走行状態が「植付形態」になっているときは、走行伝動系と植付伝動系への回転動力は連動するので、圃場端から植付を開始するために機体を後進させ圃場端に苗植付装置を降ろして植付を開始しようとする際に、連動のタイミングや圃場の作業条件によっては最初の一株分の苗の植付けができない場合がある。
この問題を解消するためには、その部分を手作業で作業者が苗を植える補植を行うか、または副変速レバーを、走行伝動系と植付伝動系とが連動しない「中立形態」位置にして一株分を植付けた後、すぐさま副変速レバーを「植付形態」位置に操作するなど、煩雑な操作を行う必要がある。そしてこの場合、副変速操作レバーを「中立形態」から「植付形態」に操作するために、植付操作レバーを切り操作するか、又は走行操作レバーを中立に位置させることで苗の植付を一時止める必要がある。
手作業で苗を植える場合、作業者の費やす時間と労力が増大するという問題がある。また、煩雑な操作を行う場合は、操作を誤ったり、操作のタイミングが合わなかったりすると、苗の植付精度が低下するという問題がある。
自動アクセル機構は、走行操作レバーの操作量に連動してエンジンの回転数を増減させるものであり、一般的な圃場の状態を基に適切なエンジン回転数となるように構成されている。そのため、圃場の粘性が強いとき等には必要なエンジン回転数まで回転が上がらず、十分なトルクが得られないことがある。
なんら追加的な操作を行わない場合、走行操作レバーの操作量に合致する走行速度が出せず、作業能率が低下する問題がある。また、追加的に作業者の足元にあるアクセルペダルでエンジン回転数を上げることも可能であるが、この場合作業者は走行操作レバーやハンドルを操作する手だけでなく、アクセルペダルを操作する足にも注意を払わねばならず、操作性が悪くなる問題がある。
更に、圃場端での旋回時等、デフロック機構を使う必要があるときは、デフロック機構のペダルの操作を同時に踏む必要があり、作業者は座席を立って両足で二つのペダルを踏まねばならないことがあり、この点でも更に操作性が悪くなる。
よって、これらの問題を解消する伝動系を備えた苗移植機を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
請求項1に係る発明は、走行車体(2)に走行部を備え、前記走行車体(2)の後部に苗植付装置(4)を備え、前記走行部及び苗植付装置(4)へ走行操作レバー(14)の操作に応じて出力切替アクチュエータ(103)により伝動出力を調節する無段変速装置(23)を備え、前記苗植付装置(4)の駆動を植付アクチュエータ(104)によって入切する植付クラッチ機構(112,115)を設け、前記無段変速装置(23)から前記走行部及び苗植付装置(4)へ伝動する伝動形態を切替える副変速操作部材(16)を設け、この副変速操作部材(16)は、走行動力を伝達せずに前記走行車体(2)が前後に駆動されない「中立形態」位置と、前記走行車体(2)が圃場を走行する「植付形態」位置とが前後に並ぶとともに、前記「中立形態」位置から横溝による左右方向操作を圃場端植えスイッチ(101)によって検知可能に構成し、この圃場端植えスイッチ(101)の検知により、前記植付クラッチ機構(112,115)を接続するとともに、前記走行部を停止状態のままで前記苗植付装置(4)を駆動させる第一規定値まで前記無段変速装置(23)からの出力を増大させる制御装置(100)を備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記苗植付装置(4)には、一回転で一株分の苗を植付ける植付回転軸を備え、前記副変速操作部材(16)の操作を前記圃場端植えスイッチ(101)が検出してから前記植付回転軸が一回転する所定の時間の経過時に、前記植付クラッチ機構(112,115)を切断し、その後、前記無段変速装置(23)の出力を停止させる構成としたことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記苗植付装置(4)には、一回転で一株分の苗を植付ける植付回転軸と、この植付回転軸の回転を検出する回転検知部材(106)とを備え、前記副変速操作部材(16)の操作を前記圃場端植えスイッチ(101)が検知してから前記回転センサにより前記植付回転軸の一回転を検出すると、前記植付クラッチ機構(112,115)を切断するとともに、前記変速装置(23)の出力を停止させる構成としたことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに係る発明において、前記制御装置(100)は、前記圃場端植えスイッチ(101)が、前記検知から所定の第一規定時間を連続して入状態であると、前記出力切替アクチュエータ(103)を作動させて無段変速装置(23)からの出力を前記第一規定値より大きい第二規定値まで増大させ、この後更に所定の第二規定時間連続して入状態であると、前記出力切替アクチュエータ(103)を作動させて無段変速装置(23)からの出力を前記第二規定値より大きい第三規定値まで増大させる構成としたことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに係る発明において、前記副変速操作部材(16)を前記「中立形態」位置に戻す付勢部材(105)を前記横溝内に設けたことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれかに係る発明において、前記走行操作レバー(14)の操作に連動する自動アクセル部材(128)を動作させて該エンジン(20)の回転数を増減させる自動アクセル機構(121)を備え、前記走行操作レバー(14)の上端部のレバーグリップ(122)にエンジン回転数を操作するスロットルレバー(123)を設け、該スロットルレバー(123)と前記自動アクセル部材(128)とを連動させる連繋部材(124、130、131)を設けたことを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれかに係る発明において、前記エンジン(20)を停止させるエンジン停止部材(107)を設け、該エンジン停止部材(107)を操作すると、前記エンジン(20)が停止し、前記無段変速装置(23)を出力停止状態とすると共に、前記エンジン停止部材(107)の操作時の前記走行操作レバー(14)の操作位置を記憶した後、前記走行操作レバー(14)を「中立」位置に移動させると共に、再度エンジン(20)を始動させると、前記出力切替アクチュエータ(103)が作動し、前記無段変速装置(23)からの出力を前記操作位置に対応する出力まで段階的に増大させることを特徴とする。
上記請求項1記載の発明によれば、「中立形態」位置と「植付形態」位置とを副変速操作部材(16)の前後方向操作によって切替える一方で、副変速操作部材(16)を「中立形態」位置から横溝に沿って左右方向に操作して圃場端植えスイッチ(101)を入りにすると、植付クラッチ機構(112,115)が接続されるとともに、無段変速装置(23)からの出力を所定の値まで増大させる構成としたことにより、任意のタイミングで機体を移動させることなく苗植付装置(4)を作動させることができるので、手作業等の労力や煩雑な操作を行うことなく圃場端に適切に苗を植付けることができるます。これにより圃場の有効な活用が可能となる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、前記圃場端植えスイッチ(101)が検知状態になってから所定時間、すなわち、一株分の苗植付けに要する時間が経過すると、前記植付クラッチ機構(112,115)を切断し、その後、前記変速装置(23)の出力を停止させることから、作業者が副変速操作部材(16)を操作して圃場端植えスイッチ(101)が入ったままであっても自動的に苗の植付が停止されるので、苗が重複して同一位置に植え付けられることが防止される。
請求項3記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、制御装置(100)が、圃場端植えスイッチ(101)が入になった後、苗が一株分植え付けられる時間、即ち植付回転軸が一回転する時間が経過すると自動的に植付クラッチ機構(112、115)を切り、その後自動的に無段変速装置(23)を出力停止状態とする構成としたことにより、作業者が副変速操作部材(16)を操作し圃場端植えスイッチ(101)が入ったままであっても自動的に苗の植付が停止されるので、苗が重複して植え付けられることが防止され、苗の消費量が抑えられる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加え、制御装置(100)が、圃場端植えスイッチ(101)が入になった後、苗が一株分植え付けられた、即ち植付回転軸が一回転したことを回転検知部材(106)が検知すると自動的に植付クラッチ機構(112、115)を切り、その後自動的に無段変速装置(23)を出力停止状態とする構成としたことにより、作業者が副変速操作部材(16)を操作し圃場端植えスイッチ(101)が入ったままであっても自動的に苗の植付が停止されるので、苗が重複して植え付けられることが防止され、苗の消費量が抑えられる。
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4に記載の発明の効果に加え、圃場端植えスイッチ(101)が一定時間以上入状態であると、制御装置(100)が出力切アクチュエータ(103)を作動させ無段変速装置(23)からの出力を増大させる構成としたことにより、苗植付装置(4)のメンテナンスや、苗植付装置(4)の左右端部への移動、苗植付装置(4)に積載した苗の下端部を揃えるなどの作業を行う際、圃場端スイッチ(101)を継続して入り状態とするだけで、機体を走行させることなく無段変速装置(23)の出力を上げることができる。これにより苗植付装置(4)の端寄せ作業等を能率よく行うことができる。
