酸エステル、ポリカルボン酸、ポリリン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を含むとよい。
本発明によれば、炭化水素系化合物を含む撥水剤を用いて加工されたものでありながら、優れた撥水性を有し、かつ、引裂強力(引張強さ)および縫目強力(縫目強さ)とも衣服等として実用に耐えうる性能を有する撥水性布帛を得ることができる。
したがって、本発明に係る撥水性布帛を用いることにより、より環境に配慮した撥水性を有する衣服等の繊維製品を提供することができる。
<繊維布帛>
本実施の形態に係る撥水性布帛は、繊維布帛の繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂が付着した撥水性布帛であって、繊維布帛の目付が10〜100g/mであり、得られる撥水性布帛は、JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法によるタテ方向及びヨコ方向の引裂強さが6N以上であり、JIS L1096:2010 B法 荷重49.0Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3mm以下であり、JIS L1092:2009 スプレー試験で撥水度が3級以上である。
本実施の形態における撥水性布帛に用いられる繊維布帛を構成する有用な繊維の素材としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、または、アセテートやビスコースなどのレーヨンなどがあり、さらに、これらの他に、ポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミドまたはポリフェニレンサルファイドなどの化学繊維、綿、麻、絹または羊毛などの天然繊維、あるいは、これらの素材の混繊、混紡、交織または交編品を用いることができ、特に限定されるものではない。これらの中でも、繊維の素材としては、ポリエステル、ナイロンを含むものが好ましい。
また、繊維布帛を構成する繊維は、長繊維および短繊維いずれであってもよい。また、この繊維を用いた糸は、生糸、撚糸および加工糸のいずれであってもよい。加工糸についても特に限定されるものではなく、仮撚加工糸(ウーリー加工糸、DTY、改良仮撚加工糸など)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などを用いることができる。なお、繊維表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂を多く付着させて撥水性を高めるとの観点および引裂強力の向上の観点からは、加工糸を用いることが好ましい。
また、繊維の断面形状についても、特に限定されるものではなく、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドッグボーンなどが挙げられる。なお、繊維表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂を多く付着させて撥水性を高めるとの観点および通気度を小さくして中綿の抜け防止性の向上の観点からは、繊維の断面形状は、三角、星形、扁平、または、ドッグボーンなどであることが好ましい。つまり、異形断面糸を用いることが好ましい。
本実施の形態では、特に、撥水性、引裂強度および縫目強度が悪化しやすい生糸を用いたものや、繊維の断面形状が丸型であるものを用いたものであっても、撥水性、引裂強度および縫目強度について実用に耐えうる性能を有する繊維布帛を得ることができる。
本実施の形態で用いられる繊維布帛は、織物、編物または不織布など、いかなる形態であってもよく、引裂強力および縫目強力が低下しやすい織物であっても用いることが可能である。
また、織物の組織は、平織、綾織、朱子織、変わり織物等に限定されるものではないが、引裂強力の向上の観点からは、リップストップ組織であることが好ましい。また、編物の組織も、経編、経編等に限定されるものではない。
また、これらの繊維布帛は、あらかじめ着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。繊維布帛をあらかじめ着色する場合には、分散染料、カチオン染料、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、または、硫化染料などの染料、あるいは、蛍光増白剤、または、顔料などを用いて着色することができる。また、酸性染料を用いてナイロンを染色した場合に実施されている合成タンニン等を用いてのフィックス処理など、通常着色時に行われている各種処理を行ってもよい。なお、繊維布帛を着色するために用いられる材料は、これらのものに特に限定されるものではなく、各繊維布帛の素材に合わせて適切なものを選択すればよい。
また、着色方法は、原着、浸染、または、捺染などの方法があり、特に限定されるものではない。
また、繊維布帛には、所期の目的を逸脱しない限りにおいて、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、または、吸水加工などが施されていてもよい。
