JP6812808B2 - 被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法 - Google Patents

被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法 Download PDF

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Description

本発明は、被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法に関する。
農業従事者の高齢化に伴い、農作業の省力化を図ることが重要となっている。例えば水稲栽培では、育苗及び移植の手間を省くことを目的として、水稲の種子を直接田圃に播く直播法が普及しつつある。この際、水稲種子を含む各種の植物種子を栽培地に直播してしまうと、かかる種子が鳥に食べられてしまうという鳥害が発生する可能性が高まってしまう。そのため、特に水稲種子に対して、水稲種子を鉄粉で被覆することにより、水田における種子の浮遊及び流出、並びに、鳥害を防止するという試みが行われている(例えば、以下の特許文献1を参照。)。
一方、水田における種子の浮遊及び流出を抑制して苗立ちを改善するために、モリブデン化合物又はタングステン化合物を用いて種子を被覆する試みが行われている(例えば、以下の特許文献2を参照。)。
特開2012− 70728号公報 特開2012−239459号公報 特開2016−136861号公報
しかしながら、上記特許文献1で開示されているように水稲等の植物の種子を鉄粉により被覆した場合、鉄粉を構成する金属鉄が酸化により発熱してしまい、種子の発育を損ねる可能性が高いことが明らかとなった。したがって、酸化し得る鉄単体を極力低減し、発熱の少ない他の被覆材で被覆することが好ましい。鉄の酸化に起因する発熱による温度ダメージが少なくなることで発芽率が向上することが期待できる。
ここで、上記特許文献1で開示されているような鉄粉被覆の場合、発熱のダメージを低減するために、一旦薄く広げて自然放冷するなどの処理が行われており、処理が完了するまでに場所と時間を要することから、コストアップの要因にもなっている。
これに対し、上記特許文献2の実施例5では、鉄粉に石膏を添加した混合物で被覆した種子、及び、鉄粉にモリブデン化合物を添加した混合物で被覆した種子のそれぞれについて、被覆処理時の種子の表面温度が報告されている。具体的には、種子被覆時の鉄の酸化による発熱は、モリブデン化合物の添加によって5℃〜10℃程度抑制されることが報告されており、発熱を抑制することで、処理の場所と時間とを縮小している。
しかしながら、上記特許文献1に開示されている鉄粉、及び、上記特許文献2に開示されているモリブデン化合物及びタングステン化合物は、それぞれ比較的高価な被覆材であるため、鉄粉、モリブデン化合物、又は、タングステン化合物を主成分とする被覆材を用いると、資材コストが上昇してしまう
また、微細な粒子径の鉄粉は、水を加えると金属鉄が溶解及び水和して水酸化鉄となり、緻密な鉄さびを形成することで種子を被覆することができる。しかしながら、緻密であることにより鉄粉間の空隙がほとんどないために、かかる被覆物は、被覆物の内側に存在する種子に対して被覆物の外部から酸素や水が到達する際のバリアとなってしまう。その結果、種子の呼吸に必要な酸素の供給、及び、発芽時に必要な水の供給が不足することが懸念される。
一方、種子コーティング材について開示している上記特許文献3では、種子コーティング材としてスラグを用いる旨が開示されており、スラグの一例として、鉄鋼スラグ又は製鉄スラグが挙げられている。しかしながら、上記特許文献3において具体的な検証が行われているスラグは、下水汚泥等を溶融後冷却して得られるスラグ(下水汚泥溶融スラグ)のみであり、鉄鋼スラグ又は製鉄スラグについては、具体的な検証は行われていない。
また、上記特許文献3では、スラグを被覆するために、結合剤を用いている。本発明者らの検証によれば、下水汚泥スラグを粉状にしたものを用いて種子を被覆したとしても、下水汚泥溶融スラグ単独では固結する性質はなく、上記特許文献3に開示されているスラグを種子コーティング材として用いる場合には、石膏等の固結する性質を有する物質を結合剤として用いることが必要となる。上記特許文献1等に開示されている鉄粉は、酸化することで自身が固まるため、結合剤は必須の成分ではないが、上記特許文献3では、結合剤が必須となることから、資材コストの上昇が懸念される。
更には、上記特許文献3で用いられている下水汚泥溶融スラグでは、下水由来の有害重金属の混入の可能性があり、発芽した植物体へ有害重金属が吸収及び蓄積されることが懸念される。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、鳥害を抑制するとともに、更なる低コスト化を図りつつ効率良く種子を発育させることが可能な、被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、種子の発育を損ねない程度の金属鉄の含有量についての知見を得ることができ、本発明を完成するに至った。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、を少なくとも含有する製鋼スラグ、又は、高炉スラグの少なくとも何れか一方と、Fe単体と、水と、を混合して得られ、前記Fe単体(製鋼スラグ中のFe単体を除く。)の混合量が、固形分全体質量に対して0質量%超20質量%未満である混合物により、所定の種子を被覆し、前記製鋼スラグ、又は、前記高炉スラグの粒径を調整し、前記混合物により形成される被覆層の気孔率を、17〜50%とする、被覆種子の製造方法。
(2)前記混合物は、更に、Mo含有化合物を含み、前記Mo含有化合物の合計は、前記混合物の固形分全体質量に対して、0質量%超10質量%以下である、(1)に記載の被覆種子の製造方法。
(3)前記製鋼スラグは、25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、1質量%以上20質量%以下のMgOと、1質量%以上25質量%以下のAlと、1質量%以上8質量%以下のMnと、0.1質量%以上5質量%以下のPと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項1又は2に記載の被覆種子の製造方法。
(4)前記製鋼スラグは、脱リンスラグもしくは脱炭スラグの少なくとも何れか一方である転炉製鋼スラグ、又は、電気炉製鋼スラグの何れか又は双方である、(1)〜(3)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(5)前記高炉スラグは、35質量%以上45質量%以下のCaOと、25質量%以上40質量%以下のSiOと、2質量%以上15質量%以下のMgOと、8質量%以上20質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、(1)〜(4)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(6)前記製鋼スラグは、孔径180μmの篩を通過する製鋼スラグである、(1)〜(5)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(7)前記製鋼スラグは、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグである、(1)〜(6)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(8)前記高炉スラグは、孔径75μmの篩を通過する高炉スラグである、(1)〜(7)の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
(9)前記高炉スラグは、高炉水砕スラグである、(1)〜(8)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(10)前記混合物は、更に、石炭灰、石膏、及び、セメントからなる群より選択される少なくとも1種を含む、(1)〜(9)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(11)前記石炭灰は、1質量%以上10質量%以下のCaOと、40質量%以上75質量%以下のSiOと、2質量%以上20質量%以下のFeと、15質量%以上35質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、(10)に記載の被覆種子の製造方法。
(12)前記石炭灰は、孔径75μmの篩を通過する石炭灰である、(10)又は(11)に記載の被覆種子の製造方法。
(13)前記混合物における前記石炭灰の含有量は、前記混合物の固形分全体質量に対して、0質量%以上20質量%以下である、(10)〜(12)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(14)前記混合物における前記水の割合は、前記混合物の全体質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、(1)〜(13)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(15)前記水は、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、(1)〜(14)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(16)前記種子は、湛水された状態で栽培される植物の種子、又は、湛水しない状態で栽培される植物の種子である、(1)〜(15)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(17)前記湛水された状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、(16)に記載の被覆種子の製造方法。
(18)前記イネ科植物の種子は、水稲種子である、(17)に記載の被覆種子の製造方法。
(19)前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、(16)に記載の被覆種子の製造方法。
(20)前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、マメ科植物、タデ科植物、食用草本植物、又は、有用植物の種子である、(16)に記載の被覆種子の製造方法。
(21)前記イネ科植物の種子は、陸稲種子、トウモロコシ種子、又は、麦種子である、(19)に記載の被覆種子の製造方法。
(22)前記マメ科植物の種子は、ダイズ種子、又は、アズキ種子であり、前記タデ科植物の種子は、ソバ種子であり、前記食用草本植物の種子は、ニンジン種子、トマト種子、又は、甜菜種子であり、前記有用植物の種子は、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、又は、花木種子である、(20)に記載の被覆種子の製造方法。
(23)前記混合物の被覆された前記種子の表面に、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れかを付着させる、(1)〜(22)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(24)前記混合物の被覆された前記種子の表面に対して、アルギン酸化合物を浸透させる、(1)〜(23)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(25)前記種子は、でんぷんで被覆された種子である、(1)〜(24)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(26)(1)〜(25)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法で製造された被覆種子を、当該被覆種子を栽培するための栽培地に対して直播する、被覆種子の播種方法。

以上説明したように本発明によれば、鳥害を抑制するとともに、更なる低コスト化を図りつつ効率良く種子を発育させることが可能となる。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(被覆種子の構造について)
まず、本発明の実施形態に係る被覆種子の製造方法で製造される被覆種子の構造について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子は、製鋼スラグ、又は、高炉スラグの少なくとも何れか一方を含み、所定の種子の表面を被覆する被覆層を有している。この被覆層には、製鋼スラグ又は高炉スラグが含有している酸化鉄に加えて、製鋼スラグが含有しうるFe単体、又は、製鋼スラグや高炉スラグとは別に添加されるFe単体、に由来する酸化鉄が存在しうる。
<被覆層の表面に付着しうる成分について>
本実施形態に係る被覆層の表面には、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着していてもよい。被覆層の表面に付着したこれらの薬剤により、被覆種子が播種される土壌や被覆種子そのものに対して、該当する薬剤の薬効が実現される。
ここで、被覆層の表面に付着しうる除菌剤は、チラウム、イソチアニル、フラメトピル、エタボキサム、2−[(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]−α−メトキシ−N−メチル−ベンゼンアセトアミド、ベノミル、オキソリニック酸、プロベナゾール、チアジニル、ピロキロン及びジクロシメットからなる群より選択される1つ以上であってもよい。
また、被覆層の表面に付着しうる除虫剤は、クロチアニジン、ニテンピラム、ベンスルタップ、チアメトキサム、ジノテフラン、ピメトロジン、スルホキサフロル、ベンフラカルブ、カルボスルファン及びカルタップ塩酸塩からなる群より選択される1つ以上であってもよい。
