JP2018098141A - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、ここで開示される非水電解液二次電池では、リン酸三リチウム粒子を除く正極合材層の固形分量を100wt%としたときのリン酸三リチウム粒子の含有量が0.88wt%〜8.8wt%であり、かつ、リン酸三リチウム粒子の比表面積が0.9m2/g〜20.3m2/gである。
具体的には、本発明者は、非水電解液の分解によって生じた酸(例えばフッ化水素(HF))と反応するというリン酸三リチウムの作用に着目し、かかる作用を適切に生じさせるためにはリン酸三リチウム粒子の比表面積を適切な範囲に規定する必要があると考えた。
そして、かかる考察に基づいて実験を行ったところ、リン酸三リチウム粒子の比表面積を大きくすると過充電状態における種々の問題を抑制する効果が大きくなる一方で、作製後の電池の反応抵抗が増加するという知見を得た。
そして、かかる知見に基づいてさらに実験を重ねた結果、リン酸三リチウム粒子を除く正極合材層の固形分量を100wt%としたときのリン酸三リチウム粒子の含有量を0.88wt%〜8.8wt%の範囲内にするとともに、リン酸三リチウム粒子の比表面積を0.9m2/g〜20.3m2/gの範囲内にすることによって、リン酸三リチウム粒子の添加による効果を適切に発揮させることができ、かつ、反応抵抗の増加を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
以下、ここで開示される非水電解液二次電池の一例としてリチウムイオン二次電池を説明する。図1は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外形を模式的に示す斜視図であり、図2は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体を模式的に示す斜視図である。このリチウムイオン二次電池100は、図1に示す角形の電池ケース50の内部に、図2に示す電極体80が収容されることによって構成される。
電池ケース50は、上端が開放された扁平なケース本体52と、その上端の開口部を塞ぐ蓋体54とから構成されている。蓋体54には、正極端子70および負極端子72が設けられている。図示は省略するが、正極端子70は、電池ケース50内に収容された電極体80の正極10と電気的に接続され、負極端子72は負極20と電気的に接続される。
次に、上記した電池ケース50の内部に収容される電極体80について説明する。図2に示すように、本実施形態における電極体80は、長尺シート状の正極10と負極20を長尺シート状のセパレータ40とともに積層して捲回することによって作製された捲回電極体である。なお、ここで開示される非水電解液二次電池に用いられる電極体は、図2に示すような捲回電極体に限定されず、例えば、複数枚の正極と負極とをセパレータを介して交互に積層させた積層電極体であってもよい。
図2における正極10では、長尺シート状の正極集電体12の両面に、正極活物質を主成分とする正極合材層14が形成されている。そして、正極10の幅方向の一方の側縁部には、正極合材層14が塗工されていない正極合材層非形成部16が形成されており、この正極合材層非形成部16が上記した正極端子70(図1参照)と電気的に接続される。
負極20についても、正極10と同様に、長尺シート状の負極集電体22の両面に負極活物質を主成分とする負極合材層24が形成されている。そして、負極20の幅方向の一方の側縁部に負極合材層非形成部26が形成されており、この負極合材層非形成部26が負極端子72(図1参照)と電気的に接続される。
セパレータ40には、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材が用いられる。セパレータ40についても、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができ、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂等ならなるシート材を使用することができる。
また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の電池ケース50内には、上記した捲回電極体80とともに非水電解液が収納(充填)されている。かかる非水電解液としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)に、支持塩を所定の濃度(例えば1mol/L程度)で含有させたものが挙げられる。なお、かかる支持塩としては、フッ素を含んだリチウム化合物、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等が用いられる。
上記したように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の正極合材層14には、正極活物質とリン酸三リチウム粒子とその他の添加材とが含まれている。以下、各々の材料について説明する。
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な化合物であり、少なくともリチウムを含む酸化物(リチウム複合酸化物)から構成されている。本実施形態において、正極活物質の種類は特に制限されず、一般的なリチウムイオン二次電池の正極活物質と同様のものを使用することができる。かかる正極活物質の具体例としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物などが挙げられる。
