JP2018111536A5 - - Google Patents
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Description
本発明は電子レンジ加熱食品用容器に関し、特に蓋体部からの水蒸気の効率よい排気を可能とする容器の製法に関する。
調理済み食品をコンビニエンスストア等の小売店にて販売する際の加熱調理または持ち帰った後の加熱調理に際し、これらの食品を包装する容器は容器本体部とその開口部と嵌合する蓋体部の組み合わせからなる。特に、食品の収容、陳列、販売等の1回のみの使用に用いられる使い切り容器であることから、極力簡素化した蓋嵌合構造である。そのため、現状、合成樹脂シートの成形品が容器の主流である。
食品の加熱調理や温め直しには、通常電子レンジ(マイクロ波照射)が使用される。そこで、食品容器ごと電子レンジ内に入れられそのまま加熱された後に提供される。実際に販売される食品に着目すると、スープ類のように水分量の多い食品から、炒め物等のように重量当たりの水分量の少ない食品まで存在し、食品の種類は実に多用である。ここで問題となることは、電子レンジによる食品の加熱調理の際、容器内の食品から水蒸気が発生することである。
蓋嵌合容器においては、容器本体と蓋体の嵌合を緩くすれば内部発生の水蒸気の排気は容易である。しかし、蓋体側の嵌合が緩い場合、製造、出荷、陳列の中間段階で蓋体が外れやすい等の問題から異物混入が懸念される。このため、食品の購入者からの評判は思わしくない。そこで、内部発生の水蒸気を容器外部に排気するための穴部を形成した蓋体が提案されている(特許文献1、2等参照)。特許文献1、2に代表される容器の蓋体によると、U字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部が蓋体に形成されている。水蒸気はこの舌片状の開口部を通過して容器外部に放出される。
U字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部の排気効率は良好である。ところが、水蒸気の排気が良好ということは、それだけ、舌片状の開口部からの異物侵入のおそれも増す。そのために、この場合、舌片状の開口部を塞ぐ封止テープが貼付されることがある。さらには、舌片状の開口部を被覆するためのフィルム部材も別途必要により被せられる。例えば、フィルム部材を被せる場合、舌片状の開口部の周りを取り囲む壁部が蓋体側に設けられ、舌片状の開口部の周りに隙間が形成される。そして、この壁部にも水蒸気の通り道が形成される等、構造が複雑となっていた。また、切れ込みによる舌片が折れて容器内部に落下すると、それ自体が異物混入となる問題も内包している。
上述のように、既存の水蒸気を排気する構造を採用した容器では本来の食品包装にのみ必要な資材以外も必要となり、コスト上昇が否めない。加えて、切れ込みによる舌片状の開口部の形状は一律であり、周辺構造の制約も多い。
一連の経緯から、発明者は、U字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部を用いた水蒸気の排気に代わる新たな排気構造を模索してきた。その中で容器の蓋体部に微細な長孔を設けた構造が有効であることを見出した。しかも、微細な長孔であることから、破損や異物混入への耐性も良好であることが判明した。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、従前のU字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部を用いた水蒸気の排気に代わる新たな排気構造を提案し、良好な水蒸気排気を可能とし、同時に封止性能改善、異物混入抑制を実現し、併せて蓋体部の形状上の制約も少なく、資材コストの軽減にも有利な電子レンジ加熱食品用容器の製法を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、前記蓋体部の蓋面部に、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する排気部を設けるに際して、前記蓋面部にレーザー光線の照射のオンオフにより排気長孔を複数穿設して排気長孔群を形成することを特徴とする電子レンジ加熱食品用容器の製法に係る。
