JP2018177109A - 車線逸脱抑制装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スリップ率に基づいて路面状態を判定可能な車両において、車線逸脱防止制御を適切に行う。【解決手段】車線逸脱抑制装置(17)は、走行車線から車両(1)が逸脱しそうである場合に、車両の走行車線からの逸脱を回避する方向のヨーモーメントが車両に付与されるように制動手段(122FL、122FR、122RL、122RR)を制御する制御手段(172)と、制動手段を制御した後の車両のスリップ率に基づいて、車両が走行している走行車線の路面状態を判定する判定手段(173)とを備える。制御手段は、後輪(121RL、121RR)に設けられた制動手段に供給される制動油圧よりも、前輪(121FL、121FR)に設けられた制動手段に供給される制動油圧が大きくなるように、前輪及び後輪に設けられた制動手段を制御する。【選択図】図3
Description
本発明は、現在走行している走行車線からの車両の逸脱を抑制することが可能な車線逸脱抑制装置の技術分野に関する。
車線逸脱抑制装置として、走行車線から車両が逸脱する可能性がある場合に、車輪に付与される制動力を制御することで、走行車線からの車両の逸脱を抑制可能なヨーモーメントを車両に付与する車線逸脱抑制装置が知られている。
また、上述した車線逸脱を抑制するための制御(以下、適宜「車線逸脱防止制御」と称する)と並行して、車両の挙動を安定させるための制御(以下、適宜「車両挙動安定制御」と称する)を実行する装置も知られている。例えば特許文献1では、車線逸脱防止制御、及び車両挙動安定制御を実行可能な車両において、互いの制御が干渉してしまうことを回避するための協調制御を行うことが開示されている。
特許文献1に記載されている技術のように、車線逸脱防止制御及び車両挙動安定制御の両方を実行可能な場合、車両の不安定挙動が誘発されやすい路面(例えば、低μ路面)では、車線逸脱防止制御よりも車両挙動安定制御が優先して実行されることが好ましい。この場合、路面状態の事前検出は困難であるため、例えば車線逸脱防止制御後のスリップ率を用いて路面状態を判定することになる。
しかしながら、例えば高速走行中や旋回中、前荷重気味の車両諸元(例えば、ピックアップトラック等)、ウェット路面等の条件が揃った場合、路面状態を検出するための車線逸脱防止制御によって車両がスピンしてしまう可能性がある。即ち、車線逸脱防止制御及び車両挙動安定制御の各々を実行すべきか否かを判定する前段階で不都合が発生してしまうおそれがある。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、スリップ率に基づいて路面状態を判定可能な車両において、車線逸脱防止制御を適切に行うことが可能な車線逸脱抑制装置を提供することを課題とする。
本発明の車線逸脱抑制装置は、車両の前輪及び後輪に夫々設けられており、制動油圧を供給することで前記前輪及び前記後輪の各々に制動力を付与する制動手段を備える車両に搭載される車線逸脱抑制装置であって、走行車線から前記車両が逸脱しそうである場合に、前記車両の前記走行車線からの逸脱を回避する方向のヨーモーメントが前記車両に付与されるように前記制動手段を制御する制御手段と、前記制動手段によって前記制動手段を制御した後の前記車両のスリップ率に基づいて、前記車両が走行している走行車線の路面状態を判定する判定手段とを備え、前記制御手段は、前記後輪に設けられた前記制動手段に供給される制動油圧よりも、前記前輪に設けられた前記制動手段に供給される制動油圧が大きくなるように、前記後輪に設けられた前記制動手段及び前記前輪に設けられた前記制動手段を制御する。
本発明の車線逸脱抑制装置によれば、車両の車線逸脱を抑制するために制動力を付与する際に、後輪に設けられた制動手段に供給される制動油圧よりも、前輪に設けられた制動手段に供給される前記制動油圧が大きくされる。これにより、後輪に設けられた制動手段に供給される制動油圧よりも、前輪に設けられた制動手段に供給される前記制動油圧を大きくしない場合と比較して、制動力を付与した後の前輪のスリップ率を大きくすることができる。より具体的には、路面状態が悪いことに起因する前輪のスリップ率の変動を大きくすることができる。この結果、スリップ率に基づく路面状態(言い換えれば、路面の滑りやすさ)の判定をより適切に実行することが可能となる。
本発明では更に、後輪に設けられた制動手段に供給される制動油圧よりも、前輪に設けられた制動手段に供給される前記制動油圧を大きくすることで、後輪の横力も大きくなる。よって、後輪に設けられた制動手段に供給される制動油圧よりも、前輪に設けられた制動手段に供給される前記制動油圧を大きくしない場合と比較して、車両の挙動安定性も向上する。
