JP2016065994A - 低抵抗透明多孔質電極及びこれを用いたエレクトロクロミック素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】低電圧印可でエレクトロクロミック化合物の電気化学的酸化還元に基づく消色−着色状態の変化を高速に生じ得るエレクトロクロミック表示素子を提供する。【解決手段】エレクトロクロミック素子Dは、対向電極ユニットFと、作用電極ユニットWと、隔壁3と、電解液4と、エレクトロクロミック材料を備えている。対向電極ユニットFは、対向電極基板1と透明導電層2から構成されている。作用電極ユニットWは、低抵抗透明多孔質電極Eと作用電極基板9から構成されている。低抵抗透明多孔質電極Eは、酸化チタン層などの透明酸化物薄膜層5と、銀層などの半透明金属薄膜層6と、酸化チタン微粒子の堆積凝集体などの透明多孔質導電層7と、透明導電層8から構成されている。エレクトロクロミック材料は、低抵抗透明多孔質電極Eに担持固定化されている。【選択図】図1
Description
本発明は、低電圧かつ高効率で電気化学的酸化還元に基づくエレクトロクロミック反応を可能にするエレクトロクロミック素子と、この素子の作用電極として使用する低抵抗透明多孔質電極に関する。
情報技術の進展に伴い、携行可能なモバイル型情報端末によって、時間と場所に限定されない情報の送受信が盛んに行われている。
使用時の電池消耗を極力減らし、無充電での長時間使用を実現する必要から、情報の表示を担うディスプレイデバイスに関しても、表示性能の向上に加えて、優れた低消費電力性能が要求されている。現在では液晶素子や有機電界発光素子を用いたディスプレイが広く用いられている。
使用時の電池消耗を極力減らし、無充電での長時間使用を実現する必要から、情報の表示を担うディスプレイデバイスに関しても、表示性能の向上に加えて、優れた低消費電力性能が要求されている。現在では液晶素子や有機電界発光素子を用いたディスプレイが広く用いられている。
バックライトや発光素子由来の発光をディスプレイパネルから透過させることによって表示を行う透過型ディスプレイは、表示を続ける限り電力を消費する。このため、表示に発光を必要としない反射型表示が極低消費電力のディスプレイの候補として期待されている。反射表示方式として、反射型液晶、電気泳動、電子粉流体、エレクトロウエッティング、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)等が提唱され、一部が電子書籍端末用のディスプレイとして商用に供されている。
一方、電極上の可逆的な酸化還元反応によって無機又は有機化合物の消色−着色状態を制御して表示を行うエレクトロクロミック表示は、加法混色を基本とする前記反射表示とは異なり、減法混色によるカラー表示が可能であることから、光の利用効率やコントラスト比など視認性の面で優れたカラー反射表示が実現できる。
特許文献1には、電気化学反応速度向上の阻害要因となる電極表面への拡散律速過程が生じず、作用電極近傍で高濃度の電気化学的酸化還元反応を起こさせるエレクトロクロミック表示素子が開示されている。
特許文献1には、電気化学反応速度向上の阻害要因となる電極表面への拡散律速過程が生じず、作用電極近傍で高濃度の電気化学的酸化還元反応を起こさせるエレクトロクロミック表示素子が開示されている。
この素子は、動作電圧の低減や消色−着色状態間の変化をより高速に行わせることを目的としている。エレクトロクロミック化合物の電気化学的な酸化還元反応を作用電極に行わせるが、この素子では、適度な粒径を持つ半導体や導電性の酸化物微粒子を導電性平面基板上に堆積させて、導電性を持った比表面積の大きい多孔質層を形成し、ここにエレクトロクロミック化合物を担持固定化して作用電極を形成している。
電気化学反応に必要な電解液を、こうした多孔質層の内部まで浸透させるのに十分な空隙を得るためには、酸化物微粒子間での接触断面積が小さくなるように酸化物微粒子を堆積凝集させなければならない。また、酸化物微粒子自体の電気抵抗を金属のように十分小さくすることが物性上困難であることから、酸化物微粒子を堆積した多孔質層は必然的に高い電気抵抗を示すことになる。
