JP6931274B2 - 積層繊維布帛およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層繊維布帛およびその製造方法に関し、特に、樹脂皮膜が積層された繊維布帛およびその製造方法に関する。
従来、撥水性を有する繊維布帛が知られている。撥水性を有する繊維布帛は、カッパ、コート、ウインドブレーカー、スキーウエアー、水着、傘、鞄、靴、帽子などの様々な繊維製品に用いられている。
繊維布帛に撥水性を付与するために、たとえば、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤、炭化水素系撥水剤が用いられる。中でも、特に、フッ素系撥水剤は、優れた撥水性および撥油性を有するだけではなく、撥水性および撥油性に関して洗濯などに対する耐久性を有しているため、様々な繊維製品に広く用いられている。
また、撥水性に加え、防風性および/または防水性をさらに高めるために、繊維布帛の片面に樹脂液を塗布することで、繊維布帛の片面に樹脂膜を積層することがある。このような場合においても、防風性および/または防水性を付与するための樹脂液を繊維布帛に塗布したときにこの樹脂液が繊維布帛の塗布面とは反対側の面にまで含浸することを抑えるために、撥水剤として、フッ素系撥水剤が用いられている。
近年、一般的に用いられている炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系撥水剤(C8フッ素系撥水剤)は、環境に影響を及ぼす可能性のあるパーフルオロオクタン酸が含まれているといわれているので、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系撥水剤(C6フッ素系撥水剤)が使用され始めている。
しかしながら、C6フッ素系撥水剤は、C8フッ素系撥水剤に比べ、撥水性および撥油性が低いため、C6フッ素系撥水剤を付着させた繊維布帛に樹脂液を塗布すると、繊維布帛の塗布面とは反対側(裏側)の面にまで樹脂液が含浸してしまい、風合いおよび外観品位が悪化するという問題がある。
そこで、有機溶剤の一種であるトルエンをはじく性能を有する繊維布帛を用いることにより、樹脂液の含浸を抑制する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2013−256727号公報 特開2014−1252号公報 特開2006−328624号公報 特開2015−120893号公報 特開2015−120894号公報 特開2015−120895号公報
しかしながら、さらに環境への関心が高まる中で、フッ素を用いたフッ素系撥水剤を使用しない撥水剤の要望が高まってきている。
フッ素系撥水剤を使用しない撥水剤(非フッ素系撥水剤)としては、シリコン系撥水剤またはパラフィンなどを用いた炭化水素系撥水剤が知られているが、シリコン系撥水剤または炭化水素系撥水剤はC6フッ素系撥水剤に比べ、撥水性および撥油性に劣る。
そこで、撥水剤に含まれる界面活性剤の使用を抑え、アクリル系ポリマーを併用することにより撥水性を高める撥水剤も知られている(特許文献2)。
しかしながら、このような撥水剤では十分な撥水性を得ることができず、また、繊維布帛への撥水剤の付与工程において撥水剤を含む処理液の分散性が安定せず、樹脂カス汚れなどの原因となってしまったり、繊維布帛の内部にまで撥水剤が浸透せず、かえって撥水性能が低下したりすることもある。
そこで、アクリル系の炭化水素を用いた炭化水素系撥水剤が開発されており、撥水性能の観点からは、C6フッ素系撥水剤に近づいた撥水性を持つ撥水剤も開発されつつある(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
しかしながら、これらの炭化水素系撥水剤を付与した繊維布帛は撥油性をほとんど有しておらず、樹脂膜を付与するための樹脂液を塗布すると、繊維布帛の塗布面とは反対側の面(裏面)にまで樹脂液が含浸するという問題がある。
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、環境に対する懸念が少ない非フッ素系撥水剤が付与された繊維布帛でありながら、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性および防水性の少なくとも一の性能を有し、風合いおよび外観品位に優れた積層繊維布帛を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明をするに至った。
(1)本発明に係る積層繊維布帛は、繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部に、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜を有しており、前記繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性および防水性の少なくとも一の性能を有する樹脂皮膜が積層されていることを特徴とする。
(2)さらに、前記撥水性樹脂被膜は、撥水性が3級以上であり、撥油性が1級以下であるとよい。
(3)さらに、前記積層繊維布帛の通気度は、0.01cm/cm・s〜10cm/cm・sであるとよい。
(4)さらに、前記積層繊維布帛の耐水圧は、250mm以上であるとよい。
(5)また、本発明に係る繊維製品は、上記のいずれかの積層繊維布帛を少なくとも一部に用いた繊維製品であって、衣服、鞄、テント、寝袋およびダウンパックからなる群より選択される繊維製品である。
(6)また、本発明の積層繊維布帛に係る製造方法は、繊維布帛に撥水剤として炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液を付与し、熱処理し、前記繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部に炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜を形成する工程と、前記繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂および水を含有する樹脂液を付与し、前記繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性および防水性の少なくとも一の性能を有する樹脂皮膜を形成する工程とを含む。