また、走行操作レバー(14)を操作することなく無段変速装置(23)の出力を増加させることができるので、傾斜地でも苗植付装置(4)単独での作動を行うことができる。よって苗植付装置(4)の端寄せ等を行う際に平坦な場所まで移動する必要が無く、作業能率がいっそう向上する。
請求項6記載の発明によれば、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発明の効果に加え、レバーグリップ(122)にスロットルレバー(123)を設けたことにより、走行速度を調節しながらエンジン回転数の調節も同時にできるので、操作性が向上すると共に、圃場の条件に合わせた走行速度とエンジン回転数を確保し続けることができるので、作業能率や苗の植付精度が向上する。
また、従来の足元のアクセルペダルを不要にできるので、部品点数が削減されると共に、足元を自由にしておくことができ、作業者の労力が軽減される。特にデフロック機構を使用する場合には、一層操作性が向上する。
そして、スロットルレバー(123)と自動アクセル部材(128)とを連繋部材(124、130、131)で繋ぐ構成としたことにより、部品点数が削減され、メンテナンス性が向上する。
請求項7記載の発明によれば、請求項1から請求項6の何れかに記載の発明の効果に加え、エンジン停止部材(126)を操作すると、制御装置(100)が走行操作レバー(14)の操作位置を記録し、エンジン(20)を再始動するとエンジン停止部材(126)の操作時と同程度に無段変速装置(23)からの出力を増大させることにより、苗の補充作業等の終了後、停止前の走行速度に自動的に復帰することができるので、燃料の節約を図りつつ作業能率の向上が図られる。
また、制御装置(100)は、出力切替アクチュエータ(103)を段階的に作動させ、無段変速装置(23)の出力を急激に上昇させない構成としたことにより、エンジン(20)の再始動後に急発進することが防止され、苗の植付精度や安全性が確保される。
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、苗移植機の前進方向を基準として、それぞれ前後及び左右とする。
本発明の第一実施形態にかかる苗移植機は、その側面図および平面図を図1、図2にそれぞれ示すように、左右の前輪10、10と左右の後輪11、11とによる走行部および、エンジン20と一体に変速動力を伝動するミッションケース12、左右の前輪10、10を伝動支持する左右の前輪ファイナルケース13、13、左右の後輪11、11を伝動支持する左右の後輪ギアケース18、18等の伝動部を備えて圃場走行可能に走行車体2を構成し、この走行車体2の後部に昇降リンク機構3によって昇降動作可能に設けられて苗株の植付けを行う苗植付装置4とを備えて構成される。
苗移植機の動力伝達経路は以下のようになる。エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式の無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10、10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18に伝達されて後輪11、11を駆動する。左右の前輪ファイナルケース13、13は、ミッションケース12の側方で左右の前輪10、10を伝動支持し、左右の後輪ギアケース18、18は、機体左右側に左右の後輪11を軸着する車軸を機体左右側に突出させて設け、該ミッションケース12から左右それぞれの変速動力を受ける。
作業者は走行操作レバー14を操作することで油圧式の無段変速装置23を前進9段から中立位置を経て後進6段まで連続的(無段階的)に変速でき、副変速操作部材16を操作することで歯車式変速装置内の周知の副変速装置により「路上形態」と「中立形態」と「植付形態」とを変更することができる構成である。この部分の詳細については後述する。
次に外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25内部の植付クラッチ機構の一つに伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付装置4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。この苗植付装置4は、機体後部の植付伝動軸26から動力を受ける伝動ケース50を備え、苗載置台51に作業者が苗を供給するとともに、植付条別に並列配置した植込杆52で載置された苗株の圃場への植付けを行う。なお作業者はブレーキペダルを踏むことにより、走行動力、外部取出動力共に切断することが可能である。
上記苗植付装置4の構成は以下のようになる。
