JP4384750B2 - イネいもち病の省力的防除方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水稲の重要病害の一つであるイネいもち病の防除を目的として水稲用の育苗箱内で行われるイネいもち病の防除方法であって、省力的、かつ安定した防除効果を得ることができる新しいイネいもち病防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水稲育苗方法では、機械移植の普及により育苗箱を利用した苗栽培が一般的となっている。水稲の重要病害の一つであるイネいもち病に対しても、その防除薬剤の茎葉散布あるいは湛水散布による従来の防除方法に加えて、環境への負荷の軽減化をも考慮して開発された育苗箱内での防除薬剤の処理による防除法として下記の方法が普及しつつある。
【0003】
すなわち、育苗箱内で防除薬剤で処理することによるイネいもち病の防除方法として、イネいもち病の防除薬剤の粒状製剤を育苗箱内の床土に混和する方法(特公昭54−92622)、種籾の播種後に但し覆土前に床土上に粒状製剤を散粒する方法(一般委託試験成績 3北陸地域 殺菌剤 3頁;平成10年日本植物防疫協会)、および育苗時および移植当日に育苗箱内にある稲体上から散粒する方法(一般委託試験成績 3北陸地域 殺菌剤 11頁;平成10年日本植物防疫協会発行)が知られている。しかしながら、これら粒状製剤は散粒時に偏在し易く、これを均一に育苗箱内に施用することは困難である。そのため、所定薬量が施用されていない苗株を水田に移植する事態が起こることが多く、このことによりイネいもち病の防除に効果不足が生じる欠点がある。また、大量の育苗箱の処理においては、育苗箱毎に処理すると、多大な労力を必要とするため、作業効率面より手動式散粒器や小型動力散粉機を使用することがある。しかし、これらの装置を使用した場合には、粒剤または粉剤を所定薬量で均一に施用することはさらに困難な状況にある。さらに、施用した後、茎葉部に付着した薬剤を払い落とし、土壌面への固着を良くするために散水する作業を行わなければならず、作業が煩雑である。
【0004】
育苗時の緑化期〜硬化期のイネ苗または移植時直前のイネ苗に、水和剤を水に希釈してなる薬液を潅注する方法(農薬ハンドブック248頁;1998年日本植物防疫協会発行)が知られている。しかし、この方法では、育苗環境によっては苗の生育に悪影響を生じることがあり、さらに殺菌効果の面で必ずしも常に十分とは言い難い。
【0005】
また、カスガマイシンの溶液状製剤の4〜8倍希釈の高濃度薬液を育苗箱の1箱あたり50ml量で種籾の播種後に但し覆土前に種籾を乗せた床土の上から噴霧によって散布する方法(一般委託試験成績 II東北地域 殺菌剤 97頁;平成10年日本植物防疫協会発行)も知られている。しかし、この方法では、種子伝染性である苗いもち病に対しては有効であるものの、水田移植後のいもち病の防除に対しては効果の持続性が短く、水田でいもち病が流行する梅雨時にはいもち病の実用上有効な防除効果が事実上得られない欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これまで述べてきたように、育苗箱内で防除処理することによるイネいもち病の防除方法は、従来行われた水田移植後の防除剤の茎葉散布あるいは湛水散布からなる防除方法と比べて、作業労力や環境汚染を軽減化することができた。
【0007】
しかし、イネいもち病防除剤の粒状製剤で防除処理する場合は育苗箱内に均一に粒状製剤を施用することが必須であるが、そのような粒剤の均一施用は、多大な労力をもってしても極めて困難な状況にある。より簡便且つ有効に育苗箱内で実行できる新しいいもち病防除方法が求められている。
【0008】
