次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は乗用型田植機(以下、単に「田植機」という)に適用している。以下の説明では方向を特定するために「前後」「左右」の文言を使用するが、これらの文言は前進方向を向いて着座したオペレータの向きを基準にしている。
(1).田植機の概要
まず、概ね図1〜図6を中心にして田植機の概要を説明する。図1及び図2から理解できるように、田植機は大きな要素として走行車体1と苗植装置2とを有しており、走行車体1は左右の前輪3と後輪4とで支持されている(後輪4には補助輪を取り付けることがある。)。苗植装置2はリンク機構を介して走行機体1の後部に昇降可能に連結されており、油圧シリンダでリンク機構を回動させることで苗植装置2が昇降する。
本実施形態の田植機は4条植であり、そこで、苗植装置2は、ロータリー式の4個の植付け装置5を有している。更に、苗植装置2は、4本の苗送りベルトを有する苗載台6、水平姿勢保持用のフロート7、枕地を均すための整地ロータ8、圃場に植付け用筋線を引くためのサイドマーカ9などを有している。
走行車体1は操縦エリアを有しており、この操縦エリアに、運転者が腰掛ける背もたれ付き座席10や、座席10の前方に配置された操縦ハンドル11が配置されている。座席10と操縦ハンドル11は走行車体1の左右中間位置に配置されている。操縦ハンドル11は、前後2つ割り式のボンネット12,13で覆われた操縦機構部14に設けている。また、座席10の前方で左右両側の部位には予備苗台15を設けており、座席10の後ろには施肥装置16を設けている。
例えば図5(A)や図20に示すように、走行車体1は、前後方向に延びる左右の角形鋼管製サイドフレーム18と、左右のサイドフレーム18をその前端寄り部位において連結したフロントフレーム19と、左右サイドフレーム18の後端に連結された左右長手のリアフレーム20とを有している。これらサイドフレーム18とフロントフレーム19とリアフレーム20とを主要部材として、走行車体1の車体フレーム(シャーシ)が構成されている。左右のサイドフレーム18には左右横長で外向きに突出した外向き枝フレーム21が溶接によって固着されており、2本の外向き枝フレーム21に予備苗台15が取り付けられている。
左右のサイドフレーム18の前端には左右のサイドブラケット22を介して丸棒製のパンバー(フロントバンパー)23が固定されており、このバンパー23の左右略中間部に、歩行操作用ハンドルの一例として、棒状のフロントハンドル24を水平回動自在に連結している。フロントハンドル24は、例えば畦超えのような急傾斜地の移動に際してオペレータが地面に降りて操作するものであり、先端部の下面部には人が握って回動させ得るレバー25を設けており、レバー25には、歩行操作用ワイヤーをチューブに挿通した歩行操作用索導管26が接続されている。
正確に述べると、歩行操作用ワイヤーの一端がレバー25の基端に接続されていて、チューブの一端はフロントハンドル24に固定したサポート材に係止されている。。レバー25を引くと走行機体1は低速で前進する。フロントハンドル24は不使用時には横向きの格納姿勢に回動させ、使用時には縦向きの姿勢にする。使用状態で人はフロントハンドル24に上から体重を掛けることがも可能である。フロントハンドル24は本実施形態の中核を成すが、これの説明は最後に行う。
サイドフレーム18は後半部が後傾姿勢となるように屈曲しており、概ね屈曲部の上方部に座席10を配置している。そして、例えば図4から理解できるように、側面視でサイドフレーム18における傾斜部の下方に位置した高さ位置にエンジン28が配置されており、エンジン28の手前でかつサイドフレーム18より低い位置には、走行変速装置を構成するミッションケース29が配置されている。座席10とエンジン28との間には燃料タンク30が配置されている。
エンジン28は、クランク軸が左右方向に延びる姿勢でかつシリンダボアは後傾した姿勢で配置されており、動力はプーリ及びベルト31で走行変速装置に伝達される。ミッションケース29の前部の左右側面にはフロントアクスル装置32が取り付けられており、フロントアクスル装置32で前輪3が回転自在に支持されている。エンジン28の後ろにはリアアクスルケース33が配置されており、リアアクスルケース33から左右に突出した後ろ車軸に後輪4を固定している。リアアクスルケース33には左右2本のリア支柱34が固定されており、リア支柱34とリアフレーム20とが固定されている。図1,2のとおり、走行車体1のうち人が載る部分は車体カバー35で覆われている。
(2).動力系統・操縦系統の概略
例えば図6,8から理解できるように、ミッションケース29は、大雑把には左右2つのシェル体を重ねてボルト群で締結した中空構造になっている。ミッションケース29のうち前部の側面部には左右の凸部29a,29bを設けており、この凸部29a,29bにフロントアクスル装置32が取り付けられている。
例えば図4から理解できるように、ミッションケース29とリアアクスルケース33とは中空角形のジョイント部材37で連結されている。エンジン28の前部はフロントブラケット材を介してジョイント部材37で支持されており、エンジン28の後部はリアブラケット材を介してリアアクスルケース33で支持されている。
ミッションケース29の後部の左側面には、無段変速機の一例としての静油圧式無段変速機(以下「HST」という)38がその入力軸39を左右横長の姿勢にした状態で取り付けられており、エンジン28からの動力は先ずHST38の入力軸39にベルト31で伝達される。そして、走行変速装置からの動力によって前輪3と後輪4とが同期して駆動され、また、苗植装置2と施肥装置16とは車輪3,4の回転に連動して駆動される。例えば図6,8から理解できるように、ミッションケース29の後面から走行ドライブ軸40が後ろ向きに延びており、後輪4の駆動動力は走行ドライブ軸40を介してリアアクスルケース33の内部に伝達されている。
