JP2018144460A - 転写シート、該転写シートを用いた加飾成形品の製造方法、及び該転写シートの成形用型 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、基体シート上に全面的にマット剤を含有する離型層と、部分的に活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するマスク層と、転写層として剥離層と図柄層とが形成されたことを特徴とする部分マット転写シートが開示されている。
[1]離型シート上に転写層を有する転写シートであって、前記離型シートの前記転写層と接する側の面は、第1領域Xと、前記第1領域Xに隣接する第2領域Yとを有してなり、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域Xのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa1と、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第2領域Yのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa2とが、Ra1>Ra2の関係を満たし、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz1と、前記Ra1とが、2.0≦Rz1/Ra1≦15.0の関係を満たす、転写シート。
[2]上記[1]に記載の転写シートの転写層を被転写物に転写する工程と、前記転写シートの前記離型シートを剥離する工程とを有する、加飾成形品の製造方法。
[3]成形用型であって、前記型は、表面に、凹凸部を有する第1領域X’と、前記第1領域に隣接する第2領域Y’とを有してなり、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域X’のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa’1と、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第2領域Y’のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa’2とが、Ra’1>Ra’2の関係を満たし、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域X’のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz’1と、前記Ra’1とが、2.0≦Rz’1/Ra’1≦15.0の関係を満たす、成形用型。
本発明の転写シートは、離型シート上に転写層を有する転写シートであって、前記離型シートの前記転写層と接する側の面は、第1領域Xと、前記第1領域Xに隣接する第2領域Yとを有してなり、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域Xのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa1と、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第2領域Yのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa2とが、Ra1>Ra2の関係を満たし、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz1と、前記Ra1とが、2.0≦Rz1/Ra1≦15.0の関係を満たすものである。
図1の転写シート100は、離型シート10上に転写層20を有している。また、図1の離型シート10は、支持体11と、樹脂層12とから構成されており、離型シート10の転写層20と接する側の面は、第1領域Xと、第1領域Xに隣接する第2領域Yとを有している。また、図1の転写層20は、保護層21と、保護層21の離型シート10とは反対側に位置する接着剤層22とを有している。
離型シートは、転写層側の面に第1領域X及び第2領域Yを有する。離型シートは、樹脂成形体等の被転写物に転写層を転写した後に剥離される。
離型シート10の転写層と接する側の面は、第1領域Xと、第1領域Xに隣接する第2領域Yとを有する。
なお、離型シートは、転写層と接する側の面に、さらに別の領域を有していてもよい。
したがって、JIS B0601:1994に準じて測定される第1領域Xのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa1と、JIS B0601:1994に準じて測定される第2領域Yのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa2とが、Ra1>Ra2の関係を満たすことは、被転写物に対して、表面形状が異なる2つの領域を形成できることを意味している。そして、Ra1>Ra2の関係を満たし、被転写物に対して表面形状が異なる2つの領域を形成することにより、被転写物の意匠性を良好にすることができる。
本発明では、JIS B0601:1994に準じて測定される第1領域のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz1と、Ra1との比[Rz1/Ra1]を15.0以下とすることにより、スジ状のパターンを抑制している。
