この発明の実施の形態を、以下のとおり説明する。
図1及び図2には、本実施の形態の苗移植機として、8条植の乗用型田植機の左側面図と平面図を示す。なお、本明細書では田植機1の前進方向に向かって左右をそれぞれ左、右と規定し、前後をそれぞれ前、後と規定する。
この田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右一対の前輪10,10が各々取り付けられている。
また、走行車体2は、前端部が、ミッションケース12の背面部に固着されたメインフレーム15を有すると共に、そのメインフレーム15の後部を構成する、走行車体2の左右方向に配置された基部フレーム100(図2)と、基部フレーム100の両端側から上方に向けて立ち上がり、昇降リンク機構3の前端側が連結される左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rを有している。
また、走行車体2の後部左右側には、左右一対の後輪11,11にエンジン20からの駆動力を伝動する伝動機構を収納する左側の後輪ギアケース200L、右側の後輪ギアケース200Rが配置されている。
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び主変速装置としての無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。そして、ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内の副変速装置571(図10)で、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。副変速装置571ではエンジン20からの前輪10,10及び後輪11,11への走行動力の出力が変更される。
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて左右一対の前輪10,10を駆動すると共に、残りの一部が第1伝動軸230Lを介して左側の後輪ギアケース200L、及び第2伝動軸230Rを介して右側の後輪ギアケース200Rにそれぞれ伝達されて、左右一対の後輪11,11を駆動する。
また、左側の後輪ギアケース200Lに伝達された走行動力の一部は、左側の後輪ギアケース200L内に設けられた整地クラッチ機構320(図6、図7)を介して、苗植付部4に取り付けられた整地ロータ27(第1整地ロータ27aと第2整地ロータ27bの組み合わせを単に整地ロータ27と言うことがある)へ伝動される。整地クラッチ機構320については、図7等を用いて後述する。
また、右側の後輪ギアケース200Rに伝達された走行動力の一部は、右側の後輪ギアケース200R内に設けられた施肥伝動機構420(図6、図8)を介して施肥装置5へ伝動される。施肥伝動機構420については、図8等を用いて後述する。
そして、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦席31が設置されている。操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に左右の前輪10,10を操向操作する旋回操作部材34が設けられている。
また、操縦席31の近傍には、無段変速装置23の出力を切り替える主変速切替操作部材16が設けられ、レバーガイド16a(図4)に沿って前後方向に回動操作することにより、無段変速装置23から出力する油圧を調整する斜板69(図29)の傾斜角度を変更するトラニオン軸295(図30)を回動させることができ、これにより無段変速装置23の出力が変更されて走行車体2の前後進(発進)、停止(中立)、増減速ができる構成としている。
主変速切替操作部材16の操作位置は、主変速切替操作部材16の基部に設ける主変速操作量検出部材16bによって検出される。主変速操作量検出部材16b(図5)によって検出される中立位置16aa(図4)からの操作量と操作方向に合わせて制御装置163により、図5で示すトラニオン軸電動モータ103で無段変速装置23のトラニオン軸295を回動させる構成である。トラニオン軸295の回動角度により斜板69の傾斜角度を変化させて無段変速装置23の出力を無段状に変更させることができる。なお、上記のトラニオン軸電動モータ103は、正転で前進側、逆転で後進側に作動するものである。
また、副変速切替操作部材17(図2)をレバーガイド17a(図4)に沿って回動操作することにより、副変速装置571が移動用の路上速(高速)の位置、作業用の植付作業速(低速)の位置、走行系統に伝動しない中立の位置の何れかに手動で切り替わる構成としている。副変速切替操作部材17の操作位置は、副変速切替操作部材17の基部に設ける、副変速操作位置検出部材17b(図5)によって検出される。
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は、水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
昇降リンク機構3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部の基部フレーム100に立設した背面視門形のフレームを構成する左右一対のリンクベースフレーム42L、42Rに回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部の間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
苗植付部4は8条植の構成とし、フレームを兼ねる植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し、苗を一株分ずつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載せ台(苗載置部)51、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具52aによって圃場に植付ける植付装置52等を備えている。
苗植付部4の下部には中央にフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらのフロート55、ミドルフロート57及びサイドフロート56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、ミドルフロート57及びサイドフロート56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付装置52により苗が植付けられる。
フロート55、ミドルフロート57及びサイドフロート56は、圃場表土面の凹凸に対応して前端側が上下方向に回動自在に取り付けられており、植付作業時にはフロート55の前部の上下動が、該フロート55の前側上部に設ける角度検出部材162により検出され、この検出結果に合わせて昇降油圧シリンダ46を制御する電磁油圧バルブ161(図5)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
施肥装置5は、肥料タンク60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でフロート55、ミドルフロート57及びサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体64によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成となっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバー59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧によって搬送する構成となっている。
また、苗載せ台51は、左右方向にスライドする構成であり、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38,38が設けられている。
図3には、図1に示す乗用型田植機の左右の前輪10,10の操向構成を示した斜視図を示す。旋回操作部材34により左右の前輪10,10が操向操作される部分の構成について説明する。