本発明に係る積層繊維布帛およびその製造方法によれば、非フッ素系撥水剤を用いて加工されたものでありながら、繊維布帛の片面に樹脂皮膜を付与することができる。このため、撥水性に加えて、優れた中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性、防水性を有し、かつ、風合いおよび外観品位に優れた積層繊維布帛を得ることができる。したがって、優れた中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性および/または防水性を有し、かつ、風合いおよび外観品位に優れた、衣服、靴、鞄、テントなどの繊維製品を提供することができる。
<積層繊維布帛>
本実施の形態に係る積層繊維布帛は、繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部に、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜を有しており、繊維の表面に撥水性樹脂被膜を有する前記繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性(ダウンプルーフ性)、防風性および防水性の少なくとも一の性能を有する樹脂皮膜が積層されたものである。
本実施の形態における繊維布帛を構成する有用な繊維の素材としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、または、アセテートやビスコースなどのレーヨンなどがあり、さらに、これらの他に、ポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミドまたはポリフェニレンサルファイドなどの化学繊維、綿、麻、絹または羊毛などの天然繊維、あるいは、これらの素材の混繊、混紡、交織または交編品を用いることができ、特に限定されるものではない。また、それらの素材からなる繊維布帛は、織物、編物または不織布など、いかなる形態であってもよい。
なお、本実施の形態では、繊維布帛として、特に樹脂液が繊維布帛の裏面(樹脂液が塗布される塗布面とは反対側の面)にまで含浸しやすい厚みの薄い薄地織物、または、織物に比べて糸と糸の間に隙間ができやすい編物を用いたとしても、樹脂液が繊維布帛の裏面にまで含浸することを抑制することができ、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を形成することができる。
また、繊維布帛を構成する繊維は、長繊維および短繊維のいずれであってもよい。また、この繊維を用いた糸は、生糸、撚糸、および加工糸のいずれであってもよい。加工糸についても、特に限定されるものではなく、仮撚加工糸(ウーリー加工糸、DTY、改良仮撚加工糸など)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などを用いることができる。なお、表面に撥水性樹脂被膜が付着した繊維を用いた繊維布帛に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂が含浸することを防止するとの観点からは、加工糸を用いることが好ましい。
また、繊維の断面形状についても、特に限定されるものではなく、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドックボーンなどが挙げられる。なお、表面に撥水性樹脂被膜が付着した繊維を用いた繊維布帛に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂が含浸することを防止するとの観点からは、繊維の断面形状は、三角、星形、扁平、または、ドッグボーンなどであることが好ましい。つまり、異形断面糸を用いることが好ましい。
また、これらの繊維布帛は、あらかじめ着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。繊維布帛をあらかじめ着色する場合には、分散染料、カチオン染料、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、または、硫化染料などの染料、あるいは、蛍光増白剤、または、顔料などを用いて着色することができる。なお、繊維布帛を着色するために用いられる材料は、特に限定されるものではなく、繊維布帛の素材に合わせて適切なものを選択すればよい。
また、着色方法は、原着、浸染、または、捺染などの方法があり、特に限定されるものではない。
また、繊維布帛には、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、または、吸水加工などが施されていてもよい。
本実施の形態における積層繊維布帛において、繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部には、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜が付着している。炭化水素系化合物およびシリコン系化合物は、撥水性樹脂被膜を構成する撥水性樹脂の一例である。
炭化水素系化合物としては、撥水性樹脂被膜を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、先に挙げた、特開2015−120895号公報、特開2015−120894号公報、特開2015−120893号公報、特開2014−1252号公報、および、特開2006−328624号公報の他、特開2015−40365号公報、特開2015−3445号公報などに開示されたものが挙げられる。