請求項1の発明に係る電子レンジ加熱食品用容器の製法によると、電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、前記蓋体部の蓋面部に、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する排気部を設けるに際して、前記蓋面部にレーザー光線の照射のオンオフにより排気長孔を複数穿設して排気長孔群を形成するため、従前のU字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部を用いた水蒸気の排気に代わり、良好な水蒸気排気及び封止性能改善を実現し、より効率よく水蒸気を排気することができ、併せて蓋体部の形状上の制約も少なく、資材コストの軽減も可能となる。しかも、簡便かつ迅速に蓋面部に排気長孔を穿設することができ、特に量産性に優れる。とりわけ、従来の針刺しやドリル等の物理的な加工方法の場合、時間を多く要することに加え十分な加工精度が得られない等の点が挙げられ、また、孔形成に際し微粉末の発生の問題も払拭できず事後の洗浄の手間も必要となるのであるが、レーザー光線の照射によればこのような問題は一挙に解決できる。
本発明の一実施形態の食品用容器1は、図1の分離状態の全体斜視図のとおり、容器本体部100と、この容器本体部100の開口部101と嵌合する蓋体部10の組み合わせから構成される。特に、容器本体部100の容器内部103に食品が収容され、蓋体部10が被せられた状態のまま電子レンジのマイクロ波照射により加熱または加温される(加熱調理)。それゆえ、食品用容器1は「電子レンジ加熱食品用容器」である。
蓋体部10の蓋面部11には、排気長孔21が形成されている。図示のように、排気長孔21は複数個備えられており、これらの排気長孔21が複数個集まって排気長孔群20が形成されている。電子レンジによる加熱または加温に際し、容器本体部100内に収容されている食品C(図3参照)から発生する水蒸気は、排気長孔21を通じて食品用容器1の外部に排気される。排気長孔21を複数個形成して排気長孔群20としているため、より効率よく水蒸気を排気することができる。本実施形態の蓋体部10において、蓋面部11の全体または一部に蓋面部11より適度に掘り下げた凹面部30が形成される。この凹面部30の中に排気長孔群20が形成される。また、図示では、凹面部30を取り囲むようにして蓋面上周壁部35が形成されている。
凹面部30が備えられることにより、排気長孔21から噴出した水蒸気が液化して水滴となった際、水滴は凹面部30に溜まり蓋面部11に広がらなくなる。そうすると、蓋面部11の濡れる部位を少なくすることができる。蓋面上周壁部35は囲いとなりさらに水滴の漏出を防ぐ目的で設けられる。
図示の容器本体部100と蓋体部10の嵌合は、内嵌合と称される形態であり、蓋体部10の周囲が容器本体部100の開口部101に嵌り込む形態である。蓋体部10の周囲には、容器本体部100の開口部101と内嵌合する断面視U字の周壁部15が設けられている。内嵌合の嵌合形態は容器本体部100と蓋体部10の相互の密着が強固となる。よって、安易に蓋体部10は脱離し難くなる。
容器本体部100では、その開口部101に開口段部107が設けられ、蓋体部10の周壁部15を内側に受け入れ嵌合可能とする。容器本体部100は、上方から開口部101、胴部104、底部105により構成され、食品の量に十分対応した内容量の鉢状または椀状の容器となる。容器本体部100と蓋体部10の横断面形状は適宜であり図示では円形としている。多角形や楕円形等の断面形状とすることも可能である。
