以下、図面に沿って、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る乗用型のマルチ田植機1は、左右一対の前輪2と左右一対の車輪としての後輪3とによって支持される走行機体4を有し、走行機体4の後部には、昇降リンク機構5を介して植付作業機6が昇降自在に支持されている。昇降リンク機構5は、走行機体4と植付作業機6との間に介設されたリフトシリンダ7を有し、リフトシリンダ7の伸縮動作に応じて植付作業機6が昇降される。
植付作業機6は、昇降リンク機構5によって支持される作業機フレーム8、マット苗が載置される苗載台9、芯に巻きつけられているロール状のシートSを横架収納するシート収納部10、苗を圃場に移植する植付機構11、圃場面を滑走する円筒状のローラフロート12並びに紙押さえロール13及び切断手段としてのシート切断機構15の切断部47等を備えている。植付機構11は、走行機体4の走行に伴い連続的に繰出されて圃場面を被覆するために繰出された図5に示すシートSの上からマット苗より掻取った苗を圃場に移植する。圃場に繰出されたシートSは、シート切断機構15によりシート収納部10に収納されているロール状のシートSと適宜分断される。ローラフロート12は、左右に延びる円筒状に形成されて前後に並列して設けられ、紙押さえロール13は、左右に延びる円筒状に形成されてローラフロート12より後方に配置される。ローラフロート12及び紙押さえロール13は、繰出されたシートSを圃場面に押圧しながら圃場面を滑走し、紙押さえロール13は、ローラフロート12より小さな接地面積となるように構成されている。
上記走行機体4の中央部には、オペレータが搭乗して走行機体4や植付作業機6を操作する運転部17が配置されている。該運転部17には運転座席19及びステアリングハンドル20等が配置されている。なお、本実施の形態では、水平面に載置されたマルチ田植機1の運転座席19に着座したオペレータが向いている正面方向を前方とし、これを基準に前後左右方向を定義する。走行機体4の前部には図示しないエンジンやトランスミッションが搭載されている。エンジンが出力する動力は、トランスミッションで変速され、前輪2及び後輪3に伝達されると共に、図2に示す油圧コントロール機構25を介して植付作業機6に伝達される。トランスミッションの内部には、図示しない植付クラッチが設けられており、植付クラッチの断接に伴い植付作業機6への動力伝達が断接される。
ついで、油圧コントロール機構25について、図2に沿って説明する。油圧コントロール機構25は、図8に示す作業機操作具としての作業機操作レバー21の操作により駆動する作業機操作カムモータ30と、作業機操作カムモータ30の駆動に基づいて回動する作業機操作カム31と、揺動して植付クラッチを断接するクラッチアーム35と、作業機操作カム31の回動に伴い開閉する油圧コントロールバルブ29と、作業機操作カム31の回転軸と同軸上に固定されて作業機操作カム31の回動位置を検出する作業機操作カムポテンショ32と、を備える。
作業機操作カム31は、上昇位置、固定位置、下降位置及び植付位置の各回動位置を有して左右に延びる軸を中心に回動可能に軸支されており、それぞれの回動位置は作業機操作カムポテンショ32により検出されて、検出結果は電気信号として制御部40へ送信される。作業機操作カム31の各回動位置に従い油圧コントロールバルブ29が開閉されると、トランスミッションに設けられた油圧ポンプ(図示せず)の油圧を開放又は遮断されてリフトシリンダ7が伸縮し、植付作業機6が昇降する。
作業機操作カム31が上昇位置に位置しているときは、植付作業機6は上限高さまで上昇動作する上昇状態となり、作業機操作カム31が固定位置に位置しているときは、植付作業機6は昇降動作が停止して任意の高さが維持される固定状態となり、作業機操作カム31が下降位置に位置しているときは、植付作業機6はローラフロート12が接地するまで下降動作する下降状態となる。また、ローラフロート12が接地している状態においては、植付作業機6は、圃場面への追従に伴うローラフロート12の姿勢及び高さの変化に基づいて油圧コントロールバルブ29が開閉されて自動的に昇降され、植付深さが一定に保たれる自動昇降状態となる。また、植付作業機6の昇降高さは、昇降リンク機構5の角度に基づいて図9に示すリフト角ポテンショ27により検出されて、検出結果は電気信号として制御部40へ送信される。
