JP2018084719A - 電気化学装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
応答特性に変化が生じ難い電気化学装置を提供する。
【解決手段】
電気化学装置は、対向配置され、対向面に電極を有する第1、第2の基板と、第1、第2の基板間に挟持され、金属塩、メディエータ、支持塩、溶媒を含む電解液と、を有し、メディエータが、金属塩の金属系の酸化電位より貴な還元電位と、支持塩由来のイオン系の還元電位より卑な酸化電位とを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、対向電極間に電解液を保持し、電気化学的反応によりAgによるミラー層を析出/溶解できるED型電気化学装置に関する。
エレクトロデポジション(ED)材料を用い、ED材料の光物性を変化させることにより、透過する光量を調節できるED型表示装置ないし調光フィルタが提供されている。
表示装置のモードとして、明暗の表示だけでなく、表示画面を鏡面等にするニーズも求められている。例えば対向基板の一方にミラー層が形成できるED素子が提案されている。
透光性の電極を備えた一対のガラス基板と、Agを含むED材料、Cuを含むメディエータ、支持電解質、溶媒を含む電解液を電極間に挟持し、所定電圧印加により、透光性の電極上にAgを析出できるED素子が提案されている(例えば特許文献1)。
透光性の電極は、インジウム錫酸化物(ITO),インジウム亜鉛酸化物(IZO)等で形成できる。Agを含むED材料は、AgNO,AgClO,AgBr等を用いることができる。Cuを含むメディエータは、CuCl,CuSO,CuBr等を用いることができる。メディエータとは、銀よりも電気化学的に低いエネルギで、酸化・還元する材料を言い、2価の銅イオンの塩であることが好ましく、CuCl.CuSO,CuBr等を用いることができる。メディエータの酸化体が銀から電子を授受することにより酸化による消色反応を補助することができるとされる。支持電解質は、ED材料の酸化・還元反応等を促進できるものであればよく、例えばLiCl等のリチウム塩、KCl等のカリウム塩、NaCl等のナトリウム塩を用いることができる。溶媒は、ED材料などを安定的に保持することができればよく、例えば水等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を用いることができる。
電圧無印加状態のED素子は光透過状態である。所定電圧印加により透光性の電極上にAgが析出すると、鏡面状態になる。電圧無印加状態で放置するか、逆極性の電圧を印加すると析出したAg層が溶解して、透明状態に戻る。
WO2012/118188号公報
通常の駆動を行う場合、従来技術によるED素子の表示特性に問題はない。しかし、ED素子がさらされる条件によっては表示特性に影響を与える場合があることが発明者らの研究により判明した。特にレーザ光などの高輝度光を照射する用途において、光照射を受ける部分の光透過性に変化が生じ易いため、安定した使用ができなくなる。また、ヘッドアップディスプレイ(HUD)のような、直接目視する用途の場合、光照射部で黒点が生じ、見栄えが悪くなる。
光透過性に変化が生じ難い電気化学装置を提供することが望まれる。
実施例によれば、
対向配置され、対向面に電極を有する第1、第2の基板と、
前記第1、第2の基板間に挟持され、金属塩、メディエータ、支持塩、溶媒を含む電解液と、
を有し、
前記メディエータが、前記金属塩の金属系の酸化電位より貴な還元電位と、前記支持塩由来のイオン系の還元電位より卑な酸化電位とを有する、
電気化学装置
が提供される。
第1、第2の基板の電極間に電圧を印加して金属の堆積/溶解を行い、外部から高強度の光を導入する表示を行っても、光透過性に変化を生じ難い。
