以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る車両走行制御方法及び車両走行制御装置は、自車両の操舵操作及び停車・発進を含む加減速操作をコンピュータにて実行する、いわゆる自動運転制御装置を備える車両のみならず、これら操舵操作及び停車・発進を含む加減速操作をドライバーが手動で行う一般的な車両、又はこれらの操作のうちの一部をコンピュータにて実行する半自動運転の車両にも適用することができる。以下の実施形態においては、自車両の操舵操作及び停車・発進を含む加減速操作をコンピュータにて実行する自動運転モードと、ドライバーに依る手動操作モードとを、ドライバーが選択する車両に本発明を適用した一例を挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る車両走行制御装置1を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両走行制御装置1は、自車位置検出装置11と、地図データベース12と、車速センサ13と、測距センサ14と、カメラ15と、入力装置16と、駆動機構17と、制御装置18と、を備える。これら各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
自車位置検出装置11は、GPSユニットを備え、複数の衛星通信から送信される電波を検出して、自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、車載されたジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサ13から取得した車速とに基づいて、自車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置11は、周知のマップマッチング技術を用いて、自車両の位置を検出してもよい。
地図データベース12には、高精細の地図情報を含む地図情報が格納されている。地図データベース12が記憶する地図情報には、各地図座標における境界情報、二次元位置情報、三次元位置情報、道路情報、道路属性情報、上り/下り情報、レーン識別情報、接続先レーン情報などが含まれている。境界情報とは、高精細の地図情報で示された領域とそれより低精細で示された領域との境界の位置情報であり、この境界情報を用いると、自車両の現在位置又は経路上の各地点が高精細の領域内に属するか否かを判断することができる。二次元位置情報とは、地図座標の平面座標のみを示す情報であるのに対し、三次元位置情報とは、地図座標を平面座標及び高さ座標で示す情報である。三次元位置情報を用いると、道路が交差した地点が、交差点であるのか、高架であるのかを識別することができ、高精細の地図情報には二次元位置情報に加えて三次元位置情報が含まれている。高精細の地図情報及び低精細の地図情報のいずれにも、道路情報、道路属性情報、道路の上り/下り情報が含まれ、道路情報及び道路属性には、道路幅、曲率半径、路肩構造物、道路交通法規(制限速度、車線変更の可否)などの情報が含まれている。レーン識別情報と接続先レーン情報は高精細の地図情報にのみ含まれている。レーン識別情報とは、一の道路に複数の走行レーンが含まれる場合に、ある地点がどのレーンに属するかを識別することができる精密な位置情報であり、接続先レーン情報とは、各レーンの接続先のレーンを識別することができる精密な位置情報である。本実施形態で用いられる高精細の地図情報には、少なくとも走行レーンを識別できるレーン識別情報が含まれている。
車速センサ13は、ドライブシャフトなどの車両の駆動系の回転速度を計測し、これに基づいて自車両の走行速度(以下、車速ともいう)を検出する。車速センサ13により検出された自車両の車速情報は制御装置18に出力される。
測距センサ14は、自車両の周囲に存在する障害物を検出する。また、測距センサ14は、自車両と障害物との相対距離および相対速度も算出する。測距センサ14により検出された障害物の情報は制御装置18に送信される。なお、このような測距センサ14として、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなどを用いることができる。
カメラ15は、自車両周囲の道路や障害物(人間、他車両、信号、標識、構造物などを含む)を撮像する。カメラ15は、車両の所定箇所に複数設けられ、自車両周囲の全周(自車両の走行レーンの前後左右、これに隣接するレーンの前後など)が所定時間間隔で撮像され、このカメラ15により撮像された画像情報は制御装置18に送信される。制御装置18は画像処理プログラムを備え、カメラ15で撮像された画像情報を画像処理して、自車両周囲の道路や障害物の検出処理を実行する。この点については後述する。
入力装置16は、ドライバーが操作可能な操作部材である。本実施形態において、ドライバーは入力装置16を操作することで、車両の自動走行制御のオン/オフを設定することができる。なお、本実施形態に係る車両の自動走行制御では、自車両の前方に先行車両が存在する場合には、自車両と先行車両との車間距離をドライバーが設定した車間距離に維持して自車両を走行させる車間距離制御が行われ、自車両の前方に先行車両が存在しない場合には、ドライバーが設定した車速で自車両を走行させる速度制御が行われる。また、本実施形態において、ドライバーは入力装置16を操作することで、速度制御における自車両の設定車速(例えば、具体的な速度値)および車間距離制御における設定車間距離(たとえば、短、中、長の三段階)を設定することができる。さらに、本実施形態に係る車両の自動走行制御では、操舵系のステアリングアクチュエータを自動制御して、車線変更や右左折を自動で実行し、ドライバーが設定した目的地までの走行ルートを自動走行する。
駆動機構17には、自車両を自動走行させるためのエンジン及び/又はモータ(動力系)、ブレーキ(制動系)およびステアリングアクチュエータ(操舵系)などが含まれる。本実施形態では、後述する自動走行制御が行われる際に、制御装置18により、駆動機構17の動作が制御される。
制御装置18は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
図2は、制御装置18により実現される主たる機能を示すブロック図である。本実施形態の制御装置18は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の現在位置から運転者が入力した目的地までの経路(以下、走行ルートという)を算出して経路案内情報を出力するナビゲーション機能と、自車両の走行状態に関する自車情報を取得する自車情報取得機能と、自車両の周囲に存在する障害物に関する周囲情報を取得する周囲情報取得機能と、走行ルートの自車両の前方に、方向指示表示が必要な方向変更区間が存在するか否かを検出する方向変更区間検出機能と、自車両の走行レーンに対する方向変更区間の隣接走行レーンに隣接車両が存在するか否かを検出する隣接車両検出機能と、方向変更区間との関係で方向指示表示が必要か否かを演算してウィンカーの点灯及び消灯を制御する方向指示表示機能と、隣接車両の挙動に応じて自車両の走行を制御する走行制御機能と、を実現する。以下において、制御装置18が備える各機能について説明する。