食品用容器1(容器本体部100と蓋体部10の組み合わせ)は、主に、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、デパート、飲食店、惣菜専門店(デリカテッセン)、喫茶店、サービスエリア等の店舗にて販売される弁当、惣菜、麺料理類、スープ料理、さらにはコーヒー、ココア、紅茶、緑茶、薬草茶等の各種飲料類を包含する食品の包装に用いられる容器である。主に想定される用途は、ワンウェイ(one−way)やディスポーザブル(disposable)等と称される1回のみの使用に用いられる使い切り容器(使い捨て容器)である。使い切り容器とすることにより、食品の衛生管理に都合よい。
食品用容器1の用途は、主に使い切り容器としての利用である。そこで、蓋体部10は安価かつ簡便に量産して製造できる合成樹脂のシート(プラスチック樹脂シート)から形成される。具体的には、蓋体部10は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)等の熱可塑性樹脂のシート(合成樹脂シート)、さらにはポリ乳酸等の生分解性の熱可塑性樹脂のシートである。合成樹脂シートの厚さは適宜ではあるものの、概ね1mm以下の厚さであり、通常、200ないし700μmの厚さである。そして、合成樹脂シートは真空成形により成形される。合成樹脂シートを原料とした際、その成形時の量産性、加工精度等を考慮すると真空成形が簡便かつ最適である。また、後述するように、レーザー光線照射による加工も考慮されるためである。
容器本体部100と蓋体部10の組み合わせにおいて、合成樹脂シートの原料樹脂を同一種類としても異なる種類としてもよい。特に、食品用容器1は電子レンジによる加熱に対応するため、熱伝導を考慮して容器本体部側を発泡ポリスチレン製や紙製とすることもできる。使用する樹脂の種類は用途、内容物、包装対象により適宜選択される。続く図2等に開示の実施形態では、蓋体部10はポリスチレン製とし、容器本体部100は発泡ポリスチレン製とする。
図2及び図3の部分断面図を用い、図示実施形態における容器本体部100と蓋体部10の嵌合部位、排気長孔群20(排気長孔21)について説明する。図2は蓋体部の分離状態であり、図3は蓋体部の嵌合(嵌着または合着)状態である。蓋体部10の断面視U字の周壁部15は、蓋密着壁部16、周溝底部17、及び内側壁部18から形成される。蓋密着壁部16の外縁にはフランジ部19が備えられる。これに対応する容器本体部100の開口部101では、外縁フランジ部109、開口周壁部106、その下端に開口段部107が形成される。
さらに図3の状態から理解されるように、蓋体部10の周壁部15が容器本体部100の開口部101に嵌合されると、蓋密着壁部16は開口周壁部106と密着(合着)する。こうして、食品用容器1の内部の気密性は高まる。しかし、その分、食品用容器1の内部に収容された食品Cから発生する水蒸気の抜け道はなくなる。そこで、内部発生の水蒸気Vpは蓋体部10の蓋面部11に形成された排気長孔21から食品用容器1の外部に放出される。こうして、食品用容器1が異常に膨張し、蓋体部が変形したり不自然に開いたりする問題は回避される。
蓋体部10の蓋面部11に排気長孔群20を構成する個々の排気長孔21に際し、蓋面部11にレーザー光線が照射され、同蓋面部11に排気長孔21が穿設される。排気長孔21の形成に際し、例えば、針刺しやドリル等の物理的な加工方法の場合、時間を多く要することに加え、十分な加工精度が得られない等の点が挙げられる。また、孔形成に際し、微粉末の発生の問題も払拭できず、事後の洗浄の手間も必要となる。そこで、簡便かつ迅速に蓋面部に排気長孔を穿設可能な点から、レーザー光線の照射が用いられる。
レーザー光線は加工出力、加工精度等を得ることができる種類であれば、特段限定されず、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等の各種レーザーとそれらの照射装置が使用される。前述のように、蓋体部の材質が合成樹脂のシートから形成されている場合、排気長孔はレーザー光線照射により簡単かつ短時間で穿設される。特に量産性に優れる。