図1Aは電気化学装置の概略構成を示す断面図、図1Bは電気化学装置の光学的特性を測定するシステム、図1Cは印加する電圧波形を概略的に示すグラフ、図1Dは電気化学装置にレーザ光を照射した状態を示す側面図、図1Eは作成した電気化学装置のサンプルS1〜S4の組成等の特徴をまとめた表である。 図2A、2BはサンプルS1に対する通電下レーザ光照射による光透過率の変化を示すグラフと、レーザ光照射部に生じた不溶化部分の写真、図2CはサンプルS4に対する通電下レーザ光照射による光透過率の変化を示すグラフ、図2DはサンプルS1とS4の通電下レーザ光照射による光透過率変化率を示すグラフである。 図3は通電下レーザ光照射を行ったサンプルS1〜S4の特徴をまとめて示す表である。 図4Aは、メディエータとしてCuClを用いた場合(Cu系、サンプルS1)の、Ag系,Cu2+系,Br系の酸化還元電位の表と電子の移動を示す概念図、図4Bは、メディエータとしてTaClを用いた場合(Ta系、サンプルS2)の、Ag系,Ta5+系,Br系の酸化還元電位の表と電子の移動を示す概念図である。 図5は、メディエータとしてTaClを用い、Brを高濃度とした場合(Ta系、Br高濃度系、サンプルS4)の、Ag系,Ta5+系,Br系の酸化還元電位の表と電子の移動を示す概念図である。 図6は、Br濃度によるAg系電位の変化を単純なモデルでシミュレーションした結果を示すグラフである。 図7A、7Bはヘッドアップディスプレイのコンバイナ、ヘッドアップディスプレイ用のNDフィルタへのEDセルの適用例、を示す斜視図である。
1,2 基板、 3 シール、 4 電解液、 5 ミラー(鏡)膜、
7 光源、 8 光検出器、 11,12 透光性電極(ITO膜)、 13 レーザヘッド、 15 ED素子、 21 プロジェクタ、
22 レーザプロジェクタ、 23 ED素子NDフィルタ、
25 可変ミラーコンバイナ、 26 HUDコンバイナ、
図1Aを参照して、可変ミラーデバイスを構成する電気化学装置について、簡単に説明する。ITO,IZO等で透光性電極11を形成したガラス基板1と、同様の透光性電極12を形成したガラス基板2とをシール3を介して貼り合せてセルを構成する。実験に用いたセルは、ベタパターン、5ΩITO電極付ソーダ石灰ガラス基板を、スリーボンド製シール材3035Bを用いてセルギャップ50umで貼り合せた。セルの表示面積は20mm□とした。セルに真空注入法で電解液4を注入してエレクトロデポジション(ED)素子15を作製した。電解液4は、Agを含むED材料(Ag塩)、メディエータ、支持電解質(支持塩)、溶媒を含む。
電極上にAg層を析出して観察するために、少なくとも一方の基板とその上の電極は透光性である必要がある。両方の基板及びその上の電極を透光性とすれば、透光性状態で素通しの窓とすることができる。尚、基板としてガラスの他、プラスチック等を用いることもできる。透光性電極11、12間に例えば3V程度の直流(析出)電圧を印加すると、負電圧を印加された電極上にAgが析出して、ミラー膜5が形成される。電圧無印加状態で放置するか、例えば0.5V程度の逆極性(溶解)電圧を印加すると、析出したAg膜が電解液中に溶解する。
ED素子に析出電圧を一定時間印加し、その後印加電圧の極性を反転して溶解電圧を印加して、ED素子の光透過率の時間変化を測定した。用いた測定機器は、大塚電子製のLCD5200である。
図1Bは、測定機器の構成を概略的に示す側面図である。光源7と光検出器8との間に、被測定物であるED素子15を配置できる。光源7と光検出器8の間に何も介さずに測定した場合の光強度を透過率100%とし、間にED素子15を介した際の相対的光強度を光透過率として求めた。透過率は波長によって変わるため、目で見た場合の透過率を評価すべく、可視光領域内の光透過率を測定し、視感度の重みをつけて積分した値を視感度光透過率として採用した。
光透過率変化の測定
ED素子の対向電極間に電源を接続し、測定開始1秒後に銀析出電圧3.0Vを1秒印加し、測定開始2秒(電圧印加時間は1秒)後に銀溶解電圧−0.5Vに切り替えた際の光透過率の変化を測定した。
