JP2009192985A - エレクトロクロミック装置及びその製造方法 - Google Patents

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Motohiro Tagaya
基博 多賀谷
Hisanori Tsuboi
寿憲 坪井
Shinichi Sawada
真一 澤田
Uri Ri
于利 李
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Abstract

【課題】低温プロセスで形成でき密着性と耐久性に優れた多孔質電極を有するエレクトロクロミック装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】支持基板1に形成された透明電極2に、導電性高分子とナノ粒子によって形成された複合体、或いは、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成された複合体よりなる多孔質電極4が形成され、この複合体が活性化処理された後、有機EC色素3が担持され、表示電極構造体11が形成される。複合体は150度以下の低温プロセスによって形成され、支持基板としてプラスチック基板を使用できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、応答速度、発色効率、表示色純度に優れ、明瞭で鮮鋭な画像形成が可能であり、繰り返し耐久性にも優れ、薄型化やフレキシブル化が可能なエレクトロクロミック装置及びその製造方法に関し、特に、低温プロセスで形成することができ、密着性に優れた多孔質電極を有し、耐久性に優れたエレクトロクロミック装置及びその製造方法を提供することにある。
近年、明るく色純度に優れ、且つ、省消費電力で、フルカラー表示への応用が容易な表示色素材料やこれを用いた表示素子への要望が高まってきている。従来、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、ELD(Electroluminescence Display)VFD(Vacuum Fluorescent Display)、FED(Field Emission Display)、LED(Light Emitting Diode)等の発光型素子、DMD(Digital Micromirror Display)、LCD(Liquid Crystal Display)、ECD(Electrochromic Display)、EPD(Electrophoresis Display)等の非発光型素子に関する多くの技術の提案がなされている。
しかし、従来公知の各種発光型素子を用いた表示デバイスは、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
特に、LCDは、非発光型素子の中でも需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。また、LCDを使用している携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、表示光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
非発光型素子のうち反射型表示素子に関しては、電子ペーパーの需要向上により、従来から様々な技術の提案がなされている。例えば、反射型LCDや電気泳動方式の表示デバイスが挙げられる。
反射型LCDとしては、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらの方式は、従来の透過型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力という利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
他方、電気泳動方式の表示デバイスは、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行なう場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
また、近年においては、自動車の調光ミラーや時計等に、エレクトロクロミック(以下、ECと略記する。)素子を用いたものが提案されている。このEC素子は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、発色型で視認性に優れ、構造が簡易で且つ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
具体的なEC素子を用いた表示装置の例としては、1対の透明電極の少なくとも一方に半導体ナノ多孔質層を設け、この半導体ナノ多孔質層にEC色素を担持させた構成の表示装置が提案されている(例えば、後記する特許文献1、2を参照。)。これらの表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
イエロー、シアン、マゼンタの各EC色素をそれぞれ担持させた構造単位を積層させた構成を有し、フルカラー表示を行なうことができるEC表示は周知である(例えば、後記する特許文献3、4、5を参照。)。
「エレクトロクロミック装置」と題する特許文献1、2には、以下の記載がある。
半導体ナノ多孔質層を形成する方法としては、特に制限はなく、半導体の種類に応じて適宜選定することができ、例えば、金属陽極酸化法、陰極析出法、スクリーン印刷法、ゾルゲル法、熱酸化法、真空蒸着法、dc及びrfスパッタ法、化学気相堆積法、有機金属化学気相堆積法、分子線堆積法、レーザーアブレーション法等が挙げられ、また、上記方法を組み合わせて半導体ナノ多孔質層を作製することもできる。
「電気化学セルのためのメソ多孔性ネットワーク電極」と題する特許文献6には、以下の記載がある。
図13は従来技術を説明する図であり、図13(A)、図13(B)、図13(C)、図13(D)はそれぞれ、特許文献6に記載の図1、図2、図3A、図3Bであり、図13(A)は、焼結したナノ粒子から作られた、従来技術の粗いフィルムの色素増感された光電気化学装置の模式断面図を示し、図13(B)は、従来技術の複合ナノ粒子電池の模式断面図を示し、図13(C)は、蒸着した金属流コレクターを有する、特許文献6の発明のナノ構造の電極層の模式断面図を示し、図13(D)は、可撓性の金属流コレクター箔にコーティングされた、ナノ粒子及び多孔性微粒子を有する、双峰粒径分布を含む特許文献6の発明の電極層の模式断面図を示す。
図13(A)を参照して、光電気化学セル111は、所望により白金触媒でコーティングされた、そこに堆積された透明導電性フィルム114を有するガラスカバー113及び、レドックス電解質115、例えばヨウ素−ヨウ化物充電担体を含み、これらはすべて光112に透明である。
光エネルギーは、フィルムの表面に接着され、電解質115と交流している光増感染料116を有する粗い半導体フィルム117によって電子に変換される。半導体フィルムは、堅い導電体118上に焼結することによって電子的に接触される。
図13(B)を参照して、電気化学発電機120は、堅い金属導電性電極126に結合された、炭素粒子124及びバインダー125に固定された電気化学的に活性な物質123のナノ粒子からなる圧縮フリットから作られたナノ粒子電極122、大部分がリザーバー128又は多孔性スペーサー129にあるイオン伝導性電解質127を含む。ナノ粒子電極は、標準の対の電極121に向いている。
図13(C)を参照して、電気化学セルの電極140の1つの実施態様は、ろ過クラスターを形成しているさらなるナノ粒子と接触している別個の電気活性なナノ粒子141、ナノ粒子のクラスターの周りにネットワークとして分散されたバインダー粒子142及び、導電性フィルムを含む電流コレクター143を含む。
図13(D)参照して、電気化学セルの電極150の別の実施態様は、ろ過クラスターを形成しているさらなるナノ粒子及び微粒子153と接触している別個の電気活性なナノ粒子141(これらはすべて固い電流コレクター154と接触している)、クラスター中に散在して分散されたバインダー粒子142及び電気伝導性の粒子155を含む。粒子間の多孔性空間は、電解質156で満たされる。
「エレクトロクロミック粒子」と題する特許文献7には、以下の記載がある。
エレクトロクロミック粒子は、導電性、半導電性又は絶縁性のナノ粒子及び1又はそれを超えるエレクトロクロミック化合物を溶媒中で混合し、所望により、得られるエレクトロクロミック粒子を単離することによって調製し得る。
ナノ粒子は、溶媒中でエレクトロクロミック化合物(又は複数の化合物)と混合する前に、溶媒に懸濁し得る。後半の場合では、ナノ粒子溶媒及びエレクトロクロミック化合物溶媒は好ましくは同じである。混合は、典型的には、略25度の温度にて、略30分ないし2時間行なう。得られたエレクトロクロミック粒子は、例えば、遠心分離、及び、略50度ないし90度の範囲の温度にて略6時間ないし30時間乾燥させるような何れかの好適な手段によって単離し得る。
電極を形成するためには、乾燥したエレクトロクロミック粒子をN−メチルピロリドン又はポリビニルジフルオライドのごとき溶媒にペーストを形成するように分散し得、それは例えばステンシル・コーティング又はインクジェット・プリント又はスクリーン・プリントによって好適な基板に塗布し得る。基板上のペーストは、約50度ないし200度、好ましくは約80度ないし150度の範囲の温度にて乾燥し得る。基板は、例えば、ガラス、セラミック、金属又はプラスチックから形成され得、これらは所望によりフッ素又はアンチモンをドープした酸化錫のごとき導電性材料の層でコートされていてもよい。
「有機透明導電膜、その製造方法及び電流駆動素子」と題する特許文献8には、以下の記載がある。
図14は従来技術を説明する図であり、特許文献8に記載の図1であり実施の形態に係る有機透明導電体を用いた有機透明電極体の一部を拡大した断面図である。
有機透明電極体161は、光透過性を有する基材162と、基材162上に設けられた透明導電膜1633とから構成される。透明導電膜163は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との複合高分子によりマトリックス164を形成し、マトリックス164に導電性ナノ粒子1645を分散している。
透明導電体の製造方法は、水又は溶媒に、PEDOTとPSSの含有比率を1:1.5〜1:6とした複合高分子材料を分散させた後、更に導電性ナノ粒子を均一に分散させた溶液を調製し、その後、光透過性を有する基材の少なくとも一方の面に、複合高分子材料を含む溶液を塗布、乾燥して透明導電膜を形成した有機透明導電体とするものである。
「色素増感型太陽電池及びその製造方法」と題する特許文献9には、以下の記載がある。
色素増感型太陽電池の製造方法は、酸化物半導体電極材に、金属アルコキシド溶液、金属の無機化合物溶液、金属錯体溶液のうち少なくとも1種を接触させることにより、前記金属酸化物膜或いは前記金属酸化物微粒子を形成することを特徴とする。なお、金属の無機化合物としては、金属のハロゲン化物が好ましく、その中でも特に塩化物が好ましく、金属錯体としてはβジケトン錯体が好ましい。
色素増感型太陽電池のアノード電極の製造方法について説明する。先ず、酸化物半導体微粒子、溶剤、バインダー等を含有する酸化物半導体ペーストを調製する。調製した酸化物半導体ペーストを基板上に塗布する。その後、基板上に塗布した酸化物半導体ペーストを、必要に応じて乾燥させた後、空気中、600度(摂氏温度)以下の温度で焼成することにより、酸化物半導体微粒子が多数堆積された多孔質層が形成される。
次いで、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、マンガン、銅、ゲルマニウム、ガリウム、ジルコニウムのうち1種又は複数種の金属のアルコキシド、或いは上記金属のハロゲン化物等の無機化合物、或いは上記金属の錯体等の分散液又は溶液を調整し、これらの分散液又は溶液のうち1種、或いは複数種を混合したものを上記で作製した多孔質層に接触させる。作製した分散液又は溶液を多孔質層に接触させる方法としては、具体的には、作製した分散液又は溶液に多孔質層を浸漬させる、作製した分散液又は溶液を多孔質層に塗布する等を意味している。また、金属ハロゲン化物としては塩化物が好ましく、金属錯体としてはβジケトン錯体が好ましい。
作製した分散液又は溶液を接触させた多孔質層を必要に応じて乾燥させた後、空気中、600度(摂氏温度)以下の温度で焼成することにより、多孔質層を構成する酸化物半導体微粒子の少なくとも一部を金属酸化物膜又は金属酸化物微粒子により被覆する。
実施例1では、多孔質SnO2層を形成した後、ジルコニウムテトライソプロポキシド(関東化学社製)の4重量%エタノール溶液中に24時間浸漬させ、エタノールで洗浄した後、空気中、550度(摂氏温度)で60分間焼成を行なうことにより、多孔質SnO2層を構成する各酸化物半導体微粒子(SnO2微粒子)表面に酸化ジルコニウムからなる金属酸化物膜を形成した。形成された金属酸化物膜の膜厚は約2nmであった。
色素増感型太陽電池に関する非特許文献1には、以下の記載がある。
低熱耐性の有機ポリマーのフレキシブルシート上に光起電力電極を供給するためには、プロセス温度の低下が有利である。最近、電気的に結合されたネットワークが100度(摂氏温度)でのシンタリングによって達成されたと報告された。チタニアフィルムの圧縮と粒子間空間へのチタ二ウムアルコキシド又はクロライドの添加は、加熱プロセスなしに光起電力の性能の改善に有効であった。
基板上での直接結晶成長によるチタニア電極の調製(プロセス1)では、チタニウムテトラフロライドを純水に溶解して、0.04Mチタニウムテトラフロライド前駆体溶液を調製し、これにアンモニア水を添加してpHを1.9に調製する。フッ素がドープされた二酸化錫でコートされた透明導電性ガラスを溶液に浸漬し電気炉中で60度(摂氏温度)に保持され、所定の堆積時間の後にチタニアが堆積された基板が得られ、室温で乾燥される。
チタニアペーストを使用したドクタブレード法によるチタニア電極の調整及び溶液中での修飾(プロセス2)では、厚さ3−15μmの多孔質チタニアフィルムは、市販のチタニア粉末を分散させて調製したチタニアペーストを使用してドクタブレード法によって調製され、100度(摂氏温度)で24時間乾燥される。多孔質チタニアフィルムの修飾は、プロセス1のために調製された0.04Mチタニウムテトラフロライド前駆体溶液に60度(摂氏温度)で10−240分浸漬されてなされた。粒子間の結合は100度(摂氏温度)の乾燥工程では十分に形成されなかった。0.04Mチタニウムテトラフロライド溶液への多孔質フィルムの浸漬は、ナノ粒子上へのアナターゼチタニアの結晶成長をもたらし、アナターゼによるネック形成が認められた。溶液中での結晶成長は粒子間の結合を増強し、粒子間の空間を徐々に埋めていった。
特開2003−248242号公報(段落0008、段落0025、図1、図2) 特開2003−270670号公報(段落0008、段落0031、図1〜図4) 特開2007−10975号公報(段落0028、段落0046) 特開2007−41259号公報(段落0011〜0012、段落0148、図1〜図4) 特開2007−121714号公報(段落0071〜0088) 特表2004−533702号公報(段落0030〜0034、図1、図2、図3) 特表2006−518408号公報(段落0020〜0029) 特開2007−80541号公報(段落0019、0044、図1) 特開2002−100418号公報(段落0024、0042〜0045、0065) T. Watanabe et al,"Low-temperature preparation of Dye-sensitized solar sells through crystal growth of anatase titania in aqueous solutions",Solar Energy Materials & Solar Cells, 90(2006)640-648(1, 2.1, 2.2, 3.2)
従来技術における、EC素子を用いた表示装置の構成では、表示電極として、透明電極上にゾル−ゲル法により多孔質チタニアが形成されたもの(特許文献1を参照。)、及び、透明電極上に酸化チタンペーストからなる多孔質電極が設けられたもの(特許文献2を参照。)が記載されている。
従来技術におけるエレクトロクロミック装置においては、これを構成する多孔質電極は、例えば、酸化チタン等の金属酸化物ナノ粒子と硬化性有機バインダーや増粘剤とを混合した塗料を支持基板上へ、スキージ法、ディップコート法、バーコート法等の方法により塗布した後、400度〜600度程度の高温条件下で焼成処理することによって作製されていた。なお、以下の説明では、温度は摂氏温度で示すものとする。
特許文献1に具体的に記載されている表示装置の表示電極は、導電性基板上へ酸化チタンのゾル溶液を塗布し、その後450度で焼成することにより形成されている。また、特許文献2に記載されている表示装置の表示電極は、導電性基板上へ酸化チタンペーストを塗布し、その後550度で焼成することにより形成されている。
従来技術における多孔質電極の形成方法では、エレクトロクロミック色素の発色における吸光度を高めるために厚膜にする必要があり、透明性が低いとう問題があった。更に、硬化性有機バインダーや増粘剤を除去し、ナノ粒子同士の融合反応を誘起させるため、高温加熱工程が必要であり、プラスチック基板上への形成が困難であるとう問題があった。このように従来技術では、厚膜の形成が必要であること、硬化性有機バインダーや増粘剤を使用すること、高温加熱過程が必要であること等のために製造コストが高くなるという問題があった。
フルカラー画像の表示を行なうために、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3層の発色層を積層させた構成のデバイスを構築しようとする場合には、支持基板としては透明な材料が好適である。また、各画素の視差低減を図るためには、支持基板として充分な機械的な強度をもつ薄い材料が好適である。
更に、表示装置としての利便性を向上させるべく、形状の自由度を増すためには、フレキシブルな形態のものであることが望ましいが、この場合には、支持基板は、プラスチック材料が好適であり、この形状変化に追従可能なように多孔質電極と支持基板との間の密着性を強く確保することが必要となる。
しかし、従来技術においては、高温条件下で多孔質電極を成膜しているので、プラスチック材料の耐熱性のために、上述したフレキシブルな形態の表示装置を作製する場合に適用できないという問題があった。
以下、本明細書では、「多孔質電極」は、比表面積が大きく、何らかの分子を担持可能な細孔構造を有する電極を意味し、細孔径による多孔体のIUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)による分類に従って2nm<直径<50nmの細孔をメソ孔と称し、「メソスケールの細孔」は、2nm<直径<50nmである細孔を意味するものとする。
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、低温プロセスで形成することができ、良好な状態の細孔構造をもち、密着性に優れた多孔質電極を有し、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置及びその製造方法を提供することにある。
即ち、本発明は、支持基板(例えば、後述の実施の形態における支持基板1、6)と、この支持基板上に形成された電極(例えば、後述の実施の形態における透明電極2、7)と、導電性高分子とナノ粒子によって形成された複合体が前記電極上に形成され、前記複合体が活性化処理されてなる多孔質電極(例えば、後述の実施の形態における多孔質電極4、8)とから構成された電極構造体を有するエレクトロクロミック装置に係るものである。
また、本発明は、支持基板(例えば、後述の実施の形態における支持基板1、6)と、この支持基板上に形成された電極(例えば、後述の実施の形態における透明電極2、7)と、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成された複合体が前記電極上に形成され、前記複合体が活性化処理されてなる多孔質電極(例えば、後述の実施の形態における多孔質電極4、8)とから構成された電極構造体を有するエレクトロクロミック装置に係るものである。
また、本発明は、支持基板(例えば、後述の実施の形態における支持基板1、6)と、この支持基板上に形成された電極(例えば、後述の実施の形態における透明電極2、7)と、この電極上に形成された多孔質電極(例えば、後述の実施の形態における多孔質電極4、8)とから構成される電極構造体を有するエレクトロクロミック装置の製造方法であって、導電性高分子とナノ粒子が溶媒に分散された溶液を調製する第1工程と、前記電極に前記溶液を塗布し塗布膜を形成する第2工程と、加熱によって前記溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させ、前記導電性高分子と前記ナノ粒子によって形成された複合体からなる前記多孔質電極を形成する第3工程と、前記複合体を活性化処理する第4工程とを有するエレクトロクロミック装置の製造方法に係るものである。
また、本発明は、支持基板(例えば、後述の実施の形態における支持基板1、6)と、この支持基板上に形成された電極(例えば、後述の実施の形態における透明電極2、7)と、この電極上に形成された多孔質電極(例えば、後述の実施の形態における多孔質電極4、8)とから構成される電極構造体を有するエレクトロクロミック装置の製造方法であって、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成される複合体からなる前記多孔質電極を形成する第1工程と、前記複合体を活性化処理する第2工程とを有するエレクトロクロミック装置の製造方法に係るものである。
本発明によれば、支持基板と、この支持基板上に形成された電極と、導電性高分子とナノ粒子によって形成された複合体が前記電極上に形成され、前記複合体が活性化処理されてなる多孔質電極とから構成された電極構造体を有するので、前記導電性高分子と前記ナノ粒子が活性化処理され、前記導電性高分子の前記ナノ粒子への吸着が安定化され、前記導電性高分子と前記ナノ粒子による前記複合体が安定して形成された前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を提供することができる。