クラッチアーム35は左右に延びる回動ピン33を中心に揺動可能に軸支されており、クラッチアーム35の上端は作業機操作カム31の外周に追従し、作業機操作カム31の回動に伴ってクラッチアーム35が前後方向に揺動する。作業機操作カム31が植付位置以外に位置しているときは植付クラッチは切断されて植付機構11は作動せず、植付位置に位置しているときは植付クラッチが接続されて植付作業機6は植付状態となる。植付作業機6は植付状態であるときは、走行機体4の走行に伴って植付機構11が作動し、圃場に苗が移植される。
図3に示すように、エンジンで発生した動力は、前後方向に延設されている入力軸36を介して、リヤアクスルケース37を介して左右の後輪3に伝達される。リヤアクスルケース37の内部には、入力軸36と一体的に回転する検出ギヤ41と、入力軸36の回転を制動する走行ブレーキ43と、が設けられている。検出ギヤ41と検出ギヤ41の回転量を検出する走行距離センサー42とによって、走行距離測定手段としての走行距離測定機構39が構成され、走行距離センサー42による検出結果は電気信号として制御部40へ送信される。制御部40は走行距離センサー42による検出結果に基づいて走行機体4の走行距離を算出する。
図4に示すように、シート収納部10は、左右端が開閉可能でロール状のシートSを横架収納する紙ロールケース45と、作業機フレーム8に固定される検知機構支持片50と、シート収納部10に所定長さ以上のシートSが収納されてかつシート収納部10からシートSが繰出されているか否かを検出する紙切れ検知機構63と、を備える。紙切れ検知機構63は、板状に形成されて、図5に示すように紙ロールケース45から繰出されているシートSに接触して揺動するロール検出片64と、ロール検出片64の揺動を検出するロール検出スイッチ65と、を備える。紙切れ検知機構63は、調整ボルト55によって検知機構支持片50に固定されており、調整ボルト55を締緩することにより、検知機構支持片50に設けられた図示しない長穴に沿って紙ロールケース45に対する紙切れ検知機構63の前後位置を変更できる。
ロール検出片64は、紙ロールケース45に収納されたロール状のシートSの中心軸より後方に配置された揺動軸51を中心として揺動可能に支持され、ロール検出片64の下端が、シートSに接近する方向である前方へ向けて検出ばね52により付勢されている。紙ロールケース45に収納されているシートSが紙ロールケース45から繰出されてロール検出片64と接触すると、ロール検出片64の下端が検出ばね52の付勢力に抗して後方へ傾動する。ロール検出スイッチ65は、板状に形成されてロール検出片64に接触するスイッチレバー53を有しており、ロール検出片64の傾動に伴ってスイッチレバー53の姿勢が変化すると、ロール検出スイッチ65のオン状態とオフ状態とが切り替わる。ロール検出スイッチ65は、シート収納部10から所定長さ以上のシートSが繰出されている状態であるときにオフ状態となり、所定長さ以上のシートSが繰出されていない状態であるときにオン状態となる。ロール検出スイッチ65がオン状態であるかオフ状態であるかの情報は、電気信号として制御部40へ送信される。
紙ロールケース45に収納されたロール状のシートSの中心軸とロール検出片64の下端との相対位置が適切でないときには、紙ロールケース45から所定長さ以上のシートSが繰出されている状態であるにもかかわらずロール検出スイッチ65がオンとなる場合や、ロール検出片64が抵抗となることにより走行機体4の走行に伴ってシートSが適切に繰出されない場合等がある。この場合には、調整ボルト55の締緩によりロール検出片64の下端と調整ガイド56との隙間である寸法Aが適切な寸法となるようにロール検出スイッチ65の位置を調整することにより、上記問題を解決することができる。
図5(a)及び(b)に示すように、シート収納部10は、紙ロールケース45近傍の基端部を中心とて揺動可能に軸支されている紙ホルダ57と、揺動可能に軸支されて紙ホルダ57を開閉操作する紙ホルダ操作レバー59と、シート収納部10の左右両端に回転可能に軸支される紙繰出ノブ61と、を備える。紙ホルダ57は、紙ホルダ57が接地していないときに紙ロールケース45から繰出されたシートSを下方から受け止めて保持する。シート収納部10は、オペレータが紙繰出ノブ61を手動で回転することにより、紙ロールケース45に収納されているロール状のシートSが回転して、シートSがシート収納部10の外へ手動で繰出し可能に構成されている。
