以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施例による伸縮リンク式昇降装置の収縮状態を示す側面図および正面図である。また図3および図4は、伸縮リンク式昇降装置の伸張状態を示す側面図および正面図である。
収縮状態の伸縮リンク式昇降装置1は、ベース2と、ベース2にその下部端の一方を連結された伸縮リンク装置3と、伸縮リンク装置3に伸張力または収縮力を与えるように固定側をベース2に連結し、かつ可動側を伸縮リンク装置3に連結した油圧ピストン装置などの直動アクチュエータ4と、伸縮リンク装置3の上部端の一方に連結されたガイド部5Aを備えた昇降台5などを有している。
伸縮リンク装置3は、一対の伸縮リンク装置3A,3Bを有しており、両伸縮リンク装置3A,3Bの下方におけるベース2の近傍に図4に示すように空間部7が形成されている。この空間部7を利用して、一対の直動アクチュエータ4と、両直動アクチュエータ4を駆動制御する駆動部ユニット8が配置されている。この駆動部ユニット8の制御装置には、詳細を後述するように少なくとも伸張後半では伸張初期よりも伸張速度を加速させる伸張速度加速部を備えており、特徴的な伸張制御が行われる。
また両伸縮リンク装置3A,3Bは、それぞれ上下二段にX字状リンク機構を有した同一構成であり、共通連結軸6によって連結されており、ここでは、伸縮リンク装置3Aについて説明する。
特に、伸張状態を示す図3から分かるように、伸縮リンク装置3Aの下端部の一方は、連結軸9によってベース2に可回転的に連結されており、伸縮リンク装置3Aの下端部の他方には可回転的なガイドローラ10が取り付けられている。このガイドローラ10は、ベース2に固定したガイド装置11によってほぼ水平方向に往復移動可能に支持されている。
伸縮リンク装置3Aは、直動アクチュエータ4から伸張駆動力を受けると、図3および図4に示すように伸張して昇降台5を所定の上方位置まで上昇させる。一方、直動アクチュエータ4から逆方向の収縮駆動力を受けると、図1および図2に示すように伸縮リンク装置3Aを収縮して昇降台5を所定の下方位置まで下降させる。
図3に示すように伸縮リンク装置3Aの下端部の一方は、連結軸9によってベース2に可回転的に連結されている。これに対して、伸縮リンク装置3Aの下端部の他方にはガイドローラ10が可回転的に取り付けられており、このガイドローラ10は、ベース2に固定されたガイド装置11によってほぼ水平方向に案内されるよう連結されている。伸縮リンク装置3Aの上端部の一方は、連結部12によって昇降台5に連結されている。これに対して、伸縮リンク装置3Aの上端部の他方側にはガイドローラ13が可回転的に取り付けられており、このガイドローラ13は、昇降台5の下方部に形成されたガイド部5Aによってほぼ水平方向に案内されるよう連結されている。
図4から分かるように、一対の伸縮リンク装置3A,3Bは、それぞれ平面上で収縮または伸張する構成であり、両者の対向部に形成されている空間部7に直動アクチュエータ4と駆動部ユニット8を配置するための空間部7が形成されている。この空間部7と直動アクチュエータ4および駆動部ユニット8の関係については、図7を用いて後述する。
また図3から分かるように伸縮リンク装置3Aは、ほぼ同一構成の下部X字状リンク機構14と上部X字状リンク機構15とが上下に二段に連結されている。下部X字状リンク機構14は、第一リンク16と、第一リンク16の中間部を連結軸6によって回動可能に連結された第二リンク17とを有している。
上部X字状リンク機構15は、下部X字状リンク機構14とほぼ同様に構成され、第一リンク16の上端に回動可能に連結された第一リンク18と、第一リンク18の中間部に中間軸19によって回動可能に連結され、かつ第二リンク17の上端に可回転的に連結された第二リンク20とを有している。上述したように第一リンク18の上端部は連結部12によって昇降台5に連結され、第二リンク20の上端部はガイドローラ13によって昇降台5のガイド部5Aに沿って水平方向に案内されるよう連結されている。
上述した第一リンク16は、軸方向の中間部に連結軸6から離れる方向にほぼ直角に延びた中間突出部16Aを有した略ト字状に構成されている。中間突出部16Aの端部側には、駆動部ユニット8によって作動する直動アクチュエータ4の構成要素である可動軸4Aの端部が連結されている。直動アクチュエータ4の固定要素のシリンダ側は、ベース2におけるガイド装置11の近傍に可回転的に連結されている。直動アクチュエータ4の可動要素であるロッド側の可動軸4Aは、連結軸9側に位置した下部X字状リンク機構14における中間突出部16Aの端部側に連結されている。