また、本発明によれば、支持基板と、この支持基板上に形成された電極と、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成された複合体が前記電極上に形成され、前記複合体が活性化処理されてなる多孔質電極とから構成された電極構造体を有するので、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物の脱水縮合により前記ナノ粒子がネッキングされ、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子によって形成された前記複合体が活性化処理され安定化された前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、支持基板と、この支持基板上に形成された電極と、この電極上に形成された多孔質電極とから構成される電極構造体を有するエレクトロクロミック装置の製造方法であって、導電性高分子とナノ粒子が溶媒に分散された溶液を調製する第1工程と、前記電極に前記溶液を塗布し塗布膜を形成する第2工程と、加熱によって前記溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させ、前記導電性高分子と前記ナノ粒子によって形成された複合体からなる前記多孔質電極を形成する第3工程と、前記複合体を活性化処理する第4工程とを有するので、前記導電性高分子と前記ナノ粒子が活性化処理され、前記導電性高分子の前記ナノ粒子への吸着が安定化され、前記導電性高分子と前記ナノ粒子による前記複合体が安定して形成された前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、支持基板と、この支持基板上に形成された電極と、この電極上に形成された多孔質電極とから構成される電極構造体を有するエレクトロクロミック装置の製造方法であって、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成される複合体からなる前記多孔質電極を形成する第1工程と、前記複合体を活性化処理する第2工程とを有するので、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物の脱水縮合により前記ナノ粒子がネッキングされ、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子によって形成された前記複合体が活性化処理され安定化された前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を製造することができる。
本発明のエレクトロクロミック装置では、前記複合体がUVオゾン処理によって活性化処理された構成とするのがよい。前記UVオゾン処理において生じる光酸素酸化反応によって、前記導電性高分子と前記ナノ粒子によって形成された前記複合体が活性化処理され、前記導電性高分子が前記ナノ粒子に安定して吸着され前記複合体が安定化される。
また、前記導電性高分子がポリビニルピロリドンである構成とするのがよい。前記ナノ粒子が前記ポリビニルピロリドンによってネッキングされ前記複合体が形成され、安定した前記多孔質電極を形成することができる。また、前記ポリビニルピロリドンは水によく溶けるので、所望の厚さを有する前記多孔質電極をスピンコート法等の塗布法によって容易に形成することができる。
また、前記ナノ粒子が酸化チタン(TiO2)からなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記酸化チタンと前記ポリビニルピロリドンを合わせた含有率が0.3g/cm3以下である構成とするのがよい。前記酸化チタンと前記ポリビニルピロリドンよって形成された前記複合体に対して、前記酸化チタン同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、作成された前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。一方、酸化チタンナノ粒子を含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても、焼結処理をしていないためフラットバンド電位が下がっておらず、良好なエレクトロクロミック特性を示さない、また、酸化チタンナノ粒子とPEG(ポリエチレングリコール)(導電性高分子でない)とを含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても良好なエレクトロクロミック特性を示さない。上記構成によれば、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を十分なものとすることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができる。上記の構成から外れると、前記ポリビニルピロリドンの量が前記ナノ粒子の量に対して少ない場合には、円滑な電子移動が起こらない可能性があり、前記ポリビニルピロリドンの量が前記ナノ粒子の量に対して多い場合には、前記多孔質電極における細孔容積が前記エレクトロクロミック色素の担持量に対して不足して十分なエレクトロクロミック特性が得られなかったり、前記ポリビニルピロリドンの存在量が多過ぎて水に対する耐久性が悪くなる可能性がある。
また、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化された構成とするのがよい。このような構成によれば、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化され、前記ナノ粒子が安定して前記電極の面に吸着され前記電極との密着性に優れた前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置が可能となる。
本発明のエレクトロクロミック装置では、前記複合体がUVオゾン処理によって活性化処理された構成とするのがよい。前記UVオゾン処理において生じる光酸素酸化反応によって、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子によって形成された前記複合体が活性化処理され安定化される。
また、前記金属ハロゲン化物が四フッ化チタン(TiF4)である構成とするのがよい。前記四フッ化チタンの脱水縮合により前記ナノ粒子がネッキングされ、前記ナノ粒子と前記四フッ化チタンによって形成された前記複合体に対して、前記ナノ粒子同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、作成された前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。
また、前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記多孔質電極における細孔容積が0.05mL/cm3以上である構成とするのがよい。前記酸化チタンと前記四フッ化チタンによって形成された前記複合体に対して、前記酸化チタン同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、作成された前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。一方、酸化チタンナノ粒子を含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても、焼結処理をしていないためフラットバンド電位が下がっておらず、良好なエレクトロクロミック特性を示さない、また、酸化チタンナノ粒子とPEG(導電性高分子でない)とを含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても良好なエレクトロクロミック特性を示さない。
また、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化された構成とするのがよい。このような構成によれば、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化され、前記ナノ粒子が安定して前記電極の面に吸着され前記電極との密着性に優れた前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置が可能となる。
上述のエレクトロクロミック装置では、前記電極は透明電極であり、前記電極構造体は観察される表示側に設けられた表示電極構造体であり、酸化反応又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素が前記複合体に担持された構成とするのがよい。前記表示電極構造体における前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を提供することができる。
また、前記ナノ粒子は、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモン(Sb23)と酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウム(In23)と酸化錫の複合酸化物の何れかである構成とするのがよい。前記導電性高分子により前記ナノ粒子がネッキングされ、或いは、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物の脱水縮合により前記ナノ粒子がネッキングされ、前記複合体が形成され、安定した前記多孔質電極を形成することができる。
また、前記多孔質電極は、600nm以上800nm以下の波長領域において80%以上の透過率を有する構成とするのがよい。この構成によれば、鮮明で色純度を高くすることができるエレクトロクロミック装置を提供することができる。ここで、透過率は、前記支持基板に、前記透明電極、及び、前記多孔質電極が形成された前記極構造体について測定されたものであって、前記多孔質電極に前記エレクトロクロミック色素が担持されていない状態で測定された透過率である(以下の説明においても同様の意味である。)。
また、前記ナノ粒子の直径が2nm以上、50nm以下である構成とするのがよい。前記エレクトロクロミック色素の担持量を十分なものとすることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができる。
また、前記支持基板がプラスチック基板である構成とするのがよい。薄型でフレキシブルなエレクトロクロミック装置を提供することができる。
本発明のエレクトロクロミック装置の製造方法では、前記第4工程において、前記複合体をUVオゾン処理によって活性化処理する構成とするのがよい。前記UVオゾン処理において生じる光酸素酸化反応によって、前記導電性高分子と前記ナノ粒子によって形成された前記複合体が活性化処理され、前記導電性高分子が前記ナノ粒子に安定して吸着され前記複合体が安定化される。
また、前記導電性高分子がポリビニルピロリドンである構成とするのがよい。前記ナノ粒子が前記ポリビニルピロリドンによってネッキングされ前記複合体が形成され、安定した前記多孔質電極を形成することができる。また、前記ポリビニルピロリドンは水によく溶けるので、所望の厚さを有する前記多孔質電極をスピンコート法等の塗布法によって容易に形成することができる。
また、前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記酸化チタンと前記ポリビニルピロリドンを合わせた含有率が0.3g/cm3以下である構成とするのがよい。前記酸化チタンと前記ポリビニルピロリドンよって形成された前記複合体に対して、前記酸化チタン同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、作成された前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。一方、酸化チタンナノ粒子を含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても、焼結処理をしていないためフラットバンド電位が下がっておらず、良好なエレクトロクロミック特性を示さない、また、酸化チタンナノ粒子とPEG(導電性高分子でない)とを含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても良好なエレクトロクロミック特性を示さない。上記構成によれば、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を十分なものとすることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができる。上記の構成から外れると、前記ポリビニルピロリドンの量が前記ナノ粒子の量に対して少ない場合には、円滑な電子移動が起こらない可能性があり、前記ポリビニルピロリドンの量が前記ナノ粒子の量に対して多い場合には、前記多孔質電極における細孔容積が前記エレクトロクロミック色素の担持量に対して不足して十分なエレクトロクロミック特性が得られなかったり、前記ポリビニルピロリドンの存在量が多過ぎて水に対する耐久性が悪くなる可能性がある。
また、前記第2工程に先立って、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面を活性化させる工程を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化されているので、前記ナノ粒子が安定して前記電極の面に吸着され前記電極との密着性に優れた前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を製造することができる。
本発明のエレクトロクロミック装置の製造方法では、前記第1工程は、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子が溶媒に分散された溶液を調製する工程と、前記電極に前記溶液を塗布し塗布膜を形成する工程と、加熱によって前記溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させる工程とを有する構成とするのがよい。前記ナノ粒子同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、前記塗布膜を乾燥した後に、前記複合体からなる前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。
また、前記第1工程は、前記ナノ粒子が第1の溶媒に分散された第1の溶液を記電極に塗布し塗布膜を形成する工程と、加熱によって前記第1の溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させる工程と、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子が第2の溶媒に分散された第2の溶液に、乾燥された前記塗布膜が形成された前記電極を浸漬させる工程と、前記第2の溶液から前記支持基板を取り出して、加熱によって前記第2の溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させる工程とを有する構成とするのがよい。前記第1の溶液の塗布後の前記塗布膜の乾燥、及び、前記第2の溶液の浸漬の前記塗布膜の乾燥をそれぞれ、前記ナノ粒子同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず行ない、作成された前記複合体からなる前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。
また、前記第2の工程において、前記複合体をUVオゾン処理によって活性化処理する構成とするのがよい。前記UVオゾン処理において生じる光酸素酸化反応によって、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子によって形成された前記複合体が活性化処理され安定化される。
また、前記金属ハロゲン化物が四フッ化チタンである構成とするのがよい。前記四フッ化チタンの脱水縮合により前記ナノ粒子がネッキングされ、前記ナノ粒子と前記四フッ化チタンによって形成された前記複合体に対して、前記ナノ粒子同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、作成された前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。
また、前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記多孔質電極における細孔容積が0.05mL/cm3以上である構成とするのがよい。前記酸化チタンと前記四フッ化チタンによって形成された前記複合体に対して、前記酸化チタン同士を焼結処理するような高温処理を必要とせず、作成された前記多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させて、良好なエレクトロクロミック特性を得ることができる。一方、酸化チタンナノ粒子を含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても、焼結処理をしていないためフラットバンド電位が下がっておらず、良好なエレクトロクロミック特性を示さない、また、酸化チタンナノ粒子とPEG(導電性高分子でない)とを含む溶液を塗布し、焼結処理をしないで形成された多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させても良好なエレクトロクロミック特性を示さない。
また、前記第1工程に先立って、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面を活性化させる工程を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化されているので、前記ナノ粒子が安定して前記電極の面に吸着され前記電極との密着性に優れた前記多孔質電極を低温プロセスで形成することができ、前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を製造することができる。
上述のエレクトロクロミック装置の製造方法では、前記電極が透明電極からなり、前記電極構造体は観察される表示側に設けられる表示電極構造体として作製され、酸化反応又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素を前記複合体に担持させる工程を有する構成とするのがよい。前記表示電極構造体における前記多孔質電極へのエレクトロクロミック色素の担持量を増加させることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができ、鮮明で色純度が高く、発消色の繰り返し耐久性に優れたエレクトロクロミック装置を提供することができる。
また、前記ナノ粒子は、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物の何れかである構成とするのがよい。前記導電性高分子により前記ナノ粒子がネッキングされ、或いは、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物の脱水縮合により前記ナノ粒子がネッキングされ、前記複合体が形成され、安定した前記多孔質電極を形成することができる。
また、前記多孔質電極は、600nm以上800nm以下の波長領域において80%以上の透過率を有する構成とするのがよい。この構成によれば、鮮明で色純度を高くすることができるエレクトロクロミック装置を提供することができる。ここで、透過率は、前記支持基板に、前記透明電極、及び、前記多孔質電極が形成された前記極構造体について測定されたものであって、前記多孔質電極に前記エレクトロクロミック色素が担持されていない状態で測定された透過率である。
また、前記ナノ粒子の直径が2nm以上、50nm以下である構成とするのがよい。前記エレクトロクロミック色素の担持量を十分なものとすることができ、優れたエレクトロクロミック特性を得ることができる。
また、前記支持基板がプラスチック基板である構成とするのがよい。薄型でフレキシブルなエレクトロクロミック装置を提供することができる。
また、150度(摂氏温度)以下の加熱によって前記塗布膜を乾燥させる構成とするのがよい。前記支持基板として、PEK、PSF、PAR、PPE、PEI、PES、PAI、PIの何れかよりなるプラスチック基板を使用することができる。
また、100度(摂氏温度)以下の加熱によって前記塗布膜を乾燥させる構成とするのがよい。前記支持基板として、PAN、PEN、PCO、PC、PEEK、PEK、PSF、PAR、PPE、PEI、PES、PAI、PIの何れかよりなるプラスチック基板を使用することができる。
また、60度(摂氏温度)以下の加熱によって前記塗布膜を乾燥させる構成とするのがよい。前記支持基板として、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、脂環式ポリオレフィン樹脂(PCO)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)の何れかよりなるプラスチック基板を使用することができる。
以下、本発明のエレクトロクロミック装置について図を参照して具体的に説明する。但し、本発明は以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、これは本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
実施の形態
本発明によるエレクトロクロミック装置は、例えば、透明なプラスチックからなる支持基板上に形成された透明電極とこの上に形成された多孔質電極からなる電極構造体(観察が側に配置される表示電極構造体と、これに対向して配置される対向電極構造体)を有する。表示電極構造体の多孔質電極は、電子移動媒体として、導電性高分子、第2属から第6属の何れかの金属のアルコキシド又はハロゲン化物等を用いて、この電子移動媒体とナノ粒子を含む溶液(スピンコート用溶液)をスピンコート法により、透明電極に塗布し支持基板のガラス転移温度、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱、乾燥させて形成され、ナノ粒子が電子移動媒体によりネッキングされてなる複合体からなり、メソスケールの細孔を有しており、この多孔質電極には、十分な量の有機エレクトロクロミック色素が担持される。表示電極構造体及び対向電極構造体の多孔質電極が対向するように配置されこの間に電解質が挟持される。表示電極構造体の多孔質電極と同様にして、対向電極構造体の多孔質電極を、透明電極の上に形成することができる。
電極構造体の多孔質電極の形成に先立って、透明電極をUVオゾン処理等によって活性化処理することによって、多孔質電極を密着性よくの透明電極上に形成することができ、また、金属アルコオキシド、金属ハロゲン化物等を含む溶液への多孔質電極の浸漬に先立って、多孔質電極をUVオゾン処理等によって活性化処理することによって、安定した状態の複合体を形成することができ、更に、有機エレクトロクロミック色素の多孔質電極への担持に先立って、多孔質電極をUVオゾン処理等によって活性化処理することによって、多孔質電極へエレクトロクロミック色素を安定に担持させることができ、その担持量を増加させることができる。