紙ホルダ57は、図5(b)に示すように、基端部から略後方へ延出して植付作業を行うための閉鎖状態と、図5(a)に示すように、基端部から下後方へ延出して紙ロールケース45に収納されているシートSを手動で繰出し易い開放状態と、を有する。閉鎖状態において、紙ホルダ操作レバー59の先端を左側面視で時計回りに操作すると、紙ホルダ57の後端が下降して開放状態となる。紙ホルダ操作レバー59の先端を左側面視で反時計回りに操作すると、紙ホルダ57の後端が上昇して植付作業を行うための閉鎖状態となる。上記閉鎖状態でかつ植付作業機6が着地して自動昇降状態であるとき、紙押さえロール13によりシートSが圃場面に密着してシートSと圃場面との間に摩擦抵抗が発生し、走行機体4の前進走行に伴いシートSが繰出される。
図6に示すように、走行機体4の左右両側には、紙ロールケース45に収納されているシートSを使い切った際に使用するためのロール状の予備のシートTを支持可能な補助ロール台62が配置されている。補助ロール台62は、予備のシートTの中心軸が略前後方向となるように予備のシートTを支持可能で、かつ補助ロール台62に支持された予備のシートTの後端付近に設けられた上下方向の軸を中心に回動可能に構成されている。植付作業機6が上端位置にある場合において、補助ロール台62を回動すると、補助ロール台62に支持された予備のシートTの回動軸側の端部と紙ロールケース45の端部とが近接し、この状態で紙ロールケース45の上記端部を開放して予備のシートTを紙ロールケース45内に押し込むと、予備のシートTを紙ロールケース45内に収納することができる。
図7は、シート切断機構15を示す左側面図である。シート切断機構15は、走行機体4に設けられてオペレータが切断操作を行う切断操作部46と、植付作業機6に設けられてオペレータによる切断操作によりシートSを切断する切断部47と、切断操作部46と切断部47とを接続する操作ワイヤ49と、を有する。切断操作部46は運転座席19の後方に設けられており、先端にオペレータが把持するグリップ46bを有して、オペレータの操作により左右に伸びるレバー軸46cを中心として揺動可能に軸支されるカッタレバー46aと、レバー軸46cと平行な軸を中心としてカッタレバー46aに回動可能に軸支されるレバー固定フック46dと、レバー固定フック46dが係合してカッタレバー46aの揺動を規制するフック受け46eと、カッタレバー46aの揺動を検知する切断検知手段としてのカッター操作検出スイッチ46fと、グリップ46bとレバー軸46cとの間に設けられて、レバー軸46cと平行な軸を中心として操作ワイヤ49の始端を回動可能に支持する始端支持部46gと、を有する。切断部47は、後端にシートカッタ47cを有し、左右に延びるカッタ軸47dを中心として上下に揺動するカッタアーム47bと、カッタ軸47dよりカッタアーム47bの前方に設けられて、カッタ軸47dと平行な軸を中心として操作ワイヤ49の終端を回動可能に支持する終端支持部47aと、弾性力によりシートカッタ47cを上方に付勢するカッタばね47eと、を有する。
カッタレバー46aは略垂直に起立する非作動位置と、非作動位置から前方へ向けて略水平になるまで傾倒した作動位置と、の間で揺動可能に軸支されており、非作動位置においては、レバー固定フック46dがフック受け46eに係合することでカッタレバー46aは図7における反時計回り方向である方向Bへの傾動が規制される。オペレータが、レバー固定フック46dとフック受け46eとの係合を解除してカッタレバー46aを方向Bへ傾動させて作動位置にすると、操作ワイヤ49がカッタレバー46aにより牽引され、操作ワイヤ49がカッタアーム47bを牽引して、カッタアーム47bの後端が図7における時計回り方向である方向Cに傾動し、シートカッタ47cの先端が圃場面下まで降下することで、シート収納部10に収納されているロール状のシートSと圃場に繰出されたシートSとが分断される。
接点スイッチを有するカッター操作検出スイッチ46fはオン状態とオフ状態とを切替可能に設けられており、シートSが分断される位置までカッタレバー46aが傾動すると、カッター操作検出スイッチ46fはオン状態となる。オペレータがカッタレバー46aの操作をやめると、カッタばね47eがシートカッタ47cを上方へ持ち上げる方向へカッタアーム47bを傾動させ、操作ワイヤ49がカッタアーム47bの傾動により牽引され、操作ワイヤ49がカッタレバー46aを牽引して、カッタレバー46aが作動位置から非作動位置へ復帰し、カッター操作検出スイッチ46fがオフ状態となる。カッター操作検出スイッチ46fがオン状態であるかオフ状態であるかの情報は、電気信号として制御部40へ送信される。