また、育苗箱内で種籾の播種直後のの薬液の散布および育苗時の薬液の潅注処理によるイネいもち病の防除方法は、育苗環境によっては薬害が生ずる恐れがあり、また水田移植後に起こるいもち病防除の効果が十分でないため、安全であり且つより効果の高い方法が求められている。 本発明の目的はこのような現状に鑑み、水稲育苗箱内で省力的に薬剤処理を行うことができて、しかも優れた防除効果を発揮できるイネいもち病防除方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、イネいもち病菌に対する防除活性をもち且つ水稲用育苗箱内でイネ苗にまで生育する以前の段階の種籾に施用して処理した時にも、育苗箱から水田移植後のイネで発生するイネいもち病を防除するのに有効である性能、または性質を有する化合物を有効成分として含有する粉末状水和剤または顆粒状水和剤または水性懸濁液製剤は、これを水で希釈して水希釈薬液とした後に、浸種して十分に吸水させて催芽した種籾あるいは未催芽の種籾を、育苗箱に播種する直前に、床土土壌を充填した育苗箱内で前記の水希釈薬液を床土上から潅注または噴霧散布するか、あるいは、床土上に播種した後に但し覆土前に種籾上から前記の水希釈薬液を潅注または噴霧散布するか、あるいは床土に播種後に且つ覆土した直後に覆土の表面に育苗箱に潅注または噴霧散布する場合に、水田移植後の水稲で発病するイネいもち病を長期にわたり安定して防除できることを見出した。
【0010】
本発明(請求項1に係る発明)において、イネいもち病菌に対する防除活性をもち且つ水稲の育苗箱内でイネの催芽したまたは未催芽の種籾を処理した時にも育苗箱からのイネ苗の水田移植後のイネに発病するイネいもち病の防除に有効である性能を有する化合物であるところの、2−(6−メチル−2−ピリジル)−4−n−プロピル−6−ピリミジニルオキシエチル−2,6−ジクロロイソニコチナート、(1RS,3SR)−2,2−ジクロロ−N−[1−(4−クロロフェニル−)エチル]−1−エチル−3−メチルシクロプロパンカルボキサモドまたは1,2,3−ベンゾチアジアゾール−7−カルバオチオン酸S−メチルエステルを、有効成分として含有する粉末状水和剤、顆粒状水和剤または水性懸濁剤を水で希釈してなる水希釈薬液を、育苗箱への床土充填後に但し播種前に床土に潅注または噴霧散布し、その後に、催芽したまたは未催芽の種籾を床土に播種するか、または前記の種籾を床土に播種後に但し覆土の直後に覆土の表面に潅注または噴霧散布することを特徴とする、育苗箱内で行われるイネいもち病の省力的防除方法が提供される。
【0011】
本発明において、イネいもち病菌に対する防除活性をもち且つ水稲の育苗箱内でイネ種籾を処理した時にも育苗箱からのイネ苗の水田移植後のイネに発病するイネいもち病の防除に有効である性能を有する化合物とは、イネ植物体内に移行することによってイネいもち病菌の感染を阻害できる性質をもつ化合物、あるいはイネ植物体内に移行することによってイネの病害抵抗性を増強してイネいもち病菌の発病を抑制できる性質をもつ化合物であり、上記の段落[0010]に示された3種の具体例化合物のうちから選択して使用される。
【0012】
本発明の方法において、育苗箱内で潅注または噴霧散布されるべき水希釈薬液を調製するのに使用できるイネいもち病防除用の水和剤または水性懸濁剤に含まれる有効成分としては、イネいもち病の防除活性をもち、しかも水田移植後の湛水散布(水面施用)の場合にも、あるいは水田移植前の育苗箱内で施用した場合にも水田移植後のイネでいもち病を防除するのに有効であることができる農薬化合物であり、使用する有効成分化合物として下記の3種の化合物から選択される。
【0013】
1)2−(6−メチル−2−ピリジル)−4−n−プロピル−6−ピリミジニルオキシエチル−2,6−ジクロロイソニコチナート (特開平9−95489号に記載の化合物であり、以下では化合物Aと略記する)
2)(1RS,3SR)−2,2−ジクロロ−N−[1−(4−クロロフェニル−)エチル]−1−エチル−3―メチルシクロプロパンカルボキサモド (以下に化合物Bと略記す)
3)1,2,3−ベンゾチアジアゾール−7−カルバオチオン酸S−メチルエステル(1,2,3−benzothiadiazole−7−carbaothioic acid S−methyl ester)(以下に化合物Cと記す)
有効成分は、2種またはそれ以上併用することができる。
【0014】