個々の排気長孔21の形状は、正確には両端部分を半円状とする長方形状である(図8参照)。ただし、両端部分の形状は誤差範囲として無視され、単純に長方形として開孔面積は計算される。以降においても、排気長孔は長方形として説明する。ここで、排気長孔群20を構成する排気長孔21についてさらに詳述する。まず、個々の排気長孔21の幅(長方形の短辺側)は0.15ないし1.0mmが例示される。より好ましい排気長孔21の幅は0.3ないし0.5mmである。
排気長孔21の幅の下限は、電子レンジ加熱時に発生した水蒸気の排気に十分な開口量を得るためである。幅の下限の0.15mmはおおよそ現状の加工技術を考慮した値である。排気長孔21の幅が0.15mmを下回る場合、排気長孔は狭くなりすぎであり排気長孔21からの水蒸気の排気効率は低下すると考えられる。結果、容器本体部100に嵌合した蓋体部10が内圧により外れやすくなる。また、レーザー光線の照射装置の精度上の下限とも考えられる。
加えて、合成樹脂シートから形成された蓋体部10にレーザー光線を照射すると、当該照射部位において樹脂シートが溶解して孔が開く。しかし、設定の幅が狭すぎる場合、レーザー光線照射の熱により溶解した樹脂が冷却して固化する時点で互いに接合するおそれがある。そうすると、照射部位に所望の適切な排気長孔が形成されず、十分な水蒸気排気が損なわれてしまう。そのため、不用意な再接合を生じにくくさせる便宜から、幅の下限は0.15mm、好ましくは0.3mmとしている。
排気長孔21の幅の上限は、食品用容器1の内部への異物混入を有効に抑制するための大きさとするためである。例えば、一般に異物として認識される微小な昆虫等の場合、幅が1.0mmよりも小さいと、容器内部への侵入はほぼ阻まれる。そこで、幅の上限は1.0mm、より好ましくは0.5mmとしている。
次に、排気長孔21の長さは1ないし12mmの範囲が例示され、好ましくは4ないし7mmの範囲である。排気長孔21の幅は前述のとおり微細である。それゆえ、内部発生の水蒸気の排気に有効であるため、適量な長さが必要とされる。長さの下限はおおよそ長孔として成立し得るとともに水蒸気の排気を考慮した量である。長さの上限は、蓋体部10自体の強度維持の必要性のためである。蓋体部10は合成樹脂シートから形成されている場合、排気長孔21の長さが長くなるほど、その排気長孔付近では撓み変形等が生じやすい。そうすると、前述のとおり排気長孔21の幅は狭められているにも係わらず、排気長孔21は紡錘形に開口しやすくなる。そこで、このような不用意な排気長孔の変形に伴う開口を抑制するため、排気長孔の長さの上限は12mm、好ましくは7mmが望ましい。
また、排気長孔21が複数個集まって形成される排気長孔群20の開孔面積の合計、すなわち、蓋面部11上の全ての排気長孔21の開孔面積(すなわち、排気長孔の幅と長さの積である。)の合計は、0.3ないし100mm2の範囲が例示される。開孔面積の合計の最小量は、最小の排気長孔(幅:0.15mm,長さ:1mm)を2箇所形成したときの面積に相当する。むろん、当該面積量は極めて水蒸気発生量の少ない食品を対象とした値である。そこで、対応可能な食品の種類を考慮して、現実的な開孔面積の合計の下限は、0.5mm2、さらには1mm2と考えられる。
例えば、麺料理の場合、麺に加えて汁(つゆ)の量も多いことから食品用容器の容量も多くなる。そうすると、電子レンジによる加熱時間は長くなり、容器内全体で発生する水蒸気量も相対的に多くなる。この場合、排気長孔からの良好な水蒸気の排気を促すため、開孔面積の合計を大きくする必要がある。ただし、必要能力以上に排気長孔を増やしたとしても、穿設の手間が増したり蓋体部の強度が低下したりするおそれも懸念される。そこで、開孔面積の合計の上限として100mm2、より好ましい上限として80mm2が導き出される。排気長孔群の開孔面積の合計は前述の範囲であるため、電子レンジ加熱食品用容器(蓋体部)は市場にて流通する多くの食品に対応できる。
