JP6553483B2 - 被覆稲種子及び被覆稲種子の製造方法 - Google Patents

被覆稲種子及び被覆稲種子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、被覆稲種子及び被覆稲種子の製造方法に関し、特には、製鋼スラグで被覆した被覆稲種子及び被覆稲種子の製造方法に関する。
米は、世界中で約20億人の人々が主食としている非常に重要な食糧である。国内において、米が安定に生産・供給でき、自給率を高めることは重要である。また、東南アジアなどの米を主食とする地域では経済発展が顕著であり、これらの地域で稲作を安定的に行い、米の安定供給を実現していくことは、ますます重要性を増している。
稲作では、種子(種もみ)を発芽させて苗を育て、苗を田植えする栽培方法と、種子(種もみ)を直接まく直播による栽培方法と、がある。均質で品質の良い米が収穫できることから、我が国では田植えによる稲作が主流となっている。ただし、稲種子(種もみ)を発芽させ苗を育てる育苗や、苗を植える田植えは労働力を要し、コストの大きな要因となっている。
一方、直播では、種子が水により流亡したり、播いた種子が鳥に食べられたりしてしまうなどの課題がある。直播栽培における種子の流亡や、鳥に食べられてしまう鳥害などを解決する方法として、酸化鉄や鉄粉で被覆した種子を用いる技術が報告されている(例えば、以下の特許文献1〜6を参照。)。
以下の特許文献1では、四三酸化鉄を有効成分として含有する種子被覆材により、四三酸化鉄が黒色であることを利用して、太陽熱の吸収を高めるとともに、四三酸化鉄から酸素を供給することにより、温度が低い条件下でも発芽を促せることが報告されている。
以下の特許文献2では、稲種子に鉄粉と硫酸塩あるいは塩化物を加えたものに水を添加することで金属鉄粉の酸化反応により生成する錆によって、鉄粉を稲種子の表面に付着、固化させることで、鉄粉被覆種子を製造できることが報告されている。また、以下の特許文献2には、種子の被覆に用いる資材は中性に近いことが好ましいことが記載されている。
以下の特許文献3では、鉄を被覆した種子では比重が大きくなるため、種子が土壌中に沈んでしまった場合には、苗立ちしにくくなる問題があることや、鉄錆の形成には時間がかかるため、錆の形成を促進するために石膏が用いられるが、石膏を用いると錆の形成が強く促進されすぎ、鉄の酸化による発熱が大きくなることにより、高温による種子の枯死が起こることなどが記述されている。以下の特許文献3では、石膏の代わりとなる鉄粉の結合材又は結合促進材として、モリブデン資材又はタングステン資材を報告している。
以下の特許文献4では、鳥害や浮き苗を避けるために、鉄資材で被覆した稲種子を直播して速やかに水面下に種子を沈める際、被覆に用いる鉄資材を増量することは、資材費を増加させ、被覆の作業に手間もかかることを記述している。以下の特許文献4では、種子に接する内側を鉄資材で被覆し、外側は安価なベントナイトで被覆することで、鉄資材の使用量を削減できることが報告されている。
以下の特許文献5では、稲種子被覆用鉄粉として、粒径が細かなものが好ましく、粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比が0%以上75%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が25%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下であることが報告されている。また、以下の特許文献5では、還元法もしくはアトマイズ法で製造された鉄粉が好ましいことが報告されている。
以下の特許文献6では、播種や輸送で鉄粉が脱落しにくい被覆を実現するため、鉄粉を主材として含む種子被覆材に、片状粉末を含有させることが報告されている。
特開平3−236703号公報 特開2005−192458号公報 特開2012−239459号公報 特開2014−90671号公報 特開2012−70728号公報 特開2014−45701号公報
以上のように、稲種子の直播を可能とするために、鉄粉で種子を被覆するさまざまな技術が報告されている。しかしながら、これらの技術には、以下に示すような課題がある。
まず、上記特許文献1の四三酸化鉄を有効成分として含有する種子被覆材により、太陽熱の吸収を高めるとともに、四三酸化鉄から種子に酸素を供給することにより、温度が低い条件下でも発芽を促す方法について、課題を記す。本方法では、四三酸化鉄で種子を被覆するために、沸騰石などの多孔質材や硫酸カルシウム(石膏)などの凝固材を四三酸化鉄と混合したものを用いて、種子を被覆する。そのため、これらの混合に用いる資材のコストがかかるほか、種子の被覆作業にも手間もかかる。
また、上記特許文献2の稲種子に鉄粉と硫酸塩あるいは塩化物を加えたものに水を添加することにより、金属鉄粉の酸化反応により生成する錆により、鉄粉を稲種子に付着、固化させて鉄粉被覆種子を製造する方法について、課題を記す。本方法では、上記特許文献3にも記載されているように、鉄粉の種子への付着、固化が金属鉄粉の酸化により生成する錆により実現するものであるため、錆形成に時間がかかるという課題がある。また、石膏のような硫酸塩や、あるいは塩化物を入れた場合、錆生成は促進されるが、反応熱により種子が高温になり、場合によっては枯死するといった課題がある。更に、金属鉄粉は高価であり、コストがかかるという課題もある。また、上記特許文献2には、種子の被覆に用いる資材は中性に近いことが好ましいことが記載されている。実際、四三酸化鉄や鉄粉を用いる種子の被覆資材は、いずれも中性に近いものに限られている。植物の生育に悪影響が予想されるため、これまでの技術では、中性に近い被覆資材が用いられてきたものと考えられる。そのため、例えばアルカリ性の資材で種子の被覆に使えるものは、これまで開発されていない。
上記特許文献3での、石膏の代わりとなる鉄粉の結合材又は結合促進材としてモリブデン資材又はタングステン資材を用いる方法に関しては、金属鉄粉の他に、モリブデン資材、タングステン資材を用いるため、コストがかかるという問題がある。
上記特許文献4での、鉄資材の相対的な使用量を削減するため、種子に接する内側を鉄資材で被覆し、外側は安価なベントナイトで被覆する方法に関しては、金属鉄粉にかかるコストはある程度削減できるかもしれないが、ベントナイトによる被覆も要するため、被覆作業に手間を要するという課題がある。
上記特許文献5には、稲種子被覆用鉄粉には粒径が細かな鉄粉が好ましいことが記載されている。稲種子の表面には数多くの剛毛が生えている。剛毛の間隔よりも小さな粒径の鉄粉でなければ種子表面に付着できないことは、自明である。また、上記特許文献5での稲種子被覆用鉄粉に適する鉄粉は、還元法もしくはアトマイズ法で製造された鉄粉が好ましいことに関しても、通常、市販されている金属鉄粉は還元法かアトマイズ法で製造されており、自明のことである。
上記特許文献6での、鉄粉を主材として含む種子被覆材に片状粉末を含有させることにより、鉄粉被覆の脱離を抑制する方法については、金属鉄粉にかかるコストを削減する方法ではなく、かつ、片状粉末として使用する資材にコストがかかるという課題がある。また、片状粉末を加えた状態での被覆を要するため、被覆作業に手間を要するという課題もある。
以上のように、鉄粉を用いた稲種子被覆は、金属鉄粉にコストがかかるという問題があった。
また、鉄粉あるいは四三酸化鉄を用いた稲種子被覆では、肥料効果が期待できる元素は鉄のみであるという課題もあった。
更に、種子被覆に用いるような粒径が細かな微粉の鉄粉は、発火や粉じん爆発等に注意が必要であり、一般の農家が取り扱うためには、安全対策でコストがかかるという課題もあった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、従来の金属鉄粉や酸化鉄で被覆した被覆稲種子と比べて、資材コストを抑えることを可能としながら、肥料効果を有する、直播可能な被覆稲種子及び被覆稲種子の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題に鑑みて、資材コストが比較的低く、肥料効果を備えた被覆材を鋭意検討し、鉄鋼製造プロセスで副生する鉄鋼スラグが適用できるのではないかと考えるに至った。但し、従来、種子の被覆資材は鉄粉のように中性の資材が用いられており、アルカリ性が強い物質は種子の被覆資材には不向きと考えられてきたことから、更に鋭意検討を行なった結果、ある種の製鋼スラグはpH11程度のアルカリ性であるにもかかわらず、種子の被覆資材として用いても、種子は発芽でき、かつ、製鋼スラグから供給されるミネラルによって植物の生長を促進することができることを見出し、製鋼スラグで被覆した稲種子に関する本発明を完成させた。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、を含む製鋼スラグにより、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
(2)25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、1質量%以上20質量%以下のMgOと、1質量%以上25質量%以下のAlと、5質量%以上35質量%以下のFeと、1質量%以上8質量%以下のMnと、0.1質量%以上5質量%以下のPと、を含む製鋼スラグにより、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
(3)製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方で稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
(4)25質量%以上50質量%以下のCaO、及び、8質量%以上30質量%以下のSiOを含む製鋼スラグと、石膏、鉄粉の一方又は双方と、の混合物により、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
(5)25質量%以上50質量%以下のCaO、8質量%以上30質量%以下のSiO、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPを含む製鋼スラグと、石膏、鉄粉の一方又は双方と、の混合物により、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
(6)製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、の混合物により、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
(7)前記稲種子は、でんぷんで被覆されている稲種子である、(1)〜(6)の何れか一つに記載の被覆稲種子。
(8)前記被覆稲種子の表面が、更に石膏で被覆されている、(1)〜(7)の何れか一つに記載の被覆稲種子。
(9)前記被覆稲種子の被覆部分が、更に廃糖蜜を含有する、(1)〜(8)の何れか一つに記載の被覆稲種子。
(10)25質量%以上50質量%以下のCaO、及び、8質量%以上30質量%以下のSiOを含む製鋼スラグと、水と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
(11)25質量%以上50質量%以下のCaO、8質量%以上30質量%以下のSiO、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPを含む製鋼スラグと、水と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