上述したように伸縮リンク装置3Aは、図4に示したように紙面の手前側と裏面側に所定距離を隔てて対向配置した一対の伸縮リンク装置3A,3Bを有しているため、図1に示した収縮状態また図4に示した伸張状態で明らかなように対を成す伸縮リンク装置3A,3B間には、空間部7が形成されている。この空間部7に上述した直動アクチュエータ4が一対配置されている。しかも、中間突出部16Aは、伸張状態の直動アクチュエータ4のほぼ配置軸線上で延びて形成されている。
図5は、ベース2上の空間部7を利用して構成した駆動部ユニット8の平面図である。
図3および図5に示すように、直動アクチュエータ4に駆動力を与える駆動部ユニット8は、ベース2上に配置されている。この駆動部ユニット8は、油圧ユニットとして構成した場合のモータ21と、モータ21によって駆動されるポンプ22と、ポンプ22から吐出される作動油の流量を調整したり流路を切り替えたりする弁装置23と、オイルタンク24などを備えている。
図6は、上述した駆動部ユニット8のブロック構成図である。
油圧ユニットにより構成された駆動部ユニット8の制御装置25は、伸縮リンク式昇降装置1の制御装置に組み込まれて構成されており、通常構成の他に、駆動部ユニット8における伸張動作時に、少なくとも伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させる伸張速度加速部26と、この伸張速度加速部26による制御を行うタイミングを検出するためのセンサ27が追加されている。センサ27は、種々の位置に設けることができるが、ここでは図3に示したガイドローラ10の中心部に取り付けている。このセンサ27は、詳細については後述するが、例えば伸縮リンク装置3の伸張時におけるガイドローラ10が所定の位置にまで動作したときの検出信号によって伸張速度加速部26による制御を開始させ、伸張動作終了位置にまで動作したときの検出信号によって伸張速度加速部26による制御を完了させるようにしている。
次に、伸縮リンク式昇降装置1の伸張動作時における昇降台5の上昇特性について説明する。
図3に示したように伸縮リンク式昇降装置1は、一端を連結部9で可回転的に支持し、かつ、他端側に伸縮リンク装置3を連結した第一リンク16を有し、この第一リンク16の中間部に形成した中間突出部16Aに可動要素を連結した直動アクチュエータ4を有している。このような具体的な構成に限らず、一端を可回転的に支持し、かつ、他端側に伸縮リンク装置3を連結した第一リンク16を有し、この第一リンク16の中間部に可動要素を連結した直動アクチュエータ4を設けた場合、特徴的な伸張動作を行うことになる。
図7は、図3に示した下部X字状リンク機構14の要部を拡大して示す動作説明図である。
実線で示す伸張状態の第一リンク16は、連結軸9を中心にして斜めに起立されている。この第一リンク16は、直動アクチュエータ4の反対側で、かつ第一リンク16の軸方向に対してほぼ直行するように延びた中間突出部16Aを有して、全体として略ト字状に構成されている。直動アクチュエータ4は、可動要素であるロッド側の可動軸4Aが中間突出部16Aの軸方向とほぼ同方向に延びた状態で連結部28において連結されている。
第一リンク16を含んだ下部X字状リンク機構14を収縮状態にするために直動アクチュエータ4を作動させて、連結軸9を支点にして第一リンク16を時計方向に回転させると、直動アクチュエータ4は、伸張状態における中心軸線上とほぼ同じ中心線上に沿って収縮しながら、点線で示した第一リンク16Cの位置まで移動する。このとき点線で示した収縮状態で中間突出部16ACは、連結軸9を支点にして回転するため、第一リンク16Cに対して上向きに延びた状態となる。
第一リンク16の回転時、中間突出部16Aと可動軸4Aの連結部28は、伸張位置から収縮位置の連結部28Cに達するまで、直動アクチュエータ4のほぼ軸線上をほぼ直線的に矢印方向に移動する。このような直線的な移動は、第一リンク16を含んだ伸縮リンク装置3を伸張するときも同様であり、連結部28Cは直動アクチュエータ4のほぼ軸線上をほぼ直線的に移動する。
従って、伸張状態にある直動アクチュエータ4と、収縮状態にある直動アクチュエータ4Cの比較から分かるように動作軸線は殆ど変化していない。このため、第一に、ストロークの長い直動アクチュエータ4としても、直動アクチュエータ4に必要な圧力を減らすことができる。また第二に、ベース2の上部に形成されて斜線で示した領域の空間部7を保持することができる。
こうして、第一リンク16の伸張状態では、斜線で示した領域に空間部7が形成されることになり、同空間部7に直動アクチュエータ4を駆動する駆動部ユニット8を伸縮リンク装置3などと干渉することなく配置することができる。つまり、斜線で示した領域に相当する空間部7は伸張状態でも収縮状態でも殆ど変化しないため、直動アクチュエータ4が駆動部ユニット8と干渉することはない。また、第一リンク16の回転は、図4などに示したように所定距離を隔てて対向配置した伸縮リンク装置3A,3Bの構成平面上で行われるため、第一リンク16などが駆動部ユニット8と干渉することもない。
