JP6667110B2 - 非水電解液二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
かかる製造方法は、正極活物質とともにリン酸三リチウムの粉末および溶媒を含む正極合材を正極集電体上に付与することによって正極合材層を形成すること、および、正極および負極を電池ケースに収容してセル組付け体を構築した後、非水電解液を該電池ケースに供給する前の段階において、該構築したセル組付け体を110℃以上140℃以下の温度域まで加熱して乾燥処理を行うことを特徴とする。
具体的には、正極合材に添加されるリン酸三リチウムの粉末を解析した結果、かかるリン酸三リチウムの粉末に水分が含まれていることがあり、当該水分がリン酸三リチウムの粒子表面に付着すると、フッ化水素(HF)等の酸を吸着するリン酸三リチウムの機能が低下することを見出した。
そして、さらに実験と検討を行った結果、従来の乾燥処理(最高温度:100℃)では、リン酸三リチウムの粉末に含まれる水分を適切に除去することができないことがあり、より高温での乾燥処理が必要であることが分かった。
先ず、本実施形態に係る製造方法によって得られる非水電解液二次電池の一例としてリチウムイオン二次電池を説明する。
図1はリチウムイオン二次電池の外形を模式的に示す斜視図であり、図2はリチウムイオン二次電池の電極体を模式的に示す斜視図である。このリチウムイオン二次電池100は、図1に示す角形の電池ケース50の内部に、正極10および負極20を備える電極体80(図2参照)と非水電解液(図示省略)を収容することによって作製される。
電池ケース50は、上端が開放された扁平なケース本体52と、その上端の開口部を塞ぐ蓋体54とから構成されている。蓋体54には、正極端子70および負極端子72が設けられている。図示は省略するが、正極端子70は電池ケース50内の電極体80の正極10と電気的に接続されており、負極端子72は負極20と電気的に接続されている。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の蓋体54には、非水電解液を電池ケース50内に供給するための注液口56が設けられている。かかる注液口56には封止キャップが嵌め込まれており、かかる封止キャップと蓋体54とが接合されている。
次に、上記した電池ケース50の内部に収容される電極体80について説明する。図2に示すように、本実施形態における電極体80は、長尺シート状の正極10と負極20を長尺シート状のセパレータ40とともに積層して捲回することによって作製された捲回電極体である。なお、ここで開示される非水電解液二次電池に用いられる電極体は、図2に示すような捲回電極体に限定されず、例えば、複数枚の正極と負極とをセパレータを介して交互に積層させた積層電極体であってもよい。
図2における正極10では、長尺シート状の正極集電体12の両面に、正極活物質を主成分とする正極合材層14が形成されている。そして、正極10の幅方向の一方の側縁部には、正極合材層14が塗工されていない正極合材層非形成部16が形成されており、この正極合材層非形成部16が上記した正極端子70(図1参照)と電気的に接続される。
リン酸三リチウム粒子の粒子径を小さくすると、容量維持率の向上や電池抵抗の低減などの電池性能を向上させる効果を得ることができる一方で、かかる粒子径を小さくしすぎると、正極合材の粘度が上昇して正極の作製が困難になる虞がある。上記したリン酸三リチウム粒子のD50粒子径の範囲は、この関係を考慮して規定されたものであり、かかる範囲内の粒子径のリン酸三リチウムの粉末を使用することによって、高い電池性能を有するリチウムイオン二次電池を生産性高く製造することができる。
負極20についても、正極10と同様に、長尺シート状の負極集電体22の両面に負極活物質を主成分とする負極合材層24が形成されている。そして、負極20の幅方向の一方の側縁部に負極合材層非形成部26が形成されており、この負極合材層非形成部26が負極端子72(図1参照)と電気的に接続されている。
セパレータ40には、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材が用いられる。セパレータ40についても、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができる。
但し、本実施形態に係る製造方法では、後述するように乾燥工程における加熱温度を従来よりも高い温度である110℃〜140℃に設定しているため、かかる乾燥工程における熱でセパレータ40が破損することを確実に防止するという観点から、全芳香族ポリアミド(アラミド)等から構成された耐熱性セパレータを用いると好ましい。
