JP2018112492A - ガスセンサ素子およびガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】低温環境下でもガス検出を可能とするとともに耐熱衝撃性を向上させる【解決手段】ガスセンサ素子は、酸素イオン伝導性を有するZrO2を含む素子本体21と、素子本体21上に配置された外側電極および内側電極とを備える。そしてガスセンサ素子では、内側電極30は、素子本体21に近い側から順に、反応防止層31と、電極層32と、電極層32に電気的に接続される先端リード層33aとが積層された構造を有する。さらにガスセンサ素子では、電極層32と先端リード層33aは、導電性酸化物を含み、先端リード層33aの内部に複数の気孔が形成され、複数の気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下である。【選択図】図4

Description

本開示は、固体電解質体と一対の電極とを備えるガスセンサ素子およびガスセンサに関する。
特許文献1のように、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度に応じて電気的特性が変化するガスセンサ素子を備えるセンサが知られている。
例えば、特許文献1には、先端が閉じた有底筒状の固体電解質体と、この固体電解質体の内表面に形成された内側電極と、固体電解質体の外表面の先端部に形成された外側電極とを備えるガスセンサ素子が開示されている。このようなガスセンサは、例えば内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる特定ガスの濃度を検出するために用いられる。
また、特許文献2,3には、各種の導電性酸化物が開示されている。これらの導電性酸化物は、ガスセンサ素子の電極材料として利用することが可能である。ガスセンサ素子の電極材料として特許文献2,3に開示された導電性酸化物を利用すれば、電気抵抗値が十分に低い電極が得られることで、ガスセンサ素子のガス検出精度を向上させることができる。また、ガスセンサ素子の電極材料として特許文献2,3に開示された導電性酸化物を利用することで、電極材料として貴金属のみを用いる場合に比べて安価なガスセンサ素子が得られる。
特開2009−63330号公報 特許第3417090号公報 国際公開第2013/150779号公報
しかし、ガスセンサは、用途によっては低温環境下(例えば、300℃以下)でのガス検出が必要となる場合があり、上記のガスセンサ素子を用いても、電極の活性化が不十分となり、ガス検出ができない場合がある。
また、ガスセンサは、用途によっては温度変化の激しい環境下で利用される場合があり、上記のガスセンサ素子では、温度変化により生じる熱衝撃に対する耐性が不十分であるために、熱衝撃によりガスセンサ素子の破損が生じる場合がある。
本開示は、低温環境下でもガス検出を可能とするとともに耐熱衝撃性を向上させることを目的とする。
本開示の一態様は、酸素イオン伝導性を有するZrOを含む固体電解質体と、固体電解質体上に配置された一対の電極とを備えるガスセンサ素子である。
そして、本開示のガスセンサ素子では、一対の電極のうち少なくとも一方は、固体電解質体に近い側から順に、少なくとも、電極層と、電極層に電気的に接続されるリード層とが積層された構造を有する。
さらに、本開示のガスセンサ素子では、電極層とリード層は、導電性酸化物を含み、リ
ード層の内部に複数の気孔が形成され、複数の気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下である。
このように構成された本開示のガスセンサ素子は、低温作動性が良好となるとともに、冷熱サイクル後においてガスセンサ素子にクラックが発生するのを抑制することができる。これにより、本開示のガスセンサ素子は、低温環境下でもガス検出を可能とするとともに耐熱衝撃性を向上させることができる。
また、本開示の一態様では、複数の気孔の面積の標準偏差が1.00μm以上であり且つ10.00μm以下であるようにしてもよい。リード層における複数の気孔の面積の標準偏差をこのように設定することで、ガスセンサ素子の低温作動性が良好となるとともに、熱衝撃によるガスセンサ素子の破損を抑制することができる。
また、本開示の一態様では、気孔の気孔率が9%以上であり且つ70%以下であるようにしてもよい。リード層における気孔の気孔率をこのように設定することで、ガスセンサ素子の低温作動性が良好となるとともに、熱衝撃によるガスセンサ素子の破損を抑制することができる。
また、本開示の一態様では、導電性酸化物は少なくともLaを含む酸化物であるようにしてもよい。つまり、導電性酸化物としては、例えば、Laを含む酸化物が挙げられる。
本開示の別の態様は、本開示の一態様のガスセンサ素子と、このガスセンサ素子を保持する保持部材とを備えるガスセンサである。
このように構成された本開示のガスセンサは、本開示の一態様のガスセンサ素子を備えたガスセンサであり、本開示のガスセンサ素子と同様の効果を得ることができる。
ガスセンサ1を軸線方向に破断した状態を示す図である。 ガスセンサ素子3の外観を示す正面図である。 ガスセンサ素子3の構成を示す断面図である。 図3における領域D1,D2を拡大した断面図である。 気孔の面積を算出する方法を説明するための図である。 気孔の面積の分布を示すヒストグラムである。 板型ガスセンサ素子100の斜視図である。 板型ガスセンサ素子100の模式的な分解斜視図である。 板型ガスセンサ素子100の先端側の部分拡大断面図である。 板型ガスセンサ素子100のうち基準電極104の基準電極部104aが形成される領域の部分拡大断面図である。
(第1実施形態)
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のガスセンサ1は、例えば自動車およびオートバイ等の車両の排気管に取り付けられ、排気管内の排気ガスに含まれる酸素濃度を検出する。
