以下、一実施形態について、図1〜図7に基づいて説明する。
図1には、一実施形態に係る露光装置100の概略的な構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
露光装置100は、照明系IOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRに形成されたパターンの像を感応剤(レジスト)が塗布されたウエハW上に投影する投影ユニットPU、ウエハWを保持してXY平面内を移動するウエハステージWST、及びこれらの制御系等を備えている。
照明系IOPは、光源、及び光源に送光光学系を介して接続された照明光学系を含み、レチクルブラインド(マスキングシステム)で設定(制限)されたレチクルR上でX軸方向(図1における紙面直交方向)に細長く伸びるスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明系IOPの構成は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されている。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
レチクルステージRSTは、照明系IOPの図1における下方に配置されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図3参照)によって、レチクルステージ定盤23上を、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定ストローク範囲で駆動可能となっている。レチクルステージ定盤23には、照明光ILの通路となるZ軸方向に貫通した所定形状の開口23aが、その中央部に形成されている(図2(B)参照)。
レチクルステージRST上には、レチクルRが載置されている。レチクルRは、図2(A)に示されるように、ほぼ正方形のガラス板から成り、その−Z側の面の中央にY軸方向に長い矩形のパターン領域PAが形成されている。以下では、パターン領域PAが形成されたレチクルRの−Z側の面をパターン面と呼ぶ。パターン面には、パターン領域PAのY軸方向の両側に近接して、パターン領域PAのX軸方向の両端の位置にレチクルアライメントマーク(以下、レチクルマークと略記する)RAが各一対(合計4つ)形成されている。この4つのレチクルマークRAは、電子線露光装置により、パターン領域PAのパターン(露光用パターン)と同時にパターン面に描画されたものである。本実施形態では、4つのレチクルマークとパターン領域PAとの位置関係は、設計値通りである、すなわち、パターン領域PAのパターン(露光用パターン)とレチクルマークRAとを描画する電子線露光装置の描画誤差は零(あるいは無視出来るほど小さいもの)とする。
レチクルステージRSTは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向に長い矩形の板部材から成り、その上面には、Y軸方向の寸法がレチクルRのY軸方向の長さより大きく、かつX軸方向の寸法がレチクルRのX軸方向の長さより僅かに大きい矩形の凹部10が形成され、該凹部10には、そのX軸方向の中央部に、Z軸方向に貫通した開口10aがY軸方向の全体に渡って形成されている。
レチクルRは、パターン領域PAが開口10a内に位置する状態で、凹部10内の−Y側の端部近傍に配置されている。レチクルRは、開口10aのX軸方向両側の段部の上面に設けられた不図示の吸着部に例えば真空吸着されている。
凹部10内部の+Y側端部近傍には、レチクルRから+Y側に所定の間隔を隔てて、X軸方向に伸びるレチクルフィデュシャル板(以下、フィデュシャル板と略記する)RFMが、開口10aのX軸方向両側の段部上面間に架設されている。フィデュシャル板RFMは、その長手方向の両端部が、開口10aのX軸方向両側の段部上面に固定されている。フィデュシャル板RFMは、低熱膨張率のガラス、例えばショット社のゼロデュア(商品名)などから成り、その下面(−Z側の面)には、一対のアライメントマークFAが、X軸方向に関してレチクルR上の一対のレチクルマークRAと同じ間隔で形成されている。アライメントマークFAは、レチクルマークRAと同じマークであるが、ここでは識別のため、異なる符号を用いている。また、図3のように、レチクルRがレチクルステージRST上にロードされた状態では、一対のレチクルマークRAのそれぞれと、一対のアライメントマークFAとは、ほぼ同一のX位置に位置している。フィデュシャル板RFMの下面(−Z側の面)には、一対のアライメントマークFAに長手方向の一端部と他端部とが近接する状態で、種々のマーク(例えば、空間像計測に用いられる各種計測マークをそれぞれ含む複数のAISマークブロックなど)が形成されたマーク領域MAが形成されている。マーク領域MAとパターン領域PAとは、ほぼ同一高さとなるように設定されている。
図1に戻り、レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)14によって、移動鏡12(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出されている。レチクル干渉計14の計測情報は、主制御装置20(図1では不図示、図3参照)に供給される。なお、上述したレチクルステージRSTのXY平面内の位置情報は、レチクル干渉計14に代えて、エンコーダにより計測を行っても良い。
さらに、図1、図2(A)及び図2(B)に示されるように、レチクルステージ定盤23の内部には、レチクルRのパターンの経時的な変動の計測に用いられるパターン計測装置30が、複数(例えば5つ)、一例としてX軸方向に所定間隔で設けられている。なお、パターン計測装置30については後述する。
