JP3722081B2 - 作業車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクタや苗植機や収穫機等の農用走行車体及び土木建設機械等のその他各種の作業車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車輪への駆動を変速する変速レバーと車輪を制動するブレーキ装置とを設けた作業車両は、周知である。
また、作業部の駆動状態の点検や作業部のみの駆動による作業を行う為に、作業車両の車輪への駆動を停止した状態で作業部を駆動する特別の操作装置を設けたものもある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の作業車両は、作業車両の車輪への駆動を停止した状態で作業部を駆動する時、先ず、変速レバーにて車輪への駆動を停止した状態とし、然る後に、作業部のみを駆動する操作装置を操作して行わなければならず、然も、その際に、機体が不用意に移動しないように別途ブレーキ装置を制動状態に操作する必要もあり、その操作作業は、煩雑であった。
【0004】
そこで、本発明は上記問題点の解決を課題とし、特に、変速レバーの操作によって、車輪への駆動を変速すると共に車輪への駆動を停止した状態で作業部を駆動操作することができ、然も、車輪への駆動を停止した状態で作業部を駆動操作する時には必然的にブレーキ装置が制動状態になって、安全な作業が行える作業車両を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決すべく、請求項1記載の発明は、車輪7・8への駆動を変速すると共に車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動操作する変速レバー30と車輪7・8を制動するブレーキ装置75とを設けた作業車両において、該変速レバー30のレバーガイド95に変速レバー30の操作経路を変更する移動ガイド95aを設けて、車輪7・8への駆動を変速する操作経路と車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路とに切替え自在に構成すると共に、車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路への移動ガイド95aの切替え操作に起因して車輪7・8を制動するブレーキ装置75を作動させる連繋機構95gを設けた作業車両としたものである。従って、移動ガイド95aの切替え操作で、車輪7・8への駆動を変速する操作経路と車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路とにレバーガイド95の変速レバー30の操作経路を変更でき、作業形態に応じて適切な変速レバー30の操作が容易に行え、然も、誤操作も防止できて、作業性が良い。
【0006】
また、移動ガイド95aを車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路に切替える操作をすると、その切替えに起因して連繋機構95gを介してブレーキ装置75が作動し車輪7・8が制動される。従って、操縦者が車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する変速レバー30の操作をする時には、必ず、ブレーキ装置75が作動し車輪7・8が制動されているので、不用意に機体が前後方向に移動してしまうことが防止でき、安全に作業装置だけを駆動できて、安全な作業が行える。
【0007】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、移動ガイド95aの切替え操作で、車輪7・8への駆動を変速する操作経路と車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路とにレバーガイド95の変速レバー30の操作経路を変更でき、作業形態に応じて適切な変速レバー30の操作が容易に行え、然も、誤操作も防止できて、作業性が良い。
【0008】
また、移動ガイド95aを車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路に切替える操作をすると、その切替えに起因して連繋機構95gを介してブレーキ装置75が作動し車輪7・8が制動され、操縦者が車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する変速レバー30の操作をする時には、必ず、ブレーキ装置75が作動し車輪7・8が制動されているので、不用意に機体が前後方向に移動してしまうことが防止でき、安全に作業装置だけを駆動できて、安全な作業が行える。
【0009】
よって、変速操作性及び安全性において優れた作業車両を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に表された実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明による走行車体を備えた施肥田植機の全体側面図及び平面図である。この施肥田植機1は、走行車体2の後方に昇降リンク装置3を介して5条植の苗植付部4が昇降可能に設けられ、さらに、走行車体2の後部上側に肥料タンク220L,220R、肥料繰出部221,…等からなる施肥装置5の本体部が設けられている。また、走行車体2の前部左右両端部には、左右各2段づつ予備苗粋6,…が設けられている。
【0011】
走行車体2は、走行部として駆動輪である各左右一対の前輪7,7及び後輪8,8を備えた四輪駆動車両であって、図3に示すように、機体の前部に配設されたミッションケース10の左右側面部から前輪アクスルケース11,11が側方に延設され、その先端部に変向可能に設けた前輪ファイナルケース12,12に前輪7,7が回転自在に支承され、また、ミッションケース10の背面部に左右一対のメインフレーム13,13の前端部が固着され、該メインフレーム13,13の後端部から左右側方に延びるリャフレーム14の先端部に固定して設けた後輪ファイナルケース15,15に後輪8,8が回転自在に支承されている。リャフレーム14には、昇降リンク装置3を支持する左右一対のリンク支持フレーム16,16が上向きに突設されている。
【0012】
メインフレーム13,13の前後中央部の上方にエンジン20が搭載されており、該エンジンの上側を覆うエンジンカバー21の上に座席22が設置されている。座席22の前方は各種操作機構が内蔵されたボンネット23で、その上方に操向輪である前輪7,7を操向するための操向ハンドル24が設けられている。エンジンカバー21及びボンネット23の周囲は、人が移動したり作業を行ったりするためのステップ25になっている。図中符号30は変速レバー、31は副変速レバー、32は植付昇降レバー、33はクラッチ・ブレーキペダル、34はクラッチ・ブレーキレバー、35はデフロックペダル、36はチョークつまみ、37は昇降制御の感度調節レバーである。
