JP5045998B2 - エレクトロクロミック装置、及びその製造方法、ならびに多孔質電極の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記従来公知の各種発光型素子は、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
特に、LCDは、発光型素子の中でも需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。
一方、携帯電話等のモバイル機器において、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、発光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
他方、電気泳動方式は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
EC素子を用いた表示は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、反射型で視認性に優れ、構造が簡易でかつ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
これらの表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
具体的に、上記特許文献1に開示されている表示装置の表示電極は、導電性基板上へ酸化チタンのゾル溶液を塗布し、その後450℃で焼成することにより形成されている。
また、上記特許文献2に開示されている表示装置の表示電極は、導電性基板上へ酸化チタンペーストを塗布し、その後550℃で焼成することにより形成されている。
また、各画素の視差低減を図るためには、支持基板として充分な機械的な強度をもつ薄い材料が好適である。
更に、表示装置としての利便性を向上させるべく、形状の自由度を増すためには、フレキシブルなものであることが望ましいが、この場合には、支持基板は、プラスチック材料が好適であり、この形状変化に追従可能なように多孔質電極と支持基板との間の密着性が強く確保することが必要となる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、焼成工程のように高温下での成膜工程を必要とせずに多孔質電極を形成可能なものとし、高透明でカラー表示に好適で、しかも支持基板との密着性も高く、鮮明で色純度が高く、繰り返し耐久性にも優れたエレクトロクロミック装置及びその製造方法、ならびに多孔質電極の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明においては、支持基板上に少なくとも透明電極が形成された電極構造体の前記透明電極上に、金属単体、真性半導体、酸化物半導体、前記金属の多成分系からなる複合体酸化物半導体のいずれかをターゲット材料とし、0.5Paよりも高圧下で、かつ酸素ガス存在下で、マグネトロンスパッタリングを行うことにより、多孔質電極を形成することに特徴を有する多孔質電極の製造方法を提供する。
但し、本発明は以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、これは本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、後述するピリジン化合物よりなる有機EC色素3とが担持された多孔質電極4を具備する構成の表示電極構 造体11と、支持基板6上に、透明電極7と多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
以下、構成要素について順次説明する。
樹脂材料を適用する場合には、特にカラー表示を行うことに鑑みて透明性の高い材料が望ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
電極材料としては、例えば、In2O3とSnO2との混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn2O3をコーティングした膜等が挙げられる。
また、上記ITO膜や、SnO2 またはIn2O3をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、その他MgOやZnO等も適用できる。
表示電極構造体11を構成する多孔質電極4は、高い有機EC色素担持機能を得るために、表面積が大きい構成とする。
多孔質電極4は、金属単体、真性半導体、酸化物半導体、前記金属の多成分系からなる複合体酸化物半導体のいずれかを用いて作製することができ、例えば、カドミウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、錫、亜鉛、ストロンチウム、鉄、タングステン、ジルコニウム、インジウム、マンガン、コバルト、銅、銀、又は真性半導体、又は酸化物半導体、又は前記金属の多成分系からなる複合体酸化物半導体等が挙げられる。
このとき電源としてDC電源またはRF電源を適用し、スパッタリング工程において、成膜雰囲気は酸素ガス存在下とし、成膜用真空槽内の全圧は0.5Paよりも高圧とし、かつスパッタリング時の成膜面の表面温度は、支持基板として適用する材料の耐熱性(ガラス転移点)に応じて選定するものとし、プラスチック材料を適用する場合には、300℃以下となる。
具体的な例としては、ポリイミド(PI)基板(例えば、三菱ガス化学製商品名「ネオプリムL」、耐熱温度:285℃、光透過率90%(厚さ100μm))、フッ素樹脂基板(耐熱温度:250℃)、ポリエーテルスルホン(PES)基板(例えば、住友ベークライト株式会社製商品名「スミライトFS」、耐熱温度:180℃、光透過率88%(厚さ550nm))、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板(耐熱温度:160℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板(耐熱温度:140℃)が挙げられる。
多孔質電極8は、後述する有機EC色素の色素の担持機能を高めるべく、表面積が大きい材料により構成することが好ましい。具体的には、表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、粒子集合体状、ロット形状、ワイヤ形状等となっているものが好適である。