また、被覆層の表面に付着しうる除草剤は、グリホサート、グルホシネート等のアミノ酸系化合物、エスプロカルブ、ピリブチカルブ、ベンチオカーブ、モリネート等のカーバメート系化合物、エトベンザニド、カフェンストロール、テニルクロール、ブタクロール、プレチラクロール、ブロモブチド、メフェナセット等の酸アミド系化合物、トリフルラリン等のジニトロアニリン系化合物、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、エトキシスルフロン、シクロスルファムロン、ハロスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、フルセトスルフロン、プロピリスルフロン、ベンスルフロンメチル、チフェンスルフロンメチル等のスルホニルウレア系化合物、ピリミスルファン等のスルホンアニリド系化合物、ベンタゾン等のダイアジン系化合物、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ピラクロニル、ピラゾキシフェン、ピラゾレート、ピラフルフェンエチル、ベンゾフェナップ等のダイアゾール系化合物、ジメタメトリン、シメトリン、プロメトリン等のトリアジン系化合物、テフリルトリオン、メソトリオン等のトリケトン系化合物、クミルロン、ダイムロン等の尿素系化合物、ジクワット、パラコート等のビピリジウム系化合物、ビスピリバックナトリウム塩、ピリミノバックメチル、ペノキススラム等のピリミジルオキシ安息香酸系化合物、2,4−D、MCPA、キザロホップ、クロメプロップ、シハロホップ、シハロホップブチル、ハロキシホップ、クロジナホップ等のフェノキシ酸系化合物、イソキサフルトール等のイソキサゾール系化合物、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物、ブタミホス等の有機リン系化合物、ジカンバ等の芳香族カルボン酸系化合物、インダノファン、オキサジクロメホン、カルフェントラゾンエチル、キノクラミン、ピリフタリド、フェントラザミド、ベンゾビシクロン、ペントキサゾン、及び、ベンフレセートからなる群より選択される1つ以上であってもよい。
上記の除菌剤、除虫剤、除草剤の化合物は、いずれも公知の化合物であり、市販の製剤を利用することも可能であるし、公知の製造方法により製造することも可能である。
なお、本実施形態において、上記の薬剤は、通常、有効成分と不活性担体とを混合し、必要に応じて界面活性剤やその他の製剤用補助剤を添加して、粉剤、フロアブル剤、水和剤、顆粒水和剤、水溶剤、顆粒水溶剤等に製剤化されているものを用いることが好ましい。また、有効成分の溶出が制御された製剤を用いてもよい。
製剤化の際に用いられる不活性担体としては、固体担体、液体担体が挙げられる。
固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化ケイ素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物、並びに、合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−66等のナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−プロピレン共重合体等)が挙げられる。
また、液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノキシエタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、炭酸プロピレン及び植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤、着色剤及び安定剤等、具体的にはカゼイン、ゼラチン、糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)等が挙げられる。
なお、これら除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れかは、その一部が被覆層の内部に存在していてもよい。また、これら除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れかは、被覆層に含有されていてもよい。
以上説明したような構造を有する本実施形態に係る被覆種子は、以下で詳述するように、従来の鉄粉を用いた種子被覆物と比較して、気孔率が高く、かつ、透水性、保水性及び空気透過性に優れており、植物の発芽及び生育にきわめて有利である。
<被覆層の気孔率について>
本実施形態に係る被覆種子が有する被覆層の気孔率は、17〜50%とすることが好ましい。かかる被覆層の気孔率は、被覆層に含有される各種スラグの粒径を調整することで、所望の値に制御することが可能であり、気孔率の具体的な値は、種子の適正に応じて適宜調整すればよい。酸素供給性や保水性を好適に維持するためには、被覆層の気孔率は、好ましくは20〜40%であり、更に好ましくは20〜30%である。
なお、被覆層の気孔率は、以下のようにして測定することが可能である。
まず、被覆層を有する種子を各種の樹脂に埋め込み、公知の方法により研磨することで、測定サンプルを準備する。次に、得られた測定サンプルにおける被覆層の断面を、所定の倍率に設定された光学顕微鏡により観察し、視野中の種子被覆物の面積に占める気孔の面積を算出して、気孔率とする。なお、観察は複数の視野(例えば、5視野程度)で実施し、各視野において得られた気孔率の複数視野間での平均値を求め、被覆層の気孔率とする。
(種子について)
続いて、本実施形態に係る被覆種子の製造方法に用いられる種子について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子の製造方法に用いられる種子としては、湛水された状態で栽培される植物の種子、又は、湛水しない状態で栽培される植物の種子を用いることが可能である。ここで、「湛水された状態で栽培される種子」とは、土壌の表面が水中に没した状態で栽培される種子を意味し、「湛水しない状態で栽培される種子」とは、湛水されて土壌の表面が水中に没することがない状態で栽培される種子を意味する。
上記2種類の種子のうち、湛水された状態で栽培される植物の種子としては、例えば、イネ科植物の種子等を挙げることができる。このようなイネ科植物の種子は、湛水された状態で栽培されるものであれば特に限定されるものではなく、公知の任意のイネ科植物の種子を用いることが可能である。このような湛水された状態で栽培されるイネ科植物の種子のうち代表的なものとして、例えば、水稲種子を挙げることができる。
また、上記2種類の種子のうち、湛水しない状態で栽培される植物の種子としては、例えば、イネ科植物の種子、マメ科植物の種子、タデ科植物の種子、食用草木植物の種子、及び、有用植物の種子等を挙げることができる。
上記のようなイネ科植物の種子は、湛水しない陸地で栽培されるものであれば特に限定されるものではなく、公知の任意のイネ科植物の種子を用いることが可能である。このような湛水しない陸地で栽培されるイネ科植物の種子のうち代表的なものとして、例えば、陸稲種子、トウモロコシ種子、麦種子等を挙げることができる。
上記のようなマメ科植物の種子は、湛水しない陸地で栽培されるものであれば特に限定されるものではなく、公知の任意のマメ科植物の種子を用いることが可能である。このような湛水しない陸地で栽培されるマメ科植物の種子のうち代表的なものとして、例えば、ダイズ種子、アズキ種子等を挙げることができる。
上記のようなタデ科植物の種子は、湛水しない陸地で栽培されるものであれば特に限定されるものではなく、公知の任意のタデ科植物の種子を用いることが可能である。このような湛水しない陸地で栽培されるタデ科植物の種子のうち代表的なものとして、例えば、ソバ種子等を挙げることができる。
上記のような食用草本植物の種子は、湛水しない陸地で栽培される食用の草木植物(いわゆる野菜)の種子であれば特に限定されるものではなく、公知の食用草木植物の種子を用いることが可能である。このような湛水しない陸地で栽培される食用草木植物の種子のうち代表的なものとして、例えば、ニンジン種子、トマト種子、甜菜種子等を挙げることができる。
上記のような有用植物の種子は、湛水しない陸地で栽培されるものであれば特に限定されるものではなく、公知の有用植物の種子を用いることが可能である。このような湛水しない陸地で栽培される有用植物の種子のうち代表的なものとして、例えば、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、花木種子等を挙げることができる。このうち、緑肥用植物とは、栽培された植物を収穫せずにそのまま土壌にすきこみ、後から栽培する作物の肥料とするための植物をいう。このような緑肥用植物として、例えば、ソルガム等を挙げることができる。
なお、以上説明したような各種種子の表面には、剛毛が存在している場合がある。種子の表面に剛毛が存在している場合、以下で詳述するような被覆層と種子との間の密着性が弱くなるという現象が生じる可能性がある。このような現象が生じる可能性を抑制するために、上記のような各種種子をでんぷん水溶液に浸漬させることで、種子の表面をでんぷんで被覆してもよい。これにより、後述する被覆層と種子との間の密着性を向上させることが可能となる。なお、上記のような各種種子を浸漬させるでんぷん水溶液の濃度(すなわち、水溶液の全体質量に対するでんぷんの質量割合)については、特に規定するものではないが、例えば、40質量%〜80質量%とすることが好ましい。かかる濃度のでんぷん水溶液に上記のような各種種子を浸漬させることで、より確実に、被覆層と種子との間の密着性を向上させることが可能となる。
以上、本実施形態に係る被覆種子の製造方法で使用可能な種子について、簡単に説明した。
(被覆種子の製造方法について)
続いて、以上説明したような製鋼スラグ又は高炉スラグの少なくとも何れか一方を用いて、本実施形態に係る被覆種子を製造する方法について、詳細に説明する。
本実施形態に係る被覆種子の製造方法では、以下で詳述するような製鋼スラグ又は高炉スラグの少なくとも何れか一方と、Fe単体と、水と、を混合して得られ、Fe単体の含有量が、固形分全体質量に対して0質量%超20質量%未満である混合物を準備し、かかる混合物により、上記のような各種の植物種子を被覆する。これにより、上記のような各種の植物種子の表面に、製鋼スラグ又は高炉スラグの少なくとも何れか一方を含む被覆層が形成される。
<種子の被覆に用いられる混合物について>
以下では、まず、上記のような被覆層を形成するための混合物(以下、単に、「被覆層形成用の混合物」、又は、「混合物」ともいう。)に含有される各成分について、詳細に説明する。
上記のような種子の表面の被覆に用いられる混合物は、所定の成分を有する製鋼スラグ、又は、高炉スラグの少なくとも何れか一方と、Fe単体と、を含有する。以下、かかる被覆層形成用の混合物に含有されうる製鋼スラグ及び高炉スラグについて、詳細に説明する。
本実施形態に係る被覆種子の製造方法で用いられる、被覆層形成用の混合物は、その主成分を、鉄粉ではなく、製鋼スラグ、又は、高炉スラグの少なくとも何れかとする。これにより、本実施形態に係る被覆種子の被覆層では、Fe単体としての鉄の含有量が少なくなるため、被覆処理時の鉄酸化の発熱による種子温度の上昇を、鉄粉被覆並びに鉄粉及び石膏の混合物による被覆と比較して、より大きく抑制することが可能となる。
なお、スラグは、発熱の問題はないが、相対的に固化速度が遅い。その結果、鉄粉系被覆の冷却時間と、スラグ被覆の固化時間とを比較して、処理時間に大差は無い。スラグの固化は、温度が高いほど早いことが知られており、本発明者は、この際に鉄の発熱を利用すれば、処理時間を短縮できることを知見した。
[製鋼スラグについて]
鉄鋼製造プロセスで副生する製鋼スラグは、その成分が分析及び管理されており、Ca、Si、Mg、Mn、Fe、Pなどの様々な肥料有効元素を含んでいるため、従来、肥料原料として用いられている。我が国では、製鋼スラグを原料とする肥料として、肥料取締り法により定められた、鉱さいケイ酸質肥料、鉱さいリン酸肥料、副産石灰肥料、特殊肥料(含鉄物)の各規格に属する肥料がある。また、我が国だけで年間1000万トン程度の製鋼スラグが生成されるため、製鋼スラグは安価に入手可能であって、資材コストを抑制することができる。そのため、かかる製鋼スラグを用いて水稲種子を被覆することが行われている。本実施形態に係る被覆種子においても、上記のような各種の種子の表面を被覆する混合物の主成分として、製鋼スラグを用いることができる。
製鋼スラグには、Fe単体も含まれるが、殆ど発熱性はない。従って、上記特許文献1のような鉄粉による種子被覆で懸念される、鉄の酸化による発熱による種子へのダメージについては、ほとんど考慮しなくともよい。そして、製鋼スラグ中のFe単体は、本発明における被覆層形成用の混合物に含まれるFe単体として考慮しない。また、製鋼スラグは、固結する性質を有している。製鋼スラグ粒子間の空隙率は、固結した状態であっても、固結した鉄粉粒子間の空隙率よりもはるかに大きい。固結した状態での空隙率が大きいことから、製鋼スラグで被覆した種子では、鉄粉で被覆した種子と比較して、種子の発芽や生育に必要な酸素や水が、被覆層の外側から被覆層の内側の種子へとより容易に到達することが可能となる。
また、本実施形態で着目している湛水しない状態で栽培される植物の種子についても、製鋼スラグによる種子被覆は適用可能である。種子の発芽に関して、湛水しない状態で発芽させる直播種子の場合、水が被覆層の内部に浸潤し、被覆層自体が保水力を有することが、重要である。製鋼スラグによる被覆では、製鋼スラグ粒子間の空隙率が大きく、鉄粉被覆と比べて保水力が高いことから、湛水しない条件で栽培される種子の発芽にも適している。従って、上記特許文献1で開示されているような鉄粉による被覆が、湛水された状態で栽培される稲種子(すなわち、水稲種子)に主に限定されるのに対し、製鋼スラグによる被覆は、湛水しない状態で栽培されるあらゆる植物の種子の直播に関しても、適用可能である。