図6,8に示すように、ミッションケース29の手前にはパワーステアリングユニット41を配置しており、パワーステアリングユニット41の上面には、側面視で緩い角度で後傾した中空のハンドルポスト42が固定されている。ハンドルポスト42の内部にハンドル軸が回転自在に配置されており、ハンドル軸の上端に操縦ハンドル11が固定されている。
パワーステアリングユニット41は、上部を構成するステアリング油圧モータ43と、ステアリング油圧モータ43の下端に固着されたステアリングギアボックス44とを有しており、ステアリングギアボックス44はフロントブラケット45を介してフロントフレーム19に固定されている。また、ステアリングギアボックス44はミッションケース29の前端部にもボルトで固定されている。詳細は省略するが、ステアリングギアボックス44の下面部には操舵アームが配置されており、操舵アームに連結した左右2本の操舵ロッド46(図6参照)がフロントアクスル装置32の前輪ギアケース47に連結されている。
図5に示すように、ハンドルポスト42の上部には板状のフロントプレート48が固定されており、このフロントプレート48に装着したフロントパネル(図示せず)にスイッチ類やキー類を設けている。また、ハンドルポスト42の左側面部には、走行モードを切り換えるための手動式の変速操作レバー49が前後方向に回動するように配置されている。フロントプレート48には、変速操作レバー49の位置(回動姿勢)を保持するガイド穴50が空いている。
変速操作レバー49には上下長手の変速ロッド51が連結されており、変速操作レバー49をガイド穴50に沿って動かすと変速ロッド51が上下動し、すると、ミッションケース29に内蔵したギアの噛み合いが変化して、走行機体1は、植付けモード、ニュートラル(停止)、後進、路上走行モードなどに切り換えられる。なお、ハンドルポスト42の右側には苗植装置昇降レバー52を配置している。
(3).走行変速装置の構造
次に、ミッションケース29に内蔵されたギア群を主要部材とした走行変速装置の変速態様を主として図7(動力系統図)に基づいて説明する。HST38の入力軸39はエンジン28の運転中は常時回転しており、ミッションケース29の右側面には入力軸39で駆動される汎用油圧ポンプ53を取り付けている。苗植装置昇降用油圧シリンダやパワーステアリングユニット41は汎用油圧ポンプ53で発生した圧油で駆動される。
HST38は走行油圧ポンプ54と走行油圧モータ55とを有しており、走行油圧ポンプ54は入力軸39で駆動され、走行油圧モータ55は走行油圧モータ54から送られた圧油で駆動され、かつ、走行油圧ポンプ54の圧油吐出量は可動斜板(流量制御板)の回動量によって調節され、その結果、走行油圧モータ55の出力を無段階に変化させることができる。例えば図11に示すように、HST38の上面から、可動斜板を回動させるための出力制御軸56が上向きに突出している。詳細は後述するが、出力制御軸56は、例えば図11に表示した変速ペダル57の動きに基づいて回転する。
本実施形態では、HST38と遊星歯車機構58とを組み合わせており、入力軸39に固定した第1ギア59の回転が遊星歯車機構58に伝達される割合を、走行油圧ポンプ54で調整するようになっている。従って、HST38の出力軸60を、静止状態を境に正転させたり逆転させたりすることにより、遊星歯車機構58の出力軸である第1回転軸61の回転をゼロから最大値まで無段階に変更できる。
第1回転軸61には中空の第2回転軸62が摺動自在で相対回転自在に被嵌しており、第1回転軸61の回転は走行クラッチ(走行クラッチ)63を介して第2回転軸62に伝達される。第1回転軸61及び第2回転軸62の手前部位には第3回転軸69が平行に配置されている。
第2回転軸62には主動ギア64の群が固定されている一方、第3回転軸69には従動ギア65の群がスライド可能に取り付けられており、従動ギア65の群と手動ギア64の群との噛み合いが変わる。後進は、第2回転軸62に固定されたギア(図示せず)にて、入力軸39上で回転するギアを駆動するバックアイドラ方式で行われる。第3軸69には後進用ギア66′を設けている。第3回転軸69には、スライド式摩擦板を有する多板式のブレーキ(ブレーキ)66を設けている。
第3回転軸69の動力はギア67,68を介して差動軸69に伝達される。差動軸69は中空構造であると共にデフケース70を有しており、デフケース70は差動軸69と一体に回転する。更に、差動軸69は右前輪駆動軸71に外側から嵌まっている。右前輪駆動軸71と同心で左前輪駆動軸72が配置されており、左前輪駆動軸72には、デフケース69に内蔵したデフギアを介して差動軸69の回転が伝達される。右前輪駆動軸71にはデフロック装置73を設けている。デフロック装置73を作動させると、左右前輪の差動状態が解除されて左右の前輪駆動軸71,72は完全に同期して回転する。
第3回転軸69の左端部にはベベルギア74が取り付けられており、ベベルギア74の対によって第3回転軸69の動力が後輪出力軸75に伝達される。後輪出力軸75には自在継手を介して走行ドライブ軸40が接続されている。ミッションケース29のうち入力軸39より後ろの部位には左右長手の第4回転軸76が軸支されており、第2回転軸62の回転が作業用主動ギア77とアイドルギア78と作業用従動ギア79とで第4回転軸76に伝えられる。
ミッションケース29の右側面のうち後部には、第4回転軸76の右端部が入り込む作業動力出力部80を突設している。作業動力出力部80には前後方向に延びる前後長手の作業動力出力軸81が軸支されており、第4回転軸76の回転はベベルギア82の対を介して作業動力出力軸81に伝えられる。作業動力出力軸81には自在継手を介して中間軸83が接続されている。