具体的には、炭化水素系化合物として、脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、または、ポリメタクリル酸エステルなどを用いることができる。
この場合、脂肪族系炭化水素としては、パラフィン系炭化水素またはオレフィン系炭化水素などが挙げられる。
また、脂肪族カルボン酸は、飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸であってもよいし、脂肪族カルボン酸のエステル化合物であってもよい。脂肪族カルボン酸の炭素数としては12以上が好ましい。
また、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、エチレンープロピレン共重合体などが挙げられる。
また、ポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルとしては、エステル結合を介して存在する炭化水素の炭素数が12以上、24以下のものを用いるとよい。この場合、炭化水素は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、あるいは、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、さらには、脂環式または芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、さらに、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。
また、これらの炭化水素系化合物としては、ネオシードNR90(日華化学(株)製)、NR−158(日華化学(株)製)、TH−44(日華化学(株)製)、PW−182(大和化学(株)製)、ファボールRSH(ハンツマン・ジャパン(株)製)、パラヂウムECO−500(大原パラヂウム化学(株)製)、パラヂウムECO−85A(大原パラヂウム化学(株)製)、NX018((株)ナノテックス製)、メイシードP−300C(明成化学工業(株)製)、NT−X028(Nanotex,LLC.製)、miDori evoPel NF(Beyond Surface Technologies AG製)、XF−5001(ダイキン工業(株)製)などが市販されている。
シリコン系化合物としては、シリコーンが好ましく用いられ、具体的には、ゲラネックスSH(松本油脂(株)製)、ドライポン600E(日華化学(株)製)、ポロンMR(信越化学工業(株)製)、ポロンMF−49(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
繊維布帛を構成する繊維の表面に付着した撥水性樹脂被膜の厚みは、1μm以下がよく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下が好ましい。撥水性樹脂被膜の厚みが100nm以下では撥水性樹脂被膜を確認することが難しいため、繊維布帛に対して撥水性の試験を行った場合に、撥水性を有し、かつ、撥水性が3級以上であれば、繊維布帛を構成する繊維に撥水性樹脂被膜を有しているとみなすことができる。
なお、繊維布帛を構成する繊維の糸と糸との間の一部に撥水性樹脂が溜ることがあるが、本発明の所期の目的を達成することができれば、このような箇所が存在していてもよい。
また、撥水性樹脂被膜は、繊維布帛を構成する繊維(糸)の表面の少なくとも一部に付着したものであってもよいし、繊維布帛を構成する繊維(糸)の表面全部に付着したものであってもよい。さらに、撥水性樹脂被膜は、繊維布帛を構成する繊維(糸)に点在するように付着していてもよい。
また、本実施の形態における積層繊維布帛は、繊維の表面に撥水性樹脂被膜を有する繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を有する樹脂皮膜が積層されている。
繊維布帛の片面に積層された樹脂皮膜は、中綿抜け防止性のみを繊維布帛に付与するものであってもよいし、防風性のみを繊維布帛に付与するものであってもよいし、防水性のみを繊維布帛に付与するものであってもよいし、防風性と防水性とを繊維布帛に付与するものであってもよいし、中綿抜け防止性と防風性とを繊維布帛に付与するものであってもよいし、中綿抜け防止性と防水性とを繊維布帛に付与するものであってもよいし、中綿抜け防止性と防風性と防水性とを繊維布帛に付与するものであってもよい。また、防水性に加えて、透湿性を有していてもよい。
このような樹脂皮膜としては、ウレタン樹脂皮膜、ポリテトラフルオロエチレン皮膜、ポリエステル樹脂皮膜、アクリル樹脂皮膜、シリコーン樹脂皮膜、または、ナイロン樹脂皮膜などが挙げられる。また、これらの樹脂皮膜は、多孔質であってもよいし無孔質であってもよい。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜の厚みは、目的とする中綿抜け防止性、防風性および/または防水性、また、透湿性に応じて任意に設定すればよいが、風合いの観点からは、500μm以下であるとよく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下であるとよい。
また、防風性だけではなく通気性も要求される場合には、積層繊維布帛における樹脂皮膜を多孔質膜にしてもよいし、積層繊維布帛の樹脂皮膜が形成された面の一部に当該樹脂皮膜が存在しない個所があるものあってもよい。樹脂皮膜が存在しない個所としては、たとえば、織物では経糸と緯糸の重なり合った凸部や編物のループ同士が重なった凸部などの全部または一部、または、当該樹脂皮膜に形成された貫通孔などが挙げられる。
本実施の形態における積層繊維布帛は、積層繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を有しており、他の一方の片面には繊維布帛が最表面を形成するものである。