まず、スジ状のパターンが生じる原因は、離型シートを剥離する際の剥離強度が、第1領域と第2領域との境界において急激に変化しているためと考えられる。例えば、第2領域から第1領域に切り替わる際に剥離強度が急激に大きくなった場合、剥離が一瞬停止したり、剥離速度が急に遅くなったりする。このような一瞬の剥離の停止や剥離速度の急激な変化によって、転写層の表面にスジ状のパターンが生じると考えられる。
そして、Ra1>Ra2の関係を満たす場合、第2領域よりも第1領域の方が転写層との単位面積あたりの接触面積が大きくなるため、原則として、第1領域を剥離する際の剥離強度は第2領域を剥離する際の剥離強度よりも大きくなる。さらに、第1領域の凹凸のランダム性が大きすぎる場合、第1領域の高い山及び/又は深い谷に転写層が食い込みやすくなり、第1領域の剥離強度がより大きくなる。
本発明では、凹凸のランダム性の指標として「Rz1/Ra1」を採用し、Rz1/Ra1を15.0以下として第1領域の凹凸のランダム性を抑制することにより、第1領域の剥離強度の増加を抑制し、スジ状のパターンを抑制することを可能としている。
スジ状のパターンは、「離型シートの中心部に第1領域X、周辺部に第2領域Yを配置する構成」、及び、「離型シートの中心付近に独立した複数の第1領域Xを配置し、該複数の第1領域Xの周囲に第2領域Yを配置する構成」において特に生じやすいが、本発明ではかかる構成においてもスジ状のパターンが生じることを抑制できる。
Rz1/Ra1を2.0以上とすることにより、第1領域の凹凸に一定のランダム性を付与することができ、第1領域の欠陥を目立ちにくくすることができる。また、欠陥が目立ちにくいため、加飾成形品の意匠性及び歩留まりの低下を抑制できる。
Rz1/Ra1は、3.0〜10.0であることが好ましく、3.5〜8.0であることがより好ましく、4.0〜7.0であることがさらに好ましい。
本発明において、Ra及びRzは、離型シートの第1領域及び第2領域に相当する箇所から3.3cm×3.3cmのサンプルを切り出し、該サンプルの縦方向を0.3cm間隔で10点測定、該サンプルの横方向を0.3cm間隔で10点測定し、合計20点の測定値の平均値とする。なお、サンプルは、目視でゴミや傷などの異常点がない箇所から切り出すものとする。
Ra1−Ra2を0.05μm以上とすることにより、第1領域と第2領域とのコントラスト(例えば、防眩性や光沢度等のコントラスト)が明確となり、意匠性をより良好にすることができる。また、Ra1−Ra2を1.00μm以下とすることにより、スジ状のパターンが発生することを抑制しやすくできる。
なお、本明細書において「AA〜BB」とは、「AA以上BB以下」のことをいう。以下、同様である。
Ra1は、0.10〜1.00μmであることがより好ましく、0.13〜0.50μmであることがさらに好ましく、0.15〜0.35μmであることがよりさらに好ましい。
Rz1を0.25μm以上とすることにより、第1領域Xに傷等の欠陥が生じた場合に、該欠陥を目立ちにくくすることができ、歩留まりを向上できる。また、Rz1を5.00μm以下とすることにより、被転写物の意匠性の低下を抑制できる。また、Rz1を5.00μm以下とすることにより、被転写物を液晶表示素子等の表示素子の前面に用いる場合、白化やギラツキを抑制できる。なお、「ギラツキ」とは、凹凸構造に起因して、映像光に微細な輝度のばらつきが見える現象のことをいう。
Ra2は、第1領域Xとのコントラストを明りょうにする観点から、0.10μm未満であることが好ましく、0.07μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることがさらに好ましい。
なお、Ra2が上記範囲であると、第1領域Xと第2領域Yとの剥離強度の差が大きくなりやすくなり、スジ状のパターンが発生しやすくなる傾向にあるが、本発明では、Rz1/Ra2を上記範囲とすることにより、スジ状のパターンの発生を抑制している。
また、図示しないが、離型シートは、転写層側の面に離型層を有することが好ましい。
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6又はナイロン66などで代表されるポリアミド系樹脂などの樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。
これらのプラスチックフィルムの中では、耐熱性、寸法安定性に優れ、転写時の位置合わせの適性に優れる2軸延伸ポリエステルフィルムが好適である。
また、支持体11の表面には、樹脂層12等との接着性を高めるために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理や、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
樹脂層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物等の樹脂成分を主成分として含むことが好ましい。なお、主成分とは、樹脂層を構成する全固形分の50質量%以上を意味し、該割合は70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
上記の樹脂成分の中でも、強度に優れるとともに、瞬時に硬化するため正確かつ精密な形状を付与できる電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好適である。また、電離放射線硬化性樹脂組成物による効果を得やすくする観点から、樹脂層を構成する全樹脂成分のうち、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%含むことがよりさらに好ましい。