図4や図5に部分的に示すように、リアアクスルケース33の右端部近傍には株間調節装置を構成する株間ケース84が配置されている。図7で表示した中間軸83は株間ケース84の内部に入力される。株間ケース84の後面からは植付け駆動軸(PTO軸)85が突出しており、株間ケース84の上面からは施肥駆動軸86が突出している。図7では左右前輪駆動軸71,72を第3回転軸69の手前に表示しているが、例えば図12から理解できるように、実際には、左右の前輪駆動軸71,72は第3回転軸69の少し手前でかつ下方に配置されている。
(4).変速ペダル
次に、主として変速ペダル57の取付け構造を説明する。例えば図9に示すように、操縦エリアの右部分には、ブレーキペダル88と変速ペダル57とが左右に並んで配置されている。図10に示すように、変速ペダル57は、その後端部を中心にして前倒れ回動するようにヒンジ89を介して右サイドフレーム18の外向き枝フレーム21に取り付けられている。また、右サイドフレーム18のうち変速ペダル57の回動中心よりも少し前方の箇所には左右長手の第1軸受け筒90が貫通固定されており、この第1軸受け筒90に中間軸91を回転自在に挿通している。
中間軸91の右端部には、斜め上向きと斜め下向きの2つのアーム92a,92bを有するベルクランクレバー92が固定されており、ベルクランクレバー92の斜め下向きのアーム92bに引っ張りばね93の前端が接続されている。引っ張りばね93の後端は変速ペダル57を設けた枝フレーム21に接続されている。他方、ベルクランクレバー92における斜め上向きのアーム92aと変速ペダル57の先端寄り部位とが上補助リンク94を介して相対回動自在に連結されている。
従って、変速ペダル57を踏むと、上補助リンク94の押し作用によってベルクランクレバー92及び中間軸91は図10において時計回り方向に回動し、変速ペダル57から足を離すと、引っ張りばね93の引き作用によってベルクランクレバー92及び中間軸91が反時計回り方向に回動すると共に変速ペダル57は原姿勢方向に戻り回動する。
ベルクランクレバー92における斜め下向きアーム92bの先端には下補助リンク95が連結されている一方、変速ペダル57の手前に配置された枝フレーム21の後面にはチューブブラケット96が固定されており、チューブブラケット96に歩行操作用索導管26を構成するチューブの他端が固定されている。そして、歩行操作用索導管26に挿通された歩行操作用ワイヤー97の他端は下補助リンク95の下端に接続されている。
下補助リンク95はピン98でベルクランクレバー92の斜め下向きアーム92bに回動可能に連結されているが、下補助リンク95の上端に、ピン98よりも手前の位置において斜め下向きアーム92bに当たる規制部95aを設けており、このため、歩行操作用ワイヤー97が引っ張られるとベルクランクレバー92及び中間軸91が回動すると共に、変速ペダル57が加速方向に回動する。このため、例えば図5に示すフロントハンドル24のレバー25を人が地面に立って引くと、変速ペダル57を少し踏み込んだのと同じ状態が実現して走行機体1を低速で走行させることができる。
第1軸受け筒90にはストッパー用ブラケット99が固定されており、このストッパーブラケット99に、変速ペダル57の最大踏み込み角度を規制する第1ねじ99aと、ベルクランクレバー92の戻り姿勢を規制して変速ペダル57の原位置を規制する第2ねじ99bとを設けている。
(4).周面カム・ペダルセンサ
例えば図11に示すように、中間軸91の左端部には、請求項に記載した増幅手段の一例としての周面カム100が手前に延びる姿勢で固定されている。更に、中間軸91の手前でかつ左側の部位には左右長手の第2軸受け筒101が配置されており、この第2軸受け筒101に制御軸102が回転自在に挿通されている。第2軸受筒101はフロントサポート116(図18も参照)を介してフロントブラケット45に固定されており、フロントブラケット45は既述のとおりフロントフレーム19に固定されている(例えば図8参照)。
図11や図17(A)に示すように、制御軸102の右端部には正面視略L形のセンサブラケット103が溶接されており、センサブラケット103の下面板にペダルセンサ104が固定されている。ペダルセンサ104は左右横長で左右両端が露出したスイッチ軸105を有しており、スイッチ軸105の右端部には二股状の第1スイッチアーム106aが固定されて、スイッチ軸105の左端部には板状の第2スイッチアーム106bが固定されている。第2スイッチアーム106bには、第1スイッチアーム106aの長溝を挿通して右側に延びるスイッチバー106cが固定されており、スイッチバー106cが周面カム100に外周面に上から当接している。
図17(B)〜(D)に明示するように、センサブラケット103はペダルセンサ104の下方に突出した下向き張り出し部103aを有しており、この下向き張り出し部103aと第2スイッチアーム106bとに引っ張りばね107が接続されている。従って、両スイッチアーム106a,106bは、それらに設けたスイッチバー106cが周面カム100に上から当接する状態が保持されるように付勢されている。
図17(C)(D)はペダルセンサ104の機能を模式的に表したものであり、センサ本体の内部には、スイッチ軸105から放射方向に突出したドグ108が配置されていると共に、ドグ108を挟んだ両側に加速用スイッチ110と減速用スイッチ111とが配置されている。両スイッチ110,111は押されるとONになるリミットスイッチ(マイクロスイッチ)である(図17(A)に一点鎖線で示すように、2つのスイッチ110,111を並べて配置し、両スイッチ110,111に専用のドグ108を設けることも可能である。)。
従って、ペダルセンサ104の本体が動かない状態で周面カム100によってスイッチバー106cが上向きに押されると、スイッチアーム106a,106b及びドグ108が図17において時計回りに回動し、その結果、加速用スイッチ110はドグ108が当たってONになる。