まず、以下に説明する各実施形態における「方向指示表示が必要な方向変更区間S」とは、車両の道路交通法規上、変更する方向にウィンカーを点灯させなければならないとされている区間をいう。交差点を含む道路で右折又は左折する場合には、右左折を行う位置から30m手前でウィンカーを点灯させるとされていることから、「方向指示表示が必要な方向変更区間S」とは、たとえば右左折を行う位置から30m手前までの区間をいう。また、走行中に車線変更(進路変更でもある。)する場合には、車線変更する3秒前にウィンカーを点灯させるとされていることから、「方向指示表示が必要な方向変更区間S」とは、たとえば車線変更する位置から3秒手前に相当する位置までの区間をいう。なお、車線変更とは、現在の走行レーンから異なる走行レーンに移動することをいうものとし、右左折とは、現在の進行方向を切替えることをいうものとする。これら車線変更と右左折を行う場合には、ウィンカー(方向指示器)によるドライバーの方向指示表示が必要とされるから、本実施形態でいう「方向指示表示が必要とされる方向変更区間」には、車線変更又は右折若しくは左折が必要とされる区間が含まれる。以下、方向変更区間Sを始点P1と終点P2とで示すが、これら始点P1と終点P2は、自車両V1の走行方向から見た区間の始点と終点を意味する。
図3B~図3Eは、本発明に係る車両走行制御装置1に適用される方向変更区間Sの一例であって、自車両V1が車線変更する場合の方向変更区間Sを示す平面図である。図3B~図3Eに示す道路Dは、左から右へ向かって走行する左側通行の道路であって、道路Dの片側が3つの走行レーンD1~D3で構成されている。また、図3Bに示すように、自車両V1が中央の走行レーンD2を走行し、最左端の走行レーンD1を2台の他車両V2,V3が走行している場合に、走行方向の前方に走行レーンD1と走行レーンD2,D3の分岐地点があり(図示を省略)、自車両V1の走行ルートは、走行レーンD1のみに続く走行レーンを走行する予定であるものとする。このような場合には、図3Bに示す現在の走行レーンD2から、図3Eに示す走行レーンD1に車線変更する必要があり、そのための方向変更区間Sが地点P1から地点P2の間に設定される。このとき、図3Bに示すように、方向変更区間Sにおいて車線変更するためには、車線変更する地点から3秒手前の位置P3で左のウィンカーを点灯しなければならない。なお、図4B~図4Eも同様である。
図5B~図5Eは、本発明に係る車両走行制御装置1に適用される方向変更区間Sの他の例であって、自車両V1が交差点の右折専用レーンで右折する場合の方向変更区間Sを示す平面図である。図5B~図5Eに示す道路Dは、交差点以外は、自車両V1が走行する走行レーンD1と、この対向車線であり他車両V2が走行する走行レーンD3とを有する片側1車線の左側通行の道路であって、図示する交差点にのみ右折専用レーンD2が設けられた道路である。自車両V1は、図示する交差点で右折専用レーンD2に車線変更したのち(図5C)、当該交差点を右折する(図5E)といった走行ルートを走行するものとする。このような場合には、まず現在の走行レーンD1から右折専用レーンD2に車線変更する必要があり、そのための方向変更区間S1が地点P4から地点P1の間に設定される。このとき、方向変更区間S1において車線変更するためには、車線変更する地点から3秒前に相当する所定位置P3において右のウィンカーを点灯しなければならない。また、自車両V1が右折専用レーンD2に入ったら、さらに交差点を右折する必要があるので、そのための方向変更区間S2が地点P1から地点P2の間に設定される。このとき、方向変更区間S2において車線変更するためには、右折する地点(終点である地点P2)から30m手前の位置P3にて右のウィンカーを点灯しなければならない。この場合、第1段階の方向変更区間S1は始点P4と終点P1との間、第2段階の方向変更区間S2は始点P1と終点P2との間となり、方向変更区間が連続することになる。
図7A及び図7Bは、本発明に係る車両走行制御装置1に適用される方向変更区間Sのさらに他の例であって、自車両V1が本線へ合流する場合の方向変更区間Sを示す平面図である。図7A及び図7Bに示す道路Dは、左から右へ向かって走行する左側通行の道路であって、多車線からなる本線(2つの走行レーンD2,D3のみを示す)と、この本線に合流する走行レーンD1とを有する。自車両V1が本線へ合流する走行レーンD1を走行し、本線の最左端の走行レーンD2には他車両V2,V3が走行しているものとする。このような場合には、図7Aに示す現在の走行レーン(合流レーン)D1から本線の最左端の走行レーンD2に車線変更する必要があり、そのための方向変更区間Sが始点P1から終点P2の間に設定される。このとき、方向変更区間Sにおいて車線変更するためには、車線変更する地点から3秒前に相当する位置P3にて右のウィンカーを点灯しなければならない。
以上、図3B~図3Eに示す車線変更、図5B~図5Eに示す右折専用レーンを介した交差点での右折、及び図7A~図7Bに示す本線への合流といったシーンにおいて、自車両の方向を変更する際には、変更する方向に存在する隣接車両のドライバーに対して、方向指示表示、すなわちウィンカーを用いてドライバーの意思表示をする必要がある。本実施形態の車両走行制御方法及び車両走行制御装置は、こうした自車両の方向変更の意思表示を適切なタイミングで自動的に実行できるものである。詳細は第1実施形態~第5実施形態により後述する。
図2に戻り、制御装置18は、自車情報取得機能(図2の自車位置検出)により、自車両の走行状態に関する自車情報を取得する。たとえば、制御装置18は、自車情報取得機能により、自車位置検出装置11から自車両の位置情報を、車速センサ13から自車両の車速情報を、自車情報として取得する。
制御装置18は、ナビゲーション機能(車載ナビゲーション装置が備えてもよい。)により、入力装置16から入力された目的地と、自車位置検出装置11により検出された現在位置と、地図データベース12の地図情報とから、走行ルートを検索し、車載ディスプレイなどに出力するとともに、走行ルートの位置情報を保持する。また、制御装置18は、方向変更区間検出機能(図2の方向変更区間検出)により、検索された走行ルートにおいて、上述した方向変更区間Sが存在するか否か、存在する場合はその位置情報を保持する。