一対の直動アクチュエータ4は、第一リンク16に対して連結軸9を中心にした回転力を与えることができ、下部X字状リンク機構14に対して伸張力を与えたり、収縮力を与えたりすることができる。この動きに合わせて、上方部に配置した昇降台5を上昇させたり、下降させたりすることできる。従って、昇降台5上に搭載した重量物を容易に上方部または下方部へと移動させることができる。
次に、伸縮リンク式昇降装置1の伸張動作時における昇降台5の上昇特性について説明する。
図8および図9は、通常時における第一リンク16の伸張動作時の軌跡を示す動作軌跡図である。
図8に示すように直動アクチュエータ4の可動要素と、第一リンク16の中間突出部16Aとの連結点28の軌跡は、直動アクチュエータ4の角度はほぼ一定のままほぼ同軸上で移動するため、単位時間当たりの移動速度はほぼ等間隔Aである。このため、第一リンク16のリンク装置14側の連結点28の角速度Bもほぼ一定である。
これに対して、第一リンク16は、その一端が連結軸9で可回転的に位置固定されているため、連結軸9を支点にして回転すると、自由端側である他端側の連結点29は図9に示すように円弧状の動きとなる。これが上方部に存在する伸縮リンク装置3における他の類似構成部によって増幅されるため、最上部に連結された昇降台5は図9に示すように単位時間当たりの上昇速度Cが変化し、伸縮リンク式昇降装置1の伸張完了状態に近づく程、昇降台5の上昇速度Cnが遅くなって行く。
しかし、第一リンク16は、伸縮リンク式昇降装置1の伸張動作に伴って起立して行くので、伸縮リンク式昇降装置が伸張完了状態に近づく程、直動アクチュエータ4にかかる負荷は小さくなる。
そこで、先ず、図3および図9に示したように第二リンク17の下端に取り付けたガイドローラ10回転軸部にセンサ27を取り付け、センサ27の位置が伸縮リンク式昇降装置1における少なくとも伸張後半に相当する位置に達したことを検出するようにしている。次いで、同位置に達したときのセンサ27からの信号を取り込んで、図6に示した伸張速度加速部26を作動するようにしている。
伸張速度加速部26は、直動アクチュエータ4によって作動する伸縮リンク式昇降装置1における少なくとも伸張後半で、伸張初期よりも速度を加速させるように弁装置23の作動油吐出流量を増大して駆動部ユニット8に供給する。上述したように伸縮リンク式昇降装置1の伸張動作に伴って第一リンク16は起立してゆき、伸縮リンク式昇降装置1が伸張完了状態に近づく程、直動アクチュエータ4にかかる負荷は小さくなるので、伸張速度加速部26による制御を容易に行うことができる。
その後、センサ27の位置が伸縮リンク式昇降装置1における制御終了位置に相当する位置に達したことを検出すると、この信号が取り込まれて伸張速度加速部26による加速が停止される。
図10は、伸張速度加速部26によって制御されたときの第一リンク16の伸張動作時の軌跡を示す動作軌跡図である。
伸張速度加速部26によって制御されたときの第一リンク16は、動作軌跡で示すように伸張し、最上部に連結された昇降台5は、単位時間当たりの上昇速度Cが殆ど変化せずに上昇される。このため、伸縮リンク式昇降装置1の昇降台5に搭載した重量物を素早く上方階へと移動することができ、運搬管理を一層効率的に行うことができるようになる。
図11は、本発明の他の実施例における伸縮リンク式昇降装置の要部を示すブロック構成図である。
図6に示した実施例では、駆動部ユニット8を油圧ユニットにより構成した場合を示したが、本実施例では駆動部ユニット8をパワーシンダーに置換して構成しており、同等物に同一符号を付けている。本実施例によっても、先の実施例の場合と同様の効果を得ることができる。
上述した実施例で伸縮リンク式昇降装置1は、一端を連結部9で可回転的に支持し、かつ、他端側に伸縮リンク装置3を連結した第一リンク16を有し、この第一リンク16の中間部に形成した中間突出部16Aに可動要素を連結した直動アクチュエータ4を有しているが、このような具体的な構成に限らず、一端を可回転的に支持し、かつ、他端側に伸縮リンク装置3を連結した第一リンク16を有し、この第一リンク16の中間部に可動要素を連結した直動アクチュエータ4を設けた構成に適用することができる。