なお、本実施の形態における積層繊維布帛には、先に述べたとおり、積層繊維布帛の中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜が形成された面において、織物では経糸と緯糸が重なり合った凸部や編物のループ同士が重なった凸部など、一部に樹脂皮膜が形成されていない箇所を有するものも含まれる。
また、繊維布帛が最表面を形成する面においても、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、糸と糸の境目などに樹脂皮膜を構成する樹脂が多少存在していてもよい。好ましくは、積層繊維布帛の片面にのみ、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜が形成されており、かつ、繊維布帛が最表面を形成する面(中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を形成するための樹脂液を塗布していない面)には、当該樹脂皮膜を構成する樹脂が存在しないものであることが好ましい。
本実施の形態における積層繊維布帛の撥水性は、JIS L1092 はっ水度試験(スプレー試験)において、3級以上であるとよく、より好ましくは4級以上、さらに好ましくは5級であるとよい。
撥水性が3級以上であれば、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を容易に付着させることができる。また、当該積層繊維布帛を用いて繊維製品を作製した場合にも、水をはじいて生地の濡れを抑制することができる。
また、本実施の形態における積層繊維布帛は、AATCC Test Method 118−1997での撥油性が1級以下であってもよく、さらに0級であってもよい。本実施の形態における積層繊維布帛では、撥油性が1級以下でありながら、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を繊維布帛の片面に積層することができるため、撥水性樹脂被膜を得るための炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物としては、種々のものを用いることができる。
なお、撥水性樹脂被膜には、縫い目ズレやスナッグの発生を防止するためのシリカなどの無機微粒子、シリコーンなどの柔軟剤、塩酸グアニジンや高級アルコール硫酸エステル塩、アミン塩、ポリエチレングリコール型、ベタイン型界面活性剤などの帯電防止剤が含まれていてもよい。
また、本実施の形態における積層繊維布帛を、通気性を有する防風性繊維製品の素材として用いたり、ダウンなどの中綿を用いた中綿抜け防止性を有する繊維製品の素材として用いたりする場合には、当該積層繊維布帛は、通気性を有するとよい。
積層繊維布帛の通気度は、JIS L1096 A法(フラジール形法)にて測定することができ、衣服のムレやダウンパック破裂を抑えるとの観点からは、0.01cm/cm・s以上が好ましく、より好ましくは0.1cm/cm・s以上、さらに好ましくは0.5cm/cm・s以上であることが好ましい。一方、防風性の観点からは、積層繊維布帛の通気度は、10cm/cm・s以下が好ましく、より好ましくは3cm/cm・s以下である。また、中綿の抜け防止の観点からは、積層繊維布帛の通気度は、1.5cm/cm・s以下であるとよい。さらに好ましくは、1.0cm/cm・s以下であるとよい。
また、通気性を必要としない場合には、積層繊維布帛の通気度は、0.01cm/cm・s未満であってもよい。
また、本実施の形態における積層繊維布帛に防水性が必要な場合には、積層繊維布帛の耐水圧は、JIS L1092 耐水度試験(静水圧法)A法(低水圧法)にて測定したときに、250mm以上であるとよく、より好ましくは350mm以上、さらに好ましくは1000mm以上、さらにより好ましくは2000mm以上であるとよい。耐水圧が250mm以上の積層繊維布帛であれば、当該積層繊維布帛を雨傘用やレインコート用の素材として用いることで雨が衣服内に浸入することを抑えられるので、日常使用される繊維製品の防水素材として用いることができる。また、耐水圧が2000mm以上の積層繊維布帛であれば、当該積層繊維布帛をカッパやスキーウエアーなどの素材として用いることができる。また、積層繊維布帛を山岳用途やライダー用レインウエアー用途として用いる場合には、JIS L1092 耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)にて測定したときび積層繊維布帛の耐水圧が100kPa以上であるとよい。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、触媒、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、撥水剤もしくは二酸化ケイ素などの耐水性向上剤、顔料、または、赤外線吸収剤などが添加されていてもよい。
以上、本実施の形態における積層繊維布帛によれば、非フッ素系の撥水剤として炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を用いて加工されたものでありながら、積層繊維布帛の一方の面は、繊維布帛に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜が形成されており、積層繊維布帛の他の一方の面は繊維布帛が表面を形成しており、積層繊維布帛の一方の面に形成された樹脂皮膜が繊維布帛の裏面にまで含浸していない。これにより、風合いの硬化を抑制し、外観品位に優れた積層繊維布帛を実現することができ、さらには、必要に応じて、優れた撥水性や防風性、防水性、通気性、中綿抜け防止性などの機能を付与することができるので、様々な繊維製品の素材として用いることができる。また、所期の目的を逸脱しない範囲で、積層繊維布帛の中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂被膜を有する面にも他の繊維布帛を積層してもよい。
<繊維製品>