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系IOPからの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
投影光学系PLとしては、一例としてZ軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数枚、例えば10〜20枚程度の屈折光学素子(レンズ素子)のみから成る屈折系が用いられている。この投影光学系PLを構成する複数枚のレンズ素子のうち、物体面側(レチクルR側)の複数枚のレンズ素子は、不図示の駆動素子、例えばピエゾ素子などによって、Z軸方向(投影光学系PLの光軸方向)にシフト駆動、及びXY面に対する傾斜方向(すなわちθx方向及びθy方向)に駆動可能な可動レンズとなっている。そして、結像特性補正コントローラ48(図1では不図示、図3参照)が、主制御装置20からの指示に基づき、各駆動素子に対する印加電圧を独立して調整することにより、各可動レンズが個別に駆動され、投影光学系PLの種々の結像特性(倍率、歪曲収差、非点収差、コマ収差、像面湾曲など)が調整されるようになっている。なお、可動レンズの移動に代えて、あるいはこれに加えて、鏡筒40の内部の隣接する特定のレンズ素子間に気密室を設け、該気密室内の気体の圧力を結像特性補正コントローラ48が制御する構成にしても良いし、照明光ILの中心波長を結像特性補正コントローラ48がシフトできる構成を採用しても良い。これらの構成によっても、投影光学系PLの結像特性の調整が可能である。
ウエハステージWSTは、リニアモータ又は平面モータ等を含むステージ駆動系24(図1では、便宜上ブロックにて示されている)によって、ウエハステージ定盤22上をX軸方向、Y軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向に微小駆動される。ウエハステージWST上に、ウエハWが、ウエハホルダ(不図示)を介して真空吸着等によって保持されている。なお、ウエハステージWSTに代えて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に移動する第1ステージと、該第1ステージ上でZ軸方向、θx方向及びθy方向に微動する第2ステージとを備える、ステージ装置を用いることもできる。
ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(回転情報(ヨーイング量(θz方向の回転量θz)、ピッチング量(θx方向の回転量θx)、ローリング量(θy方向の回転量θy))を含む)は、レーザ干渉計システム(以下、干渉計システムと略記する)18によって、移動鏡16(又はウエハステージWSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。なお、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報は、干渉計システム18に代えて、エンコーダにより計測を行っても良い。
干渉計システム18の計測情報は、主制御装置20に供給される(図3参照)。主制御装置20は、干渉計システム18の計測情報に基づいて、ステージ駆動系24を介してウエハステージWSTのXY平面内の位置(θz方向の回転を含む)を制御する。
また、図1では図示が省略されているが、ウエハWの表面のZ軸方向の位置及び傾斜量は、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される斜入射方式の多点焦点位置検出系から成るフォーカスセンサAFS(図3参照)によって計測される。このフォーカスセンサAFSの計測情報も主制御装置20に供給される(図3参照)。
また、ウエハステージWST上には、その表面がウエハWの表面と同じ高さである基準板FPが固定されている。この基準板FPの表面には、次に説明するアライメント検出系ASのベースライン計測等に用いられる第1基準マーク、及び後述するレチクルアライメント検出系で検出される一対の第2基準マークなどが形成されている。
投影ユニットPUの鏡筒40の側面には、ウエハWに形成されたアライメントマーク又は第1基準マークを検出するアライメント検出系ASが設けられている。アライメント検出系ASとして、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマークの画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式の結像式アライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。
露光装置100では、さらに、レチクルステージRSTの上方に、レチクルステージRSTに載置されたレチクルR上の同一Y位置にある一対のレチクルマークRAを同時に検出可能な一対のレチクルアライメント検出系13(図1では不図示、図3参照)がX軸方向に所定距離隔てて設けられている。各レチクルアライメント検出系13は、CCDカメラなどの撮像素子で撮像したアライメントマークの画像データを画像処理してマーク位置を計測するVRA(Visual Reticle Alignment)方式の検出系であり、それぞれ、照明光ILと同じ波長の照明光をアライメントマークに照射するための落射照明系と、そのアライメントマークの像を撮像するための検出系(いずれも不図示)とを含んで構成されている。検出系による撮像結果(すなわちレチクルアライメント検出系13によるマークの検出結果)は、主制御装置20に供給されている。各レチクルアライメント検出系13は、照明光ILの光路上に挿脱自在のミラーを有し、該ミラーが、照明光ILの光路上に挿入されると、落射照明系(不図示)から射出された照明光をレチクルR上に導き、且つその照明によりレチクルR→投影光学系PL→ウエハステージWST上の物体(例えば基準板FP)→投影光学系PL→レチクルRという経路を経た検出光をレチクルアライメント検出系13の検出系に導く。なお、上記ミラーは、露光シーケンスが開始されると、レチクルR上のパターン領域PAのパターン(露光用パターン)をウエハW上に転写するための照明光ILの照射の前に、主制御装置20からの指令に基づいて不図示の駆動装置により、照明光ILの光路外に退避される。