図面を参照しながら、本実施形態に係る車線逸脱抑制装置について説明する。以下では、本実施形態に係る車線逸脱抑制装置が搭載された車両1を用いて説明を進める。
<車両構成>
まず本実施形態に係る車両1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
まず本実施形態に係る車両1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、ブレーキペダル111と、マスタシリンダ112と、ブレーキパイプ113FLと、ブレーキパイプ113RLと、ブレーキパイプ113FRと、ブレーキパイプ113RRと、左前輪121FLと、左後輪121RLと、右前輪121FRと、右後輪121RRと、ホイールシリンダ122FLと、ホイールシリンダ122RLと、ホイールシリンダ122FRと、ホイールシリンダ122RRと、ブレーキアクチュエータ131と、ステアリングホイール141と、振動アクチュエータ142と、車速センサ151と、車輪速センサ152と、ヨーレートセンサ153と、加速度センサ154と、カメラ155と、ディスプレイ161と、スピーカ162と、ECU(Electronic Control Unit)17とを備えている。
ブレーキペダル111は、車両1を制動するためにドライバによって踏み込まれるペダルである。マスタシリンダ112は、マスタシリンダ112内のブレーキフルード(或いは、任意の流体)の圧力を、ブレーキペダル111の踏み込み量に応じた圧力に調整する。ブレーキフルードの圧力は、「制動油圧」の一具体例である。以下では、ブレーキフルードの圧力を単に「油圧」と称することがある。
マスタシリンダ112内の油圧は、ブレーキパイプ113FL、113RL、113FR及び113RRを夫々介してホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRに伝達される。このため、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRに伝達される油圧に応じた制動力が、夫々、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRに付与される。ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRは、「制動手段」の一具体例である。
ブレーキアクチュエータ131は、ECU17の制御下で、ブレーキペダル111の踏み込み量とは無関係に、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRの夫々に伝達される油圧を調整可能である。従って、ブレーキアクチュエータ131は、ブレーキペダル111の踏み込み量とは無関係に、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々に付与される制動力を調整可能である。
ステアリングホイール141は、車両1を操舵する(つまり、転舵輪を転舵する)ためにドライバによって操作される操作子である。なお、本実施形態では、転舵輪は、左前輪121FL及び右前輪121FRであるものとする。振動アクチュエータ142は、ECU17の制御下で、ステアリングホイール141を振動させることが可能である。
車速センサ151は、車両1の車速Vvを検出する。車輪速センサ152は、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々の車輪速Vwを検出する。ヨーレートセンサ153は、車両1のヨーレートγを検出する。加速度センサ154は、車両1の加速度G(具体的には、前後加速度Gx及び横加速度Gy)を検出する。カメラ155は、車両1の前方の外部状況を撮像する撮像機器である。車速センサ151から加速度センサ154の検出結果を示す検出データ及びカメラ155が撮像した画像を示す画像データは、ECU17に出力される。
ディスプレイ161は、ECU17の制御下で、任意の情報を表示可能である。スピーカ162は、ECU17の制御下で、任意の音声を出力可能である。
ECU17は、車両1の全体の動作を制御するコントロールユニットとして構成されている。本実施形態では特に、ECU17は、現在走行している走行車線からの車両1の逸脱を抑制するための車線逸脱抑制動作を行う。つまり、ECU17は、いわゆるLDA(Lane Departure Alert:レーンデパーチャーアラート)又はLDP(Lane Departure Prevention:レーンデパーチャープリベンション)を実現するための制御装置として機能する。車線逸脱抑制動作の具体的な処理内容ついては後に詳細に説明する。