なお、樹脂層をコーティングにより形成する場合、塗布液に含まれる粒子が少なからず凝集しやすく、Rz/Raが大きくなることを抑制するための種々の対策が必要となり、工程が複雑化するため好ましくない。
電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。また、転写シートを製造する過程で樹脂層が傷つくことを抑制する観点からは、電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化性樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
離型シートと、転写層との界面は、被転写物に密着した際に剥離可能に形成されている。
離型性を向上させるため、離型シートは、転写層と接する側の面の少なくとも一部に離型層を有することが好ましい。また、転写シートの面内の離型性の均一化の観点からは、離型シートは、転写層と接する側の面の全面に離型層を有することが好ましい。
また、第1領域Xの凹凸部上に離型層が形成されることで、被転写物の表面に高周波成分の少ない凹凸形状を形成することができ、被転写物の白化及びギラツキを抑制できる。
離型層の樹脂は、所定の被膜強度を有し、転写層との接着力が低い材料であれば特に限定されず、汎用の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物等が挙げられる。具体的には、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿等が挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく、アクリルポリオール及びイソシアネートを含む熱硬化性樹脂組成物がより好ましい。
離型層の厚みは、例えば、離型シートの中央部分を垂直方向に切断した断面の断面写真を撮像し、該断面写真から離型層の厚みを500μm間隔で少なくとも20箇所測定した際の平均値として算出できる。
その他の層としては、帯電防止層が挙げられる。帯電防止層を有することにより、離型シートを剥離する際の剥離帯電を抑制でき、転写の作業性を向上できる。
帯電防止層は、離型シートの転写層と接する側の面とは反対側の表面に形成されていることが好ましい。
帯電防止層は、表面抵抗率を1.0×10−9Ω/□〜1.0×10−12Ω/□の範囲に調整することが好ましい。
なお、帯電防止剤を樹脂層等の他の層に含有させて帯電防止性を発揮させてもよい。
第1領域X及び第2領域Yを有する離型シートは、例えば、以下の(A1)〜(A2)の工程により製造できる。
(A2)第1領域X及び第2領域Yと相補的な形状を有する版を用いて、未硬化の樹脂層を賦形すると同時に、電離放射線を照射して、賦形した樹脂層を硬化させる工程。
離型シートが離型層を有する場合、(A2)工程の後に、(A3)樹脂層上に離型層を形成する工程、を行えばよい。
(A2)工程で使用する版の表面は、クロム等で硬質メッキ処理することが好ましい。
サンドブラストでは、例えば、シリンダー表面の材質、研磨材の粒子径、研磨材の材質、シリンダーへの研磨材の衝突回数、噴射ノズルとシリンダーとの距離、噴射圧、噴射周波数等を制御することにより、凹凸形状を調整できる。
上述した制御手段の中でも、Rz1/Ra1の制御には、「シリンダーへの研磨材の衝突回数」が最も簡易かつ有効である。すなわち、シリンダー表面への研磨材の衝突回数が少ないとRz1/Ra1が大きくなり、シリンダー表面への研磨材の衝突回数が多くなるにつれてRz1/Ra1が小さくなる傾向にある。ただし、衝突回数を増やしてRz1/Ra1が小さくなるといっても限度があり、Rz1/Ra1の減少は徐々に飽和に向かう。
また、シリンダー表面の材質を硬くすると、研磨材によってシリンダーが深く削られにくくなるため、Rz1/Ra1が小さくなる傾向にある。
また、研磨材の粒子径が大きいと凹凸が平均化され、Rz1/Ra1が小さくなる傾向にある。また、研磨材の形状が球形であると特異的な凹凸が形成されにくくなり、凹凸が平均化され、Rz1/Ra1が小さくなる傾向にある。
また、噴射ノズルとシリンダーとの距離を短くすると、Ra1及びRz1はともに大きくなる傾向にあり、かつ増加率も同程度である。つまり、噴射ノズルとシリンダーとの距離を変動させてもRz1/Ra1は概ね同じ値を示す傾向にある。
また、噴射圧を大きくすると、Ra1及びRz1はともに大きくなる傾向にあり、かつ増加率も同程度である。つまり、噴射圧を変動させてもRz1/Ra1は概ね同じ値を示す傾向にある。
例えば、樹脂層上に厚み0.4μmの離型層を形成する場合、離型層表面のRa及びRzは樹脂層表面の6割程度の大きさとなり、樹脂層上に厚み0.8μmの離型層を形成する場合、離型層表面のRa及びRzは樹脂層表面の5割程度の大きさとなり、樹脂層上に厚み1.3μmの離型層を形成する場合、離型層表面のRa及びRzは樹脂層表面の4割程度の大きさとなる。前述の割合は目安であり、離型層塗布液の粘度等の条件によって若干変化する。
なお、樹脂層上にその他の層を形成した際のRa及びRzの減少率は概ね同じである。このため、樹脂層表面のRz/Raと、その他の層上のRz/Raとは概ね同じ値となる。したがって、Rz/Raの値に関しては、型の形状で概ね調整できる。
(B1)第1領域X及び第2領域Yと相補的な形状を有する版に、樹脂層形成用塗布液を充填する工程。
(B2)版に充填した樹脂層形成用塗布液を支持体上に転写し、必要に応じて乾燥及び硬化して、樹脂層を形成する工程。
離型シート上には、転写層が形成される。