本件に示す苗移植機の走行車体2の後方に設けられた苗植付装置4は6条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載置台51、苗取出口51a、…に供給された苗を取り圃場に植付ける植込杆52、…、この植込杆52を回転させる植付回転軸、次工程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ19等を備えている。苗植付装置4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56、56がそれぞれ設けられている。これらセンターフロート55及び左右のサイドフロート56、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、該各フロート55、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植込杆52、…により苗が植付けられる。各フロート55、56、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。苗植付装置4には整地装置の一例である、前記左右のサイドフロート56,56の前方の圃場面に接触して均す左右のサイドロータ27a、27aと前記センターフロート55の前方の圃場面に接触して均すセンターロータ27bからなる整地ロータ装置27が取り付けられている。また、苗載置台51は、苗植付装置4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして、左右方向にスライドする構成である。
苗植付装置4を昇降させる昇降リンク機構3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41、41を備えている。これら上リンク40及び一対の下リンク41、41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形の後部フレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアームの先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。なお、後部フレーム42と、上リンク40及び下リンク41、41との間には昇降検知部材であるポテンショメータを配置し、苗植付装置4の上昇または下降を角度の変動に基づき検知している。
苗移植機の作業者周辺の構成は以下のようになる。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上面には操縦パネル33が設けられると共に、その上方に前輪10を操向操作するハンドル34が設けられている。ハンドル34の右側には走行操作レバー14が、左側には副変速操作部材16を設けているエンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になって畦クラッチペダル等が配置されている。フロアステップ35は一部格子状になっており、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
施肥装置5は、走行車体2の後上部に設け、施肥ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…で前記各フロート55、56、56の左右両側に取り付けた施肥ガイドまで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体64、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく左右の予備苗載せ台38、38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられ、左右の予備苗載せ台38、38は走行車体2のフロアステップ35の下部に基部側を配置した支持フレーム49に支持される。
予備苗載せ台38は、複数の移動リンク部材からなる平行リンク機構と、第1予備苗載置プレート38a、第2予備苗載置プレート38b及び第3予備苗載置プレート38cで三段に構成されている。予備苗載せ台38は、この平行リンク機構の回動によって各予備苗載置プレート38a,38b,38cが略同一平面上に前後方向に並ぶ展開状態と各予備苗載置プレート38a,38b,38cが平面視で重複した上下方向に並ぶ収納状態とに切り替えられる。この切り替えは、切替装置70によって行う。切替装置70は電動モータ等により構成され、ケース71の内部に設ける。
副変速操作部材16を操作した場合の動力の伝達経路を、図5から図8の駆動系統図により説明する。作業者は所望する動作(路上走行や植付走行等)を苗移植機にさせるために、複数の断接手段をそれぞれ操作する必要がなく、変速操作部材16を操作することで足りる。