ECU17は更に、車両の挙動を安定させるための車両挙動安定動作を行う。つまり、ECU17は、いわゆるVSC(Vehicle Stability Control:ビークルスタビリティーコントロール)を実現するための制御装置としても機能する。車両挙動安定動作については、既存の技術を適用することが可能であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
車線逸脱抑制動作及び車両挙動安定動作を行うために、ECU17は、ECU17の内部に論理的に実現される処理ブロックとして、データ取得部171と、LDA制御部172と、状態判定部173と、VSC制御部174とを備えている。LDA制御部172は、車線逸脱抑制動作を行う。状態判定部172は、車線逸脱抑制動作及び車両挙動安定動作の実行態様を決定するための判定処理を行う。VSC制御部174は、車両挙動安定動作を行う。なお、LDA制御部172は、「制御手段」の一具体例であり、状態判定部173は、「判定手段」の一具体例である。
<車線逸脱抑制動作>
続いて、ECU17が行う車線逸脱抑制動作について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作の流れを示すフローチャートである。
続いて、ECU17が行う車線逸脱抑制動作について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作の流れを示すフローチャートである。
図2において、データ取得部171は、車速センサ151、車輪速センサ152、ヨーレートセンサ153、加速度センサ154の各々の検出結果を示す検出データ、及びカメラ155が撮像した画像を示す画像データを取得する(ステップS101)。
LDA制御部172は、ステップS101の処理において取得された画像データを解析することで、車両1が現在走行している走行車線の車線端(本実施形態では、車線端の一例として“白線”を挙げる)を、カメラ155が撮像した画像内で特定する(ステップS102)。尚、白線の認識方法については、既存の技術を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
LDA制御部172は、ステップS102の処理において特定された白線に基づいて、車両1が現在走行している走行車線が直線路であるかカーブ路であるかを判定し、カーブ路であると判定された場合は、走行車線の曲率半径を算出する(ステップS103)。なお、走行車線の曲率半径は、実質的には、白線の曲率半径と等価である。このため、LDA制御部172は、ステップS102の処理において特定された白線の曲率半径を算出するとともに、当該算出した曲率半径を、走行車線の曲率半径として取り扱ってよい。
LDA制御部172は、更に、ステップS102の処理において特定された白線に基づいて、車両1の現在の横位置、横速度及び逸脱角を算出する(ステップS104)。ここで、「横位置」は、走行車線が延伸する方向(車線延伸方向)に直交する車線幅方向に沿った、走行車線の中央から車両1までの距離(典型的には、車両1の中央までの距離)を意味する。「横速度」は、車線幅方向に沿った車両1の速度を意味する。「逸脱角」は、走行車線と車両1の前後方向軸とがなす角度(即ち、白線と車両1の前後方向軸とがなす角度)を意味する。
LDA制御部172は、更に、許容逸脱距離を設定する(ステップS105)。許容逸脱距離は、走行車線から車両1が逸脱する場合において走行車線からの車両1の逸脱距離(即ち、白線からの車両1の逸脱距離)の許容最大値を示す。
許容逸脱距離は、例えば次のように設定されてよい。即ち、LDA制御部172は、法規等の要請(例えば、NCAP:New Car Assessment Programmeの要請)を満たすという観点から許容逸脱距離を設定してよい。なお、許容逸脱距離の設定方法は、これに限定されない。
その後、LDA制御部172は、車両1が、現在走行している走行車線から逸脱する可能性があるか否か(即ち、車両1が走行車線から逸脱しそうであるか否か)を判定する(ステップS106)。例えば、LDA制御部172は、車両1の現在の速度、横位置及び横速度等に基づいて、車両1の将来の(例えば、数百ミリ秒〜数秒後の)位置を算出する。そして、LDA制御部172は、車両1の将来の位置と走行車線の中央とを比較して車両1の逸脱量を算出する。逸脱量の一例としては、車両1の将来の位置の走行車線の中央からの車線幅方向のずれ量が挙げられる。そして、LDA制御部172は、車両1の逸脱量が逸脱判定値より大きいか否かを判定する。車両1の逸脱量が逸脱判定値より大きいと判定された場合(例えば、将来の位置において、車両1が白線を跨ぐ又は踏む場合)、LDA制御部172は、車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定する。
ステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性がないと判定された場合(ステップS106:No)、図2に示す車線逸脱抑制動作は終了される。その後、LDA制御部172は、第1所定期間(例えば、数ミリ秒から数十ミリ秒)が経過した後に再度図2に示す車線逸脱抑制動作を開始する。つまり、図2に示す車線逸脱抑制動作は、第1所定期間に応じた周期で繰り返し行われる。
他方で、ステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定された場合(ステップS106:Yes)、LDA制御部172は、車両1が走行車線から逸脱する可能性がある旨を、車両1の運転者に対して警告する(ステップS107)。具体的には、LDA制御部172は、例えば車両1が走行車線から逸脱する可能性があることを示す画像を表示するように、ディスプレイ16を制御する、及び/又は、車両1が走行車線から逸脱する可能性があることをステアリングホイール141の振動でドライバに伝えるように、振動アクチュエータ142を制御する。
上記ステップS107の処理と並行して、LDA制御部172は、BLDA(Brake−LDA)制御を行う(ステップS108〜S111)。このとき、LDA制御部172は、BLDA制御に係るフラグをオンにする。BLDA制御は、走行車線からの車両1の逸脱距離が許容逸脱距離内に収まるように、逸脱を回避する方向のヨーモーメントを車両1に対して付与する制御である。
本実施形態に係るBLDA制御では、左右輪の制動力差が生じるように、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRのうちの少なくとも一つに制動力が付与され、その結果として、逸脱を回避する方向のヨーモーメントが車両1に付与される。以下、BLDA制御について具体的に説明する。
LDA制御部172は、走行車線の中央から離れるように走行している車両1が、走行車線の中央に向かう目標軌道(即ち、目標とする走行ライン)に沿って走行するように目標ヨーレートを演算する(ステップS108)。
続いて、LDA制御部172は、車両1に目標ヨーレートを発生させるために、車両1に付与すべきヨーモーメントを目標ヨーモーメントとして算出する(ステップS109)。例えば、LDA制御部172は、所定の変換関数に基づいて目標ヨーレートを目標ヨーモーメントに変換することで、目標ヨーモーメントを算出してもよい。
続いて、LDA制御部172は、目標ヨーモーメントを達成可能な制動力を算出する。このとき、LDA制御部172は、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々に付与される制動力を個別に算出する。
LDA制御部172は更に、ステップS109で算出した制動力を発生させるために必要な油圧を指定する圧力指令値を算出する(ステップS110)。このとき、LDA制御部172は、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRの夫々の内部での油圧を指定する圧力指令値を個別に算出する。
次に、LDA制御部172は、圧力指令値に基づいて、ブレーキアクチュエータ131を制御する(ステップS111)。この結果、圧力指令値に応じた制動力が、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRのうちの少なくとも一つに付与される。つまり、左右輪の制動力差によって、逸脱を回避する方向のヨーモーメントが車両1に付与される。
その後、LDA制御部172は、第1所定期間が経過した後に再度図2に示す車線逸脱抑制動作を開始する。このとき、BLDA制御に係るフラグがオンであるので、BLDA制御に起因するヨーモーメントが車両1に付与されたまま、車線逸脱抑制動作が開始される。再度実施されるステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定された場合(ステップS106:Yes)、ステップS107以降の処理が行われるので、BLDA制御に起因するヨーモーメントの車両1への付与が継続される。他方、再度実施されるステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性がないと判定された場合(ステップS106:No)、BLDA制御に係る制御フラグがオフにされると共に、BLDA制御に起因するヨーモーメントの車両1への付与が終了される。