このため、多孔質層の高電気抵抗は、堆積基板電極近傍と多孔質層表面との間で大きな電圧降下を生じさせるので、担持固定化したエレクトロクロミック化合物の酸化還元反応が多孔質層表面近傍で十分に起こらない。多孔質層表面近傍の化合物まで十分に酸化還元反応を起こさせるため、基板電極により高い電位をかけると、駆動電圧の上昇や基板電極近傍でのエレクトロクロミック化合物の過剰な電極反応が起こり、消色−着色状態の制御が困難になる等、カラー反射表示素子としてディスプレイに応用する上で大きな問題が生じることになる。
電極上の酸化還元反応によって可逆的に消色−着色状態を示す化合物によるエレクトロクロミック反応を、ディスプレイ等の情報表示デバイスへ応用する際には、駆動電圧や消費電力の低減、消色−着色状態間の変化の高速化の観点から、エレクトロクロミック化合物を電極上で高効率に酸化還元反応を行わせる必要がある。
エレクトロクロミック化合物を電解液に溶解した状態で電極反応を行った場合には、作用電極表面から離れた化合物の電極反応速度は電極表面への物質拡散に支配されるため、表示に十分な消色−着色を伴う酸化還元反応を生起させるのに時間を要することになり応答速度を高めることができない。
エレクトロクロミック化合物を電解液に溶解した状態で電極反応を行った場合には、作用電極表面から離れた化合物の電極反応速度は電極表面への物質拡散に支配されるため、表示に十分な消色−着色を伴う酸化還元反応を生起させるのに時間を要することになり応答速度を高めることができない。
そこで、常時表示に必要な量のエレクトロクロミック化合物が作用電極の極近傍に存在するように、比表面積を大きくした電極表面に化合物を担持固定化した作用電極を用いることで、電気化学的酸化還元反応の高効率化が試みられている。また、減法混色によるフルカラー表示を想定した場合、シアン、マゼンタ、イエローの画素を積層する必要があるため、作用電極は可視光領域において高い透明性を有することが望まれる。
そこで、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明導電性膜上に、酸化チタンやITO等の透明性のある酸化物半導体や導電体の微粒子を適度な厚さで堆積凝集させることによって、多孔性かつ比表面積が大きい透明導電層を形成して作用電極とし、この透明多孔質導電層にエレクトロクロミック化合物を担持させることによって作用電極近傍で化合物の電気化学的酸化還元反応を効率よく起させることが提案されている。
しかしながら、可視光透明性を担保するために用いる透明な金属酸化物の半導体や導電体は、その物性上、金属のような低電気抵抗性を持たせることは通常困難である。
また、作用電極として多孔質体には電解液が内部まで十分に浸透するような空隙を確保する必要があり、微粒子の堆積によって多孔質構造を形成する場合には、微粒子間での接触断面積を大きくとることができないため、微粒子間の電気伝導パスが限られることになる。したがって、透明酸化物微粒子の堆積によって形成された多孔質層は高電気抵抗になりやすい。
また、作用電極として多孔質体には電解液が内部まで十分に浸透するような空隙を確保する必要があり、微粒子の堆積によって多孔質構造を形成する場合には、微粒子間での接触断面積を大きくとることができないため、微粒子間の電気伝導パスが限られることになる。したがって、透明酸化物微粒子の堆積によって形成された多孔質層は高電気抵抗になりやすい。
多孔質層が高抵抗であると、基板電極からその厚さ方向に電位降下が起こり、基板電極近傍にある色素の酸化−還元反応は起こっても、多孔質層表面近くなるにつれて電位が十分にかからなくなり酸化還元反応が起こらない事態が生じる。また、このような事態を避けるために、基板電極により高い電位を印可した場合には、エレクトロクロミック素子として駆動電圧の上昇、すなわち消費電力の増加をもたらすばかりでなく、基板電極近傍では、化合物、電解液、及び電極材料に対して過剰な酸化−還元反応が起こり、表示性能や素子性能に悪影響を与えることになる。