【0013】
次に、この走行車体2の動力伝達機構について説明する。
エンジン20の左側面部にエンジン出力軸40が突出し、そのエンジン出力軸40の回転動力が、ベルト式変速装置41と主クラッチ機能付きのベルト伝動装置42とを介して、ミッションケース10の左側面部に突出するミッション入力軸43に伝達される。また、エンジン出力軸40の延長線上でベルト式変速装置41よりも外側に油圧ポンプ45が設けられ、エンジン出力軸40の回転動力でこの油圧ポンプ45が直接駆動される。このようにベルト式変速装置41やベルト伝動装置42よりも伝動上手側から回転動力を取ることにより、ベルトのスリップや脈動による影響を受けず油圧ポンプ45の回転を安定させることができる。
【0014】
ベルト式変速装置41は、エンジン出力軸40に一体回転するように嵌合する駆動プーリ50と、中継軸51に回転自在に嵌合する従動プーリ52とに伝動ベルト53を掛け、該ベルトにテンションプーリ54で張力を付与している。駆動プーリ50及び従動プーリ52は割りプーリになっており、両プーリ50,52の有効径を互いに大小逆側に変更することにより伝動比を変更し、駆動プーリ50の有効径が一定以下になると伝動停止になる。詳しくは、下記のように構成されている。
【0015】
割りプーリである駆動プーリ50・従動プーリ52の一方の構成部材50a・52aは各々軸40・51に固定、他方の構成部材50b・52bは各々軸40・51に対し軸方向に摺動自在になっている。可動構成部材50b・52bは各々軸受63・63を介して相互回転自在な変速操作カム64・64によって位置規制されている。この変速操作カム64・64の外面側には円周上の位置によって突出量が異なる円環状の突条64a・64aが形成されており、その各突条64a・64aが固定カム55・65に設けた各ローラ55a・65aに当接している。
【0016】
片方の駆動変速操作カム64のアーム64bには、前進と後進とを切替え操作できる操作レバーである変速レバー30の操作に連動する変速操作ロッド68が連結されている。また、2つの駆動変速操作カム64・64は、両者のアーム64b・64b同士を連結ロッド57で連結している。これにより、変速操作ロッド68を前後に移動させると、変速操作カム64・64が回動してローラ55a・65aへの突条64a・64aの接点が変わり、変速操作カム64・64とそれに位置規制されている可動構成部材50b・52bが伝動ベルト52の張力に応じて軸方向へ移動することにより、駆動プーリ50及び従動プーリ52の有効径が互いに大小逆側に変化するのである。駆動プーリ50の有効径が大きく、従動プーリ52の有効径が小さいほど低速伝動となる。
【0017】
ベルト伝動装置42は、前記ベルト式変速装置41の従動プーリ52に一体の駆動プーリ42aとミッション入力軸43に取り付けた従動プーリ42bとに伝動ベルト42cを掛け、この伝動ベルト42cにテンションプーリ42dで張力を付加するようにしたもので、テンションプーリ42dを伝動ベルト42cから離すと、エンジン20の回転動力がミッションケース10へ伝動されない主クラッチ「切」の状態になるようになっている。
【0018】
図4はミッションケースの内部構造を示す図である。主クラッチ機能付きのベルト伝動装置42を介してミッション入力軸43に入力された回転動力は、「路上走行速」「植付速(作業速)」「超低速」「中立」の各シフト位置を有する副変速装置70を介して副変速軸71に伝達される。そして、副変速軸71の回転動力の一部は、走行用動力として前後進切替装置72を介して四輪ブレーキ軸73に伝達される。前後進切替装置72は、副変速軸71から四輪ブレーキ軸73へ逆転方向に動力を伝達する「前進」と、同方向に動力を伝達する「後進」と、動力を伝達しない「中立」とに切替えるようになっている。副変速装置70はギヤミッションの副変速部、前後進切替装置72はギヤミッションの前後進変速部である。副変速レバー31の操作により、副変速装置70と前後進切替装置72とがシフトチェンジされる。
【0019】
ここで、副変速装置70の構成を説明すると、ミッション入力軸43に形成されたスプライン部43aに駆動小ギヤ70−1・駆動中ギヤ70−2・駆動大ギヤ70−3をミッション入力軸43と一体的に回転すると共に、副変速レバー31の操作により移動するシフタ70aにて左右移動自在に設けている。そして、副変速軸71には、その駆動小ギヤ70−1・駆動中ギヤ70−2・駆動大ギヤ70−3にそれぞれ噛合う従動大ギヤ70−4・従動中ギヤ70−5・従動小ギヤ70−6を固定して設けている。従って、副変速レバー31を操作してシフタ70aにて駆動小ギヤ70−1・駆動中ギヤ70−2・駆動大ギヤ70−3を左右方向に移動させて、駆動小ギヤ70−1と従動大ギヤ70−4とを噛合わせた時には走行速が最も遅い「超低速」となり、駆動中ギヤ70−2と従動中ギヤ70−5とを噛合わせた時には「植付速」となり、駆動大ギヤ70−3と従動小ギヤ70−6とを噛合わせた時には走行速が最も早い「路上走行速」となる。
【0020】
次に、前後進切替装置72の構成を説明すると、ミッション入力軸43上にボールベアリングを介して後進カウンタギヤ72−1を遊転自在に設けている。そして、副変速軸71に形成されたスプライン部71aに前後進切替えギヤ72−2を副変速軸71と一体的に回転すると共に、変速レバー30または副変速レバー31の操作により左右移動するシフタ31aにて左右方向に移動自在に設けている。また、四輪ブレーキ軸73には、前進ギヤ72−3と後進ギヤ72−4とを固定して設けている。従って、副変速レバー31を操作してシフタ31aにて前後進切替えギヤ72−2を左右方向に移動させて、前後進切替えギヤ72−2と前進ギヤ72−3とを噛合わせた時には四輪ブレーキ軸73は正転し機体は前進する。そして、前後進切替えギヤ72−2と後進カウンタギヤ72−1の歯部72−1aとを噛合わせた時には、後進カウンタギヤ72−1の歯部72−1bが後進ギヤ72−4と常時噛合っているので、四輪ブレーキ軸73は逆転し機体は後進する。一方、変速レバー30又は副変速レバー31を操作してシフタ31aにて前後進切替えギヤ72−2を左右方向に移動させて、前後進切替えギヤ72−2が前進ギヤ72−3と後進カウンタギヤ72−1との何れにも噛合わない位置にしたときには、四輪ブレーキ軸73には動力が伝達されないので、機体が前進も後進もしない「中立」位置となる。
【0021】
尚、73−1は四輪ブレーキ軸73に固定された後記のデフ装置76に動力を伝達するギヤである。
このように「路上走行速」「植付速」「超低速」のシフト位置を有する副変速装置70を前後進切替装置72よりも、動力伝動上手側に設けたので、簡潔な構成で「路上走行速」「植付速」「超低速」に亘って幅広い後進速度域が設定でき、前後進の変速範囲が広くなり、作業性が向上する。また、速度変速と前後進との切替えを分けたので、両者共に直線的な単純な変速操作となり、作業者はその変速操作位置が明確に判るようになり、操作性が良好となる。