図8に示すように、運転部17の前方には、スタータスイッチ72、作業機操作レバー21、作業機準備スイッチ26及び表示パネル22が配置されている。スタータスイッチ72は、オペレータによりオン状態とオフ状態とに切替可能に設けられているマルチ田植機1のメインスイッチであり、スタータスイッチ72がオン状態になると、制御部40がマルチ田植機1の制御を行う図示しないメインルーチンが開始され、各装置との入出力が可能な状態となる。スタータスイッチ72がオン状態であるかオフ状態であるかの情報は、電気信号として制御部40へ送信される。
作業機操作レバー21は、上昇位置と下降位置との間で上下方向に揺動可能に軸支されており、作業機操作レバー21に設けられた図示しないレバーばねにより上昇位置と下降位置の中間に設けられた中立位置に付勢されている。オペレータが作業機操作レバー21を上方に持ち上げる上昇操作をすると作業機操作レバー21が上昇位置へ切り替えられ、オペレータが作業機操作レバー21を下方に押し下げる下降操作をすると作業機操作レバー21が下降位置に切り替えられて、オペレータが作業機操作レバー21の操作をやめると、作業機操作レバー21はレバーばねにより中立位置へ復帰する。
作業機操作レバー21の揺動操作は、図9に示す作業機操作スイッチ上66及び作業機操作スイッチ下67と連動している。作業機操作スイッチ上66及び作業機操作スイッチ下67はそれぞれオン状態とオフ状態とに切替可能に設けられており、作業機操作レバー21が上昇位置に位置するときは作業機操作スイッチ上66がオン状態かつ作業機操作スイッチ下67がオフ状態となり、作業機操作レバー21が下降位置に位置するときは作業機操作スイッチ上66がオフ状態かつ作業機操作スイッチ下67がオン状態となり、作業機操作レバー21が中立位置に位置するときは作業機操作スイッチ上66及び作業機操作スイッチ下67はいずれもオフ状態となる。作業機操作スイッチ上66及び作業機操作スイッチ下67がオン状態であるかオフ状態であるかの情報は、電気信号として制御部40へ送信される。
作業機準備スイッチ26は、オペレータによりオン状態とオフ状態とに切替可能に設けられており、オフ状態であるときには植付作業機6は作動しないように構成されている。作業機準備スイッチ26がオン状態であるかオフ状態であるかの情報は、電気信号として制御部40へ送信される。表示パネル22は、燃料の残量を表示する図示しない燃料表示ランプ等と共に、報知手段としての警報ランプ70を有する。警報ランプ70は、走行機体4に設けられた図9に示す報知手段としての警報ブザー71と共に、制御部40から出力される信号を受けて作動する。
図9は、本実施の形態における制御ブロック図を示しており、走行機体4は、各入力に基づいてメインルーチンを実行する制御部40を備えている。制御部40は、CPU40a、ROM40b、RAM40c、I/F40d等を含むマイクロコンピュータを備えている。制御部40の入力側には、作業機準備スイッチ26、作業機操作スイッチ上66、作業機操作スイッチ下67、作業機操作カムポテンショ32、リフト角ポテンショ27、走行距離センサー42、ロール検出スイッチ65及びカッター操作検出スイッチ46f等が接続されている。制御部40の出力側には、作業機操作カムモータ30、警報ランプ70及び警報ブザー71等が接続されている。制御部40は、作業機準備スイッチ26、作業機操作スイッチ上66並びに作業機操作スイッチ下67、作業機操作カムポテンショ32、リフト角ポテンショ27、走行距離センサー42、ロール検出スイッチ65及びカッター操作検出スイッチ46fから電気信号の入力を受けて、作業機操作カムモータ30、警報ランプ70及び警報ブザー71を作動させる。
ついで、オペレータが圃場に繰出されたシートSの分断前に誤って植付作業機6を上昇動作させることを防止するマルチ切断要求制御S1及び作業機操作制御S2について説明を行う。マルチ切断要求制御S1及び作業機操作制御S2は、制御部40が実行するサブルーチンであり、マルチ切断要求制御S1、作業機操作制御S2の順番で順次繰返される。