ガスセンサ1は、図1に示すように、ガスセンサ素子3、セパレータ5、閉塞部材7、端子金具9およびリード線11を備える。さらにガスセンサ1は、主体金具13と、プロテクタ15と、外筒16とを備えている。主体金具13、プロテクタ15および外筒16は、ガスセンサ素子3、セパレータ5および閉塞部材7の周囲を覆うように配置される。なお、外筒16は、内側外筒17および外側外筒19を備えている。
ガスセンサ1は、ガスセンサ素子3を加熱するためのヒータを備えていない。すなわち、ガスセンサ1は、排気ガスの熱を利用してガスセンサ素子3を活性化して酸素濃度を検出する。
ガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を用いて形成されている。ガスセンサ素子3は、図2に示すように、先端部25が閉塞された有底筒形状であり、軸線Oの方向(以下、軸線方向)に延びる円筒状の素子本体21を有している。この素子本体21の外周には、周方向に沿って径方向外向きに突出した素子鍔部23が形成されている。
なお、素子本体21を構成する固体電解質体は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)またはカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体を用いて構成されている。素子本体21を構成する固体電解質体は、これらに限られることはなく、「アルカリ土類金属の酸化物とZrOとの固溶体」、「希土類金属の酸化物とZrOとの固溶体」などを用いてもよい。
ガスセンサ素子3の先端部25には、素子本体21の外周面に外側電極27が形成されている。外側電極27は、PtあるいはPt合金を多孔質に形成したものである。
素子鍔部23の先端側(すなわち、図2の下方)には、Pt等で形成された環状の環状リード部28が形成されている。
素子本体21の外周面のうち外側電極27と環状リード部28との間には、Pt等で形成された縦リード部29が軸線方向に延びるように形成されている。縦リード部29は、外側電極27と環状リード部28とを電気的に接続している。
また、図1に示すように、ガスセンサ素子3の内周面には、内側電極30が形成されている。内側電極30は、希土類添加セリアやペロブスカイト相等を含む材料を多孔質に形成したものである。ガスセンサ素子3の先端部25において、外側電極27が排気ガスに晒され、内側電極30が基準ガスに晒されることで、排気ガス中の酸素濃度を検出している。本実施形態では、基準ガスは大気である。
セパレータ5は、電気絶縁性を有する材料(例えばアルミナ)で形成された円筒形状の部材である。セパレータ5は、その軸中心に、リード線11が挿入される貫通孔35が形成されている。セパレータ5は、その外周側を覆う内側外筒17との間に空隙18が設けられるように配置されている。
閉塞部材7は、電気絶縁性を有する材料(例えばフッ素ゴム)で形成された円筒形状のシール部材である。閉塞部材7は、その後端に径方向外向きに突出する突出部36を備える。閉塞部材7は、その軸中心にリード線11が挿入されるリード線挿入孔37を備えている。閉塞部材7の先端面95は、セパレータ5の後端面97に密着し、閉塞部材7のうち突出部36よりも先端側の側方外周面98は、内側外筒17の内面に密着している。すなわち、閉塞部材7は、外筒16の後端側を閉塞している。
閉塞部材7の後端向き面99と、外側外筒19の縮径部19gの先端向き面19aとの間で、リード線保護部材89の鍔部89bが挟まれた状態で、リード線保護部材89が支持される。
このうち、縮径部19gは、閉塞部材7よりも後端側にて、径方向内側に延びており、縮径部19gの先端向き面19aは、ガスセンサ1の先端側に向く面として形成されてい
る。縮径部19gの中央領域には、リード線11およびリード線保護部材89を挿入するためのリード線挿入部19cが形成されている。
リード線保護部材89は、リード線11を収容可能な内径寸法を有する筒状部材であり、可撓性、耐熱性および絶縁性を有する材料(例えば、ガラスチューブおよび樹脂チューブなど)で構成されている。リード線保護部材89は、リード線11を外部からの飛来物(例えば、石や水など)から保護するために取り付けられる。
リード線保護部材89は、先端側端部89aにおいて、軸線方向の垂直方向における外向きに突出する板状の鍔部89bを備える。鍔部89bは、リード線保護部材89の周方向の一部ではなく、全周にわたり形成されている。
リード線保護部材89の鍔部89bは、外側外筒19の縮径部19gの先端向き面19aと閉塞部材7の後端向き面99との間に挟まれている。
端子金具9は、センサ出力を外部に取り出すために、導電性材料で形成される筒状部材である。端子金具9は、リード線11に電気的に接続されるとともに、ガスセンサ素子3の内側電極30に電気的に接触するように配置されている。端子金具9は、その後端側に径方向(すなわち、軸線方向に対して垂直の方向)の外向きに突出するフランジ部77を備えている。フランジ部77は、径方向の3箇所に等間隔に板状のフランジ片75を備えている。
リード線11は、芯線65と、芯線65の外周を覆う被覆部67とを備えている。
主体金具13は、金属材料(例えば鉄またはSUS430)で形成された円筒状の部材である。主体金具13には、内周面において径方向内側に向かって張り出した段部39が形成されている。段部39は、ガスセンサ素子3の素子鍔部23を支持するために形成されている。
主体金具13のうち先端側の外周面には、ガスセンサ1を排気管に取付けるためのネジ部41が形成されている。主体金具13のうちネジ部41の後端側には、ガスセンサ1を排気管に着脱する際に取付工具を係合させる六角部43が形成されている。さらに、主体金具13のうち六角部43の後端側には、筒状部45が設けられている。
プロテクタ15は、金属材料(例えばSUS310S)で形成されており、ガスセンサ素子3の先端側を覆う保護部材であり、複数個形成されたガス流通孔を介して排気ガスをガスセンサ素子3に対して導入する。プロテクタ15は、その後端縁が、導電性材料で形成されたパッキン88を介して、ガスセンサ素子3の素子鍔部23と主体金具13の段部39との間に挟まれるようにして固定されている。