本実施の形態における繊維製品は、上記積層繊維布帛を少なくとも一部に用いたものであり、たとえば、コート、ジャケット、ジャンパー、ダウンウエアー、帽子、手袋、スキーウエアー、ウインドブレーカー、または、作業着などの衣服、あるいは、鞄、テント、寝袋、ダウンパックなどである。
本実施の形態における繊維製品は、上記積層繊維布帛を用いているため、風合いも柔らかく、外観品位に優れているため、ファッション性に優れた繊維製品であり、また、必要に応じて、優れた撥水性や防風性、防水性、通気性、中綿抜け防止性などの機能を有する繊維製品である。
<積層繊維布帛の製造方法>
次に、本実施の形態に係る積層繊維布帛の製造方法について説明する。なお、既に説明した内容については、説明を省略または簡略化する。
本実施の形態における積層繊維布帛の製造方法は、繊維布帛に撥水剤として炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液を付与し、熱処理し、繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部に炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜を形成する工程と、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂および水を含有する樹脂液を付与し、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を有する樹脂皮膜を形成する工程とを含む。
具体的には、まず、繊維布帛に撥水剤として炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液を付与する。樹脂液としては、上述の炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物と溶媒(分散媒も含めて溶媒という。)とを含むものである。溶媒としては、水、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、トルエン、または、ミネラルスピリットなどが挙げられる。また、溶媒は、これらの混合物であってもよい。
また、樹脂液は、溶媒に溶けた溶液(溶媒が水の場合には水溶液)であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、分散液であってもよい。
また、樹脂液には、架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、スリップ防止剤、無機粒子、または、有機粒子などが含まれていてもよい。
また、樹脂液には、溶媒への炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物やその他の配合成分の溶解、乳化、分散のため界面活性剤が含まれていてもよい。
この場合、界面活性剤の量は、後に付与する、中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂を含有する樹脂液が繊維布帛に含浸することを抑制するために、できるだけ少ない方が好ましいが、本実施の形態では、通常の炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液に含まれている量の界面活性剤が含まれていてもよい。
繊維布帛に、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液を付与する方法は、ディップ−ニップ法、グラビア転写法、または、スプレー法などの公知の方法を用いることができる。生産性や加工の安定性の観点からは、ディップ−ニップ法によって繊維布帛に樹脂液を付与するとよい。
次に、繊維布帛に、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液を付与した後は、熱処理を行い、繊維布帛を構成する繊維の表面に、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜を形成する。
熱処理方法としては、繊維布帛の素材や炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する樹脂液に含まれる化合物の種類に応じて適宜選択すればよいが、たとえば、135℃〜210℃程度で、10秒から10分程度の熱処理を行うとよい。
また、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。この場合、乾燥は、60℃〜135℃程度で、10秒〜10分程度行えばよい。乾燥の温度は、熱処理の温度よりも低い方がよい。熱処理の温度に比べて低温の乾燥処理を熱処理の前に行うことにより、繊維の表面により均一な撥水性樹脂被膜を形成することができる。
次に、繊維の表面に撥水性樹脂被膜を有する繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および防水性の少なくとも一の性能を付与するための樹脂を含有する樹脂液を付与する。
このときの樹脂液は、上述の炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物及び水を含むものである。
また、樹脂液は、水に樹脂が溶けた水溶液であってもよいし、エマルジョンであってもよいし、水分散液であってもよい。
また、樹脂液には、架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、赤外線吸収剤、シリコン系や炭化水素系の撥水剤、スリップ防止剤、無機粒子、有機粒子、または、顔料などが含まれていてもよい。
また、樹脂液には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲で、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどの有機溶剤が含まれていてもよい。
また、樹脂液には、水への樹脂およびその他の配合成分の溶解、乳化、分散のため界面活性剤が含まれていてもよいが、浸透剤としての界面活性剤については、含まれていない方がよく、含まれていても少量であるとよい。