図1Cに、対向電極間に印加する着色、消色、ショートを繰り返す電圧波形を概略的に示す。
高輝度光照射によるED素子の特性変化
図1Dは、レーザ光照射のシステムを概略的に示す斜視図である。レーザヘッド13から発したレーザ光をED素子15に照射できる。ED素子の高輝度光に対する特性変化を評価するため、着色(銀膜形成)、消色(銀膜溶解)を繰り返しながら、3色(RGB)のレーザ光照射を行った。
レーザ光:ブルーレーザ(波長:440nm)、グリーンレーザ(波長532nm)、レッドレーザ(波長637nm)、
光強度:50mW/mm
照射時間:各15分、
通電条件:1)着色3.0V、2秒、2)消色−0.5V、19秒、3)ショート0V、9秒、計30秒で構成されるサイクルを光照射中常時繰り返した。
図1Eは、試作したサンプルの内、特徴の明らかなサンプルS1〜S4の特性をまとめて示す表である。全サンプル共通に、Ag塩としてAgBr(濃度350mM)、溶媒としてGBL(ガンマブチルラクトン)を用いた。メディエータとして、Cuを含むCuClとTaを含むTaClを用いた。CuとTaの濃度は30mMで共通である。CuClは濃度60mMのClを伴い、TaClは濃度150mMのClを伴う。支持塩としてLiClとLiBrを用いた。
CuCl(濃度30mM)をメディエータとし、LiCl(濃度700mM)を支持塩とするサンプルS1は従来技術に属し、高強度光照射により光透過性に変化を生じるサンプルである。
サンプルS2〜S4は、TaClをメディエータとする新規な構成を有する。サンプルS2は、メディエータに含まれる金属をサンプルS1のCuからTaに変更したもので、TaClの組成により、メディエータに伴うCl濃度が150mMとなる(支持塩のCl濃度700mMと加算した全Cl濃度は850mMである)。サンプルS3は、サンプルS2を基準として濃度1000mMのLiBrを増量した(Br濃度が1000mM増加して1350mMとなる)ものである。サンプルS4は、サンプルS3における支持塩LiClをゼロとし、LiBrのみの支持塩を高濃度(1750mM)としたものである。
図2Aは、サンプルS1に通電(電圧印加)下、ブルーレーザを照射した前後の光透過率の時間変化を示すグラフである。縦軸は光透過率を単位%で示し、横軸は時間を単位msecで示す。ブルーレーザ光照射時間0分後、1分後、5分後、15分後の4回の測定結果を重ねて示す。ブルーレーザ光照射前(0min)を見ると、測定開始後1000msecまでは電圧印加はなく一定の透過率を示し、1000msecから2000msecまでは銀析出電圧3.0Vの印加により銀が析出し、透過率が減少した。2000msec以降は銀溶解電圧−0.5Vを印加し、析出銀が溶解するため透過率が上昇し、約6000msecでは析出前の光透過率約80%とほぼ同様の光透過率まで回復した。このように電圧印加による銀析出、溶解は可逆であり、安定した特性を示した。
一方、グラフの下側3本のカーブに示す、通電下ブルーレーザ光照射1min後、5min後、15min後ではレーザ光照射時間に応じて0msecの初期光透過率が減少し、15min後に関しては光透過率約50%とレーザ光照射前に比べ著しく光透過率が低下した。レーザ光照射後の電圧印加(Ag析出)による光透過率の時間変化は照射前(0min)と同様の変化を示した。しかし、溶解電圧を印加しても透過率はレーザ光照射前の状態に戻ることはなく、通電下ブルーレーザ光照射による透過率減少は電圧印加に対し不可逆であった。
図2Bは、通電下ブルーレーザ光照射後のED素子の表示部の外観写真を示す。ED素子の表示部全体が写してあり、3か所の黒点は測定用にマジックでつけたマーキングである。写真では電圧非印加(透光性)状態を写しており、中央の黒点近傍以外の部分では背景の白色が見えている。しかし、中央の黒点の周囲ではレーザ光照射パターンに沿って丸い跡が観察された。この跡はレーザ光照射時間に応じて顕著に表れた。顕微鏡観察、分析の結果、この跡は黒い銀粒子の集合であることが判明した。