次に、5つのパターン計測装置30について説明する。5つのパターン計測装置30は、図2(A)に示されるように、X軸方向に離間して配置されている。5つのパターン計測装置30のY位置は、図2(B)に示されるように、投影光学系PLの光軸AXから+Y側に幾分オフセットした位置に配置されている。各パターン計測装置30は、後述するように、ターゲットからのスペックルに関する情報を取得するものであるから、以下では、スペックルセンサ30と呼び、各センサの識別のため、+X側から順にスペックルセンサ30R2、スペックルセンサ30R1、スペックルセンサ30C、スペックルセンサ30L1及びスペックルセンサ30L2と称する。ここで、「スペックルに関する情報」とは、計測光(例えばコヒーレントなレーザー光)がターゲット(物体としてのレチクルなど)の表面で散乱した反射光が互いに干渉して生成された明暗の斑点模様に関する情報であり、具体例としてはスペックル、スペックルノイズ、あるいはスペックルパターンなどが含まれる。
X軸方向の両端部に位置するスペックルセンサ30R2及びスペックルセンサ30L2は、平面視においてレチクルR上の一対のレチクルマークRAと重なり得る位置に設けられている。
5つのスペックルセンサ30は、配置が異なる点を除き同じ構成から成るので、以下ではスペックルセンサ30R2を代表的に取り上げて、その構成等について説明する。
スペックルセンサ30R2は、エンコーダの一種であり、例えば米国特許出願公開第2004/0218181号明細書に開示されているスペックル画像ベースの光学式位置トランスデューサと同様に構成されている。すなわち、スペックルセンサ30R2は、レチクルステージ定盤23の内部に設けられ、筐体31、光源、レンズ32、ピンホールを有するピンホール板、及び光検出器、並びに信号生成処理回路などを備えている(図2(B)などでは、筐体31、レンズ32のみ図示)。
光源は、筐体31内部に収納され、筐体31に設けられた光透過部を介してターゲットとなる光学拡散粗面(図2(B)の場合、レチクルRのパターン面のパターン領域PA部分)にその法線方向(Z軸方向)に対して傾斜した方向からレーザビーム(あるいは他のコヒーレントな光ビーム)LBを照射する。コヒーレントな光ビームの光源としては、レーザビームを放射する光源が一般的である。しかし、レーザビームの代わりに、コヒーレントな光ビームを放射する可能性があるどのような他の既知又は今後開発されるコヒーレント光源でも使用可能である。なお、コヒーレントな光ビームの光源を用いるのは、白色光などに比べてスペックルの高精度な計測が可能だからである。
レンズ32は、筐体31の上壁(+Z側の壁面)に形成された開口内に配置され、その光軸がZ軸方向に一致する状態で筐体31に固定されている。レンズ32が配置された筐体31の上壁の上面は、レチクルステージ定盤23の上面とほぼ一致している。
ピンホール板(不図示)は、そのピンホールの中心が、レンズ32の光軸とほぼ一致する状態で、レンズ32の−Z側の後側焦点面に配置されている。ピンホール板から−Z側に離れて光検出器(不図示)が配置されている。この場合、レンズ32及びピンホール板を含む光学系は、テレセントリックな光学系である。
光検出器としては、例えばチャージ・カップルド・デバイス(CCD)、CMOS光感応要素の配列などが用いられる。
信号生成処理回路は、光源及び光検出器に接続され、例えば米国特許出願公開第2004/0218181号明細書に開示される信号生成処理回路と同様に構成されている。
ここで、スペックルセンサ30R2によるスペックルの検出原理について、簡単に説明する。図2(B)に示されるように、スペックルセンサ30R2内部の光源からZ軸に対して斜めに射出されたレーザビームLBがターゲットとなる光学拡散粗面(図2(B)の場合、レチクルRのパターン面のパターン領域PA)の一部の領域、すなわち、パターンの一部を含むパターン面における領域に照射され、その領域から散乱光、回折光、あるいは回折光同士の干渉光などが発生する。そして、これらの光がレンズ32によって集光され、ピンホール板上のピンホールを含む領域に投影される。そして、この光は、ピンホールを通過してレンズ32の光軸に沿って光検出器の受光面上に投影される。これにより、光検出器の検出情報が、信号生成処理回路に送られ、該信号生成処理回路によって、例えば米国特許出願公開第2004/0218181号明細書に開示されている手法により、スペックルが検出される。
なお、光学拡散粗面としては、レチクルRのパターン面に限られずレチクルRの所定面でも良い。レチクルRの所定面としては、レチクルRのパターン面の他に、例えばレチクルRの上面(パターン面と反対側の面)やレチクルRの側面などを所定面としても良い。
この場合、前述の如く、テレセントリック光学系が採用されているので、スペックルセンサ30R2は、パターン面とレチクルステージ定盤23の上面との間のギャップの変化に敏感ではない。さらに、ピンホール板が用いられているので、スペックル(画像)のサイズはピンホールの寸法のみに依存し、特にレンズ32の如何なるレンズパラメータに対しても独立である。
その他のスペックルセンサ30R1、30C、30L1及び30L2は、上記スペックルセンサ30R2と同様に構成されている。5つのスペックルセンサ30R2、30R1、30C、30L1及び30L2の信号生成処理回路からのスペックルの情報は、主制御装置20に供給されるようになっている(図3参照)。5つのスペックルセンサ30R2、30R1、30C、30L1及び30L2それぞれの検出領域は、それぞれの光源からのレーザビームLBのパターン面上における照射領域(それぞれのレンズ32の+Z側の領域)であり、これらの照射領域は、スペックルセンサ30R2、30R1、30C、30L1及び30L2の配置に応じてパターン面上でX軸方向に離間して配置されている(図2(A)中の5つのレンズ32の配置参照)。