UVオゾン処理において、UVオゾン処理装置を使用するが、この装置の低圧水銀ランプから185nm及び254nmの輝線が発せられ、185nm(<240nm) 線によって酸素分子が解離され生成した三重項基底酸素原子が酸素分子と反応してオゾンを生成し、オゾンは波長260nm付近に吸収帯を有し254nm線により解離され、一重項励起酸素原子が生成する。この励起酸素原子は、波長184nmや254nmの紫外線により励起された有機物や高分子のC−H結合が酸化され、酸素を含む親水的な、−CO、−CHO、−COO、−COOH等の官能基が生成され、この光酸素酸化反応によって有機物や高分子の分解及び酸化が促進され、解離した末端が親水的な官能基へと変化し、ナノ粒子表面の−OHと強い水素結合を形成するので、ナノ粒子は有機物や高分子に安定して吸着し、安定した状態の複合体を形成することができ、更に、多孔質電極へエレクトロクロミック色素を安定に担持させることができる。
多孔質電極の形成において、ナノ粒子と導電性高分子を含む溶液を用いて塗布法によって形成する場合には、例えば、スピンコート法により、UVオゾン処理された透明電極に塗布し、プラスチックのガラス転移温度、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱、乾燥して多孔質電極を形成した後に、この多孔質電極をUVオゾン処理することによって、導電性高分子が、光酸素酸化反応によって分解、解離、酸化され低分子量化され、解離された末端が親水的な官能基へと変化し、ナノ粒子表面の−OHと強い水素結合を生じ、導電性高分子の低分子量体がナノ粒子表面に吸着して、安定な複合体が形成される。多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させてなるエレクトロクロミック装置の特性は安定したものとなり、信頼性を向上させることができる。
多孔質電極の形成において、第2属から第6属の何れかの金属ハロゲン化物又は金属アルコキシド、及び、ナノ粒子を含む溶液を用いて塗布法によって形成する場合には、例えば、スピンコート法により、UVオゾン処理された透明電極に塗布し、プラスチックのガラス転移温度、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱、乾燥して多孔質電極を形成することによって、金属ハロゲン化物、又は、金属アルコキシドの脱水縮合によりナノ粒子がネッキングされ生じた複合体は安定した状態で形成され、多孔質電極はプラスチック基板に密着して形成され、この多孔質電極をUVオゾン処理した後にエレクトロクロミック色素を担持させてなるエレクトロクロミック装置の特性は安定したものとなり、信頼性を向上させることができる。
また、ナノ粒子を含む溶液を、例えば、スピンコート法により、UVオゾン処理された透明電極に塗布し、プラスチックのガラス転移温度、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱、乾燥して多孔質電極を形成し、この多孔質電極をUVオゾン処理した後に、第2属から第6属の何れかの金属ハロゲン化物、又は、金属アルコキシドを含む溶液に多孔質電極を浸漬させた後、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱、乾燥して、上記と同様に、脱水縮合により、ナノ粒子がネッキングされ生じた複合体は安定した状態で形成され、多孔質電極はプラスチック基板に密着して形成され、この多孔質電極をUVオゾン処理した後にエレクトロクロミック色素を担持させてなるエレクトロクロミック装置の特性は安定したものとなり、信頼性を向上させることができる。
多孔質電極の形成において、導電性高分子として、例えば、ポリビニルピロリドンを使用することができ、ポリビニルピロリドンは水に易溶性であるので、所望の厚さの多孔質電極を塗布法によって形成することができ、例えば、スピンコート法による塗布に好適なように、スピンコート用溶液の粘度を調整することができる。また、多孔質電極のUVオゾン処理によって、ポリビニルピロリドンのナノ粒への吸着は安定化され、安定な多孔質電極を形成することができる。多孔質電極をUVオゾン処理しない場合には、ポリビニルピロリドンは水に再溶出してしまい、多孔質電極は不安定なものとなってしまう。
UVオゾン処理によって、ポリビニルピロリドンの表面のC−H結合は酸化され、酸素を含む親水的な、−CO、−CHO、−COO、−COOH等の官能基が生成され、この光酸素酸化反応によってポリビニルピロリドンの分解及び酸化が促進され、低分子量化すると共に、ポリビニルピロリドンにおいて解離した末端が親水的な官能基へと変化し、ナノ粒子表面の−OHと強い水素結合を形成するので、ナノ粒子の表面にポリビニルピロリドンの低分子量体が吸着安定化し、ナノ粒子の再配列化が進行しメソ細孔が形成されると考えられ、ポリビニルピロリドンはナノ粒子に吸着し安定化するため、水に再溶出したり空気中の水で劣化することがなく、多孔質電極のUVオゾン処理によって、安定した多孔質電極を形成することができる。
また、多孔質電極の形成において、ナノ粒子として酸化チタン、導電性高分子としてポリビニルピロリドンを使用する場合には、形成された多孔質電極における、酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下、酸化チタンとポリビニルピロリドンを合わせた含有率が0.3g/cm3以下となるように、酸化チタン、ポリビニルピロリドンを含むスピンコート用溶液を調製することによって、安定して優れたエレクトロクロミック特性を示す多孔質電極を形成することができる。
上記の含有率の条件から外れると、ポリビニルピロリドンの量がナノ粒子の量に対して少ない場合には、円滑な電子移動が起こらない可能性があり、ポリビニルピロリドンの量がナノ粒子の量に対して多い場合には、多孔質電極における細孔容積がエレクトロクロミック色素の担持量に対して不足して十分なエレクトロクロミック特性が得られなかったり、ポリビニルピロリドンの存在量が多過ぎて水に対する耐久性が悪くなる可能性がある。
また、多孔質電極の形成において、ナノ粒子として酸化チタン、金属ハロゲン化物として四フッ化チタンを使用し、酸化チタンを含む溶液をスピンコート法により、透明電極に塗布しプラスチックのガラス転移温度、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱して、多孔質電極を形成した後に、この多孔質電極を、四フッ化チタンを含む溶液(浸漬用溶液)に浸漬させた後、例えば、60度(摂氏温度)以下の温度で加熱して、多孔質電極を形成する場合には、形成された多孔質電極における酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下、多孔質電極における細孔容積が0.05mL/cm3以上となるように、スピンコート用溶液、及び、浸漬用溶液を調製することによって、安定して優れたエレクトロクロミック特性を示す多孔質電極を形成することができる。細孔容積が少なすぎるとエレクトロクロミック色素の担持量が不足して十分なエレクトロクロミック特性が得られない。
本発明における多孔質電極の形成において、ナノ粒子として、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物等を使用することができることはいうまでもない。
また、上記した加熱、即ち、スピンコート用溶液をスピンコート法により透明電極に塗布した後の加熱、多孔質電極を浸漬用溶液に浸漬させた後の加熱における温度は、支持基板の相変形、軟化、分解を生じないように、支持基板を構成するプラスチックのガラス転移温度以下の温度とする。
例えば、加熱温度を60度とする場合には、ガラス転移温度が60度以上である、PEMA、PET、PVC、PVA、PPS、PS、PMMA、PAN、PEN、PCO、PC、PEEK、PEK、PSF、PAR、PPE、PEI、PES、PAI、PI等の種々のものを使用することが望ましい。
また、加熱温度を100度とする場合には、ガラス転移温度が100度以上である、PAN、PEN、PCO、PC、PEEK、PEK、PSF、PAR、PPE、PEI、PES、PAI、PI等の種々のものを使用することが望ましい。
また、加熱温度を150度とすれば、PEK、PSF、PAR、PPE、PEI、PES、PAI、PI等の種々のものを使用することができる。
また、加熱温度を200度とする場合には、ガラス転移温度が200度以上である、PPE、PEI、PES、PAI、PI等の種々のものを使用することが望ましい。
なお、酸化チタンナノ粒子膜は、高温焼成することで伝導帯の電位が低くなるが、本発明における多孔質電極では、導電性高分子を電子移動媒体としてこれと酸化チタンナノ粒子と複合化させることによって、ナノ粒子同士を焼結するような高温焼成処理によらずに多孔質電極を形成することができ、多孔質電極から有機EC色素への電子移動が起こり、或いは、酸化チタンナノ粒子同士を金属アルコキシドでネッキングすることによって、高温焼成処理によらずに多孔質電極を形成することができ、多孔質電極から有機EC色素への電子移動が起こり、高温焼成処理を必要とせずに多孔質電極を形成することができ、伝導帯の電位が低く、エレクトロクロミック装置の電極として効率よく機能する多孔質電極を実現することができる。
また、酸化チタンに換えて、酸化チタンより伝導帯の低い酸化錫を用いてこれを、上記と同様にして、導電性高分子や金属アルコキシドと複合化させることもできる。
また、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、又は、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物を主成分とする材料から構成されるナノ粒子を用いて、上記と同様にして、このナノ粒子を導電性高分子や金属アルコキシドと複合化させることもできる。ただし、高温焼成処理によって作製された、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物等は、導電性高分子又は金属アルコキシドと複合化させなくとも十分に有機ECへの電子移動が生じる。
更に、ナノ粒子が単分散な状態で存在する溶液から、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法等の溶媒揮発法によって多孔質電極を形成することによって、自己組織化的にナノ粒子が配列し、可視光の散乱を抑制でき、且つ、多孔質電極を薄膜化させることによって、透明性を高めることができる。更に、増粘剤を含まないスピンコート用溶液を使用して、スピンコート法によって塗膜を形成し乾燥させて、150度以下の加熱工程によって、プラスチック基板上の透明電極上に多孔質電極を低コストで形成することができる。
以上説明したように、高分子鎖がナノ粒子の表面に水素結合又は共有結合によって結合して、高分子鎖によってナノ粒子間が架橋され形成された複合体の集合からなるナノ粒子膜として、或いは、ナノ粒子の間が、金属ハロゲン化物又は金属アルコキシドの脱水縮合により、ネッキングされ、ナノ粒子間が架橋され形成された複合体の集合からなるナノ粒子膜として、多孔質電極が形成されている。
以上で説明した複合体は、数十ナノスケールオーダーの高分子鎖又は金属アルコキシドが水素結合又は共有結合によってナノ粒子の表面に吸着又は架橋して形成されたものと考えられ、複合体の集合からなるナノ粒子膜として形成された多孔質電極における体積比は、ナノ粒子の方が高分子鎖又は金属アルコキシドよりも大きく、表面の少なくとも一部が高分子鎖又は金属アルコキシドによって保護されたような状態のナノ粒子が、最密充填的に自己集積化したようなナノ粒子膜と考えられる。特に、金属アルコキシドで架橋されたナノ粒子からなる膜では、ナノ粒子を自己集積化させ形成したナノ粒子膜を金属アルコキシドの溶液に浸漬させて、加熱、乾燥させて、ナノ粒子が金属アルコキシドによって架橋されるような工程をとる場合には、架橋に伴ったナノ粒子の再配列以外の構造変化はないと考えられる。これらの多孔質電極は、メソスケールの細孔を有しており、エレクトロクロミック色素を担持するのに十分な比表面積を有すると考えられ、メソ細孔を有する高分子吸着型ナノ粒子自己集積膜、又は、金属アルコキシド架橋型ナノ粒子自己集積膜等と呼べるものと考えられる。
また、導電性高分子、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)を用いて形成されたナノ粒子膜による多孔質電極では、水素結合によってPVPとナノ粒子表面とが相互作用しており、ナノ粒子間にはPVPの高分子鎖がいくつか存在している。また、ナノ粒子膜即ち多孔質電極の形成時に溶媒が揮発する際に生じるナノ粒子同士による自己集積力(粒子間の凝集力)が働くような範囲でPVPが存在する場合、エレクトロクロミック色素が担持された多孔質電極は十分なエレクトロクロミック特性を示すものと考えられる。即ち、多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させる場合、多孔質電極内にPVPが多すぎるとナノ粒子が高分子中に分散した状態となってしまい、多孔質電極の耐候性が悪くなりエレクトロクロミック特性が劣化し、PVPが少なすぎるとナノ粒子のみが集積された従来型の多孔質電極にエレクトロクロミック色素が担持された場合のエレクトロクロミック特性と変わらないものとなる。
本発明によれば、エレクトロクロミック化合物による多数回の発消色動作の後において、可視吸収スペクトル形状は発消色動作前の初期状態のスペクトル形状と略同じであり変化を生じることがなく、発色状態が変化して不安定になることがなく、また、発色濃度の低下もなく、多数回の発消色の動作の繰り返しに対して耐久性を有するので、多数回繰り返して発消色動作を行なった場合にも、鮮明な発消色を安定に可逆的に行なうことができ、極めて良好な画像表示を行なうエレクトロクロミック装置を実現することができる。
図1は、本発明の実施の形態による、エレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
図1に示すように、エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、後述するエレクトロクロミック化合物3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に、透明電極7と多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。多孔質電極4、8は、高い光り透過率を有する半導体ナノ粒子から構成される多孔質膜からなる。表示電極構造体11の多孔質電極4は、半導体ナノ粒子の懸濁液から形成されるが、後述する図2(B)、図2(C)に示す構成を有している。対向電極構造体12の多孔質電極8を、後述する図2(B)、図2(C)に示す構成とすることもできる。
支持基板1、6を透明な材質による基板とすれば、エレクトロクロミック装置10を透過型の装置とすることができ、支持基板1を透明な材質による基板とし、透明電極7を光り反射電極とすれば、エレクトロクロミック装置10を反射型の装置とすることができる。また、透明電極2、7、多孔質電極4、8を薄型とし、屈曲可能なプラスチックからなる支持基板1、6を使用すれば、エレクトロクロミック装置10をフレキシブルな薄型の装置とすることができる。
なお、図1においては、対向する透明電極2、7の何れにも多孔質電極4、8が形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成して、この多孔質電極にエレクトロクロミック化合物3を担持させた構成としてもよい。
以下、構成要素について順次説明する。
<支持基板>
支持基板1、6の材料としては、一般的に充分な耐熱性を有し、且つ、平面方向の寸法安定性の高いものが好適である。特に、カラー表示を行なうことに鑑みて透明性の高い材料が望ましい。具体的には、ガラス材料、透明性樹脂が挙げられる。最終的に作製する表示装置をフレキシブルなものとする場合には、特に、薄層の透明な樹脂性基板を適用することが望ましい。
支持基板1、6に樹脂材料を適用する場合には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリサルフォン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン等の高分子材料が挙げられ、これらの何れかによるプラスチック基板を使用することができる。
具体的な例として、ポリイミド(PI)基板(例えば、三菱ガス化学製商品名「ネオプリムL」、耐熱温度:285度、光透過率90%(厚さ100μm))、フッ素樹脂基板(耐熱温度:250度)、ポリエーテルスルホン(PES)基板(例えば、住友ベークライト株式会社製商品名「スミライトFS」、耐熱温度:180度、光透過率88%(厚さ550nm))、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板(耐熱温度:160度)、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板(耐熱温度:140度)が挙げられる。
<透明電極>
周知の従来技術に従って、透明電極2、7は、所定の電極材料を塗布・焼成して成膜することにより形成される。透明電極2、7を構成する電極材料としては、例えば、In23とSnO2との混合物、いわゆるITO膜(スズ−ドープ酸化インジウム膜)や、SnO2又はIn23がコーティングされた膜等が挙げられる。また、ITO膜や、SnO2又はIn23をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしてもよく、フッ素−ドープ酸スズ膜はFTO膜と呼ばれている。その他、MgOやZnO等も適用できる。ZnOにAlをドープしたAZO膜、ZnOにガリウム(Ga)をドープしたGZO膜、ZnOにインジウム(In)をドープしたIZO膜等も適用することができる。
<半導体ナノ粒子多孔質電極>
次に、半導体ナノ粒子多孔質電極の形成について説明する。
<多孔質電極>
表示電極構造体11を構成する多孔質電極4は、高い有機EC色素担持機能を得るため、比表面積が大きな半導体ナノ粒子から構成される多孔質膜とするのが好ましい。また、積層型構造を有する有機EC装置を作製するために、多孔質電極4には透明性が必要となる。更に、速い応答速度が可能な有機EC装置を得るため、多孔質電極4は有機EC色素との円滑な電子移動が可能となるバンド構造を有することが必要となる。
なお、多孔質電極4は、例えば、UVオゾン処理によって活性化処理された透明電極2の面に形成される。UVオゾン処理によって、透明電極の表面に物理又は化学吸着して存在する空気中の有機物や水等が分解除去され、清浄化、活性化され、半導体ナノ粒子が吸着するサイトを増大させることができ、透明電極への半導体ナノ粒子の吸着量を増大させることができる。
多孔質電極4は、チタニア(TiO2)、酸化錫、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、ATO、ITO等の材料からなるナノ粒子材料によって成膜される。このとき、導電性高分子や金属アルコキシドを含有している方が好ましく、多孔質電極4において、導電性高分子又は金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物は、ナノスケールオーダーでナノ粒子と混在していることが好ましい。また、多孔質電極4の成膜時に使用される溶液中にナノ粒子が分散しており、導電性高分又は金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物がこの溶液に溶解した状態であることが好ましい。溶液は水溶液、或いは、有機溶媒溶液である。
導電性高分子として、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルピリジン(PVPy)、ポリビニルイミダール(PVI)、ポリビニルホルマール(PVFM)等が代表的に挙げられ、これら以外に、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリイソチオチオフェン、ポリアニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビ二レン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等のポリマーを主成分とする導電性高分子でも構わない。
金属アルコキシドは化学式Mn+(OR)nで示され、金属ハロゲン化物は化学式Mn+nで示され、nは金属の価数を表わし、Mは、Sn、Ti、Zn、W、In、Sbの何れか、Xは、Cl、F、Br、Iの何れか、Rはアルキル基であり、主にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の何れかである。
ナノ粒子膜は、均一にナノ粒子が分散し、導電性高分子又は金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物を含む溶液を塗布液として使用しこれを基板に塗布し塗膜を形成した後、との膜を加熱乾燥によって溶媒を揮発させる溶媒揮発法(スピンコート法、ディップコート法、スキージ法)によって成膜され、スピンコート法によって成膜されることが好ましい。加熱乾燥の温度は、十分に溶媒を除去するために120度程度が望ましいが、50度〜60度以上、120度以下の温度の加熱によって乾燥することもできる。加熱乾燥の温度は、塗布液が基板へ塗布され形成された塗布膜に残存する溶媒の揮発時にナノ粒子の配置を乱さないような温度とする。加熱乾燥の温度は、高分子基板の耐熱温度範囲内であればよく、支持基板として適用する材料の耐熱性(ガラス転移点(ガラス転移温度))に応じて選定するものとする。支持基板にプラスチック材料を適用する場合には、加熱乾燥の温度は、150度以下とすることが好ましく、適用するプラスチック材料のガラス転移温度又は軟化点(軟化温度)以下とすることがより好ましい。加熱乾燥の温度を150度より低温化して、100度、50度〜60度のようにすれば、より多種類のプラスチック材料による基板を使用することができる。
ナノ粒子の大きさは、1nm〜100nmがよく、特に5nm〜50nm程度のものがより好ましい。ナノ粒子の大きさが5nm以下になると多孔化した際の粒子間に起因する細孔サイズが小さくなり、有機EC色素の導入が困難となる。一方、ナノ粒子の大きさが50nm以上になると粒子間に起因する細孔サイズが大きくなり、色素同士が凝集して発色特性が低下する。ナノ粒子の大きさが更に大きくなると、マイクロメートルスケールオーダーで不均一な細孔構造が形成されるために、有機EC色素の担持量が少なくなり光学的透明性も悪くなるため、好ましくない。
対向電極構造体12を構成する多孔質電極8については、上述の多孔質電極と同様の成膜方法によって形成してもよく、或いは、従来公知の方法、即ち、塗料を基板上へ塗布し、加熱乾燥、或いは、焼結する方法によって形成してもよい。