繊維布帛を構成する糸状の繊度は特に限定されるものではないが、撥水性、引裂強力および縫目強力がバランスよく性能を発揮するとの観点からは、薄地の繊維布帛としては45dtex以下であることが好ましい。具体的には、繊維布帛を構成する糸状の繊度は、35dtex、25dtexとすることができる。また、下限についても特に限定されるものではないが、繊維布帛を構成する糸状の繊度は、7dtex以上であることが好ましく、撥水性、引裂強力および縫目強力がバランスよく性能を発揮するとの観点からは、15dtex以上であることが好ましい。
また、本実施の形態における撥水性布帛を構成する繊維布帛が織物である場合、カバーファクターは1300〜2000であるとよい。カバーファクター(CF)は、糸状の繊度と織物の密度とによって求めることができ、以下の式(1)で表すことができる。
CF=T×DT1/2+W×DW1/2・・・・・・・(1)
なお、式(1)において、Tは、織物のタテ密度(本/2.54cm)、Wは、ヨコ密度(本/2.54cm)、DTは、タテ糸の繊度(dtex)、DWは、ヨコ糸の繊度(dtex)である。
また、本実施の形態における撥水性布帛を構成する繊維布帛の目付は、10〜100g/mである。繊維布帛の目付が上限値(100g/m)を超えると、撥水性布帛が重くなり、得られる衣服等の繊維製品も軽量ではなくなる。また、繊維布帛の目付が上記下限値(10g/m)を下回ると、引裂強力および縫目強力とも目的とする強度が得られないおそれがある。より軽量で、引裂強力、縫目強力、中綿抜け防止性および通気性が実用レベルの性能を有するとの観点からは、繊維布帛の目付は、20〜60g/mがよく、より好ましくは、25〜50g/mであるとよい。
本実施の形態における撥水性布帛を構成する繊維布帛の繊維の表面には、炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂が付着している。
炭化水素系化合物としては、撥水性樹脂として繊維の表面に付着できるものであれば、特に限定されるものではなく、特開2015−120895号公報、特開2015−120894号公報、特開2015−120893号公報、特開2015−40365号公報、特開2015−3445号公報、特開2014−1252号公報、特開2006−328624号公報などに開示されたものが挙げられる。炭化水素系化合物は、好ましくは繊維表面を覆うように被膜を形成するものであることが好ましい。
具体的には、炭化水素系化合物として、脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、オレフィン、ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルなどを用いることができる。
この場合、脂肪族系炭化水素としては、パラフィン系炭化水素またはオレフィン系炭化水素などの脂肪族系炭化水素が挙げられる。
また、脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸であってもよいし、脂肪族カルボン酸のエステル化合物であってもよい。脂肪族カルボン酸の炭素数としては12以上が好ましい。
また、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。
また、ポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルとしては、エステル結合を介して存在する炭化水素の炭素数が12以上、24以下のものを用いるとよい。この場合、炭化水素は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、あるいは、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、さらには、脂環式または芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、さらに、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。
また、これらの撥水性樹脂となる炭化水素系化合物としては、ネオシードNR90(日華化学(株)製)、NR−158(日華化学(株)製)、TH−44(日華化学(株)製)、PW−182(大和化学(株)製)、ファボールRSH(ハンツマン・ジャパン(株)製)、パラヂウムECO−500(大原パラヂウム化学(株)製)、パラヂウムECO−85A(大原パラヂウム化学(株)製)、NX018((株)ナノテックス製)、メイシードP−300C(明成化学工業(株)製)、NT−X028(Nanotex,LLC.製)、miDori evoPel NF(Beyond Surface Technologies AG製)、XF−5001(ダイキン工業(株)製)などが市販されている。
また、本実施の形態における撥水性布帛は、その製造工程において繊維布帛を構成する繊維の表面に水溶性高分子も付与されている。このように、水溶性高分子を用いることにより、撥水性、引裂強力および縫目強力に優れた撥水性布帛を得ることができる。
この場合、水溶性高分子は、アニオン系化合物であることが好ましい。より具体的には、水溶性高分子は、ポリフェノール、ポリスルホン酸、ポリ硫酸エステル、ポリカルボン酸、ポリリン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を含むものであることが好ましく、また、高分子を水溶性とするため、これらの塩であることが好ましく、特にナトリウム塩であることが好ましい。