また上述した実施例で伸張速度加速部26は、図10に示した伸縮リンク装置3における伸張動作と共に位置が変化する部分にセンサ27を取り付けて、センサ27が伸張動作の後半に入ったことを検出したとき、予め設定した所定の位置を経過したと判定し、その後の伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させるように伸張速度加速部26での制御を行っている。しかし、伸張速度加速部26としては、この種の構成に限らず、予め設定した動作プログラムに従って伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させるように制御することもできる。
以上説明したように本発明の伸縮リンク式昇降装置は、上部に昇降台5を備えた伸縮リンク装置3と、前記伸縮リンク装置3を伸張または収縮駆動して前記昇降台5を上方位置または下方位置に保持する直動アクチュエータ4を備えた伸縮リンク式昇降装置において、前記伸縮リンク装置3は、一方端の連結部9を可回転的に支持し、かつ、他方端に前記伸縮リンク装置3のうちの他のリンク装置を連結した第一リンク16を備え、前記第一リンク16の中間部に前記直動アクチュエータ4の可動要素を連結し、前記直動アクチュエータ4の制御装置25に、前記伸縮リンク装置3の前記昇降台5を伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させる伸張速度加速部26を設けたことを特徴とする。
このような構成によれば、最上部に連結された昇降台5を用いて物品を搬送移動する場合、単位時間当たりの上昇速度を低下させることなく上昇させることができるため、昇降台5に搭載した物品を素早く他の階へと移動することができ、運搬管理を一層効率的に行うことができるようになる。
また本発明は上述の構成に加えて、前記第一リンク16は、前記伸縮リンク装置3の伸張状態で前記直動アクチュエータ4のほぼ動作軸線方向に延び、かつ収縮状態で前記第一リンク16に対してほぼ上向きに延びて位置する中間突出部16Aを有し、前記直動アクチュエータ4の可動要素を前記中間突出部16Aに連結したことを特徴とする。
このような構成によれば、直動アクチュエータ4の動作軸線を殆ど変化させることなく第一リンク16を収縮方向または伸張方向に駆動することができるため、ストロークの長い直動アクチュエータ4としても、直動アクチュエータ4に必要な圧力を減らし、これを伸縮リンク装置における伸張後半では伸張初期よりも昇降台5の上昇速度を加速させるために効果的に活用することができる。
図12は、本発明における伸縮リンク式昇降装置を用いた多階式駐車装置の一部を示す断面図である。本実施例の多階式駐車装置で使用される伸縮リンク式昇降装置1は、先の実施例における構成と同一であるから、同等物に同一符号を付けて詳細な説明を省略し、多階式駐車装置との係わりについて説明する。
本多階式駐車装置は、出入口30を備えた出入口階31と、出入口階31の下方階に構成した複数の格納階32,33と、出入口階31と格納階32,33間でトレー34または駐車車両35を搭載した状態のトレー34を移動する伸縮リンク式昇降装置1を有している。
伸縮リンク式昇降装置1の上部に設けられた昇降台5には、多階式駐車装置に適合させるためにトレー駆動装置が追加構成されている。図示のように駐車車両35をトレー34上に乗り込ませた後、伸張状態の伸縮リンク式昇降装置1を収縮して駐車車両35を出入口階31から格納階32へ移動し、その後、昇降台5上のトレー駆動装置を用いて駐車車両35を搭載した状態のトレー34を格納階32側へと移動させる。その後、格納階32の床側に構成された床側トレー駆動装置と、トレー34の裏面側に構成されて床側トレー駆動装置と対を成すトレー側従動装置を用いて、駐車車両35を搭載した状態のトレー34を所定位置の格納スペースへと格納する。
従来のこの種の構成における多階式駐車装置では、伸縮リンク式昇降装置1を使用することがなく、対を成すガイドレールを立設し、両ガイドレールに沿って昇降移動可能なリフト装置を構成し、リフト装置の昇降台上にトレーまたは駐車車両を搭載した状態のトレーを載せて、出入口階31と格納階32,33間で移動させるようにしている。この種の構成は、ガイドレールによってリフト装置の構成が複雑化するが、伸縮リンク式昇降装置1を使用した場合、構成は簡単になる。
しかも、従来構成では、ガイドレールを有したリフト装置の構成位置の制約を受けるが、伸縮リンク式昇降装置1を使用した場合、この制約を縮小または解除することができる。次に、この点について説明する。
図13および図14は、図12に示した多階式駐車装置の格納階を示す平面図および要部拡大図である。
トレー上に搭載した駐車車両を格納する格納階32,33は同一構成であり、ここでは格納階32を代表して説明する。この格納階32には、図における縦方向に3列、横方向に5列の格納スペース36A〜36Zが形成されている。格納スペース36Hを除く各格納スペース36A〜36G,36I〜36Zには、駐車車両を搭載するトレーが配置された状態を示している。各格納スペース36A〜36G,36I〜36Zには、複数の縦方向走行レール38が所定の間隔で配置され、また縦方向走行レール38と直行するように複数の横方向走行レール39が所定間隔で配置されることによって、マトリックス状に敷設した走行レールが構成されている。
