JP2018152340A - リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池用電極の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池用電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電極活物質の沈降を防止して電解液スラリーを用いた電極を製造することに適した組成を有するリチウムイオン電池用電極を提供すること。【解決手段】電極活物質と、リチウム塩を電解質として含む電解液と、下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含み、上記(a)及び上記(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して0.1〜2重量%であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。(a)セルロースアセテートプロピオネート(b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池用電極の製造方法に関する。
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
特許文献1には、リチウムイオン電池用電極の一般的な製造方法が開示されている。すなわち、粉末の活物質材料と結着剤を含有する電極合剤と水又は有機溶媒とを混合し、合剤スラリーにしたものを、シート上の集電体に塗布し、乾燥する方法である。
特許文献1には、上記方法における問題として、合剤スラリー内での粉末材料の沈降が著しく、均一な状態を保ちにくいということが挙げられている。
特許文献1では、合剤スラリーを高粘度化することにより粉末材料の沈降を防止する方法が提案されており、高粘度化の手段としてチクソトロピー付与剤を使用することが開示されている。チクソトロピー付与剤としては、酸化ポリエチレン、脂肪酸アマイド、脂肪酸グリセリド、スメクタイトが挙げられている。
特開2001−266855号公報
本発明者らは、特許文献1に記載されたようなリチウムイオン電池用電極の一般的な製造方法とは異なる電極の製造方法について検討を進めている。
この方法は、電極活物質と電解液を含む電解液スラリーを集電体に塗工し、乾燥することなく電極を作製する方法であり、特許文献1に記載の方法と比較して簡便な工程で電極を作製することができる。また、この方法では、電極中に結着剤が含まれないため電極活物質の割合を多くすることができ、電極のエネルギー密度を高くすることができる。
本発明者らが、上記のように電極活物質と電解液を含む電解液スラリーを作製し、集電体に塗工することについて検討していたところ、電解液スラリーに対しては従来の手法では電極活物質の沈降を防止することができないことが分かった。
本発明者らは、電解液中に含まれる電解質としてのリチウム塩が存在する状況下では、特許文献1に記載されているようなチクソトロピー付与剤による沈降防止効果が発揮されないと推測している。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、電極活物質の沈降を防止して電解液スラリーを用いた電極を製造することに適した組成を有するリチウムイオン電池用電極、及び、電極活物質の沈降が防止された電解液スラリーを用いるリチウムイオン電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、電極活物質と、リチウム塩を電解質として含む電解液と、下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含み、上記(a)及び上記(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して0.1〜2重量%であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極;電極活物質と、リチウム塩を電解質として含む電解液と、下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含み、上記(a)及び上記(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して0.1〜2重量%である電解液スラリーを集電体に塗工する工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極の製造方法に関する。
(a)セルロースアセテートプロピオネート
(b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
本発明のリチウムイオン電池用電極は、上記(a)及び/又は(b)の化合物を含み、上記(a)及び上記(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して0.1〜2重量%である。(a)及び(b)の化合物は、電解質としてのリチウム塩が存在する状況下においても電極活物質の沈降を防止することができる。そのため、このような組成のリチウムイオン電池用電極は、電極活物質の沈降を防止して電解液スラリーを用いた電極を製造することに適した組成のリチウムイオン電池用電極である。
また、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法では、上記(a)及び/又は(b)の化合物を含み、上記(a)及び上記(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して0.1〜2重量%である電解液スラリーを使用する。この電解液スラリーは電解質としてのリチウム塩が存在する状況下においても電極活物質の沈降という問題を生じないので、経時安定性に優れており、電解液スラリーの品質を安定させて集電体へ塗工することが可能となる。そのため、電解液スラリーの塗工後に得られる電極の厚さや特性が安定し、電極の品質を向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン電池用電極は、電極活物質と、リチウム塩を電解質として含む電解液と、下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含むことを特徴とする。