これまでに説明した排気長孔21の形状を採用する利点は、作業時間の短縮になるためである。特に複数の排気長孔21から構成される排気長孔群20を形成する際に有効である。実施形態においては、蓋体部10の蓋面部11に対して炭酸ガスレーザー等のレーザー光線が照射され、排気長孔21は穿設される。この状況について、図4の作業タイムチャート(模式図)が想定される。図中の横軸は時間(t)である。
図4の上段は、例えば、円孔形状の排気孔を形成する場合に相当する。図中、「_Π」の凹凸上の繰り返しは、レーザー光線の照射(ON:上側)とその停止(OFF:下側)を示す。その直下のS字と直線の組み合わせからなる図形は、照射を受けて蓋体部に形成される孔の様子である。特には、穿設量(深さ)と読み替えても良い。引き伸ばされたS字状部分は、レーザー光線の照射により蓋体部の樹脂シートを溶解している状態である。いわゆる照射直後からまだ貫通に至っていない準備状態であり、その間の時間は「t1」として表される。平坦部分は、貫通して所定の大きさまで孔が発達している状態である。いわゆる実際の作業状態であり、その間の時間は「t2」として表される。そして、いずれでもない時間は、例えば、別の孔へ移動する等の待機時間(ti)として表される。
レーザー光線照射のON−OFF状態と穿設量のグラフからわかるように、レーザー光線の照射時間の全てが実際に孔を広げている時間にはならず、孔を掘り進めるための準備時間(t1)も発生する。円孔形状の排気孔の場合、細かい孔を複数個形成するため、準備時間(t1)と作業時間(t2)が頻繁に繰り返される。そのため、不可避的に準備時間(t1)が累積される。さらに、細かい孔を複数個形成するため、次々と別の場所へ照射位置は変更される。そうすると、その間の位置調節等は待機時間(ti)となり、否応なく当該時間も累積される。
これに対し、図4の下段は、本発明にて開示する排気長孔を形成する場合に相当する。図中、「_Π」の凹凸上の繰り返しは、レーザー光線の照射(ON:上側)とその停止(OFF:下側)を示す。ただし、排気長孔は長尺であるため、照射時間は長めに設定されている。その直下のS字と直線の組み合わせからなる図形は、照射を受けて蓋体部に形成される孔の様子であり、穿設量(深さ)と読み替えられる。上段と同様に、引き伸ばされたS字状部分は、レーザー光線の照射により蓋体部の樹脂シートを溶解している準備状態であり、その間の時間は「t3」として表される。平坦部分は、貫通して所定の大きさ(長さ)まで孔が発達している実際の作業状態であり、その時間は「t4」として表される。本例においても、照射位置を変更する位置調節等の待機時間(tj)は生じる。
長孔形成の場合であっても、準備時間(t3)及び待機時間(tj)を無くすことはできない。さらには、長孔の長さの分だけ余計に時間を要する場合もある。しかしながら、いったん準備時間(t3)により長孔が貫通してしまうと、あとは所定の長方形状にまで拡張するための作業時間(t4)で済むと考えられる。そこで、図4の上下段の比較からわかるように、下段側の長孔の形成において、準備時間(t3)の累積量は相対的に上段よりも削減される。この結果から、同様の開孔面積量を得る場合、準備時間(t3)の総量が少なくなり、時間短縮につながる。加えて、上段側では頻繁に照射位置が変化するため、その間の待機時間(ti)も多く累積される。これに対し、下段側では長孔形成であるため、上段側よりも照射位置の変更回数は少なくなり、総じて待機時間(tj)の累積量は少なくなる。これらの対比から、時間当たりの処理数(生産個数)は増加するといえる。なお、発明者の試行によると、時間当たりの生産数は約1.5倍に増加した。
図5は他の実施形態の蓋体部10xの全体斜視図である。図示の蓋体部10xでは、蓋面部11xに凹面部30が形成され、この凹面部30に複数の排気長孔21からなる排気長孔群20が穿設される。図1及び図2とは異なり蓋面上周壁部35は省略されている。図4の蓋面部11xからわかるように、蓋面部11xの形状を簡素化できる。つまり、食品用容器の構造上の制約は少なくなり、資材コストの軽減にも有効です。