多孔質電極8は、後述する有機EC色素の担持機能を高めるべく、表面積が大きい材料により構成することが好ましい。具体的には、表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、粒子集合体状、ロット形状、ワイヤ形状等となっているものが好適である。
多孔質電極8の材料としては、例えば、金属、真性半導体、酸化物半導体、複合酸化物半導体、有機半導体、カーボン等が適用できる。金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Cu等が挙げられ、真性半導体としては、例えば、Si、Ge、Te等が挙げられる。酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe23、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta25、Nb25、V25、In23、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。
また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb25−SrTiO3、Nb25−Ta25、Nb25−ZrO2、Nb25−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられ、特にTiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好適である。また、有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
図2は、本発明の実施の形態による、ナノ粒子膜からなる多孔質電極の概略構成を模式的に示す図であり、図2(A)は、ナノ粒子からなる多孔質電極、図2(B)は、ナノ粒子と導電性高分子によって形成された複合体からなる多孔質電極、図2(C)は、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成された複合体からなる多孔質電極を示す図である。
ナノ粒子膜は、スピンコート法又はスキージ法によって成膜される。スピンコート法によって成膜する場合、ナノ粒子が均一に分散する最大の濃度の溶液を作製し、基板の回転によって溶媒を揮発させて塗布膜を形成し、この塗布膜を低温、例えば、60度で加熱乾燥させて多孔質ナノ粒子膜を形成する。スキージ法によって成膜する場合、上述の溶液へ2−プロパノール又は2−ブタノールを添加し増粘化してこれを基板に塗布し塗布膜を形成し、この塗布膜を120度程度の加熱乾燥により多孔質ナノ粒子膜を形成する。
図2(A)に示す多孔質電極は、チタニア以下の伝導帯電位を有するn型半導体材料(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン)、ATO、ITO等のナノ粒子9aからなり、スピンコート法等によって、支持基板1上の透明電極2の面に形成される。多孔質電極は、例えば、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物の何れかを主成分とするナノ粒子から構成されてもよい。
ナノ粒子がナノスケールオーダーでランダムに配列したナノ粒子によって形成されたナノ空間へ色素が吸着する。但し、ランダムにナノ粒子が配列する構造が光の波長を散乱するサイズになると、多孔質電極の透明性を下げるため、光透過性はよくない。
以下、図2(A)に示す多孔質電極の製造方法の概要をスピンコート法によって形成する例にとって説明する。
先ず、多孔質電極を形成しようとする透明電極の面を、例えば、UVオゾン処理によって活性化処理する。ナノ粒子が純水又はメチルアルコールやエチルアルコールのような有機溶媒に分散された分散溶液を透明電極の面にスピンコートして塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を、例えば、60°で加熱乾燥させて、多孔質電極を得ることができる。
図2(B)に示す多孔質電極は、チタニア又はチタニア以下の伝導帯電位を有するn型半導体材料と導電性高分子15によって形成された複合体、或いは、ATO又はITOからなるナノ粒子9bと導電性高分子15によって形成された複合体からなり、スピンコート法等によって、支持基板1上の透明電極2の面に形成される。多孔質電極は、例えば、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物の何れかを主成分とするナノ粒子9bと導電性高分子15によって形成された複合体から構成されてもよい。
ナノ粒子が導電性高分子15を介してナノスケールオーダーでランダムに配列して形成されたナノ空間へ色素が吸着する。但し、ランダムにナノ粒子が配列する構造が光の波長を散乱するサイズになると、多孔質電極の透明性を下げるため、光透過性はよくない。
図2(B)に模式的に示すように、複合体は、導電性高分子15が水素結合又は共有結合によってナノ粒子9bの表面の一部に吸着又は架橋して形成されたものと考えられる。このような複合体からの形成された多孔質電極におけるナノ粒子9bの体積比は、導電性高分子15の体積比よりも大きいことが望ましく、エレクトロクロミック色素が担持された多孔質電極は十分なエレクトロクロミック特性を示すものと考えられる。
多孔質電極内に含まれる導電性高分子15の割合は、ナノ粒子9bの個々が分離された状態とならず、導電性高分子15によってナノ粒子9bが繋がれネットワークが形成されるように十分に含み機械的に安定な構造を形成し、ナノ粒子9bの間の間隙を塞がないような割合であるのが望ましい。
多孔質電極にエレクトロクロミック色素を担持させる場合、多孔質電極内の導電性高分子15が多すぎるとナノ粒子9bが導電性高分子15中に分散した状態となってしまい、エレクトロクロミック色素の担持量が少なくなり、導電性高分子15が少なすぎるとナノ粒子のみが集積された図2(A)に示すような従来型の多孔質電極にエレクトロクロミックシ色素が担持された場合のエレクトロクロミック特性と変わらないものとなる。
図2(B)に示す構成を有し、導電性高分子を含む多孔質電極の製造工程の概要は、以下の通りである。
ナノ粒子が分散された分散溶液を、導電性高分子が溶媒に溶解された溶液に添加して混合し、塗布溶液を調製する。この塗布溶液を、活性化処理された透明電極の面に塗布し塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を加熱乾燥させて、多孔質電極を得る。
以下、導電性高分子としてポリビニルピロリドン(PVP)を用い、スピンコート法によって多孔質電極を形成する例にとって説明する。PVPはN−ビニル−2−ピロリドンの重合体である。
PVPを純水又はメチルアルコールやエチルアルコールのような有機溶媒に溶解し、これに希塩酸を添加した溶液を調製する。この溶液に、ナノ粒子が純水又はメチルアルコールやエチルアルコールのような有機溶媒に分散された分散溶液を添加し、混合処理して混合溶液を調製する。次に、この混合溶液を、例えば、UVオゾン処理によって活性化処理された透明電極の面にスピンコートして塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を、例えば、60°で加熱乾燥させて、多孔質電極を得ることができる。
図2(C)に示す多孔質電極は、チタニア又はチタニア以下の伝導帯電位を有するn型半導体材料と金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16によって形成された複合体、或いは、チタン、錫、亜鉛、タングステン、インジウム、アンチモンの何れかを含む金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16と、ATO又はITOからなるナノ粒子9bによって形成された複合体からなり、スピンコート法又はスキージ法等によって、支持基板1上の透明電極2の面に形成される。多孔質電極は、例えば、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫と複合酸化物の何れかを主成分とするナノ粒子と、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16によって形成された複合体から構成されてもよい。
ナノ粒子が金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16との化学結合を介してナノスケールオーダーでランダムに配列し、これによって形成されたナノ空間へ色素が吸着する。
図2(C)に模式的に示すように、複合体は、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16が水素結合又は共有結合によってナノ粒子9bの表面の一部に吸着又は架橋して形成されたものと考えられる。このような複合体からの形成された多孔質電極におけるナノ粒子9bの体積比は、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16の体積比よりも大きいことが望ましく、エレクトロクロミック色素が担持された多孔質電極は十分なエレクトロクロミック特性を示すものと考えられる。
金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16がナノ粒子9bの表面の一部に吸着又は架橋して形成された複合体からなる多孔質電極は、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16とナノ粒子9bを含む溶液を用いて、例えば、スピンコート法又はスキージ法によって塗布した後、低温で加熱乾燥させることによって、形成することができ、或いは、図2(A)に示すような多孔質膜を低温プロセスによって形成し、この多孔質膜を金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16の溶液に浸漬させた後に、低温で加熱乾燥させることによって形成することができる。
図2(C)に示す構成を有し、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物を用いた多孔質電極の製造工程の概要は、以下の通りである。
金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子が純水に分散された分散溶液を調製する。この分散溶液を、活性化処理された透明電極の面に塗布し塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を加熱乾燥させて、多孔質電極を得る。
或いは、塗布法と浸漬法を組み合わせて多孔質電極を形成する。この場合、ナノ粒子が純水に分散された分散溶液を、活性化処理された透明電極の面に塗布し塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を加熱乾燥させて、多孔質膜を得る。この多孔質膜を活性化処理し、次に、この活性化された多孔質膜を、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物の水溶液に浸漬させる。多孔質膜を浸漬液から取り出して、加熱乾燥させて、表面を洗浄して室温で乾燥させて多孔質電極を得る。
以下、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物としてチタンエトオキシド(Ti(OC254)又は四フッ化チタン(TiF4)を用い、スピンコート法、或いは、スピンコート法と浸漬法を組み合わせによって多孔質電極を形成する例にとって説明する。
スピンコート法によって多孔質電極を形成する例では、チタンエトオキシド又は四フッ化チタンとナノ粒子が純水に分散された分散溶液を調製する。この分散溶液を、UVオゾン処理によって活性化処理された透明電極の面にスピンコートして塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を、例えば、60°で加熱乾燥させて、多孔質電極を得ることができる。
スピンコート法と浸漬法を組み合わせによって多孔質電極を形成する例では、ナノ粒子が純水に分散された分散溶液を、例えば、UVオゾン処理によって活性化処理された透明電極の面にスピンコートして塗布膜を形成する。次に、この塗布膜を、例えば、60°で加熱乾燥させて、多孔質膜を得る。この多孔質膜を、例えば、UVオゾン処理によって活性化処理し、次に、この活性化された多孔質膜を、チタンエトオキシド又は四フッ化チタンの水溶液へ、例えば、60度下で30分間浸漬させる。多孔質膜を浸漬液から取り出して、例えば、60°で加熱乾燥させて、例えば、ヘキサンで表面を洗浄して室温で乾燥させて多孔質電極を得ることができる。
なお、図2において、ナノ粒子膜の形成に際して使用する塗布液において、溶媒へのナノ粒子の重量分散濃度は15wt%が適当であり、これ以上高濃度になると成膜時に凝集し易く透明性が低下する。15wt%よりも低濃度になると成膜時の膜厚が減少して色素の吸着量が不十分となる。
また、導電性高分子15、或いは、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16を電子移動媒体として用いて、塗布法によって多孔質電極を形成する場合、塗布液が基板へ塗布された塗布膜の加熱乾燥の温度は、塗布膜中の溶媒を十分に除去するために120度程度とすることが望ましいが、50度〜60度以上、120度以下の温度の加熱によって乾燥することもできる。
塗布膜の加熱乾燥の温度は、加熱乾燥によって形成される多孔質電極が透明性を保持するために、導電性高分子15、或いは、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16が、変質、分解しない温度とすることが必要である。例えば、PVPは150度に加熱すると変色するおそれがあるので、150度以上の加熱乾燥は避ける。
また、加熱乾燥の温度は、塗布膜に残存する溶媒の揮発時にナノ粒子の配置を乱さないような温度とし、基板を構成する材料のガラス転移温度以下の温度とするのが好ましい。なお、塗布液に使用する溶媒の沸点は低いものが、溶媒を揮発させ易いので望ましい。
上述した、導電性高分子15、或いは、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16を電子移動媒体として用いることによって、ナノ粒子を焼結(焼成)させる高温を必要とせず、150度以下、好ましくは100度以下の低温プロセスによって、電子移動媒体とナノ粒子9bによって形成された複合体からなる多孔質電極を形成することができ、導電性高分子15、或いは、金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物16とナノ粒子9bを複合化させることによって、多孔質電極に担持された有機EC色素への電子移動が起こる。
<エレクトロクロミック化合物(有機EC色素)>
次に、有機EC色素3について説明する。有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとする。有機EC色素3は、エレクトロクロミック色素として公知の材料を何れも適用できる。但し、有機EC色素3を多孔質電極4に担持させるように、その分子構造中に官能基を具備していることが好ましい。有機EC色素3を多孔質電極4に吸着させる吸着基として作用する官能基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基、アミノ基、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられる。また、有機EC色素3としては、単一の化合物のみを用いてもよく、複数の化合物を混合して用いてもよい。
なお、図1においては、有機EC色素3を表示電極構造体11側の多孔質電極4のみに担持させた構成を示したが、本発明は図1に示す構成例に限定されるものではなく、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも、多孔質電極4と同様に有機EC色素が担持された構成としてもよい。但し、かかる場合においては、有機EC色素の発消色反応における酸化・還元反応は、両電極構造体11、12において逆となる材料を選定する。
例えば、多孔質電極材料4に担持させた有機EC色素が還元反応によってラジカル状態となり発色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させた色素と同色調であり、酸化反応によって発色する有機EC色素を選定する。
このように、両電極構造体11、12において有機EC色素を担持させた構成とすることにより、色表示濃度を十分に高くすることができるので、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
有機EC色素(エレクトロクロミック化合物)3の具体例を下記式(1)〜(13)に示す。下記式中、Meは、メチル基である。下記式(1)、(5)によって表される化合物は4,4’−ビピリジン誘導体、下記式(2)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)フラン誘導体、下記式(3)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)チオフェン誘導体、下記式(4)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)−1H−ピロール誘導体、下記式(6)によって表される化合物は3,4’−ビピリジン誘導体、下記式(7)、(11)、(12)、(13)によって表される化合物は4,4’−(1,4−フェ二レン)ジピリジン誘導体、下記式(8)によって表される化合物はビス(4−ピリジル)ケトン誘導体、下記式(9)によって表される化合物は4,4’−ビス(4−ピリジル)−ベンゾフェノン誘導体、下記式(10)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)−1,3,4−オキサジアゾール誘導体であると、それぞれ見なすことができる。
Figure 2009192985
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<エレクトロクロミック化合物(有機EC色素)の多孔質電極への担持>
有機EC色素の多孔質電極への担持に先立って、多孔質電極をUVオゾン処理する。使用したUVオゾン処理装置(サムコ株式会社製、UV−300)は、185nm、254nmの輝線を発光する低圧水銀ランプを光源としており、酸素分子の解離反応が185nm(<240nm)線によって生じる(O2→O(3P)+O(3P))。生成した三重項基底酸素原子(O(3P))が酸素分子と反応して、オゾンを生成する(O(3P)+O2→O3)。オゾンは、波長が260nm付近に吸収帯をもち、254nm線により解離反応が生じる。この解離反応によって一重項励起酸素原子が生成する(O3→O2+O(1D))。この励起酸素原子が紫外線(184nmや254nm)により励起された多孔質電極表面のC−H結合を酸化し、多孔質電極表面に酸素を含有する親水的な官能基(−CO、−CHO、−COO、−COOH等)を形成する。
UVオゾン処理によって、多孔質電極の表面に物理又は化学吸着して存在する空気中の有機物や水等が分解除去され、有機EC色素のもつ吸着基が吸着する(水素結合を形成する)表面サイトを増大させることができ、多孔質電極への有機EC色素の吸着量を増大させることができる。
次に、有機EC色素を多孔質電極4に担持させる方法について説明する。例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。具体的方法としては、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、特別な装置を必要としない自然吸着法、及び、多孔質電極表面へ有機EC色素を化学結合させる方法が好適である。
自然吸着法としては、所定の有機EC色素を所定の溶媒に溶解して溶液を作製し、この溶液に、多孔質電極4が形成された透明基板を乾燥処理した後に浸漬する方法や、所定の有機EC色素が溶解された溶液を多孔質電極4に塗布する方法が挙げられる。この自然吸着法において、有機EC色素を多孔質電極4に確実に担持させるためには、有機EC色素の化学構造中に、吸着性を有する官能基を導入しておくことが必要である。
この吸着性を有する官能基は、多孔質電極4の材料に応じて適宜選定する。例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中の吸着性官能基として、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等を導入しておくことが好ましい。
官能基は、有機EC色素の化学構造の骨格に直接導入してもよく、或いは、その他の所定の官能基を介して結合を形成することにより導入してもよい。所定の官能基を介する場合は、例えば、アルキル基、フェニル基、エステル、アミド基等を介して吸着性の官能基を導入することができる。
なお、有機EC色素を溶解する溶媒としては、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素等が適用できる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
エレクトロクロミック化合物を多孔質電極の表面へ化学結合によって担持させる方法も好適である。多孔質電極4の表面に有機EC色素を化学結合させる際には、多孔質電極4の表面と有機EC色素骨格との間に、所定の官能基を介在させてもよい。例えば、アルキル基、フェニル基、エステル、アミド等の官能基が挙げられる。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合して形成させるようにしてもよい。このような表面改質により、有機EC色素が多孔質電極4の材料と化学結合を形成するようになると、有機EC色素の結合力が強まり、例えば、電界質層5の材料として色素溶解性の高いものを使用するような場合に有利になり、有機EC色素の材料選択性が高まり、エレクトロクロミック装置の耐久性の向上も図られる。
<電解質層>
電解質層5は、溶媒に支持電解質が溶解された構成を有している。支持電解質としては、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えば、KCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えば、NaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えば、フェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
上記の溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等から適宜選定する。