●所定の成分を含有する製鋼スラグについて
本実施形態に係る被覆層形成用の混合物の主成分として用いられる製鋼スラグは、25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、を少なくとも含有するものである。また、製鋼スラグは、上記CaO及びSiOに加えて、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPからなる群から選択される少なくとも1種を更に含有していてもよい。
◇CaO:25質量%〜50質量%
まず、Caについて説明する。
製鋼スラグは、水に接すると、Caと後述するSiやAlとが溶出して化学結合することにより、水硬性を示す。本発明は、この水硬性を利用して、製鋼スラグを各種種子に付着及び固結させて、各種種子を被覆するものである。従って、本発明において、Caは、重要な元素である。また、Caは、植物に必須な肥料元素でもある。肥料や製鋼スラグでCaの含有量を表記する際には、酸化物のCaOに換算して含有量が表記されるため、以下、CaOとしてCaの含有量を表わす。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのCaOの含有量が25質量%未満である場合には、水硬性を発現するのに十分な量のCaを溶出できない可能性がある。一方、CaO含有量が50質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鋼プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのCaOの含有量は、25質量%以上50質量%以下とする。製鋼スラグのCaOの含有量は、好ましくは、38質量%以上50質量%以下である。
なお、CaOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇SiO:8質量%〜30質量%
続いて、Siについて説明する。
Siは、CaやAlと共に、製鋼スラグの水硬性に寄与する元素である。従って、本発明において、Siも重要な元素である。また、Siは、植物の必須要素ではないものの、特に陸稲等の稲種子にとって、非常に重要な肥料効果元素である。稲の植物体の乾燥重量の約5%をケイ酸(SiO)が占める。肥料や製鋼スラグでは、Siの含有量を表記する際には、酸化物のSiOに換算して含有量が表記されるため、以下、SiOとしてSiの含有量を表わす。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのSiOの含有量が8質量%未満である場合には、水硬性を発現するのに十分な量のSiを溶出できない可能性がある。一方、SiOの含有量が30質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鋼プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのSiOの含有量は、8質量%以上30質量%以下とする。製鋼スラグのSiOの含有量は、好ましくは、12質量%以上25質量%以下である。
なお、SiOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇MgO:1質量%〜20質量%
一般に、製鋼スラグのMgO含有量は、CaO含有量よりかなり低い値となる。これは、製鋼スラグが溶銑に主に石灰を加えて発生するスラグであることに起因する。製鋼スラグに含まれるMgは、主に転炉の炉壁の耐火レンガから溶出するMgに起因する。Mgは、Ca、Si、Alと共に、製鋼スラグの水硬性に関わる元素である。ただし、製鋼スラグに含まれるCaO含有量とMgO含有量との違いなど、Mgの水硬性への寄与はCaと比較すると小さい。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグはCaOを25質量%以上含有することから、水硬性は、製鋼スラグに含有されるCaOにより基本的にはまかなうことができると考えられる。ただし、MgOが更に存在することで、水硬性をより良く発現することが期待できる。肥料や製鋼スラグでは、Mgの含有量を表記する際には、酸化物のMgOに換算して含有量が表記されるため、以下、MgOとしてMgの含有量を表わす。
ここで、MgOの含有量が1質量%未満である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは発生しない。一方、転炉の耐火物補修において発生する製鋼スラグでは、MgO含有量が20質量%に近いものが発生する。ただし、MgO含有量が20質量%超過である製鋼スラグは、発生しない。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのMgOの含有量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグのMgOの含有量は、より好ましくは、3質量%以上10質量%以下である。
なお、MgOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇Al:1質量%〜25質量%
続いて、Alについて説明する。
Alは、CaやSiと共に、製鋼スラグの水硬性に重要な元素である。肥料や製鋼スラグでは、Alの含有量を表記する際には、酸化物のAlに換算して含有量が表記されるため、以下、AlとしてAlの含有量を表わす。
Alの含有量が1質量%未満となる製鋼スラグ、及び、Alの含有量が25質量%超過となる製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。また、製鋼スラグのAlの含有量が1質量%以上であれば、Alは、CaやSiと共に水硬性を示すことができる。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いる製鋼スラグのAlの含有量は、1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。ただし、より水硬性を高めて固結を促進したい場合には、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのAlの含有量を、10質量%以上25質量%以下とすることがより好ましい。
なお、Alの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇Mn:1質量%〜8質量%
次に、Mnについて説明する。
Mnは、植物に対して肥料効果がある元素である。Mnの含有量が1質量%未満である製鋼スラグ、及び、Mnの含有量が8質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのMnの含有量は、1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
なお、Mnの含有量は、例えば、蛍光X線分析法で測定可能である。
◇P:0.1質量%〜5質量%
次に、Pについて説明する。
Pは、植物の必須要素である。肥料や製鋼スラグでは、Pの含有量を表記する際には、酸化物のPに換算して含有量が表記されるため、本実施形態において各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグに関しても、Pとして含有量を表わす。Pは、根の生長点に作用し、根の生長に効果がある元素である。Pが不足すると、根の生長が抑制される。ただし、Pの含有量が0.1質量%未満である製鋼スラグ、及び、Pの含有量が5質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのPの含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
なお、Pの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
かかる製鋼スラグは、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下であるため、pH11程度のアルカリ性を示す。そのため、かかる製鋼スラグを含む被覆層を有する種子を鳥獣類が口に含んだ場合、製鋼スラグが示すアルカリ性のために、鳥獣類は、種子を嚥下することなく吐き出してしまう。その結果、鳥獣類による食害を抑制することが可能となる。
また、かかる製鋼スラグで被覆された種子は、製鋼スラグがアルカリ性を示すにも関わらず、発芽する。アルカリ性にも関わらず種子が発芽する理由として、鉄イオンをキレート可能な酸性物質が根から分泌され、種子を被覆していた製鋼スラグに起因するアルカリが中和されることにより、正常な発芽が可能になっているものと考えられる。また、このような酸性物質の分泌により、製鋼スラグに含まれる鉄が鉄イオンとしてキレートされ、幼根から吸収しやすくなることが考えられる。
●脱リンスラグ、脱炭スラグについて
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグとしては、上記のような所定の成分を含有する製鋼スラグの他に、高炉及び転炉を用いた製鉄プロセスから副生される転炉製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、又は、脱炭スラグ等を用いることも可能である。脱リンスラグとは、溶銑に含まれるリンを除くために、溶銑に脱リン剤として石灰及び酸化鉄等を加えた上で酸素等のガスを吹き込むことにより副生される、リンを含むスラグであり、製鋼スラグの一種である。また、脱炭スラグは、溶銑に含まれる炭素を除いて鋼とするために、溶銑に酸素を吹き込むことにより副生されるスラグであり、製鋼スラグの一種である。
上記のような脱リンスラグ及び脱炭スラグについても、上記の所定量の成分を含有する製鋼スラグと同様の成分を含有しているが、その含有量は、上記製鋼スラグにおける諸成分の含有量とは異なる場合がある。しかしながら、脱リンスラグや脱炭スラグであれば、上記の所定量の成分を含有する製鋼スラグとは異なる含有量の成分が存在していたとしても、本実施形態において各種種子を被覆するための製鋼スラグとして利用することが可能である。
●電気炉製鋼スラグについて
電気炉製鋼スラグは、高炉及び転炉を用いた製鉄プロセスではなく、電気炉を用いた製鉄プロセスで副生する製鋼スラグである。かかる電気炉製鋼スラグも、製鋼スラグの一種である。一般的な電気炉製鋼スラグは、15質量%以上60質量%以下のCaOと、10質量%以上20質量%以下のSiOと、2質量%以上10質量%以下のMgOと、3質量%以上20質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有していることが多い。電気炉製鋼スラグであれば、上記の所定量の成分を含有する製鋼スラグとは異なる含有量の成分が存在していたとしても、本実施形態において各種種子を被覆するための製鋼スラグとして利用することが可能である。かかる電気炉製鋼スラグを被覆層形成用の混合物に含有させることで、電気炉製鋼スラグが結合材として機能し、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
本実施形態に係る被覆層形成用の混合物では、上記のような脱リンスラグ又は脱炭スラグの少なくとも何れか一方である転炉製鋼スラグと、上記のような電気炉製鋼スラグと、を単独で使用することも可能であるし、必要に応じて組み合わせて使用することも可能である。
●製鋼スラグにおける各成分の含有量の測定方法
先だって説明したように、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる各種製鋼スラグにおける各成分の含有量は、蛍光X線分析法により測定することが可能である。より詳細には、着目する成分について、含有量が既知である標準サンプルを利用して、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を予め測定することで、検量線を作成しておく。含有量が未知のサンプルについては、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を測定し、予め作成しておいた検量線を用いることで、着目する成分の含有量を特定することができる。
着目する蛍光X線のピークについては、特に限定するものではないが、例えば、Ca、Si、Mg、Al、Fe、Mn、Pの蛍光X線ピークに着目すればよい。
なお、各種製鋼スラグにおける各成分の含有量の測定方法は、上記のような蛍光X線分析法に限定されるものではなく、その他の公知の分析手法を適宜利用することが可能である。
●製鋼スラグの粒径について
本実施形態では、上記のような製鋼スラグを、粉砕等により所定の粒径に調整したものを、そのままで各種種子の被覆に用いることが可能である。これらの製鋼スラグの粉砕には、例えば、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ロールミル、ローラーミルなどの公知の手段を用いることができる。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグの粒径は、粒径が細かい方が固化しやすいことから、粒径を所定の値以下まで細かくすることが好ましい。本発明者が検討を行った結果、粒径を600μm未満に調整した製鋼スラグは、各種種子への付着性が上がる傾向があり、効果が高いことが明らかとなった。従って、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物の主成分として用いられる製鋼スラグの粒径は、全て600μm未満とすることが好ましい。例えば、孔径600μmの篩を用いて製鋼スラグをふるい分けし、かかる篩の目を通過した製鋼スラグの粒径は、600μm未満である。より細かな粒径の製鋼スラグの方が各種種子への付着性を上げるためには好ましいが、粉砕・分級にはコストや時間を要するため、過度の微細化は不要である。