図3には、露光装置100の制御系を中心的に構成する主制御装置20の入出力関係がブロック図にて示されている。主制御装置20は、マイクロコンピュータ(あるいはワークステーション)などを含み、露光装置100の全体を統括制御する。
次に、本実施形態に係る露光装置100で行われる、レチクルRのパターン領域PA内のパターンの光軸AXに交差する、例えば直交するXY平面と平行なパターン面内の変動量(歪み量)の計測方法について説明する。
まず、計測の原理について簡単に説明する。
最初、その露光用パターン(レチクルR)が初めて使われる際に一度だけレチクルステージRSTを介してレチクルRを所定位置に位置決めしてスペックルセンサ30を用いてレチクルRのパターン領域PAの少なくとも一部の領域、すなわちパターンの一部を含むパターン面の一部の領域のスペックルの検出を行い、その検出結果を基準状態(原点状態)におけるスペックルの情報として記憶しておく。なお、上述したスペックルの検出はパターンの全部を含むパターン面(例えばパターン領域PAの全域)に対して行っても良い。
上記の基準状態におけるスペックルの検出が行われた時点から所定時間が経過した後には、例えばその所定時間の間に照明光ILの照射が行われる場合には、レチクルの熱変形(熱膨張など)により、レチクルRのパターン領域PA(の各部)がパターン面内で数nmレベル変動(変位)する。従って、このとき、上述したレチクルRのパターン領域PAの一部の領域を検出して得られるスペックルは、その検出時にレチクルRを上記所定位置に位置決めしていたとすると、上記の数nmレベルの変動に応じて変化している。
そこで、上記所定位置にレチクルRを位置決めしてスペックルセンサ30を用いてレチクルRのパターン領域PAの一部の領域のスペックルの検出を行い、予め検出し記憶しておいた基準状態におけるスペックルの情報と、後に検出したスペックルの情報との差分を用いて所定の演算を行い、その差分をパターン領域PAの変動量(ΔX、ΔY)に換算する。ここでは、レチクルRを所定の位置に位置決めして、2つの時点で、パターン面の同一領域についてスペックルの検出を行う場合について説明したが、レチクルRを移動しながら、検出を行う場合にも、上記と同様に、後の検出時に検出したスペックルの情報と基準状態で予め検出して記憶しておいたスペックルの情報との差分に基づいて、パターン領域PAの一部の領域の変動量(ΔX、ΔY)を求めることができる。レチクルRの位置情報は、レチクル干渉計14によって、0.25nmの分解能で、正確に計測できるので、後のスペックルの検出時と基準状態におけるスペックルの検出時と、で、レチクルステージRST(レチクルR)を同じように動かす限り、同一座標位置にあるパターンからのスペックル同士の比較(差分)が可能になる。
次に、5つのスペックルセンサを用いる、レチクルRのパターン領域PAのパターン(露光用パターン)の変動量の計測方法の具体例について説明する。
まず、ある特定のレチクルRが初めてレチクルステージRST上にロードされた時、そのレチクルRの露光用パターンが作り出すスペックルを計測(検出)する動作(後述の初期計測動作)が行われ、その計測結果が、主制御装置20が備える記憶装置(不図示)に記憶される。レチクルR(パターン)が異なれば、そこから得られるスペックルも固有のものとなるため、初期計測動作はレチクル毎に必ず1回だけ行う必要がある。本実施形態では、使用される可能性のあるレチクルについては、次に説明する初期計測動作が行われ、その計測結果が、主制御装置20が備える記憶装置に記憶されているものとする。本実施形態では、使用される可能性のあるいずれのレチクルにおいても、4つのレチクルマークRAとパターン領域PAとの位置関係は、設計値通りであるものとする。
初期計測動作は、この計測対象のレチクルRに照明光ILが未だ照射されていない基準状態、すなわちレチクルRが加熱されておらず、伸縮もしておらず、今後の露光動作の基準とすることが出来る状態で行われることが望ましい。
具体的には、主制御装置20は、図4(A)に示されるように、例えば走査露光時と同様にレチクルステージRSTを同図中に白抜き矢印で示される走査方向(スキャン方向)に等速移動させることで、レチクルステージRST上に固定されたフィデュシャル板RFMと計測対象のレチクルRとを、走査方向(スキャン方向)に走査しながら、5つのスペックルセンサ30R2、30R1、30C、30L1及び30L2の信号生成処理回路からのスペックルの検出信号(スペックル信号)を、連続的に取得する。
上記のスペックル信号の取得は、レチクル干渉計14による計測信号の取り込みのタイミングに同期して行われる。すなわち、レチクル干渉計14の計測値とスペックル信号とが、相互に対応付けられた情報が、主制御装置に20によって、記憶装置内に蓄積される。この時点で得られるスペックル信号は、レチクルRの露光用パターン由来のランダムなスペックルの情報であり、利用できる位置情報は何も得られていない。あくまで、基準とすべき信号波形が得られただけの状態である。
図4(B)には、一例としてこのときスペックルセンサ30L1から得られるスペックルの情報が概念図として示されている。図4(B)において、横軸は、ステージ座標系上におけるレチクルステージRSTのY座標を示し、縦軸は、スペックル信号を示す。なお、図4(B)では、図示の便宜上から概念図としてスペックル信号がスカラー量として示されているが、実際には、スカラー量でない多次元の情報である。また、符号Sf0で示される信号波形は、フィデュシャル板RFMの一部の領域から得られるスペックル信号の波形を示し、符号Sp0で示される信号波形は、レチクルRのパターン領域PAの一部の領域から得られるスペックル信号の波形を示す。