(12)製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方と、水と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
(13)25質量%以上50質量%以下のCaO、及び、8質量%以上30質量%以下のSiOを含む製鋼スラグと、水と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
(14)25質量%以上50質量%以下のCaO、8質量%以上30質量%以下のSiO、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPを含む製鋼スラグと、水と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
(15)製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方と、水と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
(16)前記混合物における水の質量割合が、当該混合物の全体の質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、(10)〜(15)の何れか一つに記載の被覆稲種子の製造方法。
(17)前記水が、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、(10)〜(16)の何れか一つに記載の被覆稲種子の製造方法。
(18)前記稲種子として、でんぷん水溶液に浸漬した稲種子を用いる、(10)〜(17)の何れか一つに記載の被覆稲種子の製造方法。
(19)固結した前記混合物の表面を、更に石膏で被覆する、(10)〜(18)の何れか一つに記載の被覆稲種子の製造方法。
(20)固結した前記混合物の表面を、更にアルギン酸ナトリウムを0.5質量%以上5質量%以下含む水で湿らせた後、当該固結した混合物を乾燥させる、(10)〜(19)の何れか一つに記載の被覆稲種子の製造方法。
以上説明したように本発明によれば、本発明に係る所定の成分を含有する製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグで被覆した稲種子により、簡便かつ低コストで稲の生長がよい直播用稲種子を作製することが可能になる。
実施例2の結果を示したグラフ図である。 実施例2の結果を示したグラフ図である。 実施例3の結果を示したグラフ図である。 実施例3の結果を示したグラフ図である。 実施例4の結果を示したグラフ図である。 実施例5の結果を示したグラフ図である。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<製鋼スラグについて>
まず、本発明の実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグについて、詳細に説明する。
製鋼スラグは、製鉄業の副産物として大量に生成し、かつ、製鋼スラグの組成は、分析、管理されている。製鋼スラグは、Ca、Si、Mg、Mn、Fe、Pなどの様々な肥料有効元素を含んでおり、肥料原料として用いられている。我が国では、製鋼スラグを原料とする肥料として、肥料取締り法により定められた、鉱さいケイ酸質肥料、鉱さいリン酸肥料、副産石灰肥料、特殊肥料(含鉄物)の各規格に属する肥料がある。我が国だけで年間1000万トン程度の製鋼スラグが生成しており、製鋼スラグは安価に入手可能である。
また、製鋼スラグは、鉄粉と比べて発火や粉じん爆発の心配がなく、安価であり、かつ従来から肥料用途にも使用されている資材である。
本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグとしては、例えば、以下で詳述するような所定の成分を含有する製鋼スラグの他に、鉄鋼製造プロセスから副生される製鋼スラグの一種である、脱リンスラグや、脱炭スラグなどを挙げることができる。なお、脱リンスラグとは、溶銑に含まれるリンを除くために、溶銑に脱リン剤として石灰、酸化鉄などを加え、酸素等のガスを吹き込むことにより副生されるリンを含むスラグであり、製鋼スラグの一種である。また、脱炭スラグは、溶銑に含まれる炭素を除いて鋼とするために、溶銑に酸素を吹き込むことにより副生されるスラグであり、製鋼スラグの一種である。
勿論、これら以外の製鋼スラグであっても、本発明の稲種子の被覆に用いる製鋼スラグの組成を満足するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、以下で詳述するような所定量の成分を含有する製鋼スラグ以外に、耐火物の補修の際に発生する、マグネシウムを高い含有量で含有する製鋼スラグなども利用可能である。
本実施形態では、製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグを粉砕等により適当な粒径に調整したものを、そのままで、稲種子の被覆に用いるスラグとして使用可能である。これらのスラグの粉砕には、例えば、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ロールミル、ローラーミルなどの公知の手段を用いることができる。
本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグの粒径は、固化により稲種子が被覆されるのであれば、特に限定するものではないが、粒径が細かい方が固化し易いことから好ましいと言える。特に、粒径を600μm未満に調整したものは稲種子への付着性が上がる傾向があり、効果が高い。したがって、本実施形態に係る稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグの粒径は、全て600μm未満に調整することが好ましい。例えば、稲種子の被覆に用いるスラグをふるい分けすることで、粒径を全て600μm未満とすることができる。勿論、より細かな粒径のスラグの方が稲種子への付着性を上げるためには勿論好ましいが、粉砕・分級にはコストや時間を要するため、過度の微細化は不要である。
○所定の成分を含有する製鋼スラグについて
本実施形態において、稲種子を被覆する製鋼スラグの組成について、詳細に説明する。本実施形態において用いられる、所定量の成分を含有する製鋼スラグは、上記のように、Ca、Si、Mg、Mn、Fe、Pなどの各種の成分を所定量含有している。
[CaO:25質量%〜50質量%]
まず、Caについて説明する。
製鋼スラグは、水に接すると、Caと後述するSiやAlとが溶出して化学結合することにより、水硬性を示す。本発明は、この水硬性を利用して、製鋼スラグを稲種子に付着、固結させて、稲種子を被覆するものである。したがって、Caは、重要な元素である。また、Caは、植物に必須な肥料元素でもある。肥料や製鋼スラグでCaの含有量を表記する際には、酸化物のCaOに換算して含有量が表記されるため、以下、CaOとしてCaの含有量を表わす。
本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのCaOの含有量が25質量%未満である場合には、水硬性を発現するのに十分な量のCaを溶出できない可能性がある。一方、CaO含有量が50質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鉄プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのCaOの含有量は、25質量%以上50質量%以下とする。製鋼スラグのCaOの含有量は、好ましくは、38質量%以上50質量%以下である。
なお、CaOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
[SiO:8質量%〜30質量%]
続いて、Siについて説明する。
Siは、CaやAlと共に、製鋼スラグの水硬性に寄与する元素である。したがって、Siも重要な元素である。また、Siは、植物の必須要素ではないものの、稲にとって非常に重要な肥料効果元素である。稲の植物体の乾燥重量の約5%をケイ酸(SiO)が占める。肥料や製鋼スラグでは、Siの含有量を表記する際には、酸化物のSiOに換算して含有量が表記されるため、以下、SiOとしてSiの含有量を表わす。
本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのSiOの含有量が10質量%未満である場合には、水硬性を発現するのに十分な量のSiを溶出できない可能性がある。一方、SiOの含有量が30質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鋼プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのSiOの含有量は、10質量%以上30質量%以下とする。
なお、SiOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
[MgO:1質量%〜20質量%]
続いて、Mgについて説明する。
一般に、製鋼スラグのMgO含有量は、CaO含有量よりかなり低い値となる。これは、製鋼スラグが溶銑に主に石灰を加えて発生するスラグであることに起因する。製鋼スラグに含まれるMgは、主に高炉や転炉の炉壁の耐火レンガから溶出するMgに起因する。Mgは、Ca、Si、Alと共に、製鋼スラグの水硬性に関わる元素である。ただし、製鋼スラグに含まれるCaO含有量とMgO含有量との違いなど、Mgの水硬性への寄与はCaと比較すると小さい。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグはCaOを25質量%以上含有することから、水硬性は、製鋼スラグに含有されるCaOで基本的にはまかなうことができると考えられる。ただし、MgOが更に存在することで、水硬性をよりよく発現することが期待できる。肥料や製鋼スラグでは、Mgの含有量を表記する際には、酸化物のMgOに換算して含有量が表記されるため、以下、MgOとしてMgの含有量を表わす。
ここで、MgOの含有量が1質量%未満である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは発生しない。一方、転炉の耐火物補修において発生する製鋼スラグでは、MgO含有量が20%に近いものが発生する。ただし、MgO含有量が20%超過である製鋼スラグは、発生しない。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのMgOの含有量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグのMgOの含有量は、より好ましくは、3質量%以上10質量%以下である。
なお、MgOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
[Al:1質量%〜25質量%]
続いて、Alについて説明する。
Alは、CaやSiと共に、製鋼スラグの水硬性に重要な元素である。肥料や製鋼スラグでは、Alの含有量を表記する際には、酸化物のAlに換算して含有量が表記されるため、以下、AlとしてAlの含有量を表わす。
Alの含有量が1質量%未満となる製鋼スラグ、及び、Alの含有量が25質量%超過となる製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。また、製鋼スラグのAlの含有量が1質量%以上であれば、Alは、CaやSiと共に水硬性を示すことができる。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いる製鋼スラグのAlの含有量は、1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。ただし、より水硬性を高めて固結を促進したい場合には、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのAlの含有量を、10質量%以上25質量%以下とすることがより好ましい。