図10は、マルチ切断要求制御S1のフロー図を示す。マルチ切断要求制御S1は、制御部40が警報ランプ70及び警報ブザー71を作動させる条件の一つとして、シートSを圃場に繰出しながら所定距離を走行した状態か否かを判断することを目的とした制御である。オペレータは、まず苗載台9にマット苗が載置されていること及びシート収納部10に植付作業を行うことができる十分な長さのシートSが収納されていることを確認し、植付作業機6を上昇させた状態でシートSの先端が図5(b)のようにローラフロート12より後方に至るまで手動で繰出す。ついで、オペレータは、スタータスイッチ72をオン状態に切替えて制御部40によるメインルーチンを開始し、作業機準備スイッチ26をオン状態に切替え、走行機体4を圃場内へ走行させる。
マルチ切断要求制御S1が開始されると、制御部40は、作業機準備スイッチ26がオン状態であるか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12にて、作業機準備スイッチ26がオフ状態であるとき(ステップS12のOFF)、制御部40は処理をメインルーチンに戻し、オン状態であるとき(ステップS12のON)、制御部40はロール検出スイッチ65がオン状態であるか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13にて、ロール検出スイッチ65がオン状態であるとき(ステップS13のON)、制御部40は処理をメインルーチンに戻す。オペレータは、走行機体4が植付作業を開始する位置に達したとき、作業機操作レバー21を下降操作して植付作業機6が自動昇降状態となるまで下降動作させる。
ステップS13にて、ロール検出スイッチ65がオフ状態であるとき(ステップS13のOFF)、即ちシート収納部10に所定長さ以上のシートSが収納されているとき、制御部40はオペレータによるシートSの切断操作があったか否かを判断する(ステップS14)。制御部40は、ステップS14にて、シートSの切断操作がなかったとき(ステップS14のOFF)、即ちカッター操作検出スイッチ46fがオフ状態のままであったとき、植付作業機6が上昇状態、固定状態及び自動昇降状態のいずれかであるときは処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が植付状態又は下降状態であるときは、カウントフラグがオフ状態であるか否かを判断する(ステップS18)。ステップS18にて、カウントフラグがオフ状態であるとき(ステップS18のYES)、制御部40は、カウントフラグをオン状態とし、警報ランプ及び警報ブザーを作動させるか否かを判断するための走行距離の積算を開始する(ステップS19)。オペレータは、上記走行距離の積算が開始されている状態で走行機体4を直進走行させて、植付作業を開始し、走行機体4が圃場端へ達したときにカッタレバー46aを操作してシート収納部10に収納されているロール状のシートSと圃場に繰出されたシートSとを分断する。
ステップS18にて、既にカウントフラグがオン状態であるとき(ステップS18のNO)、制御部40は、上記走行距離が上記所定距離以上であるか否かを判断する(ステップS20)。ステップS20にて、上記走行距離が上記所定距離に達していないとき(ステップS20のNO)、制御部40は処理をメインルーチンに戻し、上記走行距離が上記所定距離に達しているとき(ステップS20のYES)、制御部40はマルチ敷設フラグがオフ状態であるか否かを判断する(ステップS21)。ステップS21にて、マルチ敷設フラグがオン状態であるとき(ステップS21のNO)、制御部40は処理をメインルーチンに戻し、マルチ敷設フラグがオフ状態であるとき(ステップS21のYES)、制御部40はマルチ敷設フラグをオン状態とし、積算された上記走行距離の値を0に戻すと共にカウントフラグをオフ状態とする(ステップS22)。ステップS14にて、カッター操作検出スイッチ46fがオン状態であるとき(ステップS14のON)、制御部40は作業機操作制御S2で詳述するマルチ切断要求を出しているか否かを判断する(ステップS23)。マルチ切断要求は、制御部40から出されているときに警報ランプ70を点灯させると共に警報ブザー71から警報音を発する処理を行う要求である。ステップS23にて、制御部40がマルチ切断要求を出していないとき(ステップS23のNO)、制御部40は処理をメインルーチンに戻し、マルチ切断要求を出しているとき(ステップS23のYES)、制御部40はマルチ切断要求を停止してマルチ敷設フラグをオフ状態とし、処理をメインルーチンに戻す。