一方、各ロットのウエハの露光開始直前、すなわちロット先頭に行われる、レチクルアライメント時には、主制御装置20は、通常のスキャナと同様に、一対のレチクルアライメント検出系13及びウエハステージWST上の基準板FPの一対の第2基準マーク、並びに4つのレチクルマークRAを用いてレチクルアライメント動作を行う。これに加え、主制御装置20は、前述した初期計測動作時と同様にして、レチクルステージRSTを走査方向(スキャン方向)に等速移動させて、レチクルステージRST上に固定されたフィデュシャル板RFMとレチクルRとを、走査方向(スキャン方向)に走査させながら、5つのスペックルセンサ30R2、30R1、30C、30L1及び30L2の信号生成処理回路からのスペックル信号を、レチクル干渉計14による計測信号の取り込みのタイミングに同期して連続的に取得し、記憶装置内に蓄積する。
次いで、主制御装置20は、このレチクルアライメント時の計測によって得られたスペックルと、予め取得済みのそのレチクルRの基準状態におけるスペックルとを比較することで、計測時にレチクルRのパターン領域PAの各部が基準状態に対してどれだけ変位しているかを演算により求める。
一例として、スペックルセンサ30L1を用いた計測について説明すると、例えば、図5(B)に概念図として示される計測時に得られたスペックルの情報(信号波形Sf、Sp参照)と、図5(A)に概念図として示される基準状態におけるスペックルの情報(信号波形Sf0、Sp0参照)との差分から、図5(C)及び図5(D)にそれぞれ概念図として示される、基準状態に対するターゲットの各部の変動量(X変位ΔX、及びY変位ΔY)が求められる。ターゲットとしては、パターン領域PAの一部の他、フィデュシャル板RFMの一部(及びレチクルR上のレチクルマークRA)が含まれる。
上記と同様の基準状態に対するターゲットの各部の変動量(X変位ΔX、及びY変位ΔY)が、残り4つのスペックルセンサ30L2、30C、30R2、30R1のそれぞれを用いた計測結果として、求められる。
しかるに、各スペックルセンサ30の筐体31の取り付け位置あるいは取り付け状態は、長時間の間には変動すると考えられ、これにより各スペックルセンサ30の出力にドリフトが生じ、このドリフトに起因して前述の変動量に計測誤差が生じる。本実施形態では、このスペックルセンサの出力の経時的なドリフトに起因する前述の変動量の計測誤差を除去するため、フィデュシャル板RFMが用いられる。すなわち、フィデュシャル板RFMは、レチクルRとは異なり、露光開始後長時間経過しても、熱変形などが生じる恐れがないので、フィデュシャル板RFMから得られるスペックルは、計測時においても基準状態から変化しない筈である。従って、例えば図5(C)及び図5(D)などでフィデュシャル板RFMについて、得られているX変位ΔX、及びY変位ΔYは、対応するスペックルセンサ(この場合、スペックルセンサ30L1)の出力の経時的なドリフトによる変動成分(ドリフト成分とも称する)であると考えることができる。そこで、主制御装置20は、計測時に同一のスペックルセンサの計測結果から得られた、レチクルパターン領域PA部分のX変位ΔX及びY変位ΔYから、フィデュシャル板RFM部分のX変位ΔX、Y変位ΔYを差し引くことで、上記のスペックルセンサの出力の経時的なドリフトに起因する前述の変動量の計測誤差を除去する。
例えば、図6(A)に点線で示されるようなスペックルのY変位ΔYが、フィデュシャル板RFM部分及びレチクルパターン領域PA部分から得られた場合、同図中に実線で示される位置まで、それらをY軸方向にシフトすることで、スペックルセンサの出力の経時的なドリフトに起因する計測誤差(ドリフト成分)を除去したパターン領域PA部分のY変位ΔYを得ることができる。X変位ΔXについても同様である。
そこで、主制御装置20は、図7(A)及び図7(B)に一例が示される、5つのスペックルセンサ30L2、30L1、30C、30R2、30R1それぞれで得られたターゲット各部のX変位ΔX及びY変位ΔYを前述のようにして求めた(各スペックル信号を変位情報に変換した後)、図7(A)及び図7(B)中の左側に示される各スペックルセンサの出力のドリフト成分を、右側に示される対応するパターン領域PA部分のX変位ΔX及びY変位ΔYから除去する。
しかる後、主制御装置20は、ドリフト成分が除去された5つのスペックルセンサ30L2、30L1、30C、30R2、30R1それぞれで得られたパターン領域PAの変動情報(ΔX及びΔY)と、レチクルRのパターン領域PAの各部の位置情報(4つのレチクルマークRAの位置を基準とする位置情報)とに基づいて、パターン領域PAの2次元的な歪形状(すなわちレチクルパターン領域PA内各部のXY平面内の変動情報(変位情報))をレチクルマークRAの位置を基準として求めることができる(図7(C)参照)。ここで、パターン領域PAの歪形状をレチクルマークRAの位置を基準として求めることができるのは、図7(A)及び図7(B)等には図示されていないが、実際には、スペックルセンサ30L2、30R2により、各2つのレチクルマークRAからのスペックルが計測され、結果的にそれらのレチクルマークRAの位置情報がスペックルの計測結果に含まれているからである。また、これまでは特に説明しなかったが、本実施形態では、レチクルアライメント後は、レチクルRの位置情報は、レチクルステージRSTの位置情報を計測するレチクル干渉計14で計測され、また、各スペックルセンサ30の設置位置、ひいてはその検出領域(レーザビームLBのパターン面上での照射領域)のステージ座標系上での位置座標は、既知である。従って、主制御装置20は、レチクル干渉計14で計測した位置情報、例えばレチクルステージRSTのY座標値(Y)がわかれば、レチクルRのY位置、及び対応するレチクルR上でのレーザビームLBの照射位置を算出することができる。従って、スペックルセンサ30L2、30R2で計測されたスペックルの情報のうち、どの部分がレチクルマークRAで発生したスペックルの情報であるかを、容易に判別できる。