なお、Alの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
[Fe:5質量%〜35質量%]
続いて、Feについて説明する。
Feは、製鋼スラグにおいて、不可避的に含有される元素である。Feは、植物の必須要素ではないが、肥料取締り法で定められた特殊肥料に含鉄物があるように、鉄も植物に対して有効な元素である。Feの含有量が5質量%未満である製鋼スラグ、及び、Feの含有量が35質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのFeの含有量は、5質量%以上35質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグのFeの含有量は、より好ましくは、10質量%以上25質量%以下である。
なお、Feの含有量は、例えば、蛍光X線分析法で測定可能である。
[Mn:1質量%〜8質量%]
次に、Mnについて説明する。
Mnは、植物に対して肥料効果がある元素である。Mnの含有量が1質量%未満である製鋼スラグ、及び、Mnの含有量が8質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのMnの含有量は、1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
なお、Mnの含有量は、例えば、蛍光X線分析法で測定可能である。
[P:0.1質量%〜5質量%]
次に、Pについて説明する。
Pは、植物の必須要素である。肥料や製鋼スラグでは、Pの含有量を表記する際には、酸化物のPに換算して含有量が表記されるため、本実施形態において稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグに関しても、Pとして含有量を表わす。Pは、根の生長点に作用し、根の生長に効果がある元素である。Pが不足すると、根の生長が抑制される。ただし、Pの含有量が0.1質量%未満である製鋼スラグ、及び、Pの含有量が5質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグのPの含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
なお、Pの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
したがって、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグの組成は、少なくとも、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下、SiOの含有量が10質量%以上30質量%以下である。また、製鋼スラグの組成は、上記CaO及びSiOに加えて、MgOの含有量が1質量%以上20質量%以下、Alの含有量が1質量%以上25質量%以下、Feの含有量が5質量%以上35質量%以下、Mnの含有量が1質量%以上8質量%以下、Pの含有量が0.1質量%以上5質量%以下の組成であることが好ましい。
かかる製鋼スラグの組成では、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下となっており、アルカリ性であるのにもかかわらず、製鋼スラグで被覆した稲種子は、発芽できる。アルカリ性にも関わらず発芽できる理由として、イネ科植物は、ムギネ酸等といった鉄イオンをキレート可能な酸性物資を根から分泌することが知られている。発芽時の稲種子においても、幼根からこのような酸性物質が分泌され、種子を被覆していた製鋼スラグに起因するアルカリを中和することにより、正常な発芽が可能になっているものと考えられる。また、このような酸性物質の分泌により、製鋼スラグに含まれる鉄などが鉄イオンとしてキレートされることにより、幼根から吸収しやすくなることが考えられる。
○脱リンスラグ、脱炭スラグについて
脱リンスラグ及び脱炭スラグについても、上記の所定量の成分を含有する製鋼スラグと同様の成分を含有しているが、その含有量は、上記製鋼スラグにおける諸成分の含有量とは異なる場合がある。しかしながら、脱リンスラグや脱炭スラグであれば、上記の所定量の成分を含有する製鋼スラグとは異なる含有量の成分が存在していたとしても、本実施形態において稲種子を被覆するためのスラグとして利用することが可能である。
<製鋼スラグにおける各成分の含有量の測定方法>
先だって説明したように、本実施形態において、稲種子の被覆に用いられる各種スラグにおける各成分の含有量は、蛍光X線分析法により測定することが可能である。より詳細には、着目する成分について、含有量が既知である標準サンプルを利用して、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を予め測定することで、検量線を作成しておく。含有量が未知のサンプルについては、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を測定し、予め作成しておいた検量線を用いることで、着目する成分の含有量を特定することができる。
着目する蛍光X線のピークについては、特に限定するものではないが、例えば、Ca、Si、Mg、Al、Fe、Mn、Pの蛍光X線ピークに着目すればよい。
なお、各種スラグにおける各成分の含有量の測定方法は、上記のような蛍光X線分析法に限定されるものではなく、その他の公知の分析手法を適宜利用することが可能である。
<稲種子について>
次に、本実施形態に係る被覆稲種子で利用可能な稲種子について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆稲種子で利用可能な稲種子の種類については、特に限定されるものではなく、例えばイネ科イネ属に属する植物の種子等のような、あらゆる稲種子を利用することが可能である。
<被覆稲種子の製造方法について>
続いて、以上説明したような製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグを用いて、被覆稲種子を製造する方法について、詳細に説明する。
製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグを被覆する稲種子は、種もみとも呼ばれるものである。稲種子の被覆に用いられる製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグに対して水を混合することで、これらのスラグは固結する性質を有する。製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグに加える水の混合割合であるが、上記スラグと水との混合物における水の質量割合(すなわち、混合物の全体の質量に対する水の質量割合)が10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。上記スラグと水との混合物における水の質量割合が10質量%未満である場合、上記スラグの稲種子表面への付着性が悪くなり、被覆が難しくなる可能性が高くなる。一方、上記スラグと水との混合物における水の質量割合が80質量%超過となる場合、水の割合が高すぎるため、稲種子の表面を上記スラグで被覆することができなくなる可能性が高くなる。したがって、上記スラグと水との混合物における水の質量割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグを用いた種子被覆を安定的に成功させるためには、水の質量割合を25質量%以上50%質量以下とすることがより好ましい。
次に、製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグを水と混合した混合物により稲の種子を被覆する方法について説明する。予め上記スラグを水と混合した混合物を作製し、この混合物と稲種子とを混合させることで、稲種子を被覆することができる。あるいは、上記スラグと稲種子と水とを一緒に混合させることで、稲種子を上記スラグで被覆することも可能である。混合する方法は、如何なる方法でも構わない。大量に処理する場合には、例えば、回転式造粒機を用いて混合して、稲種子を上記スラグで被覆することも可能である。
製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグで被覆した稲種子は、取り出して使用する。なお、上記スラグで被覆する量であるが、特に限定されるものではない。より好ましくは、稲種子の質量を1とした場合に、0.1〜2程度の質量の上記スラグを用いて、かかる稲種子を被覆することが好ましい。通常、スラグと水とを混合した混合物に対して稲種子を混合するのみで実現される被覆量は、上記範囲に入るものとなる。しかしながら、スラグが稲種子の表面に全面被覆されていない場合には、再度、スラグと水を混合した混合物に対して稲種子を混合することが好ましい。
なお、上記スラグの固結を高めるために、高炉スラグ微粉末又は硫酸カルシウムを、製鋼スラグ、脱リンスラグもしくは脱炭スラグ、製鋼スラグ、脱リンスラグもしくは脱炭スラグと水の混合物、又は、製鋼スラグ、脱リンスラグもしくは脱炭スラグと水と稲種子との混合物に対して加えることも有効である。
製鋼スラグで稲種子を被覆する際、種子表面に存在する剛毛により、被覆物の種子表面への密着性が弱くなるという現象が生じる可能性がある。この現象を解決する方策の一つとして、稲種子をでんぷん水溶液に浸漬した後、製鋼スラグで被覆することが挙げられる。このような処理により、被覆物の密着性を上げることができる。でんぷん水溶液の濃度(すなわち、水溶液の全体の質量に対するでんぷんの質量割合)は、40質量%〜80質量%であることが好ましい。でんぷん水溶液に稲種子を浸漬した後、稲種子を製鋼スラグで被覆することにより、1粒の稲種子の質量と被覆物の質量の比を、1:0.6〜1:2程度にまで高めることが可能である。
また、製鋼スラグで被覆した稲種子に対して、更に外側から石膏で被覆することも可能である。製鋼スラグ及び石膏を用いて稲種子を二重に被覆することにより、製鋼スラグの被覆による稲種子への密着性を高めることができる。製鋼スラグの被覆された稲種子を外側から石膏で被覆する方法としては、例えば、製鋼スラグで被覆し、乾燥させた被覆稲種子を、石膏の水懸濁物に浸漬して取り出して、室温で乾燥させるという方法を用いることで実行可能である。石膏の水懸濁物の濃度は、例えば20質量%〜60質量%であることが好ましい。
製鋼スラグと、石膏及び/又は鉄粉と、を混合したもので稲種子を被覆することも可能である。稲種子の被覆に用いる製鋼スラグが不足する場合、不足する製鋼スラグの補完的な資材として、石膏を用いることができる。この場合、製鋼スラグに対し石膏を混合して用いる。鉄粉は比重が大きいため、被覆種子の重量を増し、水田においてより流亡しにくくさせる効果がある。製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したもので稲種子を被覆する場合は、あらかじめ製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合し、水を加えた懸濁物に稲種子を浸漬した後に取り出して、室温で乾燥することで被覆することが可能である。