また、電解質層5には、いわゆる、マトリックス材を適用してもよい。マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは、−(C−C−S)n−によって表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。なお、これら骨格ユニットを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
電解質層5は、高分子固体電解質層としてもよい。なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及び、これらの混合物が好適である。
本発明のエレクトロクロミック装置の製造方法について説明する。表示電極構造体11を作製する。所定の材料と膜厚からなる支持基板1上に透明電極2を形成し、この透明電極2をUVオゾン処理によって活性化処理した後、多孔質電極4を形成する。この多孔質電極4をUVオゾン処理によって活性化処理した後、例えば、有機EC色素水溶液に浸漬させることにより色素の担持を行ない、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行なう。
続いて、対向電極構造体12を、所定の材料と膜厚の支持基板6上に透明電極7を形成し、その後、多孔質電極8を形成することにより作製する。
なお、多孔質電極4、8の詳細な形成方法については上述した方法に従うものとする。有機EC色素を担持させる電極についても、双方とするか一方とするか適宜選定する。双方の多孔質電極に有機EC色素を担持させる場合には、EC色素は異なる種類のもの使用し、多孔質電極4には還元で発色するものを担持させ、多孔質電極8には酸化で発色するものを担持させる。
次に、電解質層用の溶液の調製を行なう。続いて、表示電極構造体11と、対向電極構造体12とを、所定の接着剤を用いて貼り合わせるが、このとき後工程で電解液を注入できるように一部分に注入口を形成しておく。接着剤として、例えば、UV硬化樹脂や熱硬化樹脂が使用される。その後、電解液を注入口から注入し、樹脂接着材で封止することにより、対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が作製される。
次に、エレクトロクロミック装置10の表示方法について説明する。
図1に示すエレクトロクロミック装置10の多孔質電極4には、定常状態において可視域に吸収をもたない有機EC色素である所定のエレクトロクロミック化合物が担持されている。
エレクトロクロミック装置10を構成する対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持された有機EC化合物との間で電子の授受がなされ、有機EC化合物において電気化学的な還元反応が起き、一価のラジカル状態となって発色する。
なお、対向電極構造体12側の多孔質電極8は、有機EC色素と逆の電荷をチャージし(有機EC色素が還元反応によって−の電荷をチャージしているときには、多孔質電極8は+の電荷をチャージする)、色素による発色機能を高め、且つ、安定化させる。
図1に示すエレクトロクロミック装置を構成する各層の厚さを例示すれば、以下の通りである。
支持基板1の厚さ=10μm〜10mm、
支持基板6の厚さ=10μm〜10mm、
透明電極2の厚さ=40nm〜1000nm、
透明電極7の厚さ=40nm〜1000nm、
多孔質電極4の厚さ=1.5μm〜30μm、
多孔質電極8の厚さ=1.5μm〜30μm、
表示電極構造体11の厚さ=11μm〜11mm、
対向電極構造体12の厚さ=11μm〜11mm、
透明電極2と透明電極7との間隔=1μm〜1mmである。
なお、本発明のエレクトロクロミック装置は、図1に示した構成に限定されるものではなく、多色表示が可能な装置構成に応用することができる。即ち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)に発色するエレクトロクロミック化合物を所定の多孔質電極に担持させて電極構造体を作製し、これら三層を用いて、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行なうことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
エレクトロクロミック化合物(有機EC色素)としては、イエロー域(430〜490nmの範囲)、マゼンタ域(500〜580nmの範囲)、シアン域(600〜700nmの範囲)に吸収極大をもつ色素を使用することが望ましい。
フルカラー表示のエレクトロクロミック装置は、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、透明電極同士が対向するように電解質層を挟持して配置されており、一対の電極構造体を構成する透明電極のうちの、少なくとも表示電極構造体の透明電極上に、エレクトロクロミック化合物が担持された多孔質電極が形成されており、一対の電極構造体間に印加する電圧の制御によって発消色を行なうことができ、(a)エレクトロクロミック化合物が担持された多孔質電極が形成されており、シアンの可逆的な発消色を行なうことができるエレクトロクロミック素子構造体、(b)イエローの可逆的な発色を行なうことができるエレクトロクロミック素子構造体、(c)マゼンタの可逆的な発色を行なうことができるエレクトロクロミック素子構造体の3つの素子構造体を積層することによって形成され、各エレクトロクロミック素子構造体に印加する電圧を制御することによって、全体としてフルカラーの画像を表示することができる。
図3は、本発明の実施の形態による、カラー表示を行なうことができるエレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
図3に示すエレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれは、図1に示すエレクトロクロミック装置と同様の構成を有している。
図3に示す、カラー表示を行なうことができるエレクトロクロミック装置は、(a)第1の支持基板(支持基板1a、1b、1c)、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極(透明電極2a、2b、2c)、及び、この第1の透明電極上に形成された第1の多孔質電極(多孔質電極4a、4b、4c)を含む表示電極構造体11a、11b、11cと、(b)第2の支持基板(支持基板6a、6b、6c)、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極(透明電極7a、7b、7c)、及び、この第2の透明電極上に形成された第2の多孔質電極(多孔質電極8a、8b、8c)を含む対向電極構造体12a、12b、12cと、(c)表示電極構造体11a、11b、11及び対向電極構造体12a、12b、12cによって挟持された電解質層5a、5b、5cとを具備している。
電解質層(5a、5b、5c)を介して第1の透明電極(2a、2b、2c)と第2の透明電極(7a、7b、7c)とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物(有機EC色素3a、3b、3c)が半導体ナノ粒子から主に構成される第1の多孔質電極(4a、4b、4c)に担持され、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cが形成されている。
エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cが積層されており、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの第1の透明電極(2a、2b、2c)と第2の透明電極(7a、7b、7c)の間に印加する電圧の制御によって、エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行なうことができる。透明なエレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cの積層型構造によって、カラー表示を行なう有機EC装置を作製することができる。
エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの半導体ナノ粒子から主に構成される第1の多孔質電極(4a、4b、4c)にそれぞれ担持されるエレクトロクロミック化合物(有機EC色素3a、3b、3c)は、図3の上方を目視方向とすると、マゼンタ、イエロー、シアンとする。
なお、図3においては、対向する透明電極2a、7a;2b、7b;2c、7c;の何れにも多孔質電極4a、8a;4b、8b;4c、8cが形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させ、この多孔質電極にエレクトロクロミック化合物3a、3b,3cを担持させた構成としてもよい。
図1、図3に示すエレクトロクロミック装置において使用されるエレクトロクロミック化合物としては、電圧が印加されていない状態では可視光領域に吸収を示さず消色状態にあり、電圧が印加された状態では可視光領域に吸収を示し発色状態となる化合物、逆に、電圧が印加された状態では可視光領域に吸収を示さず消色状態にあり、電圧が印加されていない状態では可視光領域に吸収を示し発色状態となる化合物、或いは、印加される電圧の大きさによって発色が異なる多発色状態が可能な化合物の何れであってもよく、目的に応じて適宜選択することができ、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれに印加する電圧を制御することによって、フルカラーの画像を表示することができる。
また、図1、図3に示すエレクトロクロミック装置において、アクティブマトリックス駆動を行なうために、第1の支持基板(支持基板1、1a、1b、1c)に第1の透明電極(透明電極2、2a、2b、2c)を分画として形成し、即ち、各画素に対応するように相互に独立させた分画の複数個をマトリックス状に形成し、各分画上に半導体ナノ粒子から主に構成される第1の多孔質電極(多孔質電極4、4a、4b、4c)を形成して、各分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタ(TFT)を第1の透明電極上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの各画素に対応する分画における発消色を制御することができる。
更に、図1に示すエレクトロクロミック装置において、透明電極2が分画され画素に対応するよう形成され、即ち、アクティブマトリックス駆動を行なうために、シアン、マゼンタ、イエローに対応する第1、第2及び第3分画からなる分画の複数個からなるマトリックス状の透明電極2を支持基板1上に形成し、第1、第2及び第3分画上に多孔質電極4を形成して、第1、第2及び第3分画上に形成された多孔質電極4上にそれぞれ、シアン、マゼンタ、イエローの発色が可能なエレクトロクロミック化合物を担持させ、第1、第2及び第3分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタ(TFT)を透明電極2上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、それぞれの各画素に対応する第1、第2及び第3分画における発消色を制御することができる。
更に、図1に示すエレクトロクロミック装置において、透明電極2が分画され画素に対応するよう形成され、即ち、アクティブマトリックス駆動を行なうために、シアン、マゼンタ、イエローに対応する第1、第2及び第3分画からなる分画の複数個からなるマトリックス状の透明電極2を支持基板1上に形成し、第1、第2及び第3分画上に多孔質電極4を形成して、第1、第2及び第3分画上に形成された多孔質電極4上にそれぞれ、シアン、マゼンタ、イエローの発色が可能なエレクトロクロミック化合物を担持させ、第1、第2及び第3分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタを透明電極2上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、それぞれの各画素に対応する第1、第2及び第3分画における発消色を制御することができる。
る。
次に、本発明のエレクトロクロミック装置とその製造方法に関して、図1を参照しながら具体的な実施例と比較例を挙げて説明する。なお、以下の説明において、UVオゾン処理(この処理によって物体の表面は洗浄処理と同時に活性化処理される。)は、UVオゾン処理装置(サムコ株式会社製:UV−300、185nm、254nmの輝線を発光する低圧水銀ランプを光源として有する。)を使用して実行した。
実施例
〔第一の表示電極構造体の作製〕:後述する実施例1で使用する第一の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。
分子量、Mw=10000のポリ(ビニルピロリドン)(PVP)(和光純薬工業株式会社のポリビニルピロリドンK25を使用した。)を1g、7gのイオン交換水へ溶解させ、2mol/Lの塩酸水溶液を10g添加した溶液に、酸化チタンナノ粒子(平均粒径15nm)が25wt%の濃度で水に均一に分散した溶液を3g添加し、30分間の混合処理によって混合溶液をスピンコート用溶液として調製し、これを冷暗所で12時間静置した。この混合溶液の組成(重量%)は、PVP=3.75%、酸化チタンナノ粒子=5.00%である。
スピンコート用溶液をスピンコート(1000rpm、10秒)によって、UVオゾン処理によって活性化されたITO膜(透明電極2)表面へ塗布し成膜を行なった。その後、成膜された塗布膜を60度で18時間の加熱処理を行って、ITO膜(透明電極2)の表面へ膜厚1.0μmのPVP−酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。
上述のようにして得られたPVP−酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電4の透明性を、紫外−可視(UV−Visible)吸収スペクトル計により測定した。500nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図4(A)を参照。)。透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ150μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、PVP―酸化チタンナノ粒子膜(厚さ1.0μm)による多孔質電極4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第一の表示電極構造体について測定されたものであり、第一の表示電極構造体の厚さは総じて151.2μmである。
図4(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第一の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図4(A)から明らかなように、PVPと酸化チタンナノ粒子との複合化によって成膜されたPVP―酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4は非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は39%であり、500nmにおける透過率は81%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約80〜100%であった。図4(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、PVP―酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極からなる第一の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、PVP―酸化チタンナノ粒子膜よる多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、UVオゾン装置によって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第一の表示電極構造体を得た。
この第一の表示電極構造体の作製工程において、UVオゾン処理をしない場合には、耐湿性が非常に悪く、水溶液からの有機EL色素の吸着プロセスでPVP―酸化チタンナノ粒子膜が崩壊してしまった。このことは、高分子(PVP)と酸化チタンナノ粒子によって形成された複合体からなる多孔質電極のUVオゾン処理によって、高分子(PVP)と酸化チタンナノ粒子膜表面との相互作用が強くなり、多孔質電極の耐湿性や機械的強度等の耐久性が向上したことを示している。
また、酸化チタンナノ粒子膜よる多孔質電極(高分子(PVP)と酸化チタンナノ粒子による複合体が形成されていない。)の水に対する接触角は、UVオゾン処理前において20度〜30度、UVオゾン処理後において5度以下であり、UVオゾン処理によって接触角は四分の一以下に低下し、多孔質電極表面のOH基の密度が増加したと考えられる。高分子(PVP)と酸化チタンナノ粒子によって形成された複合体からなる多孔質電極においても、複合体が形成されていない多孔質電極と同様に、UVオゾン処理によって接触角は低下し多孔質電極表面のOH基の密度の増加が考えられるので、多孔質電極表面への有機EL色素の担持量を増加させることが可能となる。
以上のように、スピンコート法によって透明なPVP―酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによって、ナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
スピンコート用溶液へ増粘剤や2−プロパノール(又は2−ブタノール)等を添加した溶液をスキージ法によって、基板へ塗布することによって厚膜を得ることができるが、不透明となってしまう問題がある。実際に、スキージ法によって得た膜厚10μmの膜は、非常に不透明であり、実用上不向きであった。
〔第二の表示電極構造体の作製〕:後述する実施例2で使用する第二の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。
ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。酸化チタンナノ粒子(平均粒径25nm)0.5gとイオン交換水1.5gとを均一に混合し分散処理をしてスピンコート用溶液を調整した。このスピンコート用溶液をスピンコート(1000rpm、10秒)によってITO膜(透明電極2)表面へ塗布し成膜した。成膜された塗布膜を加熱し、60度、12時間の乾燥処理を行なった。
この乾燥処理された塗布膜の表面をUVオゾン装置により洗浄した後、0.04Mの四フッ化チタン水溶液を水酸化ナトリウムによってpH1.9に調整した溶液へ、60度下で30分間浸漬し、浸漬液から取り出して、乾燥後にヘキサンで表面を洗浄した。最後に、窒素フローによる乾燥を行なった。この結果、ITO膜(透明電極2)の表面が四フッ化チタンで処理された膜厚1.0μmの酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。
上述のようにして得られた四フッ化チタン処理された酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定した。350nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図5(A)を参照。)。透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ150μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、透明な四フッ化チタン処理された酸化チタンナノ粒子膜(厚さ1.0μm)による多孔質電極4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第二の表示電極構造体について測定されたものであり、第二の表示電極構造体の厚さは151.2μmである。
図5(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第二の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図5(A)から明らかなように、四フッ化チタンの脱水縮合によりネッキングされた酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4は、非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は25%であり、500nmにおける透過率は75%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約80〜100%であった。図5(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、四フッ化チタン処理された酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極からなる第二の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、四フッ化チタン処理された酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、UVオゾン装置によって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第二の表示電極構造体を得た。
以上のように、スピンコート法によって透明な四フッ化チタン処理された酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
スピンコート用溶液へ増粘剤や2−プロパノール(又は2−ブタノール)等を添加した溶液を、スキージ法によって基板へ塗布することによって厚膜を得ることができるが、不透明になる問題があった。実際に、スキージ法によって得た膜厚10μmの膜は、非常に不透明であり、実用上不向きであった。
〔第三の表示電極構造体の作製〕:後述する実施例3で使用する第三の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。
ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。ITOナノ粒子(平均粒径25nm)が15wt%の濃度で分散した分散溶液をスピンコート用溶液として調製し、これをスピンコート(1000rpm、10秒)によってITO膜(透明電極2)に塗布し成膜した。その後、60度で12時間の加熱乾燥処理を行って、ITOナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。