多孔質層の低抵抗化は、低消費電力性能、表示特性、素子寿命の向上に寄与する重要な課題である。本願発明者は、多孔質層を構成する酸化物微粒子の堆積凝集体の表面に、可視光透明性と、下地の酸化物微粒子膜の多孔性に影響を与えない程度の厚さで金属の半透明薄膜層と酸化物薄膜層とを形成すると、多孔質層の体積抵抗が銀薄膜層を導入しないものに比べて著しく低下することを見出した。
本発明の目的は、低電圧印可でエレクトロクロミック化合物の電気化学的酸化還元に基づく消色−着色状態の変化を高速に生じ得るエレクトロクロミック表示素子を提供することにある。
本発明の低抵抗透明多孔質電極は、エレクトロクロミック素子の作用電極として機能し、透明多孔質導電膜と、透明多孔質導電膜上に設けられ、可視光透過性を備える金属薄膜と、金属薄膜上に設けられ、可視光透過性及び導電性を備える酸化物薄膜とを有する。本発明の低抵抗透明多孔質電極において、平滑な表面を備える透明導電膜をさらに有し、透明多孔質導電膜が、半導体性又は導電性の酸化物微粒子を平滑な表面上に堆積させて形成されていてもよい。
本発明のエレクトロクロミック素子は、本発明の低抵抗透明多孔質電極を備える作用電極と、作用電極に対向して設けられた対向電極と、作用電極と対向電極との間に設けられた電解質と、エレクトロクロミック材料とを有する。本発明のエレクトロクロミック素子において、エレクトロクロミック材料が低抵抗透明多孔質電極に担持固定化されていることが好ましい。
本発明によれば、低電圧で高速のエレクトロクロミック反応が可能になる。本発明の表示素子を用いることで、高性能な反射型カラーディスプレイを提供することが可能になる。
以下、本発明の低抵抗透明多孔質電極とエレクトロクロミック素子について、実施形態及び実施例に基づいて、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係るエレクトロクロミック素子Dを示している。エレクトロクロミック素子Dは、図1に示すように、対向電極基板1と、対向電極である透明導電層2と、隔壁3と、電解液4と、酸化物薄膜である透明酸化物薄膜層5と、金属薄膜である半透明金属薄膜層6と、透明多孔質導電層7と、透明導電膜である透明導電層8と、作用電極基板9と、エレクトロクロミック材料とを備えている。対向電極基板1と透明導電層2で対向電極ユニットFを構成している。透明酸化物薄膜層5、半透明金属薄膜層6、透明多孔質導電層7、及び透明導電層8で作用電極である低抵抗透明多孔質電極Eを構成している。また、低抵抗透明多孔質電極E及び作用電極基板9で作用電極ユニットWを構成している。
対向電極基板1は可視光透過性を備え、電解液4に対して物理化学的耐性を示す材料から構成される。可視光透過性は、エレクトロクロミック素子の部材として機能できる程度であればよく、透明である必要はない。他の部材の可視光透過性についても同様である。対向電極基板1の材料としては、ガラス、石英、半導体、プラスチック類が挙げられる。透明導電層2も可視光透過性を備えている。透明導電層2は、一般的に導電性を持つ平滑な連続膜が用いられるが、作用電極基板との間での電気化学反応に影響を与えない範囲で、任意のパターンや立体構造を有していても構わない。透明導電層2の材料としては、ITO、酸化スズ、もしくは酸化亜鉛等の酸化物半導体、又はカーボンナノチューブもしくは金属ナノワイヤー等の導電性細線が挙げられる。
作用電極基板9は、対向電極基板1と同様の材料から構成される。透明導電層8は、平滑な表面を備えており、作用電極基板9上に形成されている。なお、透明酸化物薄膜層5又は半透明金属薄膜層6と外部回路との間で、電気的に良好な接触が取れるのであれば、透明導電層8は省略することも可能である。透明多孔質導電層7は、可視光透過性を備え、半導体性又は導電性の酸化物微粒子が透明導電層8の平滑な表面上に堆積されて形成されている。このため、透明多孔質導電層7は多孔性を備えている。なお、半導体性又は導電性は、エレクトロクロミック素子の部材として機能できる程度であればよい。他の部材の半導体性又は導電性についても同様である。