図11は、作業機操作制御S2のフロー図を示す。作業機操作制御S2は、各条件に従って警報ランプ70及び警報ブザー71の作動や植付作業機6を昇降する制御である。作業機操作制御S2が開始されると、制御部40は、作業機操作スイッチ下67の操作があったか否かを判断する(ステップS31)。ステップS31にて、作業機操作スイッチ下67の操作があったとき(ステップS31のあり)、制御部40は、植付作業機6が固定状態であるとき(ステップS35及びステップS38の固定)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を下降位置とし、植付作業機6を下降状態として(ステップS36及びステップS39)処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が上昇状態であるとき(ステップS33及びステップS37の上昇)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を固定位置とし、植付作業機6を固定状態として(ステップS40)処理をメインルーチンに戻す。
また、ステップS31にて、作業機操作スイッチ下67の操作があったとき(ステップS31のあり)、制御部40は、作業機準備スイッチ26がオン状態かつ植付作業機6が自動昇降状態であるとき(ステップS41のYES)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を植付位置とし、植付作業機6を植付状態として(ステップS43)処理をメインルーチンに戻し、作業機準備スイッチ26がオン状態かつ植付作業機6が下降状態であるとき(ステップS41のNO)は作業機操作カム31の位置を維持して、植付クラッチ入待ち状態となり(ステップS42)、処理をメインルーチンに戻す。また、ステップS31にて、作業機操作スイッチ下67の操作があったとき(ステップS31のあり)、植付作業機6が植付状態、又は作業機準備スイッチ26がオフ状態かつ植付作業機6が下降状態、自動昇降状態及び植付状態のいずれかであるとき(ステップS35の植付及びステップS38の固定以外)は、処理をメインルーチンに戻す。
オペレータは、圃場端におけるシートSの分断後、作業機操作レバー21を上昇操作して植付作業機6を上昇動作させる。ステップS31にて、作業機操作スイッチ下67の操作がなかったとき(ステップS31のなし)、制御部40は、作業機操作スイッチ上66の操作があったか否かを判断し(ステップS44)、作業機操作スイッチ上66の操作がなかったとき(ステップS44のなし)、制御部40が植付クラッチ入待ち状態であるか否かを判断する(ステップS45)。ステップS45にて、制御部40が植付クラッチ入待ち状態でないとき(ステップS45のNO)又は植付クラッチ入待ち状態だが植付作業機6が下降状態であるとき(ステップS46のNO)は処理をメインルーチンに戻し、制御部40が植付クラッチ入待ち状態でかつ植付作業機6が自動昇降状態であるとき(ステップS46のYES)は、制御部40は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を植付位置とし、植付作業機6を植付状態として制御部40の植付クラッチ入待ち状態を解除し(ステップS47)、処理をメインルーチンに戻す。
ステップS44にて作業機操作スイッチ上66の操作があったとき(ステップS44のあり)、制御部40は、植付作業機6が上昇状態であるとき(ステップS48の上昇)は処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が固定状態であるとき(ステップS50の固定)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を上昇位置とし、植付作業機6を上昇状態として(ステップS52)処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が下降状態であるとき(ステップS53のNO)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を固定位置とし、植付作業機6を固定状態として(ステップS54)処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が植付状態であるとき(ステップS50の植付)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を下降位置とし、植付作業機6を自動昇降状態として(ステップS51)処理をメインルーチンに戻す。