<制御選択動作>
次に、車線逸脱抑制動作及び車両挙動安定動作を適切に実行するための制御選択動作について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る制御選択動作の流れを示すフローチャートである。なお、制御選択動作は、車両1が車線を逸脱しそうである場合(具体的には、図2のステップS106でYesと判定された場合)に実行される動作である。制御選択動作の一部の処理は、図2のステップS107からステップS109の処理(即ち、油圧を算出するよりも前の処理)と並行して実行されてもよい。
次に、車線逸脱抑制動作及び車両挙動安定動作を適切に実行するための制御選択動作について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る制御選択動作の流れを示すフローチャートである。なお、制御選択動作は、車両1が車線を逸脱しそうである場合(具体的には、図2のステップS106でYesと判定された場合)に実行される動作である。制御選択動作の一部の処理は、図2のステップS107からステップS109の処理(即ち、油圧を算出するよりも前の処理)と並行して実行されてもよい。
図3において、制御選択動作時には、まずデータ取得部171が、車速センサ151、車輪速センサ152、ヨーレートセンサ153、加速度センサ154の各々の検出結果を示す検出データを取得する(ステップS201)。
続いて、状態判定部173は、ステップS201で取得された各検出データを利用して、車両1が挙動不安定になる可能性があるか否かを判定する(ステップS202)。なお、「挙動不安定になる可能性がある」とは、車線逸脱抑制動作を実行することに起因して、車両1の走行に不具合が生じる(例えば、スピンしてしまう)可能性がある状態を意味しており、例えば検出データと所定の閾値を比較することで判定することができる。より具体的には、状態判定部173は、例えば車速Vvが所定速度以上であり、車両の横加速度Gyが所定加速度以上であり、推定ヨーレート(即ち、車両1における各種パラメータを利用して推定されるヨーレート)と、実ヨーレート(即ち、ヨーレートセンサ153によって検出されるヨーレートγ)との乖離が所定値以上である場合に、車両1が挙動不安定になる可能性があると判定する。
車両1が挙動不安定になる可能性がないと判定された場合(ステップS202:No)、LDA制御部172は、第1BLDA制御を実行する(ステップS203)。第1BLDA制御は、通常時に実行されるBLDA制御(即ち、図2のステップS108〜S111の制御)であり、前輪121FL又は121FRに付与される制動力と、後輪121RL又は121RRに付与される制動力とが概ね等しくなるように油圧が算出される。即ち、第1BLDA制御では、前輪121FL又は121FRに供給される油圧と、後輪121RL又は121RRに供給される油圧とが、概ね等しい値として算出される。
他方、車両1が挙動不安定になる可能性があると判定された場合(ステップS202:Yes)、LDA制御部172は、第2BLDA制御を実行する(ステップS204)。第2BLDA制御は、特別な条件下でのみ実行されるBLDA制御であり、前輪121FL又は121FRに付与される制動力の方が、後輪121RL又は121RRに付与される制動力よりも大きくなるように油圧が算出される。即ち、第2BLDA制御では、前輪121FL又は121FRに供給される油圧の方が、後輪121RL又は121RRに供給される油圧よりも大きい値として算出される。
第2BLDA制御を実行する場合には、第1BLDAを実行する場合と比較して、制動力を付与した後の前輪121FL又は121FRのスリップ率を大きくすることができる。より具体的には、路面状態が悪いことに起因する前輪121FL又は121FRのスリップ率の変動を大きくすることができる。この結果、走行車線の路面状態(言い換えれば、路面の滑りやすさ)をより適切に判定することが可能となる。また、第2BLDA制御を実行する場合には、第1BLDAを実行する場合と比較して、後輪122RL又は122RRの横力も大きくなる。この結果、車両の挙動安定性も向上する。
ステップS204の第2BLDA制御によって車両1に制動力が付与されると、状態判定部173は、車両1のスリップ率を取得する(ステップS205)。スリップ率は、例えば車速センサ151で検出される車速Vvと、車輪速センサ152で検出される車輪速Vwから算出することができる。