ガスセンサ素子3のうち素子鍔部23の後端側領域においては、主体金具13とガスセンサ素子3との間に、先端側から後端側にかけて、滑石で形成されたセラミック粉末47と、アルミナで形成されたセラミックスリーブ49とが配置されている。
さらに、主体金具13の筒状部45の後端部51の内側には、金属材料(例えばSUS430)で形成された金属リング53と、金属材料(例えばSUS304L)で形成された内側外筒17の先端部55とが配置されている。内側外筒17の先端部55は、径方向外向きに広がる形状に形成されている。つまり、筒状部45の後端部51が加締められることで、内側外筒17の先端部55が、金属リング53を介して筒状部45の後端部51とセラミックスリーブ49との間に挟まれて、内側外筒17が主体金具13に固定される。
また、内側外筒17の外周には、樹脂材料(例えばPTFE)で形成された筒状のフィルタ57が配置されるとともに、フィルタ57の外周には、例えばSUS304Lで形成された外側外筒19が配置されている。フィルタ57は、通気は可能であるが水分の侵入は抑制できるものである。
そして、外側外筒19の加締め部19bが外周側から径方向内向きに加締められることにより、内側外筒17とフィルタ57と外側外筒19とが一体に固定される。また、外側外筒19の加締め部19hが外周側から径方向内向きに加締められることにより、内側外筒17と外側外筒19とが一体に固定され、閉塞部材7の側方外周面98が、内側外筒17の内面に密着することとなる。
なお、内側外筒17および外側外筒19は、それぞれ通気孔59および通気孔61を備えている。すなわち、通気孔59,61とフィルタ57を介して、ガスセンサ1の内部と外部との通気が可能である。
図3に示すように、外側電極27と内側電極30は、ガスセンサ素子3の先端部25において、素子本体21を挟み込むように配置されている。素子本体21および一対の電極(すなわち、外側電極27および内側電極30)は、酸素濃淡電池を構成して、排気ガス中の酸素濃度に応じた起電力を発生させる。つまり、ガスセンサ素子3の先端部25において、外側電極27が排気ガスに晒され、内側電極30が基準ガスに晒されることで、ガスセンサ素子3は、排気ガス中の酸素濃度を検出する。
外側電極27は、上述の通り、縦リード部29を介して環状リード部28に電気的に接続されている。環状リード部28は、導電性材料で形成されたパッキン88およびプロテクタ15を介して、主体金具13に電気的に接続されている。なお、外側電極27を覆うように、外側電極27を保護するための不図示の電極保護層を形成してもよい。なお、外側電極27の形状および配置は単なる一例であり、これ以外の種々の形状および配置を採用可能である。
また、ガスセンサ素子3の素子本体21の内周面には、内側電極30が形成されている。内側電極30は、希土類添加セリアやペロブスカイト相等を含む材料を多孔質に形成したものである。内側電極30は、内側検知電極部30aと、内側リード部30bとを備える。
内側検知電極部30aは、素子本体21の先端部25の内表面を覆うように形成されている。内側リード部30bは、内側検知電極部30a上に当接し、かつ内側検知電極部30aの上面全体を覆うように形成されており、端子金具9と電気的に接続される。内側検知電極部30aおよび内側リード部30bは、全体として素子本体21の内面の全面を覆うように形成されている。
つまり、ガスセンサ素子3の素子本体21は、先端側領域F1に外側電極27および内側検知電極部30aが形成され、後端側領域F2に内側リード部30bが形成されている。素子本体21の先端側領域F1は、素子本体21の先端部25に相当する。
図4に示すように、内側検知電極部30aは、素子本体21に近い側から順に、反応防止層31、電極層32および先端リード層33aが積層された構造を有する。
先端リード層33aは、後述する後端リード層33bとともにリード層33を形成する。つまり、リード層33は、先端リード層33aと後端リード層33bとを備える。
反応防止層31は、希土類添加セリアで形成された酸化物層である。希土類添加セリア
は、セリア以外の希土類酸化物が添加されたセリアである。「セリア以外の希土類酸化物」としては、Gd、Sm、Y等を利用することができる。このような希土類添加セリアにおける希土類元素REの含有割合は、セリウムと希土類元素REのモル分率{RE/(Ce+RE)}に換算して、例えば、5mol%以上40mol%以下の範囲とすることができる。このような希土類添加セリアは、低温(すなわち、室温)では絶縁体であるが、高温(すなわち、ガスセンサ1の使用温度)では酸素イオン伝導性を有する固体電解質として機能する。このため、反応防止層31は、ガスセンサ1の使用時には、電極層32と素子本体21とを電気的に接続するための層として機能する。なお、反応防止層31は、ガスセンサ素子3の製造時(すなわち、焼成時)には、電極層32のLaと素子本体21のZrOとの反応を生じ難くする機能を有する。
電極層32とリード層33は、以下の組成式(1)を満たすペロブスカイト型酸化物結晶構造を有する結晶相(すなわち、ペロブスカイト相)を含んで構成されている。
LaNi ・・・(1)
ここで、元素MはCoとFeのうちの一種以上を表し、a+b+c=1であり、1.25≦x≦1.75である。係数a,b,cはそれぞれ、以下の関係式(2a),(2b),(2c)を満たすことが好ましい。
0.375≦a≦0.535 ・・・(2a)
0.200≦b≦0.475 ・・・(2b)
0.025≦c≦0.350 ・・・(2c)
上記の関係式(2a)〜(2c)で表される組成を有するペロブスカイト型導電性酸化物は、室温(例えば25℃)での導電率が250S/cm以上で且つB定数が600K以下となり、上記の関係式(2a)〜(2c)を満たさない場合に比べて導電率が高くB定数が小さいという良好な特性を有する。なお、Pt電極は、大気中において約600℃の環境で放置されると、酸化して固体電解質体と電極との間の界面抵抗が上昇する。一方、ペロブスカイト型導電性酸化物は、このような経時変化が起こり難い。