金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Cu等が挙げられ、真性半導体としては、例えば、Si、Ge、Te等が挙げられる。酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe2O3、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5、In2O3、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb2O5−SrTiO3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−ZrO2、Nb2O5−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられ、特にTiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好適である。また、有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとする。
有機EC色素3は、エレクトロクロミック色素として公知の材料をいずれも適用できる。但し、有機EC色素3は多孔質電極4に吸着するように、その化学式において任意の吸着基を具備していることが好ましい。
吸着基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基、アミノ基、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられる。
また有機EC色素3としては、単一の化合物のみを用いてもよく、複数の化合物を混合して用いてもよい。
例えば、多孔質電極材料4に担持させた有機EC色素が還元反応によってラジカル状態となり発色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させた色素と同色調であり、酸化反応によって発色する有機EC色素を選定する。
このように、両電極構造体11、12において有機EC色素を担持させた構成とすることにより、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。
具体的方法としては、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、自然吸着法、及び多孔質電極表面へ有機EC色素を化学結合させる方法が好適である。
この自然吸着法において、有機EC色素を多孔質電極4に確実に吸着させるためには、有機EC色素の化学構造中に、吸着性を有する官能基を導入しておくことが必要である。
この吸着性を有する官能基は、多孔質電極4の材料に応じて適宜選定する。例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中の吸着性官能基として、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等を導入しておくことが好ましい。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合して形成させるようにしてもよい。
このような表面改質により、有機EC色素が多孔質電極4の材料と化学結合を形成するようになると、有機EC色素の結合力が強まり、例えば、電界質層5の材料として色素溶解性の高いものを使用するような場合に有利になり、有機色素の材料選択性が高まり、エレクトロクロミック装置の耐久性の向上も図られる。
支持電解質としては、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えばKCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えばNaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えばフェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。
例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等から適宜選定する。
マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。
なお、これらを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
表示電極構造体11を作製する。所定の材料と膜厚の支持基板1上に透明電極2を形成し、その後、多孔質電極4を形成する。その後、例えば有機EC色素水溶液に浸漬させることにより色素吸着を行い、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行う。
続いて対向電極構造体12を、所定の材料と膜厚の支持基板6上に透明電極7を形成し、その後、多孔質電極8を形成することにより作製する。
但し、多孔質電極4、8の詳細な形成方法については上述した方法に従うものとする。有機EC色素を担持させる電極についても、双方とするか一方とするか適宜選定する。
次に、電解質層用の溶液の調製を行う。
続いて、表示電極構造体11と、対向電極構造体12とを、所定の接着剤を用いて貼り合わせるが、このとき後工程で電解液を注入できるように一部分に注入口を形成しておく。
その後、電解液を注入口から注入し、樹脂接着材で封止することにより、対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が作製される。
図1のエレクトロクロミック装置10の多孔質電極4には、定常状態において可視域に吸収をもたない有機EC色素である所定のピリジン化合物が担持されている。
対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。
この所定のリード線を通じて電極間に所定の電圧を印加すると、多孔質電極とこれに担持された有機EC色素材料との間で電子の授受がなされ、有機EC色素において電気化学的な酸化又は還元反応が起き、一価のラジカル状態となって発色する。
すなわち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって発色する有機EC色素材料を選定して多孔質電極に担持させて電極構造体を作製したものを組み合わせ、全体としてマゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層体とすることにより、可逆的フルカラー表示可能なエレクトロクロミック装置が得られる。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
マグネトロンスパッタリング装置を用意し、この真空槽内の全圧を2.5Paとし、全圧に対する酸素ガスの分圧を50%とし、アルゴンガスの分圧を50%とし、4インチのTiターゲットを用い、印加電力を500kWに設定した。
かかる条件下、前記FTO膜表面へ反応性スパッタリングを行い、膜厚2.5μmの酸化チタン膜(多孔質電極)を形成した。なお、成膜中の基板表面温度は65℃以下であった。
上述したようにして成膜した多孔質電極の状態を電子顕微鏡で観察した。図2に表面状態(倍率4万倍)を示し、図3に断面状態(倍率4万倍)を示す。
図2、図3から明らかなように、マグネトロンスパッタリングによって成膜した酸化チタン膜は、極めて緻密な多孔体となっていることが確認された。