転写層20は、被転写物に転写される層であり、例えば図1に示すように、第1領域X及び第2領域Yを覆うようにして形成される。また、転写層20は、例えば図1に示すように、離型シート10に近い側から順に、保護層21及び接着剤層22を有する。
転写層を構成する保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む層である。保護層は、転写層が転写シートから被転写物へと転写された後は、摩耗や光、薬品等から加飾成形品を保護する役割を有する。
硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられ、これらの中でも電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
また、保護層は熱可塑性樹脂を含有してもよいが、耐擦傷性を向上する観点から、その量は微量であることが好ましい。具体的には、保護層中の熱可塑性樹脂の含有量は5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましく、0質量%であることがよりさらに好ましい。
なお、硬化性樹脂組成物は、保護層を形成する時点では半硬化の状態にしておき、被転写物に転写した後に、加熱、電離放射線の照射等により硬化性樹脂組成物の硬化を進行させ、完全硬化させてもよい。このようにすることにより、被転写物に対する転写シートの追従性が良好となるため、成形性を良好にすることができる。また、硬化性樹脂組成物を保護層の形成時点では半硬化の状態にしておき、被転写物に転写し、離型シートを剥離した後に加熱、電離放射線の照射等により硬化性樹脂組成物の硬化を進行させ、完全硬化させることにより、応力が緩和されやすくなり、スジ状のパターンの発生をより抑制することができる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、アンチモン、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。
本明細書において、平均粒子径は、溶液中の該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を体積累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)である。50%粒子径は、例えば、Microtrac粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
接着剤層は、樹脂成形体等の被転写物と、転写層との接着性を良好にして、転写作業を良好にする役割を有する。
なお、保護層と被転写物との接着性が良好な場合は、接着剤層を設けなくてもよい。
接着剤層には、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。
接着剤層の厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
アンカー層は、インモールド成形等の高温環境に置かれる場合において、耐熱性を向上させるために必要に応じて設けられる層である。アンカー層は、保護層と接着剤層との間に形成することが好ましい。
硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物が挙げられる。
アンカー層の熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物の実施の形態は、樹脂層の熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物の実施の形態と同様である。
アンカー層の厚みは、0.1〜6μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
転写層は、さらに印刷層を有していてもよい。印刷層は、加飾成形品に所望の意匠性を付与する役割を有する。
印刷層のパターンは任意であり、例えば、木目、石目、布目、砂目、円、四角形、多角形、幾何学模様、文字、ベタ印刷等が挙げられる。
印刷層の厚みは、意匠性の観点から0.5〜40μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
本発明の加飾成形品の製造方法は、上述した本発明の転写シートの転写層を被転写物に転写する工程と、転写シートの離型シートを剥離する工程と、を有する。
被転写物としては、樹脂成形体等が挙げられる。
(z1)上記の転写シートの転写層側をインモールド成形用型の内側に向けて配置する工程と、
(z2)上記インモールド成形用型内に樹脂を射出注入する工程と、
(z3)上記転写シートと、上記樹脂とを一体化させて、樹脂成形体(被転写物)の表面上に上記転写シートの転写層を転写する工程と、
(z4)樹脂成形体(被転写物)を型から取り出した後、上記転写シートの離型シートを剥離する工程と、を有するものが挙げられる。
保護層が半硬化の状態の場合、(z4)工程の終了後に紫外線を照射して保護層を完全に硬化させることが好ましい。
樹脂成形体としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、公知の様々な樹脂を用いることができる。
本発明による加飾成形品をインモールド成形により製造する場合には、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。
