以下、本発明に係る車両制御装置の実施の形態例を図1〜図10を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。
車両制御装置10は、自車両100に組み込まれており、且つ、自動運転又は手動運転により車両の走行制御を行う。この場合、「自動運転」は、車両の走行制御を全て自動で行う「完全自動運転」のみならず、走行制御を部分的に自動で行う「部分自動運転」を含む概念である。
車両制御装置10は、基本的には、入力系装置群と、制御システム12と、出力系装置群とから構成される。入力系装置群及び出力系装置群をなす各々の装置は、制御システム12に通信線を介して接続されている。
入力系装置群は、外界センサ14と、通信装置16と、ナビゲーション装置18と、車両センサ20と、自動運転スイッチ22と、操作デバイス24に接続された操作検出センサ26と、を備える。
出力系装置群は、図示しない車輪を駆動する駆動力装置28と、当該車輪を操舵する操舵装置30と、当該車輪を制動する制動装置32と、主に視覚・聴覚を通じて運転者に報知する報知装置34(報知部)と、を備える。
外界センサ14は、車両の外界状態を示す情報(以下、外界情報)を取得し、当該外界情報を制御システム12に出力する。外界センサ14は、具体的には、複数のカメラ38と、複数のレーダ39と、複数のLIDAR40(Light Detection and Ranging;光検出と測距/Laser Imaging Detection and Ranging;レーザ画像検出と測距)を含んで構成される。
通信装置16は、路側機、他の車両、及びサーバを含む外部装置と通信可能に構成されており、例えば、交通機器に関わる情報、他の車両に関わる情報、プローブ情報又は最新の地図情報44を送受信する。この地図情報44は、記憶装置42の所定メモリ領域内に、或いはナビゲーション装置18に記憶される。
ナビゲーション装置18は、車両の現在位置を検出可能な衛星測位装置と、ユーザインタフェース(例えば、タッチパネル式のディスプレイ、スピーカ及びマイク)を含んで構成される。ナビゲーション装置18は、車両の現在位置又はユーザによる指定位置に基づいて、あるレーンを走行中に、指定した目的地までの経路又は道なりの経路を算出し、制御システム12に出力する。ナビゲーション装置18により算出された経路は、記憶装置42の所定メモリ領域内に、予定走行経路情報46として記憶される。
車両センサ20は、車両の走行速度V(車速)を検出する速度センサ、加速度を検出する加速度センサ、横Gを検出する横Gセンサ、垂直軸周りの角速度を検出するヨーレートセンサ、向き・方位を検出する方位センサ、勾配を検出する勾配センサを含み、各々のセンサからの検出信号を制御システム12に出力する。これらの検出信号は、記憶装置42の所定メモリ領域内に、自車情報48として記憶される。
自動運転スイッチ22は、例えば、インストルメントパネルに設けられた押しボタンスイッチである。自動運転スイッチ22は、ドライバを含むユーザのマニュアル操作により、複数の運転モードを切り替え可能に構成される。
操作デバイス24は、アクセルペダル、ステアリングホイール、ブレーキペダル、シフトレバー、及び方向指示レバーを含んで構成される。操作デバイス24には、ドライバによる操作の有無や操作量、操作位置を検出する操作検出センサ26が取り付けられている。
操作検出センサ26は、検出結果としてアクセル踏込量(アクセル開度)、ステアリング操作量(操舵量)、ブレーキ踏込量、シフト位置、右左折方向等を車両制御部60に出力する。
駆動力装置28は、駆動力ECU(電子制御装置;Electronic Control Unit)と、エンジン・駆動モータを含む駆動源から構成される。駆動力装置28は、車両制御部60から入力される車両制御値に従って車両の走行駆動力(トルク)を生成し、トランスミッションを介して、或いは直接的に車輪に伝達する。
操舵装置30は、EPS(電動パワーステアリングシステム)ECUと、EPS装置とから構成される。操舵装置30は、車両制御部60から入力される車両制御値に従って車輪(操舵輪)の向きを変更する。
制動装置32は、例えば、油圧式ブレーキを併用する電動サーボブレーキであって、ブレーキECUと、ブレーキアクチュエータとから構成される。制動装置32は、車両制御部60から入力される車両制御値に従って車輪を制動する。