製鋼スラグに石膏を添加する場合、製鋼スラグに対する石膏の割合は20質量%を超えないことが好ましい。製鋼スラグに添加する石膏の割合が20質量%超過となると、石膏の割合が高すぎるため、発芽率を下げる恐れがある。また、製鋼スラグに鉄粉を添加する場合も、製鋼スラグに対する鉄粉の質量割合は50質量%を超えないことが好ましい。鉄粉の割合が50質量%超過となると、鉄粉から溶け出た二価鉄イオンが酸化して三価鉄イオンになり、水酸化物として沈殿する際に酸性となって、この影響で発芽や幼根の生長に悪影響を及ぼす場合があるからである。また、鉄粉は高価なため、鉄粉の割合が高くなるとコスト的にも不利になるからである。
なお、製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したもので稲種子を被覆する場合、製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したものに水を加えた混合物を用いて稲種子を被覆するのであるが、かかる混合物における水の質量割合(混合物の全体の質量に対する水の質量割合)は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。水の質量割合が10質量%未満の場合には、製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したものの稲種子表面への付着性が悪くなり、被覆が難しくなる可能性が高くなる。一方、製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したものと、水と、の混合物における水の質量割合が80質量%超過となる場合、水の割合が高すぎるため、稲種子の表面を製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したもので被覆することができなくなる可能性が高くなる。したがって、製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したものと、水と、の混合物における水の質量割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグと石膏及び/又は鉄粉とを混合したものを用いた種子被覆を安定的に成功させるためには、水の質量割合を25質量%以上50%質量以下とすることがより好ましい。
<被覆稲種子の製造の際に用いる水について>
製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏との混合物により稲種子を被覆する際に、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏との混合物に対して混合する水であるが、純水のほか、水道水、地下水、農業用水等を使用することも可能であるが、廃糖蜜を含有する水を用いることがより好ましい。廃糖蜜とは、サトウキビ等の搾り汁から砂糖を精製する際に副産される黒褐色の液体であり、糖分を70〜80%程度含むほか、ミネラルやビタミンも含有している。廃糖蜜は、特に、植物の細胞生長に必要なカリウムを2%程度含んでいる。カリウムは、植物の根から吸収され、植物細胞の生長に必要な成分である。従って、被覆稲種子を製造する際に廃糖蜜を含有する水を用いることで、作製した稲種子の被覆物から、廃糖蜜由来のカリウムも供給でき、幼植物の生長を更に促進することも期待できる。
廃糖蜜は、副産物であることから安価に入手することができる。廃糖蜜を含有する水を用いることで、廃糖蜜の粘着性を利用して被覆物の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、製鋼スラグによる肥料効果に加えて、より促すことができる。
廃糖蜜を含有する水に含まれる廃糖蜜の質量割合が、全体質量に対して10質量%未満である場合、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏との混合物からなる種子被覆物の固化と種子への付着安定性を補強する効果が、明確に発現しづらくなる。一方、廃糖蜜を含有する水に含まれる廃糖蜜の質量割合が、全体質量に対して50質量%を超える場合、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏との混合物と、この廃糖蜜を含有する水と、を混合すると、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏との混合物がだまになってしまい、種子に付着しづらくなる。従って、廃糖蜜を含有する水に含まれる廃糖蜜の質量割合は、全体質量に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
<アルギン酸ナトリウム水溶液を用いる被覆稲種子の表面処理について>
アルギン酸ナトリウムは、藻類である褐藻等に含まれる多糖類の一種である。アルギン酸ナトリウムの水溶液に対してCaやMgを添加すると、ゲル化する性質がある。製鋼スラグは、CaとMgを含有し、石膏は、Caを含有するため、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏との混合物の表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を付加することによって、ゲル化が起こり、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏とからなる種子被覆物の種子への付着の安定性を補強することが可能となる。アルギン酸ナトリウムも用いて作製した被覆稲種子を土壌に直播すると、アルギン酸は、土壌微生物の作用により分解されて、アルギン酸オリゴ糖となる。アルギン酸オリゴ糖は、被覆物の製鋼スラグに含まれるミネラルと結合して、植物根へのミネラル吸収を助ける効果があり、発芽後の幼植物の生長を促進する効果が期待できる。
種子被覆物の表面へのアルギン酸ナトリウム水溶液の付加方法であるが、例えば、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏とで被覆した種子の表面に対して、アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧したり、散水したりする等の方法がある。また、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏とで被覆した種子を、アルギン酸ナトリウム水溶液に被覆物が剥離しないように注意して短時間浸すなどの方法を行うことも可能である。なお、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度が、水溶液の全体質量に対して0.5質量%未満の場合には、アルギン酸ナトリウムの濃度が低すぎるため、ゲル化がしっかりと起こらず、被覆物の種子への付着の安定性を補強する効果が発現しない可能性がある。また、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度が、水溶液の全体質量に対して5質量%を超える場合には、ゲルが強固になりすぎて、発芽を抑制する可能性がある。従って、製鋼スラグ、又は、製鋼スラグと石膏とからなる種子被覆物の表面に付加するアルギン酸ナトリウム水溶液の濃度は、水溶液の全体質量に対して0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。なお、アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧あるいは散水して付加する場合のアルギン酸ナトリウム水溶液の量であるが、種子被覆物の表面全面を湿らせる程度の量でよい。
製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグにより被覆した稲種子は、例えば風通しのよいところ等で空気乾燥させた後、直播に用いることができる。被覆をすることで通気性が悪くなり、稲種子の呼吸が抑制されるため、被覆後なるべく早い時期に播種することが好ましい。可能であれば、被覆後4日以内に播種することが好ましい。
ただし、被覆後半年間程度までであれば、被覆稲種子を保管して直播に用いることも可能である。
なお、上記説明において、製鋼スラグの組成は、水と混合する前の組成で示してある。水と混合した後に製鋼スラグの組成を確認するためには、水を蒸発させて乾燥させた状態で製鋼スラグを回収し、回収した製鋼スラグの組成を調べればよい。このように、被覆する前の製鋼スラグの成分組成と、被覆後の製鋼スラグの成分組成とは、殆ど変わらない。
上記のように、製鋼スラグ、脱リンスラグ又は脱炭スラグを用いて簡便かつ安価に被覆した稲種子を作製することができる。このようにして作成された被覆稲種子は、直播に使用することができ、米作の効率と生産性を高めることが可能となる。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、以下で説明する実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
[実施例1]
表1に組成を示した9種類のスラグを、最大粒径600μm未満に篩分けして調製したものを用意した。試料A、C、D、E、Fは、鉄鋼プロセスの転炉から得た製鋼スラグである。試料Bは、溶銑予備処理工程から得た製鋼スラグである。試料Gは、脱リンスラグ、試料Hは、脱炭スラグである。試料Iは、試料Gと試料Hの双方を50質量%ずつ混合して調製したものである。
これらの試料のうち、試料A〜試料Eの5種類の製鋼スラグの組成は、いずれも、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下であり、かつ、SiOの含有量が8質量%以上30質量%以下であった。また、試料A〜試料Eの5種類の製鋼スラグの組成は、更に、MgOの含有量が1質量%以上20質量%以下、Alの含有量が1質量%以上25質量%以下、Feの含有量が5質量%以上35質量%以下、Mnの含有量が1質量%以上8質量%以下、Pの含有量が0.1質量%以上5質量%以下という組成も満足するものであった。
一方、試料Fは、CaO含有量が55%であり、脱リンスラグや脱炭スラグでもないため、比較例に相当する製鋼スラグの試料である。
また、試料Gは、SiO含有量は35.0%と、本発明において稲種子に用いる製鋼スラグの組成からは逸脱しているが、脱リンスラグであって、本発明に係る試料である。試料Hは、脱炭スラグであり、本発明に係る試料である。試料Iは、脱リンスラグと脱炭スラグとの混合物であり、本発明に係る試料である。
Figure 0006553483
篩分け粒径600μm未満に調製した9種類の試料に対して、各試料と水との混合物における水の質量割合が30%となるように水を加え、混合した。各試料と水との混合物に対し、稲種子(品種:「ふさこがね」)を入れて混合して、稲種子を上記試料で被覆した。なお、被覆に用いた各試料の質量は、稲種子の質量を1としたときに0.6に対応するものであった。被覆した稲種子を3時間、風通しのよい状態で空気乾燥した。以上のようにして、上記の稲種子コーティング材で被覆した稲種子を作製した。作製した稲種子は、その表面が上記試料により全面被覆されていた。
塩化ナトリウム水溶液(比重1.4)を用意し、前記9種類のスラグで被覆した稲種子、及び、無被覆の稲種子のそれぞれが沈降するか否かを調べた。表2に結果を示したように、無被覆の稲種子は沈降しなかったのに対して、試料A〜試料Iのスラグで被覆した稲種子は、いずれも沈降した。したがって、上記のような各種スラグで被覆することにより、稲種子の沈降性が増すことが確認できた。
Figure 0006553483
[実施例2]