図6の各平面図は蓋体部10(蓋面部11)に形成される排気長孔群の他の形態例を示す。図6(a)の排気長孔群20aは、個々の排気長孔21の向きを逐次斜めにした配置である。図示の凹面部30aは長方形状である。同(b)の排気長孔群20bは、排気長孔21の穿設によりほぼ円形を形成するように形成される。図示の凹面部30bは円形状である。同(c)の排気長孔群20cは、排気長孔21の穿設により、アルファベットの「A」の文字を模した形状に形成される。図示の凹面部30cは長方形状である。すなわち、排気長孔群は平面図形として構成されている。平面図形は図形のみならず、文字や記号も含まれる。
排気長孔群の平面図形の形状や向きは、レーザー光線照射時の設定により自在に制御される。このため、従前の切れ込みによる舌片状の開口部のようなU字状またはV字状等の形状が制約は無くなる。排気長孔の穿設により形成される排気長孔群の平面図形により、製造者、販売者等の商標、標章、ロゴ、さらには製造日等の各種情報も、排気長孔群を通じて表示可能となる。排気長孔群の配置は蓋体部の蓋面部に1箇所としても2箇所以上としても良い。これは食品用容器の意匠により適切に規定される。
これまでの説明にあるように、本発明の食品用容器(電子レンジ加熱食品用容器)における排気長孔の大きさ(開孔面積)を勘案すると、極めて微細であることから昆虫等の異物侵入を有効に抑制できる。そのため、本発明の食品用容器では、従前の容器に見られた蓋体部の排気を担う穴を被覆したり包皮したりするフィルム等の部材は、省略可能となる。従って、本発明の食品用容器は、電子レンジ加熱または加温時の開封等の手間も必要なく、包装資材費の軽減にも貢献し得る。排気長孔の開孔面積の合計を考慮することにより、本発明の食品用容器は多種類の食品から発生する水蒸気量にも対応可能な極めて好適な包装資材となる。さらに、排気長孔の配置いかんにより多様な排気長孔群を形成できることから、蓋体部の形状設計の制約は少なくなることに加え、排気長孔群自体の形状の自由度も高まる。
[電子レンジ加熱食品用容器の作製]
電子レンジ加熱食品用容器は、容器本体部と蓋体部の組み合わせからなる物品とした。当該「電子レンジ加熱食品用容器の作製」は量の多い食品の包装を想定した。蓋体部には、耐熱二軸延伸ポリスチレン(耐熱OPS)樹脂のシート材を使用した。これを真空成形により円盤状の蓋体部に加工した。蓋体部の最大直径は約175mm、蓋面部の最大直径は約135mmであった。蓋体部の材料厚みは0.3mmであった。容器本体部には、耐熱発泡ポリスチレン製のシート材(ポリプロピレンフィルム被着品)を使用した。これを真空成形により横断面円形の鉢状(椀状またはボウル状)の容器本体部に加工した。容器本体部の開口部直径(内径)は約160mm、深さは70mmとし、容器本体部の内容量(食品収容可能な容量)は約800mLとした。
電子レンジ加熱食品用容器は、容器本体部と蓋体部の組み合わせからなる物品とした。当該「電子レンジ加熱食品用容器の作製」は量の多い食品の包装を想定した。蓋体部には、耐熱二軸延伸ポリスチレン(耐熱OPS)樹脂のシート材を使用した。これを真空成形により円盤状の蓋体部に加工した。蓋体部の最大直径は約175mm、蓋面部の最大直径は約135mmであった。蓋体部の材料厚みは0.3mmであった。容器本体部には、耐熱発泡ポリスチレン製のシート材(ポリプロピレンフィルム被着品)を使用した。これを真空成形により横断面円形の鉢状(椀状またはボウル状)の容器本体部に加工した。容器本体部の開口部直径(内径)は約160mm、深さは70mmとし、容器本体部の内容量(食品収容可能な容量)は約800mLとした。
[排気長孔群の形成]