【0022】
さて、四輪ブレーキ軸73には四輪ブレーキ装置75が設けられている。75aは四輪ブレーキ装置の操作アームである。そして、四輪ブレーキ軸73の回転動力は、デフ装置76によって左右のフロントアクスル77,77に分配して伝達され、さらに該フロントアクスルによって前輪ファイナルケース12,12に伝動されて前輪7,7を駆動する。また、左右のフロントアクスル77,77には後輪クラッチ・ブレーキ装置78,78がそれぞれ設けられ、該装置を経てミッションケース10の背面部から取り出される後輪駆動用動力が後輪伝動軸79,79を介して後輪ファイナルケース15,15に伝達されて後輪8,8を駆動する。尚、操向ハンドル24の操作に連動して、旋回内側の後輪クラッチ・ブレーキ装置78が自動的にクラッチが切れてブレーキがきくように作動する構成となっている。
【0023】
副変速軸71の回転動力の残りは、作業装置駆動用の回転動力(PTO)として、一対の株間副変速ギヤ81,82を経由してPTO出力軸83に伝達される。上記株間副変速ギヤ81,82はミッションケース10の右側面の内側に配置されており、その外側に着脱自在に取り付けられたカバー84を外してギヤ比の異なる株間副変速ギヤに交換することが可能である。PTO出力軸83の後端にはPTO伝動軸85が接続され、該軸を介してPTOが植付クラッチケース86へ伝達される。このPTO伝動軸85は、平面視でミッションケース10側が機体内側で植付クラッチケース86側が機体外側に位置するように斜めに配置構成されて、機体中央部のエンジン20に干渉しないようになっていると共に、変向可能な左右前輪7,7をその左右に設けたミッションケース10側のPTO伝動軸85は機体内側であるから、操向ハンドル24にて左右前輪7,7を操向する場合に、左右前輪7,7を大きく操向してもPTO伝動軸85に干渉することが防止できて、左右前輪7,7の変向角度を大きく設定することができる。従って、大きく左右前輪7,7を操向させて小回りのできる機体を得ることができ、作業性がとても良い。
【0024】
植付クラッチケース86に伝達されたPTOは施肥動力と植付動力とに分岐し、施肥動力は安全クラッチ機能を備えた施肥クラッチを経由して植付クラッチケース86から取り出され、植付動力は株間調節装置及び植付クラッチを経由して植付クラッチケース86から取り出される。植付クラッチケース86から取り出された植付動力は、該ケースの出力部に設けた植付安全クラッチ87を経てから、植付伝動軸88を介して苗植付部4へを伝達される。
【0025】
変速レバー30の操作機構を図6〜図11に示す。変速レバー30は操向ハンドル24の左下方に設けられていて、軸90を支点にして左右に回動可能かつ軸91を支点にして前後に回動可能になっている。変速レバー30を左右に操作すると、前後進切替アーム92を介して前後進切替ロッド93が上下動させられ、前後進切替装置72のシフタ31aに伝えられるようになっている。これにより、変速レバー30を左右に操作すると、前後進切替装置72が「前進」から「後進」に切り替わる。また、変速レバー30を前後に操作すると、連結ロッド94から電動アシスト機構Aを介してベルト式変速装置41の変速操作ロッド68が前後移動させられ、ベルト式変速装置41が変速操作される。この変速レバーの操作範囲はレバーガイド95によって規制されている。
【0026】
ここで、電動アシスト機構Aについて詳しくその構成を説明する。
機体に設けた回動支持軸300に前感知スイッチ301と後感知スイッチ302とを所定の間隔をあけて設けたセンサ取付け体303を回動自在に設け、このセンサ取付け体303に前記変速レバー30の連結ロッド94を連結している。そして、センサ取付け体303の上端には連続した円弧状の凹凸部304が設けられており、この凹凸部304に機体に回動自在に支持されて引張バネ305にて付勢されたアーム306の先端に回動自在に枢支されたローラ(ベアリング)307が係合している。従って、凹凸部304の各凹部にローラ307が係合する位置で、変速レバー30は位置決めされて、止まるような構成となっており、操縦者が変速レバー30を前後方向に操作する時に、有段変速をしているような感覚を持たせる構成となっている。
【0027】
一方、回動支持軸300に前記前感知スイッチ301と後感知スイッチ302との間隔に入るカム部308をその上端部に設けたカム体309と該カム体309と一体回動する扇状ギヤ310と変速操作アーム311とを一体回動するように設け、該変速操作アーム311にベルト式変速装置41を変速する変速操作ロッド68を連結している。また、扇状ギヤ310のギヤ部には、電動モータ312の駆動ギヤ313に噛合する大径従動ギヤ314と一体回動する小径ギヤ315が噛合しており、電動モータ312の駆動ギヤ313が正逆回転することにより扇状ギヤ310が正逆回動して変速操作アーム311を揺動させる。従って、電動モータ312の駆動にて変速操作アーム311を揺動させて、変速操作ロッド68を押し引きしてベルト式変速装置41が変速操作される構成となっている。
【0028】
ここで、前後感知スイッチ301・302とカム部308との関係によって、変速レバー30を前後方向に操作すると電動モータ312が作動してベルト式変速装置41が変速操作される構成を更に詳述する。今、変速レバー30が中立位置Nにあり、電動モータ312が作動していない状態では、カム部308は前後感知スイッチ301・302の間にあり、前後感知スイッチ301・302はONになっていない。そして、操縦者が変速レバー30を前進域Fの前側に向けて操作すると、カム部308に後感知スイッチ302の検出部が乗り上がって後感知スイッチ302がONになる。すると、電動モータ312は正転して後感知スイッチ302がONにならない位置まで扇状ギヤ310が回動する為に、変速操作アーム311が揺動してベルト式変速装置41を中立から増速側に変速操作する(変速レバー30が前進域F側にあるときは、前後進切替装置72が「前進」側になっている)。従って、操縦者が変速レバー30を前進域Fの最高速度まで前側に向けて操作するにつれて電動モータ312も正転を続けてベルト式変速装置41を最高速度まで増速側に変速し、前進最高速度になる。逆に、操縦者が変速レバー30を前進域Fの最高速度(最も前側の位置)から後方に向けて操作すると、カム部308に前感知スイッチ301の検出部が乗り上がって前感知スイッチ301がONになる。すると、電動モータ312は逆転して前感知スイッチ301がONにならない位置まで扇状ギヤ310が回動する為に、変速操作アーム311が揺動してベルト式変速装置41を前進減速側に変速操作する。従って、操縦者が変速レバー30を前進域Fの最高速度(最も前側の位置)から中立位置Nまで後側に向けて操作するにつれて電動モータ312も逆転を続けてベルト式変速装置41を中立まで減速側に変速する。
【0029】