この酸化物微粒子としては、ITO、酸化亜鉛、又は酸化チタンなどの透明酸化物導電体や透明酸化物半導体の微粒子が好ましく用いられる。この微粒子の粒径は特に制限されないが、光学的散乱による可視光損失を低く抑えるために、微粒子の粒径が400nm以下であることが好ましい。電解液の浸透性を確保するための空隙と高い比表面積を両立させ、かつ微粒子懸濁液から塗布乾燥により多孔質層を形成することを可能にする微粒子の粒径は10nm〜100nmであり、この範囲で選択することがさらに好ましい。透明多孔質導電層7の厚さ、すなわち酸化物微粒子の堆積凝集体の厚さは、可視光透過性を失わず、かつ電気化学的反応による着色が十分に視認される量のエレクトロクロミック材料の担持固定を可能にする表面積が得られる厚さで調整され、例えば0.5μm〜4μmの範囲で選択することが好ましい。
半透明金属薄膜層6は可視光透過性を備えている。半透明金属薄膜層6は、透明多孔質導電層7の酸化物微粒子の堆積凝集体の表面に、透明多孔質導電層7の多孔性に影響を与えない程度の厚さで金属が積層されている。この金属の種類は、薄膜状態で可視光透過性があれば特に限定されないが、電気化学反応の作用電極として安定性の高い銀、金、白金、及びこれらの合金等から選択することが好ましい。半透明金属薄膜層6の厚さは、可視光透過性を低下させず、かつ低抵抗性を効果的に発現させる厚さとして、例えば10nm〜50nmの範囲で選択することが好ましい。半透明金属薄膜層6の成膜方法は、均一な薄膜を形成できる方法であれば特に限定されないが、抵抗加熱蒸着、スパッタリング、メッキなどが用いられる。
透明酸化物薄膜層5は、半導体性又は導電性で可視光透過性を備えている。透明酸化物薄膜層5は、半透明金属薄膜層6上に、透明多孔質導電層7の多孔性に影響を与えない程度の厚さで形成されている。透明酸化物薄膜層5の材料は、薄膜状態で可視光透過性を有するものであれば特に限定されない。透明酸化物薄膜層5の厚さは、低電気抵抗性と高可視光透過性を担保する上で、例えば100nm以下となるように調整されるが、より薄い方が好ましく、半透明金属薄膜層6を保護する厚さとして10nm〜50nmの範囲で選択することが好ましい。透明酸化物薄膜層5の成膜方法は、均一な薄膜を形成できる方法であれば特に限定されないが、スパッタリング、化学気層蒸着などが用いられる。
エレクトロクロミック素子Dは密閉セル構造を備えており、セル内部が電解液4で満たされている。電解液4は、支持電解質と溶媒からなる混合溶液である。支持電解質の種類は、エレクトロクロミック化合物の酸化還元等を促進するためものであれば特に限定されず、例えば無機塩ではリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩など、有機塩ではテトラアルキルアンモニウム塩やイオン液体などを支持電解質として好適に用いることができる。
溶媒は、支持電解質を安定的に保持することができれば特に限定されないが、水等の極性溶媒であってもよいし、極性のない有機溶媒、更には、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等であってもよい。具体的には、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を溶媒として用いることができる。
溶媒は、支持電解質を安定的に保持することができれば特に限定されないが、水等の極性溶媒であってもよいし、極性のない有機溶媒、更には、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等であってもよい。具体的には、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を溶媒として用いることができる。
