JP2018117549A - 被覆種子、被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法 - Google Patents
被覆種子、被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(2)前記被覆層は、更に、生石灰、又は、消石灰の少なくとも何れかを含む、(1)に記載の被覆種子。
(3)前記被覆層における前記生石灰、又は、消石灰の少なくとも何れかの含有量は、前記高炉スラグの質量に対して、外掛けで5質量%以下である、(2)に記載の被覆種子。
(4)前記高炉スラグは、35質量%以上45質量%以下のCaOと、25質量%以上40質量%以下のSiO2と、2質量%以上15質量%以下のMgOと、8質量%以上20質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、(1)〜(3)の何れか1つに記載の被覆種子。
(5)前記高炉スラグは、孔径600μmの篩を通過する高炉スラグである、(1)〜(4)の何れか1つに記載の被覆種子。
(6)前記高炉スラグは、孔径75μmの篩を通過する高炉スラグである、(1)〜(5)の何れか1つに記載の被覆種子。
(7)前記高炉スラグは、高炉水砕スラグである、(1)〜(6)の何れか1つに記載の被覆種子。
(8)前記被覆層は、更に電気炉製鋼スラグ、又は、石炭灰の少なくとも何れかを含む、(1)〜(7)の何れか1つに記載の被覆種子。
(9)前記電気炉製鋼スラグは、15質量%以上60質量%以下のCaOと、10質量%以上20質量%以下のSiO2と、2質量%以上10質量%以下のMgOと、3質量%以上20質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、(8)に記載の被覆種子。
(10)前記石炭灰は、1質量%以上10質量%以下のCaOと、40質量%以上75質量%以下のSiO2と、2質量%以上20質量%以下のFe2O3と、15質量%以上35質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、(8)又は(9)に記載の被覆種子。
(11)前記電気炉製鋼スラグは、孔径600μmの篩を透過する電気炉製鋼スラグである、(8)〜(10)の何れか1つに記載の被覆種子。
(12)前記石炭灰は、孔径75μmの篩を通過する石炭灰である、(8)〜(11)の何れか1つに記載の被覆種子。
(13)前記被覆層における前記電気炉製鋼スラグの含有量は、前記被覆層の全体の質量に対して、0質量%超30質量%以下である、(8)〜(12)の何れか1つに記載の被覆種子。
(14)前記被覆層における前記石炭灰の含有量は、前記被覆層の全体の質量に対して、0質量%以上20質量%以下である、(8)〜(13)の何れか1つに記載の被覆種子。
(15)前記被覆層は、石膏、鉄粉、セメント、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、(1)〜(14)の何れか1つに記載の被覆種子。
(16)前記種子は、湛水された状態で栽培される植物の種子、又は、湛水しない状態で栽培される植物の種子である、(1)〜(15)の何れか1つに記載の被覆種子。
(17)前記湛水された状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、(16)に記載の被覆種子。
(18)前記イネ科植物の種子は、水稲種子である、(17)に記載の被覆種子。
(19)前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物、マメ科植物、タデ科植物、食用草本植物、又は、有用植物の種子である、(16)に記載の被覆種子。
(20)前記イネ科植物の種子は、陸稲種子、トウモロコシ種子、又は、麦種子であり、
前記マメ科植物の種子は、ダイズ種子、又は、アズキ種子であり、前記タデ科植物の種子は、ソバ種子であり、前記食用草本植物の種子は、ニンジン種子、トマト種子、又は、甜菜種子であり、前記有用植物の種子は、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、又は、花木種子である、(19)に記載の被覆種子。
(21)前記被覆層の表面に、除菌剤、徐虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着している、(1)〜(20)の何れか1つに記載の被覆種子。
(22)前記被覆層は、更に、アルギン酸化合物を含有する、(1)〜(21)の何れか1つに記載の被覆種子。
(23)前記種子は、でんぷんで被覆された種子である、(1)〜(22)の何れか1つに記載の被覆種子。
(24)高炉スラグと水とを混合して得られた混合物により、所定の種子を被覆する、被覆種子の製造方法。
(25)前記混合物は、生石灰、又は、消石灰の少なくとも何れかを更に含む、(24)に記載の被覆種子の製造方法。
(26)前記混合物は、電気炉製鋼スラグ、又は、石炭灰の少なくとも何れかを更に含む、(24)又は(25)に記載の被覆種子の製造方法。
(27)前記混合物における前記水の割合は、前記混合物の全体質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、(24)〜(26)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(28)前記混合物は、石膏、鉄粉、及び、セメントからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、(24)〜(27)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(29)前記水は、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、(24)〜(28)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(30)(1)〜(23)の何れか1つに記載の被覆種子を、前記種子を栽培するための栽培地に対して直播する、被覆種子の播種方法。