逆に、ペダルセンサ104の本体が動かない状態で周面カム100が戻り回動すると、スイッチバー106cが引っ張りばね107で引かれることにより、スイッチアーム106a,106b及びドグ108が図17において反時計回りに回動し、その結果、加速用スイッチ110はドグ108によってONになる。周面カム100が動かずに停止している状態では、両スイッチアーム106a,106b及びドグは中立状態になっており、両スイッチ110,111はOFFになっている。両スイッチアーム106a,106bが回動し得る角度(スイッチアーム106a,106bがペダルセンサ104の本体に対して相対回動する角度)は任意に設定できるが、本実施形態では、中立状態を挟んで片側に回動する角度θを20°強程度に設定している。
周面カム100の外周にはスイッチバー106cが当たるカム面を形成している。すなわち、例えば図16に明示するように、回動軸心から近い順に、第1〜第4のカム面112〜115が連続して形成されている。周面カム100の回動軸心から放射方向に延びる線と各カム面112〜115とが成す角度α1〜α4を見ると、α1<α2<α3<α4の関係でしかもα1はゼロに近いほどに小さく、α4は90°に近いほどに大きい。
また、各カム面112〜115の周方向の長さは、第1カム面112はある程度の長さを有するが第2カム面113は非常に短く、かつ、第3カム面114と第4カム面115とは第1カム面112の1.5倍程度の長さに設定している。そして、スイッチバー106cが各カム面112〜115に当たっている状態での周面カム100の回動角度を見ると、第1カム面112にスイッチバー106cが当たっている状態で回動し得る角度β1と、第2カム面113にスイッチバー106cが当たっている状態で回動し得る角度β2とは僅か数度しかない小さい値であるのに対して、第3カム面114及び第4カム面115にスイッチバー106cが当たっている状態で回動し得る角度β3,β4は15°以上の大きい角度がある。
他方、スイッチバー106cはスイッチ軸105及び制御軸102の軸心回りに回動するが、スイッチバー106cが各カム面112〜115に当たった状態で回動する角度γ1〜γ4を見ると、第1カム面112に当たって回動する角度γ1は20°強であってθ(図17参照)と殆ど同じであり、第2カム面113に当たって回動する角度γ2は10°強であり、第3カム面114に当たって回動する角度γ3は20°程度であり、更に、第3カム面115に当たって回動する角度γ4は10°程度である。
これらβ1〜β4とγ1〜γ4との比較から、周面カム100が原状態から回動し始める初期(変速ペダル57の踏み込み初期:すなわち発進時)においては、周面カム100の(変速ペダル57の)僅かの回動によってスイッチアーム106a,106bとスイッチ軸105とが大きく回動し、発進してからは、周面カム100の回動角度に対するスイッチ軸105の回転角度の割合が1よりも小さくなっており、しかも、第3カム面114にスイッチバー106cが当たっている状態よりもスイッチバー106cが第4カム面115に当たっている状態のとき、周面カム100の回動角度に対するスイッチ軸105の回転角度の割合がより一層小さくなっている、という事実が判る(その意義は後述する。)。
(5).制御モータとその周辺の機構
例えば図18から良く理解できるように、フロントブラケット45の上面にフロントサポート116が固定されていてこれに第2軸受け筒101が固定されているが、フロントサポート116の左側端には前向き張り出し部116aを設けており、この前向き張り出し部116aに、平面視で前後長手の支持板119が2本のスペーサロッド120を介して固定されている。支持板119には、外周に多数の歯を形成した扇形ギア121が回転自在(回動自在)に取り付けられていると共に、電動式の制御モータ122が固定されている。扇形ギア121は中間軸91に固定されており、従って、中間軸91と扇形ギア121とペダルセンサ104とは一緒に回動(回転)する。
扇形ギア121はその歯が後ろ側に位置するように配置されており、制御モータ122に設けたギア(図示せず)と扇形ギア121の歯とが噛み合っている。従って、制御モータ122を正逆駆動すると扇形ギア121が正逆回転する。なお、扇形ギア121に代えて円形のギアを使用することも可能である。
図18(B)に示すように、扇形ギア121の付け根部のうち回動中心からある程度離れた部位には継手を介してHST制御ロッド125が連結されており、図11に示すように、HST制御ロッド125はHST38の方向に向けて後ろ向きに延びている。
他方、例えば図8,9に示すように、HST38の出力制御軸56には出力制御アーム126が締め付け固定されている。出力制御アーム126は略横向きの第1アーム部126aと略後ろ向きのアーム部126bとを有して平面視L形の外観を呈しており、横向きアーム部126aの先端にHST制御ロッド125がガイドピン127で相対回動可能に連結されている。従って、制御モータ122を正逆回転させると扇形ギア121が回動し、するとHST制御ロッド125が略前後方向に押し引きされ、これに伴って出力制御アーム126が回動してHST38の出力が変化する。
出力制御アーム126は平面視で時計回り方向に回転するとHST38の出力が高くなる。そして、HST制御ロッド125は長穴128を介してガイドピン127に嵌まっており、かつ、出力制御アーム126の横向きアーム部126aは第1ばね129で手前に引かれている。従って、HST38は第1ばね129によって出力を減じる方向に付勢されている。
HST制御ロッド125は長穴128を介してガイドピン127に嵌まっているため、HST制御ロッド125は、出力制御アーム126が第1ばね129で戻り回動し切った状態から更に後退し得る。逆に言うと、HST制御ロッド125が前進してもHST38が作動しない一種の遊び状態が存在する(このため、変速ペダル57の戻しに伴う走行クラッチ63の切りや、変速ペダル57の踏み込みに伴う走行クラッチ63の入りが走行停止状態で確実に行われる。)。