(a)セルロースアセテートプロピオネート
(b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
電極活物質は、正極活物質であっても負極活物質であってもよい。電極活物質が正極活物質であると、リチウムイオン電池用電極は正極となり、電極活物質が負極活物質であると、リチウムイオン電池用電極は負極となる。
電極活物質としての正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属元素が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1−xCo、LiMn1−yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び遷移金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
電極活物質としての負極活物質としては、炭素系材料[例えば黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭化ケイ素及び炭素繊維等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、珪素系化合物(珪素、酸化珪素(SiOx)、Si−C複合体、Si−Al合金、Si−Li合金、Si−Ni合金、Si−Fe合金、Si−Ti合金、Si−Mn合金、Si−Cu合金及びSi−Sn合金)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物、リチウム・チタン酸化物及びケイ素酸化物等)及び金属合金(例えばLi−Sn合金、Li−Al合金及びLi−Al−Mn合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
なお、Si−C複合体には、珪素粒子や酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの等が含まれる。
上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
電極活物質は、電極活物質そのものであってもよく、電極活物質の表面の一部又は全部が被覆用樹脂である高分子化合物を含んでなる電極被覆層により被覆された被覆電極活物質であってもよいが、被覆電極活物質であることが好ましい。
電極活物質の表面が電極被覆層で被覆されていると、電極活物質間の距離を一定に保つことが容易になり、導電経路を維持することが容易になり好ましい。
電極被覆層は、被覆用樹脂である高分子化合物を含んでなる。また、必要に応じて、さらに、後述する導電助剤を含んでいてもよい。
なお、被覆電極活物質は、電極活物質の表面の一部又は全部が、高分子化合物を含んでなる電極被覆層によって被覆されたものであるが、電極活物質成形体中において、例え被覆電極活物質同士が接触したとしても、接触面において電極被覆層同士が被覆用樹脂によって不可逆的に接着することはない。
電極被覆層を構成する高分子化合物としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、国際公開第2015/005117号に記載のリチウムイオン電池活物質被覆用樹脂等が挙げられる。
電極被覆層はさらに導電助剤を含んでいることが好ましい。
導電助剤は、導電性を有する材料から選択され、具体的には、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維等のカーボンファイバー、カーボンナノファイバー並びにカーボンナノチューブ、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]を用いることができる。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。グラフェンを練り込んだポリプロピレン樹脂も導電助剤として好ましい。
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池用電極の電気特性の観点から、0.01〜10μmであることが好ましく、0.02〜5μmであることがより好ましく、0.03〜1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、導電助剤の粒子径は、導電助剤が形成する粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、例えば、繊維状の導電助剤であってもよい。
繊維状の導電助剤としては、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。
繊維状の導電助剤の平均繊維径は、0.1〜20μmであることが好ましい。
電極活物質として被覆電極活物質を用いる場合には、例えば、電極活物質を万能混合機に入れて30〜50rpmで撹拌した状態で、高分子化合物を含む高分子溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに必要に応じて導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより、被覆電極活物質を得ることができる。
リチウム塩を電解質として含む電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、好ましいものとしては、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩系電解質、LiN(FSO、LiN(CFSO及びLiN(CSO等のフッ素原子を有するスルホニルイミド系電解質、LiC(CFSO等のフッ素原子を有するスルホニルメチド系電解質等が挙げられる。
電解液に使用する非水溶媒としては、非プロトン性溶媒を好ましく使用することができる。非プロトン性溶媒とは、水素イオン供与性の基(解離性の水素原子を有する基、例えば、アミノ基、水酸基、及びチオ基。)を有さない溶媒である。
非プロトン性溶媒としては、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン等及びこれらの混合物を好ましく用いることができ、より好ましくは公知の非水電解液に用いられている非水溶媒を使用することができる。