図5には、図1の苗移植機の駆動系統図を示す。トランスミッションは、エンジン20からの動力を受け、走行動力を受ける「走行伝動系」と、外部取出動力の一部である植付動力を受ける「植付伝動系」とにそれぞれ動力を供給する。「走行伝動系」は、速度を抑えトルクを得ることができる、圃場での「植付走行伝動系」、もしくはトルクを抑え速度を得ることができる、路上での「路上走行伝動系」へ動力を供給する。「植付伝動系」は、苗植付装置4を構成する「苗植付部」へ動力を供給する。そして、トランスミッションと「走行伝動系」との間には動力の第一断接手段111を、トランスミッションと「植付伝動系」との間には第二断接手段112を、「走行伝動系」と「植付走行伝動系」の間には第三断接手段113を、「走行伝動系」と「路上走行伝動系」の間には第四断接手段114を、「植付伝動系」と「苗植付部」との間には第五断接手段115をそれぞれ設ける。そして「苗植付部」への動力を入り切りする第二断接手段と第五断接手段とを合わせて「植付クラッチ機構」とする。
図6には、副変速操作部材16が「路上形態」、即ち走行車体2の走行状態が圃場外の道路を走行するのに適したモードにある場合を示す。この場合第一断接手段111、及び第四断接手段114が接続し、他の断接手段は断絶している。副変速操作部材16を作業者が「路上形態」に位置させることで、複数の断接手段が図7の状態になるように操作される。
図7には副変速部材16が「植付形態」、即ち走行車体2の走行状態が圃場を走行するのに適したモードにある場合を示す。この場合第一断接手段111、第二断接手段112、第三断接手段113、第五断接手段115が接続し、第四断接手段114が断絶している。
図8には、副変速部材16が「中立形態」にある場合を示す。この場合第二断接手段112、第五断接手段115が接続し、第一断接手段111、第三断接手段113、第四断接手段114が断絶している。即ち走行動力は伝達されないので、走行車体2が前後に駆動されることがなく、苗植付部のみが駆動される。
次に、第一実施形態にかかる苗移植機の副変速操作部材16周辺の構成等について説明する。図3(a)は、苗移植機の操縦部周辺を前方斜め上方から見た図であり、図3(b)は、操縦部にある副変速操作部材16を操作できる動作溝を正面から見た図である。図4はこの操縦部の正面図であり、図9には第一実施形態にかかる苗移植機の制御システムのブロック図を示す。
副変速操作部材16は、「路上形態」「中立形態」「植付形態」の位置を前後に直線状に並べると共に、「中立形態」位置から右側に操作可能な横溝を設け、その横溝の端部にタッチセンサである圃場端植えスイッチ101を設ける。副変速操作部材16の根元には、横溝に操作した副変速操作部材16の操作を作業者が止めると「中立形態」位置に戻るための付勢部材105を設ける。この付勢部材105は副変速操作部材16の回動軸に嵌装するトルクスプリングである。
走行操作レバー14の根元には、走行操作レバー14の操作角度を検知できる走行ポテンショメータ102を設け、走行ポテンショメータ102の値を制御装置100に送信する。制御装置100は、走行ポテンショメータ102の数値に連動して、静油圧式の無段変速機23の出力を変更する出力切替アクチュエータ103を動作させる。ここで出力切替アクチュエータ103はサーボモータである。
作業者が、副変速操作部材16を「中立形態」位置から横溝に沿って操作し、溝端部の圃場端植えスイッチ101に接触することで圃場端植えスイッチ101を入にすると、制御装置100が、出力切替アクチュエータ103を作動させ、無段変速装置23からの出力を第一規定値まで増大させる。ここで第一規定値とは、走行車体2を走行させず、苗植付装置4のみを作動させるのに十分な出力の値であり、事前に制御装置100等に記録されているものである。合わせて、植付アクチュエータ104を作動させ、植付クラッチ機構112、115を接続させる。
副変速操作部材16を「中立形態」位置から操作して圃場端植えスイッチ101を入にすると、植付クラッチ機構112、115が接続されると共に、無段変速装置23からの出力を所定の値まで増大させる構成としたことにより、任意のタイミングで機体を移動させることなく苗植付装置4を作動させることができるので、手作業等の労力や煩雑な操作を行うことなく圃場端に適切に苗を植付けることができる。これにより圃場の有効な活用が可能となる。
また、既存のアクチュエータである出力切替アクチュエータ103及び植付アクチュエータ104を利用することにより、部品点数の増加を抑えながら圃場端に適切に苗を植付けることができる。
副変速操作部材16の操作を止めると、付勢部材105が副変速操作部材16を「中立形態」位置に復帰することにより、出力切替アクチュエータ103が無段変速装置23を出力停止状態にする。即ち必要な箇所に苗を植えた後は確実に走行状態が「中立」状態となり、操作性が向上すると共に、一ヶ所に連続して苗を植えることが防止され、苗の消費量が抑えられる。