そして、操縦者が中立位置Nで変速レバー30を前進域F側から後進域R側に左右方向に操作すると、前後進切替装置72が「前進」から「後進」に切り替わり、後進域Rの後進増速側(後側)に操作すると、カム部308に前感知スイッチ301の検出部が乗り上がって前感知スイッチ301がONになる。すると、電動モータ312は逆転して前感知スイッチ301がONにならない位置まで扇状ギヤ310が回動する為に、変速操作アーム311が揺動してベルト式変速装置41を中立から増速側に変速操作する。従って、操縦者が変速レバー30を後進域Rの最高速度まで後側に向けて操作するにつれて電動モータ312も逆転を続けてベルト式変速装置41を最高速度まで増速側に変速し、後進最高速度になる。逆に、操縦者が変速レバー30を後進域Rの最高速度(最も後側の位置)から前方に向けて操作すると、カム部308に後感知スイッチ302の検出部が乗り上がって後感知スイッチ302がONになる。すると、電動モータ312は正転して後感知スイッチ302がONにならない位置まで扇状ギヤ310が回動する為に、変速操作アーム311が揺動してベルト式変速装置41を後進減速側に変速操作する。従って、操縦者が変速レバー30を後進域Rの最高速度(最も後側の位置)から中立位置Nまで前側に向けて操作するにつれて電動モータ312も正転を続けてベルト式変速装置41を中立まで減速側に変速する。
【0030】
一方、扇状ギヤ310を回動させる小径ギヤ315には、先端にベアリング316を回転自在に装着したアーム317が一体回転するように設けられており、変速レバー30を中立位置Nにした時、電動モータ312による小径ギヤ315の回転によりこのアーム317のベアリング316が後述の主クラッチの入り切り及び四輪ブレーキ装置75を作動させる回動軸102に一体に設けた作動アーム318のカム部319を押して、回動軸102を回動させて引っ張りスプリング105aの付勢力に抗してテンションアーム105を上動させ、ベルト伝動装置42のテンションプーリ42dを伝動ベルト42cから離れさせて主クラッチを切ると同時に、四輪ブレーキ作動ロッド106を引いて四輪ブレーキ装置75のブレーキをかける(この四輪ブレーキ装置75のブレーキをかける詳細な構成は、後述する)。この時、テンションアーム105に一体に溶接された突起片105sがブレーキ作動体105tと接当してブレーキ作動体105tがテンションアーム105と同方向に回動して四輪ブレーキ作動ロッド106が引かれるのであるが、ブレーキ作動体105tと四輪ブレーキ装置75の操作アーム75aとがスプリング105wを介在して四輪ブレーキ作動ロッド106にて連結されているので、四輪ブレーキ装置75は徐々に制動が効いて、急激なブレーキはかからないから機体が急激に停止することが防止でき作業上安全である。そして、変速レバー30が中立位置N以外の位置では、ベアリング316は作動アーム318のカム部319を押さない位置にあり、主クラッチは入りで四輪ブレーキ装置75は作動していない状態である。尚、ベアリング316を回転自在に装着したアーム317及び作動アーム318のカム部319により、連繋機構Bが構成されている。
【0031】
また、作動アーム318と機体との間には、緩衝装置である油圧式ダンパ320が設けられており、変速レバー30を操作することによりアーム317のベアリング316が作動アーム318のカム部319から離れて機体を前進又は後進させる際に、引っ張りスプリング105aの付勢力にてテンションプーリ42dが伝動ベルト42cに急激なテンションをかけて機体が急発進することを防止している。
【0032】
更に、作動アーム318にカム部319を取付ける構成は、作動アーム318に縦長の取付け孔318a・318aを設け、カム部319には取付け孔318a・318aと直交する方向の長孔319a・319aを設けて、ボルト321・321を取付け孔318aと長孔319aを貫通させて両者を固定している。従って、カム部319の取付け位置は、変速レバー30を中立位置Nにした時、適切にアーム317のベアリング316が接当して主クラッチが切ると同時に四輪ブレーキ装置75のブレーキがかかるように調節することができる。また、長年使用してカム部319が磨耗した場合にも、この調節により、変速レバー30を中立位置Nにした時、適切にアーム317のベアリング316が接当して主クラッチが切ると同時に四輪ブレーキ装置75のブレーキがかかるようにすることができる。尚、322は、カム部319の位置ずれを防止する係止用のボルトである。
【0033】
一方、前後感知スイッチ301・302は、各々装着板323・323に固定されており、その各装着板323・323には上部にボルト324の径と略同じくらいの取付け孔323aと下部にボルト324の径よりもかなり大きな取付け孔323bが設けてあり、各装着板323・323はこの取付け孔323a・323bにボルト324を挿通してセンサ取付け体303に固定されている。そして、各装着板323・323には位置調節の為の螺子孔325・325が各々設けられており、センサ取付け体303に一体に設けられた起立壁体326・326に固定したナット327・327を螺着挿通した調節螺子328・328の先端部が各装着板323・323の螺子孔325・325に螺着挿通して設けている。従って、各装着板323・323の上下のボルト324・324を少し緩めて、調節螺子328・328を回すと上のボルト324を回動中心として各装着板323・323は下のボルト324が挿通している大きな取付け孔323bの遊び分だけ回動調節できる。即ち、この各装着板323・323の回動調節により、カム体309のカム部308に接触する前後感知スイッチ301・302の接触子301a・302aの位置を微調節することができ、前後感知スイッチ301・302をカム部308に対して適正な位置にした後に、上下のボルト324・324を締め付ければ、前後感知スイッチ301・302をカム部308に対して適正な位置に簡単に取付けることができて、操作系の精度が安定し適切な車速の増減速操作が行える。
【0034】
また、センサ取付け体303には、回動支持軸300と平行にピン体329が固定して設けられており、このピン体329の先端部はカム体309に設けたピン体329の外径よりも少し大きな孔330(ピン体329と孔330との遊びで、前後感知スイッチ301・302の接触子301a・302aがカム部308に乗り上げる)に貫通した状態となっている。このようにセンサ取付け体303のピン体329をカム体309の孔330に貫通させておくことにより、変速レバー30をあまりにも速く操作して、変速レバー30の操作によるセンサ取付け体303の回動速度が電動モータ312による扇状ギヤ310の回動速度よりも速くなった場合に、ピン体329が孔330の端に当って変速レバー30の速い操作を規制する。よって、変速レバー30の操作が常に電動モータ312による扇状ギヤ310の回動速度内におさまり、操作フィーリングが良い。尚、このピン体329及び孔330が規制機構Dを構成している。