被覆層形成用の混合物に用いられる製鋼スラグの粒径は、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しないものであることが好ましい。換言すれば、被覆層形成用の混合物に用いられる製鋼スラグの粒径は、22μm以上180μm未満であることが好ましい。
孔径180μmの篩を通過できない製鋼スラグの場合、各種の植物種子のうち、小さなサイズの種子への付着性が悪くなるため、種子を被覆しづらくなる可能性がある。一方、孔径22μmの篩を通過するような製鋼スラグは、種子への付着性が高くなるものの、種子被覆の際に粉塵となって作業者の呼吸器に吸い込まれる等のリスクが高まることから、防塵対策によりコストを要するようになることが懸念される。また、製鋼スラグ粒子間の空隙率が小さくなって鉄粉被覆の場合と同様に緻密となり、酸素や水の透過が抑制されることが懸念される。従って、種子被覆に用いる製鋼スラグの粒径は、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しないことが好ましい。
なお、被覆層を構成する製鋼スラグの粒径を事後的に測定する際には、被覆層を有する被覆種子から被覆層を剥離した上で、剥離した被覆層を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等の公知の測定機器により測定すればよい。
[高炉スラグについて]
天然物である鉄鉱石、石炭及び石灰石を原料として用いる高炉を利用した鉄鋼製造プロセスでは、スラグと呼ばれる副生成物が発生する。副生するスラグは、高炉における製銑プロセスで副生する高炉スラグと、製鋼プロセスで副生する製鋼スラグと、に大別される。製鋼プロセスで副生する製鋼スラグは、pH11〜12程度の強アルカリ性を示すが、製銑プロセスで副生する高炉スラグは、pH10程度であり、製鋼スラグよりアルカリ性が弱い。また、製鋼スラグ及び高炉スラグは、固まる速度に違いはあるものの、共に固結性を示す物質である。
鉄鋼製造プロセスで副生する高炉スラグは、製鋼スラグと同様にその成分が分析及び管理されており、Ca、Si、Mg、Mn、Feなどの様々な肥料有効元素を含んでいる。そのため、従来肥料原料として用いられている製鋼スラグと同様に、高炉スラグを肥料原料として用いることが可能である。また、製鋼スラグと同様に、我が国だけで年間にきわめて大量の高炉スラグが生成されるため、高炉スラグは安価に入手可能であって、資材コストを抑制することができる。
高炉スラグは、鉄分をほとんど含有しない。従って、上記特許文献1のような鉄粉による種子被覆で懸念される、鉄の酸化による発熱による種子へのダメージについては、考慮しなくともよい。また、高炉スラグは、先だって言及したように、固結する性質を有している。高炉スラグ粒子間の空隙率は、固結した状態であっても、固結した鉄粉粒子間の空隙率よりもはるかに大きい。固結した状態での空隙率が大きいことから、高炉スラグで被覆した種子では、鉄粉で被覆した種子と比較して、種子の発芽や生育に必要な酸素や水が、被覆層の外側から被覆層の内側の種子へとより容易に到達することが可能となる。従って、湛水した状態で栽培される植物の種子に対して、高炉スラグによる種子被覆を好適に適用することが可能である。
また、湛水しない状態で栽培される植物の種子についても、高炉スラグによる種子被覆は適用可能である。種子の発芽に関して、湛水しない状態で発芽させる直播種子の場合、水が被覆層の内部に浸潤し、被覆層自体が保水力を有することが、重要である。高炉スラグによる被覆では、高炉スラグ粒子間の空隙率が大きく、鉄粉被覆と比べて保水力が高いことから、湛水しない条件で栽培される種子の発芽にも適している。従って、上記特許文献1で開示されているような鉄粉による被覆が、湛水された状態で栽培される稲種子(すなわち、水稲種子)に主に限定されるのに対し、高炉スラグによる被覆は、湛水しない状態で栽培されるあらゆる植物の種子の直播に関しても、適用可能である。
なお、上記のような各種の植物種子では、種子が暴露される環境のpHに敏感なものが存在し、例えばマメ科植物等は、周囲の環境のpHが高い場合(強いアルカリ性を示す場合)には、その生育に問題が発生する可能性が高くなる。そのため、pHがより低い高炉スラグを被覆層形成用の混合物の主成分として用いることで、製鋼スラグを用いる場合と比べて、種子へのアルカリ性の影響をより抑制することが可能となり、製鋼スラグと比較してより多くの植物種子を被覆することが可能となる。
また、かかる高炉スラグは、pH10程度の弱アルカリ性を示すため、かかる高炉スラグを含む被覆層を有する種子を鳥獣類が口に含んだ場合、高炉スラグが示すアルカリ性のために、鳥獣類は、種子を嚥下することなく吐き出してしまう。その結果、鳥獣類による食害を抑制することが可能となる。
更に、かかる高炉スラグで被覆された種子は、高炉スラグが弱アルカリ性を示すにも関わらず、発芽する。弱アルカリ性にも関わらず種子が発芽する理由として、根から水素イオンや有機酸などの酸性物質が分泌され、種子を被覆していた高炉スラグに起因する弱アルカリが中和されることにより、正常な発芽が可能になっているものと考えられる。
●所定の成分を含有する高炉スラグについて
以上のような特徴を有する高炉スラグは、以下の成分を含有する高炉スラグであることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る被覆層の主成分である高炉スラグは、35質量%以上45質量%以下のCaOと、25質量%以上40質量%以下のSiOと、2質量%以上15質量%以下のMgOと、8質量%以上20質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する高炉スラグであることが好ましい。
◇CaO:35質量%〜45質量%
まず、Caについて説明する。
高炉スラグは、水に接すると、Caと後述するSiやAlとが溶出して化学結合することにより、水硬性を示す。本発明は、この水硬性を利用して、高炉スラグを各種種子に付着及び固結させて、各種種子を被覆するものである。従って、本発明において、Caは、重要な元素である。また、Caは、植物に必須な肥料元素でもある。肥料や製鋼スラグにおいてCaの含有量を表記する際には、酸化物のCaOに換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではCaOとしてCaの含有量を表わすこととする。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグのCaOの含有量が35質量%未満である場合には、水硬性を発現するのに十分な量のCaを溶出できない可能性がある。一方、CaO含有量が45質量%超過である高炉スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製銑プロセスで生成するものであることが好ましい。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグのCaOの含有量は、35質量%以上45質量%以下とする。高炉スラグのCaOの含有量は、好ましくは、40質量%以上44質量%以下である。
なお、CaOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇SiO:25質量%〜40質量%
続いて、Siについて説明する。
Siは、CaやAlと共に、高炉スラグの水硬性に寄与する元素である。従って、本発明において、Siも重要な元素である。また、Siは、植物の必須要素ではないものの、特に陸稲等の稲種子にとって、非常に重要な肥料効果元素である。稲の植物体の乾燥重量の約5%をケイ酸(SiO)が占める。肥料や製鋼スラグでは、Siの含有量を表記する際には、酸化物のSiOに換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではSiOとしてSiの含有量を表わすこととする。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグのSiOの含有量が25質量%未満である場合には、水硬性を発現するのに十分な量のSiを溶出できない可能性がある。一方、SiOの含有量が40質量%超過である高炉スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製銑プロセスで生成するものであることが好ましい。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグのSiOの含有量は、25質量%以上40質量%以下とする。高炉スラグのSiOの含有量は、好ましくは、30質量%以上36質量%以下である。
なお、SiOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇MgO:2質量%〜15質量%
Mgは、Ca、Si、Alと共に、高炉スラグの水硬性に関わる元素である。ただし、高炉スラグに含まれるCaO含有量とMgO含有量との違いなど、Mgの水硬性への寄与はCaと比較すると小さい。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグはCaOを35質量%以上含有することから、水硬性は、高炉スラグに含有されるCaOにより基本的にはまかなうことができると考えられる。ただし、MgOが更に存在することで、水硬性をより良く発現することが期待できる。肥料や製鋼スラグでは、Mgの含有量を表記する際には、酸化物のMgOに換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではMgOとしてMgの含有量を表わすこととする。
ここで、MgOの含有量が2質量%未満である高炉スラグ、及び、MgO含有量が15質量%を超える高炉スラグは、通常の製銑プロセスでは発生しない。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製銑プロセスで生成するものであることが好ましい。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグのMgOの含有量は、2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。高炉スラグのMgOの含有量は、より好ましくは、3質量%以上10質量%以下である。
なお、MgOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
◇Al:8質量%〜20質量%
続いて、Alについて説明する。
Alは、CaやSiと共に、高炉スラグの水硬性に重要な元素である。肥料や製鋼スラグでは、Alの含有量を表記する際には、酸化物のAlに換算して含有量が表記されるため、高炉スラグについても同様に、以下ではAlとしてAlの含有量を表わすこととする。
Alの含有量が8質量%未満となる高炉スラグ、及び、Alの含有量が20質量%超過となる高炉スラグは、通常の製銑プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製銑プロセスで生成するものであることが好ましい。また、高炉スラグのAlの含有量が8質量%以上であれば、Alは、CaやSiと共に水硬性を示すことができる。従って、本実施形態において、各種種子の被覆に用いる高炉スラグのAlの含有量は、1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。ただし、より水硬性を高めて固結を促進したい場合には、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグのAlの含有量を、10質量%以上25質量%以下とすることがより好ましい。
なお、Alの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
●高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグについて
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグとしては、上記のような所定の成分を含有する高炉スラグの他に、鉄鋼製造プロセスから副生される高炉スラグの一種である、高炉徐冷スラグ、又は、高炉水砕スラグを用いることも可能である。鉄鋼製造プロセスから副生される高炉スラグには、製造方法の違いに起因して成分は同じであるが化学的性質の異なる、高炉徐冷スラグと高炉水砕スラグとが存在する。これら2種類のスラグは、高炉スラグの一種である。
上記のような高炉徐冷スラグ及び高炉水砕スラグについても、上記の所定量の成分を含有する高炉スラグと同様の成分を含有しているが、その含有量は、上記高炉スラグにおける諸成分の含有量とは異なる場合がある。しかしながら、高炉徐冷スラグや高炉水砕スラグであれば、上記の所定量の成分を含有する高炉スラグとは異なる含有量の成分が存在していたとしても、本実施形態において各種種子を被覆するための高炉スラグとして利用することが可能である。
ここで、各スラグが有している固結性という観点では、高炉徐冷スラグと比較して、高炉水砕スラグの方が高い固結性を有している。そのため、本実施形態において各種種子を被覆するための高炉スラグとしては、高炉水砕スラグを用いることがより好ましい。
また、アルカリ刺激材として機能する製鋼スラグを高炉水砕スラグに混合することで、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物の固結速度をより一層速めるとともに、被覆層をより安定に固結させることが可能となる。この際、高炉水砕スラグに混合する製鋼スラグの量は、特に規定するものではないが、例えば、高炉水砕スラグの全体質量に対して、1質量%〜20質量%程度とすることが好ましい。また、高炉水砕スラグに混合する製鋼スラグは、特に規定するものではなく、脱リンスラグや脱炭スラグを含む、転炉製鋼プロセスにより副生される公知の製鋼スラグを用いることが可能である。