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、実施例1と同様の方法で表1に組成を示した9種類の各スラグで被覆した稲種子を、試料ごとに異なるシャーレのろ紙上に25粒ずつ置いた。対照として、製鋼スラグで被覆しなかった無被覆の稲種子についてもシャーレを用意し、同様に蒸留水に浅く浸したろ紙上に25粒置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、発芽したものについては、幼根と幼苗の長さを測定した。
以下の表3に、発芽数及び発芽率の結果を示す。
Figure 0006553483
製鋼スラグは、pH11前後のアルカリ性を示す資材であるが、本発明の試料A〜試料Eのいずれで被覆した稲種子も、無被覆の稲種子と同様に、80%前後の発芽率であり、本発明の稲種子コーティング材で被覆した稲種子は、対照の無被覆稲種子と同程度の発芽率であることが確認できた。一方、試料Fでは、CaO含有量が55%と高くアルカリ性が強い製鋼スラグであるため、発芽率は60%と、無被覆稲種子の発芽率と比較して低い発芽率であった。脱リンスラグである試料G及び脱炭スラグである試料H、並びに、脱リンスラグと脱炭スラグの双方を混合して調製した試料Iでは、発芽率はいずれも84%であり、無被覆稲種子と同じ発芽率となった。
図1に、各試料で被覆した種子及び対照となる無被覆の種子について、発芽した幼根の長さの測定結果の平均値をグラフで比較して示した。また、図1では、標準偏差もあわせて示した。
図2に、各試料で被覆した種子及び対照となる無被覆の種子について、発芽した幼苗の長さの測定結果の平均値を、グラフで比較して示した。また、図2では、標準偏差もあわせて示した。
図1、図2に結果を示したように、本発明に係る試料A〜試料Eの5種類のスラグで被覆した種子のほうが、対照の無被覆種子よりも発芽後の幼根の生長、幼苗の生長ともに促進された。また、脱リンスラグである試料G、脱炭スラグである試料H、及び、脱リンスラグと脱炭スラグの双方を混合して調製した試料Iで被覆した稲種子は、対照の無被覆稲種子よりも発芽後の幼根の生長、幼苗の生長ともに促進された。一方、CaO含有量が55%と高い試料Fで被覆した稲種子では、試料A〜試料E、試料G、試料H及び試料Iで被覆した稲種子と比較して、幼根の生長、幼苗の生長ともに抑制された。ただし、無被覆の稲種子よりは、幼根の生長、幼苗の生長ともに促進された。
したがって、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下、SiOの含有量が10質量%以上30質量%以下、MgOの含有量が1質量%以上20質量%以下、Alの含有量が1質量%以上25質量%以下、Feの含有量が5質量%以上35質量%以下、Mnの含有量が1質量%以上8質量%以下、Pの含有量が0.1質量%以上5質量%以下である組成の製鋼スラグで被覆した稲種子の発芽率は、対照の無被覆種子と同等であり、発芽後の根と苗の生長を無被覆の稲種子と比較して促進できることが確認できた。また、脱リンスラグと脱炭スラグ、及び、脱リンスラグと脱炭スラグの双方を混合したもので被覆した稲種子の発芽率は、対照の無被覆稲種子と同程度であり、発芽後の根と苗の生長を促進できることが確認できた。
[実施例3]
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、表1に組成を示した最大粒径600μmの試料Bで被覆した稲種子と、同じく最大粒径600μmの純鉄の鉄粉で被覆した稲種子を、異なるシャーレのろ紙上にそれぞれ25粒ずつ置いた。対照として、製鋼スラグで被覆しなかった無被覆の稲種子についてもシャーレを用意し、同様に蒸留水に浅く浸したろ紙上に25粒置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、発芽したものについては、幼根と幼苗の長さを測定した。
以下の表4に、発芽数及び発芽率の結果を示す。
Figure 0006553483
本発明の試料Bで被覆した稲種子は、無被覆稲種子及び鉄粉稲種子よりも高い発芽率であった。
図3に、発芽した幼根の長さの測定結果の平均値を、グラフで比較して示した。また、図3では、標準偏差もあわせて示した。
図4に、発芽した幼苗の長さの測定結果の平均値を、グラフで比較して示した。また、図4では、標準偏差もあわせて示した。
図3、図4に結果を示したように、本発明の試料Bで被覆した種子のほうが、無被覆稲種子及び鉄粉稲種子よりも発芽後の幼根の生長、幼苗の生長ともに促進された。
したがって、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下、SiOの含有量が10質量%以上30質量%以下、MgOの含有量が1質量%以上20質量%以下、Alの含有量が1質量%以上25質量%以下、Feの含有量が5質量%以上35質量%以下、Mnの含有量が1質量%以上8質量%以下、Pの含有量が0.1質量%以上5質量%以下である組成の製鋼スラグで稲種子を被覆することにより、鉄粉で稲種子を被覆するよりも、より安価に生長のよい被覆稲種子を得られることが確認できた。
[実施例4](鉄粉との比較)
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、実施例1に記載の方法で、表1に組成を記載した最大粒径600μmの製鋼スラグ試料Cで被覆した稲種子と、同じく最大粒径600μmの純鉄の鉄粉で被覆した稲種子と、を、異なるシャーレのろ紙上にそれぞれ25粒ずつ置いた。対照として、製鋼スラグで被覆しなかった無被覆の稲種子についてもシャーレを用意し、同様に蒸留水に浅く浸したろ紙上に20粒置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、発芽したものについては、幼根の長さを測定した。
以下の表5に、発芽数及び発芽率の結果を示す。
Figure 0006553483
本発明の製鋼スラグ試料Cで被覆した稲種子は、無被覆稲種子と同等の発芽率であり、また、鉄粉稲種子よりも高い発芽率であった。
図5に、発芽した幼根の長さの測定結果の平均値を、グラフで比較して示した。
本発明の製鋼スラグ試料Cで被覆した種子は、無被覆稲種子と同等の幼根の生長を示した。一方、鉄粉稲種子では発芽後の幼根の生長は著しく悪かった。
シャーレに残った水のpHを調べた結果、無被覆稲種子のシャーレの水はpH5.8、試料Cで被覆した稲種子のシャーレの水はpH8.0であったが、鉄被覆稲種子のシャーレの水はpH4.0と酸性化していた。鉄が溶けて水酸化鉄になることで酸性化し、この酸性化した条件が鉄被覆稲種子の発芽後の幼根の生長を阻害したものと考えられる。
したがって、CaOの含有量が25質量%以上50質量%以下、SiOの含有量が10質量%以上30質量%以下、MgOの含有量が1質量%以上20質量%以下、Alの含有量が1質量%以上25質量%以下、Feの含有量が5質量%以上35質量%以下、Mnの含有量が1質量%以上8質量%以下、Pの含有量が0.1質量%以上5質量%以下である組成の製鋼スラグで稲種子を被覆することにより、鉄粉で稲種子を被覆するよりも、より安価に生長のよい被覆稲種子を得られることが確認できた。また、鉄被覆稲種子では、水酸化鉄形成に伴う酸性化により、条件によっては幼根の生長を阻害することが明らかとなった。
[実施例5](長期保存)
実施例1に記載の方法で、表1に組成を記載した最大粒径600μmの製鋼スラグ試料Cで被覆した稲種子と、対照の無被覆の稲種子と、を暗所室温で保管した。試料Cで被覆して室温で3時間乾燥後の被覆稲種子(0日)と、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間保管した被覆稲種子の発芽率を調べた。比較のため、同じ環境で保管した無被覆の稲種子についても、発芽率を調べた。発芽率の調査は、以下の方法による。
保管期間0日、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間がそれぞれ経過した時点で、発芽試験を実施した。
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に被覆稲種子を20粒ずつ置いた。対照として、製鋼スラグで被覆しなかった無被覆の稲種子についてもシャーレを用意し、同様に蒸留水に浅く浸したろ紙上に20粒置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。
図6に、保管期間と発芽率の結果を示す。
製鋼スラグ試料Cはアルカリ性であるが、発芽試験の結果、試料Cで被覆した稲種子は、6ヶ月間保管しても良好に発芽できることが明らかとなった。したがって、本発明の被覆稲種子は長期間の保管が可能である。
[実施例6](でんぷん処理)
50質量%となるようにでんぷんを水に懸濁させた液に対して、コシヒカリ種子40粒を10分間浸漬した。でんぷん懸濁液から種子を取り出し、実施例1に記載の製鋼スラグ試料Cを66質量%で水に懸濁させた試料Cの懸濁物中で種子をかき混ぜ、種子を試料Cで被覆し、被覆した種子を取り出して、24時間室温で乾燥した。対照として、でんぷんの懸濁液に浸漬しなかった稲種子40粒も、実施例1に記載の製鋼スラグ試料Cを66質量%で水に懸濁させた試料Cの懸濁物中で種子をかき混ぜ、でんぷん処理を実施しない種子を用意した。
でんぷん処理した種子及びでんぷん処理しない種子をそれぞれ試料Cで被覆した種子一粒あたりの質量の平均値と、無被覆種子の質量の平均値と、を以下の表6に示した。また、試料Cで被覆した稲種子質量から無被覆種子の質量を差し引くことで被覆物質量を計算して、あわせて表6に示した。更に、無被覆種子の質量に対する被覆物質量の比も示した。
Figure 0006553483
でんぷん処理をしなかった種子では、無被覆種子の質量に対する被覆物の質量の比が0.49であったが、でんぷん処理をした種子では、無被覆種子の質量に対する被覆物の質量の比が1に増加し、被覆物の付着量を増加させることができた。
試料Cで被覆後、24時間室温で乾燥させた、でんぷん処理した試料Cで被覆した稲種子及びでんぷん処理しなかった試料Cで被覆した稲種子各20粒を、高さ20cmの位置から鉄板上に一回自然落下させた。鉄板上に落下した稲種子を回収し、質量を測定して落下後の一粒当たりの被覆物質量を調べ、結果(平均値)を以下の表7に示した。
また、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比を計算し、以下の表7にあわせて示した。
Figure 0006553483
でんぷん処理した場合、でんぷん処理しなかった場合と比べて、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比が大きな値となった。したがって、でんぷん処理によって被覆物の固着性が上がり、被覆物が剥離しにくくなったことがわかった。
試料Cで被覆後、24時間室温で乾燥させた被覆稲種子を用いて発芽試験を行った。11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、でんぷん処理した被覆稲種子とでんぷん処理をしなかったものとを、20粒ずつ置いた。対照として、製鋼スラグで被覆しなかった無被覆の稲種子についてもシャーレを用意し、同様に蒸留水に浅く浸したろ紙上に20粒置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。なお、対照として無被覆の稲種子を用いて同様に発芽試験を行った。以下の表8は、発芽率の結果である。
Figure 0006553483
でんぷん処理した被覆稲種子は、でんぷん処理なしの被覆稲種子や無被覆稲種子と同等の高い発芽率を示した。
したがって、でんぷん処理した稲種子を製鋼スラグで被覆することにより、被覆物の質量を増加させることができ、かつ発芽率も高い値で維持できることが明らかとなった。