撥水性、引裂強力および縫目強力の観点から特に好ましくは、水溶性高分子はポリカルボン酸塩であるとよく、例えば、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸単量体との共重合の塩、または、カボキシメチルセルロースなどである。
水溶性高分子を用いたときに、どのような理由で、撥水性、引裂強力および縫目強力に優れた撥水性布帛が得られるのかは定かではないが、水溶性高分子が繊維布帛を構成する繊維の表面に吸着して繊維表面がアニオン化し、その表面にカチオン系の撥水剤としての炭化水素系化合物が繊維表面に吸着することで強固な撥水性樹脂被膜が形成されているのか、若しくは、水溶性高分子と撥水剤としての炭化水素系化合物が結合することで繊維と強固に結合する撥水性樹脂被膜が形成されているのか、若しくは、樹脂液中の炭化水素系化合物の分散が水溶性高分子によって促進され、凝集が抑制された炭化水素系化合物が繊維表面に均一にいきわたって強固な撥水性樹脂被膜が形成されているのか、あるいは、これらのことが複合して生じているのではないか、などと想定している。
なお、本実施の形態における撥水性布帛の好ましい製造方法については、後に説明するが、炭化水素系化合物と水溶性高分子とを付与する方法については、炭化水素系化合物と水溶性高分子とを同時に含む樹脂液で繊維布帛に付与してもよいし、水溶性高分子を含む樹脂液で繊維布帛を処理した後に炭化水素系化合物を含む樹脂で処理してもよい。
繊維布帛の繊維の表面に付着した撥水性樹脂被膜の厚みは、1μm以下がよく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。なお、撥水性樹脂被膜の厚みが100nm以下の場合、人が撥水性樹脂被膜を確認することが難しい。このため、撥水性布帛に対して撥水性の試験を行って撥水性が2級以上であれば、撥水性布帛が撥水性樹脂被膜を有しているとみなす。
なお、繊維布帛を構成する繊維の糸と糸の間または繊維と繊維の間の一部に撥水性樹脂が溜り、撥水性樹脂が1μm以上の厚みになることがあるが、本発明の所期の目的を達成することができれば、このような箇所が存在していてもよい。
また、繊維布帛への撥水性樹脂の付着量は、繊維布帛100g当たり0.01g〜10gがよく、より好ましくは0.05g〜5gがよい。撥水性樹脂の付着量が上限(10g)を超えると、十分な引裂強力や縫目強力が得られないおそれがあるとともにチョークマークが発生するおそれがある。
本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1092:2009 はっ水度試験(スプレー試験)での撥水度が3級以上であり、好ましくは4級以上、より好ましくは5級であるとよい。
さらに、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L0217 103法にて10回洗濯後の撥水度が2級以上であるとよい。10回洗濯後の撥水度が2級であれば、当該撥水性布帛を用いて得られた繊維製品が洗濯を行うものであっても、優れた撥水性を維持できる。これにより、種々の繊維製品に用いることのできる撥水性布帛が得られる。
なお、洗濯時には撥水性布帛同士が擦り合わされるため、洗濯に対する耐久性を有するものは、摩耗性に対する耐久性の目安ともすることができる。また、洗濯処理を行った場合の撥水度は、タンブラーを用いた乾燥後(「JIS L1092:2009」の「6.2.2 ドライクリーニング処理」における「c)」の「4) タンブル乾燥」に準じたもの)の撥水度のことをいう。つまり、撥水性布帛は、50℃〜70℃程度の加熱乾燥後の撥水度が2級以上であるとよい。また、より好ましくは、タンブラーを用いた乾燥は行わず、つり乾燥後の撥水度が2級以上であるとよい。
さらに、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法によるタテ方向及びヨコ方向の引裂強さが6N以上である。引裂強さが6N以上であれば、実用的な強度を有するものを得ることができ、撥水性布帛を衣服等に用いることができる。なお、撥水性布帛をスポーツ用の衣服に用いる場合、上記引裂強さは8N以上が好ましい。
さらに、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1096:2010 B法 荷重49.0Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3.0mm以下である。撥水性布帛をブラウス等の薄地の織物に用いる場合、荷重49.0Nによる縫目の滑りが3.0mm以下であれば実用上の性能を有する。より好ましくは、撥水性布帛は、荷重117.7Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3.0mm以下であるとよい。JIS規格によれば荷重117.7Nはスラックスなどの厚地用の荷重ではあるが、荷重117.7Nによる縫目の滑りが3.0mm以下の撥水性布帛であれば、ジャンパーや作業服などの外衣に用いても十分実用的な強度を有している。なお、撥水性布帛をスポーツ用の衣服に用いる場合、縫目の滑りは2.5mm以下であることが好ましい。