●高炉スラグにおける各成分の含有量の測定方法
先だって説明したように、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる各種高炉スラグにおける各成分の含有量は、蛍光X線分析法により測定することが可能である。より詳細には、着目する成分について、含有量が既知である標準サンプルを利用して、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を予め測定することで、検量線を作成しておく。含有量が未知のサンプルについては、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を測定し、予め作成しておいた検量線を用いることで、着目する成分の含有量を特定することができる。
着目する蛍光X線のピークについては、特に限定するものではないが、例えば、Ca、Si、Mg、Al等の蛍光X線ピークに着目すればよい。
なお、各種高炉スラグにおける各成分の含有量の測定方法は、上記のような蛍光X線分析法に限定されるものではなく、その他の公知の分析手法を適宜利用することが可能である。
●高炉スラグの粒径について
本実施形態では、上記のような高炉スラグを、粉砕等により所定の粒径に調整したものを、そのままで各種種子の被覆に用いることが可能である。これらの高炉スラグの粉砕には、例えば、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ロールミル、ローラーミルなどの公知の手段を用いることができる。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる高炉スラグの粒径は、粒径が細かい方が固化しやすいことから、粒径を所定の値以下まで細かくすることが好ましい。本発明者が検討を行った結果、粒径を600μm未満に調整した高炉スラグは、各種種子への付着性が上がる傾向があり、効果が高いことが明らかとなった。従って、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物の主成分として用いられる高炉スラグの粒径は、全て600μm未満とすることが好ましい。例えば、孔径600μmの篩を用いて高炉スラグをふるい分けし、かかる篩の目を通過した高炉スラグの粒径は、600μm未満である。より細かな粒径の高炉スラグの方が各種種子への付着性を上げるためには好ましいが、粉砕・分級にはコストや時間を要する場合には、過度の微細化は必ずしも必要ではない。
また、本実施形態においては、被覆層形成用の混合物に用いられる高炉スラグの粒径は、孔径180μmの篩、より好ましくは孔径75μmの篩を通過するものであることが好ましい。
孔径180μmの篩を通過できない高炉スラグの場合、各種植物種子のうち小さなサイズの種子への付着性が悪くなるため、種子を被覆しづらくなる可能性がある。また、孔径75μmの篩を通過する高炉スラグ(以下、「高炉スラグ微粉末」ともいう。)を用いることで、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物の固結速度を速めることが可能となる。高炉スラグの粒径が細かくても、高炉スラグ粒子間の空隙率は十分確保されるため、鉄粉被覆のような緻密となることはなく、酸素や水の透過が抑制されることはない。従って、種子被覆に用いる高炉スラグの粒径は、固結性の観点からすれば、孔径180μmの篩を通過するものが好ましく、更には孔径75μmの篩を通過するものがより好ましい。
なお、被覆層を構成する高炉スラグの粒径を事後的に測定する際には、被覆層を有する被覆種子から被覆層を剥離した上で、剥離した被覆層を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等の公知の測定機器により測定すればよい。
[Fe単体の含有量について]
Feは、植物の必須要素ではないが、肥料取締り法で定められた特殊肥料に含鉄物があるように、鉄も植物に対して有効な元素である。本実施形態に係る被覆層形成用の混合物では、かかる混合物におけるFe単体の含有量を、混合物の固形分全体質量(換言すれば、製鋼スラグ及び/又は高炉スラグと、Fe単体と、の合計質量である。)に対して、0質量%超20質量%未満とする。
被覆層形成用の混合物におけるFe単体の含有量が20質量%以上の場合、被覆した種子に水を加えた時に起こるFeの酸化による発熱のために、種子の温度が上昇して発芽が阻害される可能性がある。鉄粉(すなわち、Fe単体)の含有量が多いほど被覆層の温度が上がることから、発芽に対してはFe単体の含有量が少ない方が好ましい。
この場合に、上記のような製鋼スラグや高炉スラグ等の各種スラグが、混合物から形成
される被覆層の主成分となる。本発明者が、スラグのみを用いる場合と、スラグに鉄粉(すなわち、Fe単体)を混合する場合と、を比較したところ、鉄粉を加えることで発熱はするものの、スラグが速く固化することを知見した。更に、本発明者は、20質量%以上の鉄粉(Fe単体)を含有させると、水分の乾燥が顕著となり、単純な被覆処理では被覆層の固結が不安定となることを知見した。かかる知見から、本発明者は、製鋼スラグや高炉スラグ等の各種スラグを用いて各種種子を被覆する際に、被覆層をより早く安定させるためには、所定量の鉄粉(すなわち、Fe単体)を、被覆層形成用の混合物に含有させることが有効であるとの知見を得るに至った。そのため、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物では、Fe単体の含有量を、混合物の固形分全体質量(換言すれば、製鋼スラグ及び/又は高炉スラグと、Fe単体と、の合計質量)に対して、0質量%超20質量%未満とする。
かかる知見をもとに本発明者が更なる検討を行った結果、鉄粉(Fe単体)を0質量%超5質量%以下含有させることで、鉄粉の酸化による発熱量が適切な状態となることで好ましい温度上昇が実現でき、被覆層形成用の混合物をより早く固結させることが可能となることが明らかとなった。従って、被覆層形成用の混合物におけるFe単体の含有量は、0質量%超5質量%以下であることが、より好ましい。
鉄粉を主成分とする被覆層を形成した場合、被覆処理時、鉄粉から溶出した二価鉄イオンが酸化されて三価鉄イオンとなり、更に水酸化鉄を形成する過程で、被覆層の近傍が酸性化される。一方で、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物の主成分である製鋼スラグ及び高炉スラグは、塩基性を示す。従って、本実施形態に係るスラグに鉄粉を混合した被覆層では、被覆層の近傍はスラグ単独や鉄粉単独に比べ中性化されている効能も得られる。
また、後述するように、被覆層形成用の混合物中にモリブデン(Mo)含有化合物を含有させることで、被覆処理時における鉄酸化の発熱による種子の表面温度上昇を抑制することが可能となる。そこで、被覆層形成用の混合物に対してMo含有化合物を更に含有させることで、鉄粉(Fe単体)による発熱を抑制して、より多くの鉄粉(Fe単体)を用いることが可能となる。これにより、Fe単体を20質量%近傍まで混合させたとしても、種子の表面温度上昇には影響を与えない一方で、被覆層形成用の混合物の固結には好ましい程度まで、被覆層の温度上昇を実現することが可能となる。なお、かかるMo含有化合物の含有量等については、以下で詳述する。
なお、Feの含有量は、例えば、蛍光X線分析法や化学分析により測定可能である。
[被覆層形成用の混合物に含有されるその他の成分について]
◇Mo含有化合物について
Moは、植物に必要な微量要素の一つであり、発芽後の幼植物の生長と苗立ちを促す効果も期待できる。また、Moは、先だって説明したように、Fe単体の酸化発熱による種子の温度上昇を抑制可能な元素である。更には、例えば酸化モリブデン等のMo含有化合物は、土中において種子の発芽を阻害する硫化物イオンの発生を抑制する効果がある。従って、先だって説明したように、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物には、上記のような製鋼スラグ及び高炉スラグに加えて、Mo含有化合物を含有してもよい。
ただし、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物における上記Mo含有化合物の含有量は、混合物の固形分全体質量に対して、Mo換算で、0質量%超10質量%以下とすることが好ましい。被覆層形成用の混合物におけるMo含有化合物の含有量がMo換算で10質量%を超えると、溶出したモリブデン由来イオンの酸化性が強いために種子の発芽に悪影響を及ぼし、発芽率を下げる可能性がある。また、Mo含有化合物は価格が高いため、多量に使用するとコスト的に不利である。一方で、被覆層形成用の混合物におけるMo含有化合物の含有量をMo換算で10質量%以下とすることで、Fe単体に由来する発熱を、被覆層の固結に好ましい程度に抑制することが可能となる。なお、10質量%以下の範囲内において発熱抑制に対し過剰量のMo含有化合物を含有させた場合であっても、発芽を抑制しない量であれば、問題はない。被覆層形成用の混合物におけるMo含有化合物の含有量は、より好ましくは、混合物の固形分全体質量に対して、Mo換算で、3質量%以上8質量%以下である。
なお、かかるMo含有化合物としては、特に規定されるものではないが、肥料用途に用いられているMo含有化合物を利用することが好ましい。かかるMo含有化合物としては、例えば、モリブデン酸二ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブドリン酸アンモニウム、酸化モリブデン等を挙げることができる。
◇石炭灰、石膏、セメント、鉄粉、廃糖蜜について
また、本実施形態に係る被覆層形成用の混合物には、上記のような製鋼スラグ及び高炉スラグに加えて、石炭灰、石膏、セメント、鉄粉、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種が更に含有されていてもよい。
●石炭灰について
石炭灰(フライアッシュ)は、石炭を燃焼させる際に生じる灰の一種であり、SiO及びAlを主成分とする物質である。一般的な石炭灰は、40質量%〜75質量%のSiOと、15質量%〜35質量%のAlと、2質量%〜20質量%のFeと、1質量%〜10質量%のCaOと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有していることが多く、更に、MgO等の他の成分を含有していることもある。かかる構成成分からも明らかなように、石炭灰は、製鋼スラグや高炉スラグと類似した成分を含有しており、固結性を補助する物質である。かかる石炭灰を被覆層に含有させることで、石炭灰が結合材として機能し、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
被覆層形成用の混合物に含有される石炭灰は、孔径75μmの篩を通過する石炭灰であることが好ましい。換言すれば、被覆層形成用の混合物に含有される石炭灰の粒径は、75μm未満であることが好ましい。石炭灰の粒径を75μm未満とすることで、被覆層形成用の混合物の固化速度を速めることが可能となり、より容易に被覆層を固結させることが可能となる。なお、石炭灰の粒径は、小さければ小さいほど好ましいが、分級にはコストや時間を要するため、過度に微細粒を用いる必要はない。
なお、被覆層形成用の混合物に含有されうる石炭灰の含有量は、混合物の固形分全体質量に対して、0質量%以上20質量%以下であることが好ましい。混合物の固形分全体質量(より詳細には、製鋼スラグ及び高炉スラグと、Fe単体と、の合計質量)に対する石炭灰の割合が20質量%を超える場合、石炭灰の割合が高すぎるために、固結度が低下したり、種子の発芽率が下がったりする可能性が生じうる。
●石膏、セメントについて
石膏及びセメントは、固結性を有する物質であり、結合材として機能する。従って、かかる石膏又はセメントの少なくとも何れかを被覆層形成用の混合物に含有させることで、被覆層形成用の混合物をより確実に固結させることが可能となる。
ここで、一般的なセメントは、62質量%以上67質量%以下のCaOと、19質量%以上24質量%以下のSiOと、0.5質量%以上3質量%以下のMgOと、2質量%以上6質量%以下のFeと、2質量%以上7質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有していることが多い。
なお、被覆層形成用の混合物に含有されうる石膏又はセメントの含有量は、混合物の固形分全体質量(より詳細には、製鋼スラグ及び高炉スラグと、Fe単体と、の合計質量)に対して20質量%以下であることが好ましい。混合物の固形分全体質量に対する石膏又はセメントの割合がそれぞれ20質量%を超える場合、石膏又はセメントの割合が高すぎるために、種子の発芽率を下げる可能性が生じうる。
なお、上記のような石膏やセメントは、被覆層に混合してもよいが、石膏又はセメントを用いて被覆層を被覆することも可能である。
●鉄粉について
鉄粉は、比重が大きい物質である。そのため、被覆層に鉄粉を含有させることで、被覆種子の重量を増加させ、種子を流亡しにくくさせることが可能となる。被覆層形成用の混合物に含有されうる鉄粉の含有量は、製鋼スラグ及び/又は高炉スラグに由来するFe単体の含有量とあわせて、0質量%超20質量%未満となることが好ましい。
●廃糖蜜について
廃糖蜜は、サトウキビ等の搾り汁から砂糖を精製する際に副産される黒褐色の液体であり、糖分を70〜80%程度含むほか、ミネラルやビタミンも含有している。また、廃糖蜜は、副産物であることから安価に入手可能である。廃糖蜜は、特に、植物の細胞生長に必要なカリウムを2%程度含んでいる。カリウムは、植物の根から吸収され、植物細胞の生長に必要な成分である。従って、被覆層形成用の混合物に廃糖蜜を含有させることで、形成される被覆層から廃糖蜜由来のカリウムを供給することが可能となり、幼植物の生長を更に促進することも期待できる。また、廃糖蜜は粘着性を有することから、廃糖蜜を被覆層形成用の混合物に含有させることで、被覆層形成用の混合物の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、製鋼スラグ及び高炉スラグによる肥料効果に加えて、より促すことが可能となる。