【0035】
尚,センサ取付け体303とカム体309には、対向してアーム部331・332が各々一体に形成されており、各アーム部331・332には孔331a・332aが設けられ、片方の孔331aにはナット333が溶接固定されている。これは、作業中に電動モータ312が故障した場合に、電動モータ312の駆動ギヤ313と大径従動ギヤ314との噛合を外し(大径従動ギヤ314は、そのスプライン係合した支持軸314aにヘアピン314bにて駆動ギヤ313と噛合する位置に位置規制されており、このヘアピン314bを抜いて大径従動ギヤ314が駆動ギヤ313と噛合しない位置にスライドさせてヘアピン314bにて位置規制すれば、簡単に駆動ギヤ313と大径従動ギヤ314との噛合を外すことができる)、ボルト334を各アーム部331・332の孔331a・332aを貫通してアーム部331のナット333に螺合させてセンサ取付け体303とカム体309とを締め付けて固定すれば、変速レバー30の操作にて直接変速操作アーム311を揺動させて、変速操作ロッド68を押し引き操作してベルト式変速装置41を変速操作することができ、然も、扇状ギヤ310のギヤ部と小径ギヤ315は噛合したままであるから、変速レバー30を中立位置Nにすれば、アーム317のベアリング316が作動アーム318のカム部319を押して主クラッチを切ると同時に、四輪ブレーキ作動ロッド106を引いて四輪ブレーキ装置75のブレーキをかけることができる。このように、作業中に電動モータ312が故障しても、変速レバー30の操作にて変速操作が行えるので、作業を引き続き行なえる。従って、作業能率が向上する。尚、作業終了後に、故障した電動モータ312を修理するか新しいものに取りかえれば良い。
【0036】
レバーガイド95は図8に示す構造をしており、変速レバー30の前後位置が中立位置Nにあるときベルト式変速装置41が伝動停止状態になり、これより前方及び後方に操作するとその操作量に応じて上記のように速度が速くなる。また、前後進切替装置72は、変速レバー30が左右中央位置で「PTO」、右側位置で「前進」、左側位置で「後進」となる。「PTO」及び「前進」では変速レバー30を中立位置Nよりも前側の前進域Fにのみ操作することができ、「後進」では変速レバー30をNよりも後側の後進域Rにのみ操作することができる。
【0037】
そして、レバーガイド95の変速レバー30のガイド部には、ガイド経路を変更する移動ガイド95aが機体に設けた上下孔95b・95bに回動自在に支持された操作杆95cに固着されて配置されている。そして、操作杆95cの基部側に外装されて機体と移動ガイド95a底面との間に設けた圧縮バネ95dにより、移動ガイド95aはレバーガイド95底面に圧接するように付勢されている。また、移動ガイド95aには位置決め用ピン95eが上側に向けて突出して設けられており、この位置決め用ピン95eがレバーガイド95に設けた孔95f・95fの何れかに係合して移動ガイド95aは図8の(a)及び(b)に示す2つの位置に切替えて位置固定できる構成となっている。尚、移動ガイド95aの上面には、「前進」「PTO」と表記されており、各切替え位置でその何れかがガイド穴から見える構成となっており、操縦者が移動ガイド95aの切替え状態を認識できるようになっているので、ご操作が防止できて安全である。
【0038】
一方、移動ガイド95aには、操作ワイヤ95gの一端が挿通してナット95hにて抜け止めされた状態で装備されており、該操作ワイヤ95gの他端は前記ブレーキ作動体105tに連結させている。従って、移動ガイド95aを図8の(b)の状態に切替えると、操作ワイヤ95gが引かれてブレーキ作動体105tを回動させて四輪ブレーキ作動ロッド106が引かれ四輪ブレーキ装置75がブレーキ作動する(このとき、ブレーキ作動体105tの接当部105t’はテンションアーム105の突起片105sから離れる方向に回動するので、テンションアーム105は上動せず主クラッチは操作されない。)。
【0039】
従って、操作杆95cを圧縮バネ95dに抗して下方に向けて押して、位置決め用ピン95eをレバーガイド95に設けた孔95fから外して、例えば、操作杆95cを操作してレバーガイド95の左側の孔95fに位置決め用ピン95eを位置させて圧縮バネ95dにより移動ガイド95aを上動させ、レバーガイド95の左側の孔95fに位置決め用ピン95eを係合させると、図8の(a)の状態で移動ガイド95aは位置固定され、移動ガイド95a上面の「前進」が見えるようになる。この時、変速レバー30をNよりも前方に操作すると常に前進速になり、Nよりも後方に操作すると常に後進速になる。変速レバー30の操作方向と機体の進行方向が一致するので感覚的に分かりやすい。前進速から後進速に或はその逆に切り替える際、その過程で必ずベルト式変速装置41が伝動停止状態となるので、主クラッチを「切」にすることなく変速レバー30の操作だけで前後進の切替を行える。また、前進域Fのレバーストロークに比べ後進域Rのレバーストロークを小さくして後進の最大速度を規制しているので、安全である。
【0040】
また、操作杆95cを操作してレバーガイド95の右側の孔95fに位置決め用ピン95eを係合させると、図8の(b)の状態で移動ガイド95aは位置固定され、移動ガイド95a上面の「PTO」が見えるようになる。この時、変速レバー30をNよりも前方に操作すると走行部は駆動されず作業装置だけが駆動される。この時、上記のように操作ワイヤ95gが引かれてブレーキ作動体105tを回動させて四輪ブレーキ作動ロッド106が引かれ四輪ブレーキ装置75がブレーキ作動するので、機体は自動的にブレーキが利いた状態となり、不用意に機体が前後方向に移動してしまうことが防止でき、安全に作業装置だけを駆動できて、安全な作業が行える。
【0041】
図12及び図13にクラッチ・ブレーキペダル及びクラッチ・ブレーキレバーの操作機構を示す。クラッチ・ブレーキペダル33は座席22の右側足下部に設けられ、支持軸100を支点にして前後に回動自在となっている。また、クラッチ・ブレーキペダル33には、これと一体にクラッチ・ブレーキレバー34が上向きに取り付けられている。
【0042】