係数a,b,cはそれぞれ、上記の関係式(2a),(2b),(2c)の代わりに下記の関係式(3a),(3b),(3c)を満たすようにしてもよい。この場合には、導電率を更に高くするとともにB定数を更に小さくすることができる。
0.459≦a≦0.535 ・・・(3a)
0.200≦b≦0.375 ・・・(3b)
0.125≦c≦0.300 ・・・(3c)
上記の組成式(1)におけるOの係数xは、上記の組成を有する導電性酸化物が全てペロブスカイト相からなる場合には、理論上は1.50となる。但し、酸素が量論組成からずれることがあるため、典型的な例として、係数xの範囲を1.25≦x≦1.75と規定している。
電極層32は、上記のペロブスカイト相および希土類添加セリアを含んで構成されている。このような電極層32は、高温(すなわち、ガスセンサ1の使用時)においてイオン導電性と電子導電性の両方の性質を有しているため、十分に低い界面抵抗値を示す。
リード層33は、上記のペロブスカイト相を主成分とし、希土類添加セリアを含まないで構成されている。また、リード層33には複数の気孔が形成されている。そして本実施形態では、リード層33は、気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下となり、気孔の面積の標準偏差が1.00μm以上であり且つ10.00μm以下となり、気孔率が9%以上であり且つ70%以下となるように形成されている。なお、リード層33における、気孔の平均円相当半径、気孔の面積の標準偏差の値につい
ては、例えば、後述するように気孔を形成するための造孔材の種類や中心粒径等を調整することによって制御することができる。
内側リード部30bは、後端リード層33bとランタンジルコネート層34とを含む多層構造を有する。ランタンジルコネート層34は、後端リード層33bよりも素子本体21に近い側に配置されている。
後端リード層33bは、上述した内側検知電極部30aの先端リード層33aと同様の組成で形成されている。但し、内側検知電極部30aを構成する先端リード層33aにおけるペロブスカイト相の含有割合は、内側リード部30bを構成する後端リード層33bにおけるペロブスカイト相の含有割合と同じか、それよりも多くてもよい。
ランタンジルコネート層34は、内側リード部30bの焼成時に、後端リード層33bに含まれるランタン(La)と、素子本体21に含まれるZrOとが反応して形成された層である。ランタンジルコネート層34が形成されると、ランタンジルコネート層34と後端リード層33bとの間との密着性と、ランタンジルコネート層34と素子本体21との密着性とが高まるため、機械的な耐衝撃性が向上する。したがって、内側リード部30bが存在する部分では、後端リード層33bと素子本体21との間にランタンジルコネート層34が形成されることで、機械的な耐衝撃性を向上させることができる。
次に、ガスセンサ素子3の製造方法を説明する。
第1工程では、未焼結成形体を作製する。具体的には、まず、素子本体21の材料である固体電解質体の粉末として、ジルコニア(ZrO)に安定剤としてイットリア(Y)を5mol%添加したもの(以下、5YSZともいう)に対して、さらにアルミナ粉末を添加したものを用意する。素子本体21の材料粉末全体を100質量%としたとき、5YSZの含有量は99.6質量%であり、アルミナ粉末の含有量は0.4質量%である。この粉末をプレス加工した後に、筒形となるように切削加工を実施することで、未焼結成形体を得る。
次に、第2工程では、電極層32のスラリーと、リード層33のスラリーと、反応防止層31のスラリーとを作製する。
電極層32のスラリーの作製においては、まず、導電性酸化物の原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、700〜1300℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、この仮焼粉末を、湿式ボールミル等により粉砕し所定の粒子サイズに調製する。このとき、ペロブスカイト相の原料粉末としては、例えば、La(OH)又はLa、並びに、Co、Fe、及びNiOを用いることができる。なお、本実施形態では、仮焼粉末として、比表面積が8.0[m/g]のLFN(LaFe0.5Ni0.5)粉末を得た。次に、希土類添加セリアの原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、大気雰囲気下、1000〜1600℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、この仮焼粉末を、湿式ボールミル等により粉砕し、所定の粒子サイズに調製する。希土類元素添加セリアの原料粉末としては、CeOの他に、Gd、Sm、Y等を用いることができる。本実施形態では、仮焼粉末として、比表面積が30.0[m/g]のGDC(20mol%Gd−CeO)粉末を得た。そして、所定の粒子サイズに調製された2種の仮焼粉末を、湿式ボールミル等により混合し、ターピネオールやブチルカルビトール等の溶媒に、エチルセルロース等のバインダとともに溶解することにより、スラリーを作製する。本実施形態では、LFN粉末およびGDC粉末がそれぞれ50体積%となるように調整した。
リード層33のスラリーの作製工程は、電極層32のスラリーの作製工程と比べて、少
なくとも希土類添加セリアの仮焼粉末を混合しない点と、造孔材を添加する点が異なる。リード層33のスラリーの作製においては、例えば、導電性酸化物の原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、700〜1300℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、この仮焼粉末を、湿式ボールミル等により混合、粉砕し、所定の粒子サイズに調製する。導電性酸化物の原料粉末としては、例えば、La(OH)又はLa、並びに、Co、Fe、及びNiOを用いることができる。本実施形態では、仮焼粉末として、比表面積が1.5[m/g]のLFN(LaFe0.5Ni0.5)粉末を得た。そして、この仮焼粉末に対してカーボンを30体積%添加したものを、ターピネオールやブチルカルビトール等の溶媒に、エチルセルロース等のバインダとともに溶解することにより、スラリーを作製した。