図2Aに示された光透過率の減少は通電下レーザ光照射により不可逆な銀粒子析出が生じたことに起因すると考えられる。このような銀粒子析出、光透過率減少はグリーンレーザ、レッドレーザのレーザ光照射によっても同様に生じた。
図2Cは、サンプルS4(Ta+Br高濃度)に対して通電下ブルーレーザを照射した前後の電圧印加による光透過率時間変化を示すグラフである。縦軸は光透過率を単位%で示し、横軸は時間を単位msecで示す。ブルーレーザ光照射前の電圧印加による透過率変化はサンプルS1とほぼ同等の変化を示した。サンプルS4の場合、ブルーレーザ光照射開始後も初期透過率は変化せず、安定した応答特性が得られた。グリーンレーザ、レッドレーザのレーザ光を照射した場合も同様に安定した特性が得られた。
図2Dは、サンプルS1,S4に対して、通電下レッドレーザ(R)、グリーンレーザ(G)、ブルーレーザ(B)のレーザ光照射を行った時の、初期光透過率の変化を示すグラフである。縦軸は変化率を表し、照射前後の初期透過率の差を照射前の初期透過率で割ったものである。横軸は照射時間を示す。サンプルS1(Cu)ではレーザ光照射時間に応じて顕著な透過率減少の傾向がみられ、変化はブルーレーザ光を照射した場合に特に著しかった。一方、サンプルS4(Ta+Br高濃度)ではわずかな変化はあるものの、レーザ光照射時間に対して明確な傾向は見られず、レーザ光照射に対する特性変化はなかったと考えられる。
図3は、サンプルS2、S3に対し行った同様の評価を含めた、全サンプルの評価結果をまとめて示す表である。Cuを含むメディエータとする従来技術に属するサンプルS1は、上述のように通電下の高強度光照射により、黒点を生じ、不可逆な光透過率の減少を示した。メディエータをTaを含むものに変更したサンプルS2は、S1と同様に黒点が発生し、不可逆な透過率変化が生じた。一方、S2にBrを添加したサンプルS3はBr高濃度で構成したサンプルS4と同様に光透過率の変化は生じなかった。Taを含むメディエータを使用し、Brを高濃度化した場合、通電下レーザ光照射に対し、非常に安定した動作を実現できると考えられる。
Taを含むメディエータを使用し、Brを高濃度化することで透過率減少が生じなかったのは、溶解電圧非印加時でも継続的な溶解が可能だからと考えられる。
通常に析出した銀は溶解電圧印加(−0.5V)によって溶解する。これは析出したAgから電極に電子を受け渡すことでAg+となり溶解できる。一方、対向側基板ではBr が電子を受け取りBr-となる。この時メディエータ由来の金属イオンTa5+、Cu2+も同様に対向基板側の電極から電子を受け取り、Agの溶解を促進する。
これに対し、通電下光照射により発生する銀粒子は溶解電圧印加による溶解効果がないことが実験的に判明した。従って、通電下光照射により発生する銀粒子の除去は、電圧非印加状態での自然溶解に任せるしかないと考えられる。
自然溶解の進行プロセスは酸化還元電位で評価することができる。Pt線を対極、面積約5cmのITO電極を作用極、Ag/Ag電極を参照極として電位掃引速度0.05V/secで3極CV測定を行い、各イオンの酸化還元電位を評価した。
3極CV結果から算出した酸化、還元電位と銀自然溶解の想定進行プロセスを図4A,4B,図5に示す。初めの銀析出は、所定電圧印加により、液中に存在するBrが酸化され、Agの電極上での直接還元で生じる。これは一方の基板電極がBrより電子を受け取りBr にするとともに、もう一方の基板電極からAgに電子が受け渡されることでAgとなり析出されることで生じる。析出した銀は主には前述のようなプロセスにて溶解電圧によって溶解するが、通電下光照射により発生する銀粒子には自然溶解によって溶解される。