報知装置34は、報知ECUと、表示装置と、音響装置とから構成される。報知装置34は、制御システム12(具体的には、モード移行処理部54)から出力される報知指令に応じて、自動運転又は手動運転に関わる報知動作(後述するTORを含む)を行う。
ここで、自動運転スイッチ22が押される度に、「自動運転モード」と「手動運転モード」(非自動運転モード)が順次切り替わるように設定されている。これに代わって、ドライバの意思確認を確実にするため、例えば、2度押しで手動運転モードから自動運転モードに切り替わり、1度押しで自動運転モードから手動運転モードに切り替わるように設定することもできる。
自動運転モードは、ドライバが、操作デバイス24(具体的には、アクセルペダル、ステアリングホイール及びブレーキペダル)の操作を行わない状態で、車両が制御システム12による制御下に走行する運転モードである。換言すれば、自動運転モードは、制御システム12が、逐次作成される行動計画に従って、駆動力装置28、操舵装置30、及び制動装置32の一部又は全部を制御する運転モードである。
なお、ドライバが、自動運転モードの実行中に操作デバイス24を用いた所定の操作を行うと、自動運転モードが自動的に解除されると共に、運転の自動化レベルが相対的に低い運転モード(手動運転モードを含む)に切り替わる。以下、自動運転から手動運転へ移行させるために、ドライバが自動運転スイッチ22又は操作デバイス24を操作することを「テイクオーバー操作」ともいう。
制御システム12は、1つ又は複数のECUにより構成され、上記した記憶装置42のほか、各種機能実現部を備える。なお、機能実現部は、この実施の形態では、CPU(中央処理ユニット)が記憶装置42に記憶されているプログラムを実行することにより機能が実現されるソフトウエア機能部であるが、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路からなるハードウエア機能部により実現することもできる。
制御システム12は、記憶装置42及び車両制御部60のほか、外界認識部50と、行動計画作成部52と、モード移行処理部54と、情報取得部56と、軌道生成部58と、を含んで構成される。
外界認識部50は、入力系装置群により入力された各種情報(例えば、外界センサ14からの外界情報)を用いて、車両の両側にあるレーンマーク(白線)を認識し、停止線・信号機の位置情報、又は走行可能領域を含む「静的」な外界認識情報を生成する。また、外界認識部50は、入力された各種情報を用いて、駐停車車両等の障害物、人・他車両等の交通参加者、又は信号機の灯色を含む「動的」な外界認識情報を生成する。
行動計画作成部52は、外界認識部50による認識結果に基づいて行動計画(イベントの時系列)を作成し、必要に応じて行動計画を更新する。イベントの種類として、例えば、減速、加速、分岐、合流、レーンキープ、レーン変更、追い越しが挙げられる。ここで、「減速」「加速」は、車両を減速又は加速させるイベントである。「分岐」「合流」は、分岐地点又は合流地点にて車両を円滑に走行させるイベントである。「レーン変更」は、車両の走行レーンを変更させるイベントである。「追い越し」は、車両に前走車両を追い越させるイベントである。
また、「レーンキープ」は、走行レーンを逸脱しないように車両を走行させるイベントであり、走行態様との組み合わせによって細分化される。走行態様として、具体的には、定速走行、追従走行、減速走行、カーブ走行、或いは障害物回避走行が含まれる。
軌道生成部58は、記憶装置42から読み出した地図情報44、予定走行経路情報46及び自車情報48を用いて、行動計画作成部52により作成された行動計画に従う走行軌道(目標挙動の時系列)を生成する。この走行軌道は、具体的には、少なくとも位置及び速度をデータ単位とする時系列データセットである。もちろん、データ単位は、姿勢角、加速度、曲率、ヨーレート、操舵角の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
車両制御部60は、軌道生成部58により生成された走行軌道(目標挙動の時系列)に従って、車両を走行制御するための各々の車両制御値を決定する。そして、車両制御部60は、得られた各々の車両制御値を、駆動力装置28、操舵装置30、及び制動装置32に出力する。
情報取得部56は、車両の走行環境に関する条件(以下、環境条件)の判定処理に必要な情報を取得する。必要な情報には、具体例として、時間情報(例えば、現在時刻・時間帯・到着予想時刻)、地理情報(例えば、緯度・経度・標高・地形・高低差)、天候情報(例えば、天気・気温・湿度・予報情報)が挙げられる。