旋回操作部材34は、フロントカバー32内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース12内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速されて出力軸174に伝動される。そして、出力軸174の下端は、ミッションケース12底面から突出してピットマンアーム175が固定されている。該ピットマンアーム175の前部左右側と左右の前輪ファイナルケース13,13とは、左右のロッド176,176(図1)により連結されている。
従って、旋回操作部材34を回動操作すると、ステアリング軸、ステアリング変速歯車、出力軸174、ピットマンアーム175、左右のロッド176,176、左右の前輪ファイナルケース13,13へと伝達されて、左右の前輪10,10が左右に操向操作される。
一方、ピットマンアーム175の後部上面には、作動ローラ177が回転自在に設けられており、この作動ローラ177の左右両側を包囲する、平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部178を有する従動体179が、ミッションケース12の底面に回動自在に支持されている。
そして、従動体179の左右両側部には、左右の後輪11のサイドクラッチ軸586,586(図10)の左右サイドクラッチ87,87を操作する左右サイドクラッチ操作アーム86,86に連結された左右ロッド180,180の前部が連結されている。なお、常時、左右のサイドクラッチ87,87は入りの状態である。
従って、旋回操作部材34を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量、例えば、200度)以上右に回すと、ピットマンアーム175も右に回動し、作動ローラ177が(ハ)方向に回動し従動体179の切欠き部178の左側面178aを押すべく、従動体179を(ニ)方向に回動させ右ロッド180を引き、右サイドクラッチ操作アーム86が操作されて右サイドクラッチ87が切れる。
これら旋回操作部材34、出力軸174、ピットマンアーム175、作動ローラ177、従動体179、ロッド180、クラッチ連動用のサイドクラッチ操作アーム86などをステアリング機構Sと言う。旋回中心側の右後輪11が遊転状態となるので、右後輪11が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒らしてしまうことがなく、右旋回を円滑に行うことができる。
逆に、旋回操作部材34を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム175も左回動し、作動ローラ177が(ハ)と反対方向に回動し、従動体179の切欠き部178の右側面178bを押すべく、従動体179を(ニ)と反対方向に回動させ、左ロッド180を引き、左サイドクラッチ操作アーム86が操作されて左サイドクラッチ87が切れ、旋回中心側の左後輪11が遊転状態となるので、左後輪11が耕盤を傷めることが防止されると共に、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒らすこともなく、左旋回を円滑に行うことができる。
上記のとおり、旋回時には、旋回外側のサイドクラッチ87は入状態が維持されるが、旋回内側のサイドクラッチ87のみ切状態とすることができる。
図4(a)には、表示パネル80の平面図の例を示し、図4(b)には、操作パネル70の平面図の例を示す。また、図5には、図1の田植機1の制御装置163のブロック図を示す。
そして、本実施形態の田植機1では、フロントカバー32上部の旋回操作部材34近傍に各種スイッチ、ボタン、ダイヤル等を配置した操作パネル70を設け、更に操作パネル70の上に、田植機1の運転操作位置や、作業、操作制御状態等の作業情報を表示する表示パネル80を設けている。
図4に示すとおり、操縦席31から見て右側には主変速切替操作部材16が、左側には副変速切替操作部材17が配置され、その下側には各畦クラッチ(図示せず)を入切する畦クラッチスイッチ82が配置されている。畦クラッチスイッチ82は、左側に1条及び2条の畦クラッチスイッチ82aと3条及び4条の畦クラッチスイッチ82bが、右側に5条及び6条の畦クラッチスイッチ82cと7条及び8条の畦クラッチスイッチ82dが配置されている。
また、副変速切替操作部材17のガイド17aの右側には、旋回に合わせて苗植付部4の作動と昇降及び施肥装置5の作動が自動で行われる旋回連動モードを入り切りする旋回連動スイッチ90があり、旋回連動スイッチ90の上側には、植え始め調整ダイヤル92や整地ロータの高さ調整ダイヤル94などが配置されている。
また、表示パネル80のモニタ83上側の「植える」は植付クラッチケース25内の植付作動入切部材25aが入りの時に点灯し、旋回連動ランプ84は、前記旋回連動モードが入りの時に点灯する。該植付作動入切部材25aの入切状態は、植付作動検出部材25abによって検出されるものとする。また、旋回連動ランプ84は、一例として、「ターン」と表示する。更に、畦クラッチが切りの時や施肥装置5からの肥料の詰まりや肥料切れの時に点灯するランプ等を設けている。
旋回連動スイッチ90により旋回連動モードにすると、旋回連動機構Tが機能する。旋回連動機構Tとは、具体的には旋回操作部材34が操作されて旋回走行が始まると、制御装置163により電磁油圧バルブ161を切り替えて昇降油圧シリンダ46を縮めて苗植付部4を上昇させる。そして、後輪シャフト341に設ける左右の後輪回転センサ205,205の回転数差のカウントが開始されると共に、旋回操作部材34が旋回終了側に操作されてから左右の後輪回転センサ205,205の回転数差が一定値未満になると、制御装置163により電磁油圧バルブ161を切り替えて、昇降油圧シリンダ46を伸ばして苗植付部4を下降させると共に、左右の後輪回転センサ205,205の回転数が所定回転数に到達すると植付作動入切部材25aを入状態にする機構である。以下において、さらに詳述する。
まず、作業者が旋回操作部材34を左右何れかに200度回転操作すると、(旋回操作部材34は左右に最大360度〜400度回転する)旋回走行が始まる。旋回開始タイミングは旋回操作部材34の旋回方向検出部材193の検出結果に基づき、制御装置163が算出する。また、旋回方向検出部材193は、旋回操作部材34の操向角度のみならず旋回方向も検出することができる。なお、旋回方向検出部材193は、旋回操作部材34のステアリング軸に設けるポテンショメータとする。
そして、旋回走行が始まると、制御装置163から信号が出力されて電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイド(図示省略)を制御して苗植付部4を上昇させ、植付クラッチモータ24を切り側に作動させて植付作動入切部材25aを切りにする。また、前記ステアリング機構Sにより、ミッションケース12に内装される、左右のサイドクラッチ87,87(図10)のうち、旋回内側のサイドクラッチ87が切れる。
そして、左右の後輪回転センサ205,205の回転数差のカウントが開始されると共に、旋回操作部材34が旋回終了側に操作されてから旋回内側のサイドクラッチ87が入りとなって左右の後輪回転センサ205,205の回転数差が一定値未満になると、制御装置163が電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して、苗植付部4を下降させると共に、左右の後輪回転センサ205,205の回転数が所定回転数に到達すると植付クラッチモータ24を入り側に作動させて植付作動入切部材25aを入りにする。
植付作動入切部材25aが入状態になることで、全植付条の苗植付具52aが作動すると共に、苗載せ台51も左右移動を開始し、苗載せ台51の左右移動端では全植付条の苗送りベルト51bが作動する。伝動機構としては、植付作動入切部材25aから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動され、苗植付部4内において各畦クラッチを介して各々対応する苗植付具52aへ伝動され、苗植付部4内において各苗送りクラッチ(図示せず)を介して各々対応する苗送りベルト51bへ伝動される。上記のとおり、苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けが開始される。