電解液4には、これらの2成分以外に増粘剤や対極反応材料などが含まれていてもよい。隔壁3は、樹脂やガラス等の絶縁体から構成され、対向電極ユニットFと作用電極ユニットWを適当な距離に隔てている。エレクトロクロミック材料は、低抵抗透明多孔質電極Eの透明酸化物薄膜層5や透明多孔質導電層7に担持固定化されている。エレクトロクロミック材料の種類は特に限定されないが、アゾベンゼン誘導体、アントラキノン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テレフタル酸誘導体、ビオロゲン誘導体、フタロシアニン誘導体、フルオラン誘導体等の有機化合物や、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の高分子化合物がエレクトロクロミック材料として挙げられる。エレクトロクロミック材料を低抵抗透明多孔質電極Eに担持する方法としては、化学結合、水素結合、静電吸着などが挙げられる。
本発明の低抵抗透明多孔質電極とエレクトロクロミック素子を下記の実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
1.透明多孔質電極の作製
(1)実施例
まず、水と2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールの質量比が1:1である混合液に、一次粒径が約20nmの酸化チタン粒子分散液SP210(昭和タイタニウム社製)を、分散媒中の混合液の含有量が10質量%となるように添加した後、十分に分散させて分散液を調製した。つぎに、この分散液を0.8mm×5mm×1mmのフッ素ドープ酸化スズ(FTO)付きガラス基板上にスピンコート法により塗布した後、120℃で60分間アニール処理して、厚さ約1.5μmの透明酸化物薄膜層を形成した。なお、FTO層が透明導電層に、ガラス基板が作用電極基板にそれぞれ相当する。そして、RFマグネトロンスパッタ法により、この透明酸化物薄膜層上に、半透明金属薄膜層である銀層を30nm、透明酸化物薄膜層である酸化チタン層を30nmの厚さで順次積層し、実施例の低抵抗透明多孔質電極を作製した。
(1)実施例
まず、水と2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールの質量比が1:1である混合液に、一次粒径が約20nmの酸化チタン粒子分散液SP210(昭和タイタニウム社製)を、分散媒中の混合液の含有量が10質量%となるように添加した後、十分に分散させて分散液を調製した。つぎに、この分散液を0.8mm×5mm×1mmのフッ素ドープ酸化スズ(FTO)付きガラス基板上にスピンコート法により塗布した後、120℃で60分間アニール処理して、厚さ約1.5μmの透明酸化物薄膜層を形成した。なお、FTO層が透明導電層に、ガラス基板が作用電極基板にそれぞれ相当する。そして、RFマグネトロンスパッタ法により、この透明酸化物薄膜層上に、半透明金属薄膜層である銀層を30nm、透明酸化物薄膜層である酸化チタン層を30nmの厚さで順次積層し、実施例の低抵抗透明多孔質電極を作製した。
(2)比較例
実施例と同様の手順でSP210をFTOガラス基板上に成膜し、酸化チタン微粒子のみを堆積させて、すなわち銀層と酸化チタン層を積層しないで、比較例の酸化チタン微粒子透明多孔質電極を作製した。
実施例と同様の手順でSP210をFTOガラス基板上に成膜し、酸化チタン微粒子のみを堆積させて、すなわち銀層と酸化チタン層を積層しないで、比較例の酸化チタン微粒子透明多孔質電極を作製した。
2.透明多孔質電極の抵抗評価
3mm×14mmの長方形状の穴が2mm間隔で配置されたメタルマスクを用いて、実施例と比較例のそれぞれの透明多孔質電極上に金を50nmの厚さで加熱抵抗蒸着し、金電極パターンを作製した。透明多孔質電極の金電極パターン間に電圧を印加し、電流−電圧特性から体積抵抗率を算出した結果、実施例の低抵抗透明多孔質電極の体積抵抗率は2.04×10-4Ω・cmであり、比較例の酸化チタン微粒子透明多孔質電極の体積抵抗率は2.61×106Ω・cmであった。この結果から、実施例の低抵抗透明多孔質電極の抵抗が低いことを確認した。