クラッチ・ブレーキペダル33と一体回動するアーム101が設けられ、このアーム101とミッションケース10の前方に左右方向に設けた回動軸102の右端部に取り付けたアーム103とがロッド104を介して連結されている。回動軸102の左端部には前記ベルト伝動装置42のテンションプーリ42dを支持するテンションアーム105が取り付けられている。テンションアーム105と一体の作動アーム318には、テンションプーリ42dが伝動ベルト42cに張力を付加する方向にテンションアーム105を付勢する引っ張りスプリング105aが取り付けられている。また、このテンションアーム105に一体に突起片105sが溶接されており、この突起片105sが回動軸102に回動自在に設けられた(遊嵌された)ブレーキ作動体105tの接当部105t’に接当して、テンションアーム105が上動した時にブレーキ作動体105tも同方向に回動するように構成されている。そして、ブレーキ作動体105tの上端部に設けた穴105uに四輪ブレーキ作動ロッド106を挿通し、四輪ブレーキ作動ロッド106にはその先端部とブレーキ作動体105tの背面部とにナット105v・105vを螺着し、先端部のナット105vとブレーキ作動体105tとの間にスプリング105wを設けている。従って、テンションアーム105が上動すると、その突起片105sがブレーキ作動体105tの接当部105t’に接当してブレーキ作動体105tも同方向に回動し、四輪ブレーキ装置75の操作アーム75aがスプリング105wを介在して四輪ブレーキ作動ロッド106にて引かれ四輪ブレーキ装置75がブレーキ作動する。
【0043】
これにより、クラッチ・ブレーキペダル33を前方に踏み込み操作もしくはクラッチ・ブレーキレバー34を前方に回動操作すると、ベルト伝動装置42のテンションプーリ42dが伝動ベルト42cから離れて主クラッチ「切」となるとともに、四輪ブレーキ装置75がブレーキ作動する。
【0044】
そして、テンションアーム105のテンションプーリ42dを回動自在に枢支する支軸105bには、後方に向けて延びた杆体105cの基部が溶接固定されている。一方、機体にはブレーキ解除アーム105dが支持軸105eに回動自在に枢支されており、そして、このブレーキ解除アーム105dは連結板105fにて四輪ブレーキ装置75の操作アーム75aに連係されており、ブレーキ解除アーム105dの先端は直角に折れ曲がった形状にしてあり、この折れ曲がった部分は平面視で杆体105cと重なる位置になっている。この杆体105c及びブレーキ解除アーム105dが機械式連繋機構Cを構成している。尚、連結板105fには長孔105gが設けられており、連係ピン75bをこの長孔105gに挿通して操作アーム75aの先端部に連結している。また、連係ピン75bは、前記四輪ブレーキ作動ロッド106の連結孔にも挿通されており、四輪ブレーキ作動ロッド106を操作アーム75aの先端部に連結している。
【0045】
上記杆体105cとブレーキ解除アーム105dの作動を説明すると、クラッチ・ブレーキペダル33を前方に踏み込み操作もしくはクラッチ・ブレーキレバー34を前方に回動操作すると(または、変速レバー30を中立位置Nに操作して、電動モータ312による小径ギヤ315の回転によりアーム317のベアリング316が作動アーム318のカム部319を押した時)、テンションプーリ42dが伝動ベルト42cから離れて主クラッチ「切」となるとともに、四輪ブレーキ作動ロッド106が引かれて操作アーム75aが前方に回動して四輪ブレーキ装置75がブレーキ作動する。この時、操作アーム75aの前方回動により、連結板105fが引かれてブレーキ解除アーム105dが仮想線の状態のように上動する。そして、テンションアーム105に設けた杆体105cは、ブレーキ解除アーム105d先端の折れ曲がった部分よりも上方に位置する。
【0046】
次に、クラッチ・ブレーキペダル33の前方踏み込み操作を止めるかもしくはクラッチ・ブレーキレバー34を後方に回動操作すると(または、変速レバー30を中立位置Nから前進域Fもしくは後進域Rで前後操作すると)、引っ張りスプリング105aの付勢力によりテンションプーリ42dが下動し伝動ベルト42cにテンションをかけて主クラッチ「入」となるとともに、四輪ブレーキ作動ロッド106が戻されて操作アーム75aが後方に回動して四輪ブレーキ装置75のブレーキが解除される。然し乍ら、テンションプーリ42dの下動にて伝動ベルト42cには直ちにテンションがかかり主クラッチ「入」となるが、四輪ブレーキ装置75はブレーキの構造上(ディスクブレーキの場合はブレーキ板の圧着をバネで外すのに多少時間がかかる。ドラムブレーキの場合はブレーキシューの圧着をバネで外すのに多少時間がかかる。何れにしろ、バネにて部材を圧接させたブレーキ作動を切るものであるので、多少の時間が必要となる。)直ちには作動がきれず徐々にブレーキが解除される場合がある。そこで、この実施例では、テンションプーリ42dが下動する時に、テンションプーリ42dと一体の杆体105cが下方に位置するブレーキ解除アーム105d先端の折れ曲がった部分に接当して、強制的にブレーキ解除アーム105dを上動した仮想線の状態から下動した実線の状態に回動させる。すると、ブレーキ解除アーム105dの下動にて連結板105fが引かれて操作アーム75aが強制的に後方回動し、四輪ブレーキ装置75は即座にブレーキが解除される。
【0047】
従って、主クラッチが「入」となる時には、四輪ブレーキ装置75のブレーキが強制的に即座に解除されるので、ブレーキが利いたまま発進してブレーキの寿命を短くしてしまうようなことが防止でき、適正な作業が行える。
また、クラッチ・ブレーキペダル33には、先端部が鍵状に形成されたロックアーム110が回動自在に設けられ、これがトルクスプリング111によって一定方向に付勢されている。これにより、クラッチ・ブレーキペダル33又はクラッチ・ブレーキレバー34を一定以上操作すると、ロックアーム110の鍵状部がロックピン112に係合し、クラッチ・ブレーキペダル33及びクラッチ・ブレーキレバー34がその操作位置のままに保持され、機体が停止状態に維持される。クラッチ・ブレーキレバー34の前側に設けられたロック解除レバー113をクラッチ・ブレーキレバー34側に引き寄せ操作すると、ロックアーム110がロックピン112から外れ、引っ張りスプリング105aの付勢力によりクラッチ・ブレーキペダル33及びクラッチ・ブレーキレバー34が通常位置に戻り、主クラッチ「入」となるとともに、四輪ブレーキ装置75のブレーキ作動が解除される。
【0048】
このように、ミッションケース10の右側に設けたクラッチ・ブレーキペダル33及びクラッチ・ブレーキレバー34の操作力は、ミッションケース10の前側に配置した回動軸112を経由して、ミッションケース10の左側に設けたベルト伝動装置42のテンションプーリ42dを作動させることにより、操作機構を簡略な構成とし、ステップ25の下側の限られた空間内に無理なく配置することができる。
【0049】
植付昇降レバー32の操作機構を図6及び図14に示す。植付昇降レバー32は操向ハンドル24の右下方に設けられていて、軸130を支点にして前後に回動可能になっている。植付昇降レバー32の回動は中継筒軸131を経由して、植付クラッチケース86及び後述する油圧バルブ176の各操作部へ伝達される。132は中継筒軸131に一体に取り付けられた操作位置決め用の植付昇降カムで、このカムにはローラ支持アーム133に回転自在に支持されたカムローラ134が当接している。ローラ支持アーム133は、スプリング135によってカムローラ134が植付昇降カム132に当接する側に付勢されている。これにより、植付昇降レバー32は、苗植付部を上昇させる「上げ」、苗植付部を下降させる「下げ」、苗植付部を自動昇降制御する「自動」、植付クラッチを切る「植付切」の各操作位置で安定して保持される。