通常、各格納スペース36A〜36Zのうちの少なくとも一つは、トレーが配置されていない空きスペースとされている。ここでは格納スペース36Mを空きスペースとして図示しており、空きスペースであるために格納スペース36Mの床面側に構成された床側トレー駆動装置40が露出して表われている。
また、格納スペース36Hは、上下方向に伸張および収縮可能な伸縮リンク式昇降装置1を配置するために使用され、下方の格納階32には図12に示したように伸縮リンク式昇降装置1を支持固定する収納部41が形成され、上方の格納階33には図13に示したように伸縮リンク式昇降装置1の伸張時に上方部構成の一部が通過するための開口42が形成されている。
開口42によって上述した格納階33の縦方向走行レール38および横方向走行レール39が分断されているが、伸縮リンク式昇降装置1の上部に配置した昇降台5の上面には、縦方向走行レール38および横方向走行レール39の分断部における連続性を保つように配置された分断部縦方向走行レール38Hおよび分断部横方向走行レール39Hが配置されている。また、昇降台5の上面の中央部には、床側トレー駆動装置40と同一構成の昇降台側トレー駆動装置43が構成されている。
また各格納スペース36A〜36Zには、縦方向走行レール38,38Hと横方向走行レール39,39Hとによって囲まれた部分にそれぞれ床側トレー駆動装置40と同一構成の図示しない床側トレー駆動装置がそれぞれ配置されている。一方、各トレーの下面側には、各床側トレー駆動装置40の上方部に位置したとき対向し協働して移動するようにトレー側従動装置がそれぞれ構成されている。各床側トレー駆動装置40および各トレー側従動装置を図示しない制御装置によって制御することによって、所定のトレーを任意の位置の格納スペースへと移動することができる構成となっている。
このとき、格納スペース36Hから最初に移動できる他の格納スペース、または他の格納スペースから最後に格納スペース36Hへと移動できるのは、図13に示すように格納スペース36Hに対して縦方向走行レール38,38Hおよび横方向走行レール39,39Hが連続的に付設された四方向の格納スペース36C,36G,36I,36Mである。
この説明から分かるように、図12に示した伸縮リンク式昇降装置1は、図13に示した各格納スペース36A〜36Zのうちのどの位置にでも構成することができるが、外周部よりも中央側の位置に構成すると、トレー34または駐車車両35を搭載した状態のトレー34を向かい入れたり、送り出したりする方向が多くなり、トレー34における移動の自由度を拡大することができる。
例えば、格納スペース36Hに伸縮リンク式昇降装置1を構成すると、出入口階31でトレー34上に駐車車両35を乗り込ませ、伸縮リンク式昇降装置1を収縮した後、格納階32の格納スペース36Hから四方に位置した他の格納スペース36C,36G,36I,36Mのいずれかに移動させることができる。このように自由度が拡大するため、駐車車両35を搭載した状態のトレー34を所定の位置に素早く格納することができる。
実際に、駐車車両35を搭載した状態のトレー34を移動させるときは、トレー34の下部に位置した床側トレー駆動装置40におけるモータを制御装置から制御することにより、トレー34を隣接する格納スペースへとトレー34を移動させ、その後、トレー34と新たに対応関係となった他の床側トレー駆動装置40におけるモータを制御装置から制御することにより、トレー34を順次移動させ、最終的に所定の格納スペースへと移動することができる。
このようなトレー34の移動は、入庫時に限らず、出庫時においても同様に行うことができる。出庫時には、上述した伸縮リンク式昇降装置1の構成位置の優位性によって、所定のトレー34を図13および図14に示した格納スペース36Hへと短時間で、かつ簡単に行えるようになる。何故なら、図13において、上述したように格納スペース36Hは格納階33の中間部に形成されており、他の格納スペース36A〜36G,36I〜36Zに位置したトレーを格納スペース36Hへと移動させる場合、最終段階では格納スペース36C,36G,36I,36Mの四方向から格納スペース36Hへとトレーを移動させることができるからである。
これは、格納スペース36Aのように格納階33における角部に昇降路やガイドレールを備えたリフト装置を構成し、このリフト装置へとトレーを移動させる従来の構成と比較すると明らかである。このような従来構成の場合、最終段階では格納スペース36Bと格納スペース36Fとの二方向からしか格納スペース36Aへとトレーを移動させることができないので、トレー34の移動が制限されて移動に時間を要してしまい効率が低下することになる。