また、本実施の形態における撥水性布帛は、JIS L1096:2009 A法 フラジール形法による通気性が10cm/cm・s以下であるとよい。通気性が10cm/cm・s以下であれば、撥水性布帛を衣服等に用いた場合、風の通過を抑制し、保温性を発揮することができる。
また、通気性は、1.5cm/cm・s以下であることがより好ましい。通気性が1.5cm/cm・s以下であれば、ダウンジャケットやダウンパックや布団の側地として、内部に綿やダウン等の中綿を用いる用途で撥水性布帛を用いた場合に、中綿の抜けを防止することができる。より好ましくは、通気性は、1.0cm/cm・s以下であるとよい。
また、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲で、本実施の形態に用いられる繊維布帛の繊維の表面には、縫目強力の向上やスナッグの発生を防止するために、シリカなどの無機粒子が付着していることが好ましい。さらにまた、同様に本実施の形態に用いられる繊維布帛の繊維の表面には、塩酸グアニジンや高級アルコール硫酸エステル塩、アミン塩、ポリエチレングリコール型、ベタイン型界面活性剤等の帯電防止剤、または、他の仕上げ剤や機能薬剤などが付着していてもよい。
なお、同様に所期の目的を逸脱しない範囲で引裂強力の向上のために繊維布帛にはシリコーン系化合物が含まれていてもよいが、撥水性、引裂強力、縫目強力のバランスが崩れるおそれがあるため、シリコーン系化合物は含まれていない方がよい。
また、本実施の形態における撥水性布帛は、さらに繊維布帛の片面に中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂皮膜を有していてもよい。また、当該樹脂皮膜は、防水性に加え、透湿性を有していてもよい。
中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂皮膜としては、ウレタン樹脂皮膜、ポリテトラフルオロエチレン皮膜、ポリエステル樹脂皮膜、アクリル樹脂皮膜、シリコーン樹脂皮膜、または、ナイロン樹脂皮膜などがあげられる。また、これらの中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜は、多孔質であってもよいし、無孔質であってもよい。
このような樹脂皮膜の厚みは、目的とする中綿抜け防止性、防風性および/または防水性に応じて任意に設定することができるが、風合いの観点からは、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有し、かつ、通気性も必要な場合には、当該樹脂皮膜を多孔質膜にしたり、当該樹脂皮膜を有する面の一部に当該樹脂皮膜が存在しない個所を有するものにしたりすればよい。なお、樹脂皮膜が存在しない個所とは、たとえば、織物では経糸と緯糸の重なり合った凸部や編物のループ同士が重なった凸部などの全部または一部、これらの凸部とは反対に凹部の全部または一部、または、当該樹脂皮膜に形成された貫通孔などが挙げられる。
また、本実施の形態における撥水性布帛が防水性を必要とする場合、耐水圧は、JIS L1092 耐水度試験(静水圧法)A法(低水圧法)にて測定したもので、耐水圧が250mm以上であるとよい。耐水圧は、より好ましくは350mm以上、さらに好ましくは1000mm以上、さらにより好ましくは2000mm以上であるとよい。耐水圧が250mm以上であれば、雨傘用やレインコート用の素材として用いることができ、雨の衣服内への浸入を抑え、日常使用される繊維製品の防水素材として用いることができる。また、耐水圧が2000mm以上であれば、カッパ、スキーウエアーなどの素材として用いることができる。また、山岳用途やライダー用レインウエアー用途として撥水性布帛を用いる場合、耐水圧は、JIS L1092 耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)にて測定したもので、100kPa以上であるとよい。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、触媒、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、撥水剤、柔軟剤、二酸化ケイ素などの耐水性向上剤、顔料、または、赤外線吸収剤などが添加されていてもよい。
本実施の形態における撥水性布帛は、非フッ素系撥水剤を用いた軽量な布帛でありながら、衣服等として使用するのに可能な、撥水性、引裂強力および縫目強力を有するため、一般衣服やスポーツ用衣服等に用いることができる。
また、撥水性布帛の通気性が1.5cm/cm・s以下であれば、さらにダウンなどの中綿を用いるダウンジャケットや布団、寝袋、ダウンパックの側地等として用いることができる。
<繊維製品>
本実施の形態における繊維製品は、前記の撥水性布帛を少なくとも一部に用いたものであり、たとえば、コート、ジャケット、ジャンパー、ダウンウエアー、帽子、手袋、スキーウエアー、ウインドブレーカー、作業着などの衣服、鞄、テント、寝袋およびダウンパックからなる群より選択された繊維製品である。
本実施の形態の繊維製品は、前記の撥水性布帛を用いたものであるので、実着用に必要な前記の種々の強度や性能を有しており、しかも、軽くて風合いも柔らかく、また、ファッション性および機能性に優れた繊維製品である。
<撥水性布帛の製造方法>