なお、施肥装置5も上記苗植付部4の昇降に連動して作動するが、その構成については後述する。
次に、図6及び図7を用いて、ミッションケース12側から伝動される駆動力の、左側後輪ギアケース200Lにおける伝動構成について説明する。図6は、ミッションケース12、左側後輪ギアケース200L、及び右側後輪ギアケース200Rにおける伝達構成を示した概略平面図であり、図7は図6の左側後輪ギアケース200Lの拡大図である。なお、図6及び図7において、走行車体2の前側、後側、左側、及び右側をそれぞれ矢印F、B、L、及びRで表した。後述する図8においても同様である。
図6及び図7に示す通り、第1入力軸321Lを含む整地クラッチ機構320には、ミッションケース12側から第1伝動軸230Lを介して第1入力軸321Lに動力が伝達される。その動力は、第1入力軸321Lの後端側の第1傘歯車321aLから、第2傘歯車330Lが固着されている第2回転軸340Lに伝動され、第2回転軸340Lに固着された小径ギア331Lを介して、大径ギア332Lに伝達されることにより、左側後輪シャフト341Lが回動する構成である。
次に、整地クラッチ機構320による、ロータ伝動軸301への駆動力の入り切りの構成について説明する。
整地クラッチ機構320は、第1入力軸321Lと、その第1入力軸321Lに摺動自在にスプライン接続された整地ロータ入切クラッチ322と、整地ロータ入切クラッチ322を第1傘歯車321aL側に常時付勢する付勢スプリング323と、付勢スプリング323による付勢力に対抗して整地ロータ入切クラッチ322の鍔部322aを押す突起部324aLを先端に備え、図7に示すとおり、第1入力軸321Lの軸方向に沿って矢印E方向に整地ロータ入切クラッチ322をシフトさせる切替シフタ324Lと、第1入力軸321Lに遊嵌し、整地ロータ入切クラッチ322の第1傘歯車321aL側に設けられた第1ギア325を備えている。
そして、整地ロータ入切クラッチ322の第1ギア325側の面には第1クラッチ爪322bが複数形成されており、第1ギア325の整地ロータ入切クラッチ322側の面には、第1クラッチ爪322bと嵌合するべく第2クラッチ爪325aが複数形成されている。そして、第1ギア325の回動による伝動力が、チェーン311を介して、ロータ伝動軸301に固着されている第2ギア312に伝達される。これにより、整地ロータ27側に駆動力が伝達される。
また、切替シフタ324Lの根元部324b側は、昇降リンク機構3の走行車体2側に設けられた、ロッドやワイヤー、スプリング等で構成される切替連動機構326aに接続されている。機体の旋回時や後進時、または作業者の操作によって苗植付部4が上昇するとき、昇降リンク機構3が所定高さまで上方移動すると、切替連動機構326aが切替シフタ324Lを操作し、整地クラッチ機構320を切状態にする。これにより、苗植付部4が上昇する際に整地ロータ27の駆動を停止させることができる。
また、上記のとおり、整地ロータ27側に駆動力を伝達するロータ伝動軸301を機体の内側に配置すれば、該ロータ伝動軸301が左側後輪ギアケース200Lよりも機体内側に位置し、該左側後輪ギアケース200Lよりも機体外側に位置する左側の後輪11から離間した位置に配置されるので、後輪11の回転によって跳ね上げられる泥土が左側後輪ギアケース200Lに受けられ、ロータ伝動軸301に飛散しにくくなり、ロータ伝動軸301のオイルシールの損傷が防止される。
左側後輪ギアケース200L内には、内部のギア機構用の潤滑油が封入されており、ロータ伝動軸301が突出する箇所はオイルシールが設けられている。このオイルシールが破損すると、ロータ伝動軸301の回転に伴い潤滑油が外に出てくるおそれがあるが、上記構成により潤滑油が漏れ出しにくくなっている。
また、ロータ伝動軸301を左側後輪ギアケース200Lの下方に配置してもよい。これにより、左側後輪ギアケース200Lの下方の整地ロータ27の作動時の高さと近くなり、駆動力の伝達ロスを防ぐことができる。
一方、ロータ伝動軸301を左側後輪ギアケース200Lの上方に配置してもよい。これにより、ロータ伝動軸301に泥土が飛散しにくくなるので、泥土の影響でオイルシールが破損することが防止され、ロータ伝動軸301の耐久性が向上する。
次に、図6、図8を用いて、ミッションケース12側から伝動される駆動力の、右側後輪ギアケース200Rにおける伝動構成について説明する。図8は、右側後輪ギアケース200Rの内部における駆動力の伝達構成を示す概略平面図である。
図6に示す通り、施肥伝動機構420においては、ミッションケース12側から第2伝動軸230Rを介して第2入力軸321Rに動力が伝達される。その動力は、第2入力軸321Rの後端側の第1傘歯車321aRから、第2傘歯車330Rが固着されている第2回転軸340Rに伝動され、第2回転軸340Rに固着された小径ギア331Rを介して、大径ギア332Rに伝達されることにより、右側後輪シャフト341Rが回動する構成である。
次に、施肥伝動機構420による、施肥伝動部材401への駆動力の入り切りの構成について説明する。
施肥伝動機構420は、第2入力軸321Rと、該第2入力軸321Rに摺動自在にスプライン接続された施肥伝動入切部材422と、施肥伝動入切部材422を第1傘歯車321aR側と反対側に常時付勢する施肥付勢スプリング423と、施肥付勢スプリング423による付勢力に対抗して施肥伝動入切部材422の施肥鍔部422aを押す突起部324aRを先端に備え、図8に示すとおり、第2入力軸321Rの軸方向に沿って矢印E方向に施肥伝動入切部材422をシフトさせる切替シフタ324Rと、第2入力軸321Rに遊嵌し、施肥伝動入切部材422の第1傘歯車321aR側の反対側に設けられた第3傘歯車425を備えている。
そして、施肥伝動入切部材422の第3傘歯車425側の面には第3クラッチ爪422bが複数形成されており、第3傘歯車425の施肥伝動入切部材422側の面には、第3クラッチ爪422bと嵌合すべく第4クラッチ爪425aが複数形成されている。
さらに、切替シフタ324Rの根元部324bRは、施肥装置5の駆動力を切り替える施肥伝動アクチュエータ426aにケーブル427を介して連結されており、苗植付部4の昇降に連動して、施肥伝動アクチュエータ426aにより施肥伝動入切部材422を切り替える構成である。
制御装置163により、苗植付部4の昇降に合わせて植付クラッチモータ24が作動すると共に、植付クラッチモータ24の作動に合わせて施肥伝動アクチュエータ426aが作動する構成とする。但し、苗植付部4が下降しているとき(植付作業時)は、図5で示すとおり、施肥伝動スイッチ428で施肥伝動アクチュエータ426aを入切し、苗の植付と施肥を独立して行う構成とする。
施肥伝動アクチュエータ426aにより切替シフタ324を一方側、即ち図8の右側に切替操作すると、施肥伝動入切部材422が同じ方向、即ち図8の右側に切り替えられ、これにより第3クラッチ爪422bと第4クラッチ爪425aの嵌合が外れるので、入力軸321の回動による駆動力は、第3傘歯車425には伝動されなくなる。従って、施肥装置5側に駆動力が伝達されなくなる。
一方、図8に示すとおり、施肥伝動アクチュエータ426aにより切替シフタ324を他方側、即ち図8の左側に切替操作すると、施肥伝動入切部材422が同じ方向、即ち図8の左側に切り替えられ、第3クラッチ爪422bと第4クラッチ爪425aが嵌合するので、入力軸321の回動による駆動力が第3傘歯車425に伝動される。そして、第3傘歯車425の回動による伝動力が施肥伝動部材401に固着されている第4傘歯車412に伝達される。これにより、施肥装置5側に駆動力が伝達される。
なお、右側の後輪ギアケース200Rと左側の後輪ギアケース200Lの配置は左右を入れ替えてもよく、右側の後輪ギアケース200Rに整地クラッチ機構320を設け、左側の後輪ギアケース200Lに施肥伝動機構420を設けてもよい。
そして、田植機1では、旋回連動機構Tが機能する旋回走行時に、角度検知部材162によってフロート55の前後全域が圃場面に接地している、とみなし得る角度であることが検出されると、施肥装置5の施肥伝動アクチュエータ426aにより、施肥伝動入切部材422が入状態に切り替えられて、施肥装置5が駆動することを特徴としている。また、施肥伝動入切部材422が入状態になるとブロア用電動モータ53も同時に作動することにより、肥料の搬送風を発生させ、肥料の搬送能率が向上する構成としている。