ラクトン化合物としては、5員環のラクトン化合物(γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ−バレロラクトン等)等を挙げることができる。
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート及びビニレンカーボネート等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート及びジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2−エトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン、2−トリフルオロエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン及び2−メトキシエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等の鎖状スルホン及びスルホラン等の環状スルホン等が挙げられる。
非プロトン性溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶媒としては、エチレンカーボネートを含むことが好ましく、非水溶媒がエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒、又は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒であることがより好ましい。
電解液に含まれる上記の電解質の濃度は、低温での電池特性等の観点から、0.3〜3Mであることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用電極は、下記(a)及び/又は(b)の化合物を含む。
(a)セルロースアセテートプロピオネート
(b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
以下、本明細書において(a)の化合物を化合物(a)、(b)の化合物を化合物(b)ともいう。
(a)セルロースアセテートプロピオネート
セルロースアセテートプロピオネートは、セルロースの水酸基の少なくとも一部がアセチル基およびプロピオニル基に置換されたものであり、公知の方法、例えば、特開2017−200694号公報に記載の方法で製造することができる。
セルロースアセテートプロピオネートとしては、市販品を用いることができ、例えば「CAP−482−20」(アセチル基含有量=2.5重量%、プロピオニル基含有量=46重量%、数平均分子量:75,000)、「CAP−504−0.2」(アセチル基含有量=0.6重量%、プロピオニル基含有量=42.5重量%、数平均分子量:15,000)、「CAP−504−0.5」(アセチル基含有量=2.5重量%、プロピオニル基含有量=45.0重量%、数平均分子量:25,000)(いずれもイ−ストマンケミカルジャパン株式会社製、商品名)などが挙げられる。
(b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
この共重合体は、(メタ)アクリル酸の重合体にポリオキシエチレン骨格からなる側鎖(以下、PEO鎖と記載する)が結合した構造を有し、長いPEO鎖を有する(メタ)アクリレートである(b1)と短いPEO鎖を有する(メタ)アクリレートである(b2)との共重合体である。
(b1)及び(b2)の結合様式は、ブロックであってもランダムでも良いが、ランダム結合であることが好ましい。すなわち、(b)は(b1)と(b2)とのランダム共重合体であることが好ましい。
なお、(b1)の有するPEO鎖が、オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるモノアルキルエーテルである場合、モノアルキルエーテルが有するアルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。
(b1)としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等(いずれもオキシエチレン単位の繰り返し数は8〜14)が挙げられる。
(b1)を構成するオキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14であるポリエチレングリコールは、PEG400及びPEG600等の商品名等で市販されており、(b1)としては前記の市販のポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル[(メタ)アクリレートともいう]を使用することができ、下記の市販の(メタ)アクリレートを使用することができる。
(b1)は、上記のポリエチレングリコール又はそのアルキルエーテルと(メタ)アクリル酸とを公知の方法でエステル化して得ることができ、(b1)として用いることができる市販の(メタ)アクリレートとしては、ブレンマーシリーズ(日油株式会社製、ブレンマーPME−400、AME−400、PE−350及びAE−400等、ブレンマーは日油株式会社の登録商標である)及びライトアクリレートシリーズ(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレート130A等、ライトアクリレートは共栄社化学株式会社の登録商標である)、AM−130G[新中村化学(株)製]等を用いることができる。
また、(b2)の有するPEO鎖が、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるモノアルキルエーテルである場合、モノアルキルエーテルが有するアルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。
(b2)としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等(いずれもオキシエチレン単位の繰り返し数は2〜4)が挙げられる。