図15および図16は、上述した伸縮リンク式昇降装置1の収納状態を拡大して示す側面図および正面図である。また図17は、上述した伸縮リンク式昇降装置1の伸張状態を拡大して示す側面図である。
格納階32の床面には収納部41が形成され、図15および図16に示した格納状態では、収納部41内に伸縮リンク式昇降装置1が格納されている。収縮状態の伸縮リンク式昇降装置1は、先の実施例の場合と同様であり、ベース2にその下部端の一方を連結された伸縮リンク装置3と、伸縮リンク装置3に伸張力または収縮力を与えるように固定側をベース2に連結し、かつ可動側を伸縮リンク装置3に連結した直動アクチュエータ4と、伸縮リンク装置3の上部端の一方に連結されたガイド部5Aを備えた昇降台5と、直動アクチュエータ4を駆動制御するための駆動部ユニット8などを有して構成されている。
また伸縮リンク式昇降装置1は伸縮リンク装置3を有し、伸縮リンク装置3は第一リンク16を有している。特に、伸張状態を示す図17から分かるように下部側端を連結部9によって可回転的に支持した第一リンク16は、軸方向の中間部に連結軸6から離れる方向にほぼ直角に延びた中間突出部16Aを有した略ト字状に構成されている。中間突出部16Aの端部側には、駆動部ユニット8によって作動する直動アクチュエータ4の構成要素である可動軸4Aの端部が連結されている。直動アクチュエータ4の固定要素のシリンダ側は、ベース2のガイド装置11近傍に可回転的に連結されている。直動アクチュエータ4の可動要素であるロッド側の可動軸4Aは、連結軸9側に位置した下部X字状リンク機構14における中間突出部16Aの端部側に連結されている。
図17は、伸縮リンク式昇降装置1の伸張状態を示し、出入口階31の出入口30から侵入した駐車車両35をトレー34上に載せた状態を示している。
昇降台5の上面側には、床側トレー駆動装置40と同じ構成の昇降台側トレー駆動装置43と、昇降台側トレー駆動装置43を包囲するように配置した分断部縦方向走行レール38Hおよび分断部横方向走行レール39Hが配置されている。このため、昇降台5の上にトレー34が単独で、または駐車車両35を搭載させた状態のトレー34が乗せられると、昇降台側トレー駆動装置43と、トレー34の裏面側に構成されたトレー側従動装置とによってトレー34を任意の格納スペース側へと移動させることができる。
このような伸縮リンク式昇降装置1を採用すると、従来のようなガイドレールを有するリフト装置を設けることなく、一台の伸縮リンク式昇降装置1を用いて入出庫階61と複数階の格納階32,33を有する多階式駐車装置を構成することができる。
しかも、伸縮リンク式昇降装置1が伸張状態と、収縮状態と、中間状態で停止保持するように直動アクチュエータ4を駆動部ユニット8の制御装置25によって制御すると、図12および図17に示したように出入口階31と格納階33間の一階床分で駐車車両35を移動するだけなく、出入口階31と格納階32間の二階床分で駐車車両35を移動できる伸縮リンク式昇降装置1とすることができ、これを用いた多階式駐車装置としては、全体の構成を簡素化することができる。
さらに、詳細については先の実施例で説明したように、直動アクチュエータ4の制御装置25には、伸縮リンク装置3の昇降台5を伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させる伸張速度加速部26を設けているため、最上部に連結された昇降台5を用いて駐車車両35を出入口階31と格納階32の間で移動する場合、単位時間当たりの上昇速度を低下させることがなく、昇降台5に搭載した駐車車両35を素早く効率的に移動させることができる。
さらに、定常状態で伸縮リンク式昇降装置1が格納されている収納部41の近傍には、一般的なリフト装置のように格納階32,33から出入口階31の床部まで延び、かつ、昇降台5の動きを案内するガイドレールなどの構造物は存在しない。また昇降台5の収納状態または中間状態では、格納階32,33に存在する格納スペース間でのトレーの動きを制限するガイドレールのような構造物も存在しない。このため、同じ格納階の各格納スペース間での駐車車両35を搭載した状態のトレー34またはトレー34単体での移動が容易になり、同じ格納階での移動も短時間で効率的なものになる。
また上述したように図7に示した多階式駐車装置は、従来の昇降路とガイドレールを使用したリフト装置のように限られた位置に構成する必要がなくなり、図13および図14で説明したように伸縮リンク式昇降装置1を格納階の任意の格納スペース36A〜26Zの一つに構成することができるようになる。