ステップS44にて作業機操作スイッチ上66の操作があったとき(ステップS44のあり)、制御部40は、植付作業機6が自動昇降状態であるとき(ステップS53のYES)は、マルチ敷設フラグがオン状態か否かを判断する(ステップS55)。ステップS55にてマルチ敷設フラグがオン状態であるとき(ステップS55のYES)、即ちオペレータが、シートSの切断前に作業機操作レバー21を上昇操作したとき、制御部40はマルチ切断要求を出して警報ランプ70及び警報ブザー71を作動させ(ステップS56)、オペレータにシートSの分断を促し、処理をメインルーチンに戻す。ステップS55にて、マルチ敷設フラグがオフ状態であるとき(ステップS55のNO)、制御部40は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を上昇位置とし、植付作業機6を上昇状態として(ステップS52)処理をメインルーチンに戻す。オペレータは、植付作業機6を上昇動作させて圃場端で走行機体4を旋回させ、直前の植付終了位置に植付機構11が達すると、植付作業機6を下降動作させて植付作業を再開する。
以上の構成により、本実施の形態によるマルチ田植機1は、シートSを圃場に繰出しながら所定距離以上を走行すると植付作業機6の上昇動作を規制し、シートSの分断により規制を解除するように構成されているので、オペレータがシートSの分断前に誤って植付作業機6を上昇動作させることを防止することができると共に、規制の解除には別途の操作が不要であり、オペレータの作業負担を軽減することができる。
また、制御部40は、連続してロール検出スイッチ65がオフ状態及び植付作業機6が自動昇降状態であるときの走行機体4の走行距離が所定距離以上となったときに、植付作業機6の上昇動作を規制するので、シートSを圃場に繰出しながら走行機体4が走行した距離を正確に測定でき、植付作業機6を上昇動作が行われても不都合が無いときには植付作業機6の上昇動作が規制されることを防ぐことができる。
制御部40は、植付作業機6の上昇動作が規制されている状態で作業機操作レバー21の上昇操作があったとき、警報ランプ及び警報ブザーを作動するので、作業機操作レバー21の操作が規制されていることをオペレータに知らせ、オペレータがシートSを分断するように促すことができる。
制御部40は、植付作業機6の上昇動作が規制されている状態では、作業機操作レバー21の上昇操作を無視して、シートSを分断後に再び作業機操作レバー21の上昇操作があったときに植付作業機6を上昇動作するので、オペレータがシートSの分断前に誤って作業機操作レバー21を上昇操作した場合でも規制の解除には別途の操作が不要であり、オペレータの操作負担を軽減することができる。
ついで、図12に沿って、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る乗用型のマルチ田植機101は、第1の実施の形態に対して作業機操作制御S102が異なるのみで、その他は同一であるため、第1の実施の形態と同様な構成及び制御については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明を省略する。
作業機操作制御S102が開始されると、制御部40は、作業機操作スイッチ下67の操作があったか否かを判断する(ステップS31)。ステップS31にて、作業機操作スイッチ下67の操作がなかったとき(ステップS31のなし)、制御部40は、作業機操作スイッチ上66の操作があったか否かを判断する(ステップS144)。