反応防止層31のスラリーの作製においては、希土類添加セリアの原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整し、1000〜1600℃で1〜5時間仮焼して仮焼粉末を作製する。そして、これらの仮焼粉末を、湿式ボールミル等により混合、粉砕して所定の粒子サイズに調製する。そして、この仮焼粉末を、ターピネオールやブチルカルビトール等の溶媒に、エチルセルロース等のバインダとともに溶解することにより、スラリーを作製する。希土類添加セリアの原料粉末としては、CeOの他に、Gd、Sm、Y等を利用することができる。本実施形態では、仮焼粉末として、比表面積が10[m/g]のGDC(20mol%Gd−CeO)粉末を得た。
次に、第3工程では、未焼結成形体のうち、外側電極27、内側検知電極部30aおよび内側リード部30bの形成部分に、それぞれのスラリーを塗布する。
まず、外側電極27の形成部分にPtペースト等の貴金属のスラリーを塗布する。次に、反応防止層31の形成部分に反応防止層31のスラリーを塗布する。その後に、電極層32の形成部分に電極層32のスラリーを塗布する。さらに、素子本体21の内面の全面を覆うようにリード層33のスラリーを塗布する。
次の第4工程では、各スラリーが塗布された未焼結成形体について、乾燥を行った後、所定の焼成温度で焼成する。この焼成温度は、例えば、1250℃以上であり且つ1450℃以下であり、1350±50℃が好ましい。
上記の各工程を実施することで、ガスセンサ素子3を製造することができる。
次に、ガスセンサ素子3の耐熱衝撃性および低温作動性を評価するために実施した評価試験の試験結果について説明する。
耐熱衝撃性とは、温度変化に伴い発生する熱衝撃に対する耐性を表す指標であり、ガスセンサ素子のうち、熱衝撃による破損が生じ易いものほど耐熱衝撃性が劣るものであり、熱衝撃による破損が生じ難いものほど耐熱衝撃性が優れるものである。
低温作動性とは、低温環境下(例えば、300℃以下)でもガス検出が可能であることを示す指標である。外側電極と内側電極との間の内部抵抗値が高いほど、ガスセンサ素子3の低温作動性が劣る。換言すると、外側電極と内側電極との間の内部抵抗値が低いほど、ガスセンサ素子3の低温作動性が優れる。
耐熱衝撃性の試験に関しては、ガスセンサ素子に対して冷熱サイクル試験を行い、ガスセンサ素子の内側電極におけるクラック発生(すなわち、破損)の有無に基づいて耐熱衝撃性を評価した。
本試験では、ガスセンサ素子3の温度を室温(本実施形態では20℃)から970℃ま
で上昇させて再び室温まで低下させる一連の温度変化を1サイクルとして、1000サイクルの温度変化を実施した後に、ガスセンサ素子の断面SEM画像に基づいて、ガスセンサ素子3に破損(具体的には、ガスセンサ素子3の内側電極に破損)が生じたか否かを判定した。
低温作動性の試験では、ガスセンサ素子の外側電極27と内側電極30との間の内部抵抗値を測定し、内部抵抗値に基づいてガスセンサ素子の低温作動性を評価した。
本試験では、ガスセンサ素子をガスセンサに組み付けた状態で、そのガスセンサを公知のバーナー測定装置に取り付けて、バーナー測定法によりガスセンサ素子の内部抵抗値を測定した。詳細には、素子温度280℃で空燃比λ=0.9(すなわち、リッチ)におけるセンサ出力を、入力インピーダンス1MΩと100kΩでそれぞれ検出し、その出力差に基づいてガスセンサ素子の内部抵抗値を算出した。
そして、本試験では、内部抵抗値がガス検出可能範囲(本実施形態では、100kΩ以下)であるガスセンサ素子を低温作動性が良好であると判定し、内部抵抗値がガス検出可能範囲を逸脱するガスセンサ素子を低温作動性が不良であると判定した。
実施例1〜9および比較例1〜2のガスセンサ素子は、リード層33のスラリーに添加される造孔材の種類と、造孔材の中心粒径と、造孔材の添加量と、内側検知電極部30aの構造とを表1に示すように設定して作製された。
内側検知電極部30aの構造としては、素子本体21に近い側から順に電極層32および先端リード層33aが積層された構造、または、素子本体21に近い側から順に反応防止層31、電極層32および先端リード層33aが積層された構造が設定される。表1では、電極層32および先端リード層33aが積層された構造を「2層」と記載し、反応防止層31、電極層32および先端リード層33aが積層された構造を「3層」と記載している。

そして、本試験では、実施例1〜9および比較例1〜2のそれぞれについて、リード層33における気孔の平均円相当半径と、気孔の面積の標準偏差を算出した。
まず、実施例1〜9および比較例1〜2のガスセンサ素子の試料について、集束イオンビーム装置(以下、FIB装置)を用いて、試料表面に対して斜め38°に加工した。F
IBは、Focused Ion Beamの略である。
その後、加工した試料の断面を、断面に対して90°の直上から電界放出形走査電子顕微鏡(以下、FE−SEM)を用いて観察した。FE−SEMは、Field Emission Scanning Electron Microscopeの略である。FE−SEM観察では、加速電圧を5.0kVに設定するとともに倍率を5000倍に設定し、1試料に対して5視野の反射電子像を取得した。
そして、取得した画像を、画像処理ソフトを用いて、図5の画像G1に示すように、幅30μm×厚さ10μmに切り出し、拡張子をjpgとして保存した。なお、リード層の厚さが10μm以下である場合は、厚さができる限り10μmになるようにして切り出す。本試験では、画像を切り出すための画像処理ソフトウェアとして、Microsoft社製のWindows7に付属されているペイントを用いた。Windows7は登録商標である。