本実施形態に係る露光装置100では、例えばロット先頭のウエハの処理に際しては、最初に、レチクルRがレチクルステージRST上にロードされ、主制御装置20によって一対のレチクルアライメント検出系13、アライメント検出系AS、並びに基準板FP(一対の第2基準マーク及び第1基準マーク)を用いて、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順に従ってレチクルアライメント及びアライメント検出系ASのベースライン計測が行われる。また、レチクルアライメントに際して、上で詳述した手順に従って、主制御装置20によって、パターン領域PAの2次元的な歪形状がレチクルマークRAの位置を基準として求められる。
次いで、ウエハWのウエハステージWST上へのロード(又はウエハ交換)が行われた後、主制御装置20により、アライメント検出系ASを用いて、ウエハW上の複数のアライメントマークを検出するアライメント計測(例えばEGA)が実行される。これにより、ウエハW上の複数のショット領域の配列座標が求められる。なお、アライメント計測(EGA)の詳細は、例えば、米国特許第4,780,617号明細書等に開示されている。
次いで、主制御装置20により、アライメント計測の結果に基づいて、ウエハW上の複数のショット領域の露光のための加速開始位置にウエハWを移動するショット間ステッピング動作と、前述の走査露光動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われ、ウエハW上の全ショット領域に、順次、レチクルRのパターンが転写される。
その露光に際して、主制御装置20は、レチクルアライメント時に求めた、レチクルRのパターン領域PAの2次元的な歪の情報に基づいて、レチクルステージ駆動系11、ステージ駆動系24及び結像特性補正コントローラ48の少なくとも1つを制御することで、レチクルRのパターン領域PA(露光用パターン)とウエハW上に既に形成されている複数のショット領域(下地パターン)との重ね合わせをより高精度に行う。この点を除き、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、従来と異なる点はないので、詳細説明は省略する。
露光が終了すると、露光済みのウエハWが、ウエハステージWST上からアンロードされる。その後、上述したウエハWのロード以降の動作が、繰り返し行われて、ロット内の複数のウエハが順次処理される。ロットの処理の終了後、同様の処理(レチクルアライメント及びこのレチクルアライメントに伴う前述のパターン領域PAの2次元的な歪形状の計測を含む)が次のロットのウエハに対して繰り返し行われる。なお、次のロットの処理に際しては、レチクル交換が行われ、異なるレチクルが用いられる場合もあるが、本実施形態では、その交換後のレチクルについても、前述したように、初期計測動作が行われ、その計測結果、すなわち基準状態におけるそのレチクルのパターン領域PAのスペックルの情報が、記憶装置に記憶されているので、前述と同様に、レチクルアライメントに際して、パターン領域PAの2次元的な歪形状の計測が行われる。
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、レチクルアライメントが行われる度に、主制御装置20により、スペックルセンサ30L1、30L2、30C、30R1、30R2を用いた前述の計測が行われ、レチクル干渉計14で計測されたレチクルステージRSTの位置情報と、スペックルセンサ30L1、30L2、30C、30R1、30R2で検出されたスペックルの情報とに基いて、レチクルRのパターン面に形成されたパターン領域PAのXY平面内の変動量(パターン領域PAの2次元的な歪み)が求められる。このため、照明光ILの照射によるレチクルRの熱変形により、投影光学系PLの光軸と交差する方向(例えばパターン領域PAにXY平面に平行な面内)での変位が生じていても、その変位を検出することが可能になる。特に、スペックル検出を利用するターゲットの変動量の検出は、FIA系と同様の画像処理方式の結像式センサによる画像の検出結果を利用するターゲットの変動量の検出に比べても精度の良い検出が可能である。従って、パターン領域PAのパターン面内の変動(形状変化)が非線形な変動(形状変化)であっても、その変動量を精度良く、検出することができる。
また、露光装置100によると、ウエハアライメント(EGA)後に行われる、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作における走査露光時に、レチクルRの露光用パターンとウエハW上の下地パターンとの重ね合わせのため、上述のパターン領域PAのXY平面内の変動量(パターン領域PAの2次元的な歪み)の情報に基づいて、主制御装置20によって、レチクルステージ駆動系11、ステージ駆動系24及び結像特性補正コントローラ48の少なくとも1つが制御される。従って、レチクルRの熱変形などに起因するパターン領域PA(露光用パターン)の歪みを伴う場合であっても、レチクルRの露光用パターンとウエハW上の下地パターンとの重ね合わせ精度の向上が可能になる。