界面活性剤については、従来、撥水剤に含まれる界面活性剤を減らすことが着目されていたが、撥水剤に含まれる界面活性剤が樹脂液に含まれないようにしたり、界面活性剤を樹脂液から減らしたりすると、撥水剤を含む樹脂液の安定性が損なわれたり、また、界面活性剤を減らした撥水剤を繊維布帛に付与したとしても、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含む樹脂液が繊維布帛に含浸することを抑える効果が十分ではなかったりした。
そこで、繊維布帛などに用いられる水を含む樹脂液について検討したところ、自己乳化型の樹脂も含めて当該樹脂液には、繊維布帛やフィルムなどに対して樹脂液がはじかれないようにするために浸透剤が含まれていることが分かった。
そこで、このような浸透剤が樹脂液に含まれないようにするか、浸透剤が含まれていても含有量を減らすことにより、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含む樹脂液が繊維布帛に含浸することを抑制することができる。これにより、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物を含有する撥水性樹脂被膜が形成された繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を形成することができる。
また、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含む樹脂液に、浸透剤が含まれていなかったり、浸透剤の含有量が減らされたりしていても、乳化や分散のための界面活性剤は含まれていてもよいため、当該樹脂液の分散性には大きな影響を及ぼさない。
なお、浸透剤の含有量が減らされているとは、炭化水素系化合物および/またはシリコン系化合物の撥水性、または、繊維布帛に用いられている繊維の種類や密度によっても変化するが、樹脂液中の浸透剤の含有量が、樹脂液の繊維布帛への含浸抑制の観点から、5質量%以下がよく、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下である。
浸透剤の材料としては、溶媒を水にしたものでは、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、HLB10以上のアルキルアリルエーテル、または、ジエタノールアミンなどが挙げられ、特に、これらのナトリウム塩が挙げられる。
これらの材料は、ペレックスNBL(花王(株)製)、ぺレックスOTP(花王(株)製)、スコアリンSW(新中村化学工業(株)製)などとして販売されている。
撥水性樹脂被膜が付着した繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂液の付与は、グラビアコーター、ナイフコーター、ナイフオーバーロールコーター、バーコーター、リバースコーター、または、グラビアコーターなどを用いたり、スプレーノズルなどを用いたりして行うことができる。
その後、付与した樹脂溶液から水を主とした溶媒および揮発性物質を除去し、さらに、必要に応じて熱処理を行うことにより、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を形成する。
溶媒の除去方法は、特に限定されるものではないが、以下の方法が挙げられる。
たとえば、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂液を付与した後に熱処理を行うことで、溶媒を除去することができる。これにより、繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する樹脂皮膜を形成することができる。この場合、熱処理の条件としては、たとえば、135℃〜240℃程度で、10秒から10分程度行えばよい。また、熱処理を行う前に、乾燥を行ってもよい。乾燥は、60℃〜135℃程度で10秒〜10分程度行えばよい。
また、繊維布帛に樹脂皮膜を形成した後において、樹脂皮膜の中に、水(酸性やアルカリ性の水、熱水や温水等を含む)に溶解性を有する物質が含まれている場合、それぞれの物質に合わせたアルカリ性の水などを用いてソーピングを行って、樹脂皮膜の中に含まれる水に溶解する物質を除去して樹脂皮膜を多孔質膜にしてもよい。
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜に用いられる樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、または、ナイロン樹脂などが挙げられる。
また、得られる樹脂皮膜は、多孔質であってもよいし、無孔質であってもよく、特に限定されるものではないが、通気性が求められる場合には、孔を有する膜であるとよい。
なお、樹脂液の含浸防止の観点からは、繊維の表面に撥水性樹脂被膜が付着した繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂液を付与する前に、カレンダー加工を行うことが好ましい。
繊維布帛の片面に、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜を形成した後に、撥水加工、消臭加工、紫外線遮蔽加工、赤外線吸収加工、抗菌防臭加工、制菌加工、または、難燃加工を施してもよい。また、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂皮膜の表面に、捺染法やグラビア転写法で顔料を用いて模様や絵、柄などを付与したり、樹脂皮膜の表面の風合いやタッチを変えたり、滑り止め性を付与するために樹脂皮膜に樹脂や微粒子などを付与してもよい。
また、撥水性樹脂被膜を有する繊維布帛が積層されていない側の樹脂皮膜の表面には、さらに、他の織物や編物などの繊維布帛が、接着剤などを用いて貼り合わされていてもよい。