本発明により育苗箱内で行われるイネいもち病の防除方法は次の2つの態様で行う。すなわち、第1に、播種前に但し覆土前に水希釈薬液を施用する場合には、水に浸種して十分に吸水させた催芽した籾あるいは未催芽の籾を播種する直前に、育苗箱に充填された床土の土壌あるいは敷きつめたイネ育苗用マットの上に育苗箱内で水希釈薬液を潅注または噴霧散布する。第2に、播種後に且つ覆土直後に水希釈薬液を施用する場合は、床土上に播種後で且つ覆土した直後に覆土の土壌表面に水希釈薬液を潅注または噴霧散布する。本発明の方法では、薬液の潅注処理または噴霧散布は、如露や噴霧器などの適当な器具を使用して行う。水稲用の標準の育苗箱の1800cm2の面積あたり20〜1000ml、好ましくは100〜500mlの容量で水希釈薬液を潅注、あるいは噴霧散布すればよい。また処理に使用する薬液の有効成分の施用量は、限定されるものでないが、育苗箱の1800cm2の面積あたり0.1〜20g、好ましくは1〜10gである。
【0015】
本発明の方法において、水で希釈して水希釈薬液を調製するのに使用する粉末状水和剤または水性懸濁剤の形の製剤は、これに含有されてイネいもち病防除に効果を示す有効成分としての化合物が水中に溶解あるいは懸濁する化合物であればよい。そのような製剤は、有効成分と適当な担体および補助剤を、例えば界面活性剤、結合剤、安定剤などを配合し、さらに常法によって水和剤、水性懸濁剤(フロアブル)、または顆粒状水和剤等に調製される。これらの水和剤または懸濁剤の製剤中における有効成分の含有量(水希釈する以前の)は、限定的なものではないが、通常は1〜80%である。
【0016】
上記の製剤に配合し得る担体としては、農薬製剤に常用されるものであれば、固体または液体のいずれでも使用でき、特定のものに限定されるものではない。例えば固体担体として、鉱物質粉末(カオリン、ベントナイト、クレー、タルク、けいそう土、シリカ、バーミキュライト、炭酸カルシウムなど)、天然高分子(小麦粉、デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンなど)、糖類(グルコース、マントース、ラクトース、シュクロースなど)、尿素、硫安などが挙げられる。また液体担体として水が使用できる。
【0017】
また、上記の製剤には、分散、可溶化、湿潤化、拡展などの目的で各種の界面活性剤を使用することができる。また、界面活性剤とともに、水溶性高分子化合物を配合することができる。また、酸化防止剤、光分解防止剤、物理性改良剤、有効成分安定化剤、粘度調整剤、凍結防止剤などの各種補助剤を配合することができる。さらに、シリコン系等の消泡剤、あるいは防かび剤などの他成分を配合してもよい。さらに、殺虫性有効成分を配合して用いることができる。
【0018】
また、本発明のイネいもち病の省力防除方法においては、上記の農薬製剤の水希釈薬液の施用と同時に、その他の殺菌剤、イネシンガレセンチュウ用殺虫剤やその他の殺虫剤、植物成長調節剤、肥料を施用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の方法で施用する水希釈薬液の調製に利用できる水和剤または水性懸濁剤について製剤例を示す。また、比較に用いた粒剤の製剤例を示す。なお、製剤例中で化合物A、化合物Bまたは化合物Cは前記に示した化合物を指し、また部とあるものは、すべて重量部である。
【0020】
製剤例1(水和剤)
化合物A 80部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル 2部
リグニンスルホン酸ナトリウム 3部
ホワイトカーボン 1部
クレー 14部
上記の物質を均一に混合し、粉砕した。有効成分として化合物Aを80%含有する粉末状の水和剤を得る。
【0021】
製剤例2(水和剤)
化合物B 40部
ホワイトカーボン 5部
ラウリル硫酸ナトリウム 4部
リグニンスルホン酸カルシウム 4部
クレー 47部
上記の物質を均一に混合し、粉砕した。有効成分として化合物Bを40%含有する粉末状の水和剤を得る。
【0022】
製剤例3(水性懸濁剤)
化合物A 30部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル 3部
リグニンスルホン酸ナトリウム 5部
プロピレングリコール 5部
防黴剤 1部
キサンタンガム2%水溶液 0.4部
水 55.6部
上記の物質をホモミキサー(日本特殊機化工業株式会社製)で均一に混合し混合分散させた。有効成分として化合物Aを30%含有する水性懸濁剤を得る。
【0023】