一方、モード移行処理部54は、運転モードの移行処理を行うと共に、行動計画作成部52、報知装置34に向けて信号を出力する。具体的には、モード移行処理部54は、図2に示すように、走行環境取得部62、引継要求部64、引継要求地点設定部66、運転難易度取得部68、引継要求タイミング設定部70(第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70D)、引継要求タイミング補正部72、運転情報提供部74として機能する。なお、図2では、引継要求タイミング設定部70として、第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70Dを示している。この場合、第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70Dの全てを含む必要はなく、車種や仕様等によって、第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70Dのうち、少なくとも1つを含めればよい。
走行環境取得部62は、自車両100の走行環境を取得する。この走行環境には、外界認識部50による直近の認識結果、又は、情報取得部56からの取得情報(例えば、上記した時間情報・地理情報・天候情報)が含まれる。
引継要求部64は、ドライバに対して手動運転への引き継ぎ(テイクオーバー)を要求する要求動作を行う。これにより、報知装置34は、引継要求部64からの要求動作(報知指令)に応じて、ドライバに対して引き継ぎを行うべき旨を報知する。以下、この要求動作から報知動作までの一連の動作のことを「TOR」(テイクオーバーリクエスト)という場合がある。
引継要求地点設定部66は、自車両100の走行中に、予定走行経路情報46が示す自車両100の予定走行経路のうち、ドライバによる手動運転への引継ぎ要求(TOR:テイクオーバーリクエスト)を行う可能性のある走行区間ZanにTOR候補地点Panを設定する。このTOR候補地点Panとしては、合流路、分岐路、レーン変更、交差点、渋滞等の地点が挙げられる。
例えば図3に示すように、予定走行経路中、TORを行う可能性がある走行区間Zanとして合流路67を想定したとき、合流路の走行区間ZanにTOR候補地点Panが設定される。そして、合流路67の走行区間Zanから自車両100に向かって例えば直線コース、カーブ、高低差(坂道等)、交差点等の道路形状によって走行区間が設定される。もちろん、所定距離(例えば300m〜1km)単位に走行区間を設定してもよい。図3の例では、合流路67の走行区間Zanから自車両100に向かって、道路形状(直線コース、カーブ等)に応じて走行区間Z1、Z2、Z3、Z4が設定された例を示す。なお、図3では、走行区間に対して自車両100を含む車両の大きさを誇張して示してある。また、自車両100が合流路67に向かうまでの予定走行経路としては、高速道路や一般道が挙げられる。直線コースは曲率半径が例えば500m以上、カーブは曲率半径が例えば500m未満の道路を示す。
運転難易度取得部68は、自車両100の走行中に、各TOR候補地点Panでの運転難易度と、TOR候補地点Panから自車両100の現在位置までの運転難易度とを取得する。運転難易度とは、手動運転に引き継いだ後のドライバにとっての運転難易度をいう。この運転難易度は、例えば下記事項に適合する個数に応じて高くなる。下記事項はあくまでも一例であり、運転難易度が高くなる事項としては、下記事項のほか、様々な事項が挙げられることはもちろんである。
(a) 合流路67の距離が短い(例えば100m未満)。
(b) 合流路67での側方、後方の視認が困難な道路構造をしている。
(c) 分岐路の距離が短い(例えば100m未満)。
(d) カーブの曲率半径が小さく、手動運転に引き継いだ後のステアリング操作が大きい。
(e) 通信インフラを通じて渋滞していることが判明している。
(f) 逆光や雨・雪・霧等の天候不良
運転難易度取得部68は、走行軌道の時系列データセットや地図情報等に基づいて、道路形状(直線コース、カーブ、坂道等)に応じた走行区間毎の運転難易度を取得する。
一例として、図3に、自車両100の走行区間毎の運転難易度を示す。例えばZ1(高)は走行区間Z1の運転難易度が高く、Z2(低)は走行区間Z2の運転難易度が低いことを示す。
引継要求タイミング設定部70は、設定されたTOR候補地点Panの運転難易度に基づいて、引継要求部64による引継ぎ要求を出すタイミングを設定する。