(b2)を構成するオキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4であるポリエチレングリコールは、ジエチレングリコール及びPEG200等の商品名等で市販されており、(b2)としては前記の市販のポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル[(メタ)アクリレート(2)ともいう]を使用することができ、下記の市販の(メタ)アクリレートを使用することができる。
(b2)は、上記のポリエチレングリコール又はそのアルキルエーテルと(メタ)アクリル酸とを公知の方法でエステル化して得ることができ、(b2)として用いることができる市販の(メタ)アクリレートとしては、ブレンマーシリーズ(日油株式会社製、ブレンマーPME−200、ブレンマーは日油株式会社の登録商標である)及びライトアクリレートシリーズ(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートMTG−A、EC−A、ライトアクリレートは共栄社化学株式会社の登録商標である)等を用いることができる。
化合物(b)は、(b1)と(b2)とを必須構成単量体とする共重合体であり、(b1)と(b2)とを含む単量体組成物を公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合等)で重合することで得られる(特開2018−006340号公報等参照)。
(b)に含まれる(b1)及び(b2)の合計重量割合は、(b)を構成する単量体の合計重量に基づいて50〜100重量%であることが好ましい。
化合物(b)を構成する単量体における、(b1)と(b2)との比は、モル比で(b1):(b2)=95:5〜50:50であることが好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
化合物(a)及び化合物(b)は1種のみ使用されていてもよく、複数種類使用されていてもよい。また、化合物(a)と化合物(b)を併用してもよい。
リチウムイオン電池用電極においては、(a)及び(b)の化合物の合計重量は上記電極活物質に対して0.1〜2重量%である。
(a)及び(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して0.1重量%未満であると、後述の方法でリチウムイオン電池用電極を作製する際に、電極活物質の沈降を防止することができない。また(a)及び(b)の化合物の合計重量が上記電極活物質に対して2重量%を超えると、電極の容量を確保できなくなる。
リチウムイオン電池用電極中には、被覆層に含まれていてもよい上記の導電助剤とは別に導電材料を含んでも良い。導電材料を含むようにすると活物質間の導電経路を維持し易くなり好ましい。
導電材料としては、被覆層に含まれる導電助剤として例示したものと同じものを用いることができ、好ましいものも同じである。
本発明のリチウムイオン電池用電極は、電極活物質層を有し、電極活物質層は、上記電極活物質と、(a)及び/又は(b)の化合物を含む混合物の非結着体からなることが好ましい。
非結着体とは、電極活物質が結着剤(バインダーともいう)により互いの位置を不可逆的に固定されていないことを意味する。
言い換えれば、電極活物質層が結着剤を含まないことを意味する。
結着剤としてはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等の公知のリチウムイオン電池用結着剤が挙げられる。
従来のリチウムイオン電池における電極活物質層は、電極活物質と結着剤とを溶媒中に分散させたスラリーを集電体等の表面に塗布し、加熱・乾燥させることにより製造されるため、電極活物質層は結着剤により固められた状態となっている。このとき、電極活物質は結着剤により互いに固定されており、電極活物質の位置が固定されている。そして、電極活物質層が結着剤により固められていると、充放電時の膨張・収縮によって電極活物質に過度の応力が係り、自壊しやすくなる。
さらに、電極活物質層が結着剤によって集電体の表面に固定されているため、電極活物質の充放電時の膨張・収縮によって結着剤により固められた電極活物質層に亀裂が生じたり、電極活物質層が集電体の表面から剥離、脱落してしまうことがある。
なお、電極活物質が被覆電極活物質である上記混合物の非結着体の場合は、電極活物質層中において、例え被覆電極活物質同士が接触したとしても、接触面において被覆樹脂組成物同士が不可逆的に接着することはなく、接着は一時的なもので、被覆電極活物質を破壊することなくほぐすことができるものであるから、被覆電極活物質同士が不可逆的に被覆樹脂組成物によって固定されることはない。従って、被覆電極活物質を含む混合物の非結着体を含んでなる電極活物質層は、被覆電極活物質が互いに結着されているものではない。
電極活物質層は、電極活物質と、(a)及び/又は(b)の化合物を含む混合物の非結着体からなるが、この電極活物質層にさらに電解液が含まれることにより本発明のリチウムイオン電池用電極となる。
リチウムイオン電池用電極の電極活物質層の厚さは、150μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、400μm以上であることがさらに好ましい。また、2000μm以下であることが好ましい。
電極活物質層の厚さが厚いと、積層型電池としたときに電池内で電極活物質層の占める割合が高くなり、エネルギー密度の高い電池とすることができる。
また、本発明のリチウムイオン電池用電極は、集電体上に電極活物質層が形成されている電極であってもよい。
集電体としての正極集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等が挙げられる。また、正極集電体として、導電剤と樹脂からなる樹脂集電体を用いてもよい。
集電体としての負極集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料等が挙げられる。なかでも、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、好ましくは銅である。負極集電体としては、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等からなる集電体であってもよく、導電剤と樹脂からなる樹脂集電体であってもよい。
正極集電体、負極集電体とも、樹脂集電体を構成する導電剤としては、混合物の任意成分である導電材料と同様のものを好適に用いることができる。