3mm×14mmの長方形状の穴が2mm間隔で配置されたメタルマスクを用いて、実施例と比較例のそれぞれの透明多孔質電極上に金を50nmの厚さで加熱抵抗蒸着し、金電極パターンを作製した。透明多孔質電極の金電極パターン間に電圧を印加し、電流−電圧特性から体積抵抗率を算出した結果、実施例の低抵抗透明多孔質電極の体積抵抗率は2.04×10-4Ω・cmであり、比較例の酸化チタン微粒子透明多孔質電極の体積抵抗率は2.61×106Ω・cmであった。この結果から、実施例の低抵抗透明多孔質電極の抵抗が低いことを確認した。
3.エレクトロクロミック材料の透明多孔質電極への吸着
実施例と比較例のそれぞれの透明多孔質電極を、ホスホン酸基を有するビオロゲン誘導体の1mM(M=mol/L)水溶液に1時間浸漬し、酸化チタン表面にビオロゲン誘導体を吸着させた。吸着処理前後でのビオロゲン誘導体水溶液の紫外吸収スペクトルの変化から、透明多孔質電極に吸着されたビオロゲン誘導体の量を算出した結果、実施例の低抵抗透明多孔質電極には4.39×10-8mol、比較例の酸化チタン微粒子透明多孔質電極には5.55×10-8molのビオロゲン誘導体がそれぞれ吸着していた。この結果から、実施例と比較例の透明多孔質電極は、ほぼ同量のビオロゲン誘導体が吸着されることを確認した。なお、実施例の低抵抗透明多孔質電極では、透明酸化物薄膜層と透明酸化物薄膜層の両方の酸化チタン表面にビオロゲン誘導体が吸着していると考えられる。
実施例と比較例のそれぞれの透明多孔質電極を、ホスホン酸基を有するビオロゲン誘導体の1mM(M=mol/L)水溶液に1時間浸漬し、酸化チタン表面にビオロゲン誘導体を吸着させた。吸着処理前後でのビオロゲン誘導体水溶液の紫外吸収スペクトルの変化から、透明多孔質電極に吸着されたビオロゲン誘導体の量を算出した結果、実施例の低抵抗透明多孔質電極には4.39×10-8mol、比較例の酸化チタン微粒子透明多孔質電極には5.55×10-8molのビオロゲン誘導体がそれぞれ吸着していた。この結果から、実施例と比較例の透明多孔質電極は、ほぼ同量のビオロゲン誘導体が吸着されることを確認した。なお、実施例の低抵抗透明多孔質電極では、透明酸化物薄膜層と透明酸化物薄膜層の両方の酸化チタン表面にビオロゲン誘導体が吸着していると考えられる。
4.エレクトロクロミック素子の作製
まず、実施例と比較例のそれぞれの透明多孔質電極を、ホスホン酸基を有するビオロゲン誘導体の10mM水溶液に24時間以上浸漬し、酸化チタン表面にビオロゲン誘導体を吸着させた。つぎに、1cm×1cm×4.5cmのガラスセルに100mMのLiClO4を含むγ−ブチロラクトン溶液を入れ、ビオロゲン誘導体を吸着させた透明多孔質電極を作用電極、白金線を対極、Ag/AgClを参照電極とした3極素子を構成することで、実施例のエレクトロクロミック素子A(低抵抗透明多孔質電極)、比較例のエレクトロクロミック素子B(酸化チタン微粒子透明多孔質電極)を作製した。
まず、実施例と比較例のそれぞれの透明多孔質電極を、ホスホン酸基を有するビオロゲン誘導体の10mM水溶液に24時間以上浸漬し、酸化チタン表面にビオロゲン誘導体を吸着させた。つぎに、1cm×1cm×4.5cmのガラスセルに100mMのLiClO4を含むγ−ブチロラクトン溶液を入れ、ビオロゲン誘導体を吸着させた透明多孔質電極を作用電極、白金線を対極、Ag/AgClを参照電極とした3極素子を構成することで、実施例のエレクトロクロミック素子A(低抵抗透明多孔質電極)、比較例のエレクトロクロミック素子B(酸化チタン微粒子透明多孔質電極)を作製した。
5.エレクトロクロミック素子の評価
ポテンショスタットALS1200B(ALS社製)を用いて、エレクトロクロミック素子A及びエレクトロクロミック素子Bの作用電極に−0.6Vの定電位を印加し、透明多孔質電極上のビオロゲン誘導体の着色応答を測定した。図2は、エレクトロクロミック素子A及びエレクトロクロミック素子Bの着色応答特性を示している。
ポテンショスタットALS1200B(ALS社製)を用いて、エレクトロクロミック素子A及びエレクトロクロミック素子Bの作用電極に−0.6Vの定電位を印加し、透明多孔質電極上のビオロゲン誘導体の着色応答を測定した。図2は、エレクトロクロミック素子A及びエレクトロクロミック素子Bの着色応答特性を示している。