また、上記したように、図1に示すリチウムイオン二次電池100の電池ケース50内には、上記した電極体80とともに非水電解液が収納されている。かかる非水電解液には、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液を使用することができる。かかる非水電解液としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)に、支持塩を所定の濃度(例えば1mol/L程度)で含有させたものが挙げられる。なお、かかる支持塩としては、フッ素を含んだリチウム化合物、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等を用いることが好ましい。
次に、上記したリチウムイオン二次電池を製造するリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する。
本実施形態では、先ず、正極活物質とともにリン酸三リチウムの粉末および溶媒を含む正極合材を調製し、かかる正極合材を正極集電体12上に付与することによって正極合材層14を形成する。
具体的には、先ず、正極活物質とリン酸三リチウムの粉末とその他の添加物とを溶媒に分散させることによってペースト状の正極合材を調製する。このときの溶媒としては、例えば、NMP(Nメチルピロリドン)などの有機系の溶媒を用いることが好ましい。
次に、本工程では、調製した正極合材を正極集電体12の表面に塗布し、当該正極合材を乾燥させた後にプレス加工を施すことによって、正極集電体12上に正極合材層14が付与されたシート状の正極10を作製する。
そして、次工程として、上記した正極10と、別途作製した負極20とから上記した電極体80を作製し、該電極体80を電池ケース50に収容してセル組付け体を構築する。なお、負極20を作製する工程や電極体80を作製する工程は、一般的なリチウムイオン二次電池の製造方法と同様の手順で実施することができ、本発明を特徴づけるものでないため説明を省略する。
そして、セル組付け体を構築するに際しては、ケース本体52上部の開口部に蓋体54を嵌め込んで、ケース本体52と蓋体54との接触部分にレーザーを照射する。これによって、ケース本体52と蓋体54とが溶接されてセル組付け体が構築される。
本実施形態に係る製造方法では、非水電解液を該電池ケースに供給する前の段階で、上記したセル組付け体を加熱して正極合材層14を乾燥させる乾燥処理を行う。本実施形態に係る製造方法では、かかる乾燥処理における加熱温度を、リン酸三リチウムの粉末に含まれていた水分を正極合材層14から適切に除去することができる温度、すなわち、110℃以上140℃以下の温度域まで上昇させる。
具体的には、上記したように、正極合材に含まれるリン酸三リチウムの粉末には水分が含まれていることがあり、かかる水分がリン酸三リチウムの粒子表面に吸着すると、リン酸三リチウムの機能が低下して製造後の電池において過充電時の温度上昇を適切に抑制できなくなる虞がある。
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、セル組付け体の電池ケース内部に非水電解液を供給する前に、セル組付け体を110℃以上の高温域まで加熱することによって、リン酸三リチウムの粉末の粉体に含まれる水分を蒸発させる。これによって、リン酸三リチウムの粒子表面に水分が吸着することを防止することができるため、リン酸三リチウムの機能を適切に発揮させることができ、製造後の電池が過充電状態になった場合に急激な温度上昇が生じることを適切に抑制することができる。
なお、かかる乾燥工程における加熱温度が140℃を超えると、負極集電体(銅箔など)が酸化して電池抵抗が大きく上昇する虞があるため、本実施形態では乾燥工程における加熱温度の上限を140℃にしている。
次に、本実施形態においては、乾燥処理を行って正極合材層14の水分を蒸発させた後で、電池ケース50内に非水電解液を供給し、該電池ケース50を密閉してリチウムイオン二次電池100を製造する。具体的には、乾燥処理の終了後に、蓋体54の注液口56から電池ケース50の内部に非水電解液を供給(注液)する。
そして、注液口56に封止キャップを嵌め込んで、蓋体54と封止キャップとの接触部分をレーザー溶接などによって接合する。これによって、電池ケース50が密閉されてリチウムイオン二次電池100が作製される。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、試験例の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
(1)試験例1〜試験例9の作製
実験Aでは、試験例1〜試験例9の各々で乾燥工程における加熱温度を異ならせて4V級のリチウムイオン二次電池を作製し、該作製した電池の性能を評価した。