出力制御アーム126における後ろ向きアーム部126bには、スロットルワイヤー130の一端が連結されている(直接に連結しても良いし、引っ張りばねを介して連結しても良い。)。スロットルワイヤー130はスロットル索導管(図示せず)に挿通されており、スロットル索導管の一端図はミッションケース29に設けた受け部材(図示せず)に固定されている。そして、スロットルワイヤー130の他端はエンジン28スロットルレバー(図示せず)に接続されている。従って、出力制御アーム126が時計回りに回動すると、スロットルワイヤー130が引っ張られてエンジン28の出力は高くなる。すなわち、走行速度に比例してエンジン28の出力が高くなる。
(6).変速システムの説明
ここで、変速のシステムを説明しておく。図17(C)から理解できるように、変速ペダル57を踏み込むと周面カム100が増速方向(F1方向)に回動し、すると、ペダルセンサ104の本体は停止した状態でスイッチバー106cが押されることでスイッチアーム106a,106bが回動し、一緒にスイッチ軸105が回転する。すると、ドグ108の押圧によって加速用スイッチ110がONになり、すると制御モータ122が正転して扇形ギア121が正転し、これによってHST38は増速される。
制御モータ122がONになると中間軸91も一緒に回転し、このためペダルセンサ104も回転するが,変速ペダル57を踏み込み続けている間は、ペダルセンサ104の本体に対してスイッチアーム106a,106bが相対的に回動した状態が維持されているため、制御モータ122は正転し続け、走行車体1は加速し続ける。
そして、オペレータが変速ペダル57の踏み込みを止めると、周面カム100は回転を停止した状態で中間軸91は若干回転を続けて、それから加速用スイッチ110がOFFになり、制御モータ122は停止する。すると、両第スイッチアーム106a,106bがセンサブラケット103にばね107で引っ張られているため、スイッチバー106cは周面カム100の外周面に当った状態になっており、このため、両スイッチアーム106a,106bは中立状態に戻り回動する。オペレータが変速ペダル57を踏んだ状態を維持しつつ動きを変速ペダル57の踏み込み量を一定に保持すると、走行機体1は一定の速度で走行する。
オペレータが変速ペダル57から足を離す等して変速ペダル57が戻り回動すると、ペダルセンサ104の本体部は動きを停止した状態で周面カム100が回動し、すると、両スイッチアーム106a,106bは、ばね107の引っ張り作用により、図17(D)の矢印F2で示す方向に回動する。すると、スイッチ軸105がペダルセンサ104の本体部に対して相対的に回転して、ドグ108によって減速用スイッチ111がONになり、これによって制御モータ122が逆転してHST38は減速制御され、車速は減速する。
制御モータ122が逆転するとペダルセンサ104も中間軸91と一緒に戻り回動するが、変速ペダル57が戻り回動している状態ではスイッチ軸105はペダルセンサ104の本体部に対して相対的に回転した状態で維持されているため、減速用スイッチ111はONのままになって制御モータ122の逆転は続く。そして変速ペダル57の戻り回動が停止すると周面カム100の回転が停止するため、スイッチバー106cがペダルセンサ104の本体部に対して相対動することが周面カム100によって阻止され、その状態で制御モータ122が若干ながら逆転し続ける。
そして、スイッチ軸105は回転を停止した状態でペダルセンサ104の本体が回転することによって減速用スイッチ111はOFFになり、すると制御モータ122の停止してペダルセンサ104の回動も停止し、その結果、両スイッチアーム106a,106b及びスイッチバー106cとペダルセンサ104とは、両スイッチ110,111がOFFに維持された中立状態に保持される。
そして、変速ペダル57を戻し切ると、両スイッチアーム106a,106bやスイッチバー106cは中立状態に戻るが、本実施形態では、変速ペダル57が戻る終期において、概ね周面カム100の第2カム面113にスイッチバー106cが当たった状態で出力制御アーム126が戻り回動し切って走行が停止するように設定している。従って、変速ペダル57は、HSTの出力がゼロになって走行が停止してから更に僅かの角度ながら戻り回動するのであり、その状態では、スイッチバー106cは周面カム100の第1カム面112に当たっている。
発進に際しては、変速ペダル57を踏み込んでもスイッチバー106cが周面カム100の第1カム面112に当たっている状態では走行機体1は発進せず、スイッチバー106cが第2カム面113を超えたあたりで発進する。そして、変速ペダル57を踏み始めてからスイッチバー106cが周面カム100の第2カム面123に到るのはごく僅かの角度しかないため、実際には、変速ペダル57を踏むとすぐに発進するような状態になる。換言すると、制御モータ122による変速制御でありながら、変速ペダル57と出力制御アーム126とを直結しているのと同様の発進フィーリングを得ることができるのである。
(7).走行モード切り換え機構
既述のとおり、走行モードの切り換えは変速操作レバー49を前後回動させることで行われる。本実施形態では、高速走行(路上走行)モード、植付け走行(低速走行)モード、停止した中立位置(ニュートラル)、後進モードの4の状態に切り換えられる(苗継ぎモードのような他のモードを設けることも可能である。)。この操作系統を構成する部材を簡単に説明しておく。
例えば図9に示すように、ギア群のスライド操作は左右横長の変速操作軸132をその軸方向にスライドさせることで行われる。図14(A)及び図19に示すように、変速操作軸132はミッションケース29の左外側に露出しており、変速操作軸132の露出部に回動式の駆動アーム133が係合している。