さらに、角度検知部材162によってフロート55が圃場面から離間していることが検出される、即ち接地が検出されないときは、施肥伝動アクチュエータ426aにより施肥伝動入切部材422が切り状態になり、ブロア用電動モータ53が連動して作動すると共に、施肥装置5が駆動しない構成とすることも可能である。このときのフローチャートを図9に示す。
角度検知部材162によってフロート55が圃場面に接地していることが検出されると、その時点における施肥駆動の入切状態を判断し、施肥装置5が作動しているときにはそのままの状態を保持する一方、施肥装置5が作動していないときには、駆動を切り替えて施肥伝動アクチュエータ426aを作動させる。
また、角度検知部材162によってフロート55が圃場面に接地していることが検出されない、即ち離間が検出されるときは、その時点における施肥駆動の入切状態を判断し、施肥装置5が作動しているときは駆動を切り替えて停止させる。一方、施肥装置5が作動していないときは、そのままの状態を保持する。施肥駆動の入切状態は、施肥伝動入切部材422に施肥伝動入切部材422の入切状態を検出するセンサ(図示省略)を設けることや、施肥伝動スイッチ428の入切状態によって判断する構成とする。
角度検知部材162によってフロート55が圃場面から離間したとみなす角度としては、例えば、フロート55の前後全域が圃場面に接地しているときを±0度(基準値)として、−3〜5度以上とすれば良い。尚、フロート55の上下回動支点がフロート後部にあるため、この角度は、フロート55の前端が基準値から下がるとマイナス、上がるとプラスという考え方で表している。
フロート55が圃場面から離間したことを角度検知部材162により検出すると施肥装置5が停止することにより、苗植付部4が上昇を開始すると施肥装置5からの肥料の供給が停止するので、圃場面から離間した位置で肥料が放出されることが防止され、肥料の余計な拡散が防止される。
また、フロート55が接地状態となったことを角度検知部材162により検出すると、施肥装置5が作動する構成としたことにより、旋回後の苗の植付開始に先行して施肥装置5を作動させ、肥料の繰り出しを始めさせることができるので、旋回後の苗の植付開始時に肥料が圃場に供給される。従って、肥料が供給されない区間の発生が防止される。また、フロート55が接地した状態で肥料が供給されるため、空中にまかれてしまうこともない。
そして、本実施形態の田植機では、苗植付部4の上昇時における施肥装置5の作動停止に関しては、角度検知部材162によらずに、植付作動入切部材25aの入切を検出する植付作動検出部材25abによって植付作動入切部材25aの切状態が検出されると、施肥伝動アクチュエータ426aが切状態となって施肥装置5の作動が停止する構成であることを特徴としている。
植付作動入切部材25aが切りとなった植付装置52の停止後に施肥装置5を停止させることにより、施肥装置5の施肥ホース62から圃場面に移動中の肥料を苗植付部4が最大位置に上昇する間に圃場に供給することができるので、旋回後の肥料供給開始時に必要以上に肥料が供給されることが防止され、余分な肥料の供給が防止される。
また、苗植付部4の下降時には、上述のとおり、角度検知部材162によりフロート55が接地状態となったことが検出されると施肥装置5が作動することで、肥料が供給されない区間の発生や、肥料が空中で撒かれて拡散することが防止される。
これらの制御は制御装置163によって行われるが、苗植付部4の上昇時における施肥装置5の作動停止を、角度検知部材162により検出される結果に基づくか、植付作動検出部材25abにより検出される結果に基づくかについては、図4に示す、操作パネル70に設けた選択スイッチ432により作業者が作業条件や圃場条件等に応じて選択できる。選択スイッチ432を左側に操作すると、角度検知部材162により検出される結果に基づき、右側に操作すると、植付作動検出部材25abにより検出される結果に基づく構成としている。
そして、上述のとおり、施肥伝動機構420及び施肥伝動部材401を左右一側の後輪ギアケース200(図示例では、右側後輪ギアケース200R)に設けており、植付クラッチケース25及び植付伝動軸26を介する苗植付部4への植付伝動機構から独立した施肥伝動機構を構成している。
すなわち、施肥装置5の駆動の入切を独立して行うことができるので、植付装置52の入切に関係なく肥料供給の開始や終了を操作できるので、余分な肥料を供給することや、肥料が供給されない区間の発生が防止される。
尚、施肥伝動機構420を入切操作する施肥伝動スイッチ428を操作パネル70に設けており、作業者が施肥伝動スイッチ428を押すことで、施肥伝動アクチュエータ426aにより施肥装置5を作動させることもできる。
そして、施肥伝動スイッチ428の入切操作や角度検知部材162による検出結果や植付作動検出部材25abによる検出結果等に基づき、施肥伝動アクチュエータ426aが作動して施肥伝動機構420の入切を行うことにより(施肥伝動機能)、施肥伝動機構420の入切が容易に自動化されるので、作業能率が向上すると共に、施肥装置5の入切が確実に行われる。
そして、図6に示すとおり、施肥装置5側に駆動力を伝達する施肥伝動部材401を機体の内側、すなわち右側後輪ギアケース200Rを基準にして後輪11を設ける側の反対側に配置することで、後輪11の回転によりよって跳ね上げられる泥土が右側後輪ギアケース200Rの機体外側面に受けられるので、施肥伝動部材401には泥土が付着することが防止される。
一方、施肥伝動部材401を機体の外側に配置、すなわち施肥伝動部材401を右側後輪ギアケース200Rを基準として後輪11側(右側)に配置することで、作業者が後輪11側、すなわち機体外側から施肥伝動部材401やその部材周辺のメンテナンスを行いやすくなるので、メンテナンス作業性が向上する。
また、施肥伝動部材401を右側後輪ギアケース200Rの上方に配置することにより、走行車体2に配置する施肥装置5の繰出部61までの距離を短くすることができるので、駆動力の伝動ロスを抑えることができる。
また、施肥伝動アクチュエータ426aを右側後輪ギアケース200Rの上方で、且つフロアステップ35の下方に配置すると、後輪11の回転により跳ね上げられる泥土が施肥伝動部材401まで届きにくくなり、施肥伝動部材401に泥土が付着することが防止される。
また、昇降リンク機構3の下リンク41にロッド(図示せず)を取り付け、ロッドを、ケーブル427を介して切替シフタ324Rの根元部324bRと接続し、施肥伝動入切部材422の入切操作を行う機能を持たせてもよい。
さらに、施肥伝動部材401に手動操作部材426を装着し、手動で肥料の繰り出しが可能な構成としてもよい。図8では、右側の後輪ギアケース200Rの機体内側(すなわち左側)に施肥伝動部材401が突出する構成を示しているが、施肥伝動部材401を右側の後輪ギアケース200Rの機体外側(すなわち右側)に突出させて、この突出部に手動操作部材426を装着すると、施肥装置5の肥料の供給を手動で作動させることができる。
施肥装置5が供給する肥料は、作業者が圃場の成分や栽培する作物に合わせて変更するが、肥料は成分の違いにより比重が異なる。これにより、施肥装置5の肥料の供給量の設定が同じであっても、実際に供給される肥料の量が、設定に比べて多くなる、あるいは少なくなることがあり、圃場への肥料の供給量の過不足が発生することがある。これを防止するには、圃場内での苗の植付作業前に施肥装置5を作動させ、所定時間内の施肥装置5から放出される肥料の量を確認する、所謂「試し繰出し」作業を行い、肥料の供給量を作業条件に適した量に設定しておく必要がある。
一方、施肥装置5は、苗植付部4が駆動していないと駆動しない構成であるので、「試し繰出し」作業を行う際、苗を苗植付部4に載せる前に行うか、一旦苗植付部4から苗を下ろす必要があり、余分な作業時間を費やす問題がある。また、苗が苗植付部4に載っていると、試し繰出しの際に苗が掻き取られ、苗が余分に消費されてしまう問題がある。さらに、エンジンを作動させる必要があるので、余分な燃料が消費され、燃費が低下する問題がある。
しかし、上述のとおり、施肥伝動部材401の一側端部を右側の後輪ギアケース200Rから右側に突出させ、この突出部に手動操作部材426を装着すれば、手作業で施肥装置5の「試し繰出し」作業を行うことができる。