なお、上記実施形態では、スペックルセンサ(パターン計測装置)30が、5つ設けられ、かつ照明領域IARの+Y側に所定量ずれた位置に、X軸方向に沿って所定間隔で配置された場合について説明した。しかしながら、スペックルセンサは、1つ、2つ、3つ4つ、あるいは6つ以上設けられていても良く、2つ以上設けられる場合には、それぞれの検出領域がパターン面(あるいはこの近傍の面)内で互いに異なる位置に配置されていることが望ましい。スペックルセンサは、2つ以上設けられる場合、それぞれの検出領域がX軸方向に限らず、Y軸に交差する方向に並んで配置されていても良い。ただし、スペックルセンサ(パターン計測装置)30は、レチクルステージRSTの移動範囲内で、レチクルRのパターン領域、及びフィデュシャル板RFMからのスペックルを検出可能な位置に配置されている必要はある。また、スペックルセンサが2つ以上設けられる場合には、X軸方向に沿って所定間隔で一列に配置される例に限られず、互いのセンサが少なくともX方向に関して離間していれば一列に配列しておらずとも良い。
また、上記実施形態では、ロット先頭毎に行われるレチクルアライメントに付随して、スペックルの計測を伴う前述のレチクルRのパターン領域PAの2次元的な歪みの計測を行う場合について説明した。しかしながら、これに限らず、原理的には上述のパターン領域PAの2次元的な歪みの計測は、レチクルステージRSTの動作中、例えば走査露光中などに、常時リアルタイムで実施することも考えられる。スペックルの検出によるパターンの変動量の計測は、空間像計測のような光強度の計測と異なり、レチクルステージRSTが高速で移動中でも、高精度な計測が可能である。
ただし、上記実施形態のように、複数のスペックルセンサの検出領域(計測点)が、光軸に対してスキャン方向にオフセットしている場合には、リアルタイム計測を行うと、その一部の計測動作はレチクルステージRSTの加減速中に行われることになる。この場合、加減速に伴う加速度によるレチクルの変形の影響を取り除くため、レチクルが加熱されていない状態でスキャン動作時に得られる信号をリファレンスとし、そこからの変化分で同様の処理を行えば良い。リアルタイム計測を行うことで、レチクルアライメント実施間隔内でのパターン領域各部の位置の変化も捉えることが可能になるので、重ね合せ精度の更なる向上が期待できる。
なお、上記実施形態では、レチクルステージRSTの走査方向の連続移動中に、5つのスペックルセンサによる計測(検出)を行う場合について説明したが、かかる連続計測では、記憶装置内に蓄積されるデータの量が膨大になることが考えられる。そこで、データ量の低減を目的として、レチクルステージRSTを走査方向の複数点(例えば5点)でステップ移動して、各ステップ位置でスペックルセンサによる計測(検出)を行う離散・静止計測を採用しても良い。連続計測とするか、離散・静止計測とするかは、例えば必要な計測精度との兼ね合いで決めても良い。
また、上記実施形態では、主制御装置20は、上記の連続計測に際し、レチクル干渉計14の計測情報と、スペックルセンサの計測情報とに基づいて、パターン領域の2次元的な歪み(パターン領域の各部の2次元平面内の変位)を計測する場合について説明した。しかしながら、これに限らず、レチクル干渉計14の計測情報と、スペックルセンサの計測情報とに基づいて、パターン領域の2次元的な歪みに加えてパターン領域のZ軸方向の変位をも計測することとしても良い。前述のスペックルセンサ30として、例えば特開2006−184091号公報などに開示される三角測量の原理で測定対象面の高さ方向位置を検出するようにした、画像相関変位計を採用することで、パターン領域PAの少なくとも一部の領域の2次元的な歪みに加えてその少なくとも一部の領域のZ軸方向の変位をも計測することが可能になる。
また、上記実施形態では、一例として複数(5つ)のスペックルセンサの検出領域が、投影光学系PLの光軸AXに対してスキャン方向にオフセットして配置された構成について説明したが、これに限らず、複数のセンサの少なくとも1つの検出領域は、照明光ILが通過する照明領域IARの一部の領域に設定されていても良い。例えば図8に示される変形例の露光装置のように、斜入射光学系を採用することで、スキャン方向に関して光軸AX上に複数のスペックルセンサ(パターン計測装置)の検出領域を配置する構成とすることも考えられる。本変形例の露光装置では、複数(5つ)のスペックルセンサ30’のそれぞれが、照射ユニット30Aと、受光ユニット30Bとによって構成されている。照射ユニット30Aは、筐体と該筐体に内蔵されたコヒーレント光源とを含み、受光ユニット30Bは、筐体と該筐体に内蔵されたレンズ、ピンホール板、及び検出器を含む。
本変形例の露光装置では、その他の部分の構成は、前述した実施形態に係る露光装置と同様になっている。
本変形例に係る露光装置によると、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作中でもレチクルRのパターン領域PAのスペックルの前述した連続計測が可能となる。このため、レチクルアライメントの際に、スペックルの計測シーケンスを追加する必要がなくなり、その分上記実施形態に比べてスループットの向上が可能になる。また、露光用パターンそのものの位置を直接計測しているため、この計測結果に基づいて、露光用パターンとウエハ上の下地パターンとの重ね合わせのためにレチクルステージ駆動系11を制御することは、レチクルステージRSTの位置決めを露光用パターンそのもので行っていることに相当する。従って、本変形例の露光装置によると、処理が簡便になるとともに、露光用パターンとウエハ上の下地パターンとの重ね合わせ精度も向上する。この場合、レチクルステージの位置情報を、格子部をターゲットとするヘッドを含むエンコーダシステムを用いて計測する場合などと異なり、格子部の変動などに起因するステージ座標系の変動の影響を受けなくなるため、重ね精度を確保する上で極めて有利である。ただし、この場合も、スペックルセンサ30’の出力のドリフトは生じ得るので、上記実施形態と同様にしてこのドリフト成分は取り除く必要がある。また、計測精度をより向上させるため、上述したレチクル干渉計14あるいはエンコーダシステムを併用してレチクルステージRSTのXY平面内の位置情報を計測しても良い。