製剤例4(顆粒状水和剤)
化合物A 50部
ホワイトカーボン 5部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩 8部
ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩 4部
可溶性デンプン 5部
クレー 28部
上記の物質を混合粉砕した後、水10部を加えて混練し、0.5mmのスクリーンを付けた押し出し造粒機にて造粒後、乾燥、整粒した。有効成分として化合物Aを50%含有する顆粒状水和剤を得た。
【0024】
製剤例5(顆粒状水和剤)
化合物C 40部
ケイソウ土 8部
アルキルマレイン酸重合物 6部
ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩 4部
カルボキシメチルセルロース 3部
クレー 39部
上記の物質を混合粉砕した後、水10部を加えて混練し、0.5mmのスクリーンを付けた押し出し造粒機にて造粒後、乾燥、整粒した。有効成分として化合物Cを40%含有する顆粒状水和剤を得た。
【0025】
比較製剤例1
化合物A 16部
ラウリルサルフェートナトリウム 2部
リグニンスルホン酸カルシウム 5部
ベントナイト 10部
ホワイトカーボン 4部
ポリビニールアルコール 2部
クレー 61部
上記の物質を混合粉砕した後、水10部を加えて混練して、0.9mmのスクリーンを付けた押し出し造粒機にて造粒後、乾燥、整粒した。有効成分16%の粒剤を得た。
【0026】
比較製剤例2
化合物B 4部
ラウリルサルフェートナトリウム 2部
リグニンスルホン酸カルシウム 5部
ベントナイト 10部
ホワイトカーボン 4部
ポリビニールアルコール 2部
クレー 73部
上記の物質を混合粉砕した後、水10部を加えて混練し、0.9mmのスクリーンを付けた押し出し造粒機にて造粒後、乾燥、整粒した。有効成分4%の粒剤を得た。
【0027】
比較製剤例3
化合物C 2部
ラウリルサルフェートナトリウム 2部
リグニンスルホン酸カルシウム 5部
ベントナイト 10部
ホワイトカーボン 4部
ポリビニールアルコール 2部
クレー 75部
上記の物質を混合粉砕した後、水10部を加えて混練して、0.9mmのスクリーンを付けた押し出し造粒機にて造粒後に乾燥、整粒した。有効成分2%の粒剤を得た。
【0028】
上記の製剤例1〜5に示された水和剤、水性懸濁剤、顆粒状水和剤の水希釈薬液を用いて本発明の方法を行うことができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のイネいもち病の省力的防除方法は、浸種して十分に吸水させた催芽籾あるいは無催芽籾を育苗箱に播種する直前の床土土壌を充填した育苗箱内で前記の床土上に水希釈薬液を潅注または噴霧散布するか、あるいは播種後で但し覆土した直後に育苗箱内で覆土表面に潅注または噴霧散布するだけでよい。そのため、従来技術による育苗箱への散粒処理方法と比べて、育苗箱内に均一に有効成分を施用することができ、より安定した防除効果が得られる。また、従来の粒剤と土壌との混和処理法あるいは育苗箱への散粒処理法と比べて、作業労力が大幅に軽減され、極めて省力できる防除方法である。
【0030】
次に、本発明による稲いもち病の省力的防除方法の有用な効果を示すため試験例を示す。
【試験例】
試験例1〜3および比較試験例1〜5 ハウス内ポット試験
イネ育苗箱(30x60x3cm)に人工培土(クレハ粒状培土D、呉羽化学社製)を床土として2.5リットル充填した。また該人工培土を覆土として1.2リットルを使用した。播種は催芽した種籾180gを箱内に均一になるように手でばらまくことにより行った。製剤例1に準じた水和剤10gを水500mlに加え攪拌して水希釈薬液を調製した。薬液の施用は、播種直前の床土に、あるいは播種後但し覆土前の床土上の種籾上に、あるいは覆土直後に覆土表面にそれぞれ500ml量を如露で潅注して行われた。比較試験として、カスガマイシン液剤の市販品を水で4倍希釈し、播種直前に、あるいは播種後に但し覆土前にあるいは覆土直後に1箱あたり手押し式噴霧器で50ml量を噴霧散布した。
【0031】