図10には本発明の第一実施形態にかかる苗移植機において、圃場端植えスイッチ101を用いた場合の動作フローを示す。作業者が圃場端に苗を植付ける為、苗移植機をバックで圃場端に持っていく。その後ステップ001(以下S001のように記す)で作業者が副変速操作部材16を左手で把持し、「中立形態」位置から右側に操作して圃場端植えスイッチ101を「入」にする。制御装置100に圃場端植えスイッチ101が「入」となった信号が伝わると、S002で制御装置100が静油圧式の無段変速装置23の斜板操作のための出力切替アクチュエータ103を動作させ、無段変速装置23からの出力を第一規定値まで増大させる。加えてS003で植付アクチュエータ104を作動させて、植付クラッチ機構を構成する第二断接手段112及び第五断接手段115とを「入」にする。S004で制御装置100内に設けたタイマー機能で、圃場端植えスイッチ101を「入」にしてからの時間をカウントする。S005で苗が一株分植付けられるための時間、即ち植付回転軸が一回転する時間を経過したか否かを判断する。経過していない場合は、経過するまで次のステップS006に進まず、経過するとS006へ進む。S006で植付アクチュエータ104を作動させて、植付クラッチ機構を切断する。S007で、タイマー機能で更に植付回転軸が一回転する時間を経過したか否かを判断する。経過していない場合は経過するまで次のステップS009に進まず、経過するとS009へ進む。S009で出力切替アクチュエータ103を動作させ、無段変速装置23を出力停止状態にし、一連の動作を終了する。
圃場端植えスイッチ101が入になった後、制御装置100が、苗が一株分植え付けられる時間、即ち植付回転軸が一回転する時間が経過すると自動的に植付クラッチ機構112、115を切り、その後自動的に無段変速装置23を出力停止状態とする構成としたことにより、作業者が副変速操作部材16を操作し圃場端植えスイッチ101が入ったままであっても自動的に苗の植付が停止されるので、苗が重複して植え付けられることが防止され、苗の消費量が抑えられる。
また、圃場端植えスイッチ101に一度触れるだけで一連の動作を行うようになるので、操作性が向上する。
図11には本発明の第二実施形態にかかる苗移植機において、圃場端植えスイッチ101を用いた場合の動作フローを示す。S101で作業者が圃場端植えスイッチ101を「入」にする。制御装置100に圃場端植えスイッチ101が「入」となった信号が伝わると、S102で制御装置100が静油圧式の無段変速装置23の斜板操作のための出力切替アクチュエータ103を動作させ、無段変速装置23からの出力を第一規定値まで増大させる。加えてS103で植付アクチュエータ104を作動させて、植付クラッチ機構を構成する第二断接手段112及び第五断接手段115とを「入」にする。S104で植付回転軸の回転を検知する回転検知部材106が回転検知を開始し、S105で苗が一株分植付けられるための回転、即ち植付回転軸が一回転したか否かを判断する。一回転していない場合は、一回転するまで次のステップS106に進まず、一回転するとS106へ進む。S106で植付アクチュエータ104を作動させて、植付クラッチ機構を切断する。S107で出力切替アクチュエータ103を動作させ、無段変速装置23を出力停止状態にし、一連の動作を終了する。
圃場端植えスイッチ101が入になった後、制御装置100が、苗が一株分植え付けられた、即ち植付回転軸が一回転したことを回転検知部材106が検知すると自動的に植付クラッチ機構112、115を切り、その後自動的に無段変速装置23を出力停止状態とする構成としたことにより、作業者が副変速操作部材16を操作し圃場端植えスイッチ101が入ったままであっても自動的に苗の植付が停止されるので、苗が重複して植え付けられることが防止され、苗の消費量が抑えられる。
また、圃場端植えスイッチ101に一度触れるだけで一連の動作を行うようになるので、操作性が向上する。
図12には本発明の第三実施形態にかかる苗移植機において、圃場端植えスイッチ101を用いた場合の動作フローを示す。S201で作業者が圃場端植えスイッチ101を「入」にする。制御装置100に圃場端植えスイッチ101が「入」となった信号が伝わると、S202で制御装置100がタイマー機能で第一規定時間以上圃場端スイッチ101が「入」になっているかを判断する。この第一規定時間とは例えば植付回転軸が3回転する程度の時間である10秒程度であり事前に制御装置100に記録されている。第一規定時間未満である場合は第一規定時間まで次のステップS204に進まず、第一規定時間以上となるとS204に進む。S204で出力切替アクチュエータ103を作動させ、無段変速装置23の出力を第二規定値まで増大させる。第二規定値は第一規定値よりも大きく、植付回転軸の回転数が第一規定値のときの倍程度の速度になるいわゆる「中速」の値で、事前に制御装置100に記録されている。S205で第一規定時間経過後第二規定時間以上圃場端スイッチ101が「入」になっているかを判断する。この第二規定時間は第一規定時間と同程度の時間であり事前に制御装置100に記録されている。第二規定時間未満のときにはS217に進み、無段変速装置23の出力を「中速」の値で維持する。第二規定時間以上になるとS207に進む。S207で出力切替アクチュエータ103を作動させ無段変速装置23の出力を第三規定値まで増大させる。第三規定値は第二規定値よりも大きく、植付回転軸の回転数が第一規定値のときの3倍程度の速度になるいわゆる「高速」の値で事前に制御装置100に記録されている。S208ではその無段変速装置23の出力を「高速」の値で維持し一連の動作を終了する。