上述のようにして得られたITOナノ粒子膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定した。350nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図6(A)を参照)。透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ150μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、透明な多孔質ITOナノ粒子膜(厚さ1.0μm)による多孔質電極4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第三の表示電極構造体について測定されたものであり、第三の表示電極構造体の厚さは151.2μmである。
図6(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第三の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図6(A)から明らかなように、ITOナノ粒子極膜による多孔質電極4は、非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は52%であり、500nmにおける透過率は75%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約80〜100%であった。図6(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、ITOナノ粒子膜による多孔質電極からなる第三の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、ITOナノ粒子膜よる多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、UVオゾンによって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第三の表示電極構造体を得た。
以上のように、スピンコート法によってITOナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。上述したスピンコート用溶液へPVPや四フッ化チタン等を混合して、これを用いてスピンコートしても透明な多孔性電極を得ることができる。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
また、スピンコート用溶液へ増粘剤や2−プロパノール(又は2−ブタノール)等を添加した溶液を用いて、スキージ法によって基板へ塗布することで厚膜を得ることができるが、不透明になる問題がある。例えば、スキージ法によって得た膜厚10μmの膜は非常に不透明であり、実用上不向きであった。
〔第四の表示電極構造体の作製〕:後述する実施例4で使用する第四の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。
ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。酸化錫ナノ粒子(平均粒径25nm)が15wt%の濃度で分散した水溶液をスピンコート用溶液として調製した。これをスピンコート(1000rpm、10秒)によってITO膜(透明電極2)表面へ塗布し成膜を行なった。その後、60度で12時間の加熱乾燥処理を行って、酸化錫ナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。
上述のようにして得られた酸化錫ナノ粒子膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定した。350nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図7(A)を参照)。透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ150μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、透明な酸化錫ナノ粒子膜(厚さ1.0μm)による多孔質4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第四の表示電極構造体について測定されたものであり、第四の表示電極構造体の厚さは151.2μmである。
図7(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第四の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図7(A)から明らかなように、酸化錫ナノ粒子膜による多孔質電極4は、非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は45%であり、500nmにおける透過率は84%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約80〜100%であった。図7(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、酸化錫ナノ粒子膜からなる第四の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、酸化錫ナノ粒子膜よりなる多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、UVオゾンによって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第四の表示電極構造体を得た。
以上のように、スピンコート法によって酸化錫ナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。上述したスピンコート用溶液へPVPや四フッ化チタン等を混合して、これを用いてスピンコートしても透明な膜を得ることができる。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
また、スピンコート用溶液へ増粘剤や2−プロパノール(又は2−ブタノール)等を添加した溶液をスキージ法によって基板へ塗布することで厚膜を得ることができるが、不透明になる問題がある。例えば、スキージ法によって得た膜厚10μmの膜は非常に不透明であり、実用上不向きであった。
〔第五の表示電極構造体の作製〕:後述する実施例5で使用する第四の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。
ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。ATOナノ粒子(平均粒径25nm)が15wt%の濃度で分散した水溶液をスピンコート用溶液として調製した。これをスピンコート(1000rpm、10秒)によってITO膜(透明電極2)表面へ塗布し成膜を行なった。その後、60度で12時間の加熱乾燥処理を行って、ATOナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。
上述のようにして得られたATOナノ粒子膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定した。350nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図8(A)を参照)。透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ150μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、透明なATO錫ナノ粒子膜(厚さ1.0μm)による多孔質電極4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第五の表示電極構造体について測定されたものであり、第五の表示電極構造体の厚さは151.2μmである。
図8(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第五の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図8(A)から明らかなように、ATOナノ粒子膜による多孔質電極4は、非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は27%であり、500nmにおける透過率は80%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約80〜100%であった。図8(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、ATOナノ粒子膜による多孔質電極からなる第五の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、ATOナノ粒子膜による多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、UVオゾン装置によって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第四の表示電極構造体を得た。
以上のように、スピンコート法によってATOナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。上述したスピンコート用溶液へPVPや四フッ化チタン等を混合してスピンコートしても透明な膜を得ることができる。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
また、スピンコート用溶液へ増粘剤や2−プロパノール(又は2−ブタノール)等を添加した溶液をスキージ法によって基板へ塗布することで厚膜を得ることができるが、不透明になる問題がある。例えば、スキージ法によって得た膜厚10μmの膜は非常に不透明であり、実用上不向きであった。
〔第六の表示電極構造体の作製〕:後述する比較例1で使用する第六の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。
ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。酸化チタンナノ粒子(平均粒径15nm)が25wt%の濃度で分散した水溶液をスピンコート用溶液として調製した。これをスピンコート(1000rpm、10秒)によってITO膜(透明電極2)表面へ塗布し成膜を行なった。その後、60度で12時間の加熱乾燥処理を行って、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。得られた酸化チタンナノ粒子膜の厚さは、1μmであった。
上述のようにして得られた酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定した。350nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図9(A)を参照)。透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ150μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、透明な酸化チタンナノ粒子膜(厚さ1.0μm)4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第六の表示電極構造体について測定されたものであり、第六の表示電極構造体の厚さは151.2μmである。
図9(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第六の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図9(A)から明らかなように、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4は、非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は45%であり、500nmにおける透過率は85%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約85〜100%であった。図9(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極からなる第六の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、UVオゾン装置によって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第四の表示電極構造体を得た。
以上のように、スピンコート法によって透明な酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
〔第七の表示電極構造体の作製〕:後述する比較例2で使用する第七の表示電極構造体
厚さ1.1mmのガラスからなる支持基板1上に、表面抵抗率が15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成し基体(FTO−ガラス基板)を作成した。同時に、厚さ150umのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)も作成した。
FTO膜、TO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。酸化チタンナノ粒子(平均粒径15nm)が25wt%の濃度で分散した水溶液をスピンコート用溶液として調製した。これをスピンコート(1000rpm、10秒)によって、FTO膜、ITO膜(透明電極2)表面へ塗布し成膜を行なった。その後、60度で12時間の加熱乾燥処理を行って、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4を得た。
更に、電気炉により500度、30分間焼結を施すことにより、膜厚1μmの酸化チタンナノ粒子膜(多孔質電極4)を、基体(FTO−ガラス基板、ITO−PEN基板)のFTO膜、ITO膜のそれぞれの上に形成した。しかし、ITO−PEN基板からなる基体上に形成された酸化チタンナノ粒子膜は、PENのガラス転移温度を超えてしまうため、焼成できなかった。
上述のようにして得られた酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定した。350nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図10(A)を参照)。透過率は、支持基板(ガラス基板:厚さ1.1mm)1、透明電極(FTO厚さ200nm)2、透明な酸化チタンナノ粒子膜(厚さ1.0μm)による多孔質電極4からなり、後述する有機EC色素を担持していない状態の第七の表示電極構造体について測定されたものであり、第七の表示電極構造体の厚さは1.101mmである。
図10(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第七の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図10(A)から明らかなように、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4は、非常に透過率が高く、400nmにおける透過率は74%であり、500nmにおける透過率は86%であり、600nm〜800nmにおける透過率は約90〜100%であった。図10(A)に示す透過率の変化を示す曲線は、支持基板、透明電極、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極からなる第七の表示電極構造体の層構造に起因する干渉によって、波打っている。
続いて、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極4が形成された基体(ITO−ガラス基板)を、UVオゾン装置によって洗浄し、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行ない、第七の表示電極構造体を得た。
以上のように、スピンコート法によってFTO−ガラス基板上に透明な酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極を得ることができた。これは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
〔第八の表示電極構造体の作製〕:後述する比較例3で使用する第八の表示電極構造体
厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)を作成した。
ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%の濃度で分散させたスラリーに、ポリエチレングリコール(PEG)を5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、ITO膜(透明電極2)上にスキージ法により塗布し塗布膜を形成した。
続いて、この塗布膜を、ホットプレートを用いて80度、15分間の乾燥処理を行ない、更に、オーブンを用いて60度、12時間の加熱処理を行なうことにより、膜厚7μmの酸化チタン膜による多孔質電極4を得た。
上述したようにして得られた酸化チタン膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定された200nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した(図11(A)を参照。)。なお、透過率は、支持基板(PEN基板:厚さ50μm)1、透明電極(厚さ200nm)2、酸化チタン膜(厚さ7μm)による多孔質電極4からなる第四の表示電極構造体について測定されたものであり、第四の表示電極構造体の厚さは、57.2μmである。
図11(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第八の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図11(A)から明らかなように、350nmにおける透過率は約0%であり、400nmにおける透過率は約2%であり、450nmにおける透過率は約5%であり、500nmにおける透過率は約12%であり、550nmにおける透過率は約23%であり、600nmにおける透過率は約37%であり、650nmにおける透過率は約53%であり、700nmにおける透過率は約68%であり、750nmにおける透過率は約86%であり、800nmにおける透過率は約100%であった。
なお、この透過率は、支持基板、透明電極、及び、酸化チタン膜による多孔質電極の3層部分からなり、酸化チタン膜にエレクトロクロミック色素が担持されていない状態の第八の表示電極構造体における透過率を示す。
上記のようにして酸化チタン膜による多孔質電極4が形成された基体(ITO−PEN基板)を、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行なった。
〔第九の表示電極構造体の作製〕:後述する比較例4で使用する第九の表示電極構造体
厚さ1.1mmのガラスからなる支持基板1上に、表面抵抗率が15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成し基体(FTO−ガラス基板)を作成した。また、厚さ150umのポリエチレンナフタレート(PEN)からなる支持基板1上に、表面抵抗率が13Ω/□のITO膜(透明電極2)を、塗布・焼成法によって形成し基体(ITO−PEN基板)も作成した。
FTO膜、ITO膜(透明電極2)表面をUVオゾン装置により洗浄した。次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、PEGを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記のFTO膜、ITO膜による各透明電極2上にスキージ法により塗布し塗布膜を形成した。
次に、この塗布膜を、ホットプレートを用いて80度、15分間の乾燥処理を行ない、更に、電気炉により500度、1時間焼結を施すことにより、膜厚5μmの酸化チタン膜による多孔質電極4を、基体(FTO−ガラス基板、ITO−PEN基板)のFTO膜、ITO膜のそれぞれの上に形成した。しかし、基体(ITO−PEN基板)上に形成された酸化チタン膜は、PENのガラス転移温度を超えてしまうため、焼成できなかった。
上述のようにFTO膜上へ形成された酸化チタン膜による多孔質電極4の透明性を、紫外−可視吸収スペクトル計により測定された200nmから800nmの波長範囲における透過率によって評価した。なお、透過率は、支持基板(厚さ1.1mm)1、透明電極(厚さ200nm)2、酸化チタン膜(厚さ5μm)による多孔質電極4からなる第九の表示電極構造体について測定されたものであり、第九の表示電極構造体の厚さは、6.3μmである。
図12(A)は、本発明の実施例において、多孔質電極の特性を示し、第九の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
図12(A)から明らかなように、350nmにおける透過率は約0%であり、400nmにおける透過率は約30%であり、450nmにおける透過率は約56%であり、500nmにおける透過率は約70%であり、550nmにおける透過率は約80%であり、600nmにおける透過率は約87%であり、650nmにおける透過率は約92%であり、700nmにおける透過率は約95%であり、750nmにおける透過率は約98%であり、800nmにおける透過率は約100%であった。なお、この透過率は、支持基板、透明電極(FTO膜)、及び、酸化チタン膜の3層部分からなり酸化チタン膜にエレクトロクロミック色素が担持されていない状態の第九の表示電極構造体における透過率を示す。
上記のようにして酸化チタン膜による多孔質電極4が形成されたFTO−ガラス基板を、上記式(12)に示した有機EC色素の2mM水溶液に40度下で24時間浸漬させ、多孔質電極に有機EC色素を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、窒素ブローによる乾燥処理を行なった。
〔対向電極構造体の作製〕
厚さ1.1mmのガラスからなる支持基板6上に、表面抵抗率が15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成し基体(FTO−ガラス基板)を作成した。1次粒径20nmのアンチモンがドープされた酸化錫を20重量%の分量で水に分散させスラリーを作製し、このスラリーに、PEGを5重量%の割合で溶解させて塗料を調製した。この塗料を上記FTO膜上にスキージ法により塗布し塗布膜を形成した。