以下に、本実施の形態に係る撥水性布帛の製造方法について説明する。なお、既に説明した内容については、一部説明を省略または簡略化する。
本実施の形態における撥水性布帛の製造方法は、炭化水素系化合物によって構成された撥水剤と水溶性高分子とを含有する樹脂液を繊維布帛に付与し、熱処理し、この繊維布帛の表面に撥水性樹脂を付着させる工程を含む。
本実施の形態における撥水性布帛の製造方法に用いられる繊維布帛としては、上述したものを用いることができる。
また、樹脂液は、上述した撥水剤としての炭化水素系化合物と溶媒(分散媒も含め溶媒という。)とを含むものである。
また、樹脂液は水溶性高分子を含んでいる。水溶性高分子は、アニオン系化合物であるとことが好ましい。
より具体的には、水溶性高分子は、ポリフェノール、ポリスルホン酸、ポリ硫酸エステル、ポリカルボン酸、ポリリン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を含むとよい。このうち、高分子を水溶性とするために塩であることが好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
撥水性、引裂強力および縫目強力の観点から、水溶性高分子として特に好ましくは、ポリカルボン酸塩がよい。ポリカルボン酸塩としては、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸単量体との共重合の塩、カボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
このように、撥水性能のレベルが低い炭化水素系化合物を含む撥水剤を付与する場合であっても、炭化水素系化合物の撥水剤に加えて水溶性高分子をも含む樹脂液を繊維布帛に付与することにより、水溶性高分子を含む樹脂液を付与しない場合と比べて、得られる撥水性布帛の撥水性を向上させることができる。
また、炭化水素系化合物を含む撥水剤は、撥水性のレベルが低いだけではなく、繊維布帛の縫目強力を低下させ縫目ずれを誘発させるおそれがある。このため、特に撥水性布帛に薄地の織物を用いると、実用的なレベルの引裂強力および縫目強度を維持することができないというリスクが高まる。しかしながら、本実施の形態のように、炭化水素系化合物の撥水剤に加えて水溶性高分子をも含む樹脂液を用いることにより、引裂強力および縫目強力のすべてを実用上問題のないレベルの性能を有する薄地の撥水性布帛を得ることができる。
以上のように、本実施の形態における撥水性布帛の製造方法によれば、炭化水素系化合物の撥水剤とともに水溶性高分子を併用することによって、炭化水素系化合物を含む撥水剤を用いて加工されたものでありながら、優れた撥水性を有し、かつ、引裂強力(引張強さ)および縫目強力(縫目強さ)にも優れた撥水性布帛を得ることができる。その理由は、上記にて記載した理由を想定している。
樹脂液に用いられる溶媒としては、少なくとも水を含み、さらに、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、または、イソブチルアルコールなどが配合されたものであってもよい。
また、樹脂液は、炭化水素系化合物等が溶媒に溶けた溶液(溶媒が水の場合には水溶液)であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、分散液であってもよい。
また、樹脂液のpHは7未満であることが好ましい。樹脂液をpHが7未満の酸性にしておくことにより、付与する水溶性高分子の水への溶解性が高まり、撥水剤としての炭化水素系化合物と水溶性高分子とを含有する樹脂液が安定し、撥水性、引裂強力および縫目強力等の性能が安定した撥水性布帛を得ることができる。
また、樹脂液には、架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、引裂強力向上のためのシリカ等の粒子や他の目的での無機粒子、または、有機粒子などが含まれていてもよい。なお、シリコーン系化合物は、得られる撥水性布帛の柔軟化とともに引裂強力の向上が期待できるため、所期の目的を逸脱しない範囲で樹脂液に含まれていてもよいが、撥水性、引裂強力および縫目強力のバランスが崩れるおそれがあるため、シリコーン系化合物は樹脂液に含まれていない方がよい。
特に、撥水性等の性能の耐久性向上の観点からは、樹脂液は架橋剤を含むものが好ましい。架橋剤としては、たとえば、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、または、グリオキザール系架橋剤等を用いることができる。
繊維布帛への炭化水素系化合物を含有する樹脂液を繊維布帛に付与する方法は、ディップ−ニップ法、グラビア転写法、または、スプレー法などの公知の方法を用いることができる。生産性や加工の安定性の観点からは、ディップ−ニップ法によって繊維布帛に樹脂液を付与するとよい。
炭化水素系化合物からなる撥水剤と水溶性高分子とを含有する樹脂液を繊維布帛に付与した後は、熱処理を行うことで、繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂を付着させる。
この熱処理の条件は、繊維布帛の素材や炭化水素系化合物を含有する樹脂液に含まれる化合物の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、135℃〜210℃程度で10秒から10分程度の熱処理を行うとよい。