本発明の成形用型は、表面に、凹凸部を有する第1領域X’と、前記第1領域に隣接する第2領域Y’とを有してなり、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域X’のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa’1と、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第2領域Y’のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa’2とが、Ra’1>Ra’2の関係を満たし、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域X’のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz’1と、前記Ra’1とが、2.0≦Rz’1/Ra’1≦15.0の関係を満たす、ものである。
また、Rz’1/Ra’1を15.0以下とすることにより、成形用型から樹脂層を剥離する際に、剥離速度の急激な変化によって、樹脂層の表面にスジ状のパターンが生じることを抑制できる。
「Ra’1−Ra’2」、「Ra’1」、「Ra’2」及び「Rz’1」の好適な範囲は、上述した転写シートの「Ra1−Ra2」、「Ra1」、「Ra2」及び「Rz1」の好適な範囲と同様とすることが好ましい。但し、樹脂層上にその他の層を有する離型シート用の型として用いる場合、「Ra1」、「Ra2」及び「Rz1」が、「Ra’1」、「Ra’2」及び「Rz’1」よりも緩和されることを考慮した設計とすることが好ましい。
1−1.成形用型Aの作製
厚み200μmの硬質銅メッキ層を有するシリンダーを準備した。該シリンダー表面の第1領域X’に相当する箇所が抜き加工されたマスクで覆った。次いで、該シリンダーを回転しながら該シリンダーの表面を下記条件でサンドブラスト処理して、中心部に第1領域X’、周辺部に第2領域Y’が配置されてなる成形用型Aを作製した。第1領域X’の面積S’1と、第2領域Y’の面積S’2との比[S’2/S’1]は、1.21であった。
[サンドブラスト条件]
・シリンダーの直径:300mm
・パス回数※:4回
・研磨粒子:平均粒子径83μmの球形ガラスビーズ
・噴射ノズルの直径:400mm
・噴射圧:0.23MPa
・噴射周波数:90Hz
※「パス回数」とは、サンドブラスト処理の開始から終了までのシリンダーの回転数である。つまり、パス回数が多いほどサンドブラスト処理の時間が長くなる。
サンドブラスト条件、及びシリンダーのメッキ層を表1の条件に変更した以外は、成形用型Aと同様にして成形用型B〜Gを作製した。
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記処方の樹脂層形成用塗布液を塗布、乾燥し、未硬化の樹脂層を形成した。
<樹脂層形成用塗布液>
・電離放射線硬化性樹脂組成物 60質量部
(共栄化学社製、ES105M)
・メチルエチルケトン 40質量部
・シリコーン系レベリング剤 0.5質量部
[表面粗さ検出部の触針]
小坂研究所社製の商品名SE2555N(先端曲率半径:2μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.8mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):4.0mm
・触針の送り速さ:0.5mm/s
・予備長さ:(カットオフ値λc)×2
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
[実施例1]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記処方の樹脂層形成用塗布液を塗布、乾燥し、未硬化の樹脂層を形成した。
<樹脂層形成用塗布液>
・電離放射線硬化性樹脂組成物 60質量部
(共栄化学社製、ES105M)
・メチルエチルケトン 40質量部
・シリコーン系レベリング剤 0.5質量部
なお、樹脂層から成形用型Aを剥がす際に、剥離性は良好であり、樹脂層の表面にスジ状のパターンが形成されることはなかった。後述の実施例において、成形用型B〜Gを用いた際にも、樹脂層の表面にスジ状のパターンが形成されることはなかった。
<離型層形成用塗布液>
・アクリルポリオール 70質量部
(綜研化学社製、商品名:サーモラックSU100A)
・イソシアネート 25質量部
(三井化学社製、商品名:タケネートD−110N)
・酢酸エチル 161質量部
・メチルイソブチルケトン 56質量部
<保護層形成用塗布液>
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物 70質量部
(大日精化社製、商品名:セイカビームHT−X)
(固形分35質量%、トルエン/酢酸エチル混合溶剤)
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物 30質量部
(大日精化社製、商品名:セイカビームEXF−HT−1)
(固形分40質量%、トルエン/メチルエチルケトン混合溶剤)
<アンカー層形成用塗布液>
・アクリルポリオール 100質量部
(大日精化社製、商品名:TM−VMAC、固形分25質量%)
(トルエン/酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤)
・キサンメチレンジイソシアネート 10質量部
(大日精化社製、商品名:PTC−RC3)
(固形分75質量%、溶剤:酢酸エチル)
<接着剤層用塗布液>
・アクリル系樹脂 100質量部
(大日精化社製、商品名:TM−R600、固形分20%)
(酢酸エチル/酢酸−n−プロピル/メチルエチルケトン混合溶剤)