続いて、この塗布膜を、ホットプレートを用いて80度、15分間の乾燥処理を行ない、更に、電気炉で500度、1時間焼結処理を行なうことにより、FTO膜上に、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化錫(ATO)膜による多孔質電極8が形成された対向電極構造体12が得られた。
〔電解質用の溶液の調製〕
ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを調製した。
〔電極構造体の貼り合わせ〕
上述した第一〜第五の表示電極構造体(色素が担持された多孔質電極4が形成された基板)と、対向電極構造体とを、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて90度で貼り合わせた。この際、後工程で電解質溶液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。表示及び対向電極構造体の透明電極の間距離は50μmであった。
〔電解質溶液の注入〕
電解質溶液を注入し、その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止し、電解質層を挟持した状態で対向した表示及び対向電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
実施例1
上述した第一の表示電極構造体と、対向電極構造体とを用いて、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両透明電極2,7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
この吸光度は、対向電極構造体の外側から入射光(波長635nm、強度I0)を入射させて、第一の表示電極構造体の外側へ出射してくる透過光(波長635nm、強度I)を分光光度計によって測定し、A=log10(I0/I)により求めた。
図4(B)は、本発明の実施例1における多孔質電極の特性を示し、表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は対向電極材料ATOに対する電圧(V vs ATO)を示す。
図4(B)に示す測定結果のように、両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.6Vの電圧で直ちにシアン発色を呈した。なお、電圧印加のOFFからONへの変更によって生じる発消色による色表示変更の応答速度は100ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、電圧を−1.2V程度まで低減させると、直ちに消色して透明となった。なお、電圧のONからOFFへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は約100msであり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、表示及び対向電極構造体11,12の透明電極2、7の間に、−1.5Vと0.5Vとを交互に1Hzで100万回繰り返して印加したところ、100万回繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
なお、実施例1における表示装置は、表示電極構造体11を構成する多孔質電極4として無色透明の材料を適用したので、消色時に確実に無色透明状態となり、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行なうことができた。
更に、多孔質電極4の形成方法として80度以下の低温プロセスで作製しているため、ポリエチレンナフタレート基板をはじめとするほとんどのプラスチック基板上への多孔質電極の形成が可能となり、低温環境下においても実用上充分な発消色特性を具備する表示電極構造体11が形成されたことも確かめられた。
実施例2
上述した第二の表示電極構造体と、対向電極構造体とを用いて、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両透明電極2,7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
この吸光度は、対向電極構造体の外側から入射光(波長635nm、強度I)を入射させて、第二の表示電極構造体の外側へ出射してくる透過光(波長635nm、強度I)を分光光度計によって測定し、A=log10(I0/I)により求めた。
図5(B)は、実施例2における多孔質電極の特性を示し、表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図5(B)に示す測定結果のように、両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.2Vの電圧で直ちにシアン発色を呈した。なお、電圧印加のOFFからONへの変更によって生じる発消色による色表示変更の応答速度は100ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、電圧を−0.7V程度まで低減させると、直ちに消色して透明となった。なお、電圧のONからOFFへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は約200msであり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、表示及び対向電極構造体11,12の透明電極2、7の間に、−1.5Vと0.5Vとを交互に1Hzで100万回繰り返して印加したところ、100万回繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
なお、実施例2における表示装置は、表示電極構造体11を構成する多孔質電極4として無色透明の材料を適用したので、消色時に確実に無色透明状態となり、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行なうことができた。
更に、多孔質電極4の形成方法として80度以下の低温プロセスで作製しているため、ポリエチレンナフタレート基板をはじめとするほとんどのプラスチック基板上への多孔質電極の形成が可能となり、低温環境下においても実用上充分な発消色特性を具備する表示電極構造体11が形成されたことも確かめられた。
実施例3
上述した第三の表示電極構造体と、対向電極構造体とを用いて、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両透明電極2,7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
この吸光度は、対向電極構造体の外側から入射光(波長635nm、強度I0)を入射させて、第三の表示電極構造体の外側へ出射してくる透過光(波長635nm、強度I)を分光光度計によって測定し、A=log10(I0/I)により求めた。
図6(B)は、本発明の実施例3における多孔質電極の特性を示し、表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図6(B)に示す測定結果のように、両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.6Vの電圧で直ちにシアン発色を呈した。なお、電圧印加のOFFからONへの変更によって生じる発消色による色表示変更の応答速度は100ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、電圧を−1.2V程度まで低減させると、直ちに消色して透明となった。なお、電圧のONからOFFへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は約100msであり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、表示及び対向電極構造体11,12の透明電極2、7の間に、−1.5Vと0.5Vとを交互に1Hzで100万回繰り返して印加したところ、100万回繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
なお、実施例3における表示装置は、表示電極構造体11を構成する多孔質電極4として無色透明の材料を適用したので、消色時に確実に無色透明状態となり、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行なうことができた。
更に、多孔質電極4の形成方法として80度以下の低温プロセスで作製しているため、ポリエチレンナフタレート基板をはじめとするほとんどのプラスチック基板上への多孔質電極の形成が可能となり、低温環境下においても実用上充分な発消色特性を具備する表示電極構造体11が形成されたことも確かめられた。
スピンコート前の溶液へPVPやチタンアルコキシドを導入して、スピンコート法によって成膜した透明ナノ粒子膜による多孔質電極4へ有機EC色素を吸着させた表示電極構造体11についても、上記と同様に良好に発色することを確認している。すなわち、ITOナノ粒子膜については、PVPや金属アルコキシドを導入してもしなくても、有機ECデバイスの表示電極構造体11として機能することが分かった。これは、酸化チタンよりITOの方が有機EC色素へ電子を供与し易いため、電子移動媒体となり得るPVPや金属アルコキシドを導入いなくてもよいためである。
実施例4
上述した第四の表示電極構造体と、対向電極構造体とを用いて、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両透明電極2,7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
この吸光度は、対向電極構造体の外側から入射光(波長635nm、強度I0)を入射させて、第四の表示電極構造体の外側へ出射してくる透過光(波長635nm、強度I)を分光光度計によって測定し、A=log10(I0/I)により求めた。
図7(B)は、本発明の実施例4における多孔質電極の特性を示し、表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図7(B)に示す測定結果のように、両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.4Vの電圧で直ちにシアン発色を呈した。なお、電圧印加のOFFからONへの変更によって生じる発消色による色表示変更の応答速度は200ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、電圧を−1.0V程度まで低減させると、直ちに消色して透明となった。なお、電圧のONからOFFへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は約150msであり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、表示及び対向電極構造体11,12の透明電極2、7の間に、−1.5Vと0.5Vとを交互に1Hzで100万回繰り返して印加したところ、100万回繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
なお、実施例4における表示装置は、表示電極構造体11を構成する多孔質電極4として無色透明の材料を適用したので、消色時に確実に無色透明状態となり、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行なうことができた。
更に、多孔質電極4の形成方法として80度以下の低温プロセスで作製しているため、ポリエチレンナフタレート基板をはじめとするほとんどのプラスチック基板上への多孔質電極の形成が可能となり、低温環境下においても実用上充分な発消色特性を具備する表示電極構造体11が形成されたことも確かめられた。
スピンコート前の溶液へPVPやチタンアルコキシドを導入して、スピンコート法によって成膜した透明なナノ粒子膜による多孔質電極4へ有機EC色素を吸着させた表示電極構造体11についても、上記の酸化錫ナノ粒子膜だけの場合と同様に良好に発色することを確認している。すなわち、酸化錫ナノ粒子膜については、PVPや金属アルコキシドを導入してもしなくても、有機ECデバイスの表示電極構造体11として機能することが分かった。これは、酸化チタンより酸化錫の方がフラットバンド(平帯)電位(半導体電極が電解質溶液に接触して空間電位が生じているとき、電極電位を変化させるとバンドの曲がりのない状態を作ることができ、この電位を平帯電位といい、n型半導体の場合、平帯電位は伝導帯の下端の電位に略相当する。)が低く、有機EC色素へ電子を供与し易いため、電子移動媒体となり得るPVPや金属アルコキシドを導入しなくてもよい。
実施例5
上述した第5の表示電極構造体と、対向電極構造体とを用いて、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両透明電極2,7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
この吸光度は、対向電極構造体の外側から入射光(波長635nm、強度I0)を入射させて、第五の表示電極構造体の外側へ出射してくる透過光(波長635nm、強度I)を分光光度計によって測定し、A=log10(I0/I)により求めた。
図8(B)は、本発明の実施例5における多孔質電極の特性を示し、表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図8(B)に示す測定結果のように、両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.5Vの電圧で直ちにシアン発色を呈した。なお、電圧印加のOFFからONへの変更によって生じる発消色による色表示変更の応答速度は100ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、電圧を−1.2V程度まで低減させると、直ちに消色して透明となった。なお、電圧のONからOFFへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は約100msであり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、表示及び対向電極構造体11,12の透明電極2、7の間に、−1.5Vと0.5Vとを交互に1Hzで100万回繰り返して印加したところ、100万回繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
なお、実施例5における表示装置は、表示電極構造体11を構成する多孔質電極4として無色透明の材料を適用したので、消色時に確実に無色透明状態となり、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行なうことができた。
更に、多孔質電極4の形成方法として80度以下の低温プロセスで作製しているため、ポリエチレンナフタレート基板をはじめとするほとんどのプラスチック基板上への多孔質電極の形成が可能となり、低温環境下においても実用上充分な発消色特性を具備する表示電極構造体11が形成されたことも確かめられた。
スピンコート前の溶液へPVPやチタンアルコキシドを導入して、スピンコート法によって成膜した透明なナノ粒子膜からなる多孔質電極4へ有機EC色素を吸着させた表示電極構造体11についても、上記のATOナノ粒子膜だけの場合と同様に良好に発色することを確認している。すなわち、ATOナノ粒子膜については、PVPや金属アルコキシドを導入してもしなくても、有機ECデバイスの表示電極構造体11として機能することが分かった。これは、酸化チタンよりATOの方が有機EC色素へ電子を供与し易いため、電子移動媒体となり得るPVPや金属アルコキシドを導入いなくてもよいためである。
実施例3、実施例4、実施例5に示したように、酸化チタンよりフラットバンド電位が低い半導体ナノ粒子、或いは、フラットバンド電位に自由度がある半導体ナノ粒子は、導電性高分子や金属アルコキシドとによる複合体を形成する複合化処理をしなくとも、比較的良好なエレクトロクロミック特性を示す。
比較例1
上述した第九の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、図1に示す両透明電極2、7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
図9(B)は、本発明の比較例1における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図9(B)に示したように、薄いシアン発色が観測されたものの、吸光度が0.2までしか上昇せず、応答速度がON・OFF共に数秒程度と遅く、実用上十分な発色が観測されなかった。
上述した第六の表示電極構造体の多孔質電極4の作製工程において、酸化チタンのみで80度の加熱プロセスで作成した場合、粒子間の融着が進行せず粒子間における電子移動が起こらないため、有機EC色素の発色が実用上充分でなかったと考えられる。
比較例2
上述した第九の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、図1に示す両透明電極2、7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
図10(B)は、本発明の比較例2における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図10(B)に示したように、応答速度は数百msと良好であったものの、シアン発色の吸光度が0.2までしか上昇せず、実用上十分な発色特性が観測されなかった。
上述した第六の表示電極構造体の多孔質電極4の作製工程において、酸化チタン粒子のみで500度の加熱プロセスで作成した場合、焼結により粒子間の融着は進行して良好な電子移動が起こるものの、粒子間の融着によって細孔構造がなくなってしまうため、有機EC色素の担持量が減少して発色が実用上充分でなくなると考えられる。
比較例3
上述した第四の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、図1に示す両透明電極2、7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
図11(B)は、本発明の比較例3における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図11(B)に示す測定結果例において、図1に示す両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.4Vの電圧で直ちに薄いシアン発色を呈した。なお、電圧のOFFからONへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は500ms程度であった。更に、−1.5V程度まで電圧を上昇させ、その後、両透明電極2、7の間の電圧を0Vまで下げていったところ、発色濃度は低減化したものの、完全には消色しなかった。なお、電圧のONからOFFへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は約12sであった。
比較例3の表示装置においては、発色後に電圧を低下させ、0Vとなっても、完全な無色透明状態にはならず、消え残りがあることが確認された。これは、上述した第四の表示電極構造体の多孔質電極4の作製工程において、上述の塗料をスキージ法により塗布した後の加熱処理が低温であったため、酸化チタンナノ粒子同士のネッキング(電気的な接続)を形成することできなかったためである。よって、円滑な電子移動が起こりにくく、電圧を低減させていった時に発色したままになってしまい、良好な応答速度が得られなかった。
比較例4
上述した第五の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1に示す構成のエレクトロクロミック装置を作製し、図1に示す両透明電極2、7の間に電圧を印加して、電圧−光学特性(印加電圧の変化による635nmにおける吸光度の変化)を測定した。
図12(B)は、本発明の比較例4における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図であり、縦軸は635nmにおける吸光度、横軸は電圧(V vs ATO)を示す。
図12(B)に示す測定結果例においては、図1に示す両透明電極2、7の間に電圧を上昇させ印加していくと、−1.0Vの電圧で直ちにシアン発色を呈した。なお、電圧のOFFからONへの変更によって生じる色表示変更の応答速度は150ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。更に、−1.4V程度まで電圧を上昇させた後、両透明電極2、7の間の電圧を−1.0V程度まで低減させると、再び直ちに透明となった。なお、電圧印加のONからOFFへの変更によって生じる発消色による色表示変更の応答速度は約60msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、この比較例4におけるエレクトロクロミック装置の表示及び対向電極構造体11、12の透明電極4,7の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
この比較例4においては、実用上の性能は良好ではあるが、多孔質電極4の形成工程において500度の焼結処理を行っているので、支持基板1には耐熱性の高い材料(例えば、ガラス基板)のみしか適用できず、汎用性プラスチック材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板)や薄層材料を用いたフレキシブルな表示装置を作製する場合には不向き(作製が困難)である。
比較例2、比較例4に示したように、酸化チタンナノ粒子は、500度で焼結するとフラットバンド電位が下がって、酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極は良好なエレクトロクロミック特性を示すものの、高分子基板上へ酸化チタンナノ粒子膜による多孔質電極を形成することができない。一方、比較例1に示したように、500度での焼結しない状態の酸化チタンナノ粒子単体からなる膜による多孔質電極では、良好なエレクトロクロミック特性を示さない。また、酸化チタンナノ粒子と導電性高分子でないPEGとの複合体化処理を行っても、500度での焼結をしない場合には、実施例1に示したようにPVPとの複合体化処理を行なった場合のような良好なエレクトロクロミック特性を示さない。