ここで、上述した方向変更区間Sの検出方法の一例を説明する。まず、地図データベース12に格納された精細地図情報を読み出し、検索された目的地までの走行ルート上に存在する走行レーンを抽出する。抽出された走行レーンの中に、2つの走行レーンが繋がって1つの走行レーンになっているものがあれば、繋がった地点を合流地点とする合流区間であると判断する。このとき、合流地点の手前側での走行位置又は手前側の走行レーン数に応じて、走行レーンの優先度(どちらが優先道路又は非優先道路か)を判断する。たとえば、複数車線の自動車専用道路において3車線が左側の2車線に車線減少する場合の合流地点では、特に優先道路の標示がない限り左側優先である。したがって、自車両が右側の走行レーンを走行している場合には、合流方向にウィンカーを点灯する必要があるから、方向変更区間Sが設定される。これに対して、合流区間であっても自車両が優先道路の最左端の走行レーンを走行している場合には、ウィンカーの点灯は不要であるから方向変更区間Sとしては検出されない。また、たとえば図7A及び図7Bに示すように、合流地点の手前側の走行レーン数が多い方(走行レーンD2,D3)が優先道路であり、少ない方(走行レーンD1)が非優先道路であると判断する。そして、自車両が、非優先道路を走行している場合には、合流方向にウィンカーを点灯する必要があるから、方向変更区間Sが設定される。これに対して、合流区間であっても自車両が優先道路の走行レーンを走行している場合には、ウィンカーの点灯は不要であるから方向変更区間Sとしては検出されない。
同様に、抽出された走行レーンの中に、1つの走行レーンが2以上の走行レーンに繋がっているものがあれば、繋がった地点を分岐地点とする分岐区間であり、分岐方向にウィンカーを点灯する必要があるから、方向変更区間Sが設定される。なお、分岐地点であっても、分岐地点の手前側の走行レーン数と分岐後の走行レーン数とから判断して、本線から側道へ分岐するような場合、自車両が、本線から側道へ分岐する場合には、分岐方向にウィンカーを点灯する必要があるから方向変更区間Sが設定されるが、自車両が直進側の走行レーンを走行している場合には、ウィンカーの点灯は不要であるから方向変更区間Sとしては検出されない。
抽出された走行レーンの中に、走行レーン同士の交差がある場合、又は地図情報に含まれる停止線と走行レーンとの交差がある場合、その地点を交差点であると判断する。また、走行ルートの前方に交差点がある場合、交差点に進入する前の道路構造と、交差点内の走行レーンの方向とから、交差点内の走行レーンが直進であるか、右折であるか又は左折であるかを判断する。この結果、走行ルートの前方に交差点があり、右折又は左折である場合には、その方向にウィンカーを点灯する必要があるから、方向変更区間Sが設定される。これに対して、交差点を検出した場合であっても自車両の走行ルートが直進方向である場合には、ウィンカーの点灯は不要であるから方向変更区間Sとしては検出されない。
制御装置18は、周囲情報取得機能(図2の方向指示表示演算)により、自車両の周囲の障害物に関する周囲情報を取得する。たとえば、制御装置18は、周囲情報取得機能により、測距センサ14から自車両の周囲を走行する周囲車両の有無、また自車両の周囲に周囲車両が存在する場合には、周囲車両の位置、自車両と周囲車両との相対距離および相対速度の情報を、周囲情報として保持する。また、制御装置18は、周囲情報取得機能により、自車情報取得機能により取得された自車両の車速と、自車両と周囲車両との相対速度とに基づいて周囲車両の絶対車速を算出し、算出した周囲車両の絶対車速を周囲情報として保持する。
制御装置18は、隣接車両検出機能(図2の方向指示表示演算)により、周囲情報取得機能により取得された周囲情報に基づいて、自車両の周囲に存在する他車両が隣接車両であるかを特定する。ここで、隣接車両とは、自車両が図3Bに示す走行レーンD2を走行する車両V1である場合、方向変更先の走行レーンD1を走行する車両V2、V3をいう。なお、通常の追従運転を実行するために、自車両V1が走行する走行レーンD2の前方を走行する先行車両を検出してもよい。これらの他車両について、たとえば、制御装置18は、隣接車両検出機能により、カメラ15から自車両の前方の撮像画像を取得し、自車両の前方のレーンマークを検出する。そして、制御装置18は、隣接車両検出機能により、周囲情報に含まれる周囲の車両の位置情報と、自車両の前方の道路のレーンマークとに基づいて、自車両の周囲の車両が走行する走行レーンを特定する。上述したとおり、地図データベース12は高精細の地図情報を含むため、走行レーンまで特定することができる。
そして、制御装置18は、隣接車両検出機能により、自車両の周囲の車両が、自車両V1の走行レーンD2に隣接する走行レーンD1を走行している場合には、この周囲の車両V2,V3を隣接車両として特定する。また、隣接車両検出機能により、自車両の周囲の車両が、自車両V1の走行レーンD2を走行している場合には、この周囲の車両を先行車両として特定する。
制御装置18は、方向変更判断機能(図2の方向指示表示演算)により、たとえば図3Bに示す自車両V1が、現在走行している走行レーンD2から、これに隣接する走行レーンD1に車線変更するにあたり、他車両V2,V3の挙動から車線変更先のスペースの有無を演算し、車線変更できるか否かを判断する。なお、方向変更判断機能による判断方法の詳細については、第4実施形態において後述する。
制御装置18は、走行制御機能により、駆動機構17を制御することで、自車両の走行の全部または一部を自動で行う自動走行制御を実行する。たとえば、本実施形態における走行制御機能は、自車両の前方に先行車両が存在する場合には、アクセルやブレーキなどの駆動機構17の動作を自動制御することで、自車両と先行車両との車間距離を入力装置16により設定された車間距離に維持して、自車両を走行させる車間距離制御を実行する。また、本実施形態における走行制御機能は、自車両の前方に先行車両が存在しない場合には、アクセルやブレーキなどの駆動機構17の動作を自動制御することで、ドライバーが入力装置16により設定した所定の設定車速で自車両を走行させる速度制御を実行する。また、設定された目的地から検索された走行ルートを走行するように、操舵系のステアリングアクチュエータを自動制御し、車線変更や右左折を自動で実行する機能も有する。そして、こうした自動走行制御を実行した自動運転を行うか、又はドライバーの手動運転を行うかは、走行前又は走行中にドライバーが選択する。
以下、シーンが異なる幾つかの実施形態を挙げて本発明を説明する。
《第1実施形態》