従って、手動操作部材426による手動操作により作業者が「試し繰出し」作業を行うことにより、走行車体2の余分な燃料消費が抑えられ、燃費が向上する。
また、手動操作部材426を右側の後輪ギアケース200R付近に設けることにより、機体後部の施肥装置5までの駆動力の供給距離を短くすることができるので、駆動力の伝動ロスが小さく作動効率が向上すると共に、手動操作部材426を操作する力が軽減されるので、作業者の労力が軽減される。
また、施肥伝動部材401を設けた右側の後輪ギアケース200R側の後輪11が旋回内側となる旋回走行をする際に、施肥伝動部材401のない左側の後輪ギアケース200L側の後輪11が旋回内側となるときに比べて、旋回後の施肥伝動アクチュエータ426aの作動タイミングを早くする構成とする。
旋回走行中は、前記ステアリング機構Sにより旋回内側のサイドクラッチ87が切れるので、旋回内側に位置する右側の後輪ギアケース200Rへの駆動力の伝動が切れている。従って、施肥伝動部材401が設けられている右側に旋回するときは、左側に旋回するときに比べて施肥伝動入切部材422が入状態になるときの施肥伝動部材401の回転数が低下するので、施肥装置5が作動するタイミングが遅くなり、旋回方向によって肥料の供給開始位置が変わり、肥料が供給されない位置が発生する問題がある。
しかし、右側旋回後の施肥伝動アクチュエータ426aの作動タイミングを、左側旋回後の作動タイミングよりも早くすることで、旋回後に施肥伝動を開始する回転数を確実に確保できるので、旋回方向にかかわらず肥料の供給開始タイミングを安定させることができ、肥料の供給されない区間の発生が防止される。
上記では、施肥伝動部材401を右側の後輪ギアケース200Rに設けていることから、左側に旋回するときよりも、右側に旋回するときに施肥伝動アクチュエータ426aの作動タイミングを早くする(例えば、3〜5秒)制御が制御装置163によって行われる。具体的には、右旋回時には左旋回時よりフロート55が接地してからの施肥伝動部材401の回転パルスのオンタイムを短く設定し、早いタイミングで施肥伝動アクチュエータ426aを作動させることで施肥伝動入切部材422を入状態にする。
右旋回時は、右側のサイドクラッチ87が切れることに付随して右側の後輪ギアケース200Rへの施肥駆動の出力回転数が低下するので、左旋回時と比べて、施肥の開始地点が遅れる傾向にあるが、本構成により、施肥装置5の駆動を旋回方向によらず一定にすることができる。
また、作業者が副変速切替操作部材17をレバーガイド17aに沿って中立にしたときは、図4に示すとおり、副変速操作位置検出部材17bによって中立位置Nに操作されていることが検出されると、制御装置163により植付クラッチモータ24を切側に作動させて植付作動入切部材25aを切状態にすることで、植付装置52の作動が停止する(停止機能)。一方、副変速切替操作部材17を中立位置の横にある停止植付位置Wに操作すると、走行車体2の左右の前輪10,10及び左右の後輪11,11への駆動力の供給が停止した状態で植付装置52を作動させることができる。これを、「停止植付作業」とする。
停止植付位置Wには、センサスイッチである停止植付位置検出部材430が設けられており、副変速切替操作部材17が当たると入状態になって信号が制御装置163に入力される。そして、制御装置163から植付クラッチモータ24を入側に作動させる信号を出力し、植付作動入切部材25aが入状態になって植付装置52が作動する。これを、停止植付機能と称する。
副変速切替操作部材17は、常時、停止植付位置Wから中立位置N側に図示しないトルク・スプリング等の付勢部材により付勢されており、作業者が副変速切替操作部材17を離すとすぐに中立位置Nに戻る構成である。これにより、作業者が意図的に副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作しないと、副変速切替操作部材17は停止植付位置検出部材430によって検出されず、植付装置52は作動しない。
図10には、ミッションケース12内の、駆動輪への伝動機構を表した平面図を示す。実際の各伝動軸は同一平面上には配置されていないが、伝動機構の説明を行うべく、同一平面に配置した表示としている。なお、図10では、図面の上方向が車体の右、下方向が車体の左となる。
ミッションケース12は、無段変速装置23からの回転動力をミッション入力軸583で受け、副変速装置571、デフ装置585等を介して駆動輪である左右の前輪10,10及び左右の後輪11,11を駆動する。
副変速装置571は、走行車体2の走行状態を「植付作業速」、「路上速」及び「走行中立」に切り替える機構を有し、変速後の回転速度で回転する副変速切替軸572と、この副変速切替軸572に嵌装する切替部材573と、植付速伝動部材574と、路上速伝動部材575と、中継軸576により構成する。走行状態の変更は、中継軸576と副変速切替軸572の回転速度の比を変更することにより行う。副変速切替軸572と切替部材573はスプライン加工により副変速切替軸572の軸方向に動作可能に構成し、作業者が副変速切替操作部材17を操作して切替部材573を動作させることで、走行車体2の走行状態を切り替える構成とする。
中継軸576は異なる径の二つの歯車を有し、その一つにミッション入力軸583からの回転動力を受ける。二つの歯車の内、径の大きいものは路上速伝動部材575であり、副変速切替操作部材17の操作位置が「路上速」のとき、切替部材573の歯車と噛み合う。径の小さいものは、常時植付速伝動部材574と噛み合う。この噛み合いにより中継軸576は、植付速伝動部材574と路上速伝動部材575に動力を伝動する。
植付速伝動部材574は、中継軸576の径の小さい歯車と噛み合うものであり、副変速切替軸572と同軸上の右側方に設ける。この植付速伝動部材574と副変速切替軸572とは、メタル軸受により互いに相対回転可能に構成する。さらに、植付速伝動部材574には、苗植付部4に駆動力を伝動する植付主伝動軸582を、同軸で回転可能に結合する。これにより、植付主伝動軸582が、副変速切替軸572の同軸上で、かつ互いに相対回転可能となる。
切替部材573の右側面には、植付速伝動部材574と結合する爪クラッチの噛み合い部を設け、外周には路上速伝動部材575と噛合う歯を形成する。
副変速切替軸572からの回転動力の一部は、デフ装置585によって左右の前輪アクスル584、584に分配して伝達され、さらに前輪アクスル584、584によって前輪ファイナルケース13、13に伝動されて前輪10、10を駆動する。そして、左右の前輪アクスル584、584を介して、ミッションケース12の背面から取り出される後輪駆動用動力が、後輪伝動軸230L,230Rを介して、後輪ギアケース200L、200Rに伝達され後輪11、11を駆動する。ミッションケース12には、副変速切替軸572の左側方に、前輪10、10及び後輪11、11の回転を規制するブレーキ装置581を設ける。
図11には、図10のミッションケース12内の副変速機構の動作説明図を示す。図11(a)は、副変速切替操作部材17の操作位置が「路上速」となるときの噛み合い図を示し、図11(b)は副変速切替操作部材17の操作位置が「中立」となるときの噛み合い図を示し、図11(c)は、副変速切替操作部材17の操作位置が「植付作業速」となるときの噛み合い図を示している。なお、図11でも、図面の上方向が車体の右、下方向が車体の左となる。
「路上速」のときは、切替部材573の外周の歯が、中継軸576の路上速伝動部材575の歯と噛み合う。この構成により、切替部材573に回転動力が伝達され、切替部材573とスプラインで噛み合っている副変速切替軸572が切替部材573と共に回転し、切替部材573の左側に位置する歯車により、デフ装置585に回転動力を伝達する。このとき、植付速伝動部材574は、中継軸576により回転するものの、相対的に回転可能である副変速切替軸572とは異なる回転数で回転する。
「中立」のときは、切替部材573は、植付速伝動部材574及び路上速伝動部材575のいずれにも噛み合わない。植付速伝動部材574は、中継軸576により回転するものの、回転動力が伝達されない副変速切替軸572は、停止したままである。この際植付速伝動部材574と植付主伝動軸582が同軸で回転可能に結合されていることにより、苗植付部4のみを動作させることができる。副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作したときも、同様の機構となる。