引継要求タイミング設定部70は、少なくとも4種類のタイミング設定部(第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70D)があり、これらのうちの1つを仕様に応じて選択して、モード移行処理部54に組み込むことができる。
第1タイミング設定部70Aは、設定されたTOR候補地点Panの運転難易度が高い場合に起動される。この第1タイミング設定部70Aは、図4Aに示すように、1つの走行区間Zanに設定されたTOR候補地点Panから第1所定距離Daだけ自車両100側に位置する走行区間Zbnに、引継ぎ要求地点(TOR地点Pbnと記す)を設定する。
第1所定距離Daとしては、例えば予め設定された固定値としての距離でもよいし、自車両100の現在の車速に第1所定時間Taを乗算した距離でもよい。また、自車両100が走行区間Zanを走行する際の目標車速に第1所定時間Taを乗算した距離でもよい。
合流路67、分岐路等と走行区間との関係は例えば以下のように設定することができる。合流路67であれば、合流路67を示す案内標識の地点から合流路67が終了する地点までの区間を走行区間として設定する。分岐路であれば、分岐路を示す案内標識の地点から分岐路が終了する地点までの区間を走行区間として設定する。
第2タイミング設定部70Bは、運転難易度の高低に関わらず起動され、例えば図4Bに示すように、設定されたTOR候補地点Panから第2所定距離Dbに運転難易度Ldを乗算した距離(Db×Ld)だけ自車両100側に位置する走行区間ZbnにTOR地点Pbnを設定する。
第2所定距離Dbとしては、例えば予め設定された固定値としての距離でもよいし、自車両100の現在の車速に第2所定時間Tbを乗算した距離でもよい。また、自車両100が走行区間Zanを走行する際の目標車速に第2所定時間Tbを乗算した距離でもよい。
第3タイミング設定部70Cは、第1タイミング設定部70Aと同様に、設定されたTOR候補地点Panの運転難易度が高い場合に起動され、自車両100の予定走行経路のうち、TOR候補地点Panから自車両100の地点に向かって、手動運転への引継ぎがし易く(運転難易度が低く)、且つ、TOR候補地点Panから最も近接した走行区間にTOR地点Pbnを設定する。
例えば図3に示すように、TOR候補地点Panから自車両100の走行区間までに4つの走行区間Z1〜Z4があり、そのうち、運転難易度の高い走行区間がZ1及びZ3である場合を想定する。この場合、図4Cに示すように、運転難易度の低い走行区間Z2及びZ4のうち、TOR候補地点Panから最も近接した走行区間Z2に、TOR地点Pbnが設定される。
第4タイミング設定部70Dは、第1タイミング設定部70Aと同様に、設定されたTOR候補地点Panの運転難易度が高い場合に起動される。そして、例えば図5Aに示すように、TOR候補地点Panから自車両100の地点に向かって、手動運転への引継ぎがし易く(運転難易度が低く)、且つ、TOR候補地点Panから最も近接した走行区間に仮のTOR地点Pcnを設定する。図5Aでは、上述した第3タイミング設定部70Cの場合と同様に、運転難易度の低い走行区間Z2及びZ4のうち、TOR候補地点Panから最も近接した走行区間Z2に、仮のTOR地点Pcnを設定した例を示す。この場合、仮のTOR地点Pcnから自車両100の進行方向に第3所定距離Dcだけ進んだ地点Pdの運転難易度が高い。
第3所定距離Dcとしては、例えば予め設定された固定値としての距離でもよいし、自車両100の現在の車速に第3所定時間Tcを乗算した距離でもよい。また、自車両100が仮のTOR地点Pcnを走行する際の目標車速に第3所定時間Tcを乗算した距離でもよい。
そこで、第4タイミング設定部70Dは、図5Bに示すように、仮のTOR地点Pcnから自車両100の進行方向と反対方向に第4所定距離Ddだけ進んだ位置に、TOR地点Pbnを設定する。
第4所定距離Ddとしては、例えば予め設定された固定値としての距離でもよいし、自車両100の現在の車速に第4所定時間Tdを乗算した距離でもよい。また、自車両100が仮のTOR地点Pcnを走行する際の目標車速に第4所定時間Tdを乗算した距離でもよい。
上述した例えば第3タイミング設定部70C及び第4タイミング設定部70Dにおいては、走行環境取得部62からの環境情報の逆光に関する情報も加味してTOR地点Pbnを設定することが好ましい。例えば自車両100の前方(進行方向)に逆光が検出される走行区間を、運転難易度が高いと認定して、当該走行区間に上述したTOR地点Pbnを設定しない等である。逆光の情報としては、リアルタイムに入手した気象情報等からの西日の方向と、自車両100の予定走行経路情報46等に基づいて取得すること等が挙げられる。