樹脂集電体を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)又はポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)又はポリメチルペンテン(PMP)である。
続いて、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法について説明する。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、電極活物質と、リチウム塩を電解質として含む電解液と、下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含む電解液スラリーを集電体に塗工する工程を含むことを特徴とする。
(a)セルロースアセテートプロピオネート
(b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
まず、電極活物質、並びに、化合物(a)及び/又は化合物(b)を準備する。
電極活物質として被覆電極活物質を使用する場合、被覆電極活物質は、例えば、電極活物質を万能混合機に入れて30〜50rpmで撹拌した状態で、高分子化合物を含む高分子溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに必要に応じて導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
化合物(a)及び化合物(b)は市販品を用いてもよく、合成したものを使用してもよい。化合物(b)を合成する方法としては、(b1)及び(b2)を含む単量体組成物を公知の方法で重合する方法、及びポリ(メタ)アクリル酸にオキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキル(好ましくは炭素数1〜4)エーテル、及び、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキル(好ましくは炭素数1〜4)エーテルを公知の方法でエステル化する方法等を使用することができる。
また、電解質と非水溶媒を混合して、リチウム塩を電解質として含む電解液を調製する。
次に、リチウム塩を電解質として含む電解液と、電極活物質と、化合物(a)及び/又は化合物(b)とを混合して電解液スラリーを調製する。
電解液スラリー中には必要に応じて上述の導電材料を添加してもよい。
また、電解液中には上述した結着剤を含まないことが好ましい。
電解液スラリーは、正極活物質スラリーにあってはその粘度が10.0〜7.0Pa・sであることが好ましい。また負極活物質スラリーにあってはその粘度が38〜42Pa・sであることが好ましい。この範囲であると、化合物(a)及び/又は化合物(b)により電極活物質の沈降が防止される効果がより発揮されるため好ましい。
電解液スラリー中における電極活物質の割合は40〜70重量%であることが好ましい。
電解液スラリー中における化合物(a)及び化合物(b)の割合は合計重量で電極活物質に対して0.1〜2重量%であり、好ましくは0.4〜0.7重量%である。電解液スラリー中における化合物(a)及び化合物(b)の割合が合計重量で電極活物質に対して0.4〜0.7重量%であると、化合物(a)及び/又は化合物(b)による電極活物質の沈降が防止される効果がより発揮されるため好ましい。
続いて、電解液スラリーを集電体に塗工する。塗工はバーコーター、刷毛等の任意の塗工装置を用いて行うことができる。
電解液スラリーを集電体に塗工することにより、電極活物質と、化合物(a)及び/又は化合物(b)を含む混合物の非結着体からなる電極活物質層を形成することが好ましい。集電体上に電解液スラリーを塗工することにより集電体付きの電極とすることができる。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、大面積の塗工面に対する塗工に適している。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法で使用する電解液スラリーは電解質としてのリチウム塩が存在する状況下においても電極活物質の沈降という問題を生じないので、経時安定性に優れており、電解液スラリーの品質を安定させて集電体へ塗工することが可能である。そのため、塗工面積が広く塗工時間がかかる場合であっても均質に塗工することが可能となる。そして、電解液スラリーの塗工後に得られる電極の厚さや特性が安定し、電極の品質を向上させることができる。
電解液スラリーを集電体上に塗工したのち、塗工した電解液スラリーの表面上に濾紙やメッシュ等を当てて、真空ポンプにより吸液することにより電解液スラリーに含まれる混合物を集電体上に定着させ、流動しない程度に緩くその形状が維持された状態となった電極活物質層を形成することができる。
また、集電体が炭素繊維等の導電性繊維を配合した濾紙、金属メッシュといった液体を透過可能な材料である場合、集電体の下面(電解液スラリーを塗工していない面)に濾紙やメッシュ等を当てて、真空ポンプにより吸液することにより電解液スラリーに含まれる混合物を集電体上に定着させて電極活物質層を形成することもできる。
また、集電体の下面に吸液性材料を置くことで吸液を行ってもよい。吸液性材料としては、タオル等の吸液性布、紙、吸液性樹脂等を使用することができる。
この際、塗工した電解液スラリーの表面からの加圧を併せて行ってもよい。このようにしても、電解液スラリーに含まれる混合物を集電体上に定着させ、流動しない程度に緩くその形状が維持された状態となった電極活物質層を形成することができる。
また、電解液スラリーを集電体上に塗工し、塗工した電解液スラリーの表面にセパレータを載置してセパレータの上面側から吸液して、混合物を集電体とセパレータの間に定着させてもよい。
セパレータとしては、アラミドセパレータ(日本バイリーン株式会社製)、ポリエチレン、ポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン電池用電極を用いたリチウムイオン電池は、対極となる電極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することで得られる。