まず、本発明の実施形態に係る被覆種子について、詳細に説明する。
本実施形態に係る被覆種子は、高炉スラグを含み、所定の種子の表面を被覆する被覆層を有している。
以下では、まず、本実施形態に係る被覆種子に用いられる種子について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子に用いられる種子としては、湛水された状態で栽培される植物の種子、又は、湛水しない状態で栽培される植物の種子を用いることが可能である。ここで、「湛水された状態で栽培される種子」とは、土壌の表面が水中に没した状態で栽培される種子を意味し、「湛水しない状態で栽培される種子」とは、湛水されて土壌の表面が水中に没することがない状態で栽培される種子を意味する。
続いて、以上説明したような種子の表面に形成される被覆層について、詳細に説明する。
上記のような種子の表面に形成される本実施形態に係る被覆層は、所定の成分を有する高炉スラグを含有する。以下、かかる被覆層に含有される高炉スラグについて、詳細に説明する。
天然物である鉄鉱石、石炭及び石灰石を原料として用いる高炉を利用した鉄鋼製造プロセスでは、スラグと呼ばれる副生成物が発生する。副生するスラグは、高炉における製銑プロセスで副生する高炉スラグと、製鋼プロセスで副生する製鋼スラグと、に大別される。製鋼プロセスで副生する製鋼スラグは、pH11〜12程度の強アルカリ性を示すが、製銑プロセスで副生する高炉スラグは、pH10程度と製鋼スラグと比較してアルカリ性が弱い。製鋼スラグ及び高炉スラグは、固まる速度に違いはあるものの、共に固結性を示す物質である。
以上のような特徴を有する高炉スラグは、以下の成分を含有する高炉スラグであることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る被覆層の主成分である高炉スラグは、35質量%以上45質量%以下のCaOと、25質量%以上40質量%以下のSiO2と、2質量%以上15質量%以下のMgOと、8質量%以上20質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する高炉スラグであることが好ましい。
まず、Caについて説明する。
高炉スラグは、水に接すると、Caと後述するSiやAlとが溶出して化学結合することにより、水硬性を示す。本発明は、この水硬性を利用して、高炉スラグを各種種子に付着及び固結させて、各種種子を被覆するものである。従って、本発明において、Caは、重要な元素である。また、Caは、植物に必須な肥料元素でもある。肥料や製鋼スラグにおいてCaの含有量を表記する際には、酸化物のCaOに換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではCaOとしてCaの含有量を表わすこととする。
続いて、Siについて説明する。
Siは、CaやAlと共に、高炉スラグの水硬性に寄与する元素である。従って、本発明において、Siも重要な元素である。また、Siは、植物の必須要素ではないものの、特に陸稲等の稲種子にとって、非常に重要な肥料効果元素である。稲の植物体の乾燥重量の約5%をケイ酸(SiO2)が占める。肥料や製鋼スラグでは、Siの含有量を表記する際には、酸化物のSiO2に換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではSiO2としてSiの含有量を表わすこととする。
Mgは、Ca、Si、Alと共に、高炉スラグの水硬性に関わる元素である。ただし、高炉スラグに含まれるCaO含有量とMgO含有量との違いなど、Mgの水硬性への寄与はCaと比較すると小さい。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグはCaOを35質量%以上含有することから、水硬性は、高炉スラグに含有されるCaOにより基本的にはまかなうことができると考えられる。ただし、MgOが更に存在することで、水硬性をより良く発現することが期待できる。肥料や製鋼スラグでは、Mgの含有量を表記する際には、酸化物のMgOに換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではMgOとしてMgの含有量を表わすこととする。
続いて、Alについて説明する。
Alは、CaやSiと共に、高炉スラグの水硬性に重要な元素である。肥料や製鋼スラグでは、Alの含有量を表記する際には、酸化物のAl2O3に換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではAl2O3としてAlの含有量を表わすこととする。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグとしては、上記のような所定の成分を含有する高炉スラグの他に、鉄鋼製造プロセスから副生される高炉スラグの一種である、高炉徐冷スラグ、又は、高炉水砕スラグを用いることも可能である。鉄鋼製造プロセスから副生される高炉スラグには、製造方法の違いに起因して成分は同じであるが化学的性質の異なる、高炉徐冷スラグと高炉水砕スラグとが存在する。これら2種類のスラグは、高炉スラグの一種である。