上記したように、本実施形態における正極合材層14にはリン酸三リチウム(Li3PO4)の粒子が含まれている。当該リン酸三リチウム粒子は、リチウムイオン二次電池100が過充電状態となった際に、非水電解液の分解によって生じた酸(例えばフッ化水素(HF))を表面に吸着させることによって、過充電時の発熱や金属元素の溶出等を抑制することができる。そして、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、リン酸三リチウム粒子の含有量と、リン酸三リチウム粒子の比表面積が所定の範囲内に規定されている。
本実施形態においては、リン酸三リチウム粒子を除く正極合材層16の固形分量を100wt%としたときのリン酸三リチウム粒子の含有量が0.88wt%〜8.8wt%の範囲内に規定されている。かかる正極合材層16に対するリン酸三リチウム粒子の含有量を0.88wt%未満にすると、非水電解液の分解によって生じた酸を十分に吸着させることができずに、過充電時の発熱や金属元素の溶出等を十分に抑制することが困難になる。一方、リン酸三リチウム粒子の含有量が8.8wt%を超えると、正極合材の粘度が大幅に上昇して、正極集電体12の表面に正極合材を塗布することが難しくなって正極10の生産性が低下する虞がある。
このため、本実施形態では、正極合材層16に対するリン酸三リチウム粒子の含有量を0.88wt%〜8.8wt%の範囲内に規定している。これによって、リン酸三リチウムの機能を適切に発揮させることができるリチウムイオン二次電池を高い生産性で得ることができる。
また、本実施形態においては、リン酸三リチウム粒子の比表面積が0.9m2/g〜20.3m2/gの範囲内に規定されている。
上記したように、リン酸三リチウムは、非水電解液の酸化分解によって生じたフッ化水素(HF)などの酸を粒子表面に吸着させることによって過充電時の発熱や金属元素の溶出等を抑制するという機能を有しているが、リン酸三リチウム粒子の比表面積が小さくなりすぎると、かかる機能を適切に発揮させることが難しくなる。
一方、リン酸三リチウム粒子の表面に水分が吸着すると正極における反応抵抗が増加するという現象が生じるため、リン酸三リチウム粒子の比表面積を大きくしすぎると、かかる水分の吸着が生じやすくなって反応抵抗の増加による電池性能の低下が生じる虞がある。
本実施形態におけるリン酸三リチウム粒子の比表面積の規定(0.9m2/g〜20.3m2/g)は、上記した知見に基づいて定められたものであり、この範囲内にリン酸三リチウム粒子の比表面積を規定することによって、フッ化水素(HF)などの酸をリン酸三リチウム粒子の表面に適切に吸着させることができるとともに、水分が吸着することによる反応抵抗の増加を適切に抑制することができる。
これによって、リン酸三リチウムの機能にばらつきを生じさせることなく、過充電時の発熱や金属元素の溶出等を好適に抑制することができるとともに、生産性の低下や反応抵抗の増加などのリン酸三リチウムの添加によって生じ得る問題の発生も防止することができる。
また、正極合材層16には、一般的なリチウムイオン二次電池と同様に、導電剤やバインダ等の添加材が含まれていてもよい。導電剤としては、例えば、カーボンブラック等の炭素材料を用いる事ができる。また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を好ましく用いることができる。
また、正極合材層16には、Si、Na、K、Cl、Fe、Cu、Zn、Pb、Ni、Co、Crなどの金属元素が含まれていてもよい。これらの金属元素は、ペースト状の正極合材を調製する際にリン酸三リチウムの粉末に含まれているものであり、これらの金属元素が正極合材層16に含まれている場合であっても、過充電時の発熱や金属元素の溶出等を好適に抑制することができるとともに、生産性の低下や反応抵抗の増加などのリン酸三リチウムの添加によって生じ得る問題の発生を防止することができる。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、試験例の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
(1)試験例1〜試験例14の作製
実験Aでは、リン酸三リチウム粒子の含有量が異なる14種類の正極合材を用意し、各々の正極合材を用いて4V級のリチウムイオン二次電池を作製し、該作製後の電池の性能を評価した。
そして、セパレータを介して正極と負極を積層させた後に、該積層体を捲回することによって捲回電極体を作製し、該捲回電極体を非水電解液とともに電池ケースに収容して密閉することにより評価試験用の4V級リチウムイオン二次電池を作製した。なお、非水電解液には、ECとDMCとEMCとを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に支持塩(LiPF6)を約1mol/リットルの濃度で含有させた非水電解液を使用した。
実験Aにおいては、上記した試験例1〜試験例14に対して、過充電時の電池温度と、正極合材のペースト粘度を測定した。具体的な測定条件を以下に説明する。