ステップS144にて、作業機操作スイッチ上66の操作があったとき(ステップS144のあり)、制御部40は、植付作業機6が上昇状態であるとき(ステップS149の上昇)は処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が固定状態であるとき(ステップS151の固定)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を上昇位置とし、植付作業機6を上昇状態として(ステップS153)処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が下降状態であるとき(ステップS154のNO)は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を固定位置とし、植付作業機6を固定状態として(ステップS155)処理をメインルーチンに戻し、植付作業機6が植付状態(ステップS151の植付)であるときは作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を下降位置とし、植付作業機6を自動昇降状態として(ステップS152)処理をメインルーチンに戻す。
制御部40は、ステップS144にて、作業機操作スイッチ上66の操作があったとき、植付作業機6が自動昇降状態であるとき(ステップS154のYES)はマルチ敷設フラグがオン状態であるか否かを判断する(ステップS156)。ステップS156にて、マルチ敷設フラグがオフ状態であるとき(ステップS156のNO)、制御部40は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を上昇位置とし、植付作業機6を上昇状態として(ステップS153)処理をメインルーチンに戻す。ステップS156にて、マルチ敷設フラグがオン状態であるとき(ステップS156のYES)、即ちオペレータが、シートSの切断前に作業機操作レバー21を上昇操作したとき、制御部40はマルチ切断要求を出して警報ランプ70及び警報ブザー71を作動させ、オペレータにシートSの切断を促すと共に制御部40を上昇待ち状態として、植付作業機6の上昇動作を一時的に休止し(ステップS157)、処理をメインルーチンに戻す。
制御部40は、ステップS144にて作業機操作スイッチ上66の操作がなかったとき、制御部40が上昇待ち状態であるか否かを判断し(ステップS145)、上昇待ち状態でないとき(ステップS145のNO)、制御部40が植付クラッチ入待ち状態であるか否かを判断する(ステップS146)。ステップS146にて、制御部40が植付クラッチ入待ち状態でないとき(ステップS146のNO)又は植付クラッチ入待ち状態でかつ植付作業機6が下降状態であるとき(ステップS147のNO)は処理をメインルーチンに戻し、制御部40が植付クラッチ入待ち状態でかつ植付作業機6が自動昇降状態であるとき(ステップS147のYES)は、制御部40は作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を植付位置とし、植付作業機6を植付状態として制御部40の植付クラッチ入待ち状態を解除し(ステップS148)、処理をメインルーチンに戻す。
制御部40は、ステップS145にて、制御部40が上昇待ち状態であるとき(ステップS145のYES)、マルチ敷設フラグがオン状態であるとき(ステップS158のNO)は処理をメインルーチンに戻し、マルチ敷設フラグがオフ状態であるとき(ステップS158のYES)は、作業機操作カムモータ30を駆動させて作業機操作カム31を上昇位置とし、植付作業機6を上昇状態として上昇待ち状態を解除し(ステップS159)処理をメインルーチンに戻す。
以上の構成により、本実施の形態によると、制御部40は、植付作業機6の上昇動作が規制されている状態で作業機操作レバー21の上昇操作があったときには植付作業機6の上昇動作を一時的に休止し、シートSの分断があったときに植付作業機6の上昇動作を開始するので、オペレータがシートSの分断前に誤って作業機操作レバー21を上昇操作した場合でも規制の解除には別途の操作が不要であり、オペレータの操作負担を軽減することができる。
なお、走行機体4の走行距離の測定は、走行機体4が走行中は常時行うこととし、総走行距離のうちからシートSを圃場に繰出しながら走行しているときの走行距離を抽出して、植付作業機6の上昇を規制してもよい。なお、走行機体4の走行距離は入力軸36の回転量を測定した結果に基づいて算出することとしたが、後輪3の回転量を直接測定してもよいし、入力軸36と後輪3の回転量を共に測定してもよい。なお、前輪2又は後輪3はクローラ式の走行装置でもよく、走行距離の測定はクローラの動輪又は転輪の回転量を直接的又は間接的に測定してもよい。なお、警報ランプ70による警報は、代わりに液晶表示機等で行ってもよい。