なお、上記実施形態又は変形例(以下、上記実施形態等と称する)では、パターン領域の歪み(各部の変位)を検出するためのセンサとして、スペックルセンサを用いる場合について説明した。しかしながら、前述したように、露光開始前のレチクル(マスク)が基準状態にあるときに、レチクルの移動を伴う所定動作中に、レチクルの位置情報とパターン計測装置(センサ)によるパターン領域のパターンの検出情報とに基いて、パターンの第1情報を求め、露光開始後所定時間経過後に、前記所定動作中に、レチクルの位置情報と前記パターン計測装置(センサ)によるパターンの検出情報とに基いて、前記パターンの第2情報を求め、レチクルの同一の位置に対応する前記第2情報と前記第1情報との差分に基いて、前記パターンのXY平面内(及びZ軸方向)の変動情報を求める手法を採用する場合には、センサは、スペックルセンサで無くても良い。この場合のセンサとしては、例えば、パターン領域を撮像してその画像を取得する前述のFIA系と同様の画像処理方式の結像式の画像センサなどを使用することが考えられる。
また、上記実施形態等では、レチクルRにはパターン等の描画誤差がない(又は無視出来る程小さい)ものとしたが、前述したスペックル計測を利用することで、パターンの描画誤差、例えば変形などを検出することも可能となる。具体的には、予め電子線露光装置を用いて描画された描画誤差(変形など)のないパターンを有する基準レチクルAを用意し、この基準レチクルに対して前述の初期計測動作と同様の計測動作を行い、計測されたスペックルの情報を基準情報として記憶装置に保存する。また、パターンの描画誤差のある別のレチクルBに対して、前述の初期計測動作と同様の計測動作を行い、計測されたスペックルの情報を、そのレチクルBの基準状態におけるスペックルの情報として記憶装置に保存する。そして、レチクルBの基準状態におけるスペックルの情報と基準情報とを比較し、これらの間に差があると、レチクルBにパターンの描画誤差があると判定することができ、その差は、描画誤差に対応していると考えることができる。例えば、ライン・アンド・スペースパターンの一部が描画誤差により変形していた場合、この描画誤差を含むライン・アンド・スペースパターンのスペックルは、基準情報として保持したスペックルと異なることになるので、上記方法により、そのライン・アンド・スペースパターンの一部の変形を検出することができる。
なお、上記実施形態等では、露光装置が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、例えば、欧州特許出願公開第1,420,298号明細書、国際公開第2004/055803号、米国特許第6,952,253号明細書などに開示されているように、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置にも上記実施形態等を適用することができる。
また、上記実施形態等では、露光装置が、スキャニング・ステッパである場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に上記実施形態等を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、投影光学系を用いないプロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも上記実施形態等を適用することができる。
また、上記実施形態等は、ツインステージ型の露光装置にも適用できる。ツインステージ型の露光装置の構造及び露光動作は、例えば米国特許第6,341,007号、米国特許第6,400,441号、米国特許第6,549,269号、米国特許第6,590,634号、米国特許第5,969,441号、および米国特許第6,208,407号などに開示されている。
また、上記実施形態等の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域の形状は矩形に限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、上記実施形態等では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態等は適用できる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
また、レチクルステージ、ウエハステージの位置情報の計測には、レーザ干渉計に替えてエンコーダを用いるようにしても良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態等を適用できる。
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態等の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全ての公報、国際公開、欧州特許出願公開明細書、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
本発明の第1の態様によれば、エネルギビームをマスクに照射して前記マスクのパターン面に形成されたパターンを物体に転写する露光装置であって、前記マスクを保持して移動するマスクステージと、前記マスクステージに保持された前記マスクの、前記パターンの一部を含むパターン領域に計測光を照射し、前記パターン領域の歪みに関する情報を取得するセンサと、制御装置と、を備え、前記センサは、前記マスクのアライメントマークが形成されたマーク領域に計測光を照射し、前記マーク領域の歪みに関する情報を取得する露光装置が、提供される。
本発明の第2の態様によれば、エネルギビームをマスクに照射して前記マスクのパターン面に形成されたパターンを物体に転写する露光装置であって、前記マスクを保持して移動するマスクステージと、前記マスクステージに保持された前記マスクの所定面に対して計測光を照射し、前記所定面からのスペックルに関する情報を得るセンサと、を備える露光装置が、提供される。