[実施例7](石膏外被覆)
コシヒカリ種子80粒について、実施例1に記載の製鋼スラグ試料Cを66質量%で水に懸濁させた試料Cの懸濁物中で種子をかき混ぜ、種子を試料Cで被覆し、被覆した種子を取り出して、室温で24時間乾燥した。試料Cで被覆した80粒の種子のうち、40粒について、更に石膏による外被覆を行った。石膏による外被覆は、以下のように行った。
半水石膏を30質量%で水に懸濁させた石膏の懸濁物に対し、試料Cで被覆した種子40粒を浸漬し、速やかに取り出し、室温で更に24時間乾燥させることで、試料Cの被覆の外側に更に石膏で外被覆した種子40粒を作製した。
以下の表9に、試料Cのみで被覆した稲種子、試料Cで被覆し、更に石膏で外側を被覆した稲種子、及び、無被覆の稲種子について、一粒あたりの平均質量を示した。また、被覆した稲種子質量から無被覆種子の質量を差し引くことで被覆物質量を計算して、表9にあわせて示した。更に、無被覆種子の質量に対する被覆物質量の比も示した。
Figure 0006553483
試料Cのみで被覆した種子では、無被覆種子の質量に対する被覆物の質量の比が0.54であったが、試料Cで被覆し、更に石膏で外側を被覆した種子では、無被覆種子の質量に対する被覆物の質量の比が0.93であり、試料Cで被覆後、石膏で外側から更に被覆させることで付着量を増加させることができた。
試料Cで被覆した稲種子、及び、試料Cで被覆し、更に石膏で外側を被覆した稲種子各20粒を、高さ20cmの位置から鉄板上に一回自然落下させた。鉄板上に落下した稲種子を回収し、質量を測定して落下後の一粒当たりの被覆物質量を調べ、結果(平均値)を以下の表10に示した。
また、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比を計算し、以下の表10にあわせて示した。
Figure 0006553483
試料Cで被覆し、更に石膏で外側を被覆した場合、試料Cのみで被覆した場合と比べて、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比が大きな値となった。したがって、製鋼スラグで被覆し、更に石膏で外側を被覆したことによって、被覆物の付着性が上がり、被覆物が剥離しにくくなったことがわかった。
試料Cのみで被覆した稲種子、及び、試料Cで被覆後石膏により更に外側を被覆した稲種子の各20粒を、発芽試験に用いた。11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、試料Cのみで被覆した稲種子と、試料Cで被覆後石膏により更に外側を被覆した稲種子とを、20粒ずつ置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。以下の表11は、発芽率の結果である。
Figure 0006553483
試料Cで被覆した後石膏で外側を被覆した稲種子は、試料Cのみで被覆した稲種子と同等に、80%以上の高い発芽率を示した。
したがって、稲種子を製鋼スラグで被覆した後、石膏で外側を被覆すると、被覆稲種子の一粒あたりの質量を増加でき、かつ、発芽率も高く維持できることが明らかとなった。
[実施例8](添加剤としての石膏の使用)
実施例1に記載の製鋼スラグ試料C、及び、試料Cに石膏を90%対10%、80%対20%、50%対50%の質量割合で添加したものを、それぞれ用意した。試料Cあるいは試料Cに石膏を添加したものの水に対する割合が66質量%となるように水に懸濁させ、この懸濁物中にコシヒカリ種子40粒ずつを入れ、かき混ぜ、種子を取り出し、室温で24時間乾燥させることにより、試料Cあるいは試料Cに異なる割合で石膏を添加したもので被覆した稲種子を作製した。
以下の表12に、試料C、及び、試料Cに石膏を90%対10%、80%対20%、50%対50%の質量割合で添加したもので被覆した稲種子の一粒あたりの平均質量を示した。また、無被覆の稲種子の一粒あたりの平均質量も示した。また、被覆した稲種子質量から無被覆種子の質量を差し引くことで被覆物質量を計算して、表12にあわせて示した。更に、無被覆種子の質量に対する被覆物質量の比も示した。
Figure 0006553483
試料Cのみで被覆した種子では、無被覆の種子の質量に対する被覆物の質量の比が0.49であったが、試料Cに石膏を90%対10%、80%対20%、50%対50%の質量割合で添加したもので被覆した種子においても、無被覆種子の質量に対する被覆物質量の比はほぼ同様の値となった。したがって、試料Cと同様に試料Cに石膏を90%対10%、80%対20%、50%対50%の質量割合で添加したものを用いても、稲種子を被覆できることがわかる。
試料Cで被覆した稲種子、及び、試料Cに石膏を90%対10%、80%対20%、50%対50%の質量割合で添加したもので被覆した稲種子の各20粒ずつを、高さ20cmの位置から鉄板上に一回自然落下させた。鉄板上に落下した種子を回収して質量を測定し、落下後の被覆物質量を調べると共に、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比を計算し、以下の表13に示した。
Figure 0006553483
試料Cのみで被覆した場合と、試料Cに石膏を90%対10%、80%対20%、50%対50%の質量割合で添加したもので被覆した場合において、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比はほぼ同じ値であり、製鋼スラグに石膏を添加したもので稲種子を被覆することが可能であることがわかった。
24時間乾燥させて、全ての被覆物が十分に固化したことを確認後、発芽試験を行った。11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、試料Cのみで被覆した稲種子と、試料Cに石膏を添加したもので被覆した稲種子とを、20粒ずつ置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。なお、比較のため、でんぷん処理をしていない稲種子のほか、実施例6に記載の方法ででんぷん処理した稲種子を用いた発芽試験についても、同様に行った。以下の表14は、発芽率の結果である。
Figure 0006553483
でんぷん処理しなかった稲種子、及び、でんぷん処理した稲種子ともに、試料Cのみによる被覆である場合、及び、試料Cに石膏を添加したものの割合が80%対20%までの場合は発芽率が80%以上であり、無被覆の種子同様の高い発芽率であった。一方で、試料Cに石膏を添加したものの割合が50%対50%の資材で被覆した種子の発芽率は、40%、50%と低くなった。したがって、製鋼スラグに石膏を添加した資材を種子の被覆に用いる際の製鋼スラグに対する石膏の添加割合の上限は、20%が適当と考えられる。
[実施例9](添加剤としての鉄粉の使用)
実施例1に記載の製鋼スラグ試料C、試料Cに鉄粉を質量割合で80%対20%、50%対50%、20%対80%の割合で添加したもの、及び、鉄粉を用意した。試料C、試料Cに鉄粉を添加したもの、又は、鉄粉について、水に対する割合が66質量%となるように水に懸濁させ、この懸濁物中にコシヒカリ種子20粒ずつを入れ、かき混ぜ、種子を取り出し、室温で24時間乾燥させることにより、試料Cのみで被覆した稲種子、試料Cに鉄粉を添加したもので被覆した稲種子、及び、鉄粉のみで被覆した稲種子を作製した。また、50質量%となるようにでんぷんを水に懸濁させた液に対し、コシヒカリ種子を10分間浸漬した後、でんぷん懸濁液から取り出したコシヒカリ種子20粒ずつについても同様に、この試料Cの懸濁物中、試料Cに鉄粉を添加したものの懸濁物中、又は、鉄粉の懸濁物中に入れ、かき混ぜ、種子を取り出し、室温で24時間乾燥させることにより、試料Cで被覆したでんぷん処理した稲種子、試料Cに鉄粉を添加したもので被覆したでんぷん処理した稲種子、及び、鉄粉で被覆したでんぷん処理した稲種子を作製した。
以下の表15に、でんぷん処理しなかった種子について、試料Cで被覆した稲種子、試料Cに鉄粉を質量割合で80%対20%、50%対50%、20%対80%の割合で添加したもので被覆した稲種子、及び、鉄粉で被覆した稲種子について、一粒あたりの平均質量を示した。また、無被覆の稲種子の一粒あたりの平均質量もあわせて示した。また、被覆した稲種子質量から無被覆種子の質量を差し引くことで被覆物質量を計算して、表15にあわせて示した。更に、無被覆種子の質量に対する被覆物質量の比も示した。
Figure 0006553483
表15に示したように、鉄粉のほうが製鋼スラグよりも比重が大きいため、鉄粉の存在割合が大きい場合の方が被覆物質量は大きくなる傾向であった。
以下の表16に、でんぷん処理した種子について、試料Cで被覆した稲種子、試料Cに鉄粉を質量割合で80%対20%、50%対50%、20%対80%の割合で添加したもので被覆した稲種子、及び、鉄粉で被覆した稲種子について、一粒あたりの平均質量を示した。また、被覆した稲種子質量から無被覆種子の質量を差し引くことで被覆物質量を計算して、表16にあわせて示した。更に、無被覆種子の質量に対する被覆物質量の比も示した。
Figure 0006553483
でんぷん処理した種子では、表15に示したでんぷん処理しなかった種子の場合と比べて、被覆物質量が大きな値となった。したがって、でんぷん処理した種子を用いることで、製鋼スラグのみならず製鋼スラグに鉄粉を添加したものや、鉄粉をより多く被覆物として付着させた稲種子を作ることが可能となることがわかる。
でんぷん処理しなかった稲種子について、試料Cで被覆した稲種子、試料Cに鉄粉を質量割合で80%対20%、50%対50%、20%対80%の割合で添加したもので被覆した稲種子、及び、鉄粉で被覆した稲種子の各20粒ずつを、高さ20cmの位置から鉄板上に一回自然落下させた。鉄板上に落下した種子を回収して質量を測定し、落下後の被覆物質量を調べると共に、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比を計算し、以下の表17に示した。
Figure 0006553483
でんぷん処理しなかった種子では、製鋼スラグで種子を被覆した場合、製鋼スラグに鉄粉を添加したもので種子を被覆した場合、及び、鉄粉で種子を被覆した場合のいずれについても、一回の鉄板上への落下で60%前後の被覆物が残存した。最も被覆物の残存量が少ないのは、鉄粉で種子を被覆した場合であり、55%が残存していた。
でんぷん処理した稲種子について、試料Cで被覆した稲種子、試料Cに鉄粉を質量割合で80%対20%、50%対50%、20%対80%の割合で添加したもので被覆した稲種子、及び、鉄粉で被覆した稲種子の各20粒ずつを、高さ20cmの位置から鉄板上に一回自然落下させた。鉄板上に落下した種子を回収して質量を測定し、落下後の被覆物質量を調べると共に、落下前の被覆物質量に対する落下後の被覆物質量の比を計算し、以下の表18に示した。
Figure 0006553483
でんぷん処理した種子では、表17に示したでんぷん処理しなかった種子と比較して、製鋼スラグで種子を被覆した場合、製鋼スラグに鉄粉を添加したもので種子を被覆した場合、及び、鉄粉で種子を被覆した場合のいずれも、一回の鉄板上への落下で残存する被覆物の量が大きくなった。でんぷん処理することによって、製鋼スラグで被覆した場合、製鋼スラグに鉄粉を添加したもので被覆した場合、及び、鉄粉で被覆した場合のいずれにおいても、被覆物の固着性が上がり、被覆物が剥離しにくくなったことがわかった。
また、24時間乾燥させて、全ての被覆物が十分に固化したことを確認後、発芽試験を行った。