そして、切り出した画像について、画像処理ソフトウェアにより画像解析を行い、気孔の平均円相当半径と、気孔の面積の標準偏差を算出した。本試験では、画像解析のための画像処理ソフトウェアとして、オープンソースであるImageJ(ver. 1.45l)を用いた。まず、上記の方法で得られた画像の実サイズをImageJに入力する。その後、ガウスぼかし(半径2ピクセル)を行い、Huang法により2値化用の閾値を決定し、図5の画像G2に示すように、酸化物電極の領域を黒色にするとともに気孔の領域を白色にする2値化を行うことで両者を明確化した。Huang法については、例えば、Huang, L-K & Wang, M-J J (1995), "Image thresholding by minimizing the measure of fuzziness", Pattern Recognition 28(1): 41-51に記載されている。さらに、2値化した像に対して、粒子解析を行うことで各気孔の面積を算出した。図5の画像G3は、図5の画像G2において黒色と白色との境界を線として抽出する画像処理を施したものである。
そして、切り出した画像に写っている各気孔の面積の円相当半径を算出し、算出した円相当半径の平均値を平均円相当半径とした。さらに、切り出した画像に写っている複数の気孔の面積の標準偏差を算出した。図6は、切り出した画像に写っている気孔の面積の分布を示すヒストグラムである。図6に示す面積分布における標準偏差は、1.878μmである。また、切り出した画像に写っている各気孔の面積に基づいて、切り出した画像の面積に対する気孔の面積の比率を、気孔率として算出した。そして、1試料に対して取得した5視野の反射電子像から算出した結果を平均し、各試料の平均円相当半径、気孔の面積の標準偏差、気孔率を算出した。
実施例1〜9および比較例1〜2における気孔の平均円相当半径と、気孔の面積の標準偏差と、気孔率と、素子温度280℃における内部抵抗値と、冷熱サイクル後の内側電極のクラック有無を表2に示す。

実施例1〜9のガスセンサ素子は、気孔の平均円相当半径が0.51〜2.39μmの範囲内であり、気孔の面積の標準偏差が1.32〜9.65μmの範囲内であり、気孔率が17.0〜67.3%の範囲内であった。そして、実施例1〜9のガスセンサ素子では、280℃における内部抵抗値が100kΩ以下であり、冷熱サイクル後の内側電極のクラックが観測されなかった。
比較例1のガスセンサ素子は、気孔の平均円相当半径が0.28μmであり、気孔の面積の標準偏差が0.19μmであり、気孔率が6.8%であった。そして、比較例1のガスセンサ素子では、280℃における内部抵抗値が100kΩ以下であり、冷熱サイクル後の内側電極のクラックが観測された。
比較例2のガスセンサ素子は、気孔の平均円相当半径が2.90μmであり、気孔の面積の標準偏差が13.78μmであり、気孔率が84.1%であった。そして、比較例2のガスセンサ素子では、280℃における内部抵抗値が100kΩを超えており、冷熱サイクル後の内側電極のクラックが観測された。
このように構成されたガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性を有するZrOを含む素子本体21と、素子本体21上に配置された外側電極27および内側電極30とを備える。
そしてガスセンサ素子3では、内側電極30は、素子本体21に近い側から順に、反応防止層31と、電極層32と、外側電極27と内側電極30との間に生じる起電力をガスセンサ素子3の外部へ出力するために電極層32に電気的に接続される先端リード層33aとが積層された構造を有する。
さらにガスセンサ素子3では、電極層32と先端リード層33aは、導電性酸化物を含み、先端リード層33aの内部に複数の気孔が形成され、複数の気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下である。
このように構成されたガスセンサ素子3は、低温作動性が良好となるとともに、冷熱サイクル後においてガスセンサ素子3にクラックが発生するのを抑制することができる。これにより、ガスセンサ素子3は、低温環境下でもガス検出を可能とするとともに耐熱衝撃性を向上させることができる。
またガスセンサ素子3では、複数の気孔の面積の標準偏差が1.00μm以上であり且つ10.00μm以下である。先端リード層33aにおける複数の気孔の面積の標準偏差をこのように設定することで、ガスセンサ素子3の低温作動性が良好となるとともに、熱衝撃によるガスセンサ素子3の破損(具体的には、ガスセンサ素子3の内側電極30の破損)を抑制することができる。
またガスセンサ素子3では、気孔率が9%以上であり且つ70%以下である。先端リード層33aにおける気孔率をこのように設定することで、ガスセンサ素子3の低温作動性が良好となるとともに、熱衝撃によるガスセンサ素子3の破損を抑制することができる。
以上説明した実施形態において、素子本体21は固体電解質体に相当し、外側電極27および内側電極30は一対の電極に相当し、先端リード層33aはリード層に相当し、主体金具13は保持部材に相当する。
(第2実施形態)
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の板型ガスセンサ素子100は、図7に示すように、素子本体101と、多孔質保護層120とを備える。
素子本体101は、図8に示すように、酸素濃度検出セル130と、補強保護層111と、大気導入孔層107と、下面層103とを備える。なお、図8では多孔質保護層120の図示を省略している。
酸素濃度検出セル130は、基準電極104と、固体電解質体105と、測定電極106とを備える。基準電極104および測定電極106は、固体電解質体105を挟み込むように配置されている。