先だって説明したように、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる各種高炉スラグにおける各成分の含有量は、蛍光X線分析法により測定することが可能である。より詳細には、着目する成分について、含有量が既知である標準サンプルを利用して、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を予め測定することで、検量線を作成しておく。含有量が未知のサンプルについては、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を測定し、予め作成しておいた検量線を用いることで、着目する成分の含有量を特定することができる。
本実施形態では、上記のような高炉スラグを、粉砕等により所定の粒径に調整したものを、そのままで各種種子の被覆に用いることが可能である。これらの高炉スラグの粉砕には、例えば、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ロールミル、ローラーミルなどの公知の手段を用いることができる。
◇生石灰、消石灰について
本実施形態に係る被覆層には、上記のような高炉スラグに加えて、生石灰(CaO)、又は、消石灰(Ca(OH)2)の少なくとも何れかを更に含有していてもよい。生石灰及び消石灰は、高炉スラグの固結を促進する固結促進材として機能する化合物である。従って、生石灰又は消石灰の少なくとも何れかを被覆層に更に含有させることで、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
本実施形態に係る被覆層には、上記のような高炉スラグに加えて、電気炉製鋼スラグ、又は、石炭灰の少なくとも何れかを更に含有していてもよい。電気炉製鋼スラグや石炭灰は、それぞれを単独で用いた場合には、優れた固結性を示すものではない。しかしながら、電気炉製鋼スラグや石炭灰を上記のような高炉スラグと混合することで、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
電気炉製鋼スラグは、高炉及び転炉を用いた製鉄プロセスではなく、電気炉を用いた製鉄プロセスで副生する製鋼スラグである。一般的な電気炉製鋼スラグは、15質量%以上60質量%以下のCaOと、10質量%以上20質量%以下のSiO2と、2質量%以上10質量%以下のMgOと、3質量%以上20質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有していることが多い。かかる電気炉製鋼スラグを被覆層に含有させることで、電気炉製鋼スラグが結合材として機能し、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
石炭灰(フライアッシュ)は、石炭を燃焼させる際に生じる灰の一種であり、SiO2及びAl2O3を主成分とする物質である。一般的な石炭灰は、40質量%〜75質量%のSiO2と、15質量%〜35質量%のAl2O3と、2質量%〜20質量%のFe2O3と、1質量%〜10質量%のCaOと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有していることが多く、更に、MgO等の他の成分を含有していることもある。かかる構成成分からも明らかなように、石炭灰は、高炉スラグと類似した成分を含有しており、固結性を補助する物質である。かかる石炭灰を被覆層に含有させることで、石炭灰が結合材として機能し、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
また、本実施形態に係る被覆層には、上記のような高炉スラグに加えて、石膏、セメント、鉄粉、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種が更に含有されていてもよい。
石膏及びセメントは、固結性を有する物質であり、結合材として機能する。従って、かかる石膏又はセメントの少なくとも何れかを被覆層に含有させることで、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
鉄粉は、比重が大きい物質である。そのため、被覆層に鉄粉を含有させることで、被覆種子の重量を増加させ、種子を流亡しにくくさせることが可能となる。被覆層に含有されうる鉄粉の含有量は、高炉スラグの質量に対して50質量%以下であることが好ましい。高炉スラグに対する鉄粉の割合が50質量%を超える場合、金属鉄の酸化による発熱で種子のダメージが大きくなる可能性が高く、また鉄粉から溶出した二価鉄イオンが酸化して三価鉄イオンとなり、水酸化物として沈殿する際に酸性を示すことで、発芽や幼根の生長に悪影響を及ぼす可能性がある。また、鉄粉は高価であるため、鉄粉の割合が高くなると、コスト的に不利となる。
廃糖蜜は、サトウキビ等の搾り汁から砂糖を精製する際に副産される黒褐色の液体であり、糖分を70〜80%程度含むほか、ミネラルやビタミンも含有している。また、廃糖蜜は、副産物であることから安価に入手可能である。廃糖蜜は、特に、植物の細胞生長に必要なカリウムを2%程度含んでいる。カリウムは、植物の根から吸収され、植物細胞の生長に必要な成分である。従って、被覆層に廃糖蜜を含有させることで、被覆層から廃糖蜜由来のカリウムを供給することが可能となり、幼植物の生長を更に促進することも期待できる。また、廃糖蜜は粘着性を有することから、廃糖蜜を被覆層に含有させることで、被覆層の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、高炉スラグによる肥料効果に加えて、より促すことが可能となる。