薬剤処理後は、温室内で21日間生育管理した。その後に、育苗箱苗を、2条田植機(クボタAP−20)により苗株としてカットし、1株あたり4〜6本の苗を有する株を、埴壌土(神奈川県厚木市産)を充填して代掻きした1/5000アールのポットに1株ずつ移植した。移植4週間後に、いもち病が発病した苗を有する別のポットとともにビニールハウス内に入れ、日中は寒冷紗で遮光し、夜間は過湿状態にしていもち病の感染と発病を促した。
【0032】
接種15日後に全株について下記の基準により発病指数を調査し、また発病度および防除価を下記の計算式で算出した。
なお、別の比較試験として、比較製剤例1の粒剤は、苗の移植直前に育苗箱の上から50g量散粒し、茎葉部に付着した粒剤を払い落し軽く潅水した後、2条田植機で苗株としてカットした。また別に、比較製剤例1の粒剤を移植株に均一に施用して処理するための比較試験として、薬剤処理していない育苗箱の苗を田植機でカットし、ポット移植した直後の苗の株元に粒剤の45mgの量をまとめておいて処理をした。[注):一般的に播種後21日育成したイネ苗を10アールの面積の水田に移植する場合は、育苗箱20箱分の苗を必要とする。また栽植密度は15x30cmであるため10アールの水田に移植される苗の総株数は22,222株となる。従って、育苗箱の1箱あたり50gの粒剤施用量による処理は、水田移植後の苗1株あたりに45mgの量の粒剤の施用に相当する]。
【0033】
【0034】
但し上記の式において、N:調査株数(125株)
n1〜n3:それぞれの発病指数に該当する株数
【0035】
【0036】
得られた試験結果を表1に示す。
【0037】
試験例4〜6および比較試験例6〜7 ハウス内ポット試験
イネ育苗箱(30x60x3cm)に人工培土(クレハ粒状培土D、呉羽化学社製)を床土として2.5リットル充填した。また該人工培土を覆土として1.2リットルを使用した。播種は催芽処理した種籾180gを箱内に均一になるように手でばらまいて行った。製剤例2に準じた水和剤5gを水500mlに加え攪拌して水希釈薬液を調製した。この薬液の施用は、播種直前の床土に、または播種後に但し覆土前の床土上の種籾上に、あるいは覆土直後の覆土表面にそれぞれ500ml量を如露で潅注した。
【0038】
温室内で21日間生育管理した育苗箱苗を、2条田植機(クボタAP−20)により苗株としてカットし、4〜6本の苗を有する株を、埴壌土(神奈川県厚木市産)を充填して代掻きした1/5000アールのポットに1株ずつ移植した。移植4週間後に、いもち病が発病した苗を有する別のポットとともにビニールハウス内に入れ、日中は寒冷紗で遮光し、夜間は過湿状態にして、いもち病の感染と発病を促した。接種15日後に、全株について試験例1〜3に示した上記の基準により発病指数を調査し、発病度および防除価を算出した。
【0039】
なお比較試験として、比較製剤例2の粒剤を、移植直前に育苗箱内の苗の上から50g量散粒し、茎葉部に付着した粒剤を払い落し軽く潅水した後、2条田植機で苗をカットし移植した。また、別に比較製剤例2の粒剤を移植株に均一に施用して処理するため、薬剤処理していない育苗箱苗を田植機でカットし、ポット移植した直後の苗の株元に45mgの粒剤をまとめて置いて処理した。
【0040】
結果を表2に示す。
【0041】
試験例7〜9および比較試験例8〜9 ハウス内ポット試験
イネ育苗箱(30x60x3cm)に人工培土(クレハ粒状培土D呉羽化学社製)を床土として2.5リットル充填した。該人工培土を覆土として1.2リットルを使用した。播種は催芽した種籾180gを箱内に均一になるように手でばらまいて行った。製剤例5に準じた顆粒状水和剤2.5gを水500mlに加え攪拌して水希釈薬液を調製した。この薬液を播種直前、あるいは播種後に覆土の直前に、あるいは覆土直後にそれぞれ500ml量を如露で潅注した。
【0042】
温室内で21日間生育管理した育苗箱苗は、2条田植機(クボタAP−20)により苗株としてをカットし、4〜6本の苗を有する株を埴壌土(神奈川県厚木市産)を充填し代掻きした1/5000アールのポットに1株ずつ移植した。移植4週間後に、いもち病が発病した別のポットとともにビニールハウス内に入れ、日中は寒冷紗で遮光し、夜間は過湿状態にしていもち病の感染と発病を促した。接種15日後に全株について下記の試験例10〜12に示す基準により発病指数を調査し、発病度および防除価を算出した。