基準電極104は、基準電極部104aと、基準リード部104Lとを備える。基準電極部104aは、図10に示すように、固体電解質体105に近い側から順に、反応防止層104b、電極層104cおよびリード層104dが積層された多層構造を有する。基準リード部104Lは、図8に示すように、基準電極部104aから固体電解質体105の長手方向に沿って延びるように形成されている。
測定電極106は、測定電極部106aと、検知リード部106Lとを備える。検知リード部106Lは、測定電極部106aから固体電解質体105の長手方向に沿って延びるように形成されている。
補強保護層111は、補強部112と、電極保護部113aとを備える。
補強部112は、固体電解質体105との間で検知リード部106Lを挟み込むようにして、固体電解質体105を保護するための板状の部材である。補強部112は、固体電解質体105と同じ材料で形成されており、板の厚さ方向に貫通する保護部配置空間112aを備える。
電極保護部113aは、多孔質材料で形成されており、保護部配置空間112aに配置される。電極保護部113aは、固体電解質体105との間で測定電極部106aを挟み込むようにして、測定電極部106aを保護する。
なお、本実施形態の板型ガスセンサ素子100は、いわゆる酸素濃淡起電力式のガスセンサであり、酸素濃度検出セル130の電極間に生じる起電力の値を用いて酸素濃度を検
出することができる。
下面層103および大気導入孔層107は、固体電解質体105との間で基準電極104を挟み込むようにして、基準電極104に積層されている。大気導入孔層107は、後端側が開口する略U字状に形成されている。固体電解質体105、大気導入孔層107および下面層103で囲まれた内部空間は、大気導入孔107hである。基準電極104は、大気導入孔107hに導入される大気に晒されるように配置されている。
このように、素子本体101は、下面層103、大気導入孔層107、基準電極104、固体電解質体105、測定電極106および補強保護層111が積層された積層体である。素子本体101は、板状に形成されている。
基準リード部104Lの端末は、固体電解質体105に設けられるスルーホール105aに形成される導体を介して、固体電解質体105上の検出素子側パッド121と電気的に接続されている。補強保護層111は、検知リード部106Lの端末よりも軸線方向(すなわち、図8における左右方向)の寸法が短く形成されている。検出素子側パッド121および検知リード部106Lの端末は、補強保護層111の後端から外部に露出し、外部回路接続用の不図示の外部端子と電気的に接続される。
多孔質保護層120は、図7に示すように、素子本体101の先端側の全周を覆って設けられている。
図9に示すように、多孔質保護層120は、素子本体101の先端面を含み、軸線方向(すなわち、図9における左右方向)に沿って後端側に延びるように形成されている。
さらに多孔質保護層120は、軸線方向において、素子本体101のうち少なくとも基準電極部104aおよび測定電極部106aを包含する領域を覆うように形成されている。
板型ガスセンサ素子100は、排気ガス中に含まれるシリコンおよびリンなどの被毒物質に晒されたり、排気ガス中の水滴が付着したりすることがある。そこで、板型ガスセンサ素子100の外表面に多孔質保護層120を被覆することで、被毒物質を捕捉したり、水滴が板型ガスセンサ素子100に直接接触したりすることを抑制できる。
次に、固体電解質体、測定電極および基準電極などの成分組成について説明する。
固体電解質体105は、第1実施形態の素子本体21と同様に、ジルコニア(ZrO
)に安定化剤としてイットリア(Y)またはカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成されている。固体電解質体105は、ジルコニアを主成分とし、ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアである。
測定電極106は、Ptを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含む。測定電極106はセラミック成分を含有してもよい。
なお、「主成分」とは、対象となる部位(すなわち、固体電解質体105および測定電極106など)を構成する全成分に対し、50質量%を超える成分をいう。
基準電極104の基準電極部104aのうち、反応防止層104bは、第1実施形態の反応防止層31と同様に、希土類添加セリアで形成された酸化物層である。
電極層104cは、ペロブスカイト相および希土類添加セリアを含んで構成されている。電極層104cに含まれるペロブスカイト相は、第1実施形態の電極層32と同様に、上式(1),(2a),(2b),(2c)の各条件を満たすペロブスカイト型酸化物結晶構造を有する結晶相である。このような電極層104cは、高温(すなわち、板型ガス
センサ素子100の使用時)においてイオン導電性と電子導電性の両方の性質を有しているため、十分に低い界面抵抗値を示す。
リード層104dは、第1実施形態のリード層33と同様に、上式(1),(2a),(2b),(2c)の各条件を満たすペロブスカイト型酸化物結晶構造を有する結晶相を主成分として含んで構成されている。なお、本実施形態のリード層104dは、希土類添加セリアを含んでいない。また、第1実施形態のリード層33と同様に、リード層104dには複数の気孔が形成されている。そして本実施形態では、リード層104dは、気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下となり、気孔の面積の標準偏差が1.00μm以上であり且つ10.00μm以下となり、後述する気孔率が9%以上であり且つ70%以下となるように形成されている。
基準リード部104Lは、リード層104dと同じ材料で形成されている。
多孔質保護層120のうち、少なくとも測定電極106を覆う部位は、スピネル(MgAl)およびチタニア(TiO)で形成されているとともに、貴金属(Pt,Pd,Rhのうち少なくとも1つ)が担持されている。この貴金属は、排気ガスに含まれる未燃ガス成分の燃焼を促進するための触媒として機能する。なお、多孔質保護層120のうち、少なくとも測定電極106を覆う部位とは、素子本体101の積層方向において測定電極106と重なる部位をいう。