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、試料Cでのみ被覆した稲種子と、試料Cに鉄粉を添加したもので被覆した稲種子と、を20粒ずつ置いた。各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。7日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、根の長さを測定し、根の平均長さを算出した。また、シャーレに残留している水のpHを測定した。比較のため、無被覆の稲種子を用いた発芽試験も同様に行った。
なお、比較のため、でんぷん処理をしていない稲種子のほか、実施例6に記載の方法ででんぷん処理した稲種子を用いた発芽試験も、同様に行った。以下の表19は、発芽率、根の平均長さ、残留水のpHの結果である。
Figure 0006553483
でんぷん処理していない稲種子、でんぷん処理した稲種子ともに、いずれの場合も発芽率は80%以上であることが確認できた。ただし、被覆物の鉄粉の質量割合が80%の場合と鉄粉のみの場合では、でんぷん処理していない稲種子では根の平均長さが34mm、26mm、でんぷん処理した稲種子では38mm、30mmと明らかに短くなっており、根の生長抑制が見られた。被覆物の鉄粉の質量割合が80%の場合と鉄粉のみで被覆の場合では、でんぷん処理していない稲種子では残留水のpHが4.4、3.8、でんぷん処理した稲種子では4.3、3.7と酸性化していた。鉄粉が存在すると、溶出した2価鉄イオンが空気中の酸素や鉄酸化細菌などの微生物の作用により3価鉄イオンに酸化され、3価鉄イオンが水酸化第二鉄のような化学形態で沈殿することにより、酸性化したものと考えられる。種子被覆物の鉄粉の割合が高い場合、種子周囲の水が酸性化することで根の生長が抑制されたものと考えられる。一方で、製鋼スラグ80%対鉄粉20%、50%対50%の質量割合の場合では、根の生長もよく、残留水のpHも根の生長に適すると考えられる中性から弱酸性であった。これは、鉄粉に起因する酸性化に対して製鋼スラグのアルカリ性による中和効果が発揮されたものと考えられる。
したがって、製鋼スラグに添加剤として鉄粉を混合して用いることができるが、製鋼スラグに添加する鉄粉の質量割合は50質量%以下がよいと考えられる。
[実施例10](廃糖蜜を含有する水の使用1)(沈降性、水中での崩壊性)
表1に組成を示した試料Cの製鋼スラグを利用し、最大粒径600μm未満に篩分けしたものを用意した。また、廃糖蜜の質量割合が5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%となるように、純水に廃糖蜜を溶解した水を用意した。また、対照として、廃糖蜜を含まない純水(廃糖蜜の質量割合が0質量%)も用意した。
上記のような各質量割合の廃糖蜜を含有する水を用いて、試料Cと水との混合物における水の質量割合が30質量%となるように水を加え、混合した。
試料Cと水との混合物に対し、稲種子(品種:「コシヒカリ」)を入れて混合し、稲種子を上記試料Cで被覆した。その後、被覆した稲種子を、風通しのよい状態で、室温で24時間乾燥させた。
試料Cと廃糖蜜の質量割合が異なる水との混合物で被覆した稲種子の被覆前の質量を1とした場合の被覆物の質量を、以下の表20に示す。
Figure 0006553483
上記表20から明らかなように、廃糖蜜を含有する水における廃糖蜜の質量割合が10%、25%、50%である場合では、被覆前の稲種子の質量を1とした場合の被覆物の質量が1.0、1.2、1.2となり、被覆稲種子の質量が製鋼スラグである試料Cの被覆によって元の稲種子より大きく増加したことがわかる。被覆稲種子の質量が大きくなることで、直播した被覆稲種子が水田で水に浮かんで流亡することを防ぐ効果が期待できる。
廃糖蜜を含有する水における廃糖蜜の質量割合が75%の場合には、試料Cにこの水を加えると試料Cがだまになってしまい、稲種子を被覆することができなかった(表中では、×で示した。)。
次に、塩化ナトリウム水溶液(比重1.4)を入れた容器を用意し、廃糖蜜の質量割合が異なる水を用いて製造した被覆稲種子が沈降するか否かを調べた。更に、この沈降性を調べている容器を1時間ゆるやかに振とう(10rpm)して、1時間後の沈降性も調べた。得られた結果を、以下の表21に示す。
Figure 0006553483
表21から明らかなように、廃糖蜜を含有しない水、又は、廃糖蜜を5質量%含有する水を用いて製造した被覆稲種子は、試験開始直後では沈降性を示した。しかしながら、1時間ゆるやかに振とうさせた場合、被覆物が一部剥離、崩壊してしまい、その結果、沈降性を示さなくなった。この結果は、流れがある水の中では、稲被覆種子の被覆物が一部剥離して、種子が浮いて流亡する恐れがあることを示唆している。ただし、実際の被覆稲種子の直播では、水中ではなく、大気に露出した湿った水田土壌の上に被覆稲種子を撒くため、本試験のような流水による流亡は、ほとんど心配ないと考えられる。
一方、廃糖蜜を10質量%、25質量%、又は、50質量%含有する水を用いて製造した被覆稲種子では、1時間ゆるやかに振とうした後も被覆物がほとんど脱落せず、その結果、沈降性を維持していた。
以上の結果から、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水を用いて製造した被覆稲種子では、被覆物が種子に安定に密着して付着しており、流れのある水中においても被覆物は剥離、脱落しにくいことが明らかとなった。
[実施例11](廃糖蜜を含有する水の使用2)(発芽試験)
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、実施例10で廃糖蜜の質量割合が異なる水を用いて作製した製鋼スラグ試料Cで被覆した被覆稲種子を、それぞれ10粒ずつ置いた。また、粒径600未満の鉄粉と石膏とを9:1の質量比で混合した混合物について、この混合物に廃糖蜜を含有しない水を30質量%加えて混ぜたものに、稲種子を加えて、鉄粉と石膏との混合物で被覆した稲種子を、室温、空気中で24時間乾燥させた被覆稲種子と、対照として、製鋼スラグで被覆しなかった稲種子と、についても、上記と同様にシャーレ内の蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に10粒ずつ置いた。
廃糖蜜の質量割合が75質量%の水を用いた場合には、実施例10に示したように、製鋼スラグである試料Cにこの水を加えて混合しようとしたが、試料Cがだまになってしまい、稲種子を被覆することができなかったため、発芽試験を行うことができなかった。
各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。6日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、発芽したものについては幼根の長さと質量(新鮮重)を測定し、1種子当たりの平均の幼根の長さ(mm)と質量(新鮮重)(g)とを算出した。得られた結果を、以下の表22に示す。
Figure 0006553483
表22から明らかなように、発芽率に関しては、試験した全ての被覆稲種子において、無被覆種子とほぼ同様の発芽率を示す結果を得た。
平均幼根長さに関しては、被覆稲種子の製造の際に用いた水における廃糖蜜の質量割合が5質量%、10質量%、25質量%の場合に、被覆稲種子の平均幼根長さは、対照の無被覆稲種子よりも長くなった。廃糖蜜を含有する水を使用したことで、廃糖蜜に含まれるカリウム等の効果により、根の伸長がより促進されたと考えられる。一方、鉄粉と石膏との混合物で被覆した場合には、平均幼根長さは、無被覆稲種子、廃糖蜜の質量割合が異なる水を使用して製造した製鋼スラグ試料Cによる被覆稲種子の平均幼根長さよりも明らかに短かった。鉄粉と石膏の混合物で被覆した場合には、幼根の表面全体に赤さびが付着して覆っており、過剰の鉄が根の伸長を妨げたことが考えられる。
平均幼根質量に関しては、鉄粉と石膏との混合物で被覆した被覆稲種子の平均幼根質量は、無被覆稲種子、廃糖蜜の質量割合が異なる水を用いて製造した製鋼スラグ試料Cで被覆した被覆稲種子の平均幼根質量よりも明らかに小さな値となった。従って、幼根の表面を覆った赤さびの付着が、根の伸長だけでなく質量の点からも根の生長を阻害したことが明らかとなった。
以上の結果から、廃糖蜜を5質量%以上50質量%以下含有する水を用いて製造した被覆稲種子では、発芽率、根の生長共に良好であることが明らかとなった。
ただし、実施例10で示したように、廃糖蜜を5質量%含有する水を用いて製造した被覆稲種子では、水中において被覆物が不安定で、被覆物が一部剥離、脱落する可能性があるため、より好ましくは、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水を用いて製造した被覆稲種子が好ましいと考えられる。
[実施例12](廃糖蜜を含有する水の使用3)(異なる種類の製鋼スラグを用いた試験)
表1に組成を示した5種類の製鋼スラグ試料A〜Eについて、最大粒径600μm未満に篩分けしたものを用意した。また、廃糖蜜の質量割合が25質量%となるように純水に廃糖蜜を溶解した水を用意した。
廃糖蜜を25質量%含有する水を用いて、各試料A〜Eとこの水との混合物におけるこの水の質量割合が30質量%となるように水を加え、混合した。
各試料A〜Eとこの水との混合物に、稲種子(品種:「コシヒカリ」)を入れて混合し、稲種子を試料A〜Eで被覆した。その後、被覆した稲種子を風通しのよい状態で、室温で24時間乾燥させた。
同様に、粒径600未満の鉄粉と石膏を9:1の質量比で混合した混合物を用意し、この混合物と純水との新たな混合物における純水の質量割合が30質量%となるように純水を加え、混合した。この鉄粉と石膏と水との混合物に、稲種子(品種:「コシヒカリ」)を入れて混合し、稲種子を鉄粉と石膏との混合物(鉄粉:石膏(9:1))で被覆した。その後、被覆した稲種子を風通しのよい状態で、室温で24時間乾燥させた。
上記のように製造した、製鋼スラグ試料A〜E、又は、鉄粉と石膏との混合物で被覆した稲種子について、被覆前の質量を1とした場合の被覆物の質量を、以下の表23に示す。
Figure 0006553483
上記表23から明らかなように、被覆前の稲種子の質量を1とした場合の種子1粒あたりの被覆物質量は、鉄粉と石膏との混合物で被覆した場合が最も大きな値となった。これは、鉄粉の比重が製鋼スラグの比重よりも大きいことに起因する。しかしながら、製鋼スラグである試料A〜Eで被覆した場合も、廃糖蜜を25質量%含有する水を用いて被覆稲種子を製造することにより、被覆物質量は、0.8〜1.2であった。例えば、実施例1で廃糖蜜を含有しない水を用いて試料Cで被覆した場合の被覆物質量が0.6であったのと比較して、本実施例で試料Cで被覆した場合は被覆物質量が0.9となっており、廃糖蜜を25質量%含有する水を用いることにより、より多くの製鋼スラグを稲種子に付着させ、被覆稲種子の質量を増加させることができることがわかる。
上記のように製造した被覆稲種子、及び、対照として無被覆稲種子(品種:「コシヒカリ」)を用いて、発芽試験を行った。
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、製鋼スラグ試料A〜E、又は、鉄粉と石膏との混合物(鉄粉:石膏(9:1))で被覆した被覆稲種子を、10粒ずつ置いた。
各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。5日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、発芽したものについては、幼根の長さと質量(新鮮重)を測定し、1種子当たりの平均の幼根の長さ(mm)と質量(新鮮重)(g)とを算出した。得られた結果を、以下の表24に示す。
Figure 0006553483
上記表24から明らかなように、試験した全ての種子で、発芽率には大きな差は見られなかった。