圃場端植えスイッチ101が一定時間以上入状態であると、制御装置100が出力切アクチュエータ103を作動させ無段変速装置23からの出力を増大させる構成としたことにより、苗植付装置4のメンテナンスや、苗植付装置4の左右端部への移動、苗植付装置4に積載した苗の下端部を揃えるなどの作業を行う際、圃場端スイッチ101を継続して入り状態とするだけで、機体を走行させることなく無段変速装置23の出力を上げることができる。これにより苗植付装置4の端寄せ作業等を能率よく行うことができる。
また、走行操作レバー14を操作することなく無段変速装置23の出力を増加させることができるので、傾斜地でも苗植付装置4単独での作動を行うことができる。よって苗植付装置4の端寄せ等を行う際に平坦な場所まで移動する必要が無く、作業能率がいっそう向上する。
図13には、本発明の第四実施形態にかかる苗移植機の走行操作レバー14の構造図を示す。図13(a)は走行操作レバー14の背面図、図13(b)は側面図である。作業者は右手で走行操作レバー14を、レバー回動支点126を軸にして前側(図13の左側)又は後側(図13の右側)に回動させる。これにより静油圧式の無段変速装置23が操作される。また第四実施形態にかかる苗移植機は、自動アクセル機構121を有する。自動アクセル機構121は、走行操作レバー14の操作量に連動してエンジン20の回転数を増減させる。即ち走行操作レバー14を、レバー回動支点126を軸にして前後に回動させると、それに連動する動作ピン129が自動アクセル部材回動支点127を中心に時計まわりに動作し、自動アクセル部材128を、自動アクセル部材回動支点127を中心に時計回りに回動させる。これによりアクセルケーブル132が図13の上方向に引かれ、エンジン20の回転数が増加する。
これに加え、第四実施形態にかかる走行操作レバー14の上端部のレバーグリップ122にスロットルレバー123を設ける。スロットルレバー123は作業者が右手の親指で操作可能なように、レバーグリップ122の左側面に設ける。スロットルレバー123は第一連繋ロッド130、連繋アーム124、第二連繋ロッド131、自動アクセル部材128と順に連結する。作業者がスロットルレバー123を上方に回動操作すると、連繋部材である第一連繋ロッド130、連繋アーム124、第二連繋ロッド131が図の矢印の方向に動作し、スロットルレバー123の動作に連動して自動アクセル部材128を時計方向に回動させることができる。このような構成とすることで、作業者は自動アクセル機構によるエンジン回転数から更にエンジン回転数を増大させることが可能となる。
レバーグリップ122にスロットルレバー123を設けたことにより、走行速度を調節しながらエンジン回転数の調節も同時にできるので、操作性が向上すると共に、圃場の条件に合わせた走行速度とエンジン回転数を確保し続けることができるので、作業能率や苗の植付精度が向上する。また、従来の足元のアクセルペダルを不要にできるので、部品点数が削減されると共に、足元を自由にしておくことができ、作業者の労力が軽減される。特にデフロック機構を使用する場合には、一層操作性が向上する。
スロットルレバー123と自動アクセル部材128とを連繋部材で繋ぐ構成としたことにより、部品点数が削減され、メンテナンス性が向上する。
図14には、本発明の第五実施形態にかかる苗移植機の動作フロー図を示す。第五実施形態にかかる苗移植機は、副変速操作部材16の右側方にエンジン停止部材107を設ける(図3参照)。S301で作業者がこのエンジン操作部材107であるボタンスイッチを操作する。S302で制御装置100がエンジン20を停止させると共に、S303で出力切替アクチュエータ103を動作させ、無段変速装置23を出力停止状態にする。S304で、エンジン停止部材107が操作されたときの走行操作レバー14の操作位置を記憶し、記憶した後S305で走行操作レバー14を「中立」位置に移動させる。走行操作レバー14の操作位置は、走行ポテンショメータ102の数値から読み取る。なおS305の走行操作レバー14を「中立」位置に移動させる動作は省略される場合がある。
S306で制御装置100が、エンジン20が作業者により再始動されたかどうかを判断する。再始動される前はS307に進まず、再始動がされるとS307へ進む。ここでエンジン20の再始動は、通常のキーを回して始動する方法で行う。S307で、現在の走行ポテンショメータ102の値を制御装置100が読み込み、S308で、S304で記憶した走行ポテンショメータ102の値にするように出力切替アクチュエータ103を作動させ、無段変速装置23からの出力を段階的に増大させる。S309で制御装置100が、無段変速装置23の出力がエンジン20停止前の出力に到達したか否かを判断する。エンジン20停止前の出力とはエンジン停止部材107が操作されたときの走行操作レバー14の操作位置に対応する出力を言う。到達していないと判断するとS310には進まず到達していると判断するとS310に進む。S310では出力切替アクチュエータ103を作動させ、無段変速装置23からの出力を維持し一連の動作を終了する。