図2において、エレクトロクロミック素子Aは電位印加後約15秒で最大着色濃度に到達し、その際の吸収ピークである600nmの吸光度変化量は約0.225であった。エレクトロクロミック素子Bは電極反応の進行が遅く、60秒間電位を印加し続けても最大着色濃度に到達せず、吸光度は微増し続けた。60秒経過時点での吸光度変化は約0.025であった。この結果から、実施例の低抵抗透明多孔質電極上では、酸化チタン表面に吸着されたビオロゲン誘導体の電気化学反応が高速で進行することを確認した。
D エレクトロクロミック素子
E 低抵抗透明多孔質電極
F 対向電極ユニット
W 作用電極ユニット
1 対向電極基板
2 透明導電層
3 隔壁
4 電解液
5 透明酸化物薄膜層
6 半透明金属薄膜層
7 透明多孔質導電層
8 透明導電層
9 作用電極基板
E 低抵抗透明多孔質電極
F 対向電極ユニット
W 作用電極ユニット
1 対向電極基板
2 透明導電層
3 隔壁
4 電解液
5 透明酸化物薄膜層
6 半透明金属薄膜層
7 透明多孔質導電層
8 透明導電層
9 作用電極基板
Claims (4)
- エレクトロクロミック素子の作用電極として機能する低抵抗透明多孔質電極であって、
透明多孔質導電膜と、
前記透明多孔質導電膜上に設けられ、可視光透過性を備える金属薄膜と、
前記金属薄膜上に設けられ、可視光透過性及び導電性を備える酸化物薄膜と、
を有する低抵抗透明多孔質電極。 - 請求項1において、
平滑な表面を備える透明導電膜をさらに有し、
前記透明多孔質導電膜が、半導体性又は導電性の酸化物微粒子を前記平滑な表面上に堆積させて形成されている低抵抗透明多孔質電極。 - 請求項1又は2の低抵抗透明多孔質電極を備える作用電極と、
前記作用電極に対向して設けられた対向電極と、
前記作用電極と前記対向電極との間に設けられた電解質と、
エレクトロクロミック材料と、
を有するエレクトロクロミック素子。 - 請求項3において、
エレクトロクロミック材料が前記低抵抗透明多孔質電極に担持固定化されているエレクトロクロミック素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014195356A JP2016065994A (ja) | 2014-09-25 | 2014-09-25 | 低抵抗透明多孔質電極及びこれを用いたエレクトロクロミック素子 |
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JP2014195356A JP2016065994A (ja) | 2014-09-25 | 2014-09-25 | 低抵抗透明多孔質電極及びこれを用いたエレクトロクロミック素子 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111487829A (zh) * | 2020-05-23 | 2020-08-04 | 宁波祢若电子科技有限公司 | 一种改进电致变色器件及包括该器件的移动终端 |
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2014
- 2014-09-25 JP JP2014195356A patent/JP2016065994A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111487829A (zh) * | 2020-05-23 | 2020-08-04 | 宁波祢若电子科技有限公司 | 一种改进电致变色器件及包括该器件的移动终端 |
CN111487829B (zh) * | 2020-05-23 | 2022-10-14 | 宁波祢若电子科技有限公司 | 一种改进电致变色器件及包括该器件的移动终端 |
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