●アルギン酸化合物について
本実施形態に係る被覆層形成用の混合物により形成される被覆層には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム等といった、アルギン酸由来の化合物(アルギン酸化合物)が含有されていてもよい。
アルギン酸ナトリウムは、藻類である褐藻等に含まれる多糖類の一種である。アルギン酸ナトリウムの水溶液に対してCaやMgを添加すると、ゲル化する性質がある。製鋼スラグ及び高炉スラグは、CaとMgを含有するため、製鋼スラグや高炉スラグの表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を付加することによってゲル化が起こり、製鋼スラグや高炉スラグを含有する被覆層の種子への付着の安定性を補強することが可能となる。また、アルギン酸ナトリウムも用いて作製した被覆種子を土壌に直播すると、アルギン酸ナトリウムは、土壌微生物の作用により分解されて、アルギン酸オリゴ糖となる。アルギン酸オリゴ糖は、被覆層の製鋼スラグに含まれるミネラルと結合して、植物根へのミネラル吸収を助ける効果があり、発芽後の幼植物の生長を促進する効果が期待できる。
なお、上記のようなアルギン酸ナトリウムは、製鋼スラグ中に存在するカルシウムと一部反応して、アルギン酸カルシウムとして被覆層に存在する可能性がある。同様に、高炉スラグ中にマグネシウムが存在する場合、アルギン酸ナトリウムは、高炉スラグ中のマグネシウムと一部反応して、アルギン酸マグネシウムとして被覆層に存在する可能性がある。従って、本実施形態に係る被覆層に対してアルギン酸ナトリウムを浸透させた場合、被覆層中には、アルギン酸ナトリウムだけでなく、アルギン酸カルシウムやアルギン酸マグネシウムが存在する可能性がある。これらアルギン酸カルシウム及びアルギン酸マグネシウムについても、アルギン酸ナトリウムと同様に土壌微生物の作用により分解されて、アルギン酸オリゴ糖となる。アルギン酸オリゴ糖は、被覆層の製鋼スラグや高炉スラグに含まれるミネラルと結合して、植物根へのミネラル吸収を助ける効果があり、発芽後の幼植物の生長を促進する効果が期待できる。
以上、本実施形態に係る被覆種子の製造方法で用いられる被覆層形成用の混合物について、詳細に説明した。
<混合物における水の割合について>
続いて、上記混合物における水の質量割合(すなわち、混合物の全体の質量に対する水の質量割合)について説明する。
本実施形態に係る被覆種子の製造方法において、混合物における水の質量割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。上記混合物における水の質量割合が10質量%未満である場合、上記スラグ等の種子表面への付着性が悪くなり、被覆が難しくなる可能性が高くなる。一方、上記混合物における水の質量割合が80質量%を超える場合、水の割合が高すぎるため、種子の表面を上記スラグ等で被覆することができなくなる可能性が高くなる。従って、上記混合物における水の質量割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。スラグ等を用いた種子被覆を安定的に成功させるためには、水の質量割合を25質量%以上50%質量以下とすることがより好ましい。
また、上記混合物に対して、Mo含有化合物、石炭灰、石膏、鉄粉、又は、セメントの少なくとも何れかを混合してもよい。なお、混合物に対して、Mo含有化合物、石炭灰、石膏、鉄粉又はセメントの少なくとも何れかを添加する場合、各成分の質量割合は、先だって言及したような含有量を超えないことが好ましい。
ここで、スラグ等で種子を被覆する際、先だって言及したように、種子表面に存在する剛毛により、被覆層の種子表面への密着性が弱くなるという現象が生じる可能性がある。この現象を解決するために、種子を予めでんぷん水溶液に浸漬した後、スラグ等で被覆してもよい。ここで、でんぷん水溶液の濃度(すなわち、水溶液の全体の質量に対するでんぷんの質量割合)は、40質量%〜80質量%であることが好ましい。でんぷん水溶液に種子を浸漬した後、種子をスラグ等で被覆することにより、1粒の種子の質量と被覆層の質量との比を、1:0.6〜1:2程度にまで高めることが可能である。
<種子の被覆方法について>
次に、上記のような混合物により、上記のような植物種子を被覆する方法について説明する。予め上記のような混合物を作製し、この混合物と上記の植物種子とを混合させることで、用いた種子の表面をスラグ等により被覆して、種子の表面に被覆層を形成することができる。また、上記スラグ等と水と種子とを一緒に混合させることでも可能である。混合物と種子とを混合する方法は、特に限定されるものではない。大量に処理する場合には、例えば、回転式造粒機を用いて混合して、種子を上記スラグ等で被覆することも可能である。
また、スラグ等を用いて被覆層を形成した種子に対して、更に外側から石膏で被覆することも可能である。スラグ及び石膏を用いて種子を二重に被覆することにより、スラグ等の被覆による種子への密着性を高めることができる。被覆層の形成された種子を外側から石膏で被覆する方法としては、例えば、スラグ等で被覆し、乾燥させた被覆種子を、石膏の水懸濁物に浸漬して取り出して、室温で乾燥させるという方法を用いることで実行可能である。石膏の水懸濁物の濃度は、例えば20質量%〜60質量%であることが好ましい。
なお、上記スラグ等による種子の被覆量であるが、特に限定されるものではない。より好ましくは、種子の質量を1とした場合に、0.1〜2程度の質量の上記スラグ等を用いて、かかる種子を被覆することが好ましい。通常、スラグ等と水とを混合した混合物に対して種子を混合するのみで実現される被覆量は、上記範囲に入るものとなる。しかしながら、スラグ等が種子の表面に全面被覆されていない場合には、再度、スラグ等と水とを混合した混合物に対して種子を混合することが好ましい。
また、上記スラグの固結を高めるために、硫酸カルシウム、生石灰、消石灰等を、スラグ等、スラグ等と水との混合物、又は、スラグ等と水と種子との混合物の何れかに対して加えることも有効である。
<被覆種子の製造の際に用いる水について>
ここで、スラグ等と水との混合物により種子を被覆する際に、スラグ等に対して混合する水であるが、純水のほか、水道水、地下水、農業用水等を使用することも可能であるが、廃糖蜜を含有する水を用いることがより好ましい。廃糖蜜を含有する水を用いることで、廃糖蜜の粘着性を利用して被覆層の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、スラグによる肥料効果に加えて、より促すことができる。
廃糖蜜を含有する水に含まれる廃糖蜜の質量割合が、全体質量に対して10質量%未満である場合、スラグ等からなる被覆層の固化と種子への付着安定性を補強する効果が、明確に発現しづらくなる。一方、廃糖蜜を含有する水に含まれる廃糖蜜の質量割合が、全体質量に対して50質量%を超える場合、スラグ等と、この廃糖蜜を含有する水と、を混合すると、スラグ等がダマになってしまい、種子に付着しづらくなる。従って、廃糖蜜を含有する水に含まれる廃糖蜜の質量割合は、全体質量に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
<アルギン酸ナトリウム水溶液を用いる被覆種子の表面処理について>
先だって言及したように、製鋼スラグ又は高炉スラグの少なくとも何れか一方等を含む被覆層の表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を付加することによって、ゲル化が起こり、スラグ等を含む被覆層の種子への付着の安定性を補強することが可能となる。
被覆層の表面へのアルギン酸ナトリウム水溶液の付加方法であるが、例えば、スラグ等を含む被覆層の表面に対して、アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧したり、散水したりすることで、被覆層中にアルギン酸ナトリウム水溶液を浸透させる方法がある。また、スラグ等を含む被覆層を形成した種子を、アルギン酸ナトリウム水溶液に被覆層が剥離しないように注意して短時間浸すなどの方法を行うことも可能である。なお、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度が、水溶液の全体質量に対して0.5質量%未満の場合には、アルギン酸ナトリウムの濃度が低すぎるため、ゲル化がしっかりと起こらず、被覆層の種子への付着の安定性を補強する効果が発現しない可能性がある。また、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度が、水溶液の全体質量に対して5質量%を超える場合には、ゲルが強固になりすぎて、発芽を抑制する可能性がある。従って、スラグ等を含む被覆層の表面に付加するアルギン酸ナトリウム水溶液の濃度は、水溶液の全体質量に対して0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。なお、アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧又は散水して付加する場合のアルギン酸ナトリウム水溶液の量は、被覆層の表面全面を湿らせる程度の量でよい。
<除菌剤、除虫剤、除草剤を用いた被覆種子の表面処理について>
先だって言及したように、スラグ等を含む被覆層の表面に、除菌剤、除虫剤、又は、除草剤の少なくとも何れかを付着させることが可能である。
被覆層の表面への上記薬剤の付加方法であるが、例えば、スラグ等を含む被覆層の表面に対して、上記薬剤を含む水溶液を噴霧したり、散水したりする等の方法がある。また、例えば、スラグ等を含む被覆層の表面に対して、上記薬剤をそのまま散布し、被覆層の表面に上記薬剤を付着させてもよい。なお、被覆種子に対する上記薬剤の使用量は、特に規定されるものではないが、例えば、種子の乾燥重量1000グラムに対して、0〜100グラム程度とすることが好ましい。
なお、上記説明において、スラグ等の組成は、水と混合する前の組成で示している。水と混合した後にスラグの組成を確認するためには、水を蒸発させて乾燥させた状態でスラグを回収し、回収したスラグの組成を調べればよい。このように、被覆する前のスラグの成分組成と、被覆後のスラグの成分組成とは、殆ど変わらない。
スラグ等を含む被覆層で被覆された種子は、例えば風通しのよいところ等で空気乾燥させた後、直播に用いることができる。被覆をすることで通気性が悪くなり、種子の呼吸が抑制されるため、被覆後なるべく早い時期に播種することが好ましい。可能であれば、被覆後4日以内に播種することが好ましい。
ただし、被覆後半年間程度までであれば、被覆種子を保管して直播に用いることも可能である。
上記のように、製鋼スラグ又は高炉スラグの少なくとも何れか一方等を用いて、簡便かつ安価に被覆された種子を作製することが可能となる。
(被覆種子の播種方法について)
続いて、以上説明したような被覆種子の播種方法について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子の播種方法では、以上説明したような被覆種子を、当該種子を栽培するための栽培地に対して直播する。
ここで、被覆種子の播種方法については、特に限定されるものではなく、被覆種子に用いた植物の栽培に適した公知の播種方法を採用すればよい。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法の一例にすぎず、本発明に係る被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法が下記の例に限定されるものではない。なお、以下に示す本実施例中の稲種子は、水稲の種子である。
(実施例1)
以下の表1に示す組成の製鋼スラグを粉砕し、孔径600μmの篩を通過したものを用意した。また、同じく孔径600μmの篩を通過した鉄粉(Fe単体)を用意した。これら粒度調整した製鋼スラグ及び粒度調整した鉄粉を、90:10、又は、95:5の質量比率で混合した、製鋼スラグ+鉄粉の混合物を準備した。かかる混合物をそれぞれ用いて、稲種子、トウモロコシ種子をそれぞれ被覆した。
具体的には、20質量%の濃度の廃糖蜜の水溶液を上記製鋼スラグ+鉄粉の混合物に加えたのち、稲種子、トウモロコシ種子の表面に、製鋼スラグ+鉄粉の混合物と廃糖蜜水溶液との混合物をそれぞれ付着させた。その後、混合物の付着した稲種子、トウモロコシ種子を乾燥させて種子表面に被覆層を形成させ、被覆稲種子、被覆トウモロコシ種子とした。また、以下の表1に示す組成の製鋼スラグのみで被覆した被覆稲種子及び被覆トウモロコシ種子、並びに、鉄粉のみで被覆した被覆稲種子及び被覆トウモロコシ種子を、別途準備した。
Figure 0006812808
90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、製鋼スラグ、鉄粉、又は、製鋼スラグ+鉄粉の混合物で被覆した稲種子、トウモロコシ種子を各20粒載置し、蒸留水を加えて、30℃で静置して発芽試験を行なった。対照として、無被覆の稲種子、トウモロコシ種子についても、同様の発芽試験を並行して行なった。得られた発芽試験の結果を、以下の表2に示した。
Figure 0006812808
表2の発芽率の結果より、鉄粉で被覆した稲種子及びトウモロコシ種子は、最も低い発芽率となった。これは、鉄粉から溶出した二価鉄イオンが酸化されて三価鉄となり、更に水酸化鉄となる過程で発熱して、種子にダメージを与えたことが原因と考えられる。また、鉄粉から溶出した二価鉄イオンが酸化されて三価鉄となり、更に水酸化鉄となる過程で、局所的な酸性化が起こる。かかる酸性化も、中性を好む種子の発芽に悪条件となっている可能性が考えられる。更に、形成された水酸化鉄が発芽して現れた幼根の表面に付着して、幼根の表面を覆ってしまうことにより、幼根による水の吸収阻害や根の生長を阻害して、発芽がうまく進行しなくなったこと等が原因と考えられる。なお、鉄粉に含まれるFe単体質量は、100質量%である。