また、得られる積層繊維布帛の撥水性や中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂の繊維布帛への含浸抑制の観点からは、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂および水を含有する樹脂液から、浸透剤以外の界面活性剤は減らした方がよい。なお、浸透剤以外の分散剤などの界面活性剤を減らした場合には、樹脂液の分散安定性の観点からは、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂および水を含有する樹脂液の粘度は、高めであるとよく、たとえば、30000mPa・s以上であることが好ましく、その上限は100000mPa・s程度である。
以下、本実施の形態における積層繊維布帛の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例におけるA〜Gの各評価項目における各種物性などの測定および評価は、次の方法によって行った。また、実施例における「%」、「部」は、「質量%」、「質量部」である。
[A:撥水性]
JIS L1092:2009 はっ水度試験 スプレー法に準じて試験を行い、撥水性を確認した。
[B:撥油性]
AATCC Test Method 118―1997 撥油性試験に準じて試験を行い、撥油性を確認した。
[C:通気性]
JIS L1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて試験を行い、通気度測定し、中綿抜け防止性、防風性および通気性を確認した。
[D:防水性]
JIS L1092:2009 耐水度試験(静水圧法) A法(低水圧法)に準じて試験を行い、耐水圧を測定し、防水性を確認した。
また、水圧をかけることにより試験片が伸びる場合には、試験片の上にナイロンタフタ(2.54cm当りの縦糸と横糸の密度の合計が210本程度のもの)を重ねて、試験機に取り付けて測定を行った。
[E:外観品位]
繊維布帛に中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂および水を含有する樹脂液を付与した面とは反対側の面の表面を目視にて観察した。
[F:風合い]
繊維布帛を手で触って確認した。
[G:洗濯処理]
JIS L0217 103法に準じて洗濯処理を10回行った。なお、洗濯時間を25分、1回あたりのすすぎ時間を10分とし処理したものを5回の洗濯処理とし、この作業を2回行い、10回の洗濯処理とした。乾燥は、10回の洗濯処理の後、つり干しにて1回を行った。また、タンブラーを用いて乾燥した後の撥水性能も測定した。
(実施例1)
ポリエステル繊維を用いた編物(天竺。46ゲージ、56デシテックス/96フィラメント。加工糸。丸断面糸。)を、分散染料で青色に染色し、熱セットを行った。
次に、下記の炭化水素化合物を含有する樹脂液を、ディップ−ニップ法で付与し、130℃で1分間乾燥した後、170℃で1分間の熱処理を行った。
この処理を行った繊維布帛の撥水性と撥油性とを測定したところ、撥水性が4級で、撥油性が0級であった。したがって、優れた撥水性を有しており、繊維布帛の繊維表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂被膜が付着していることが確認できた。
[炭化水素化合物を含有する樹脂液]
ネオシードNR−158(撥水剤、炭化水素系化合物、日華化学(株)製) 5%
ベッカミンM−3(DIC(株)製) 0.3%
キャタリストACX(DIC(株)製) 0.05%
水 残部
次に、繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂被膜が付着した繊維布帛の片面に、コーティング法により下記樹脂液を付与した(ナイフコーターを用い、フローティングにより樹脂液を塗布。)。引き続き、110℃、60秒の乾燥を行い、次に、150℃、30秒の熱処理を行うことで、繊維布帛に樹脂皮膜が積層された積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した(撥水性、撥油性も再度測定した。)。
[中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂液]
ニューコートCS−654SHN(新中村化学工業(株)製)(アクリル樹脂、界面活性剤(浸透剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルソーダ塩を含む。)40%、水60%)から、浸透剤として含まれている、ジアルキルスルホコハク酸エステルソーダ塩を全て除いたもの
(実施例2)
実施例1で用いた、中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂溶液から、さらに界面活性剤を減らしたものを用いた以外は、実施例1と同様にして積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した(撥水性、撥油性も再度測定した。)。
(比較例1)
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂液として、ニューコートCS−654SHN(新中村化学工業(株)製)から浸透剤としてのジアルキルスルホコハク酸エステルソーダ塩を除かなかった以外は、実施例1と同様にして積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した。
(比較例2)
撥水剤として、C8撥水剤(アサヒガードAG710、旭硝子(株)製)を用いた以外は、比較例1と同様にして積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した。
(実施例3)
ナイロン織物(平織物。経糸、緯糸とも56デシテックス96フィラメント。生糸。丸断面糸。密度:タテ241本/2.54cm×ヨコ106本/2.54cm。)を酸性染料で赤色に染色し、熱セットを行った。その後、140℃でカレンダー加工を施した。