各々の試験例で作製した4V級のリチウムイオン二次電池に対して、20Cの定電流で5.1Vまで充電を行うことによって各電池を過充電状態とし、各々の電池の電池ケース外側の中心部の温度を測定することによって、過充電時の電池温度を測定した。測定結果を表1、表2および図3に示す。なお、表1および表2における測定結果は、試験例1を100とした場合の相対評価で示している。また、図3中の2つのプロットのうち、菱形のプロットが過充電時の電池温度の測定結果を示している。
試験例1〜試験例14の各々について、正極合材層を作製するために使用した正極合材の一部を採取し、室温(18℃〜25℃程度)で3日(72時間)保管した後、E型粘度計(回転速度20rpm)を用いて室温で粘度を測定した。測定結果を表1、表2および図3に示す。なお、表1および表2における測定結果は、試験例1を100とした場合の相対評価で示している。また、図3中の2つのプロットのうち、四角形のプロットが粘度の測定結果を示している。
上記の表1、表2および図3に示すように、正極合材層に対するリン酸三リチウム粒子の含有量が増加するに従って、過充電時の電池温度が低下するが、正極合材の粘度が増加しやすくなるという結果が得られた。そして、各々の試験例を詳細に比較すると、当該リン酸三リチウム粒子の含有量が0.88wt%以上である試験例5〜試験例14では電池温度が大幅に低下しており、リン酸三リチウムが適切に機能していることが確認できた。
一方で、リン酸三リチウム粒子の含有量が8.8wt%を超えた試験例11〜試験例14では、過充電時の電池温度が試験例10と同程度であるにも関わらず、正極合材の粘度が大幅に増加しており、正極の作製が困難になるという結果が得られた。
このことから、試験例5〜試験例10のように、リン酸三リチウム粒子の含有量を0.88wt%〜8.8wt%の範囲内に規定することによって、過充電時の電池温度を大幅に低下させることができるとともに、ペースト粘度の大幅な増加を抑制して正極を生産性高く作製できることが分かった。
次に、実験Bではリン酸三リチウム粒子の適切な比表面積を調べるための実験を行った。
実験Bにおいては、以下の表3および表4に示すように、各試験例において、比表面積が異なるリン酸三リチウム粒子を用いてペースト状の正極合材を調製し、かかる正極合材を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。
なお、試験例15〜試験例28の電池は、リン酸三リチウム粒子の比表面積を異ならせるとともに、リン酸三リチウム粒子の含有量を2.0wt%にしたことを除いて、上記した実験Aにおける試験例7と同じ条件に設定して作製した。
実験Bにおいては、評価試験として、過充電時の電池温度の測定と、反応抵抗の測定を行った。
試験例15〜試験例28の各々のリチウムイオン二次電池について、上記した実験Aと同じ条件で5.1V充電時の電池温度(過充電時の電池温度)を測定した。測定結果を表3、表4および図4に示す。なお、表3および表4に示す測定結果は、試験例15を100とした相対評価で示している。また、図4中の2つのプロットのうち、菱形のプロットが過充電時の電池温度の測定結果を示している。
各試験例のリチウムイオン二次電池を−30℃の環境に配置して、振幅:5mV、測定周波数範囲:10000〜0.001Hzの条件で交流インピーダンスの測定を行い、得られたCole−Coleプロットの円弧形状の直径を反応抵抗として算出した。測定結果を表3、表4および図4に示す。なお、表3および表4における各々の測定結果は、試験例15を100とした相対評価で示している。また、図4では四角形のプロットが反応抵抗の測定結果を示している。
表3、表4および図4に示すように、リン酸三リチウム粒子の比表面積が増加するに伴って過充電時の電池温度が低下するという結果が得られた。そして、各試験例を詳細に比較すると、試験例18〜試験例28のように、比表面積が0.9m2/g以上になると過充電時の電池温度が急激に低下するという結果が得られた。このことから、比表面積を0.9m2/g以上にすることによって、リン酸三リチウムの機能をより適切に発揮できることが分かった。
一方、試験例27、28のように、比表面積が20.3m2/gを超えると反応抵抗が大幅に増加して電池性能が低下するという結果が得られた。このことから、試験例18〜試験例26のように、リン酸三リチウム粒子の比表面積を0.9m2/g〜20.3m2/gの範囲内に規定することによって、リン酸三リチウムの機能をより適切に発揮させることができるとともに、反応抵抗の増加を抑制できることが分かった。
12 正極集電体
14 正極合材層
16 正極合材層非形成部
20 負極
22 負極集電体
24 負極合材層
26 負極合材層非形成部
40 セパレータ
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 正極集電体上に正極合材層が形成されている正極と、負極集電体上に負極合材層が形成されている負極と、フッ素を含んだリチウム化合物を支持塩として有する非水電解液と、を備える非水電解液二次電池であって、
前記正極合材層に、少なくとも正極活物質とリン酸三リチウム粒子とが含まれており、
ここで、前記リン酸三リチウム粒子を除く前記正極合材層の固形分量を100wt%としたときの前記リン酸三リチウム粒子の含有量が0.88wt%〜8.8wt%であり、かつ、前記リン酸三リチウム粒子の比表面積が0.9m2/g〜20.3m2/gである、非水電解液二次電池。
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