「植付作業速」のときは、切替部材573の右側が植付速伝動部材574の左側に爪クラッチで噛み合い、互いに連結する。中継軸576により植付速伝動部材574が回転し、爪クラッチで連結した切替部材573が回転し、さらに切替部材573とスプラインで噛合っている副変速切替軸572が回転することで、回転動力が中継軸576から副変速切替軸572に伝達され、切替部材573の左側に位置する歯車により、デフ装置585に回転動力を伝達する。
なお、副変速切替操作部材17が中立位置Nにあるときは、苗植付部4に伝動されるが、植付作動入切部材25aが切れていることにより、苗植付部4への伝動は遮断される。従って、中立位置Nにあるときでも、植付作動入切部材25aを繋ぐ、すなわち入状態とすれば、苗植付部4は駆動状態になる。これにより、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作すると、上記の「走行中立」の状態を保持したまま植付作動入切部材25aが入状態になることから、田植機1が停止した状態で植付装置52が作動する。
図12から図15には、副変速切替操作部材17の操作位置に対応する伝動機構図(模式図)を示す。
図12に示す、副変速切替操作部材17の操作位置が路上速のときと、図13に示す、植付作業速のときでは、副変速装置571のギア機構が高速側と低速側で異なるだけで、他の走行系統、植付系統、施肥系統等は全てクラッチが入状態になっている。但し、路上走行時は基本的に非作業時の走行になるので苗植付部4は上昇しており、植付作動入切部材25a、施肥伝動入切部材422及び整地ロータ入切クラッチ322は切状態になる。
そして、図14に示す、副変速切替操作部材17の操作位置が中立のときは、走行系統には伝動されないので、その伝動下手側の整地系統や施肥系統には駆動力が伝動されない。また、植付作動入切部材25aも切状態になっているので、走行が停止し、植付装置52や施肥装置5等も作動しない状態である。
一方、図15に示す、副変速切替操作部材17の操作位置が停止植付のときは、中立のときと同様に走行系統への伝動は切状態になるが、植付作動入切部材25aは入状態であることから、植付系統にはエンジン20からの動力が伝達されて植付装置52が作動する。なお、走行系統へは伝動されないので、右側の後輪ギアケース200Rから分岐する施肥系統や整地系統には駆動力が伝動されない。
上記により、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作すると、走行を停止した状態で植付作業を行うことができるので、畦際で苗植付部4を下げた状態で、一株分の植え付けができ、作業性に優れると共に、手作業で苗の補植をする必要がなくなり、作業者の労力が軽減される。
苗の植付始めにおいて、植付装置52が最初の一株を植える位置が、隣接する条の植付終わり位置に合わないときに、その場から移動せずに苗を植え付けることができるので、苗の植付精度が向上する。特に、圃場の隅で機体が90°旋回したときに位置が乱れやすく、苗が植付可能な位置に確実に苗を植え付けることができる。
通常、苗を植え付けるときには走行しなければならないので、その場から移動せずに苗を植え付けるには、走行開始、停止及び植付入切操作を素早く行う必要があり、熟練者でないと難しいが、本構成により誰でも簡単に苗を植え付けることができる。
しかし、フロート55、ミドルフロート57,57及びサイドフロート56,56が接地していない状態で苗の植付作業を行うと、圃場面よりも上方で苗植付具52aが作動して、苗を落下させてしまうことがある。そこで、角度検知部材162により、フロート55が接地状態となったことが検出されないと、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作しても植付装置52は作動しない構成とする。これを、停止植付無効機能と称する。
本構成により、誤操作により苗を圃場面よりも上方で落下させることを防止できるので、余分な苗の消費が防止される。
また、旋回連動モード時に前記停止植付機能及び停止植付無効機能を有効にすることで、畦際での旋回時に苗の空中植え、すなわち圃場面よりも上方で苗を離してしまうこと等の植付装置52の誤作動を防止できる。このフローチャートを、図16に示す。
副変速切替操作部材17が停止植付位置検出部材430によって停止植付位置Wにあることが検出され(前提条件)、この時旋回連動スイッチ90が入りの旋回連動モードであり、且つフロート55が接地状態であることが角度検知部材162により検出されると、停止植付機能が有効となって(許可)、制御装置163から植付クラッチモータ24を入り側に作動させる信号を出力し、植付作動入切部材25aが入りとなり苗の植え付けが行われる。
一方、旋回連動モードでないときや、フロート55が離間状態であるときは、停止植付機能が働かず(禁止)、制御装置163から植付クラッチモータ24を切り側に作動させる信号を出力し、植付作動入切部材25aは切りであるので、苗の植え付けは行われない。
上記のとおり、走行車体2の走行が停止した状態における植付作業(停止植付作業)の可否を、フロート55の接地を条件とすることで、作業効率の低下を防止できる。
また、停止植付機能は、図1に示す、ブレーキペダル110の操作時には作動せず、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作しても植付装置52が作動しない構成としてもよい。このフローチャートを、図17に示す。
ブレーキペダル110の操作量、すなわち踏み込み量は、図5に示す、ブレーキペダル110基部に設けたブレーキペダルセンサ110aにより検出される。ブレーキペダルセンサ110aは、ある程度踏み込むと接触するタイプでもよいが、ストロークセンサ等でも構わない。このブレーキペダル110を踏み込んだときは、停止植付機能が働かないことで、田植機1の停車時の誤操作を防止でき、安全である。
また、この田植機1は、主変速切替操作部材16の操作によりトラニオン軸電動モータ103(図5)が正転又は逆転方向に駆動されて無段変速装置23の出力を切り替える(無段変速装置23の出力軸の回転数及び回転方向を変更する)ことで変速ができる構成であり、主変速操作量検出部材16bによって検出される主変速切替操作部材16の操作位置に応じてトラニオン軸電動モータ103に駆動指令信号を出力する構成である。トラニオン軸アクチュエータ103は無段変速装置23の外側に設けられており、主変速操作量検出部材16bによって検出される主変速切替操作部材16の操作量に連動して作動する。
そして、トラニオン軸アクチュエータ103は、トラニオン軸295を回動させる、トラニオン軸295に直結しているトラニオンアーム(図示省略)を作動させて、トラニオン軸295の回動角度が所定角度になるまで回動させる。トラニオン軸295の回動方向及び回動角度はトラニオンアームに設けたトラニオン軸検出部材113によって検出される。
そして、旋回連動スイッチ90が入りの旋回連動モードであるときに、フロート55が接地状態であることが角度検知部材162により検出されても、図4に示す、主変速切替操作部材16の操作位置が中立位置16aaにあり、且つトラニオン軸295も中立位置にあるときにのみ、停止植付機能が有効となる構成でもよい。これを、停止植付中立機能と称する。このフローチャートを、図18に示す。
旋回連動スイッチ90が入りの旋回連動モードであり、フロート55が接地状態であることが角度検知部材162により検出されると共に、主変速操作量検出部材16bによって検出される主変速切替操作部材16の操作位置が中立位置であり、且つトラニオン軸検出部材113によってトラニオン軸295が中立位置であることが検出されると、停止植付機能が有効となって(許可)、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作すると植付作動入切部材25aが入状態になり、苗の植付が行われる。
一方、主変速操作量検出部材16bによって検出される主変速切替操作部材16の操作位置が中立位置16aaではないときや、トラニオン軸検出部材113により検出されるトラニオン軸295の回動方向及び回動角度から中立位置16aaではないときは、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作しても停止植付機能が働かず(禁止)、植付作動入切部材25aは切状態であるので、苗の植付は行われない。