また、廃糖蜜を25質量%含有する水を用いて製鋼スラグ試料A〜Eで被覆した被覆稲種子は、無被覆の稲種子、鉄粉と石膏との混合物で被覆した稲種子よりも、根の生長が伸長、質量(新鮮重)の両方で良かった。特に、廃糖蜜を25質量%含有する水を用いて試料Dで被覆した稲種子では、根の生長が特に良かった。一方、鉄粉と石膏との混合物で被覆した稲種子では、実施例11の結果と同様に、根の表面が鉄粉由来の赤さびで覆われてしまい、根の生長が阻害されていた。
従って、廃糖蜜を25質量%含有する水を用いて、25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、1質量%以上20質量%以下のMgOと、1質量%以上25質量%以下のAlと、5質量%以上35質量%以下のFeと、1質量%以上8質量%以下のMnと、0.1質量%以上5質量%以下のPと、を含む製鋼スラグである試料A〜Eで被覆した被覆稲種子は、直播での発芽が期待でき、かつ、無被覆の稲種子や鉄粉と石膏との混合物で被覆した稲種子と比較して、根の生長を促進する肥料効果も期待できることが明らかになった。
[実施例13](アルギン酸ナトリウムを含有する水の使用)
表1に組成を示した試料Cの製鋼スラグで、最大粒径600μm未満に篩分けしたものを用意した。試料Cと水との混合物における水の質量割合が30質量%となるように、両者を混合した。この試料Cと水との混合物に、稲種子(品種:「コシヒカリ」)を入れて混合して、稲種子を試料Cで被覆した。種子1粒当たりの被覆物質の質量は、被覆前の稲種子の質量を1とした場合、0.6であった。試料Cで被覆した稲種子を3時間、風通しの良い状態で空気乾燥した。この状態では、稲種子の表面は、製鋼スラグである試料Cによって被覆されているのみである。この試料Cで被覆した稲種子を6つのグループに分け、1つのグループはそのまま何もせず静置する被覆稲種子とする一方で、残り5つのグループは、0.1質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%アルギン酸ナトリウム水溶液をそれぞれ噴霧して被覆物の表面を濡らした。6つのグループとも、24時間、風通しの良い状態で空気乾燥した。
塩化ナトリウム水溶液(比重1.4)を入れた容器を用意し、上記のように異なる濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液を表面に噴霧して乾燥した被覆稲種子及びアルギン酸ナトリウム水溶液の表面への噴霧を行なわなかった被覆稲種子のそれぞれについて、沈降するか否かを調べた。更に、この沈降性を調べている容器を1時間ゆるやかに振とう(10rpm)して、1時間後の沈降性も調べた。得られた結果を、以下の表25に示す。
Figure 0006553483
上記表25から明らかなように、試験した全ての被覆稲種子は、試験開始直後は沈降性を示した。しかしながら、1時間ゆるやかに振とうさせた場合、アルギン酸ナトリウム水溶液で被覆物の表面を噴霧しなかった被覆稲種子と、0.1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液で被覆物の表面を噴霧した被覆稲種子とは、塩化ナトリウム水溶液中で被覆物が一部剥離、崩壊してしまい、その結果、沈降性を示さなくなった。このことは、流れがある水の中では、稲被覆種子の被覆物が一部剥離して、種子が浮いて流亡する恐れがあることを示唆している。ただし、実際の被覆稲種子の直播では、水中ではなく、大気に露出した湿った水田土壌の上に被覆稲種子を撒くため、本試験のような流水による流亡は、ほとんど心配ないと考えられる。
一方、被覆物の表面に0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧した被覆稲種子では、被覆物の剥離や脱落がほとんど起こらず、1時間ゆるやかに振とうした後も沈降性が維持していた。
以上の結果から、被覆物の表面に0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧した被覆稲種子では、被覆物が種子に安定に密着して付着しており、流れのある水中においても被覆物は剥離、脱落しにくいことが明らかとなった。
上記の被覆物の表面に各濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧して表面処理した試料Cで被覆した被覆稲種子と、アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧しなかった被覆稲種子と、対照として無被覆稲種子(品種:「コシヒカリ」)と、を用いて、発芽試験を行った。
11cm径のプラスチック製シャーレに、円形ろ紙(直径11cm)を敷いた。蒸留水を加え、ろ紙が蒸留水に浅く浸るようにした。この蒸留水に浅く浸るようにしたろ紙の上に、異なる濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液を表面に噴霧して乾燥した被覆稲種子と、アルギン酸ナトリウム水溶液の表面への噴霧を行なわなかった被覆稲種子と、対照として無被覆の稲種子と、を10粒ずつ置いた。
各シャーレは、シャーレの上ふたをした状態で、30℃の恒温槽に入れ、発芽試験を行った。6日目に各試料のシャーレごとに発芽数を測定し、発芽率を算出した。また、発芽したものについては幼根の長さと質量(新鮮重)を測定し、1種子当たりの平均の幼根の長さ(mm)と質量(新鮮重)(g)を算出した。得られた結果を、以下の表26に示す。
Figure 0006553483
上記表26から明らかなように、発芽率に関しては、10質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を被覆物の表面に噴霧した被覆稲種子では、表面が硬くなってしまい、発芽率の低下がみられた。
根の生長に関しては、0.1質量%〜5質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を被覆物の表面に噴霧した被覆稲種子では、無被覆種子よりも根の生長が良かった。
従って、1時間後の沈降性と発芽率の結果から、0.5質量%〜5質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液で被覆物の表面を噴霧した被覆稲種子が好ましいことが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (20)

  1. 25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、を含む製鋼スラグにより、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
  2. 25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiOと、1質量%以上20質量%以下のMgOと、1質量%以上25質量%以下のAlと、5質量%以上35質量%以下のFeと、1質量%以上8質量%以下のMnと、0.1質量%以上5質量%以下のPと、を含む製鋼スラグにより、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
  3. 製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方で稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
  4. 25質量%以上50質量%以下のCaO、及び、8質量%以上30質量%以下のSiOを含む製鋼スラグと、石膏、鉄粉の一方又は双方と、の混合物により、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
  5. 25質量%以上50質量%以下のCaO、8質量%以上30質量%以下のSiO、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPを含む製鋼スラグと、石膏、鉄粉の一方又は双方と、の混合物により、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
  6. 製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、の混合物により、稲種子が被覆されている、被覆稲種子。
  7. 前記稲種子は、でんぷんで被覆されている稲種子である、請求項1〜6の何れか1項に記載の被覆稲種子。
  8. 前記被覆稲種子の表面が、更に石膏で被覆されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆稲種子。
  9. 前記被覆稲種子の被覆部分が、更に廃糖蜜を含有する、請求項1〜8の何れか1項に記載の被覆稲種子。
  10. 25質量%以上50質量%以下のCaO、及び、8質量%以上30質量%以下のSiOを含む製鋼スラグと、水と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
  11. 25質量%以上50質量%以下のCaO、8質量%以上30質量%以下のSiO、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPを含む製鋼スラグと、水と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
  12. 製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方と、水と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
  13. 25質量%以上50質量%以下のCaO、及び、8質量%以上30質量%以下のSiOを含む製鋼スラグと、水と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
  14. 25質量%以上50質量%以下のCaO、8質量%以上30質量%以下のSiO、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のPを含む製鋼スラグと、水と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
  15. 製鋼スラグの一種である、脱リンスラグ、脱炭スラグの一方又は双方と、水と、石膏、鉄粉の一方又は双方と、を混合して得られた混合物で稲種子を被覆して、当該混合物を固結させる、被覆稲種子の製造方法。
  16. 前記混合物における水の質量割合が、当該混合物の全体の質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、請求項10〜15の何れか1項に記載の被覆稲種子の製造方法。
  17. 前記水が、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、請求項10〜16の何れか1項に記載の被覆稲種子の製造方法。
  18. 前記稲種子として、でんぷん水溶液に浸漬した稲種子を用いる、請求項10〜17の何れか1項に記載の被覆稲種子の製造方法。
  19. 固結した前記混合物の表面を、更に石膏で被覆する、請求項10〜18の何れか1項に記載の被覆稲種子の製造方法。
  20. 固結した前記混合物の表面を、更にアルギン酸ナトリウムを0.5質量%以上5質量%以下含む水で湿らせた後、当該固結した混合物を乾燥させる、請求項10〜19の何れか1項に記載の被覆稲種子の製造方法。
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