【0050】
図6及び図15に示すように、ローラ支持アーム133とステアリングポスト137との間にリフト部材138が回動自在に設けられている。操向ハンドル24が一定角度以上操作されると、ステアリング軸139に取り付けられた山形カム140がピン141を押すことによりリフト部材138が回動する。すると、リフト部材の丸棒部138aがローラ支持アーム133を押し上げて、カムローラ134による植付昇降カム132の規制がなくなるので、スプリング142の張力により植付昇降レバー32が「上げ」まで回動する。したがって、操向ハンドル24を一定角度以上操作すると、苗植付部4が自動的に上昇する。
【0051】
また、図6及び図16に示すように、リフト部材138と前記前後進切替アーム92との闇にバックリフトアーム143が設けられている。変速レバー30が「後進」に操作されると、前後進切替アーム92がバックリフトアーム143のローラ143aを押し上げることにより、バックリフトアーム143を介してリフト部材138を回動させ、上記と同様に植付昇降レバー32が「上げ」まで回動する。したがって、変速レバー30を「後進」に操作すると、苗植付部4が自動的に上昇する。バックリフトアーム143が元に戻ろうとする復元力は変速レバー30の左右回動支点(軸90)の方向に作用し、変速レバー30が「後進」に操作された状態では上記復元力が前後進切替アーム102の外端面で受けられるので、変速レバー30を「前後進中立(PTO)」に戻す方向に力がかからず変速レバー30が「後進」の操作位置で安定する。
【0052】
バックリフトアーム143は回動支点軸144に摺動自在に支持されており、バックリフト解除レバー145を操作して前後にスライドさせられるようになっている。バックリフトアーム143を後方にスライドさせた状態では、バックリフトアーム143が前後進切替アーム92及びリフト部材138に対し前後位置がずれた状態となり、変速レバー30を「後進」に操作しても苗植付部4が上昇しない。
【0053】
昇降リンク装置3は、前記リンク支持フレーム16,16に側面視で互いに平行な上リンク170及び左右一対の下リンク171,171が回動自在に支持され、これら各リンクの後端部に連結枠172が枢結されている。連結枠172には苗植付部4から前方に突出するローリング軸173が挿入され、苗植付部4がローリング自在に連結されている。下リンク171,171と一体回動するスイングアーム174が設けられ、メインフレーム13,13に基部側が支持された油圧シリンダ175のピストンロッドが上記スイングアーム174に連結されている。油圧シリンダ175を伸縮させると、各リンクが上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。油圧シリンダ175を制御する油圧バルブ176は、機体右側部のステップ25下側に設けられている。
【0054】
苗植付部4は、伝動機構が内蔵された苗植付部フレーム180に、苗を載せて左右往復動すると共に各条ごとに苗送りベルト181a,…が苗を下方へ搬送して所定の苗取出口181b,…に一株づつ供給する苗載台181、前記苗敢出口181b,…に供給される苗を取り出して表土面に植え付ける5組の苗植付装置183,…、植付作業時に次行程における機体進路の左右中心を表土面に線引きする左右の線引きマーカ184,184、整地用のセンターフロート185及びサイドフロート186,186等が組み付けられている。
【0055】
苗植付部フレーム180は、図17及び図18に示すように、左右中心よりも右側に偏位して配置された入力ケース190と、該入力ケース190の右横に連結したギヤケース191と、該ギヤケース191から右方に延設された右フレームパイプ192Rと、該右フレームパイプ192Rの先端部に取り付けられた右植付伝動フレーム193Rと、前記入力ケース190の左横に連結した中央植付伝動フレーム193cと、核中央植付伝動フレーム193cから左方に延設された左フレームパイプ192Lと、該左フレームパイプ192Lの先端部に取り付けられた左植付伝動フレーム193Lと、左フレームパイプ192Lに取り付けた基部枠194とで構成され、該基部枠194に設けたローリング軸173で前記連結枠172に連結されている。苗植付装置183,…は、左右植付伝動フレーム193L,193Rの後端左右両側及び中央植付伝動フレーム193cの後端左側にそれぞれ設けられている。
【0056】
植付伝動フレーム193R,193C,193Lの前面部には蓋体193aが取り付けられ、この蓋体193aで苗載台支持フレーム181cの基部及び後記植付深さ調節パイプ206を支持している。これにより、植付伝動フレーム193R,193C,193Lの短縮化が図れるとともに、部品点数の削減と軽量化が可能となる。
【0057】
線引きマーカ184は、図19に示すように、植付深さ調節パイプ206に回動自在に嵌合する基部184aに起立・転倒可能に取り付けられている。そして、基部184aに固着した規制ピン184bを植付深さ調節パイプ206と一体のストッパプレート184cで回動規制している。これにより、線引きマーカ184は実線位置と二点鎖線位置との間で前後に回動可能である。作業時には実線位置にして、線引きマーカ184を地面に対して適正な角度に保持する。収納時には、後輪8,8との干渉を避けるため二点鎖線位置またはその近くまで回動させてフック184dで固定する。植付深さの違いによって線引きマーカ184の角度が変化するが、線引きマーカ184の回動範囲に遊びがあるので、線引きマーカ184を無理に曲げたりすることなく収納することができる。また、収納時の線引きマーカ184の位置が常に一定であるので、苗植付部4を後輪8,8に近づけてレイアウトすることができる。
【0058】
前記植付伝動軸88により走行車体側から伝達される植付動力は、入力ケース190内の入力軸195に入力され、さらに該入力軸からベベルギヤ装置196を介して、上記各ケース及びフレームパイプ内に回転自在に支承された植付駆動軸197に伝動される。そして、各植付伝動フレーム193L,193c,193R内に設けられたチェーン198,…により、各植付伝動フレームの後端部に回転自在に支承された植付装置軸199,…に伝動される。
【0059】
また、植付駆動軸197から、ギヤケース191内のギヤ装置201により、左右方向にリードカム軸202に伝動される。リードカム軸202は外周面に螺旋状の溝が形成された軸で、この溝にリードメタル203の爪が係合している。リードメタル203が取り付けられている横移動棒204は、軸方向に摺動自在に支持されており、その左右端部が苗載台181に連結されている。リードカム軸202が回転すると、リードメタル203の爪がリードカム軸202の溝に沿って移動することにより、横移動棒204及びこれと一体の苗載台181が左右往復動する。
【0060】