次に、セパレータとして耐熱性セパレータ(アラミドセパレータ)を使用し、該耐熱性セパレータを介して正負極を積層させた後、該積層体を捲回することによって捲回電極体を作製し、該捲回電極体を電池ケース内に収容してセル組付け体を作製した。
次に、注液口からセル組付け体の内部に非水電解液を供給した後に、当該注液口を封止キャップで封止して電池ケースを密閉することによって評価試験用の4V級リチウムイオン二次電池を作製した。なお、非水電解液には、ECとDMCとEMCとを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に支持塩(LiPF6)を約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液を使用した。
実験Aにおいては、上記した試験例1〜試験例9に対して、過充電時の電池温度と、IV抵抗を測定した。具体的な測定条件を以下に説明する。
各々の試験例で作製した4V級のリチウムイオン二次電池に対して、20Cの定電流で5.1Vまで充電を行うことによって各電池を過充電状態とし、各々の電池の電池ケース外側の中心部の温度を測定することによって、過充電時の電池温度を測定した。測定結果を表1及び図3に示す。なお、測定結果について、表1では試験例1を100とした場合の相対評価で示している。また、図3に示す2種類のプロットのうち、菱形のプロットが過充電時の電池温度を示している。
作製後の各試験例の電池について、初期容量を測定した後、25℃の温度条件下で1Cの充電レートで定電(CC)流充電を行ってSOC20%の充電状態に調整し、10Cで10秒間の定電流放電を行い、この時の電流(I)−電圧(V)のプロット値の一次近似直線の傾きから初期電池抵抗(IV抵抗)(mΩ)を求めた。そして、試験例1のIV抵抗を100とした場合の各試験例のIV抵抗(IV抵抗比率)を算出した。結果を表1および図3に示す。なお、図3に示す2種類のプロットのうち、四角形のプロットがIV抵抗比率の測定結果を示している。
表1および図3に示すように、乾燥工程における加熱温度(乾燥温度)を上昇させるに従って、過充電時の電池温度が低下する一方で、乾燥温度を上昇させ過ぎるとIV抵抗比率が増加するという傾向を確認することができた。
そして、各々の試験例を詳細に比較すると、乾燥温度を110℃以上とした試験例3〜試験例9において電池温度が大幅に低下している一方で、乾燥温度が140℃を超えた試験例7〜試験例9では、過充電時の電池温度が試験例3〜試験例6と同程度であるにも関わらず、IV抵抗比率が大幅に増加していた。
このことから、試験例3〜試験例6のように、乾燥工程における乾燥温度を110℃〜140℃の範囲内に規定することによって、リン酸三リチウムの機能を適切に発揮させて過充電時の電池温度を適切に低下させることができるとともに、抵抗の大幅な増加による電池性能の低下を抑制できることが分かった。
次に、本発明者は、リン酸三リチウム粉末の適切な粒子径を調べるために実験Bを行った。
実験Bにおいては、以下の表2および表3に示すように、試験例10〜試験例26の各々でリン酸三リチウム粉末のD50粒子径を異ならせて4V級のリチウムイオン二次電池を作製した。
なお、試験例10〜試験例26における電池の作製条件は、上記のように各試験例でリン酸三リチウムのD50粒子径を異ならせたこと、乾燥処理の温度を115℃に設定したこと、セパレータとしてPP/PE/PPの三層構造のセパレータを用いたことの三点を除いて、上記した実験Aと同じ条件に設定した。
実験Bの評価試験では、正極合材の粘度と容量維持率と電池抵抗を測定した。
試験例10〜試験例26の各々について、正極合材層を作製するために使用したペースト状の正極合材の一部を採取し、E型粘度計(測定環境:室温、回転速度:20rpm)を用いて粘度を測定した。なお、本試験では、粘度の測定を、調製直後、3日後、1週間後、2週間後の4回実施した。各々の測定結果を表2、表3および図4〜図7に示す。なお、表2および表3における測定結果は、試験例26の測定結果を100とした場合の相対評価で示している。また、図4〜図7においては、菱形のプロットが粘度の測定結果を示している。
本試験においては、作製した試験例10〜試験例26の各々の電池について、連続入力サイクルにおける容量維持率と、ハイレートサイクルにおける容量維持率の2種類の容量維持率を測定した。
まず、25℃の温度条件下、各例の電池に対し、1Cのレートで4.1Vまで定電流(CC)充電した後に5分間休止し、1Cのレートで3.0Vまで定電流(CC)放電した後に5分間休止した。次いで、CCCV充電(4.1V、レート1C、0.1Cカット)を行い10分間休止した後、CCCV放電(3.0V、レート1C,0.1Cカット)を行う初期充放電を行った。この時の放電容量を測定し、初期容量とした。