次に、実施例1と同様の炭化水素化合物を含有する樹脂液を、ディップ−ニップ法で付与し、130℃で1分間の乾燥を行った後、170℃で1分間の熱処理を行った。
この熱処理を行った繊維布帛の撥水性と撥油性を測定したところ、撥水性が4級、撥油性が0級であった。したがって、優れた撥水性を有しており、繊維布帛の繊維表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂被膜が付着されていることが確認できた。
次に、繊維の表面に炭化水素系化合物を含有する撥水性樹脂被膜が付着した繊維布帛の片面に、コーティング法により実施例1と同様の樹脂液を付与した(ナイフコーターを用い、フローティングにより樹脂液を塗布。)。引き続き、110℃、60秒の乾燥を行い、次に、150℃、30秒間の熱処理を行うことで、繊維布帛に樹脂皮膜が積層された積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した(撥水性、撥油性も再度測定した。)。
(比較例3)
中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を付与するための樹脂を含有する樹脂液として、ニューコートCS−654SHN(新中村化学工業(株)製)から浸透剤としてのジアルキルスルホコハク酸エステルソーダ塩を除かなかった以外は、実施例3と同様にして積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した。
(比較例4)
撥水剤として、C8撥水剤(アサヒガードAG710、旭硝子(株)製)を用いた以外は、比較例3と同様にして積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した。
(実施例4)
繊維布帛として、ナイロン織物(平織物。経糸、緯糸とも22デシテックス20フィラメント。生糸。密度:タテ160本/2.54cm×ヨコ160本/2.54cm。)を用いた以外は実施例2と同様にして積層繊維布帛を得た。得られた積層繊維布帛の性能を表1に記載した(撥水性、撥油性も再度測定した。)。
以上のようにして得られた各積層繊維布帛は、非フッ素系の撥水剤にて撥水性を有していながら、かつ、繊維布帛の片面に樹脂皮膜を有するため、外観品位に優れ中綿抜け防止性、防風性および/または防水性を有する柔らかい繊維布帛である。
Figure 0006931274

Claims (11)

  1. 繊維布帛と、
    前記繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部に形成された、フッ素原子を含まず、脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、シリコーンからなる群より選ばれる撥水性化合物を含有する撥水性樹脂被膜と、
    前記繊維布帛の片面のみに積層された水系樹脂からなる樹脂皮膜とを有し、
    前記樹脂皮膜は、前記撥水性樹脂被膜の表面の少なくとも一部に形成され、
    前記繊維布帛を構成する繊維の表面および前記樹脂皮膜の表面には、前記樹脂皮膜の形成時に由来する界面活性剤が存在しておらず、
    前記積層繊維布帛の通気度は、10cm/cm・s以下である
    積層繊維布帛。
  2. 前記撥水性樹脂被膜は、撥水性が3級以上であり、撥油性が1級以下である請求項1に記載の積層繊維布帛。
  3. 前記積層繊維布帛の通気度が0.01cm/cm・s〜1.5cm/cm・sである請求項1または2に記載の積層繊維布帛。
  4. 前記積層繊維布帛の耐水圧が250mm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層繊維布帛。
  5. 前記繊維布帛は、前記繊維を用いた糸により構成されており、前記糸は、加工糸である請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層繊維布帛。
  6. 前記繊維布帛が編物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層繊維布帛。
  7. 前記樹脂皮膜を構成する樹脂は、前記繊維布帛の前記片面とは反対側の面にまで含浸していない請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層繊維布帛。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層性繊維布帛を少なくとも一部に用いた繊維製品であって、
    前記繊維製品は、衣服、鞄、テント、寝袋およびダウンパックからなる群より選択される繊維製品。
  9. 繊維布帛に撥水剤として、フッ素原子を含まず、脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、シリコーンからなる群より選ばれる撥水性化合物を含有する樹脂液を付与し、熱処理し、前記繊維布帛を構成する繊維の表面の少なくとも一部に前記撥水性化合物を含有する撥水性樹脂被膜を形成する工程と、
    前記繊維布帛の片面のみに樹脂および水を含有する樹脂液を付与し、前記繊維布帛の片面のみに樹脂皮膜を形成する工程とを含み、
    前記樹脂皮膜を形成する工程では、前記樹脂液として、前記樹脂液中の界面活性剤の含有量が5質量%以下の樹脂液を用いており、
    前記積層繊維布帛の通気度は、10cm/cm・s以下である
    積層繊維布帛の製造方法。
  10. 前記樹脂皮膜を形成する工程では、コーティング法によって前記樹脂液を前記繊維布帛の片面のみに付与する請求項9に記載の積層繊維布帛の製造方法。
  11. 前記樹脂皮膜を形成する工程で用いる前記樹脂液の粘度が30000mPa・s以上100000mPa・s以下である請求項9または請求項10に記載の積層繊維布帛の製造方法。
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