本実施形態に係る被覆層は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム等といった、アルギン酸由来の化合物(アルギン酸化合物)を含有していてもよい。
本実施形態に係る被覆層の表面には、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着していてもよい。被覆層の表面に付着したこれらの薬剤により、被覆種子が播種される土壌や被覆種子そのものに対して、該当する薬剤の薬効が実現される。
固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化ケイ素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物、並びに、合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−66等のナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−プロピレン共重合体等)が挙げられる。
また、液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノキシエタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、炭酸プロピレン及び植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
以上説明したような本実施形態に係る被覆種子は、従来の鉄粉を用いた種子被覆物と比較して、気孔率が高く、かつ、透水性、保水性及び空気透過性に優れており、植物の発芽及び生育にきわめて有利である。
続いて、以上説明したような高炉スラグを用いて、本実施形態に係る被覆種子を製造する方法について、詳細に説明する。
ここで、高炉スラグ等と水との混合物により種子を被覆する際に、高炉スラグ等に対して混合する水であるが、純水のほか、水道水、地下水、農業用水等を使用することも可能であるが、廃糖蜜を含有する水を用いることがより好ましい。廃糖蜜を含有する水を用いることで、廃糖蜜の粘着性を利用して被覆層の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、高炉スラグによる肥料効果に加えて、より促すことができる。
先だって言及したように、高炉スラグ等を含む被覆層の表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を付加することによって、ゲル化が起こり、高炉スラグ等を含む被覆層の種子への付着の安定性を補強することが可能となる。
先だって言及したように、高炉スラグ等を含む被覆層の表面に、除菌剤、除虫剤、又は、除草剤の少なくとも何れかを付着させることが可能である。
続いて、以上説明したような被覆種子の播種方法について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子の播種方法では、以上説明したような被覆種子を、当該種子を栽培するための栽培地に対して直播する。
以下の表1に示す組成の高炉スラグ(より詳細には、高炉水砕スラグ)を粉砕し、異なる孔径の篩を使って、粉砕後の高炉水砕スラグを、(A)孔径75μmの篩を通過したもの、(B)孔径600μmの篩を通過し、かつ、孔径75μmの篩は通過しないものの2種類に分級した。(A)又は(B)の各高炉水砕スラグを用いて、稲種子、トウモロコシ種子、大豆種子、及び、陸稲種子を被覆した。
上記表1に示した組成の高炉水砕スラグから得られる高炉スラグ微粉末(JIS A6206相当)を用いて、稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を被覆した。
上記表1に示した組成の高炉水砕スラグを用い、(A)孔径75μmの篩を通過したもの、(B)孔径600μmの篩を通過し、かつ、孔径75μmの篩は通過しないもの、のそれぞれを用意した。また、上記表2に示した組成の製鋼スラグを用い、同様にして、(A)孔径75μmの篩を通過したもの、(B)孔径600μmの篩を通過し、かつ、孔径75μmの篩は通過しないもの、のそれぞれを用意した。
上記表1に示した組成の高炉水砕スラグ、及び、上記表2に示した組成の製鋼スラグのそれぞれにおいて、孔径75μmの篩を通過したものを用意した。
Claims (30)
- 高炉スラグを含み、所定の種子の表面を被覆する被覆層を有する、被覆種子。
- 前記被覆層は、更に、生石灰、又は、消石灰の少なくとも何れかを含む、請求項1に記載の被覆種子。
- 前記被覆層における前記生石灰、又は、消石灰の少なくとも何れかの含有量は、前記高炉スラグの質量に対して、外掛けで5質量%以下である、請求項2に記載の被覆種子。
- 前記高炉スラグは、35質量%以上45質量%以下のCaOと、25質量%以上40質量%以下のSiO2と、2質量%以上15質量%以下のMgOと、8質量%以上20質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記高炉スラグは、孔径600μmの篩を通過する高炉スラグである、請求項1〜4の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記高炉スラグは、孔径75μmの篩を通過する高炉スラグである、請求項1〜5の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記高炉スラグは、高炉水砕スラグである、請求項1〜6の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層は、更に電気炉製鋼スラグ、又は、石炭灰の少なくとも何れかを含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記電気炉製鋼スラグは、15質量%以上60質量%以下のCaOと、10質量%以上20質量%以下のSiO2と、2質量%以上10質量%以下のMgOと、3質量%以上20質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項8に記載の被覆種子。