次に、窒素吸脱着測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP-miniII)を使用して、窒素吸脱着等温線を測定し、多孔質電極に関する比表面積、細孔径分布を評価した結果について説明する。
測定サンプルの前処理として、窒素吸脱着測定装置に接続するガラス管内へサンプルを導入し、窒素雰囲気下でサンプル150mgを120度・3時間で加熱し、細孔内外における吸着水の除去を行なった。次いで、77K(ガラス管内の飽和蒸気圧:760mmHg)まで冷却し、サンプル管における相対圧力(P/P0=吸着平衡圧/飽和蒸気圧)を変化させ、ガラス管内の圧力の変化を測定した。サンプル表面は、窒素分子をファンデルワールス力で引き付け、物理吸着する。これによって、既知容量のサンプル管内の圧力変化が生じ、サンプル表面への窒素の物理吸着量がわかる。実測された相対圧力とガス吸着量のプロットをとり、その直線の勾配と切片から、Langmuir理論を多分子層吸着に拡張したBET式におけるVm(単分子層の吸着ガス量)とC値(BET定数)が求められ、Vm と窒素分子の断面積(窒素分子断面積:16.2Å2)から、BET比表面積を算出することができる。
細孔体積は、窒素吸着脱着測定装置により得た比表面積と細孔径分布から算出した。具体的には、全細孔を、直径Dが平均細孔径に等しく、側面積Sが比表面積に等しい1つの円筒(シリンダー)であると見做して、細孔体積VをV=SD/4によって算出した。
酸化チタンの密度を4.26g/cm3、ポリビニルピロリドンの密度を1.g/cm3、フッ化チタンの密度を2.80g/cm3と仮定し、更に、成膜された多孔質電極における各粒子成分の密度とバクルでの密度とが同様であると仮定して、粒子密度を算出した。
先ず、実施例1における多孔質電極(PVPと酸化チタンナノ粒子によって形成された複合体を含む膜による電極)についての評価結果について説明する。
窒素吸脱着等温線の測定から得られた比表面積は30m2/gであり、平均細孔径は12nmのメソスケールの細孔を有し、これらから算出された細孔体積は9.0×10-2mL/gであった。多孔質電極1gは、0.9gのPVPと0.1gの酸化チタンナノ粒子からなり、0.9mLのPVP、0.02mLの酸化チタンナノ粒子、0.09mLの細孔体積からなっている。従って、多孔質電極の単位体積あたりの酸化チタンナノ粒子の含有率は0.05g/cm3、PVPの含有率は0.45g/cm3となる。また、酸化チタンの空間充填率は、1%となる。
次に、実施例2における多孔質電極(四フッ化チタンと酸化チタンナノ粒子によって形成された複合体を含む膜による電極)についての評価結果について説明する。
窒素吸脱着等温線の測定から得られた比表面積は55m2/gであり、平均細孔径は20nmのメソスケールの細孔を有し、これらから算出された細孔体積は2.7×10-1mL/gであった。また、多孔質電極1gは、0.1gの四フッ化チタンと0.9gの酸化チタンナノ粒子からなり、0.035mLの四フッ化チタン、0.211mLの酸化チタンナノ粒子、0.27mLの細孔体積からなっている。従って、多孔質電極の単位体積あたりの酸化チタンナノ粒子の含有率は1.73g/cm3、四フッ化チタンの含有率は0.19g/cm3となる。酸化チタンの空間充填率は、41%となる。
次に、比較例1、比較例2における多孔質電極(複合体化処理によらない酸化チタンナノ粒子膜による電極)についての評価結果について説明する。
窒素吸脱着等温線の測定から得られた比表面積は25m2/gであり、平均細孔径は11nmのメソスケールの細孔を有し、これらから算出された細孔体積は6.9×10-2mL/gであった。また、多孔質電極1gは、1gの酸化チタンナノ粒子からなり、0.23mLの酸化チタンナノ粒子、0.069mLの細孔体積からなっている。従って、多孔質電極の単位体積あたりの酸化チタンナノ粒子の含有率は3.34g/cm3となる。酸化チタンの空間充填率は、26%となる。
以上の結果から、実施例2による多孔質電極における酸化チタンナノ粒子の含有率(単位空間当たりの粒子重量)、及び、比較例1及び比較例2による多孔質電極における酸化チタンナノ粒子の含有率は殆ど同じ値であることが分かった。これは、実施例2による多孔質電極の形成では、酸化チタンナノ粒子膜を形成した後に、この膜を四フッ化チタン溶液に浸漬させて架橋させているため、酸化チタンの数粒子間での架橋に伴った粒子の再配列化は起こるものの細孔構造に大きな変化はないためと考えられる。
実施例1による多孔質電極の形成では、UVオゾン処理によるPVPの分解反応を考慮しても、酸化チタンナノ粒子の含有率(粒子密度)は、比較例1及び比較例2による多孔質電極における酸化チタンナノ粒子の含有率より低いことが分かった。これは、多孔質電極の形成以前のスピンコート用溶液において、PVPと酸化チタンナノ粒子が均一になって複合化し易い状態であることから、多孔質電極の形成時にPVPが、酸化チタンナノ粒子表面に存在し、酸化チタンナノ粒子間を繋ぐように存在したためと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、無色透明な支持基板上に多孔質電極を形成してこれにエレクトロクロミック色素を担持させて表示電極構造体を形成したことにより、特にフルカラー表示に好適なエレクトロクロミック装置が得られた。
無色透明な多孔質電極が形成できたのは、粒度分布の狭いナノ粒子を用いたことに加え、増粘剤を添加せずにスピンコート法で成膜したことによってナノ粒子が規則配列化したためと考えられる。
酸化チタンナノ粒子の分散液に、PEG等の増粘剤や2−プロパノール(又は2−ブタノール)等を添加した溶液を、スキージ法によって基板へ塗布することで厚膜を得ることができるが、不透明になる問題や有機ECとして機能させるためには焼成して酸化チタンナノ粒子を焼結する必要があるという問題がある。
高温焼成処理によないで作製したチタニアナノ粒子膜による多孔質電極については、チタニアナノ粒子膜に電子移動媒体を導入しない多孔質電極に有機EC色素を担持させた場合、有機EC色素の発色は不良であった。一方、PVP、チタンアルコキシド、チタンフッ化物等の導入によって形成された複合体を含む多孔質電極に有機EC色素を担持させた場合、有機EC装置として実用上十分な発色特性を得ることができた。
また、酸化チタンよりフラットバンド電位が低いn型半導体材料(例えば、酸化錫)のナノ粒子、ITOやATO等のナノ粒子膜による多孔質電極においては、PVP、チタンアルコキシド、チタンフッ化物等と複合化させなくとも、多孔質電極に有機EC色素を担持させた場合、有機EC装置として十分な発色特性を発現することが分かった。
更に、チタンアルコキシドでなくとも、錫アルコキシド、Inアルコキシド、Sbアルコキシド等を電子移動媒体として用いて、多孔質電極を作成しこれに有機EC色素を担持させた場合においても、有機EC装置として実用上十分な発色特性を得ることができる。
本発明によれば、多孔質電極の材料として酸化物ナノ粒子と、PVP、チタンアルコキシド、チタンハロゲン化物等の電子移動媒体によって形成された複合体を利用することで、低温条件下において、実用上十分な発色特性を得ることができる孔質電極を形成することができた。これにより、従来汎用されていたガラス基板よりも耐熱性の低いプラスチック材や薄層基板に、従来よりも低温で多孔質電極を形成することができ、これをエレクトロクロミック装置に適用できるようになり、装置形状や態様の自由度が高まり、また、フレキシブルな表示素子を作製することも可能となった。
また、本発明によれば、低温で作製できること、増粘剤が必要ない、高温焼成処理によらないこと、薄膜であること等を考慮すると、従来技術より作製コストを十分に低くすることができると考えられる。
なお、本発明によるエレクトロクロミック装置は、各種の用途に使用される表示素子や表示板、防眩ミラー、調光素子、光スイッチ、光メモリ等に使用することができる。
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、多孔質電極に担持させるエレクトロクロミック化合物は目的用途に応じて適宜選択することができ、上述した例に限定されるものではない。また、例示した各部の寸法はこれに限定されるものでなく、目的用途に応じて適宜設定することができる。
更に、エレクトロクロミック化合物が担持される多孔質電極は、実施例に挙げた酸化物以外の酸化物による多孔質電極であってもよく、必要に応じて任意に変更可能である。
以上説明したように、本発明によれば、密着性に優れた多孔質電極を有し耐久性に優れ、低温プロセスで形成することがでるエレクトロクロミック装置及びその製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態において、エレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。 同上、多孔質電極の概略構成を模式的に示す図である。 同上、カラー表示を行なうことができるエレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。 本発明の実施例において、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第一の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)実施例1における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第二の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)実施例2における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第三の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)実施例3における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第四の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)実施例4における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第五の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)実施例5における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第六の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)比較例1における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第七の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)比較例2における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第八の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)比較例3における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 同上、多孔質電極の特性を説明する図であり、(A)第九の表示電極構造体の透過率の測定結果を示す図、(B)比較例4における表示素子の発色時、消色時の吸光度の変化を示す図である。 従来技術における、(A)光電気化学装置の模式断面図、(B)複合ナノ粒子電池の模式断面図、(C)ナノ構造の電極層の模式断面図、(D)双峰粒径分布を含む電極層の模式断面図である。 同上、有機透明電極体の一部拡大断面図である。
符号の説明
1、1a、1b、1c、6、6a、6b、6c…支持基板、
2、2a、2b、2c、7、7a、7b、7c…透明電極、
3、3a、3b、3c…有機EC色素、
4、4a、4b、4c、8、8a、8、8c…多孔質電極、
5、5a、5b、5c…電解質層、9a、9b…ナノ粒子、
10…エレクトロクロミック装置、
10A、10B、10C…エレクトロクロミック素子構造体、
11、11a、11b、11c…表示電極構造体、
12、12a、12b、12c…対向電極構造体、15…導電性高分子、
16…金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物

Claims (35)

  1. 支持基板と、
    この支持基板上に形成された電極と、
    導電性高分子とナノ粒子によって形成された複合体が前記電極上に形成され、前記複
    合体が活性化処理されてなる多孔質電極と
    から構成された電極構造体を有する、エレクトロクロミック装置。
  2. 前記複合体がUVオゾン処理によって活性化処理された、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
  3. 前記導電性高分子がポリビニルピロリドンである、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
  4. 前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記酸化チタンと前記ポリビニルピロリドンを合わせた含有率が0.3g/cm3以下である、請求項3に記載のエレエレクトロクロミック装置。
  5. 前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化された、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
  6. 支持基板と、
    この支持基板上に形成された電極と、
    金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成された複合体が前記
    電極上に形成され、前記複合体が活性化処理されてなる多孔質電極と
    から構成された電極構造体を有する、エレクトロクロミック装置。
  7. 前記複合体がUVオゾン処理によって活性化処理された、請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  8. 前記金属ハロゲン化物が四フッ化チタンである、請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  9. 前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記多孔質電極における細孔容積が0.05mL/cm3以上である、請求項8に記載のエレクトロクロミック装置。
  10. 前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面が活性化された、請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  11. 前記電極は透明電極であり、前記電極構造体は観察される表示側に設けられた表示電極構造体であり、酸化反応又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素が前記複合体に担持された、請求項1又は請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  12. 前記ナノ粒子は、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物の何れかである、請求項1又は請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  13. 前記多孔質電極は、600nm以上800nm以下の波長領域において80%以上の透過率を有する、請求項1又は請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  14. 前記ナノ粒子の直径が2nm以上、50nm以下である、請求項1又は請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  15. 前記支持基板がプラスチック基板である、請求項1又は請求項6に記載のエレクトロクロミック装置。
  16. 支持基板と、この支持基板上に形成された電極と、この電極上に形成された多孔質電極とから構成される電極構造体を有するエレクトロクロミック装置の製造方法であって、
    導電性高分子とナノ粒子が溶媒に分散された溶液を調製する第1工程と、
    前記電極に前記溶液を塗布し塗布膜を形成する第2工程と、
    加熱によって前記溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させ、前記導電性高分子と前記
    ナノ粒子によって形成された複合体からなる前記多孔質電極を形成する第3工程と、
    前記複合体を活性化処理する第4工程と
    を有する、エレクトロクロミック装置の製造方法。
  17. 前記第4工程において、前記複合体をUVオゾン処理によって活性化処理する、請求項16に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  18. 前記導電性高分子がポリビニルピロリドンである、請求項16に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  19. 前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記酸化チタンと前記ポリビニルピロリドンを合わせた含有率が0.3g/cm3以下である、請求項18に記載のエレエレクトロクロミック装置の製造方法。
  20. 前記第2工程に先立って、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面を活性化させる工程を有する、請求項16記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  21. 支持基板と、この支持基板上に形成された電極と、この電極上に形成された多孔質電極とから構成される電極構造体を有するエレクトロクロミック装置の製造方法であって、
    金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物とナノ粒子によって形成される複合体からな
    る前記多孔質電極を形成する第1工程と、
    前記複合体を活性化処理する第2工程と
    を有する、エレクトロクロミック装置の製造方法。
  22. 前記第1工程は、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子が溶媒に分散された溶液を調製する工程と、前記電極に前記溶液を塗布し塗布膜を形成する工程と、加熱によって前記溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させる工程とを有する、請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  23. 前記第1工程は、前記ナノ粒子が第1の溶媒に分散された第1の溶液を記電極に塗布し塗布膜を形成する工程と、加熱によって前記第1の溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させる工程と、前記金属アルコキシド又は前記金属ハロゲン化物と前記ナノ粒子が第2の溶媒に分散された第2の溶液に、乾燥された前記塗布膜が形成された前記電極を浸漬させる工程と、前記第2の溶液から前記支持基板を取り出して、加熱によって前記第2の溶媒を揮発させて前記塗布膜を乾燥させる工程とを有する、請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  24. 前記第2の工程において、前記複合体をUVオゾン処理によって活性化処理する、請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  25. 前記金属ハロゲン化物が四フッ化チタンである、請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  26. 前記ナノ粒子が酸化チタンからなり、前記多孔質電極における前記酸化チタンの含有率が0.01g/cm3以上、0.10g/cm3以下であり、前記多孔質電極における細孔容積が0.05mL/cm3以上である、請求項25に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  27. 前記第1工程に先立って、前記支持基板上の少なくとも前記電極の表面を活性化させる工程を有する、請求項21記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  28. 前記電極が透明電極からなり、前記電極構造体は観察される表示側に設けられる表示電極構造体として作製され、酸化反応又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素を前記複合体に担持させる工程を有する、請求項16又は請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  29. 前記ナノ粒子は、酸化チタン、酸化錫、三酸化二アンチモンと酸化錫の複合酸化物、三酸化二インジウムと酸化錫の複合酸化物の何れかである、請求項16又は請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  30. 前記多孔質電極は、600nm以上800nm以下の波長領域において80%以上の透過率を有する、請求項16又は請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  31. 前記ナノ粒子の直径が2nm以上、50nm以下である、請求項16又は請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  32. 前記支持基板がプラスチック基板である、請求項16又は請求項21に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  33. 150度(摂氏温度)以下の加熱によって前記塗布膜を乾燥させる、請求項16又は請求項22又は請求項23に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  34. 100度(摂氏温度)以下の加熱によって前記塗布膜を乾燥させる、請求項16又は請求項22又は請求項23に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
  35. 60度(摂氏温度)以下の加熱によって前記塗布膜を乾燥させる、請求項16又は請求項22又は請求項23に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。
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