上記のとおり、走行車体2の走行が完全に停止していないと植付作業が行われないことにより、植付装置52の誤動作を防止できる。例えば、植付作業中(作業走行中)に、誤操作により副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作して、副変速切替操作部材17が停止植付位置検出部材430に接触する側に操作されても苗の植付作業走行には変化が生じないので、誤操作による作業能率や苗の植付精度の低下が防止される。
さらに、このときの苗の植付は、トラニオン軸295が所定角度になってから、植付作動入切部材25aを入状態にすることで行われる構成とするとよい。このフローチャートを図19に示す。
すなわち、主変速操作量検出部材16bによって検出される主変速切替操作部材16の操作位置が中立位置であり、且つトラニオン軸検出部材113により検出されるトラニオン軸295が中立位置であるときに、停止植付機能を有効として制御装置163から植付クラッチモータ24を入側に作動させる信号が出力される。この植付クラッチモータ24の作動信号は、制御装置163によって停止植付機能を有効とする判断がされ、且つトラニオン軸アクチュエータ103に作動信号が出力されてトラニオン軸295が所定角度(目標値)となってから出力される構成である。そして、施肥伝動アクチュエータ426aを作動させて施肥伝動入切部材422を入り状態とする。これを、停止植付作動機能と称する。
無段変速装置23の出力を所定値まで上昇させてから植付装置52に駆動力を供給することにより、走行を停止した状態で、確実に植付装置52を作動させることができるので、植付精度や施肥精度が向上する。
先に、植付作動入切部材25aを入りにしてからトラニオン軸295のトラニオン軸アクチュエータ103に出力する処理の流れであると、植付装置52の苗植付具52aの回転速度が徐々に速くなる制御処理となり、動作が安定しない。しかしながら、本構成により、先にトラニオン軸アクチュエータ103に出力してから植付作動入切部材25aを入状態にすることで、苗植付具52aの回転速度が、最初からスムーズに回転することで安定する。
すなわち、無段変速装置23の出力が上昇中であると、苗植付具52aの回転速度も段階的に上がって行くので、苗植付具52aの動作が不安定になるが、本構成のとおり、無段変速装置23の出力が一定に到達していると、比較的すぐに苗植付具52aの回転速度が安定するので、滑らかな動きになる。
また、先のトラニオン軸295が目標値となってから、植付クラッチモータ24を入側に作動させる信号を出力する際の植付作動入切部材25aの入処理中に、植付作動入切部材25aが入状態になる前(後述する図22の「無段変速装置前進出力」と「植付入ディレータイマアップ」間に相当)に制御が停止したときは、植付クラッチモータ24を切り側に作動させる信号を出力し、植付作動入切部材25aを切にする構成とする。この制御が停止したときとは、図示しないタイマで停止植付位置検出部材430のオン時間、すなわち副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに押しつけている時間を計って、あまりにも短いときなどがある。
植付作動入切部材25aの入処理中であっても、その制御が停止したときは、植付作動入切部材25aを切状態に戻すことで、停止植付位置検出部材430に副変速切替操作部材17が当たる度に植付作動入切部材25aが入切することを防止して、誤動作が防止される構成とする。
そして、この植付作動入切部材25aの入処理中に制御が停止して植付作動入切部材25aを切状態にするときは、植付作動入切部材が切状態になった後、一定時間(例えば、0.5〜2秒程度)苗植付具52aを回転させた後に(慣性で回転する)、トラニオン軸アクチュエータ103に出力してトラニオン軸295を先の目標値(停止植付作業時の無段変速装置の出力を確保し得る、トラニオンアームの回動位置)から中立位置にする構成とする。
トラニオン軸295を中立位置にしてから植付作動入切部材25aを切状態にすると、苗植付具52aに駆動力が供給されないことにより、停止位置はそのときの位置になるので、正規の停止位置で苗植付具52aが停止しなくなる。
そこで、植付作動入切部材25aを切状態にしてから、苗植付具52aを一定時間回転させることで、苗植付具52aが正規の停止位置で停止する。この正規の停止位置は、苗植付具52a内部のギアの組み合わせによって設計されている。従って、苗植付具52aの停止位置が安定する。
そして、この植付作動入切部材25aを切状態にしてからトラニオン軸295を中立位置にする処理の後は、植付クラッチモータ24を作動させて植付作動入切部材25aを入状態にしておく。作業者は、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作して一株分だけ植え付けた後、作業を再開するときに、植付作動入切部材25aを入れ忘れることがある。しかしながら、停止植付作業の後に、植付作動入切部材25aが自動で入状態になることで、そのまま植付速度で走行するだけで作業が再開できる。
また、副変速切替操作部材17を停止植付位置Wに操作したときの停止植付機能による具体的なフローチャートを以下に示す。
図20には、停止植付機能による処理の大まかなフローチャートを示している。この処理は、停止植付処理0〜4までの5種類あり、停止植付処理0から1、2、3、4の順に行われる。図21には、停止植付処理0のフローを示し、図22には、停止植付処理1のフローを示し、図23には、停止植付処理2のフローを示し、図24には、停止植付処理3のフローを示し、図25には、停止植付処理4のフローを示している。
図21の停止植付処理0では、主変速切替操作部材16の操作位置が中立位置であり、且つ副変速切替操作部材17の操作位置も中立位置であるときに、停止植付機能が有効となって(許可)、スタンバイ状態となる。そして、副変速切替操作部材17が停止植付位置Wに操作されたことが停止植付位置検出部材430によって検出されると、停止植付処理1がセットされる。そして制御装置163から植付クラッチモータ24を作動させる信号の植付入ディレータイマをセットし(所定時間、例えば1秒)、次に図22の停止植付処理1のフローに移る。
停止植付処理1では、トラニオン軸アクチュエータ103を正転させて(前進側)、無段変速装置23のトラニオン軸295を回動させる。なお、この時主変速切替操作部材16の位置は中立位置のままであり、トラニオン軸アクチュエータ103によってトラニオン軸295のみが前進側に回動することで、苗植付部4に動力が伝わる状態となる。
そして、先の植付入ディレータイマのセット時間が経過したら(タイマアップ)、停止植付処理2がセットされ、植付作動入切部材25aが入りとなる作動時間(例えば、1〜2秒)をセットし、制御装置163から植付クラッチモータ24を作動させる信号が出力される。そして、次に図23の停止植付処理2のフローチャートに移る。
停止植付処理2では、植付クラッチモータ24が作動して植付作動入切部材25aが入状態になったら停止植付処理3がセットされ、次に図24の停止植付処理3のフローチャートに移る。そして、停止植付処理3では、先の作動時間が経過したら(タイマアップ)停止植付処理4がセットされ、植付作動入切部材25aが切状態になってからトラニオン軸295を中立位置に戻すまでの時間(例えば1〜2秒)をセットした後、植付作動入切部材25aを切状態にして、次に図25の停止植付処理4のフローチャートに移る。
停止植付処理4では、先のトラニオン軸295を戻すまでの時間が経過するとトラニオン軸295が前進側から停止側に回動し、その後中立位置になることで、フローチャートが終了する。
以下の図26及び図27には、上記の各フローチャートをまとめた全体の流れを示している。停止植付作業の終了は、植付装置52の苗植付具52aが1回転する、または苗を植え付け終える時間が経過すると停止するときと、途中で副変速切替操作部材17の操作を止めるときがあり、前者のフローチャートを図26に示し、後者のフローチャートを図27に示す。なお、図27は後者のみならず、全体の流れも示している。