・メチルエチルケトン 40質量部
型及び離型層の厚みを表2の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜13の転写シートを得た。
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの第1領域Xを形成する箇所の上に、下記処方のマット層形成用塗布液を乾燥後の厚みが2.5μmとなるように塗布し、塗膜を形成した後、室温(25℃)で72時間エージングし、プレ硬化させたマット層を形成した。
<マット層用塗布液>
・アクリルポリオール 40質量部
(綜研化学社製、商品名:サーモラックSU100A、固形分50質量%)
・フィラー 4質量部
(日本触媒社製、商品名:エポスターS12、平均粒子径1.2μm)
・イソシアネート 14質量部
(三井化学社製、商品名:タケネートD−110N、固形分:75%)
(タケネートは登録商標)
・酢酸エチル 40質量部
次いで、該離型シートの離型層上に、実施例1と同様にして、保護層、アンカー層及び接着剤層を形成し、比較例1の転写シートを得た。該転写シートの第1領域Xの面積S1と、第2領域Yの面積S2との比[S2/S1]は、1.21であった。
実施例及び比較例で得られた転写シートについて以下の評価、測定を行った。結果を表2に示す。
表面粗さ測定器(型番:SE−3400/小坂研究所株式会社製)を用いて、下記の測定条件により、実施例及び比較例の転写シートに用いる離型シートの第1領域X及び第2領域Yについて、カットオフ値0.8mmでのJIS B0601:1994のRa1及びRz1を測定した。
[表面粗さ検出部の触針]
小坂研究所社製の商品名SE2555N(先端曲率半径:2μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.8mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):4.0mm
・触針の送り速さ:0.5mm/s
・予備長さ:(カットオフ値λc)×2
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
実施例及び比較例で得られた転写シートを用いて、明細書本文の(z1)〜(z4)の工程を行った後、保護層側から紫外線照射(大気中、Hバルブ、800mJ/cm2)し、保護層を完全に硬化させ、加飾成形品を得た。型は厚み2mmの平板状の型を用い、射出樹脂としてはポリカーボネートを用い、射出時の射出樹脂の温度を285℃とした。
得られた加飾成形品の表面を蛍光灯の照明下で様々な角度から観察し、スジ状のパターンが観察されないものを「A」、スジ状のパターンが観察されたものを「C」とした。
実施例及び比較例で得られた加飾成形品の透明アクリルシート側の面を液晶表示装置の画面に貼り合わせ、液晶表示装置の画面を正面から観察した。ギラツキが目立たなかったものをA、ギラツキが目立ったものをCとした。
12:樹脂層
10:離型シート
20:転写層
21:保護層
22:接着剤層
40:転写層
100:転写シート
Claims (6)
- 離型シート上に転写層を有する転写シートであって、
前記離型シートの前記転写層と接する側の面は、第1領域Xと、前記第1領域Xに隣接する第2領域Yとを有してなり、
JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域Xのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa1と、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第2領域Yのカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa2とが、Ra1>Ra2の関係を満たし、
JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz1と、前記Ra1とが、2.0≦Rz1/Ra1≦15.0の関係を満たす、転写シート。 - 前記Ra1−前記Ra2が0.05〜1.00μmである請求項1に記載の転写シート。
- 前記Rz1が0.25〜5.00μmである請求項1又は2に記載の転写シート。
- 前記第1領域Xの面積S1と、前記第2領域Yの面積S2とが、0.1≦S2/S1の関係を満たす、請求項1〜3の何れか1項に記載の転写シート。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の転写シートの転写層を被転写物に転写する工程と、前記転写シートの前記離型シートを剥離する工程とを有する、加飾成形品の製造方法。
- 成形用型であって、
前記型は、表面に、凹凸部を有する第1領域X’と、前記第1領域に隣接する第2領域Y’とを有してなり、
JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域X’のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa’1と、JIS B0601:1994に準じて測定される前記第2領域Y’のカットオフ値0.8mmでの算術平均粗さRa’2とが、Ra’1>Ra’2の関係を満たし、
JIS B0601:1994に準じて測定される前記第1領域X’のカットオフ値0.8mmでの十点平均粗さRz’1と、前記Ra’1とが、2.0≦Rz’1/Ra’1≦15.0の関係を満たす、成形用型。
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