エンジン停止部材107を操作すると、制御装置100が走行操作レバー14の操作位置を記録し、エンジン20を再始動するとエンジン停止部材107の操作時と同程度に無段変速装置23からの出力を増大させることにより、苗の補充作業等の終了後、停止前の走行速度に自動的に復帰することができるので、燃料の節約を図りつつ作業能率の向上が図られる。
また、制御装置100は、出力切替アクチュエータ103を段階的に作動させ、無段変速装置23の出力を急激に上昇させない構成としたことにより、エンジン20の再始動後に急発進することが防止され、苗の植付精度や安全性が確保される。
図15には、第五実施形態にかかる苗移植機の側面図を示す。第五実施形態にかかる苗移植機は、先端にセンターポール141を備えると共に、そのセンターポール141の下部取付部から前方に向けて水平にフロントガイドバー142を設ける。このフロントガイドバー142の前端には鉛直下方に向けてフロントマーク143を設ける。フロントガイドバー142の長さは、フロントマーク143から植込杆52の後端までの長さが、複数ある苗載置台51の左右方向の長さの2倍になるようにする。例えば6条植えの苗移植機であれば、フロントマーク143から植込杆52の後端までの長さは、12個の苗載置台51の左右方向の長さと同じである。
フロントマーク143を設けることにより、圃場端に苗移植機が1往復して植付作業を行うのに適した幅の未植付領域を残すことができる。よって作業者が容易に未植付領域を判断することができ作業能率が向上する。なお、フロントガイドバー142はセンターポール141の下部取付部において回動する構造であり、作業者が旋回のためハンドル34を操作すると、そのハンドル操作の方向に回動する。
図16は、第六実施形態にかかる苗移植機の操縦パネル33の説明図である。図16(a)は、操縦パネル33の正面図であり、図16(b)から(d)はその操縦パネル33にある液晶数値表示部151の表示状態をそれぞれ示している。第六実施形態にかかる操縦パネル33は、苗移植機の各装置の状態を示す液晶数値表示部151を有する。この液晶数値表示部151は、それぞれ数字部152、数字枠部153、数字背景154にそれぞれ分かれ、点灯される部分によって異なる装置の状態を示すようになる。例えば苗移植機の速度を示す場合は、(b)図にあるように数字部のみを点灯させ、他の部分は消灯する。条ごとに畔クラッチの入切を判断する場合は(c)図にあるように数字背景154のみを点灯させ、他の部分は消灯する。苗切れ、肥料つまりを起こした条を表示する場合は、数字背景154を点滅させ、他の部分は消灯する。これにより装置の状態を同じ部分を用いて表示できる。複数の点灯・点滅指令が出た時はどちらの表示を行うかは事前に制御装置100に記録されている。
図17は、第七実施形態にかかる苗移植機の操縦パネル33の説明図である。第七実施形態にかかる操縦パネル33は、液晶表示部の左右端部にLR表示部155を有する。そして、副変速操作部材16により走行状態を変更した際に、LR表示機155はその走行状態での異なる装置の状態を表示する。例えば、副変速操作部材16で「路上形態」にした場合、左右に曲がるときに曲がる方向のウィンカーを、コンビスイッチ156の回転スイッチ部157を左右に操作することで点滅させる。この時LR表示機155は曲がる方向の表示機をウィンカーの状態を表示するように、ウィンカーと同じように点滅させる。副変速操作部材16で「植付形態」にした場合、コンビスイッチ156の回転スイッチ部157を左右に操作することで、線引きマーカ19を倒す構成である。この時LR表示機155は線引きマーカ19の状態を表示するように、倒した方向のLR表示機が点灯するように構成する。
またコンビスイッチ156の中央にある押しボタンスイッチ部158の操作についても副変速操作部材16により走行状態を変更した際に変更するようにする。例えば走行状態が「路上形態」のときは、押しボタンスイッチ部158を押圧するとホーンが鳴り、「植付形態」のときは、線引きマーカ19の左右切替を行う構成とする。これによりコンビスイッチを一つ設けるだけで複数の操作をすることが可能となり、コストを抑えることができる。
図18には第八実施形態にかかる苗移植機の前輪10のサスペンション159の構成図を示す。前輪10には駆動軸からの動力がベベルギア160を通じて伝達される。この際サスペンション159はベベルギア160に連結した駆動軸よりも上方に設け、さらにサスペンション159の軸心が、キングピン軸心よりも機体中心に傾くように構成する。また、駆動軸よりも下方にサスペンション159を設けた場合は、サスペンション159の軸心がキングピン中心軸を通らないようにし、キングピン角度が0に近くなるようにサスペンション159を構成する。そして、サスペンション159を複数設けた場合は、メインのサスペンションはキングピン中心軸に巻回し、サブのサスペンションは角度を異ならせる構成とする。このようにすることで、サスペンションのスプリング部が円滑に摺動するようになる。