自然溶解は酸化電位の卑なイオンから還元電位の貴なイオンへ電子が移動して進行する。Ag系の酸化電位よりメディエータ由来の金属イオンTa5+系、Cu2+系の還元電位が貴であれば、電子の受け渡し先として機能し、溶解を促進する。その後にメディエータからBr3 へ電子が移動すれば再度、電子の受け渡し先として機能するため継続的な溶解促進効果が得られると考えられる。
図4Aは、メディエータとしてCuClを用いた場合(Cu系、サンプルS1)を示す。析出したAgが溶解するには、Agが電子を失って(酸化されて) Agイオンになる必要がある。Agから電子を受ける機能を果たすのがメディエータ由来の金属イオンCu2+である。S1(Cu系)の場合、還元電位―0.22VのCu2+が酸化電位−0.71VのAgから電子を受けてCuになる。
ここで、電子がCuからBr に移動してBrを形成できればサイクルが完結するが、Br系の還元電位−0.61VよりCu2+系の酸化電位0.314Vは貴であり、電子の移動は生じない。銀粒子の自然溶解はCu2+に電子を受け渡す分以上には生じないことになる。
図4Bは、メディエータとしてTaClを用いた場合(Ta系、サンプルS2)を示す。S2(Ta系)の場合、溶解電圧非印加時はメディエータ由来の金属イオンTa5+系の還元電位−0.77VよりAg系の酸化電位−0.71Vが貴であり、AgからTa5+への電子の受け渡しは生じず自然溶解は進まない。従って、サイクルは成り立たない。なお、Ta5+系の酸化電位―0.89VはBr系の還元電位−0.61Vより卑であり、Ta系からBr系への電子の移動は可能であろう。
サンプルS1とS2においては通電下のレーザ光照射によって生成した銀粒子に対し継続的な自然溶解は生じなかったが、サンプルS4においては通電下のレーザ光照射によって生成した銀粒子に対し継続的な自然溶解が生じた。
図5は、メディエータとしてTaClを用い、Brを高濃度とした場合(Ta系、Br高濃度系、サンプルS4)を示す。S4(Ta、Br高濃度系)の場合、Ag系の酸化電位―0.78VがTaの還元電位―0.77Vより卑であり、Ag系からTa5+系へ電子が移動して銀粒子が溶解する。Ta5+系の酸化電位―0.89VはBr系の還元電位―0.61Vより卑であり、Ta5+系に移動した電子はBr系に移動して、サイクルが成り立つ。そのため、通電下光照射により発生する銀粒子が溶解され、透過率減少が生じないと考えられる。
なお、電解液中のAg系の酸化還元電位はBr等のハロゲン元素の濃度に応じて変化する。サンプルS2ではサイクルが成り立たないのに対し、サンプルS4でサイクルが成り立つのは、Brを多量添加することでAg系の酸化電位が低下したためと考えられる。Br濃度によるAg系電位卑化量を単純なモデルでシミュレーションした。
図6は、シミュレーションの結果を示すグラフである。横軸が電解液中のBr濃度(単位M)を示し、縦軸がAg系電位の変化量(単位V)を示す。Brを高濃度化するほど、Ag系電位は低下している。サンプルS2のBr濃度は0.35Mであり、サンプルS3のBr濃度は1.35M,サンプルS4のBr濃度は2.1Mである。シミュレーション上ではサンプルS2のBr濃度0.35MからサンプルS4のBr濃度2.1Mまでの変化によって、Ag系電位に0.11Vの電位卑化が生じている。図4A,4Bと図5の測定結果では0.07Vの電位卑化であり、シミュレーション結果より実際の電位卑化効果は小さい。
実験において、Br濃度1350mMのサンプルS4でも通電下レーザ光照射の銀析出膜は溶解している。Br濃度が、1.2M以上であれば安定した動作が可能と考えられる。
このような特性の安定したセルを用いれば、安定した特性を示すヘッドアップディスプレイ、NDフィルタ等の電気化学装置を提供することができる。
図7Aは、このED素子をヘッドアップディスプレイ(HUD)の可変コンバイナに用いた場合を示す斜視図である。例えば車両の窓にミラーデバイス25を装着し、通常は透光性状態とし、表示が必要な場合はED素子を動作させ、プロジェクタ21から投影する画像を観察可能にする。必要性が消滅した後は、再び透光性状態とすればよい。