図26では、無段変速装置23のトラニオン軸295が前進側または後進側に回動している時に停止植付処理中でないときは、通常の無段変速装置出力処理がなされる。すなわち、主変速切替操作部材16の操作位置に対応する駆動力が出力がされる。一方、停止植付処理中(上記処理0〜4のうちのいずれかの処理中)であり、トラニオン軸アクチュエータ103によってトラニオン軸295を停止側に出力しているとき(図25の「無段変速装置停止出力」に相当)は、トラニオン軸295が中立位置になったかどうかを判断して、トラニオン軸検出部材113によってトラニオン軸295が中立位置であることが検出されると、停止植付処理が終了する。
そして、一旦停止植付処理が終了後、停止植付処理4がすでに行われたかどうかを判断し、停止植付処理4がすでに行われているときは、植付クラッチモータ24が作動して植付作動入切部材25aが入状態になる。図26の状態では基本的に正常に苗の植付が行われているので、停止植付処理の終了後に通常の植付作業に移行される。このとき、植付作動入切部材25aが切状態のままであると、走行開始時に植付開始が遅れる可能性があるので、最後に植付作動入切部材25aを入状態に切り替える工程が入る。
植付作動入切部材25aを入状態にすることで、副変速切替操作部材17を植付作業速の位置に操作すると共に、主変速切替操作部材16を前進側に操作すると、即座に植付作業を開始できる。その後、停止植付処理0がセットされ、次回の停止植付処理が停止植付処理0から始められるべくリセットされる。
なお、停止植付処理中でもトラニオン軸295を前進側(又は後進側)に出力しているときは、一定開度(先の目標値)まで出力する。
図27では、まず副変速切替操作部材17が停止植付位置Wに操作された停止植付処理中に、副変速切替操作部材17が停止植付位置Wから外れて停止植付位置検出部材430によって停止植付位置Wにないことが検出されると、その時点の停止植付処理がどの段階の処理であるかが判断される。
この時停止植付処理1による処理中であるときは、停止植付処理0がセットされ、トラニオン軸アクチュエータ103によってトラニオン軸295を停止側に出力する(図25の「無段変速装置停止出力」に相当)。一方、停止植付処理が停止植付処理0でないときは、停止植付処理2又は3であるか否かが判断されて停止植付処理2又は3であるときは、植付作動入切部材25aが切状態になってから(図24の「植付作動入切部材切り出力」に相当)停止植付処理0がセットされ、トラニオン軸アクチュエータ103によってトラニオン軸295を停止側に出力する。
図28には、本実施例の田植機1の無段変速装置23の油圧回路の構成を示し、図29には、無段変速装置23の側断面図を示し、図30には、無段変速装置23の平断面図を示す。
図28に示すとおり、エンジン20からの動力を入力する入力軸274と連動して複数の並列配置されたピストン248の往復運動により吐出する作動油の量と吐出方向を調整する可変容量型油圧ポンプAと、該油圧ポンプAの吐出油量と油の吐出方向に応じて出力軸275の回転速度と方向を変更する固定容量型油圧モータBを油圧閉回路266、267を介して接続した無段変速装置23を構成する。
また、図29、図30に示すとおり、油圧閉回路266、267の一部を内部に備え、入力軸274と出力軸275に直交する方向にポートブロック271を配置し、該ポートブロック271と油圧ポンプAを内装した油圧ポンプ側シリンダ247aのブロック内部及び油圧モータBを内装した油圧モータ側シリンダ247bのブロック内部の間をそれぞれ接続して前記油圧閉回路266、267を形成している。
図28に示す油圧回路266と油圧回路267で閉回路を構成し、図29に示す可変容量型油圧ポンプA側の斜板69が正転側に傾斜角を増すと、油圧回路266を経て固定容量型油圧モータB側へ働く油圧が高圧となり、このとき油圧回路266の反対側の油圧回路267は、低圧となって固定容量型油圧モータB側から排出されるオイルが可変容量型油圧ポンプAへ吸入されて行く。
図29、図30に示すポートブロック271に可変容量型油圧ポンプA及び固定容量型油圧モータBを内装する無段変速装置ケース272及びブーストポンプ273(図28参照)のケース等を重合させて一体的構成とし、軸方向が互いに平行な入力軸274と出力軸275を軸受けする。この入力軸274の回りに油圧ポンプA及びブーストポンプ273のトロコイドロータ(図示せず)等を設け、出力軸275の回りに油圧モータBを設ける。
これら油圧ポンプA及び油圧モータBは、入力軸274と出力軸275の回りに多数のシリンダ247を、軸方向と平行に配設してシリンダブロックを構成し、各シリンダ247には軸方向に摺動するピストン248を設けている。この各ピストン248は、先端部をジョイントディスク277の各ボールジョイントによって揺動自在に支持し、斜板69のスラストプレート278に対して、軸274、275回りに回転自在に設ける。
前記ブーストポンプ273は、タンクポートTから油圧回路266、267内へオイルを補給するもので、オイルフィルタ280、メインリリーフバルブ281、フィールドバルブ(チェックバルブ)282a、282b及びニュートラルバルブ283等を経て各油圧回路266、267に連通する。これら両油圧回路266、267間に亘って高圧リリーフバルブ285が設けられている。
トラニオン軸295は、入力軸274と直交方向に設けられていて、このトラニオン軸295の先端にトラニオン軸295と一体のクランクアーム296のピンスライダ298を、斜板69に形成したローラ溝69aに係合させて、トラニオン軸295を、トラニオン軸アクチュエータ103を作動させてトラニオンアームを回動させることによって、ピンスライダ298を揺動させて、斜板69の傾斜角度が調整される。
トラニオン軸295を回動させて斜板69の角度を変更すると、ピストン248の押圧位置が変わり、油圧ポンプAの高圧、低圧を切り替える方式である。
図31には、ピストン248部分の拡大図を示す。一般的に図31(a)に示すとおり、ドーム型ピストンを使用しているが、ピストン先端のR寸法が小さいと面圧が高くなって強度的に弱くなり、逆にR寸法を大きくとると斜板69の反力が大きくなって、トラニオン軸295の操作荷重が重くなる問題がある。
そこで、図31(b)及び(c)に示すとおり、油圧ポンプA側のピストン248aはR寸法が小さいピストンを使用してトラニオン軸アクチュエータ103によるトラニオン軸295の操作荷重を軽減し、常時一定角度でジョイントディスク277と接触する油圧モータB側のピストン248bは、R寸法が大きいピストンを使用して強度を確保すると良い。
図31(b)には、油圧ポンプA側のピストン248aを示し、図31(c)には、油圧モータB側のピストン248bを示している。例えば、ピストン248aのR寸法を24(mm)、ピストン248bのR寸法を28(mm)とする。
通常は油圧ポンプAのピストン248aも油圧モータBのピストン248bも同一形状のピストンを使用しているが、油圧ポンプA側と油圧モータB側で、ピストン248の先端のR寸法を上記のとおり変化させることにより、下記の効果を発揮する。
すなわち、油圧ポンプA側に関しては、斜板69が動くことで、ジョイントディスク277とピストン248aの先端のR部の接触位置が変動するので、強度的な向上が発揮され、斜板69への反力の小さいR寸法の小さなピストンを採用し、油圧モータB側に関しては、常時、ジョイントディスク277とピストン248bの先端のR部が一定角で接触するので、ある程度の強度が要求される先端のR寸法の大きなピストンを使用することにより、トラニオン軸295の操作荷重が軽く、耐圧性の高い無段変速装置23を提供できる。
図32には、図31のピストン248とは別の例を示す。
また、図32(a)に示すとおり、ピストン248の外周面(側面)にらせん状の溝248cを設けてもよい。ドーム型ピストンでは、側面の摺動部Uが油膜切れを起こすと、ドーム型ピストンとシリンダブロックの間で異常な摩耗や焼き付きといった不具合を起こしてしまうが、螺旋状の溝を外周面に設けることによって油膜の形成を容易にし、これらの不具合を防止できる。
すなわち、ピストン248の前後運動に合わせて作動油が溝248cに導入されることで、油膜の形成を促し、異常な摩耗等の不具合を防止する効果がある。
また、溝の形状は螺旋状に限らず、図32(b)に示すとおり、格子状の溝248dとしたり、図32(c)に示すとおり、楔状の溝248eとしたりしてもよい。なお、図32に示すピストン248は、油圧ポンプAのピストン248aと油圧モータBのピストン248bの両方に共通する。