ここで、図3に示すように、自車両100の前方に逆光が検出される走行区間として、走行区間Z4が存在する場合を想定する。この走行区間Z4が例えば直線コースで、通常であれば、運転走行し易い運転難易度の低い走行区間であっても、時間帯によっては、逆光によって運転走行しづらい場合がある。そこで、自車両100の前方に逆光が検出される走行区間を運転難易度の高い走行区間として認定し、この走行区間にはTOR地点Pbnを設定しない。
一方、引継要求タイミング補正部72は、設定されたTOR地点Pbnでの前方車両との車間距離Dfを自動運転での目標車間距離Dt(m)よりも広げる。例えば車間距離Dfが目標車間距離Dt+3(m)未満であれば、例えば目標車間距離Dtの+3〜10(m)まで広げる。そして、車間距離Dfが広がった段階で引継要求部64を起動する。一方、設定されたTOR地点Pbnでの上記車間距離Dfがすでに目標車間距離Dt+3(m)以上、或いは車間距離Dfを広げることができなければ、上述した車間距離Dfの調整を行わずに、引継要求部64を起動する。
引継要求部64は、引継要求タイミング補正部72による起動に基づいて、報知装置34にTORを報知するための指示信号を出力する。すなわち、上述した引継要求タイミング補正部72は、車間距離の調整時間だけTORの出力タイミングを補正する。
運転情報提供部74は、引継要求部64からの引継ぎ要求の際に、運転者に対して、手動運転を行うにあたって推奨できる運転情報を提供する。推奨できる運転情報としては、例えば「先行車との車間を維持してください」「この先にカーブがあります」「隣接車線渋滞のため、車線変更はご注意ください」「後続車との距離が近いので加速してください」「先行車との距離が近いので減速してください」等、車両操作にかかる注意喚起や、例えば車速、アクセル開度、ブレーキ開度、操舵角等、並びに操作手順が挙げられる。これらの運転情報は、報知装置34を通じて表示され、音声出力される。
次に、本実施の形態に係る車両制御装置10の処理動作について図6〜図10を参照しながら説明する。
先ず、図6のステップS1において、モード移行処理部54は、自動運転モードが「オン」であるか否かを判別する。自動運転モードでない、すなわち、手動運転状態であれば(ステップS1:NO)、図7のステップS2に進み、車両制御装置10は、自車両100の手動運転状態を継続する。一方、自動運転モードであると判別された場合、すなわち、自車両100が行動計画を基に走行中である場合は(図6のステップS1:YES)、図6のステップS3に進む。
ステップS3において、引継要求地点設定部66は、自車両100の走行中に、自車両100の予定走行経路のうち、ドライバによる手動運転への引継ぎ要求(TOR)を行う可能性のあるTOR地点Pbnを設定する。このTOR地点Pbnとしては、合流路、分岐路、車線変更、交差点等の地点等が挙げられる。
ステップS4において、運転難易度取得部68は、自車両100の走行中に、上述した手法によってTOR候補地点Panでの運転難易度を取得する。
ステップS5において、引継要求タイミング設定部70での処理に入る。ここで、引継要求タイミング設定部70として第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70Dのいずれかを採用した場合での処理を、図8A〜図10を参照しながら説明する。
先ず、引継要求タイミング設定部70として第1タイミング設定部70Aを採用した場合は、図8AのステップS101に進む。このステップS101において、運転難易度取得部68を通じてTOR候補地点Panの運転難易度を取得する。
ステップS102において、n番目のTOR候補地点Panの運転難易度が高いか否かを判別する。高ければ(ステップS102:YES)、ステップS103に進み、n番目のTOR候補地点Panから自車両100側(自車両100の進行方向と反対方向)に第1所定距離Daだけ離間した位置にTOR地点Pbnを設定する。
ステップS103での処理が終了した段階、或いはステップS102において、運転難易度が高くないと判別された場合(ステップS102:NO)は、一旦、第1タイミング設定部70Aでの処理が終了する。