また本実施例においても、先の実施例で説明した伸縮リンク式昇降装置1を使用して多階式駐車装置を構成したため、直動アクチュエータ4の動作軸線を殆ど変化させることなく第一リンク16を収縮方向または伸張方向に駆動することができ、ストロークの長い直動アクチュエータ4としても、直動アクチュエータ4に必要な圧力を減らすことができる。このため、従来のリフト装置に比べて簡単な構成の伸縮リンク式昇降装置1を用いて、昇降台5に搭載した駐車車両35を一階床分または二階床分だけ上下の階へと簡単に移動することができ、短時間で効率的な入出庫移動などを行うことができる。
図18は、本発明のさらに他の実施例による多階式駐車装置を示す断面図である。
先の実施例では駐車車両を格納する格納階32,33と出入口階31を有し、最大で二階床分を移動する伸縮リンク式昇降装置1を使用したが、本実施例では一階床分だけを移動する伸縮リンク式昇降装置を複数台使用して多階式駐車装置を構成している。
本実施例の多階式駐車装置は、出入口30を有する出入口階31と、地下一階の格納階33と、地下二階の格納階32とを有しており、両格納階32,33には、図12に示した先の実施例の場合と同様にトレー34上に搭載した状態の駐車車両35が分散した状態で格納されている。
地下一階の格納階33における床44には、収納部45が形成され、この収納部45の真上に位置する出入口階31の床46には開口47が形成されている。収納部45には、先の実施例と同様に構成された伸縮リンク式昇降装置1Bが伸張状態で配置されている。
地下二階の格納階32における床48にも、同様の収納部49が形成され、この収納部49の真上に位置する格納階33の床44にも開口50が形成されている。この収納部49には、先の実施例と同様に構成された他の伸縮リンク式昇降装置1Aが収縮状態で配置されている。
上述した両伸縮リンク式昇降装置1A,1Bは、先の実施例で詳細に説明した伸縮リンク式昇降装置1と同一構成である。また、格納階32における収納部49、収納部49の真上に形成された開口50および伸縮リンク式昇降装置1Aの構成と、格納階33における収納部45、収納部45の真上に形成された開口47および他の伸縮リンク式昇降装置1Bの構成とは同一構成である。ただし図示の例では、格納階33における伸縮リンク式昇降装置1Bが伸張状態、格納階32における伸縮リンク式昇降装置1Aが収納状態として示している。
また、これらの伸縮リンク式昇降装置1A,1Bは、上下方向で重ならない位置の格納スペースにそれぞれ設けられている。格納スペースとは、先の実施例における図13および図14などで説明した格納スペース36A〜36Zのことである。
格納階32において、駐車車両35Aを搭載した状態のトレー34Aまたはトレー34A単体は、格納階32の床部に形成された格納スペース間を先の実施例の場合と同様に床側トレー駆動装置40およびトレー側従動装置によって移動可能に構成されている。また格納階33において、駐車車両35Bを搭載した状態のトレー34Bまたはトレー34B単体は、格納階33の床部に形成された格納スペース間を先の実施例の場合と同様に床側トレー駆動装置40およびトレー側従動装置によって移動可能に構成されている。
出入口階31と格納階33間における駐車車両35Bを搭載した状態のトレー34Bまたはトレー34B単体の移動は、伸縮リンク式昇降装置1Bによって行われる。また、格納階32と格納階33間における駐車車両35Aを搭載した状態のトレー34Aまたはトレー34A単体の移動は、他の伸縮リンク式昇降装置1Aによって行われる。これに対して、出入口階31と格納階32間における駐車車両35Aを搭載した状態のトレー34Aまたはトレー34A単体の移動は、二台の伸縮リンク式昇降装置1A,1Bによって行われる。
各伸縮リンク式昇降装置1A,1Bは、二階床間に限って使用できる構成に限らず、三階床間に跨がって使用したり、利用階床間が異なる複数台を混在させたりしたものでも良い。
次に、駐車車両35Aを搭載した状態のトレー34Aを格納階32から出入口階31へ移動させる場合について簡単に説明する。
図18に示したように駐車車両35を搭載した状態のトレー34Aを伸縮リンク式昇降装置1Aの昇降台上に移動させた後、先の実施例で説明した直動アクチュエータ4に伸張指令が与えられる。すると、伸縮リンク式昇降装置1Aが伸張され駐車車両35Aを搭載した状態のトレー34Aが格納階32から開口50を通して格納階33の床44側に移動される。
その前後、伸縮リンク式昇降装置1B上に駐車車両を搭載した状態のトレーが位置している場合は、このトレーを床側トレー駆動装置40とトレー側従動装置を用いて移動させて、伸縮リンク式昇降装置1Bの昇降台上を空の状態とする。次いで、伸縮リンク式昇降装置1Aの昇降台に載せられている駐車車両35Aを搭載した状態のトレー34Aを、昇降台側トレー駆動装置とトレー側従動装置を用いて、伸縮リンク式昇降装置1Bの昇降台上に移動させる。