本実施形態の車両走行制御装置1は、車両の走行制御のうちウィンカーを自動点灯/自動消灯させる制御であり、自車両V1の現在位置を検出し、走行レーンが識別可能な地図情報を用いて、自車両V1の現在位置と目的地とから自車両の走行ルートを決定し、前記地図情報から、前記走行ルートの自車両V1の現在位置の前方に方向指示表示が必要な方向変更区間Sが存在するか否かを判断し、方向変更区間Sを検出した場合に、自車両V1が方向変更区間Sを基準とする所定位置P3に到着したタイミングで、変更する方向のウィンカーを自動的に点灯するものである。したがって、操舵操作及び発進・停止を含む加減速操作はドライバーのマニュアル操作にて行われるものであってもよいし、図1及び図2に示す全ての構成を備えて、操舵操作及び発進・停止を含む加減速操作の一部または全部を自動制御するものであってもよい。以下の制御例では、操舵操作及び発進・停止を含む加減速操作はドライバーのマニュアル操作にて行われるものとして説明する。
図3Aは、本発明の第1実施形態に係る車両走行制御装置1により実行される処理手順を示すフローチャート、図3B~図3Eは、本発明の第1実施形態に係る車両走行制御装置1により実行される処理手順を説明するための走行シーンを示す平面図(その1~その4)である。図3Aに示す処理は、たとえば100msec程度の時間間隔で実行される。
既述したとおり、図3B~図3Eに示す道路Dは、左から右へ向かって走行する左側通行の道路であって、3つの走行レーンD1~D3で構成されている。また、図3Bに示すように、自車両V1が中央の走行レーンD2を走行し、最左端の走行レーンD1を2台の他車両V2,V3が走行している場合に、走行方向の前方に走行レーンD1と走行レーンD2,D3の分岐地点があり(図示を省略)、自車両の走行ルートは、走行レーンD1に続く走行レーンを走行する予定であるものとする。このような場合には、図3Bに示す現在の走行レーンD2から、図3Eに示す走行レーンD1に車線変更する必要があり、そのための方向変更区間Sが始点P1から終点P2の間に設定される。このとき、方向変更区間Sにおいて車線変更するためには、車線変更する地点から3秒前に相当する所定位置P3にて左のウィンカーを点灯しなければならない。
ステップS1では、ドライバーが入力装置16から入力した目的地と、自車位置検出装置11により検出された現在位置と、地図データベース12に格納された、走行レーンが識別可能な精細地図情報とから、目的地までの走行ルートを検索し、車載ディスプレイなどに出力するとともに、走行ルートの位置情報を保持する。そして、ドライバーは、ディスプレイに表示された走行ルートを参照しながらマニュアル操作に依り自車両を運転する。
ステップ2では、自車両V1の現在位置を自車位置検出装置11により検出し、ステップS3では、自車両V1の走行ルートに、上述した方向変更区間Sが存在するか否かを演算して判断し、存在する場合はその変更方向と位置情報を保持してステップS4へ進む。方向変更区間Sは、図3B~図3Eに示す車線変更の場合、車線変更すべき限界地点である終点P2と、自車両V1の走行速度を勘案した車線変更に要する距離に基づいた車線変更の始点P1とを演算し、これら始点P1及び終点P2の位置情報が方向変更区間Sの位置情報として保持する。また、同図に示す車線変更の場合、走行レーンD2から走行レーンD1への左方向への車線変更であるから、これら変更方向の情報も保持する。
また、この方向変更区間Sの変更方向及び位置情報とともに、ウィンカーを点灯すべき所定位置P3も演算して保持する。この所定位置P3は、図3B~図3Eに示す車線変更を行う場合には、方向変更区間Sの始点P1から3秒手前に相当する位置となるから、自車両V1の走行速度に基づいてこの所定位置P3を演算し、所定位置P3(方向変更区間Sの始点P1から距離Lだけ手前の位置)として保持する。なお、自車両V1の走行ルートに方向変更区間Sが存在しない場合には処理を終了して、ステップS1へ戻る。
ステップS4では、ステップS2で検出された自車両V1の位置が、ステップS3で検出された方向変更区間Sの所定位置P3に到着したか否かを判断する。ステップS4にて、自車両V1の位置が、方向変更区間Sの所定位置P3に到着したと判断された場合には、ステップS5へ進み、図3Bに示すように、左方向へのウィンカーを自動的に点灯(以下、自動点灯ともいう)する。この処理は、ドライバーのウィンカーレバーの操作が行われなくても実行される。ただし、ウィンカーレバーの操作介入制御ロジックが設けられ、ドライバーの判断により、自動点灯より前にドライバーがウィンカーレバーを操作介入して手動で点灯させた場合は、それを優先してもよいが、少なくとも所定位置P3に到着するまで手動操作が行われない場合は、ウィンカーを自動点灯する。これにより、ドライバーの判断が遅れることにより、自車両V1の車線変更の他車両V2,V3への意思表示が遅れることが防止される。なお、ステップS5において、「ウィンカーを点灯します」といったアナウンスを車内に出力してもよい。これにより、ウィンカーの自動点灯によるドライバーの違和感を払拭することができる。
ステップS5にて実行されるウィンカーの自動点灯により、車線変更先となる走行レーンD1を走行している他車両(隣接車両)V2,V3のドライバーは、自車両V1のウィンカーの点灯を認知するため、通常であれば道を譲ろうとして、図3Cに示すように、走行レーンD1を後続する他車両V2は減速し、先行する他車両V3は加速し、他車両V2,V3の間に自車両V1が入ることができるスペースを確保しようとする。自車両V1のドライバーは、図3Dに示すように、他車両V2,V3の間に自車両V1が入ることができるスペースがあることを確認したら、ステップS6にて車線変更(方向変更)を開始する。
ステップS7では、ステップS2で検出される自車両V1の位置と精細地図情報から、自車両V1の走行レーンD2から走行レーンD1への車線変更が完了したか否かを判断し、図3Eに示すように走行レーンD1への車線変更が完了したらステップS8へ進み、ウィンカーを自動的に消灯(以下、自動消灯ともいう)する。この処理は、ドライバーのウィンカーレバーの操作が行われなくても実行される。ただし、ウィンカーレバーの操作介入制御ロジックが設けられ、ドライバーの判断により、自動消灯より前にドライバーがウィンカーレバーを操作介入して手動で消灯させた場合は、それを優先してもよいが、少なくとも車線変更が完了するまで手動操作が行われない場合は、ウィンカーを自動消灯させる。これにより、ドライバーの消灯忘れにより、自車両V1の車線変更の意思表示が他車両へ誤って伝わることが防止される。なお、ステップS8において、「ウィンカーを消灯します」といったアナウンスを車内に出力してもよい。これにより、ウィンカーの自動消灯によるドライバーの違和感を払拭することができる。