次に、引継要求タイミング設定部70として第2タイミング設定部70Bを採用した場合は、図8BのステップS201において、TOR候補地点Panから自車両100側に、第2所定距離Dbに運転難易度Ldを乗算した距離(Db×Ld)だけ離間した位置に、TOR地点Pbnを設定する。
ステップS201での処理が終了した段階で、一旦、第2タイミング設定部70Bでの処理が終了する。
次に、引継要求タイミング設定部70として第3タイミング設定部70Cを採用した場合は、図9のステップS301において、運転難易度取得部68を通じてTOR候補地点Panの運転難易度を取得する。
ステップS302において、TOR候補地点Panの運転難易度が高いか否かを判別する。高ければ(ステップS302:YES)、ステップS303に進み、運転難易度取得部68は、自車両100の予定走行経路のうち、TOR候補地点Panから自車両100までの各走行区間についての運転難易度を取得する。
このとき、運転難易度取得部68は、走行環境取得部62からの環境情報の逆光に関する情報も加味した運転難易度を取得する。
ステップS304において、第3タイミング設定部70Cは、運転難易度取得部68にて取得された運転難易度に基づき、TOR候補地点Panから自車両100側に、運転難易度が低く、且つ、TOR候補地点Panから最も近接した走行区間にTOR地点Pbnを設定する。
ステップS304での処理が終了した段階、或いはステップS302において、運転難易度が高くないと判別された場合(ステップS302:NO)は、一旦、第3タイミング設定部70Cでの処理が終了する。
次に、引継要求タイミング設定部70として第4タイミング設定部70Dを採用した場合は、図10のステップS401において、運転難易度取得部68を通じてTOR候補地点Panの運転難易度を取得する。
ステップS402において、第4タイミング設定部70Dは、TOR候補地点Panの運転難易度が高いか否かを判別する。高ければ(ステップS402:YES)、ステップS403に進み、上述した第3タイミング設定部70Cでの処理と同様に、運転難易度取得部68は、自車両100の予定走行経路のうち、TOR候補地点Panから自車両100までの走行区間についての運転難易度を取得する。このとき、運転難易度取得部68は、第3タイミング設定部70Cでの処理と同様に、走行環境取得部62からの環境情報の逆光に関する情報も加味した運転難易度を取得する。
ステップS404において、第4タイミング設定部70Dは、運転難易度取得部68にて取得された運転難易度に基づき、TOR候補地点Panから自車両100の地点に向かって、運転難易度が低く、且つ、TOR候補地点Panから最も近接した走行区間に仮のTOR地点Pcnを設定する。
その後、ステップS405において、第4タイミング設定部70Dは、仮のTOR地点Pcnから自車両100の進行方向に第3所定距離Dcだけ進んだ地点Pdの運転難易度を取得する。
ステップS406において、第4タイミング設定部70Dは、ステップS405で取得した上記地点Pdの運転難易度が高いか否かを判別する。高ければ(ステップS406:YES)、ステップS407に進み、第4タイミング設定部70Dは、仮のTOR地点Pcnから自車両100の進行方向と反対方向に第4所定距離Ddだけ進んだ位置に、TOR地点Pbnを設定する。
一方、ステップS406において、上記地点Pdの運転難易度が高くないと判別された場合(ステップS406:NO)は、ステップS408に進み、仮のTOR地点Pcnを正式にTOR地点Pbnとして設定する。
ステップS407或いはステップS408での処理が終了した段階、又はステップS402において、TOR候補地点Panの運転難易度が高くないと判別された場合(ステップS402:NO)は、一旦、第4タイミング設定部70Dでの処理が終了する。
引継要求タイミング設定部70(第1タイミング設定部70A〜第4タイミング設定部70Dのいずれか)での処理が終了した段階で、図6のステップS6に進み、引継要求タイミング補正部72は、自車両100が、TOR地点Pbnが設定された走行区間に入ったか否を判別する。これは、自車両100の現在位置情報と、TOR地点Pbnが設定された走行区間の地図情報等とに基づいて判別することができる。