その後、伸縮リンク式昇降装置1Bを伸張させ、同トレー34Aを格納階33から開口47を通して出入口階31の床46側に移動させる。この状態で出入口30の電動扉を開放させて運転手が駐車車両35Aに乗り込んで、自ら運転して出庫させる。入庫時の動作は、ほぼ逆となる。
この出庫時には、二台の伸縮リンク式昇降装置1A,1Bを乗り継ぐことになるが、伸縮リンク式昇降装置1A,1Bはいずれも直動アクチュエータ4の制御装置25に、図17などで説明した伸縮リンク装置3の昇降台5を伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させる伸張速度加速部26を設けているため、最上部に連結された昇降台5における単位時間当たりの上昇速度を低下させることがなく、昇降台5に搭載した駐車車両35Aを素早く効率的に移動させることができる。
上述したような構成の多階式駐車装置でも、先の実施例で説明したように伸縮リンク式昇降装置1A,1Bを各格納スペースにおける移動に都合の良い中央部に位置した格納スペースに配置することができるので、効率的な移動を行うことができ、これも加味されて駐車車両35Aを素早く効率的に移動させることができる。
上述した各実施例の説明から分かるように本発明の多階式駐車装置は、上方階と下方階を有して構成した多階式駐車装置であれば適用することができ、例えば、駐車車両35を格納する格納階32,33の上方に駐車車両35の出入口階31を形成した構成に限らず、出入口階31の上方に格納階32,33を形成した構成に適用することができる。また使用する伸縮リンク式昇降装置1は一台に限らず、昇降も一階床分に限らず使用することができる。さらに、ガイドレールを使用したリフト装置を排除するものではなく、リフト装置を有する多階式駐車装置に上述した伸縮リンク式昇降装置1を追加した構成など、種々の多階式駐車装置に適用することができる。また上述した実施例で用いた伸縮リンク装置3は、図示のパンタグラフ式の構成に限らず、種々のリンク構成のものを使用することができる。
従って、本発明は、上下方向に形成された複数階に出入口と格納スペースとを形成し、前記出入口と前記格納スペースの間で、駐車車両が搭載可能なトレー34を移動する多階式駐車装置であれば適用することができる。
以上説明したように本発明は、上下方向に形成された複数階に、出入口と複数の格納スペース36A〜36Zを形成し、前記出入口と前記格納スペースの間で、駐車車両が搭載可能なトレー34を移動する多階式駐車装置において、上部に駐車車両を搭載可能な昇降台5を備え、かつ、下端の連結部9を可回転的に連結した第一リンク16を備えた伸縮リンク装置3と、前記第一リンク16の長手方向の中間部にその可動要素側を連結し、かつ、前記伸縮リンク装置3を伸張または収縮駆動して前記昇降台5を上方階または下方階に保持可能な直動アクチュエータ4を備えて伸縮リンク式昇降装置1を構成し、前記直動アクチュエータ4の制御装置25に、前記伸縮リンク装置3の前記昇降台5を伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させる伸張速度加速部26を設けたことを特徴とする。
このような構成によれば、直動アクチュエータ4を伸張速度加速部26によって制御すると、昇降台5を用いて駐車車両を搬送移動する場合、単位時間当たりの上昇速度を低下させることなく上方へ移動させことができるため、昇降台5に搭載した駐車車両を短時間で他の階へと移動することができ、短時間で効率的に駐車車両の移動を行うことができるようになる。
また本発明は上述の構成に加えて、前記第一リンク16は、前記伸縮リンク装置3の伸張状態で前記直動アクチュエータ4のほぼ動作軸線方向に延び、かつ収縮状態で前記第一リンク16に対してほぼ上向きに延びて位置する中間突出部16Aを有し、前記直動アクチュエータ4の可動要素を前記中間突出部16Aに連結したことを特徴とする。
このような構成によれば、直動アクチュエータ4の動作軸線を殆ど変化させることなく第一リンク16を収縮方向または伸張方向に駆動することができるため、ストロークの長い直動アクチュエータ4としても、直動アクチュエータ4に必要な圧力を減らし、これを伸縮リンク装置における前記昇降台を伸張後半では伸張初期よりも速度を加速させるために効果的に活用することができる。また、直動アクチュエータ4の動作軸線を殆ど変化させることなく第一リンク16を収縮方向または伸張方向に駆動することができるので、階床間で駐車車両を移動するために多階式駐車装置に使用する伸縮リンク装置3の直動アクチュエータ4を効率的に使用することができる。