ステップS7において、自車両V1が走行レーンD2から走行レーンD1へ車線変更することが完了していない場合は、ステップS9へ進み、ウィンカーの点灯を継続してステップS7へ戻る。自車両V1が、図3Dに示すように車線変更の途中である場合や、図3Cに示す状態で、ドライバーが、他車両V2,V3の間スペースが充分でないから車線変更を待機している場合が該当する。特に後者の場合、図3Cに示す状態でウィンカーの点灯を継続することで、走行レーンD1を走行する他車両V2,V3へ自車両V1の車線変更意思をより一層強調することができる。
《第2実施形態》
図4Aは、本発明の第2実施形態に係る車両走行制御装置1により実行される処理手順を示すフローチャート、図4B~図4Eは、本発明の第2実施形態に係る車両走行制御装置1により実行される処理手順を説明するための走行シーンを示す平面図(その1~その4)である。図4Aに示す処理は、たとえば100msec程度の時間間隔で実行される。第2実施形態に係る車両走行制御装置1のステップS10~S12の処理内容が、図3Aに示す第1実施形態に係る車両走行制御装置1のステップS9の処理内容と相違する。その他の処理内容は図3Aに示すものと同一であるため、図4Aに同じステップ番号を付してその説明をここに援用し、記載の一部を省略する。
すなわち、第2実施形態に係る車両走行制御装置1は、上述した第1実施形態に係る車両走行制御装置1と同様に、ドライバーが入力装置16から入力した目的地と、自車位置検出装置11により検出された自車両V1の現在位置と、地図データベース12に格納された、走行レーンが識別可能な精細地図情報とから、目的地までの走行ルートを検索し(ステップS1)、自車両V1の現在位置を自車位置検出装置11により検出し(ステップS2)、自車両V1の走行ルートに、上述した方向変更区間Sが存在するか否かを演算して判断し、存在する場合はその変更方向と位置情報を保持する(ステップS3)。さらに、自車両V1の現在位置が方向変更区間Sの所定位置P3に到着したか否かを判断し(ステップS4)、自車両V1の現在位置が方向変更区間Sの所定位置P3に到着したら、図4Bに示すように、左方向へのウィンカーを自動点灯する(ステップS5,図4B~図4C)。そして、自車両V1のドライバーが、他車両V2,V3の間に自車両V1が入ることができるスペースがあることを確認したら車線変更を開始し(ステップS6)、走行レーンD1への車線変更が完了したらウィンカーを自動消灯する(ステップS7~S8)。ここまでの処理内容は第1実施形態と同一である。
第2実施形態に係る車両走行制御装置1では、図4AのステップS7において、自車両V1が走行レーンD2から走行レーンD1へ車線変更することが完了していないと判断された場合において、方向変更区間Sの終点P2まで充分な距離があるときは、ウィンカーを一時的に自動消灯し、終点P2に接近したタイミングでウィンカーを自動的に再点灯する。すなわち、図4AのステップS7において、自車両V1が走行レーンD2から走行レーンD1へ車線変更することが完了していないと判断された場合は、ステップS10へ進み、図4Dに示すように、方向変更区間Sの始点P1に到着した自車両V1が、方向変更区間Sの終点P2から第1距離L1だけ手前の位置P5に到着したか否かを判断する。ここで、第1距離L1は、方向変更区間Sの始点P1と終点P2との距離より短く、自車両V1が車線変更できる最小距離とすることができる。
ステップS10において、方向変更区間Sの始点P1に到着した自車両V1が、方向変更区間Sの終点P2から第1距離L3だけ手前の位置P5に到着していない場合はステップS12へ進み、ウィンカーを一時的に自動消灯したのち、ステップS7へ戻る。そして、自車両V1が位置P5に到着したらステップS11へ進み、ウィンカーを自動的に再点灯する。これら一時的自動消灯と自動的再点灯は、ドライバーによりウィンカーレバーの操作が行われなくても実行される。これにより、ステップS3にて設定された方向変更区間Sの距離が長く、車線変更するには充分な余裕がある場合、ウィンカーを一時的に自動消灯することで、車線変更先の走行レーンD1を走行する他車両V2,V3のドライバーに対して不本意な圧迫感を与えるのを回避することができる。一方において、自車両V1が位置P5に到着したらウィンカーを自動的に再点灯することで、少なくとも自車両V1の車線変更の最終意思を他車両V2,V3のドライバーに対して表示することができる。
なお、ステップS11において、ウィンカーレバーの操作介入制御ロジックが設けられ、ドライバーの判断により、再点灯より前にドライバーがウィンカーレバーを操作介入することで、手動で点灯させた場合は、それを優先してもよい。また、ステップS11において、「ウィンカーを点灯します」といったアナウンスを車内に出力してもよい。またステップS12において、「ウィンカーを消灯します」といったアナウンスを車内に出力してもよい。これにより、ウィンカーの自動点灯、自動消灯によるドライバーの違和感を払拭することができる。さらに、ステップS11において、方向変更区間Sの始点P1と再点灯させる位置P5との距離が短く、ウィンカーの一時的な消灯が意味を持たない場合は、ウィンカーの点灯を継続してもよい。
《第3実施形態》
図5Aは、本発明の第3実施形態に係る車両走行制御装置1により実行される処理手順を示すフローチャート、図5B~図5Eは、本発明の第3実施形態に係る車両走行制御装置1により実行される処理手順を説明するための走行シーンを示す平面図(その1~その4)である。図5Aに示す処理は、たとえば100msec程度の時間間隔で実行される。以下の制御例では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、操舵操作及び発進・停止を含む加減速操作はドライバーのマニュアル操作にて行われるものとして説明する。ただし、第3実施形態の走行制御は、操舵操作及び発進・停止を含む加減速操作の一部または全部を自動制御するものであってもよい。
既述したとおり、図5B~図5Eに示す道路Dは、交差点以外は、自車両V1が走行する走行レーンD1と、この対向車線であり他車両V2が走行する走行レーンD3とを有する片側1車線の左側通行の道路であって、図示する交差点にのみ右折専用レーンD2が設けられた道路である。自車両V1は、図示する交差点で右折専用レーンD2に車線変更したのち(図5C)、当該交差点を右折する(図5E)といった走行ルートを走行するものとする。このような場合には、まず現在の走行レーンD1から右折専用レーンD2に車線変更する必要があり、そのための第1段階の方向変更区間S1が地点P4から地点P1の間に設定される。このとき、第1段階の方向変更区間S1において車線変更するためには、車線変更する地点から3秒前に右のウィンカーを点灯しなければならない。また、自車両V1が右折専用レーンD2に入ったら、さらに交差点を右折する必要があるので、そのための第2段階の方向変更区間S2が地点P1から地点P2の間に設定される。このとき、第2段階の方向変更区間S2において車線変更するためには、右折する地点(終点である地点P2)から30m手前から右のウィンカーを点灯しなければならない。