続いて、状態判定部173は、ステップS205で取得したスリップ率に基づいて、車両1が走行している走行車線の路面状態が悪いか否かを判定する(ステップS206)。なお、ここでの「路面状態が悪い」とは、第2BLDA制御(言い換えれば、車線逸脱抑制動作)よりも、車両挙動安定制御を優先的に実行すべき程度に路面状態が悪い状態を意味しており、具体例としては低μ路面(即ち、滑りやすい路面)が挙げられる。
路面状態が悪いと判定された場合(ステップS206:Yes)、VSC制御部173は、車両挙動安定制御(即ち、VSC制御)を実行する。これにより、車両1が走行する路面状態が悪い場合であっても、車両1の挙動が不安定になってしまうことを抑制できる。なお、VSC制御が実行される場合、それまで実行されていた第2BLDAは基本的には中止されることになる。ただし、第2BLDA制御が、VSC制御によって車両1に付与されるヨーモーメントと同じ方向のヨーモーメントを付与する場合であれば、VSC制御と同時に第2BLDA制御が実行されてもよい。
他方、路面状態が悪いと判定されない場合(ステップS206:No)、LDA制御部172は、第2BLDA制御を実行する。即ち、それまで実行されていた第2BLDA制御が継続して実行される。これは、路面状態が悪くないと判定されることで、車両挙動安定動作よりも、車線逸脱抑制動作を優先的に実行すべき状態であると判断できるからである。なお、路面状態が悪いと判定されなかったことで、車両1が挙動不安定になる可能性も低いと推測できるため、第2BLDA制御に代えて、第1BLDAが実行されてもよい。
<技術的効果>
次に、上述した第2BLDA制御によって発揮される技術的効果について、図4を参照して具体的に説明する。図4は、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作時の各パラメータの変動を比較例と共に示すタイムチャートである。
次に、上述した第2BLDA制御によって発揮される技術的効果について、図4を参照して具体的に説明する。図4は、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作時の各パラメータの変動を比較例と共に示すタイムチャートである。
図4に示すように、比較例に係る車線逸脱抑制装置によれば、車両1が挙動不安定になる可能性がある場合(具体的には、図3のステップS202でYesと判定される場合)でも、第1BLDA制御が実行される。このため、車両1が走行車線を逸脱しそうであるか否かを示すBLDA制御フラグがONとなる時点(時刻T2)において、ホイールシリンダ122FL及び122RL、又は122FR及び122RRに概ね等しい値の油圧が供給開始される。これにより、左前輪121FL及び左後輪121RL、又は右前輪121FR及び右後輪121RRに概ね等しい制動力が付与される。
第1BLDA制御によって制動力が付与されている間は、前輪121FL及び121FR、並びに後輪122RL及び122RRのスリップ率も夫々増加していく。そして、前輪121FL及び121FR、又は後輪122RL及び122RRいずれかのスリップ率が低μ判定閾値を超えると、路面が低μ路面である(即ち、路面状態が悪い)と判定され、第1BLDA制御が中止される(即ち、図3のステップS207のようにVSC制御へと切り替わる)。しかしながら、路面が悪いと判定された時点(時刻T4)では、ヨーレートが不安定挙動誘発閾値(即ち、車両の挙動が不安定になってしまうことが高いことを判定するための閾値)をすでに超えてしまっている。このため、時刻T4において第1BLDAを中止したとしても、車両の挙動が不安定になってしまう(例えば、スピンしてしまう)ことを回避できないおそれがある。
一方、本実施形態に係る車線逸脱抑制装置によれば、車両挙動不安定フラグがONとなっている状態(言い換えれば、図3のステップS202でYesと判定される場合)には、通常の第1BLDA制御に代えて、第2BLDA制御が実行される。具体的には、前輪121FL又は121FRに付与される制動力の方が、後輪121RL又は121RRに付与される制動力よりも大きくなるように油圧が算出される。
第2BLDA制御が実行される場合、第1BLDA制御が実行される場合と比較すると、制動力が付与された後のスリップ率の増加が大きくなる。より具体的には、後輪121RL又は121RRのスリップ率が小さくなる分、前輪121FL又は121FRのスリップ率が大きくなる。このため、本実施形態では、比較例においてスリップ率が低μ判定閾値を超える時刻T4よりも早い時刻T3において、スリップ率が低μ判定閾値を超える。よって、時刻T3の時点で、第2BLDA制御が中止される。この結果、ヨーレートも時刻T3の時点で上昇しなくなり、不安定挙動誘発閾値を超えることがない。従って、車線逸脱抑制動作に起因して車両の走行に不具合が発生してしまうことを回避できる。