また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成して双極型電極を作製し、双極型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでも得られる。
また、正極、負極のいずれか一方に本発明のリチウムイオン電池用電極を用いてもよく、正極、負極を共に本発明のリチウムイオン電池用電極としてリチウムイオン電池としてもよい。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
電解液スラリーの塗工性を評価するために、電解液スラリーを調製してその沈降時間を評価した。
[製造例1:オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとオキシエチレン単位の繰り返し数が3であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとの共重合体(化合物(b)1)]
撹拌機、温度センサー、窒素ライン、減圧ライン、および還流アダプターを備えた100mL試験管容器のパーソナル合成装置(EYELA製、ChemiStation)に、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルとアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)を18重量部、トリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(オキシエチレン単位の繰り返し数が3)とアクリル酸のエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートMTG−A)を6重量部、プロピレンカーボネートを23重量部投入してモノマー混合液を調製した。次いで、調製したモノマー混合液を撹拌速度400rpmで撹拌しながら1分間窒素を吹き込み、次いで1分間の減圧操作を行った。この操作を5回繰り返して窒素置換を行った。その後、モノマー混合液を65℃に昇温し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.02重量部をプロピレンカーボネート1重量部に溶解させた開始剤混合液を加えてラジカル重合を3時間行った。次いで、上記と同様の開始剤混合液を再度加えてさらに2時間反応を継続し樹脂濃度50重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定したところ、7800であった。なお、ポリマーの重量平均分子量を測定する際のGPCの測定条件は、以下の通りであった。
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー(株)製)
溶離液:水/メタノール(1/1体積比)KCl溶液
標準物質:ポリエチレングリコール
サンプル濃度:0.5mg/mL
カラム固定相:(東ソー TSK GL6000 PWXL,GL3000 PWXL,GL2500 PWXLを連結して使用)
カラム温度:40℃
[製造例2:オキシエチレン単位の繰り返し数が13であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとオキシエチレン単位の繰り返し数が2であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとの共重合体(化合物(b)2)]
製造例1の合成装置に、オキシエチレン単位の繰り返し数が13であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルとアクリル酸とのエステル(新中村化学(株)製、AM−130G)を23重量部、ジエチレングリコールのモノエチルエーテル(オキシエチレン単位の繰り返し数が2)とアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートEC−A)を1重量部、プロピレンカーボネートを23重量部投入してモノマー混合液を調製した以外は製造例1に記載の方法で樹脂濃度50重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定したところ、8200であった。
[製造例3:オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとオキシエチレン単位の繰り返し数が3であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとの共重合体(化合物(b)3)]
製造例1の合成装置に、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルとアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)を21.9重量部、トリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(オキシエチレン単位の繰り返し数が3)とアクリル酸のエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートMTG−A)を1.1重量部、プロピレンカーボネートを23重量部投入してモノマー混合液を調製した以外は製造例1に記載の方法で樹脂濃度50重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定したところ、6400であった。
[製造例4:オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとオキシエチレン単位の繰り返し数が2であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとの共重合体(化合物(b)4)]
製造例1の合成装置に、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルとアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)を21.9重量部、ジエチレングリコールのモノエチルエーテル(オキシエチレン単位の繰り返し数が2)とアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートEC−A)を1.1重量部、プロピレンカーボネートを23重量部投入してモノマー混合液を調製した以外は製造例1に記載の方法で樹脂濃度50重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定したところ、7100であった。