他方、既述のように、変速操作レバー49には縦長ロッド51が連結されているが、図18(B)に示すように、縦長ロッド51の下端にはクランクレバー134を介して前後長手のクランク軸135の後端が連結されており、クランク軸135の前端に駆動アーム133が固定されている。従って、縦長ロッド51が上下動してクランク軸135がその軸心回りに回転し、すると、駆動アーム133が回動して変速操作軸132が軸方向にスライドし、これによってギア群の噛み合いが変化する。
クランク軸135は中間ブラケット136の前後側板に回転自在に取付けられており、中間ブラケット136は左右長手のパイプ製中間ステー137に溶接されていると共に、下部補助ブラケット138を介してパワーステアリングユニット41のステアリングギアボックス44にボルトで固定されている。更に、制御モータ122が固定されている支持板119は、上部補助ブラケット139を介して中間ブラケット136によっても支持されている。図19に示すように、既述の第1ばね129の前端は、中間ステー137に固定されて係止片140に引っ掛けられている。
(8).走行クラッチと変速ペダルとブレーキペダルとの関係
次に、ブレーキ操作機構とクラッチ操作機構とを説明する。まず、ブレーキペダル88の取付け構造を説明する。図14(A)(B)に示すように、ブレーキペダル88の基端部は左右横長の支持筒141の右端に固定されており、支持筒141は左右のブレーキブラケット142,143に回転自在に取付けられている。
従って、ブレーキペダル88は支持筒141の軸心回りに回動する。左右のブレーキブラケット142,右ブラケット143は中間ステー137に溶接で固定されている。図12に示すように、支持筒141にはねじりばね144が嵌まっており、ブレーキペダル88はねじりばね144で戻し方向に付勢されている。例えば図14(C)に示すように、ブレーキペダル88にはこれを効かせた状態に保持するサイドレバー145を設けている。
図12や図14(C)に示すように、ブレーキペダル88は支持筒141の下方に突出したはみ出し部88aを有しており、ブレーキ操作軸146の前端に固定されたブレーキアーム147とブレーキペダル88のはみ出し部88aとがコイル式のばね148を介して連結されている。ブレーキ操作軸146の前端はミッションケース29の手前に露出しており、この露出端部にブレーキアーム147の基端部(左端部)が固定されている。
図13(B)に明示するように、ブレーキ操作軸146の後端はブレーキ66の箇所まで延びており、後端部には、ブレーキ66を構成する摩擦板の群が密着するように押圧する接触部146aが設けられている。本実施形態では、ブレーキ操作軸151を正面視で時計回り方向に回転させると摩擦板が密着してブレーキが掛かる。敢えて述べるまでもないが、ブレーキ66の効き具合はブレーキペダル88の踏み具合によって調節される。
図12や図14(C)から理解できるように、ブレーキペダル88が固定された支持筒141の左端には上向きリンク149が固定されており、この上向きリンク149の上端にジョイントロッド150の前端がピン151で連結されている。この場合、図14(B)に明示すように、ジョイントロッド150の前端にピン151が嵌まるピン挿通穴152を設けるにおいて、ピン挿通穴152を前後長手の長穴にしている。このため、ジョイントロッド150を前進させ切った状態で、ブレーキペダル88を更に踏み込むことができる。
図14(B)に明示するように、ミッションケース29の上面部のうち前部でかつ右寄り部位にはクラッチ操作軸153が僅かに突出しており、このクラッチ操作軸153の突出端部にその左側に延びるクラッチアーム154を固定し、クラッチアーム154の先端部とジョイントロッド150の後端部とをピンで相対回動可能に連結している。
図12及び図13(A)に示すように、第3回転軸67の右端部には、走行クラッチ63を構成する可動クラッチ体(ボールクラッチ)155がスライド自在に配置されている。可動クラッチ155はばねで入り方向に付勢されており、かつ、可動クラッチ体155にはクラッチシフター156が平面視で相対回動するように連結されている。クラッチシフター156はその前端部を中心にして水平旋回するようにクラッチ操作軸153に固定されている。
従って、ブレーキペダル88を踏むと、ジョイントロッド150が前進してクラッチアーム159が平面視で時計回り方向に回動し、すると、クラッチシフター156も平面視で時計回り方向に回動して可動クラッチ体155が押し移動させられ、これによって走行クラッチ68が切りになる。
(9).変速ペダルと走行クラッチ・ブレーキ・他
例えば図12に示すように、変速ペダル57に連動して回転するセンサブラケット103とクラッチアーム154とが連動軸157で連結されている。すなわち、図12に示すように、クラッチアーム154は背板159aを有しており、この背板159aに連動軸157の後端がナット(ダブルナット)158及び座金で抜け不能に保持されている一方、図17(A)に明示するように、センサブラケット103の下向き張り出し部103aには、連動軸157の横向き前端部が差し込みによって連結されている。従って、変速ペダル57を回動に連動して連動軸157が前後動する。
連動軸157は、クラッチアーム154のうちジョイントロッド150の取り付け部よりも回動中心に近い部位に連結されている。連動軸157に固定したナット158は、クラッチアーム154における背板154aの後ろに位置している。従って、変速ペダル57の戻り切る終期において連動軸157が前進してクラッチアーム154が平面視で時計回り方向に回動して走行クラッチ63が切れるという機能は保持しつつ、クラッチアーム154はクラッチ入り姿勢のままで回動はせずに連動軸157のみが前進することが許容されている。