また、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。この場合、乾燥は、熱処理よりも低温度で行うとよく、たとえば、60℃〜135℃程度で10秒〜10分程度行えばよい。熱処理の温度に比べて低温の乾燥を熱処理の前に行うことにより、繊維の表面により均一な撥水性樹脂皮膜を形成することができる。
樹脂液中の炭化水素系化合物の配合量は、好ましくは0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.1質量%〜5質量%であるとよい。炭化水素系化合物の配合量が下限値(0.01質量%)を下回ると十分な撥水性を得ることができないおそれがある。一方、炭化水素系化合物の配合量が上限値(10質量%)を上回ると十分な縫目強力を得ることができないおそれがある。
また、樹脂液中の水溶性高分子の配合量は、0.001質量%〜1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003質量%〜0.5質量%であるとよい。水溶性高分子の配合量が上限値(1.5質量%)を上回ると樹脂液の安定性が低下してしまったり、得られる撥水性布帛の風合いが硬化してしまったりするおそれがある。一方、水溶性高分子の配合量が下限値(0.001質量%)を下回ると、目的とする撥水性、引裂強力および縫目強力が得られないおそれがある。
繊維布帛に、さらに、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂膜を付与する場合は、繊維布帛の繊維の表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前または後に、公知の乾式法、湿式法、ラミネート法などを用いて、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂膜を付与すればよい。
また、繊維表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前および/または後にカレンダー加工を行ってもよい。カレンダー加工を行うことにより、撥水性および引裂強力を向上させたり、通気度を抑制したり、また、チョークマークの解消効果や予防効果を向上させたりできる。
さらに、繊維の表面に撥水性樹脂を付着させる工程の前および/または後に、繊維布帛に対して、消臭加工、紫外線遮蔽加工、赤外線吸収加工、抗菌防臭加工、制菌加工、または、難燃加工などを施してもよい。
以下、本実施の形態における撥水性布帛の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例におけるA〜Gの各評価項目における各種物性などの測定および評価は、次の方法によって行った。また、実施例における「%」、「部」は、「質量%」、「質量部」である。
[A:撥水性]
JIS L1092:2009 はっ水度試験 スプレー法に準じて試験を行い、撥水性を確認した。
[B:引裂強力]
JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法に準じて試験を行い、引裂強さを確認した。
[C:縫目強力]
JIS L1096:2010 B法 に準じて試験を行い、荷重49.0Nによる縫目の滑りを確認し、縫目が3mm以下のものは、荷重117.7Nによる縫目の滑りを確認した。
[D:通気性]
JIS L1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて試験を行い、通気度測定し、防風性と通気性を確認した。
[E:目付]
繊維布帛を100cmにカットし、天秤を用いて質量を量り、1m当たりの質量に換算した。
[F:風合い]
得られた撥水性布帛を手で触って確認した。
[G:洗濯処理]
JIS L0217 103法に準じて洗濯処理(洗濯液での処理→脱水→すすぎ洗い→脱水→すすぎ洗い→脱水)を10回行った。なお、乾燥は、10回の洗濯処理の後に、タンブラーを用いた乾燥を1回のみ行って撥水性を測定したものを「撥水(洗濯後1)」とし、タンブラーを用いた乾燥を行わずに、吊り干しでの乾燥のみを行って撥水性を測定したものを「撥水(洗濯後2)」とした。
なお、タンブラーを用いた乾燥は、「JIS L1092:2009」の「6.2.2 ドライクリーニング処理」における「c)」の「4) タンブル乾燥」に準じて行った。
(実施例1)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸、緯糸とも22デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。)を酸性染料で赤色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行った。
次に、カレンダー加工を施して、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。
[炭化水素系化合物の撥水剤と水溶性高分子を含有する樹脂液]
ネオシードNR−158(撥水剤。炭化水素系化合物。日華化学(株)製。固形分30%)
5%
水溶性高分子(アニオン系化合物。ポリカルボン酸のナトリウム塩。固形分5%)