[製造例5:オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとオキシエチレン単位の繰り返し数が4であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレートとの共重合体(化合物(b)5)]
製造例1の合成装置に、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルとアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)を21.9重量部、ジエチレングリコールのモノメチルエーテル(オキシエチレン単位の繰り返し数が4)とアクリル酸とのエステル(日油(株)製、ブレンマーPME−200)を1.1重量部、プロピレンカーボネートを23重量部投入してモノマー混合液を調製した以外は製造例1に記載の方法で樹脂濃度50重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定したところ、6100であった。
[製造例6:オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート単独重合体(比較化合物4)]
製造例1の合成装置に、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノメチルエーテルとアクリル酸とのエステル(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)を23重量部、プロピレンカーボネートを23重量部投入してモノマー混合液を調製した以外は製造例1に記載の方法で樹脂濃度50重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定したところ、3600であった。
(実施例1−1〜1−10、比較例1−1〜1−6)
(電解液スラリーの調製)
各実施例及び比較例において、化合物(a)、化合物(b)又はその比較対象となる比較化合物として以下の化合物を使用した。
化合物(a)1:セルロースアセテートプロピオネート:(CAP−482−20:イ−ストマンケミカルジャパン株式会社製)
化合物(a)2:セルロースアセテートプロピオネート:(CAP−482−0.5:イ−ストマンケミカルジャパン株式会社製)
化合物(b)1:製造例1で製造した共重合体(モル比は、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート:オキシエチレン単位の繰り返し数が3であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート=6:4)
化合物(b)2:製造例2で製造した共重合体(モル比は、オキシエチレン単位の繰り返し数が13であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート:オキシエチレン単位の繰り返し数が2であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート=9:1)
化合物(b)3:製造例3で製造した共重合体(モル比は、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート:オキシエチレン単位の繰り返し数が3であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート=9:1)
化合物(b)4:製造例4で製造した共重合体(モル比は、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート:オキシエチレン単位の繰り返し数が2であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート=9:1)
化合物(b)5:製造例5で製造した共重合体(モル比は、オキシエチレン単位の繰り返し数が9であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート:オキシエチレン単位の繰り返し数が4であるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのアクリレート=9:1)
比較化合物1:ポリビニルピロリドン(K−90:株式会社日本触媒製)
比較化合物2:ポリビニルピロリドン(K−30:株式会社日本触媒製)
比較化合物3:カルボキシメチルセルロース(CMCダイセル1240:ダイセルファインケム株式会社製)
比較化合物4:製造例6で製造した共重合体
電解液として、LiPFを1Mの濃度で含み、非水溶媒としてEC(エチレンカーボネート)とPC(プロピレンカーボネート)の混合溶媒を使用した電解液を調製した。
これらの化合物を表1に示す添加量使用し、電極活物質としてNCA系正極活物質(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末:平均粒子径5μm)64.5重量%、導電助剤としてカーボンナノチューブ(VGCF:昭和電工(株)製)を1.5重量%、上記電解液を残部混合して電解液スラリーを調製した。
(沈降時間の評価)
この電解液スラリーを万能混合器で撹拌混合した後、数本の100mLの沈降管(長さ20cm)に移し静置した。
静置開始から2時間目までは30分毎に、2時間を超えて12時間目までは2時間毎に、12時間を超えた後は12時間毎に沈降菅の液面からサンプリング用ガラス管を用いて上澄み約5gを静かにサンプリングし、スラリー重量を秤量した。その後、サンプリングしたスラリーを80℃で減圧乾燥して電解液を留去し、残留物の重量を秤量してサンプリングしたスラリーの固形分濃度を求めた。混合直後の固形分濃度(静置開始0時間目のスラリーの固形分濃度)とサンプリングしたスラリーの固形分濃度との差(固形分濃度の減少量)が、混合直後の固形分濃度に対して1%を超えなかったサンプリングの時間の最大の値を耐沈降時間として評価した。