図14(A)に示すように、ミッションケース29の前面部のうち右側寄りの部分にはデフロックレバー160が回動自在に配置されている。デフロックレバー160の先端(自由端)にはデフロックワイヤー161の一端が接続されている。デフロックワイヤー161はチューブ(164:図6参照)に挿通しており、チューブ164の一端はミッションケース29の前面に固定したデフロックブラケット162に固定されている。従って、デフロックワイヤー161が引かれるとデフロック装置73が働く。
図4や図6に示すように、着座したオペレータの左足元近くにデフロックペダル163を設けており、デフロックワイヤー161の他端はデフロックペダル163に接続されている。
(10). 変速機構のまとめ
既述のとおり、オペレータが変速ペダル57を踏んだり戻したりすると周面カム100が回転し、この回転に応じて加速用スイッチ110又は減速用スイッチ111が選択的にONとなり、すると制御モータ122が正転又は逆転してHST38の出力とエンジン28の出力とが変化し、その結果、走行機体1の車速が変化する。
そして、オペレータが変速ペダル57から足を完全に離すと、変速ペダル57と制御軸102とは初期姿勢に戻る。すると、制御軸102が制御モータ122によって戻り回転し切る僅かに手前の段階で連動軸157のナット158がクラッチアーム154に後ろから当たることにより、クラッチアーム154がクラッチ切り方向に回動し、これによって走行クラッチ63が切れる。かつ、クラッチアーム154でジョイントロッド150が手前に押されて支持筒141が回転してブレーキペダル88が踏み込み方向に少し回転し、これにより、ブレーキアーム147が回動してブレーキ66が軽く効いた状態になる。
このように、変速ペダル57を戻し切るとブレーキペダル88が軽く掛かると共に走行クラッチ63が切れるため、オペレータは一々足(右足)を変速ペダル57の箇所から踏み替えてブレーキペダル88を踏まなくても、足は変速ペダル57の箇所においたままで変速操作レバー49を軽快に操作して走行モードを切り換えることができる。また、運転席を離れて他の作業を行うことも安全に行える。
変速ペダル57を戻し切った状態ではブレーキペダル88は軽く回動した状態になっており、従って、ブレーキペダル88は更に深く踏み込みできねばならない。この点、支持筒141に突設した上向きリンク149とジョイントロッド150とは長穴152を介して連結されているため、ジョイントロッド150を動かさずにブレーキペダル88を踏み込むことが許容されている。
発進のために変速ペダル57を踏み込むと連動軸157が後退するが、走行クラッチ63はばねで入り状態に付勢されているため、連動軸157が前進するとクラッチアーム154はクラッチ入り姿勢に回動して走行クラッチ63が入りとなり、かつ、ジョイントロッド150が後退するためブレーキペダル88はねじりばね144によって戻り回動し、これに伴ってブレーキ軸146がブレーキ解除方向に回転する。
さて、走行クラッチ63を入りにすると共にブレーキ66をOFFの状態にするには連動軸157をある程度の寸法だけ後退動させねばならず、そのためにはセンサブラケット103及び制御軸102をある程度の角度回転させねばならない。また、HST38は走行クラッチ63が入りになってから作動せねばならず、そのためには、走行クラッチ63が入りになってブレーキ66がOFFになってから、加速用スイッチ110がONになって制御モータ122が正転せねばならない。
従って、仮に制御軸102と変速ペダル57とが同じ角度ずつ回転すると、変速ペダル57をかなり踏み込んでから加速用スイッチ110がONになるように設定しておかねばならず、すると、変速ペダル57の踏み込みと走行機体1の発進とにタイムラグが生じて発進フィーリングが良くないおそれがある。
これに対して本実施形態では、図16(B)を参照して説明したように、変速ペダル57をごく僅かの角度踏み込んだだけでセンサブラケット103及び制御軸102が大きく回転するため、走行クラッチ63の入り及びブレーキ66の切りが確実になるように連動軸157を所定ストロークだけ後退させつつ、変速ペダル57を踏み込むのと殆ど同じタイミングでHSTを作動させて走行機体1を発進させることができる。従って、走行停止によって自動的に走行クラッチ63を切ると共にブレーキ66を効かせるという機能を阻害することなく、発進フィーリングを向上できるのである。
(11).フロントハンドルの取付け構造
次に、主に図20を参照してフロントハンドル24の取付け構造を説明する。フロントハンドル24の基端部には上下に開口した軸受け筒165が溶接で固定されている一方、バンパー23のおおよそ左右中間部の下面にはハンドルブラケット166が溶接で固定さており、ハンドルブラケット166に下向き突設した支軸167に軸受け筒165を嵌め込むと共に、支軸167の下面に受け板168がボルト169で固定されている。このため、フロントハンドル24は支軸167の軸心回りに水平旋回させることができる。
フロントハンドル24は、横向き姿勢と前向き姿勢とに選択的に保持される必要がある。この保持手段として本実施形態では、軸受け筒165の上部に平面扇形のストッパー板170を固定して、このストッパー板170に周方向に90度の間隔で第1ロック穴171と第2ロック穴172との2つのロック穴を設けている一方、ハンドルブラケット166には2つのロック穴171,172に選択的に嵌まるロックピン173を上下動自在に取付けている。
ハンドルブラケット166には上板174を有する受け部175が設けられており、ロックピン173は受け部175に貫通している。また、ロックピン173の上端には屈曲した操作部173aが曲げ形成されており、更に、ロックピン173のうち受け部175の内部に位置した部分にはばね176が嵌まっており、ばね176は座金177で下から支持されている。座金177はロックピン173に挿通したコッタピン178で下から支持されている。