続いて酸化チタン膜よりなる多孔質電極4を形成したFTO基板を、上記式(12)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行い、表示電極構造体を得た。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
マグネトロンスパッタリング装置を用意し、この真空槽内の全圧を0.5Paとし、全圧に対する酸素ガスの分圧を20%とし、アルゴンガスの分圧を80%とし、4インチのTiO2ターゲットを用い、印加電力を500kWに設定した。
かかる条件下、前記FTO膜表面へスパッタリングを行い、膜厚1.2μmの酸化チタン膜(多孔質電極)を形成した。なお、スパッタ成膜中の基板表面温度は65℃であった。
続いて酸化チタン膜よりなる多孔質電極4を形成したFTO基板を、上記式(12)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行い、表示電極構造体を得た。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
マグネトロンスパッタリング装置を用意し、この真空槽内の全圧を2.5Paとし、全圧に対するアルゴンガスの分圧を100%とし、4インチのTiO2ターゲットを用い、印加電力を500kWに設定した。
かかる条件下、前記FTO膜表面へスパッタリングを行い、膜厚3.7μmの酸化チタン膜(多孔質電極)を形成した。なお、スパッタ成膜中の基板表面温度は65℃であった。
続いて酸化チタン膜よりなる多孔質電極4を形成したFTO基板を、上記式(12)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行い、表示電極構造体を得た。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法により塗布した。
続いてホットプレートを用いて80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらにオーブンを用いて60℃、12時間の加熱処理を行うことにより、膜厚7μmの酸化チタン膜(多孔質電極)を形成した。
上記のようにして酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上記式(12)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法により塗布した。
次に、ホットプレートを用いて80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に電気炉により500℃、1時間焼結を施すことにより、膜厚5μmの酸化チタン膜(多孔質電極)を形成した。
次に、上記酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上記式(12)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%の分量で水に分散させスラリーを作製し、このスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を調製した。この塗料を上記FTO膜上にスキージ法により塗布した。
続いてホットプレートを用いて80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に、電気炉で500℃、1時間焼結処理を行うことにより、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化スズよりなる多孔質電極が形成されたFTO基板、すなわち対向電極構造体が得られた。
ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを調製した。
上述した第一〜第五の表示電極構造体(色素が吸着した多孔質電極を形成した基板)と、上記対向電極構造体とを、それぞれ厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて90℃で貼り合わせた。この際、後工程で電解質溶液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。
上記電解質溶液を注入し、その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止し、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
第一の表示電極構造体と、対向電極構造体とを用いて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両電極間に電圧を印加して、電圧−光学特性(635nmの吸光度の変化を測定)を測定した。図4に測定結果を示す。
両電極間に−1.2Vの電圧を印加すると、直ちにシアン発色を呈した。なお、OFFからONへの表示変更の応答速度は100ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて−1.4V程度まで電圧を上昇させた後、電極間電圧を−1.2V程度まで低減させると、直ちに消色し、透明となった。なお、色表示のONからOFFへの応答速度は約50msであり、実用上充分に良好な速度であった。
続いて、表示電極と対向電極との間に、−1.5Vと0.5Vとを交互に1Hzで100万回繰返し印加したところ、100万回繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
なお、本例における表示装置は、表示電極構造体を構成する多孔質電極として無色の材料を適用したので、消色時に確実に無色透明状態となり、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行うことができた。
更に、多孔質電極形成方法としてマグネトロンスパッタリングを適用したので、65℃の低温環境下においても、実用上充分な発消色特性を具備する表示電極が形成されたことも確かめられた。
第二の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両電極間に電圧を印加して、電圧−光学特性(635nmの吸光度の変化を測定)を測定したところ、ほとんど発色が観測されなかった。
第二の表示電極構造体の多孔質電極作製工程において、真空槽内の圧力が0.5Paと低かったため、マグネトロンスパッタリングによる成膜において細孔構造が形成されず、ナノスケールオーダーで均一な酸化チタン膜が形成されてしまい、有機EC色素が実用上充分に吸着させることができなかったためである。
第三の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両電極間に電圧を印加して、電圧−光学特性(635nmの吸光度の変化を測定)を測定したところ、発色が観測されなかった。