製鋼スラグには、Fe単体が2質量%含まれていたが、鉄粉のみの被覆のような発熱はなく、製鋼スラグで被覆した稲種子及びトウモロコシ種子は、無被覆のものと同様に発芽率が高かった。一方、本実施例の製鋼スラグ+鉄粉の混合物には、被覆層形成用の混合物としてFe単体が20質量%未満含まれており、製鋼スラグ+鉄粉の混合物で被覆した稲種子及びトウモロコシ種子の発芽率は、製鋼スラグで被覆した場合よりも同等以下の発芽率となった。これは、Fe単体の含有量が高いほど鉄の酸化による発熱により種子がダメージを受けること、発生する水酸化鉄が幼根の表面に付着して覆い、根からの水の吸収を阻害したり、根の生長を阻害したりすること、及び、溶出した鉄の酸化と水酸化鉄形成により起こる種子近傍の局所的酸性化をスラグのアルカリ性が中和すること、によるものと考えられる。
鉄粉の含有量が多いほど被覆層の温度が上がることを確認した一方で、鉄粉を加えて発熱したものは、製鋼スラグが速く固化することが明らかとなった。しかしながら、20質量%以上の鉄粉を含有する場合、水分の乾燥が顕著になり、単純な被覆処理では固化が不安定となった。かかる結果から、被覆層形成用の混合物としてFe単体の含有量が20質量%未満であれば、発芽率にはあまり影響ないことが分かった。この際に、鉄粉を0質量%超5質量%以下の割合で混合することで、好ましい温度上昇となって、比較的速く被覆を行うことが可能となった。
以上の結果より、種子被覆層形成用の混合物に含まれるFe単体が20質量%未満、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の場合において、発芽率をあまり低下させることなく、安定な被覆が可能であることがわかった。
(実施例2)
上記実施例1で作製した、製鋼スラグ、鉄粉、又は、製鋼スラグ+鉄粉の混合物で被覆した稲種子及びトウモロコシ種子を、50粒ずつプラスチック製皿に分散させて配置し、かかるプラスチック製皿を、風の影響を受けないよう囲いで覆った条件で、野外に載置した。2週間後、鳥に食べられず残った種子数を数え、種子残存率を算出した。対照として、無被覆の稲種子及びトウモロコシ種子に関しても、同様の試験を並行して行なった。得られた残存率の結果を、以下の表3に示した。
Figure 0006812808
上記表3から明らかなように、製鋼スラグ、鉄粉、及び、製鋼スラグ+鉄粉の混合物で被覆した稲種子並びにトウモロコシ種子は、いずれも無被覆種子と比べて残存率が高く、鳥に食べられないことがわかった。
(実施例3)
表1の組成の製鋼スラグを粉砕し、孔径600μmの篩を通過したものを用意した。また、かかる粒度調製した製鋼スラグに対し、孔径600μmの篩を通過したモリブデン酸二ナトリウムを加えて混合し、Moの含有量が、Mo換算で10質量%になるものと、20質量%になるものと、を用意した。
(3−1)製鋼スラグ:鉄粉=95:5、(3−2)(製鋼スラグ:鉄粉=85:15)+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:10質量%)の混合物、(3−3)(製鋼スラグ:鉄粉=85:15)+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:20質量%)の混合物、の3種類の混合物を用いて、稲種子及びトウモロコシ種子を被覆した。
具体的には、20質量%の濃度の廃糖蜜の水溶液を用い、各混合物と廃糖蜜との混合物を、稲種子及びトウモロコシ種子の表面にそれぞれ付着させた。その後、混合物の付着した稲種子及びトウモロコシ種子を乾燥させて種子表面に被覆層を形成させ、被覆稲種子及び被覆トウモロコシ種子とした。
90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、(3−1)〜(3−3)の混合物でそれぞれ被覆した稲種子及びトウモロコシ種子を各20粒載置し、蒸留水を加えて、30℃で静置して発芽試験を行なった。対照として、無被覆の稲種子及びトウモロコシ種子についても、同様の発芽試験を並行して行なった。得られた発芽試験の結果を、以下の表4に示した。
Figure 0006812808
上記表4に示した発芽率の結果より、(3−2)はFe単体が15質量%含まれ、含有量は20質量%未満ではあるものの、更にMo含有量10質量%を含む混合物で被覆した稲種子及びトウモロコシ種子は、無被覆のものと同様に発芽率が高かった。一方、Mo含有量20質量%の混合物で被覆した稲種子及びトウモロコシ種子は、Moを含まない被覆のものと比較して、発芽率が低くなった。
(実施例4)
実施例3で作製した、(3−1)〜(3−3)の3種類の混合物を用いて被覆した稲種子及びトウモロコシ種子を、50粒ずつプラスチック製皿に分散させて配置し、かかるプラスチック製皿を、風の影響を受けないよう囲いで覆った条件で、野外に載置した。2週間後、鳥に食べられず残った種子数を数え、種子残存率を算出した。対照として、無被覆の稲種子及びトウモロコシ種子に関しても、同様の試験を並行して行なった。得られた残存率の結果を、以下の表5に示した。
Figure 0006812808
上記表5から明らかなように、いずれの被覆種子も無被覆種子と比べて残存率が高く、鳥に食べられないことがわかった。
(実施例5)
以下の表6に示す高炉スラグ(より詳細には、高炉水砕スラグ)を粉砕し、孔径75μmの篩を通過したものを用意した。また、この粒度調整した高炉水砕スラグに対し、孔径75μmの篩を通過したモリブデン酸二ナトリウムを加えて混合し、Moの含有量が、Mo換算で10質量%になるものと、20質量%になるものと、を用意した。
(5−1)高炉水砕スラグ:鉄粉=95:5、(5−2)(高炉水砕スラグ:鉄粉=85:15)+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:10質量%)の混合物、(5−3)(高炉水砕スラグ:鉄粉=85:15)+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:20質量%)の混合物、の3種類の混合物を用いて、稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を被覆した。
具体的には、20質量%の濃度の廃糖蜜の水溶液を用い、各混合物と廃糖蜜との混合物を、稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子の表面にそれぞれ付着させた。その後、混合物の付着した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を乾燥させて種子表面に被覆層を形成させ、被覆稲種子、被覆トウモロコシ種子及び被覆大豆種子とした。
Figure 0006812808
90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、(5−1)〜(5−3)の混合物でそれぞれ被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を各20粒載置し、蒸留水を加えて、30℃で静置して発芽試験を行なった。対照として、無被覆の稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子についても、同様の発芽試験を並行して行なった。得られた発芽試験の結果を、以下の表7に示した。
Figure 0006812808
上記表7の発芽率の結果から明らかなように、(5−2)のMo含有量10質量%の混合物で被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子は、無被覆のものと同様に発芽率が高かった。一方、(5−3)のMo含有量:20質量%の混合物で被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子は、発芽率が低くなった。
(実施例6)
実施例5で作製した、(5−1)〜(5−3)の3種類の混合物を用いて被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を、50粒ずつプラスチック製皿に分散させて配置し、かかるプラスチック製皿を、風の影響を受けないよう囲いで覆った条件で、野外に載置した。2週間後、鳥に食べられず残った種子数を数え、種子残存率を算出した。対照として、無被覆の稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子に関しても、同様の試験を並行して行なった。得られた残存率の結果を、以下の表8に示した。
Figure 0006812808
上記表8から明らかなように、いずれの被覆種子も無被覆種子と比べて残存率が高く、鳥に食べられないことがわかった。
(実施例7−鉄粉過多種子、モリブデン過多種子との比較)
いずれも孔径600μmの篩を通過するように粒度調製した、(7−1)純鉄の鉄粉、(7−2)純鉄の鉄粉と表1に組成を示した製鋼スラグとを質量比で5:95の比率で混合した混合物、(7−3)表1に組成を示した製鋼スラグ、(7−4)純鉄の鉄粉と表4に組成を示した高炉水砕スラグとを質量比1:9の割合で混合した混合物、(7−5)純鉄の鉄粉と表4に組成を示した高炉水砕スラグとを質量比15:85の割合で混合した混合物にモリブデン酸二ナトリウムをモリブデンの含有量がMo換算で10質量%となるように加えた混合物、(7−6)純鉄の鉄粉と表4に組成を示した高炉水砕スラグとを質量比15:85の割合で混合した混合物にモリブデン酸二ナトリウムをモリブデンの含有量がMo換算で20質量%となるように加えた混合物、をそれぞれ準備した。これらの混合物をそれぞれ用いて、稲種子、トウモロコシ種子をそれぞれ被覆した。
具体的には、20質量%の濃度の廃糖蜜の水溶液を用い、各混合物と廃糖蜜との混合物を、稲種子及びトウモロコシ種子の表面に付着させた。その後、混合物の付着した稲種子及びトウモロコシ種子を乾燥させて種子表面に被覆層を形成させ、被覆稲種子及び被覆トウモロコシ種子とした。
90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、各被覆種子を20粒載置し、蒸留水を加えて、30℃で静置して発芽試験を行なった。対照として、無被覆の稲種子及びトウモロコシ種子についても、同様の発芽試験を並行して行なった。得られた発芽試験の結果を、以下の表9に示した。
Figure 0006812808
上記表9の発芽率の結果から明らかなように、(7−1)の混合物を用いた場合、発芽率が低かった。この理由として、鉄粉を種子に付着させる際の鉄の酸化による温度上昇により、種子が悪影響を受けたこと、及び、水に溶解し、酸化した鉄イオンが水酸化鉄を形成する際に酸性化し、局所的な酸性化が発芽に悪影響を及ぼしたこと、等が考えられる。
(7−2)の混合物を用いた場合、Fe単体の含有量は、鉄粉由来の5質量%となるが、鉄の酸化による温度上昇の影響は殆どなかったと考えられ、発芽率は同等程度であった。
(7−3)の製鋼スラグのみの混合物を用いた場合は、種子を被覆する際の鉄の酸化による温度上昇の影響はなく、種子の発芽率が高かったものと考えられる。
(7−4)の混合物を用いた場合、Fe単体の含有量は、鉄粉由来の10質量%であり、20質量%未満である。この場合、種子を被覆する際の鉄の酸化による温度上昇の影響はまだ大きくなく、種子の発芽率にはそれほど影響なかった。一方で固結は早く、容易に安定した被覆種子を得ることができた。
(7−5)の混合物を用いた場合、Fe単体の含有量は、鉄粉由来の15質量%であり、また、モリブデンの含有量は、Mo換算で10質量%である。この条件では、種子の発芽率は高かった。一方、(7−6)の混合物を用いた場合、(7−5)の混合物と同様にFe単体の含有量は、15質量%であるが、一方、モリブデンの含有量は、Mo換算で20質量%である。この条件では、種子の発芽率は、(7−5)の混合物を用いた場合よりも低くなった。以上の結果から、被覆物に含まれるモリブデンの含有量は、Mo換算で10質量%以下が好ましいことがわかる。
なお、(7−2)、(7−4)、(7−5)、(7−6)の混合物は、(7−3)の混合物より早く固化することを、別途確認した。
(実施例8−シャーレ試験での発芽率)
表4に組成を示した高炉水砕スラグを粉砕し、孔径75μmの篩を通過したものを用意した。また、この粒度調製した高炉水砕スラグに対し、孔径75μmの篩を通過したモリブデン酸二ナトリウムを加えて混合し、Moの含有量がMo換算で10質量%になるものを用意した。また、孔径75μmの篩を通過したモリブデン酸二ナトリウムのみも用意した。また、孔径75μmの篩を通過した鉄粉のみと、この粒度調製した鉄粉に対し、孔径75μmの篩を通過したモリブデン酸二ナトリウムを加えて混合し、Moの含有量がMo換算で10質量%になるものも用意した。
すなわち、(8−1)高炉水砕スラグのみ、(8−2)(高炉水砕スラグ:鉄粉=85:15)+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:10質量%)の混合物、(8−3)モリブデン酸二ナトリウムのみ、(8−4)鉄粉のみ、(8−5)鉄粉+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:10質量%)の混合物、の5種類の混合物を用いて、稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を被覆した。
具体的には、20質量%の濃度の廃糖蜜の水溶液を用いて、各混合物と廃糖蜜との混合物を、稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子の表面にそれぞれ付着させた。その後、混合物の付着した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を乾燥させて種子表面に被覆層を形成させ、被覆稲種子、被覆トウモロコシ種子及び被覆大豆種子とした。