排気長孔群の形成に際し、樹脂加工分野において一般に使用される公知の炭酸ガスレーザーの照射装置を用い、前記の成形により得た蓋体部中央部分に対し大きさ、個数の異なる9種類の排気長孔群を形成し、実施例1ないし実施例9を作製した(表1及び表2参照)。表1及び表2において、上から順に排気長孔の大きさ(実測値){幅(mm),長さ(mm)}、排気長孔群の形態{排気長孔の配列(横×縦),排気長孔の個数(個)}、開孔面積{排気長孔1個当たり(mm2),開孔面積合計(mm2)}の項目である。
排気長孔群の形成に際し、樹脂加工分野において一般に使用される公知の炭酸ガスレーザーの照射装置を用い、前記の成形により得た蓋体部中央部分に対し大きさ、個数の異なる9種類の排気長孔群を形成し、実施例1ないし実施例9を作製した(表1及び表2参照)。表1及び表2において、上から順に排気長孔の大きさ(実測値){幅(mm),長さ(mm)}、排気長孔群の形態{排気長孔の配列(横×縦),排気長孔の個数(個)}、開孔面積{排気長孔1個当たり(mm2),開孔面積合計(mm2)}の項目である。
参考までに、図7は実施例6の蓋体部の排気長孔群を撮影した写真である。図8は当該排気長孔群を構成する個々の排気長孔の拡大写真(倍率50倍)である。図8の上段は実施例1の排気長孔であり、同図下段は実施例6の排気長孔である。図示からわかるように、排気長孔は両端部分が丸まった長尺の長方形状であった。なお、排気長孔の幅と長さの数値は、実施例ごとの排気長孔を測定した数値の単純平均とした。また、開孔面積の算出に際し、両端部分の丸くなった部位形状は無視可能であり、長方形形状とみなして「最大幅」と「最大長さ」の積とした。
[食品の電子レンジ加熱試験]
実際に販売される食品の種類は極めて多岐にわたる。そこで、発明者らは、水分量が多くしかも電子レンジ加熱に要する時間の長い食品として「カレーうどん」を選択した。いずれの容器本体部内にも当該カレーうどんを同量(全体で約620g)ずつ収容し、前記作製の各蓋体部(実施例1ないし9)を適切に嵌合した。そして、コンビニエンスストア等に導入されている高出力型の電子レンジを用いて加熱試験に供した。電子レンジにおける加熱条件は、通常使用の1500Wよりも出力を高めた高加熱の負荷条件を得るため1600Wの出力とした。当該出力条件において電子レンジ加熱時間は2分以上とし、2分30秒を上限に打ち切った。そして、2分経過時点で容器本体部と嵌合した蓋体部が内部発生の水蒸気圧力により外れたか否かを観察した。
実際に販売される食品の種類は極めて多岐にわたる。そこで、発明者らは、水分量が多くしかも電子レンジ加熱に要する時間の長い食品として「カレーうどん」を選択した。いずれの容器本体部内にも当該カレーうどんを同量(全体で約620g)ずつ収容し、前記作製の各蓋体部(実施例1ないし9)を適切に嵌合した。そして、コンビニエンスストア等に導入されている高出力型の電子レンジを用いて加熱試験に供した。電子レンジにおける加熱条件は、通常使用の1500Wよりも出力を高めた高加熱の負荷条件を得るため1600Wの出力とした。当該出力条件において電子レンジ加熱時間は2分以上とし、2分30秒を上限に打ち切った。そして、2分経過時点で容器本体部と嵌合した蓋体部が内部発生の水蒸気圧力により外れたか否かを観察した。
[電子レンジ加熱試験の結果と考察]
実施例1ないし9の蓋体部について、電子レンジ加熱が2分経過した時点において、いずれも容器本体部から蓋体部は外れなかった。図9は実施例6の蓋体部を使用して2分間経過した状態を撮影した写真である。
実施例1ないし9の蓋体部について、電子レンジ加熱が2分経過した時点において、いずれも容器本体部から蓋体部は外れなかった。図9は実施例6の蓋体部を使用して2分間経過した状態を撮影した写真である。
前述のとおり開示の電子レンジ加熱試験は、通常実施される条件よりも加熱負荷を高めた試験である。当該条件下であっても、各実施例の排気長孔群は十分に内部発生水蒸気の排気性能を発揮した。また、実験に供した食品も容量、水分量ともに多く、加熱時間を多く必要とする。従って、これらの過酷条件においても水蒸気排気が良好であったことは、本発明の排気長孔の有効性を大きく肯定する。
[排気長孔の大きさの範囲について]