これは、第三の表示電極構造体の多孔質電極作製工程において、真空槽内に酸素が存在しない状態だったため、マグネトロンスパッタリングによる成膜において細孔構造が形成されず、ナノスケールオーダーで均一な酸化チタン膜が形成されてしまい、有機EC色素を充分に吸着させることができなかったためである。
第四の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両電極間に電圧を印加して、電圧−光学特性(635nmの吸光度の変化を測定)を測定した。図5に測定結果を示す。
この例においては、両電極間に−1.4Vの電圧を印加したところ、直ちに薄いシアン発色を呈した。なお、表示OFFからONへの変更の応答速度は500ms程度であった。
更に、−1.5V程度まで電圧を上昇させ、その後、電極間電圧を0Vまで下げていったところ、発色濃度は低減化したものの、完全には消色しなかった。なお、表示がONからOFF状態への変更の応答速度は約12sであった。
本例の表示装置においては、発色後に電圧を低下させ、0Vとなっても、完全な無色透明状態にはならず、消え残りがあることが確認された。
これは、第四の表示電極構造体の多孔質電極作製工程において、所定の塗料をスキージ法により塗布した後の加熱処理が低温であったため、酸化チタンナノ粒子同士のネッキングを形成できなかったためである。よって電圧低減時に発色したままになってしまい、良好な応答速度も得られなかった。
第五の表示電極構造体と対向電極構造体とを適用して、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製し、両電極間に電圧を印加して、電圧−光学特性(635nmの吸光度の変化を測定)を測定した。図6に測定結果を示す。
この例においては、両電極間に−1.0Vの電圧を印加したところ、直ちにシアン発色を呈した。なお、表示OFFからONへの変更の応答速度は150ms程度であり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、−1.4V程度まで電圧を上昇させた後、両電極間の電圧を−1.0V程度まで低減させると、再び直ちに透明となった。なお、ONからOFFへの表示変更の応答速度は約60msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、この例におけるエレクトロクロミック装置の表示電極と対向電極との間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
この例においては、実用上の性能は良好ではあるが、多孔質電極形成工程において500℃の焼結処理を行っているので、支持基板には耐熱性の高い材料のみしか適用できず、例えば汎用性プラスチック材料や薄層材料を用いて、フレキシブルな表示装置を作製する場合には不向きである。
また、本発明によれば、多孔質電極の作製法として、マグネトロンスパッタ法を適用したので、比較的低温条件下においても電極を形成することができ、これにより従来汎用されていたガラス基板よりも耐熱性の低いプラスチック材や薄層基板も適用できるようになり、装置形状や態様の自由度が高まり、また、フレキシブルな表示素子を作製することも可能となった。
また、本発明によれば、多孔質電極のマグネトロンスパッタリング法による作製工程において圧力を0.5Paよりも高圧に特定し、酸素ガス存在下で行うものと設定することにより、細孔構造を良好な状態に形成でき、有機EC色素の吸着を充分に行うことができるようになり、色表示濃度を充分に高くすることができた。
Claims (10)
- 支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置されており、
前記表示電極構造体を構成する透明電極上に、酸化反応又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素が吸着されている多孔質電極が形成されているエレクトロクロミック装置であって、
前記多孔質電極は、金属単体、真性半導体、酸化物半導体、前記金属の多成分系からなる複合体酸化物半導体のいずれかをターゲット材料とし、0.5Paよりも高圧下、かつ酸素ガス存在下におけるマグネトロンスパッタリングにより形成されたものである
エレクトロクロミック装置。 - 前記ターゲット材料が、チタン又は酸化チタンから構成される材料であり、
前記多孔質電極は、酸化チタンを主成分としている、請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。 - 前記支持基板は膜厚が100μm以下で、プラスチック材料よりなるものである、請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック装置。
- 支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置されており、
前記表示電極構造体を構成する透明電極上に、酸化反応又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素が吸着されている多孔質電極が形成されているエレクトロクロミック装置の製造方法であって、
前記多孔質電極の形成工程においては、
金属単体、真性半導体、酸化物半導体、前記金属の多成分系からなる複合体酸化物半導体のいずれかをターゲット材料とし、0.5Paよりも高圧下で、かつ酸素ガス存在下で、マグネトロンスパッタリングを行う、エレクトロクロミック装置の製造方法。 - ターゲット材料として、チタン又は酸化チタンから構成される材料を用い、
前記ターゲット材料と、膜形成用基板とを対向位置に配置してマグネトロンスパッタリングを行い、
酸化チタンを主成分とする多孔質電極を形成する、請求項4に記載のエレクトロクロミック装置の製造方法。 - 支持基板上に少なくとも透明電極が形成された電極構造体の前記透明電極上に、金属単体、真性半導体、酸化物半導体、前記金属の多成分系からなる複合体酸化物半導体のいずれかをターゲット材料とし、0.5Paよりも高圧下で、かつ酸素ガス存在下で、マグネトロンスパッタリングを行うことにより、多孔質電極を形成する
多孔質電極の製造方法。 - 前記透明電極は、ITO、SnO 2 又はIn 2 O 3 により形成されている、請求項6に記載の多孔質電極の製造方法。
- 前記ターゲット材料として、チタン又は酸化チタンから構成される材料を用いる、請求項6又は7に記載の多孔質電極の製造方法。
- 前記マグネトロンスパッタリングを300℃以下で行う、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の多孔質電極の製造方法。
- 前記支持基板は、プラスチック材料よりなるものである、請求項6ないし9のいずれか1項に記載の多孔質電極の製造方法。
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