0.5%
ベッカミンM−3(メラミン系架橋剤。DIC(株)製。固形分80%) 0.3%
キャタリストACX(触媒。DIC(株)製) 0.05%
水 残部
(比較例1)
実施例1で用いた樹脂液から水溶性高分子を除いた以外は、実施例1と同様にして撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の性能を表1に記載した。
(比較例2)
実施例1で用いた樹脂液から水溶性高分子を除いて、縫目強力向上剤として、シリカ粒子の水分散液(固形分15%)を1%添加した以外は、実施例1と同様にして撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の性能を表1に記載した。
(比較例3)
実施例1で用いた樹脂液から水溶性高分子を除いて、引裂強度向上剤として、シリコーン系柔軟剤:ニッカシリコンN−154(シリコーンオイル、多価アルコール脂肪酸エステルの乳化物。固形分15%)を1%添加した以外は、実施例1と同様にして撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の性能を表1に記載した。
(実施例2)
繊維布帛として、ナイロン織物(格子間隔がタテ・ヨコそれぞれ3mmのリップストップタフタ。経糸:22デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。緯糸:22デシテックス24フィラメント。生糸。三角断面)を酸性染料で赤色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行った。
次に、カレンダー加工を施して、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。
[撥水剤として炭化水素系化合物、水溶性高分子を含有する樹脂液]
ネオシードNR−158 5%
水溶性高分子(アニオン系化合物。ポリカルボン酸のナトリウム塩。固形分5%)
0.3%
アクアネート100(イソシアネート系架橋剤。日本ポリウレタン工業(株)。固形分100%) 0.3%
水 残部
(実施例3)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸:22デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。緯糸:22デシテックス20フィラメント。タスラン加工糸。丸型断面。)を酸性染料で黒色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行った。
次に、カレンダー加工を施して、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。
[炭化水素系化合物の撥水剤と水溶性高分子を含有する樹脂液]
ネオシードNR−158 5%
水溶性高分子(アニオン系化合物。ポリカルボン酸のナトリウム塩。固形分5%)
0.3%
アクアネート100 0.2%
ベッカミンM−3 0.1%
キャタリストACX 0.05%
水 残部
(実施例4)
繊維布帛として、ナイロン織物(織物。経糸:17デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。緯糸:22デシテックス20フィラメント。タスラン加工糸。丸型断面。)を酸性染料でグレー色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行った。
次に、カレンダー加工を施して、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。
[炭化水素系化合物の撥水剤と水溶性高分子を含有する樹脂液]
miDori evoPel NF(撥水剤。炭化水素系化合物。Beyond Surface Technologies AG製) 5%
水溶性高分子(アニオン系化合物。ポリカルボン酸のナトリウム塩。固形分5%)
0.3%
ベッカミンM−3 0.3%
キャタリストACX 0.05%
水 残部
(実施例5)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸:17デシテックス20フィラメント。生糸。丸型断面。緯糸:17デシテックス20フィラメント。タスラン加工糸。丸型断面。)を酸性染料で紺色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて60秒間乾燥した後、160℃で60秒間の熱処理を行った。
次に、カレンダー加工を施して、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。
[炭化水素系化合物の撥水剤と水溶性高分子を含有する樹脂液]
XF−5001(撥水剤。炭化水素系化合物。ダイキン工業(株)製) 5%
水溶性高分子(アニオン系化合物。ポリカルボン酸のナトリウム塩。固形分5%)
0.3%
ベッカミンM−3 0.3%
キャタリストACX 0.05%
水 残部
(実施例6)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸、緯糸とも22デシテックス20フィラメント。生糸。)を酸性染料で赤色に染色し、合成タンニンを用いてフィックス処理を行い、熱セットを行ったものを準備した。