実施例1ないし9の蓋体部を用いた試験結果から、好例な排気長孔に関する範囲は次のとおり導き出すことができる。前掲の表1及び表2より、排気長孔の最小幅は実施例7である。そこで、照射装置の加工精度と個数を加味して、幅の下限値を0.15mm、好ましくは0.3mmとした。最大幅は実施例9であることから、1.0mmを上限とした。幅の上限を引き上げることは可能ではあるものの、異物混入防止の観点から1.0mmを上限とした。それゆえ、排気長孔の幅の範囲は0.15ないし1.0mm、好ましくは0.3ないし0.5mmとなる。
実施例1ないし9の蓋体部を用いた試験結果から、好例な排気長孔に関する範囲は次のとおり導き出すことができる。前掲の表1及び表2より、排気長孔の最小幅は実施例7である。そこで、照射装置の加工精度と個数を加味して、幅の下限値を0.15mm、好ましくは0.3mmとした。最大幅は実施例9であることから、1.0mmを上限とした。幅の上限を引き上げることは可能ではあるものの、異物混入防止の観点から1.0mmを上限とした。それゆえ、排気長孔の幅の範囲は0.15ないし1.0mm、好ましくは0.3ないし0.5mmとなる。
表1及び表2より、排気長孔の最小長さは実施例7である。そこで、照射装置の加工精度と個数を加味して、長さの下限値を1mm、好ましくはその他の実施例を勘案して4mmとした。最大長さは実施例4より12mmとした。むろん、これ以上長くすることも可能ではある。しかし、排気長孔部分の強度確保や異物混入等を勘案すると、12mmが事実上の上限となる。それゆえ、排気長孔の長さの範囲は1ないし12mm、好ましくは他の実施例の長さを加味して4ないし7mmの範囲である。
続いて、排気長孔の開孔面積の合計(蓋面部上の全ての排気長孔の開孔面積の合計)について、当該実施例における試験結果からは概ね35ないし65mm2の範囲を導くことができる。この結果とともに、内容物である食品の性状、容量等の多様性も考慮して、0.3ないし100mm2、好ましくは1ないし80mm2の範囲を規定した。
以上のとおり、本発明の電子レンジ加熱食品用容器の製法は、従前のU字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部を用いた水蒸気の排気に代わり、良好な水蒸気排気及び封止性能改善を実現し、より効率よく水蒸気を排気することができ、併せて蓋体部の形状上の制約も少なく、資材コストの軽減も可能となり、しかも、簡便かつ迅速に蓋面部に排気長孔を穿設することができ、特に量産性に優れる製法を提供できた。蓋体部に適切な条件により形成された排気長孔を備えたことから、良好な水蒸気の排気が実現でき、既存の切れ込み構造を備えた電子レンジ用の包装容器の代替として極めて有効となる。
1 食品用容器(電子レンジ加熱食品用容器)
10,10x 蓋体部
11,11x 蓋面部
15 周壁部
16 蓋密着壁部
20,20a,20b,20c 排気長孔群
21 排気長孔
30 凹面部
35 蓋面上周壁部
100 容器本体部
103 容器内部
104 胴部
105 底部
106 開口周壁部
107 開口段部
C 食品
Vp 水蒸気
10,10x 蓋体部
11,11x 蓋面部
15 周壁部
16 蓋密着壁部
20,20a,20b,20c 排気長孔群
21 排気長孔
30 凹面部
35 蓋面上周壁部
100 容器本体部
103 容器内部
104 胴部
105 底部
106 開口周壁部
107 開口段部
C 食品
Vp 水蒸気
Claims (1)
- 電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、
前記蓋体部の蓋面部に、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する排気部を設けるに際して、
前記蓋面部にレーザー光線の照射のオンオフにより排気長孔を複数穿設して排気長孔群を形成する
ことを特徴とする電子レンジ加熱食品用容器の製法。
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