ロックピン173は、操作部173a に指を掛けて上下スライドさせることでロック穴171,172に抜き差しすることができ、また、ロックピン173がロック穴171,172に嵌まるとその状態が保持される。フロントハンドル24の先端にはゴム質のグリップ179を嵌着している。図1に示すように、バンパー23の左右中間部には、マーカーブラケットを介して棒状のセンターマーカーが前後傾動可能に取付けられている。
(12).まとめ
既述のとおり、例えば畦超えのように急傾斜で人が地面に降りて田植機を動かす場合は、フロントハンドル24を前向き姿勢にしてレバー25を引いたり戻したりすればよい(横向き姿勢のままでも操作できる。)。レバー25を引くと変速ペダル57が初期踏み込み状態まで動いて、周面カム100はその第2カム面112にスイッチバー106cが当たる程度まで回動し、これにより、田植機は低速で走行する。前進・後進の切り換えは変速操作レバー49を操作することで行う。
そして、オペレータがレバー25から手を戻すと田植機は停止して走行クラッチ63が切れると共にブレーキ66が効くため、例えばオペレータが転倒しても安全である。また、フロントハンドル24に体重を掛けながらレバー25を小刻みに握ったり離したりすることにより、田植機のバランスを制御しながら慎重に動かすこともできる。更に、フロントハンドル24を握った手でレバー25を操作できることにより、レバー25の操作を極めて迅速に行うことができるため、田植機の停止も瞬間的に行えて安全性が高い。本実施形態ではレバー25はフロントハンドル24の下面部に配置しているため、グリップ179に上から手を当てて力を掛けることができ、従って、フロントハンドル24に体重を掛けて機体のバランスを取ることを容易に行える。
本実施形態では、変速ペダル57の動きは、上補助リンク94、ベルクランクレバー92、中間軸91、周面カム100、スイッチアーム106a,106b,スイッチバー106c,連動軸157といった部材を介して走行クラッチ63及びブレーキ66に伝えられる。
従って、これら上補助リンク94、ベルクランクレバー92、中間軸91、周面カム100、スイッチアーム106a,106b,スイッチバー106c,連動軸157等が請求項に記載した連係手段を構成しているが、歩行操作用ワイヤー97はこれらのうちの部材のいずれかに繋いでもよいのである。本実施形態では変速ペダル57とブレーキペダル88とが連動しているので、歩行操作用ワイヤー97をブレーキペダル88に繋ぐことも可能である。変速ペダル57に直接に接続することも可能である。なお、実施形態とは異なって、レバー25の引きによって走行停止となり、戻しによって走行するように設定することも可能である。
なお、本実施形態のように、ベルクランクレバー92に連結した下補助ブラケット95に歩行操作用ワイヤー97を連結すると、変速ペダル57の踏み込みによってベルクランクレバー92のみを回動させることができるため、通常の走行において歩行操作用ワイヤー97に引っ張りや弛みが生じることを防止できる利点がある。
さて、特許文献1では歩行操作具の倒れ回動でクラッチが切れるようになっているため、構造が非常に複雑である。これに対して本実施形態ではバンパー23を丸棒製としているため、バンパー23は非常に頑丈な構造になっており、しかも、頑丈な構造のバンパー23にフロントハンドル24を取付けているため、簡単な構造でありながらフロントハンドル24の取付け強度を向上できる。この点は本実施形態の利点であり、独立した発明たり得る。
(13).車体のフレーム構造に関する補足
図20に示すように、サイドフレーム18の外側に補助フレーム180を配置して、この補助フレーム180に昇降用ステップ181を取付けている。補助フレーム180の後部は上向きに立ち上がってから後ろに延びる上段部180aになっており、上段部180aの後端はリアフレーム20にブラケット182を介して固定されており、更に、上段部180aはリアフレーム20の手前に配置した横長の中間フレーム183にも固定されている。中間フレーム183は図示しない支柱を介してサイドフレーム18に連結されている。
また、左右サイドフレーム18の屈曲部の基端寄り部位には正面視門形のセンターフレーム184が固定されており、このセンターフレーム184に座席10等が取付けられている。センターフレーム184と中間フレーム183やリアフレーム20は前後長手の補助ステー195で連結されている。また、センターフレーム184の左右基端部にはサイドフレーム18の外側に延びる補助支持フレーム186が固定されており、補助支持フレーム186と中間フレーム183とが固定されている。
補助フレーム186の左右外側にはオペレータが乗り降りするに際して手を掛ける下向き開口U形のガードバー187が配置されており、ガードバー187はステップ181と補助フレーム182とに固定されている(補助フレーム182にはブラケット188を介して固定されている。)。
さて、田植機では昇降用ステップを設けているが、この昇降用ステップはサイドフレームのような構造材に横向き突設した部材に固定することが普通であり、また、手掛け用のガードバーは走行機体の肩部を構成するフレーム材に固定している。いずれにしても、構造が複雑化が複雑化する問題がある。
これに対して本実施形態では、車体カバー35等を支持する補助フレーム180を利用して昇降用ステップ181を取付けるものであるため、まず、昇降用ステップ181の取付け構造が簡単である。同様に、ガードバー187は昇降用ステップ181と補助フレーム180とに固定しているため、これも取付け構造が簡単である。
そして、補助フレーム180は中間フレーム183に固定されているため、いわば補助フレーム180の下段部と昇降用ステップ181とは中間フレーム183で吊り下げた状態になっており、このため、補助フレーム180と昇降用ステップ181とガードバー187とはしっかりと支持されて堅牢性が高い。