図7Bは、レーザプロジェクタを用いたHUDコンバイナ26において、ED素子をNDフィルタ23として用いた場合を示す斜視図である。レーザプロジェクタ22は、光源において明るさの調整が困難である。そこで、レーザプロジェクタ22の投影する光束をED素子を用いたNDフィルタ23で適当な明るさまで減衰させる。外界の明るさに合わせた、まぶしさのない表示を与えることができる。
図7A,7Bいずれの場合も通電下、レーザ光源からの光の照射を受けても銀析出膜の不溶化が生じないようなED素子を用いて光学システムを形成している。これによりレーザ光源を用いながらも安定的な動作を実現することが可能となる。
以上実施例に沿って、本発明を説明したが、これらは限定的な意味は持たない。例示した材料、数値などは、制限的意味を持たない。
例えば析出材料はAgに限られず銀、ビスマス、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、錫、鉛、及び、銅からなる群より選択される一以上の元素を含む金属であってもよい。通電時光照射における金属粒子は上記のような金属でも起こりえる。また、メディエータは電圧非印加時において析出金属の酸化電位より還元電位が貴であればよく、酸化電位が支持塩由来のイオンの還元電位より卑であればよい。その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。

Claims (11)

  1. 対向配置され、対向面に電極を有する第1、第2の基板と、
    前記第1、第2の基板間に挟持され、金属塩、メディエータ、支持塩、溶媒を含む電解液と、
    を有し、
    前記メディエータが、前記金属塩の金属系の酸化電位より貴な還元電位と、前記支持塩由来のイオン系の還元電位より卑な酸化電位とを有する、
    電気化学装置。
  2. 前記金属塩はAg塩であって、前記支持塩由来のイオンはBr-である請求項1に記載の電気化学装置。
  3. 前記基板の一方とその上の電極は透光性である請求項1または2に記載の電気化学装置。
  4. 前記メディエータはTaを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学装置。
  5. 前記Ag塩は、AgBrであり、前記メディエータはTaClであり、前記支持塩はBr,Clのいずれかを含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の電気化学装置。
  6. 前記電解液中のBr濃度は、1.2M以上である請求項2〜5のいずれか1項に記載の電気化学装置。
  7. 前記Br濃度のBrは、Ag塩のAgBrと支持塩のLiBrが構成する請求項6に記載の電気化学装置。
  8. 前記Agの酸化電位は前記電解液が含むハロゲン元素の濃度によって変化する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の電気化学装置。
  9. さらに、可視光発光のレーザ光源と、
    前記レーザ光源からの発光を前記基板上に照射する光学系と、
    を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学装置。
  10. 前記電気光学装置がヘッドアップディスプレイのコンバイナを構成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学装置。
  11. 前記電気光学装置がNDフィルタを構成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学装置。
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