- 前記石炭灰は、1質量%以上10質量%以下のCaOと、40質量%以上75質量%以下のSiO2と、2質量%以上20質量%以下のFe2O3と、15質量%以上35質量%以下のAl2O3と、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項8又は9に記載の被覆種子。
- 前記電気炉製鋼スラグは、孔径600μmの篩を透過する電気炉製鋼スラグである、請求項8〜10の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記石炭灰は、孔径75μmの篩を通過する石炭灰である、請求項8〜11の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層における前記電気炉製鋼スラグの含有量は、前記被覆層の全体の質量に対して、0質量%超30質量%以下である、請求項8〜12の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層における前記石炭灰の含有量は、前記被覆層の全体の質量に対して、0質量%以上20質量%以下である、請求項8〜13の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層は、石膏、鉄粉、セメント、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1〜14の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記種子は、湛水された状態で栽培される植物の種子、又は、湛水しない状態で栽培される植物の種子である、請求項1〜15の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記湛水された状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、請求項16に記載の被覆種子。
- 前記イネ科植物の種子は、水稲種子である、請求項17に記載の被覆種子。
- 前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物、マメ科植物、タデ科植物、食用草本植物、又は、有用植物の種子である、請求項16に記載の被覆種子。
- 前記イネ科植物の種子は、陸稲種子、トウモロコシ種子、又は、麦種子であり、
前記マメ科植物の種子は、ダイズ種子、又は、アズキ種子であり、
前記タデ科植物の種子は、ソバ種子であり、
前記食用草本植物の種子は、ニンジン種子、トマト種子、又は、甜菜種子であり、
前記有用植物の種子は、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、又は、花木種子である、請求項19に記載の被覆種子。 - 前記被覆層の表面に、除菌剤、徐虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着している、請求項1〜20の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層は、更に、アルギン酸化合物を含有する、請求項1〜21の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記種子は、でんぷんで被覆された種子である、請求項1〜22の何れか1項に記載の被覆種子。
- 高炉スラグと水とを混合して得られた混合物により、所定の種子を被覆する、被覆種子の製造方法。
- 前記混合物は、生石灰、又は、消石灰の少なくとも何れかを更に含む、請求項24に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記混合物は、電気炉製鋼スラグ、又は、石炭灰の少なくとも何れかを更に含む、請求項24又は25に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記混合物における前記水の割合は、前記混合物の全体質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、請求項24〜26の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記混合物は、石膏、鉄粉、及び、セメントからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項24〜27の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記水は、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、請求項24〜28の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
- 請求項1〜23の何れか1項に記載の被覆種子を、前記種子を栽培するための栽培地に対して直播する、被覆種子の播種方法。
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