まず、この繊維布帛(ナイロン繊維)に下記の水溶性高分子を含む樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて30秒間乾燥した後、160℃で30秒間の熱処理を行った。
[水溶性高分子を含有する樹脂液]
水溶性高分子(アニオン系化合物。ポリカルボン酸のナトリウム塩。固形分5%)
1.0%
アクアネート100(日本ポリウレタン工業(株)。固形分100%) 0.1%
水 残部
次に、この繊維布帛(ナイロン繊維)に、下記の炭化水素系化合物(撥水剤)を含む下記の樹脂液をディップ−ニップ法で付与し、130℃にて30秒間乾燥した後、150℃で30秒間の熱処理を行い、引き続きカレンダー加工を施して、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。
[炭化水素系化合物の撥水剤を含有する樹脂液]
ネオシードNR−158(撥水剤、炭化水素系化合物、日華化学(株)製) 5%
ベッカミンM−3 0.3%
キャタリストACX(DIC(株)製) 0.05%
水 残部
(実施例7)
繊維布帛として、ポリエステル織物(平織物。経糸:33デシテックス72フィラメント。生糸。丸断面。緯糸:33デシテックス72フィラメント。生糸。丸断面。)を分散染料で紺色に染色し、熱セットを行ったものを用いた以外は、実施例5と同様にし、撥水性布帛を得た。得られた撥水性布帛の各種性能を表1に記載した。なお、本実施例では、繊維布帛としてポリエステル織物を用いているので、合成タンニンを用いたフィックス処理は行っていない。
Figure 2017145521
表1に示されるように、上記実施例1〜7の撥水性布帛は、撥水剤として炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂が付着した軽量な繊維布帛でありながら、優れた撥水性、引裂強力、縫目強力と低い通気性とを有することが分かる。
これに比べ、比較例1のように水溶性高分子を用いないものは、撥水性や引裂強力に劣るものである。
また、比較例2では、比較例1の縫目ズレを向上させるために、シリカ粒子を繊維表面に付与することで縫目強力は向上したが、繊維布帛の織組織の硬直により引裂強力が低下してしまった。
また、比較例3では、比較例1の引裂強力を向上させるために、シリコーン系化合物を繊維布帛に付与することで引裂強力は向上したが、縫目強力が大きく低下してしまった。
以上のように、本発明に係る撥水性布帛は、撥水剤として炭化水素系化合物を用いているにも関わらず、軽量でありながら優れた撥水性を有し、さらに、縫目強力および引裂強力も優れていて実用に対し十分な強度を有する。また、通気度が低く防風性を有し、ダウンなどの中綿の飛び出しを防止する性能も有するため、本発明に係る撥水性布帛を用いることで、シャツ、ジャケット、コートなどの一般衣服をはじめとして、作業服、スポーツ用衣服、テント、寝袋等、様々な繊維製品を得ることができる。

Claims (9)

  1. 繊維布帛の繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂が付着した撥水性布帛であって、
    前記繊維布帛の目付が10〜100g/mであり、
    前記撥水性布帛は、
    JIS L1096:2010 D法 ペンジュラム法によるタテ方向及びヨコ方向の引裂強さが6N以上であり、
    JIS L1096:2010 B法 荷重49.0Nによるタテ方向及びヨコ方向の縫目の滑りが3mm以下であり、
    JIS L1092:2009 スプレー試験で撥水度が3級以上である
    撥水性布帛。
  2. 前記撥水性布帛は、JIS L0217 103法にて10回洗濯後の撥水度が2級以上である
    請求項1に記載の撥水性布帛。
  3. 前記繊維布帛を構成する糸状の繊度は45dtex以下である
    請求項1または2に記載の撥水性布帛。
  4. JIS L1096:2009 A法 フラジール形法による通気性は1.5cm/cm・s以下である
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水性布帛。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性布帛を少なくとも一部に用いた、衣服、鞄、テント、寝袋およびダウンパックからなる群より選択される繊維製品。
  6. 炭化水素系化合物によって構成された撥水剤と水溶性高分子とを含有する樹脂液を繊維布帛に付与し、熱処理し、前記繊維布帛の繊維の表面に撥水性樹脂を付着させる工程を含む撥水性布帛の製造方法。
  7. 前記水溶性高分子はアニオン系化合物である
    請求項6に記載の撥水性布帛の製造方法。
  8. 前記樹脂液のpHは7未満である
    請求項6または7に記載の撥水性布帛の製造方法。
  9. 前記水溶性高分子は、ポリフェノール、ポリスルホン酸、ポリ硫酸エステル、ポリカルボン酸、ポリリン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を含む
    請求項6〜8のいずれか1項に記載の撥水性布帛の製造方法。
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