自車両100がTOR地点Pbnが設定された走行区間に入った段階で(ステップS6:YES)、次のステップS7に進み、引継要求タイミング補正部72は、当該走行区間での前方車両との車間距離Dfを予測する。ステップS8において、引継要求タイミング補正部72は、予測した車間距離Dfが第5所定距離De未満であるか否かを判別する。この判別は、車間距離Dfが例えば自動運転での目標車間距離Dt+3(m)未満であるかどうかで行われる。車間距離Dfが第5所定距離De未満であれば(ステップS8:YES)、ステップS9に進み、引継要求タイミング補正部72は、自車両100と後続車両との車間距離Drを予測する。
その後、ステップS10において、引継要求タイミング補正部72は、自車両100と前方車両との車間距離Dfを目標車間距離Dt+3〜5(m)まで広げることができるか否かを判別する。広げることができると判別された場合(ステップS10:YES)は、ステップS11に進み、車間距離Dfを広げるための制御を行う。すなわち、引継要求タイミング補正部72は、車間距離Dfを広げるための情報を行動計画作成部52に出力する。例えば、目標車間距離Dt+3〜5(m)まで広げるための情報を行動計画作成部52に出力する。これによって、車両制御部60を介して例えば制動装置32等が制御され、自車両100は前方車両との車間距離Dfが目標車間距離Dt+3〜5(m)まで広がる。
そして、車間距離Dfが目標車間距離Dt+3〜5(m)まで広がった段階、或いはステップS8において、車間距離Dfが第5所定距離De以上であると判別された場合(ステップS8:NO)、又は、ステップS10において、車間距離Dfを目標車間距離Dt+3〜5(m)まで広げることができないと判別された場合(ステップS10:NO)は、図7のステップS12に進み、引継要求部64は、引継予定時間T(sec)を取得し、計時を開始する。その後、ステップS13において、引継要求部64は、ドライバに対して手動運転への引き継ぎ(テイクオーバー)の要求動作を行う。報知装置34は、引継要求部64からの要求動作(報知指令)に応じて、ドライバに対して引き継ぎを行うべき旨を報知する。
手動運転に引き継ぐ際に、車間を広げる制御を行おうとしたとき、先行車及び後続車が自車両に近い位置にいて、現在走行している車線で車間距離を広げることが難しい場合、隣接車線に移動すれば車間距離を広げられる場合には、引き継ぐ前に自動的に車線変更するように制御してもよい。
また、現在走行している車線で車間距離を広げることが難しい場合、もしくは、それに加え、隣接車線も渋滞等により車線変更しても車間距離を広げることが難しい場合には、現在の走行車線において、車間距離を広げることなく手動運転への引継ぎを行う。但し、その場合には、車間を広げられる場合と比べて、運転者に対して更なる注意喚起(音、表示、ステア信号、ペダル振動等)を行うようにしてもよい。
ステップS14において、制御システム12は、ドライバによるテイクオーバー操作を受け付けたか否かを判定する。未だ受け付けていない場合(ステップS14:NO)、ステップS15に進み、引継予定時間Tが経過したか否かを判別する。経過していなければ(ステップS15:NO)、ステップS13に戻り、ステップS13以降の処理を繰り返す。上記ステップS15において、引継予定時間Tが経過しても、運転者が手動運転を引き継がない場合には(ステップS15:YES)、ステップS16に進み、縮退制御を実施する。縮退制御とは、ハザードランプを点灯し、自動ブレーキで車両停止又は車両停止を保持する。また、車両を停止させる際に、操舵制御で路肩寄せ、もしくは高速道路の追い越しレーンから走行レーンへの車線変更という内容の少なくとも一つを実施する。
一方、テイクオーバー操作を受け付けた場合(ステップS14:YES)、ステップS17において、車両制御装置10は、運転者による手動運転に切り替える。
このとき、ステップS18において、運転情報提供部74は、運転者に対して、手動運転を行うにあたって推奨できる運転情報を提供する。車速、アクセル開度、ブレーキ開度、操舵角等、並びに操作手順等が報知装置34を通じて出力(表示、音声出力)される。
その後、ステップS19において、自車両100がTOR地点Pbnの走行区間を通過するのを待つ。これは、自車両100の現在位置情報と、TOR地点Pbnが設定された走行区間の地図情報等とに基づいて判別することができる。通過した段階で(ステップS19:YES)、所定時間経過後に、図6のステップS1に戻る。
このように、本実施の形態に係る車両制御装置10は、自動運転により自車両100の走行制御を少なくとも部分的に自動で行う車両制御装置であって、自動運転の少なくとも一部を運転者による手動運転に引き継ぐことに先立って、運転者に引継ぎ要求を出す引継要求部64と、自動運転から手動運転に引き継いだ後の運転者にとっての運転難易度に基づいて、引継要求部64による引継要求を出すタイミングを設定する引継要求タイミング設定部70とを有する。