ハイレートサイクルにおける容量維持率の測定では、先ず、上記した連続入力サイクルと同様の手順で初期充放電を行って初期容量を測定した後に、ハイレート充放電を1000サイクル行い、1000サイクル後の容量維持率(%)を測定した。
具体的には、各電池のSOCを50%に調整し、−15℃の環境下で(1)100Aで10秒間充電、(2)5秒間休止、(3)100Aで10秒間放電、(4)5秒間休止を1サイクルとするハイレート充放電を1000サイクル行い、1000サイクル後の容量維持率(%)を測定した。結果を表2、表3および図5に示す。なお、表2および表3における測定結果は初期容量を100とした場合の相対評価で示している。また、図5では四角形のプロットがハイレートサイクルにおける容量維持率の測定結果を示している。
本試験では、25℃における直流抵抗と、−30℃における反応抵抗の2種類の電池抵抗を測定した。
各試験例において作製したリチウムイオン二次電池を25℃の環境に配置し、振幅:5mV、測定周波数範囲:10000〜0.1Hzの条件で交流インピーダンスの測定を行った。そして、得られたCole−Coleプロットの円弧形状とx軸との交点に基づいて25℃における直流抵抗(mΩ)を求めた。測定結果を表2、表3および図6に示す。なお、表2および表3中の測定結果は、試験例10を100とした場合の相対評価(直流抵抗比率)で示している。また、図6では四角形のプロットが直流抵抗の測定結果を示している。
各試験例において作製したリチウムイオン二次電池を−30℃の環境に配置して、振幅:5mV、測定周波数範囲:10000〜0.001Hzの条件で交流インピーダンスの測定を行い、得られたCole−Coleプロットの円弧形状の直径に基づいて反応抵抗(mΩ)を求めた。測定結果を表2、表3および図7に示す。なお、表2および表3中の測定結果は、試験例10を100とした場合の相対評価(反応抵抗比率)で示している。また、図7では四角形のプロットが反応抵抗の測定結果を示している。
上記の試験結果より、リン酸三リチウム粉末のD50粒子径が小さくなるに従って、ペースト状の正極合材の粘度が増加しやすくなる傾向があるため、生産性向上の観点からは、D50粒子径が大きなリン酸三リチウム粉末を用いた方が好ましいことが分かった。
一方、リン酸三リチウム粉末のD50粒子径が大きくなるに従って、容量維持率の低下や電池抵抗の増加などが生じやすくなる傾向があるため、電池性能の観点からは、D50粒子径が小さなリン酸三リチウム粉末を用いた方が好ましいことが分かった。
また、図6を参照して検討した結果、調製から1週間後でも正極合材の粘度を低い状態に維持するとともに、25℃における直流抵抗をより低くするという観点から、試験例15〜試験例20のように、リン酸三リチウム粉末のD50粒子径を1.8μm〜8.3μmの範囲内に設定するとさらに好ましいことが分かった。
さらに、図7を参照して検討した結果、調製から2週間後でも正極合材の粘度を低い状態に維持するとともに、−30℃における反応抵抗をより低くするという観点から、試験例16〜試験例19のように、リン酸三リチウム粉末のD50粒子径を2.1μm〜5.6μmの範囲内に設定するとさらに好ましいことが分かった。
12 正極集電体
14 正極合材層
16 正極合材層非形成部
20 負極
22 負極集電体
24 負極合材層
26 負極合材層非形成部
40 セパレータ
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
56 注液口
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 正極集電体上に正極活物質を含む正極合材層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質を含む負極合材層が形成された負極と、非水電解液と、該正負極および非水電解液を収容する電池ケースとを備える非水電解液二次電池を製造する方法であって、
前記正極活物質とともにリン酸三リチウムの粉末および溶媒を含む正極合材を前記正極集電体上に付与することによって前記正極合材層を形成すること、
前記正極および負極を電池ケースに収容してセル組付け体を構築した後、前記非水電解液を該電池ケースに供給する前の段階において、該構築したセル組付け体を110℃以上140℃以下の温度域まで加熱して乾燥処理を行うこと、および、
前記リン酸三リチウムの粉末のD 50 粒子径が2.1μm以上であること、
を特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
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