このように構成された板型ガスセンサ素子100は、酸素イオン伝導性を有するZrOを含む固体電解質体105と、固体電解質体105上に配置された基準電極104および測定電極106とを備える。
そして板型ガスセンサ素子100では、基準電極104は、固体電解質体105に近い側から順に、反応防止層104bと、電極層104cと、基準電極104と測定電極106との間に生じる起電力をガスセンサ素子3の外部へ出力するために電極層104cに電気的に接続されるリード層104dとが積層された構造を有する。
さらにガスセンサ素子3では、電極層104cとリード層104dは、導電性酸化物を含み、リード層104dの内部に複数の気孔が形成され、複数の気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下である。
このように構成された板型ガスセンサ素子100は、低温作動性が良好となるとともに、冷熱サイクル後において板型ガスセンサ素子100(具体的には、板型ガスセンサ素子100の基準電極104)にクラックが発生するのを抑制することができる。これにより、板型ガスセンサ素子100は、低温環境下でもガス検出を可能とするとともに耐熱衝撃性を向上させることができる。
以上説明した実施形態において、板型ガスセンサ素子100はガスセンサ素子に相当し、固体電解質体105は固体電解質体に相当し、基準電極104および測定電極106は一対の電極に相当し、リード層104dはリード層に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば上記第1実施形態では、内側電極が、反応防止層、電極層およびリード層が積層された多層構造であるガスセンサ素子について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、外側電極が多層構造であるガスセンサ素子であってもよいし、内側電極と外側電極のそれぞれが多層構造であるガスセンサ素子でもよい。同様に、上記第2実施形態では、基準電極が、反応防止層、電極層およびリード層が積層された多層構造である板
型ガスセンサ素子について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、測定電極が多層構造である板型ガスセンサ素子であってもよいし、基準電極と測定電極のそれぞれが多層構造である板型ガスセンサ素子でもよい。
また上記第1実施形態では、ガスセンサとして、筒型のガスセンサ素子を備えるガスセンサについて説明したが、上記第2実施形態の板型ガスセンサ素子を備えるガスセンサであってもよい。なお、板型ガスセンサ素子を備えるガスセンサは公知であるため、詳細な構成についての説明は省略する。
また上記実施形態では、上記のペロブスカイト相を主成分として希土類添加セリアを含まないリード層を備えるガスセンサ素子について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、リード層は、希土類添加セリアを含むようにしてもよく、このようなリード層は、ガスセンサ素子の使用時において外側電極と内側電極との間の内部抵抗値を低下させることが可能である。但し、室温におけるリード層の電気抵抗値を低下させるためには、希土類添加セリアを含まないようにするとよい。また、リード層が電極層上面全体を覆うもので説明したが、電極層上面の少なくとも一部と積層されるものでもよい。
また上記実施形態では、ペロブスカイト相として、MがFeである材料を用いたものを説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ペロブスカイト相として、MがCoであってもよいし、MがFeとCoの双方であってもよい。また、MとしてFe、Coに加えてCuを用いてもよい。
上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
1…ガスセンサ、3…ガスセンサ素子、21…素子本体、27…外側電極、30…内側電極、32…電極層、33a…先端リード層、100…板型ガスセンサ素子、104…基準電極、104c…電極層、104d…リード層、105…固体電解質体、106…測定電極

Claims (5)

  1. 酸素イオン伝導性を有するZrOを含む固体電解質体と、前記固体電解質体上に配置された一対の電極とを備えるガスセンサ素子であって、
    前記一対の電極のうち少なくとも一方は、前記固体電解質体に近い側から順に、少なくとも、電極層と、前記電極層に電気的に接続されるリード層とが積層された構造を有し、
    前記電極層と前記リード層は、導電性酸化物を含み、
    前記リード層の内部に複数の気孔が形成され、
    複数の前記気孔の平均円相当半径が0.35μm以上であり且つ2.60μm以下であるガスセンサ素子。
  2. 請求項1に記載のガスセンサ素子であって、
    複数の前記気孔の面積の標準偏差が1.00μm以上であり且つ10.00μm以下であるガスセンサ素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子であって、
    前記気孔の気孔率が9%以上であり且つ70%以下であるガスセンサ素子。
  4. 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のガスセンサ素子であって、
    前記導電性酸化物は少なくともLaを含む酸化物であるガスセンサ素子。
  5. 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のガスセンサ素子と、前記ガスセンサ素子を保持する保持部材とを備えるガスセンサ。
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