手動運転への引き継ぎに先立って、運転者に引継ぎ要求が出されるため、運転者は、手動運転への引き継ぎが行われることを事前に知ることができる。手動運転に対する心の準備ができるため、スムーズに手動運転に移行することが可能となる。
また、自動運転から手動運転に引き継いだ後の運転者にとっての運転難易度に基づいて、引継ぎ要求を出すタイミングを設定している。これにより、運転者に対し、本来の手動運転をすべき位置に到達するまでに、時間的余裕(準備時間)を持たせることができる。この準備時間において、運転者が事前に手動運転を行い、しかも、運転難易度が高いほど、準備時間を長くとる等の設定ができるため、本来の手動運転をすべき位置に到達しても、運転者はスムーズに手動運転で対応することが可能となる。
本実施の形態において、引継要求タイミング設定部70は、引継ぎ要求を出すタイミングを運転難易度が低い位置に設定する。
これにより、本来の手動運転をすべき位置に到達するまでの時間的余裕(準備時間)を確保する際に、運転者は運転難易度の低いところで手動運転に移行することができ、自動運転から手動運転に切り替わっても、違和感なく、円滑な運転操作を行うことができる。
本実施の形態において、引継要求タイミング設定部70は、設定したタイミングに対応する位置から進行方向に所定距離内に運転難易度の高い走行区間が想定される場合、前記設定したタイミングよりも早めのタイミングに設定する。
設定したタイミングに対応する位置が運転難易度の低い走行区間内であっても、その位置から進行方向に所定距離内に運転難易度の高い走行区間があれば、引継ぎ要求に基づいて、手動運転に引き継いだ際に、運転難易度の高い走行区間に入ってしまい、円滑な運転操作を行うことができなくなるおそれがある。
そこで、設定したタイミングに対応する位置から進行方向に所定距離内に運転難易度の高い走行区間が想定される場合、設定したタイミングよりも早めのタイミングに設定することで、運転難易度の高い走行区間に入るまでの時間的余裕ができ、手動運転に引き継いだ際に、円滑な運転操作を行うことができる。
本実施の形態において、引継要求タイミング設定部70は、自車両100の前方に逆光が検出される走行区間を、運転難易度が高いと認定して、引継要求のタイミングを設定する。
自車両100の前方に逆光が検出される走行区間では、逆光によって手動運転がしづらくなる場合がある。そこで、自車両100の前方に逆光が検出される走行区間を、運転難易度が高いと認定することで、当該走行区間に引継ぎ要求が出されなくなる。その結果、逆光下での手動運転への引継ぎがなくなり、スムーズに手動運転に移行することが可能となる。
本実施の形態において、引継要求部64からの引継ぎ要求の際に、自車両100の前後少なくとも一方の車間距離を、自動運転状態での目標車間距離よりも広げる。
引継ぎ要求に基づいて、手動運転に引き継ぐ際に、自車両100の前後少なくとも一方の車間距離が、自動運転状態での目標車間距離よりも広くなることから、前方や後方を走行する他の車両の接近に気を取られる(注意を奪われる)ことなく、手動運転への引継ぎをスムーズに行うことができる。
本実施の形態において、引継要求部64からの引継ぎ要求の際に、運転者に対して、手動運転を行うにあたって推奨できる運転情報を提供する運転情報提供部74を有する。
推奨できる運転情報として、例えば上述したように、「先行車との車間を維持してください」「この先にカーブがあります」「隣接車線渋滞のため、車線変更はご注意ください」「後続車との距離が近いので加速してください」「先行車との距離が近いので減速してください」等、車両操作にかかる注意喚起や、例えば車速、アクセル開度、ブレーキ開度、操舵角等が挙げられる。
そして、引継ぎ要求に基づいて手動運転に引き継いだ際、運転者がすぐに手動運転に移行できない場合もあり得る。このような場合でも、上記運転情報を提供することで、運転者は提供された運転情報を参考に、或いは運転情報に基づくティーチングによって手動運転を開始することができ、自動運転から手動運転にスムーズに移行することができる。上述した車両操作にかかる注意喚起は、どのような操作が求められているかを運転者に指示することにもつながるため、自動運転から手動運転にスムーズに移行させる上で有効である。
なお、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。