このように、方向変更区間S1,S2が同一方向への多段階の方向変更を伴う本実施形態においては、走行レーンD1を走行する自車両V1が、第1段階の方向変更区間S1を基準とする所定位置P3(第1段階の方向変更区間S1の始点P4から、たとえば30m手前の位置)に到着したタイミングで、変更する右方向のウィンカーを自動的に点灯する。そして、自車両V1が第1段階の方向変更区間S1で方向変更を完了した場合、自車両V1の現在位置が第2段階の方向変更区間D2の終点P2から手前に第2距離L2以上であるときは、ウィンカーを一時的に自動消灯するとともに、自車両V1の現在位置が第2段階の方向変更区間S2の終点P2から手前に第2距離L2の位置P5に到着したタイミングで、ウィンカーを自動的に再点灯する。なお、自車両V1が第1段階の方向変更区間S1で方向変更できた場合であっても、第2段階の方向変更区間S2が短く、当該第2段階の方向変更区間S2の終点P2から手前に第2距離L2未満であるときは、ウィンカーの点灯を継続する。
すなわち、図5Aに示すように、ドライバーが入力装置16から入力した目的地と、自車位置検出装置11により検出された現在位置と、地図データベース12に格納された、走行レーンが識別可能な精細地図情報とから、目的地までの走行ルートを検索し(ステップS1)、自車両V1の現在位置を自車位置検出装置11により検出し(ステップS2)、自車両V1の走行ルートに、上述した方向変更区間S、本例の場合は右折専用レーンD2への第1段階の方向変更区間S1及び交差点を右折する第2段階の方向変更区間S2が存在するか否かを演算及び判断して、存在する場合はその変更方向と位置情報を保持する(ステップS3)。
ついで、自車両V1の現在位置が第1段階の方向変更区間S1の所定位置P3に到着したか否かを判断し(ステップS4)、自車両V1の現在位置が第1段階の方向変更区間S1の所定位置P3に到着したら、図5Bに示すように、右方向へのウィンカーを自動点灯する(ステップS5,図5B)。そして、自車両V1のドライバーが、右折専用レーンD2への車線変更を開始したのち(ステップS6)、ステップS20へ進む。ここまでの処理内容は第1実施形態と同一であるので、図5Aに同じステップ番号を付してその説明をここに援用し、記載の一部を省略する。
図5Cは、自車両V1が、それまでの走行レーンD1から右折専用レーンD2への車線変更を完了した状態を示す平面図である。この状態から、交差点を右折するための第2段階の方向変更区間S2に移行するが、この第2段階の方向変更区間S2には、その終点P2から起算して第2距離L2(たとえば右左折時にウィンカーを点灯しなければならないとされる30m)手前の位置P5が設定されている。ただし、実際の道路構造によっては、右折専用レーンD2の長さが30mといった第2距離L2より短いこともある。これらを考慮して、ステップS20では、自車両V1の現在位置が、第2段階の方向変更区間S2の終点P2から第2距離L2手前の位置P5に到着したか否かを判断し、到着していない場合はステップS22へ進んで、ウィンカーを一時的に自動消灯する。次に右折する交差点とはいえ、余りに右折地点までの距離が長いと、ウィンカーの点灯を交差点ではない手前の地点で右折する意思表示だと誤解されるからである。ステップS22でウィンカーを一時的に自動消灯したらステップS20へ戻り、自車両V1が、第2段階の方向変更区間S2の終点P2から第2距離L2手前に到着するまで、ウィンカーの消灯を継続する。そして、ステップS20にて、自車両V1が、第2段階の方向変更区間S2の終点P2から第2距離L2手前の位置P5に到着したと判断されたら、ステップS21へ進み、図5Dに示すように、右折方向のウィンカーを自動的に再点灯する。なお、第2距離L2は、本発明の第1の所定距離に相当する。
なお、ステップS6にて右折専用レーンD2への車線変更が完了した直後のステップS20において、自車両V1の現在位置が、第2段階の方向変更区間S2の終点P2から第2距離L2未満である場合、すなわち、右折専用レーンD2の長さが、第2段階の方向変更区間S2の長さ(たとえば30m)より短い場合には、ステップS21へ進み、ウィンカーを自動消灯することなく、点灯を継続する。また、右折専用レーンD2の長さが、第2段階の方向変更区間S2の長さ(たとえば30m)より長いが、その差が、ウィンカーの消灯とこれに続く再点灯とを識別できない程度に短い場合には、ステップS21と同様に、ウィンカーを自動消灯することなく、点灯を継続してもよい。
そして、ステップS23にて、ドライバーが対向車線の他車両の挙動を観察しながら、右折可能と判断したタイミングで第2段階の方向変更、すなわち右折を行い、図5Eに示す右折が完了したタイミングでウィンカーを自動消灯する(ステップS24)。
《第4実施形態》
図6A及び図6Bは、本発明の第4実施形態に係る車両走行制御装置により実行される処理手順を示すフローチャート、図6C~図6Fは、本発明の第4実施形態に係る車両走行制御装置により実行される処理手順を説明するための走行シーンを示す平面図である。なお、図6A及び図6Bに示す処理は、たとえば100msec程度の時間間隔で実行される。また、図6C~図6Fに示す道路Dの構成並びに自車両V1及び他車両V2,V3の走行位置は、図3B~図3E及び図4B~図4Eに示す例と同じである。
第4実施形態に係る車両走行制御装置1は、操舵操作及び発進・停止を含む加減速操作を自動制御するものに本発明のウィンカーの自動点灯及び自動消灯を適用した例である。この第4実施形態の場合、車線変更などの方向変更を、操舵及び加減速を自動制御して実行するための処理が付加される。すなわち、ステップS31では、ドライバーが入力装置16から入力した目的地と、自車位置検出装置11により検出された現在位置と、地図データベース12に格納された、走行レーンが識別可能な精細地図情報とから、目的地までの走行ルートを検索し、車載ディスプレイなどに出力するとともに、走行ルートの位置情報を保持する。
ステップS32では、自車両V1の周辺の走行道路情報を地図データベース12の精細地図情報から取得するとともに、カメラ15により自車両V1の周辺を走行する他車両V2,V3の挙動を所定時間間隔で検出する。そして、入力装置16から入力した走行速度及び車間距離と、地図情報から取得された周辺の走行道路情報と、カメラ15により検出される周辺の他車両の挙動とに基づいて、自車両V1の走行の全部を自動で行う自動走行制御、いわゆる自動運転を実行する。