【0043】
なお、比較製剤例3の粒剤は、移植直前に育苗箱上に50g量散粒し、茎葉部に付着した粒剤を払い落し軽く潅水した後、2条田植機で苗をカットし移植した。また、比較製剤3の粒剤を移植株に均一に施用処理するため、薬剤処理していない育苗箱苗を田植機でカットし、ポット移植した直後の株元に45mg量処理した。
【0044】
試験結果を表3に示す。
【0045】
試験例 10 〜 12 および比較試験例 10 〜 12 圃場試験
イネ育苗箱(30x60x3cm)の20箱に人工培土(合成培土3号、三井東圧化学社製)を床土として2.2リットル充填した。該人工培土を覆土として1.5リットルを使用した。催芽した種籾180gを箱内に均一に手で播種した。前記の化合物A、BまたはCを有効成分として含有して、製剤例4に準じて作られた顆粒状水和剤の所定量を水に加えてよく攪拌して水希釈薬液を調製した。その薬液を如露で播種後で覆土直前に育苗箱1箱あたり500ml量ずつ潅注した。ビニールトンネルで16日間生育管理した幼苗は、2条田植機(クボタAP−20)により、2箱/アールの割合で水田(静岡県榛原郡の水田:軽埴土)に移植した。移植15日後にいもち病が発病している別の苗を試験区内および試験区周辺に移植して感染源とした。移植35日後に、各処理300株について下記の基準により発病指数を調査し、発病度および防除価を下記の計算式で算出した。
【0046】
なお、比較試験として、比較製剤例1,2および3の粒剤を、移植直前にそれぞれ育苗箱20箱を並べた状態で小型動力散粉機(丸山MD3100T)で1000g量を散粒した。茎葉部に付着した粒剤を払い落し軽く潅水した後に菌を移植した。
【0047】
試験結果を表4に示す。
【0048】
但し、上記の式においてN:調査株数(300株)
n1〜n4:それぞれの発病指数に該当する株数
【0049】
【0050】
Claims (5)
- イネいもち病菌に対する防除活性をもち且つ水稲の育苗箱内でイネの催芽したまたは未催芽の種籾を処理した時にも育苗箱からのイネ苗の水田移植後のイネに発病するイネいもち病の防除に有効である性能を有する化合物であるところの、2−(6−メチル−2−ピリジル)−4−n−プロピル−6−ピリミジニルオキシエチル−2,6−ジクロロイソニコチナート、(1RS,3SR)−2,2−ジクロロ−N−[1−(4−クロロフェニル−)エチル]−1−エチル−3−メチルシクロプロパンカルボキサモドまたは1,2,3−ベンゾチアジアゾール−7−カルバオチオン酸S−メチルエステルを、有効成分として含有する粉末状水和剤、顆粒状水和剤または水性懸濁剤を水で希釈してなる水希釈薬液を、育苗箱への床土充填後に但し播種前に床土に潅注または噴霧散布し、その後に、催芽したまたは未催芽の種籾を床土に播種するか、または前記の種籾を床土に播種後に但し覆土の直後に覆土の表面に潅注または噴霧散布することを特徴とする、育苗箱内で行われるイネいもち病の省力的防除方法。
- イネいもち病菌に対する防除活性をもち且つ水稲の育苗箱内でイネ種籾を処理した時にも育苗箱からのイネ苗の水田移植後のイネに発病するイネいもち病の防除に有効である性能を有する化合物であるとしての請求項1に示された3つの化合物は、イネ植物体内に移行することによってイネいもち病菌の感染を阻害できる性質をもつ化合物、あるいはイネ植物体内に移行することによってイネの病害抵抗性を増強してイネいもち病菌の発病を抑制できる性質をもつ化合物である請求項1に記載の方法。
- 水稲用の標準の育苗箱の1800cm2の面積あたりに有効成分の換算量として0.1〜20gの施用量に相当する容量で水希釈薬液が如露で均一に潅注される、または噴霧器で噴霧散布される請求項1に記載の方法。
- 標準の育苗箱の1800cm2の面積あたり20ml〜1000mlの容量で水希釈薬液を潅注または噴霧散布する請求項1に記載の方法。
- 水田移植後のイネいもち病を防除するのに有効である有効成分施用量において、請求項1に記載の化合物を有効成分とする水和剤または水性懸濁剤の水希釈薬液が育苗箱内で潅注または噴霧散布される請求項1に記載の方法。
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