前記ギヤ装置201は、植付駆動軸197の回転を不等速にリードカム軸202に伝達して苗載台181の左右移動速度を調節する不等速伝動部201aと、ギヤ比が異なる複数組(図では2組)のギヤの組み合わせからなり、苗植付装置183が植付ける1株当たりの苗の量を調節するギヤ列式の苗取り量調節部201bとからなっている。
【0061】
植付駆動軸197の前方斜め少し下方には左右方向の植付深さ調節パイプ206が回動自在に設けられ、この軸に一体に取り付けたフロート支持アーム207,…の後端部に各フロート185,186,186が枢支されている。植付深さ調節レバー208を操作して植付深さ調節パイプ206を回動させることにより、各フロートの支持高さが変更し、苗の植付深さが調節される。センターフロート185は表土面の凹凸を検出するための接地体でもあり、植付作業時には、センターフロート185によって検出される表土面の凹凸に基づき、前記油圧バルブ176を駆動して苗植付部4を昇降制御し、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0062】
上記昇降制御の感度を調節する感度調節レバー37は、座席22の右側に設けられており、前後回動操作により感度を複数段階に調節するようになっている。感度調節レバー37は油圧バルブ176と左右同じ側に設けられているので、両者を連係させるワイヤの配索を簡略にできる。
【0063】
施肥装置5は、肥料タンク220L,220R内の肥料を肥料繰出部221,…によって一定量づつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料を施肥ホース223,…を通して施肥ガイド224,…まで移送し、該施肥ガイド224,…の前側に設けた作溝体225,…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
【0064】
最後に、機体前端部に装着された畦越えアーム350について説明する。
畦越えアーム350の基部は、機体前端部に設けた回動支持軸351に所定範囲で前後方向に回動自在に支持されており(図1の実線の状態と仮想線の状態との間で回動自在)、その上部には左右方向に延びる横杆352が溶接固定され、横杆352の左右端部には把持部353・353が設けられている。また、畦越えアーム350の上端部には、センターマスコット354の基部が回動支持軸355にて前後方向に回動自在に装着されている。
【0065】
従って、圃場で田植え作業を行う時には、畦越えアーム350を前方に回動させた図1の実線の状態にして、センターマスコット354を前後回動させて操縦者の最も見やすい状態に調節すると、前行程で線引きマーカ184にて機体進路の左右中心に表土面に線引きした線跡にセンターマスコット354を合わせて容易に直進植付作業が行えて作業性が良い。
【0066】
また、植付作業を終えて圃場から畦を越えて出る場合には、畦越えアーム350を前方に回動させた図1の実線の状態のままで、センターマスコット354を仮想線のように後方に回動させる。そして、操縦者は、機体から降りて機体前方に立ち機体が微速前進するように操作して、畦越えアーム350の把持部353・353を握り体重をかける。この畦越え時には、機体が前進して畦を越える為に、機体が前上がりになって機体重心が後方に移動し機体前部が浮き上がろうとするが、操縦者が畦越えアーム350の把持部353・353を握り体重をかけているので、この機体前部の浮き上がりを防止できて、転倒することなく安全に畦越えを行うことができる。尚、センターマスコット354は仮想線のように後方に回動させているので、畦越え時にセンターマスコット354が邪魔にならず作業性が良い。また、この畦越えアーム350は、機体のトラックに対する積み降ろし作業時に用いても同じように安全な作業が行える。
【0067】
そして、路上操向時や機体を納屋等に収納する場合には、畦越えアーム350及びセンターマスコット354を図1の仮想線に示すように機体前部に沿わせた後方に回動させた状態にしておくと、邪魔にならず路上操向が容易で、且つ、収納スペースも狭くて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】施肥田植機の側面図である。
【図2】施肥田植機の平面図である。
【図3】走行車体の一部を省略した平面図である。
【図4】ミッションケースの展開断面図である。
【図5】ベルト式変速装置の平面断面図である。
【図6】変速レバー及び植付昇降レバーの操作機構の正面図である。
【図7】変速レバーの操作機構の作用説明用斜視図である。
【図8】変速レバーのレバーガイドの作用を説明する平面図である。
【図9】変速レバーの操作機構の主要部の拡大側面図である。
【図10】電動モータの作動フロー図である。
【図11】主クラッチ及び四輪ブレーキ装置の操作を説明する作用説明用の側面図である。
【図12】クラッチ・ブレーキペダルのクラッチ・ブレーキペダル及びクラッチ・ブレーキレバーの操作機構の平面図である。
【図13】クラッチ・ブレーキペダルのクラッチ・ブレーキペダル及びクラッチ・ブレーキレバーの操作機構の側面図である。
【図14】植付昇降レバーの操作機構の側面図である。
【図15】図6のS1−S1断面図である。
【図16】図6のS2−S2断面図である。
【図17】苗植付部の一部を省略した平面図である。
【図18】苗植付部の要部の側面図である。
【図19】線引きマーカ等の側面図である。
【符号の説明】
1 施肥田植機
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 作業部(苗植付部)
5 施肥装置
7 車輪(前輪)
8 車輪(後輪)
10 ミッションケース
20 エンジン
22 座席
30 変速レバー
41 ベルト式変速装置
42d 主クラッチ(テンションプーリ)
75 ブレーキ装置(四輪ブレーキ装置)
95 レバーガイド
95a 移動ガイド
95g 連繋機構(操作ワイヤ)
N 中立位置
F 前進域
R 後進域
Claims (1)
- 車輪7・8への駆動を変速すると共に車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動操作する変速レバー30と車輪7・8を制動するブレーキ装置75とを設けた作業車両において、該変速レバー30のレバーガイド95に変速レバー30の操作経路を変更する移動ガイド95aを設けて、車輪7・8への駆動を変速する操作経路と車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路とに切替え自在に構成すると共に、車輪7・8への駆動を停止した状態で作業部4を駆動する操作経路への移動ガイド95aの切替え操作に起因して車輪7・8を制動するブレーキ装置75を作動させる連繋機構95gを設けたことを特徴とする作業車両。
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