ステップS33では、自車両V1の現在位置を自車位置検出装置11により検出し、自車両V1の走行ルートに、上述した方向変更区間Sが存在するか否かを演算して判断し、存在する場合はその変更方向と位置情報を保持してステップS34へ進む。方向変更区間Sは、図6C~図6Fに示す車線変更の場合、車線変更すべき限界地点である終点P2と、自車両V1の走行速度を勘案した車線変更に要する距離に基づいた車線変更の始点P1とを演算し、これら始点P1及び終点P2の位置情報を方向変更区間Sの位置情報として保持する。また、同図に示す車線変更の場合、走行レーンD2から走行レーンD1への左方向への車線変更であるから、これら変更方向の情報も保持する。
また、この方向変更区間Sの変更方向及び位置情報とともに、ウィンカーを点灯すべき所定位置P3も演算して保持する。この所定位置P3は、図6C~図6Fに示す車線変更を行う場合には、方向変更区間Sの始点P1から3秒手前に相当する位置となるから、自車両V1の走行速度に基づいてこの位置を演算し、所定位置P3(方向変更区間Sの始点P1から距離Lだけ手前の位置)として保持する。なお、自車両V1の走行ルートに方向変更区間Sが存在しない場合には処理を終了して、ステップS31へ戻る。
ステップS34では、ステップS32で検出された自車両V1の現在位置が、ステップS33で検出された方向変更区間Sの所定位置P3に到着したか否かを判断する。ステップS34にて、自車両V1の現在位置が方向変更区間Sの所定位置P3に到着したと判断された場合には、ステップS35へ進み、カメラ15により検出された他車両V2,V3の挙動等から、自車両V1が走行レーンD1へ車線変更が可能か否かを判断する。この判断には、他車両V2,V3の車間距離が、自車両V1の現在位置及び車速との関係で、円滑に車線変更できるかどうかを演算することで行われる。
ステップS35にて、自動走行制御により車線変更が可能であると判断された場合にはステップS36へ進み、図6Cに示すように、左方向へのウィンカーを自動点灯する。この処理は、ドライバーのウィンカーレバーの操作が行われなくても実行される。ただし、ウィンカーレバーの操作介入制御ロジックが設けられ、ドライバーの判断により、自動点灯より前にドライバーがウィンカーレバーを操作介入して手動で点灯させた場合は、それを優先してもよいが、少なくとも所定位置P3に到着するまで手動操作が行われない場合は、ウィンカーを自動点灯する。これにより、ドライバーの判断が遅れることにより、自車両の車線変更の他車両V2,V3への意思表示が遅れることが防止される。なお、ステップS36において、「ウィンカーを点灯します」といったアナウンスを車内に出力してもよい。これにより、ウィンカーの自動点灯によるドライバーの違和感を払拭することができる。
ステップS35にて、自車両V1が車線変更可能と判断しているから、他車両V2,V3の間に自車両V1が入ることができるスペースは充分に確保されているところ、ステップS36にて実行されるウィンカーの自動点灯により、車線変更先となる走行レーンD1を走行している他車両(隣接車両)V2,V3のドライバーは、自車両V1のウィンカーの点灯を認知する。このため、図6Dに示すように、走行レーンD1を後続する他車両V2は減速し、先行する他車両V3は加速し、他車両V2,V3の間に自車両V1が入ることができるスペースをより広くしようとする。これにより、自車両V1の車線変更がより安全な状態で行われることになる。ステップS37では、自動走行制御により、操舵機構を制御し、自車両V1の車線変更(方向変更)を開始する。
ステップS38では、ステップS32で検出される自車両V1の位置と精細地図情報から、自車両V1の走行レーンD2から走行レーンD1への車線変更が完了したか否かを判断し、走行レーンD1への車線変更が完了したらステップS39へ進み、ウィンカーを自動消灯する。この処理は、ドライバーのウィンカーレバーの操作が行われなくても実行される。ただし、ウィンカーレバーの操作介入制御ロジックが設けられ、ドライバーの判断により、自動消灯より前にドライバーがウィンカーレバーを操作介入して手動で消灯させた場合は、それを優先してもよいが、少なくとも車線変更が完了するまで手動操作が行われない場合は、ウィンカーを自動消灯する。これにより、ドライバーの消灯忘れにより、自車両V1の車線変更の意思表示が他車両V2,V3へ誤って伝わることが防止される。なお、ステップS39において、「ウィンカーを消灯します」といったアナウンスを車内に出力してもよい。これにより、ウィンカーの自動消灯によるドライバーの違和感を払拭することができる。
ステップS38において、自車両V1が走行レーンD2から走行レーンD1へ車線変更することが完了していない場合は、ステップS40へ進み、ウィンカーの点灯を継続してステップS38へ戻る。自車両V1が、車線変更の途中である場合などが該当する。
図6AのステップS35へ戻り、自動走行制御により車線変更が不可能であると判断された場合には、図6BのステップS41へ進み、精細地図情報から得られた走行レーンD1,D2の優先度を比較し、自車両V1の走行レーンD2が車線変更先の走行レーンD1に比べて非優先か否かを判断する。自車両V1の走行レーンD2が非優先である場合はステップS42へ進み、図6Eに示すように、ウィンカーを一時的に自動消灯する。これにより、優先度が高い走行レーンD1を走行する他車両V2,V3のドライバーに対して、不本意な圧迫感を与えるのを回避することができる。
ステップS42にて、ウィンカーを一時的に自動消灯したらステップS44へ進み、自車両V1の現在位置が、方向変更区間Sの終点P1から第3距離L3手前の位置P5に到着したか否かを判断し、自車両V1が位置P5に到着していない場合は、ステップS42を繰り返し、自車両V1が位置P5に到着するまでウィンカーの消灯を継続する。この第3距離L3は、方向変更区間Sの始点P1から終点P2の間であって、終点P2を車線変更完了位置とした場合に少なくとも車線変更ができる最小の距離とすることができる。ステップS44にて、自車両V1の現在位置が、方向変更区間Sの終点P1から第3距離L3手前の位置P5に到着したらステップS45へ進み、図6Fに示すように、ウィンカーを自動的に再点灯する。これにより、自車両V1が非優先の走行レーンD2を走行している場合であっても、車線変更の意思が強いことを他車両V2,V3のドライバーに表示することができるので、図6Fに示すように、他車両V2が加速することで当該他車両V2の後方に車線変更できるスペースが確保されることが期待できる。なお、第3距離L3は、本発明の第2の所定距離に相当する。
これに対して、図6BのステップS41において、自車両V1の走行レーンD2が優先である場合はステップS43へ進み、ウィンカーの点灯を継続する。これにより、車線変更の意思が強いことを他車両V2,V3のドライバーに表示することができるので、他車両V2が減速することで他車両V2.V3の間にスペースが確保されたり、他車両V2が加速することで当該他車両V2の後方にスペースが確保されたりすることが期待できる。