90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、(8−1)〜(8−5)の混合物のそれぞれで被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を各20粒載置し、蒸留水を加えて、30℃で静置して発芽試験を行なった。対照として、無被覆の稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子についても、同様の発芽試験を並行して行なった。得られた発芽試験の結果を、以下の表10に示した。
Figure 0006812808
表10の発芽率の結果から明らかなように、(8−1)、又は、(8−2)で被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子は、無被覆のものとほぼ同レベルの高い発芽率であった。一方、(8−3)、(8−4)、又は、(8−5)で被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子は、発芽率が低くなった。
(8−3)モリブデン酸二ナトリウムのみで被覆した場合に発芽率が低かった原因として、モリブデン酸二ナトリウムから溶出した、酸化力が強いモリブデン酸イオンが、種子が発芽する際に幼芽や幼根に対してダメージを与えた可能性が考えられる。また、(8−4)鉄粉のみ、又は、(8−5)鉄粉+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:10質量%)で被覆した場合に発芽率が低かった原因としては、鉄粉から溶出した鉄イオンの酸化及び水酸化物形成に伴う酸性化によって、種子が発芽する際に幼芽や幼根がダメージを受けた可能性や、水酸化鉄が幼根の表面に付着して覆うことで水やイオン吸収が阻害された可能性などが考えられる。
(実施例9−土壌中での発芽率)
ポットに入れた、硫化水素を発生している土壌を準備し、各ポット中の土壌の深さ1cmに対して、実施例8で作製した、(8−1)〜(8−5)の混合物でそれぞれ被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子を、それぞれ20粒ずつ撒いた。対照として、無被覆の稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子も、同様にして撒いた。15日後、地上に植物体が見られたものを発芽したとして、発芽率を算出した。得られた結果を、以下の表11に示した。
Figure 0006812808
表9の発芽率の結果より、(8−2)の混合物で被覆した稲種子、トウモロコシ種子及び大豆種子で、発芽率が最も高くなった。モリブデン酸二ナトリウムから溶出したモリブデン酸イオンの酸化力により、土壌の硫化物イオンが酸化され、根腐れが抑制されたことが原因と考えられる。また、高炉水砕スラグから溶出するCa、Si等の肥料効果元素も、発芽時の幼根及び幼植物の生育と、地上部の苗・幼植物の生育に寄与したものと考えられる。
(8−3)のモリブデン酸二ナトリウムのみで被覆した場合についても、同様に、モリブデン酸二ナトリウムから溶出したモリブデン酸イオンの酸化力により土壌の硫化物イオンが酸化された結果、根腐れが抑制されて、発芽率が高かったことが考えられる。一方、(8−5)の鉄粉+モリブデン酸二ナトリウム(Mo含有量:10質量%)の混合物で被覆した場合は、鉄粉から溶出した二価鉄イオンの三価鉄イオンへの酸化に、モリブデン酸二ナトリウムから溶出したモリブデン酸イオンの酸化力が消費される。そのため、硫化物イオンの酸化が抑制され、(8−4)の鉄粉のみの被覆よりは発芽率は高かったものの、(8−2)の混合物による被覆よりも、低い発芽率になったものと考えられる。しかしながら、(8−3)のモリブデン酸二ナトリウムのみで被覆した場合には、Mo含有化合物が高価であることから、スラグを用いる(8−1)、(8−2)の場合と比較して、コスト的に不利となる。
(実施例10)
表1に組成を示した、孔径180μmのふるいを通過する製鋼スラグと、鉄粉(純度>99%)と、をそれぞれ用意した。これら粒度調整した製鋼スラグ及び鉄粉を90:10の質量割合で混合した、製鋼スラグ+鉄粉の混合物を準備した。
この製鋼スラグ+鉄粉の混合物と水との混合物、又は、前述の粒度調整した鉄粉と水との混合物を、それぞれトウモロコシ種子と混合することにより、トウモロコシ種子の表面に、製鋼スラグ+鉄粉+水の混合物、又は、鉄粉+水の混合物を付着させた。これらトウモロコシ種子を常温で乾燥させて、種子表面に製鋼スラグ+鉄粉からなる被覆層、又は、鉄粉からなる被覆層を形成させた。
製鋼スラグ+鉄粉、又は、鉄粉による被覆層を有する被覆種子を樹脂に埋め込み、研磨後、光学顕微鏡により被覆物の層の断面を観察した。この被覆物の断面で観察される被覆物の面積に占める気孔の面積を参考にして、製鋼スラグ+鉄粉からなる被覆層、又は、鉄粉からなる被覆層の気孔率を求めた。得られた結果を、以下の表12に示した。
Figure 0006812808
上記表12から明らかなように、製鋼スラグ+鉄粉による被覆層では、気孔率が20%と高い値を示したのに対して、鉄粉による被覆層では、気孔率が1%と低い値となった。鉄粉による被覆層では緻密な被覆層が形成され、発芽時の水分供給・酸素供給のための水や空気の供給路として重要な空隙が、ほとんど存在しないことがわかった。これに対して、製鋼スラグ+鉄粉による被覆層では、水分供給や酸素供給のための水や空気の供給路として重要な空隙が、十分に存在することがわかった。
これら製鋼スラグ+鉄粉により被覆したトウモロコシ種子、及び、鉄粉により被覆したトウモロコシ種子を用いて、発芽試験を行った。
より詳細には、90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、孔径180μmの篩を通過した製鋼スラグ+鉄粉で被覆したトウモロコシ種子、及び、孔径180μmの篩を通過した鉄粉で被覆したトウモロコシ種子をそれぞれ20粒載置し、蒸留水を加えて、28℃で静置して発芽試験を行なった。この際、種子が湛水された状態とならないように、蒸留水の添加量を調整した。得られた芽試験の結果を、以下の表13に示した。
Figure 0006812808
上記表13から明らかなように、鉄粉で被覆したトウモロコシ種子の発芽率は、65%と低い値になった。これは、鉄粉被覆では気孔率が1%と低く、緻密な被覆層が形成されるため、種子への水分供給と酸素の供給が十分でなく、発芽が抑制されたことが原因と考えられる。これに対して、製鋼スラグ+鉄粉で被覆したトウモロコシ種子の発芽率は、85%と良好であった。これは、製鋼スラグ+鉄粉で被覆した場合は、気孔率が20%と高く、水や酸素の種子への供給が良好であったことが理由として考えられる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (26)

  1. 25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、を少なくとも含有する製鋼スラグ、又は、高炉スラグの少なくとも何れか一方と、Fe単体と、水と、を混合して得られ、前記Fe単体(製鋼スラグ中のFe単体を除く。)の混合量が、固形分全体質量に対して0質量%超20質量%未満である混合物により、所定の種子を被覆し、
    前記製鋼スラグ、又は、前記高炉スラグの粒径を調整し、前記混合物により形成される被覆層の気孔率を、17〜50%とする、被覆種子の製造方法。
  2. 前記混合物は、更に、Mo含有化合物を含み、
    前記Mo含有化合物の合計は、前記混合物の固形分全体質量に対して、0質量%超10質量%以下である、請求項1に記載の被覆種子の製造方法。
  3. 前記製鋼スラグは、25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、1質量%以上20質量%以下のMgOと、1質量%以上25質量%以下のAlと、1質量%以上8質量%以下のMnと、0.1質量%以上5質量%以下のPと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項1又は2に記載の被覆種子の製造方法。
  4. 前記製鋼スラグは、脱リンスラグもしくは脱炭スラグの少なくとも何れか一方である転炉製鋼スラグ、又は、電気炉製鋼スラグの何れか又は双方である、請求項1〜3の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  5. 前記高炉スラグは、35質量%以上45質量%以下のCaOと、25質量%以上40質量%以下のSiOと、2質量%以上15質量%以下のMgOと、8質量%以上20質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  6. 前記製鋼スラグは、孔径180μmの篩を通過する製鋼スラグである、請求項1〜5の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  7. 前記製鋼スラグは、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグである、請求項1〜6の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  8. 前記高炉スラグは、孔径75μmの篩を通過する高炉スラグである、請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  9. 前記高炉スラグは、高炉水砕スラグである、請求項1〜8の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  10. 前記混合物は、更に、石炭灰、石膏、及び、セメントからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  11. 前記石炭灰は、1質量%以上10質量%以下のCaOと、40質量%以上75質量%以下のSiOと、2質量%以上20質量%以下のFeと、15質量%以上35質量%以下のAlと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有する、請求項10に記載の被覆種子の製造方法。
  12. 前記石炭灰は、孔径75μmの篩を通過する石炭灰である、請求項10又は11に記載の被覆種子の製造方法。
  13. 前記混合物における前記石炭灰の含有量は、前記混合物の固形分全体質量に対して、0質量%以上20質量%以下である、請求項10〜12の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  14. 前記混合物における前記水の割合は、前記混合物の全体質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、請求項1〜13の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  15. 前記水は、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、請求項1〜14の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  16. 前記種子は、湛水された状態で栽培される植物の種子、又は、湛水しない状態で栽培される植物の種子である、請求項1〜15の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  17. 前記湛水された状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、請求項16に記載の被覆種子の製造方法。
  18. 前記イネ科植物の種子は、水稲種子である、請求項17に記載の被覆種子の製造方法。
  19. 前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、請求項16に記載の被覆種子の製造方法。
  20. 前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、マメ科植物、タデ科植物、食用草本植物、又は、有用植物の種子である、請求項16に記載の被覆種子の製造方法。
  21. 前記イネ科植物の種子は、陸稲種子、トウモロコシ種子、又は、麦種子である、請求項19に記載の被覆種子の製造方法。
  22. 前記マメ科植物の種子は、ダイズ種子、又は、アズキ種子であり、
    前記タデ科植物の種子は、ソバ種子であり、
    前記食用草本植物の種子は、ニンジン種子、トマト種子、又は、甜菜種子であり、
    前記有用植物の種子は、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、又は、花木種子である、請求項20に記載の被覆種子の製造方法。
  23. 前記混合物の被覆された前記種子の表面に、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れかを付着させる、請求項1〜22の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  24. 前記混合物の被覆された前記種子の表面に対して、アルギン酸化合物を浸透させる、請求項1〜23の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  25. 前記種子は、でんぷんで被覆された種子である、請求項1〜24の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
  26. 請求項1〜25の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法で製造された被覆種子を、当該被覆種子を栽培するための栽培地に対して直播する、被覆種子の播種方法。
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