以上のように、本実施形態に係る車線逸脱抑制装置によれば、車両1が挙動不安定になる可能性がある場合に第2BLDA制御が実行されるため、路面状態の判定が早期化され、結果として車両1の挙動が不安定になってしまうことを回避することができる。
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車線逸脱抑制装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
1 車両
131 ブレーキアクチュエータ
17 ECU
172 LDA制御部
173 状態判定部
174 VSC制御部
131 ブレーキアクチュエータ
17 ECU
172 LDA制御部
173 状態判定部
174 VSC制御部
Claims (1)
- 車両の前輪及び後輪に夫々設けられており、制動油圧を供給することで前記前輪及び前記後輪の各々に制動力を付与する制動手段を備える車両に搭載される車線逸脱抑制装置であって、
走行車線から前記車両が逸脱しそうである場合に、前記車両の前記走行車線からの逸脱を回避する方向のヨーモーメントが前記車両に付与されるように前記制動手段を制御する制御手段と、
前記制動手段によって前記制動手段を制御した後の前記車両のスリップ率に基づいて、前記車両が走行している走行車線の路面状態を判定する判定手段と
を備え、
前記制御手段は、前記後輪に設けられた前記制動手段に供給される制動油圧よりも、前記前輪に設けられた前記制動手段に供給される制動油圧が大きくなるように、前記後輪に設けられた前記制動手段及び前記前輪に設けられた前記制動手段を制御する
ことを特徴とする車線逸脱抑制装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017082715A JP2018177109A (ja) | 2017-04-19 | 2017-04-19 | 車線逸脱抑制装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017082715A JP2018177109A (ja) | 2017-04-19 | 2017-04-19 | 車線逸脱抑制装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018177109A true JP2018177109A (ja) | 2018-11-15 |
Family
ID=64282245
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017082715A Pending JP2018177109A (ja) | 2017-04-19 | 2017-04-19 | 車線逸脱抑制装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018177109A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112298137A (zh) * | 2020-02-26 | 2021-02-02 | 中国地质大学(北京) | 商用车气压制动系统的控制方法及整车制动方法 |
CN112298141A (zh) * | 2020-02-26 | 2021-02-02 | 中国地质大学(北京) | 一种整车制动系统的控制方法 |
-
2017
- 2017-04-19 JP JP2017082715A patent/JP2018177109A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112298137A (zh) * | 2020-02-26 | 2021-02-02 | 中国地质大学(北京) | 商用车气压制动系统的控制方法及整车制动方法 |
CN112298141A (zh) * | 2020-02-26 | 2021-02-02 | 中国地质大学(北京) | 一种整车制动系统的控制方法 |
CN112298137B (zh) * | 2020-02-26 | 2021-10-15 | 中国地质大学(北京) | 商用车气压制动系统的控制方法及整车制动方法 |
CN112298141B (zh) * | 2020-02-26 | 2021-10-15 | 中国地质大学(北京) | 一种整车制动系统的控制方法 |
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