《第5実施形態》
図7A及び図7Bは、本発明の第5実施形態に係る車両走行制御装置1に適用される方向変更区間Sを示す平面図であり、自車両V1が本線へ合流する場合の方向変更区間Sを示す平面図である。図7A及び図7Bに示す道路Dは、左から右へ向かって走行する左側通行の道路であって、多車線からなる本線(2つの走行レーンD2,D3のみを示す)と、この本線に合流する走行レーンD1とを有する。このような場合には、図7Aに示す現在の走行レーン(合流レーン)D1から本線の最左端の走行レーンD2に車線変更する必要があり、そのための方向変更区間Sが地点P1から地点P2の間に設定される。このとき、方向変更区間Sにおいて車線変更して本線へ合流するためには、車線変更する地点から3秒前の位置にて右のウィンカーを点灯しなければならない。
このような合流車線においては、自動走行制御に依る場合も、ドライバーの手動操作に依る場合も、合流(方向変更)が不可能であると判断されると、自車両V1は、合流地点で停車するほかない。したがって、方向変更区間Sを基準とする所定位置P3をできる限り自車両V1の手前に設定し(距離Lを相対的に長く設定し)、合流先の走行レーンD2を走行する他車両V2,V3が見えない位置からウィンカーを自動点灯することが望ましい。また、自車両V1の現在の走行レーンD1が方向変更の目標レーンD2に対して非優先レーンであり、合流が不可能であると判断された場合でも、ウィンカーの点灯を継続する。これにより、合流先の走行レーンD2を走行する他車両V2,V3へ自車両V1の車線変更意思をより一層強調することができ、合流地点で一時停止するのを回避することができる。
《実施形態の効果》
以上のとおり、本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両V1の現在位置の前方にウィンカーによる方向指示表示が必要な方向変更区間Sが存在する場合に、自車両V1が方向変更区間Sを基準とする所定位置P3に到着したタイミングで、変更する方向のウィンカーを自動点灯するので、点灯遅れなどが抑制され、自車両V1の方向指示表示を適切なタイミングで自動的に実行することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両V1が方向変更区間Sで方向変更できない間は、方向変更が完了するまでウィンカーの点灯を継続するので、方向変更先の走行レーンを走行する他車両V2,V3へ自車両V1の車線変更意思をより一層強調することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両V1の現在位置が方向変更区間Sの終点P2から手前に第1距離L1以上である場合は、ウィンカーを自動消灯するので、車線変更先の走行レーンD1を走行する他車両V2,V3のドライバーに不本意な圧迫感を与えるのを回避することができる。一方において、自車両V1の現在位置が方向変更区間Sの終点P2から手前に第1距離L1未満である場合はウィンカーを自動点灯するので、少なくとも自車両V1の車線変更の最終意思を他車両V2,V3のドライバーに対して表示することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、方向変更区間S1,S2が同一方向への多段階の方向変更を伴う場合に、自車両V1が第1段階の方向変更区間S1で方向変更を完了した場合、自車両V1の現在位置が第2段階の方向変更区間D2の終点P2から手前に第2距離L2以上であるときは、ウィンカーを一時的に自動消灯するので、ウィンカーの点灯を交差点ではない手前の地点で右折する意思表示だと誤解されるのを防止することができる。また、その後は、自車両V1の現在位置が第2段階の方向変更区間P2の終点から手前に第2距離L2の位置に到着したタイミングでウィンカーを自動的に再点灯するので、第2段階の方向変更に適したタイミングでウィンカーにより方向指示を表示することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両周辺の走行道路情報及び他車両の走行挙動情報により自車両を自動走行制御する場合に、自車両V1が方向変更区間Sで方向変更が可能か否かを判断し、方向変更が可能と判断され、且つ自車両V1が方向変更区間Sを基準とする所定位置P3に到着したタイミングで、変更する方向のウィンカーを自動的に点灯するので、点灯遅れなどが抑制され、自車両の方向指示表示を適切なタイミングで自動的に実行することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両V1を自動走行制御する場合に、方向変更が可能と判断され、且つ方向変更が完了しない間はウィンカーの点灯を継続するので、方向変更先の走行レーンを走行する他車両V2,V3へ自車両V1の車線変更意思をより一層強調することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両V1を自動走行制御する場合に、方向変更が不可能であると判断され、且つ自車両V1の現在の走行レーンが方向変更先の走行レーンに対して優先レーンである場合には、ウィンカーの点灯を継続するので、方向変更先の走行レーンを走行する他車両V2,V3へ自車両V1の車線変更意思をより一層強調することができる。一方において、方向変更が不可能であると判断され、且つ自車両の現在の走行レーンが方向変更先の走行レーンに対して非優先レーンである場合には、ウィンカーを一時的に自動消灯するので、優先度が相対的に高い走行レーンD1を走行する他車両V2,V3のドライバーに対して、不本意な圧迫感を与えるのを回避することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、自車両V1を自動走行制御する場合に、方向変更が不可能であると判断され、且つ自車両V1の現在の走行レーンが方向変更先の走行レーンに対して非優先レーンである場合において、自車両V1の現在位置が、方向変更区間Sの終点P2から手前に第3距離L3未満の位置P5に到着したタイミングで、ウィンカーを自動的に再点灯するので、少なくとも自車両V1の車線変更の最終意思を他車両V2,V3のドライバーに対して表示することができる。
本実施形態の車両走行制御方法及び装置によれば、方向変更区間が合流車線である場合、方向変更が不可能であると判断され、且つ自車両V1の現在の走行レーンが合流先の走行レーンに対して非優先レーンである場合には、ウィンカーの点灯を継続するので、方向変更先の走行レーンを走行する他車両V2,V3へ自車両V1の車線変更意思をより一層強調することができ、合流地点で一時停止するのを回避することができる。