Figure 2018152340
化合物(a)又は化合物(b)を所定量含む電解液スラリーは、電解質としてのリチウム塩が存在する状況下においても電極活物質の沈降を防止することができることがわかる。
この電解液スラリーは電解質としてのリチウム塩が存在する状況下においても電極活物質の沈降という問題を生じないので、経時安定性に優れており、電解液スラリーの品質を安定させて集電体へ塗工することが可能となる。そのため、電解液スラリーの塗工後に得られる電極の厚さや特性が安定し、電極の品質を向上させることができる。
(実施例2−1〜2−10、比較例2−1〜2−6)
(正極活物質層の形成)
電極活物質として、表面に導電性のある被膜を有したNCAを使用した以外は実施例1−1〜1−10および比較例1−1〜1−6と同様にして電解液スラリーを調製した。次に、厚み20μmのアルミ箔の上に電極目付けが12mAh/cmとなるように50mm×50mmの正方形の枠内に電解液スラリーをアプリケーターを用いて塗工した。電解液スラリーの塗工後、厚み20μmのアラミドの不織布を3枚被せて0.1MPaの圧力で電極のプレスを行い、正極活物質層を形成した。
(リチウムイオン電池の作製)
端子(5mm×3cm)付き銅箔(3cm×3cm、厚さ17μm)(商品名「NC−WSリチウムイオン電池負極用電解銅箔」[古河電工製])と端子(5mm×3cm)付きカーボンコート付きアルミ箔(3cm×3cm、厚さ21μm)を、同じ方向に2つの端子が出る向きで順に積層し、それを2枚の熱融着型アルミラミネートフィルム(10cm×8cm)(商品名「SPALF」[昭和電工製])に挟み、端子の出ている1辺を熱融着し、ラミネートセルを作製した。
前項で形成した正極活物質層をアルミ箔からはがし、ラミネートセルのアルミ箔上に置いた。セパレータ(5cm×5cm、厚さ23μm、商品名「セルガード2500」[セルガード製]ポリプロピレン製)を正極活物質層の上に配置し、負極側電極として60mm×60mmの金属リチウム箔(商品名「圧延リチウムフォイル」[本城金属製])をセパレーターの上に正極部が隠れるように配置した。次に、ラミネートセルの先に熱融着した1辺に直交する2辺をヒートシールした。その後、真空シーラーを用いてセル内を真空にしながら開口部をヒートシールすることでラミネートセルを密封し、リチウムイオン電池を得た。
(電池特性の測定)
作製した実施例2−1〜2−10及び比較例2−1〜2−6に係るリチウムイオン電池について、充放電測定装置「HJ0501SM」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法で充放電試験を行い、初回充電時及び3サイクル目の充電容量に対するそれぞれの放電容量の割合(クーロン効率と呼ぶ)を求めた。結果を表2に示す。
45℃の条件下において、電池特性評価用リチウムイオン電池を、0.1Cの電流で4.2Vまでそれぞれ充電し、10分間の休止後、0.1Cの電流で2.6Vまで放電する充放電工程を、10分の休止を挟んで3回繰り返した。
Figure 2018152340
実施例2−1〜2−10のリチウムイオン電池では、所定量の分散剤を添加することにより初回のクーロン効率が大きく、3サイクル目でクーロン効率が99.9%を超えていることがわかった。スラリーが均一に分散していることで塗工後の導電パスをうまく形成することができリチウムイオンの授受も有利になるため、クーロン効率を早期に99%以上に達成することができる。なお、沈降防止の機能が小さい比較例2−2〜2−4については、スラリーの沈降・凝集により塗工不良を起こしたため、電池での評価はできなかった。
本発明のリチウムイオン電池用電極は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられる双極型二次電池用及びリチウムイオン二次電池用等の電極として有用である。

Claims (4)

  1. 電極活物質と、
    リチウム塩を電解質として含む電解液と、
    下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含み、
    前記(a)及び前記(b)の化合物の合計重量が前記電極活物質に対して0.1〜2重量%であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
    (a)セルロースアセテートプロピオネート
    (b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
  2. 前記リチウムイオン電池用電極は、電極活物質層を有し、
    前記電極活物質層は、前記電極活物質と、前記(a)及び/又は(b)の化合物を含む混合物の非結着体からなる請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極。
  3. 電極活物質と、リチウム塩を電解質として含む電解液と、下記(a)及び/又は(b)の化合物とを含み、前記(a)及び前記(b)の化合物の合計重量が前記電極活物質に対して0.1〜2重量%である電解液スラリーを集電体に塗工する工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極の製造方法。
    (a)セルロースアセテートプロピオネート
    (b)オキシエチレン単位の繰り返し数が8〜14のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b1)と、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜4のいずれかであるポリエチレングリコール又はそのモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート(b2)とを必須構成単量体とする共重合体
  4. 前記電解液スラリーを集電体に塗工することにより、前記電極活物質と、前記(a)及び/又は(b)の化合物を含む混合物の非結着体からなる電極活物質層を形成する請求項3に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
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