JP2008089706A - エレクトロクロミック装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】色純度が高く、精密な色制御が可能で、鮮鋭かつ明瞭なフルカラー画像表示に寄与可能なエレクトロクロミック装置を提供する。
【解決手段】支持基板1,6上に、少なくとも透明電極2,7が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体11と対向電極構造体12)が、透明電極同士が対面するように電解質層5を挟持して配置されており、一対の電極構造体のうちの、少なくとも一方の透明電極上に、酸化又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素3が吸着されている多孔質電極が形成されており、対向電極構造体12を構成する透明電極7上に、所定の構造のフェロセン化合物を担持させた多孔質電極8が形成されているエレクトロクロミック装置10を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】支持基板1,6上に、少なくとも透明電極2,7が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体11と対向電極構造体12)が、透明電極同士が対面するように電解質層5を挟持して配置されており、一対の電極構造体のうちの、少なくとも一方の透明電極上に、酸化又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素3が吸着されている多孔質電極が形成されており、対向電極構造体12を構成する透明電極7上に、所定の構造のフェロセン化合物を担持させた多孔質電極8が形成されているエレクトロクロミック装置10を提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は、応答速度、発色効率、表示色純度に優れ、明瞭で鮮鋭な画像形成が可能であり、繰り返し耐久性にも優れたエレクトロクロミック装置に関する。
近年、明るく色純度に優れ、かつ省消費電力で、フルカラー表示への応用が容易な表示色素材料やこれを用いた表示素子への要望が高まってきており、従来においては、CRT、LCD、PDP、ELD等の発光型素子に関する多くの技術の提案がなされている。
しかしながら、上記従来公知の各種発光型素子は、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
また携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、発光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
更に、LCDは、発光型素子の中でも特に需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。
しかしながら、上記従来公知の各種発光型素子は、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
また携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、発光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
更に、LCDは、発光型素子の中でも特に需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。
ところで、反射型表示素子に関しては、電子ペーパーの需要向上により、従来から様々な技術の提案がなされている。
例えば、反射型LCDや電気泳動方式が挙げられる。
反射型LCDとしては、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらの方式は、従来の発光型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力という利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
他方、電気泳動方式は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
例えば、反射型LCDや電気泳動方式が挙げられる。
反射型LCDとしては、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらの方式は、従来の発光型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力という利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
他方、電気泳動方式は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
また、近年においては、自動車の調光ミラーや時計等に、エレクトロクロミック(以下、ECと略称する。)素子を用いたものが提案されている。
EC素子を用いた表示は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、反射型で視認性に優れ、構造が簡易でかつ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
EC素子を用いた表示は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、反射型で視認性に優れ、構造が簡易でかつ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
具体的なEC素子を用いた表示装置としては、対の透明電極の少なくとも一方に半導体ナノ多孔質層を設け、この半導体ナノ多孔質層にEC色素を担持させた構成の表示装置についての提案がなされている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1、2参照。)。
これらの表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
これらの表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
上記従来の公知文献の各種EC素子を用いた表示装置の構成について具体的に検討したところ、対向電極として、透明電極上にアンチモンドープの酸化錫(ATO)多孔質電極を設けたもの(非特許文献2)や、フェノチアジン誘導体を担持した金属酸化物半導体多孔質電極を設けたもの(特許文献1、2、非特許文献1)が開示されていた。
しかしながら、非特許文献2の表示装置の対向電極を構成するアンチモンドープの酸化錫(ATO)は、材料として濃い灰色に着色しているものであり、カラー表示を行うための電極材料としては好適な材料ではなかった。
また、特許文献1、2、及び非特許文献1の表示装置の対向電極を構成する金属酸化物半導体多孔質電極に担持したフェノチアジン誘導体は、酸化反応により赤色発色する性質を有するものであるため、表示電極側でEC色素による目的の発色表示を妨げてしまうという欠点を有していた。
特に、透明な表示デバイスを得ようとする場合や、明瞭なフルカラー画像表示を行うことを目的として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3層の発色層を積層させた構成のデバイスを構築する場合には、対向電極は、全体として無色透明の材料により構成されており、かつ担持させた材料が、酸化・還元反応により色相変化を生じないものとすることが理想的である。
また、特許文献1、2、及び非特許文献1の表示装置の対向電極を構成する金属酸化物半導体多孔質電極に担持したフェノチアジン誘導体は、酸化反応により赤色発色する性質を有するものであるため、表示電極側でEC色素による目的の発色表示を妨げてしまうという欠点を有していた。
特に、透明な表示デバイスを得ようとする場合や、明瞭なフルカラー画像表示を行うことを目的として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3層の発色層を積層させた構成のデバイスを構築する場合には、対向電極は、全体として無色透明の材料により構成されており、かつ担持させた材料が、酸化・還元反応により色相変化を生じないものとすることが理想的である。
そこで本発明においては、上述した従来公知の表示装置の問題点に鑑みて、特に対向電極側の構成について検討を行い、無色透明であり、かつ酸化・還元反応によっても色相変化が生じない材料を担持させた構成を有し、フルカラー表示に極めて好適であり、更には、鮮明で色純度が高く、繰り返し耐久性にも優れたエレクトロクロミック装置を提供することとした。
本発明においては、支持基板上に、少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置されており、一対の電極構造体のうちの、少なくとも一方の透明電極上に、酸化又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素が吸着されている多孔質電極が形成されており、対向電極構造体を構成する透明電極上に、下記一般式(1)、(2)の少なくともいずれかよりなるフェロセン化合物が吸着されている多孔質電極が形成されている構成のエレクトロクロミック装置を提供する。
但し、式(1)中R1は、下記式(3)、(4)のいずれかである。
但し、式(2)中、R2、R3、R4、R5は、H、−PO(OH)2、−CH2−PO(OH)2のいずれかであり、R2〜R5のうち、少なくともいずれか一個は、−PO(OH)2、又は−CH2−PO(OH)2である。
本発明によれば、対向電極構造体を構成する多孔質電極として無色透明の材料を適用し、かつ、酸化・還元反応によっても色相変化を生じない材料を担持させたので、全体として極めてカラー表示用、特にフルカラー化の応用にも好適で、更には、実用上充分な応答速度、発色効率を備え、色純度が高く、精密な画像制御が可能なエレクトロクロミック表示装置を提供できた。
本発明のエレクトロクロミック装置について、図を参照して具体的に説明する。
但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
図1に本発明のエレクトロクロミック装置の一例の概略断面図を示す。
エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、後述するピリジン化合物よりなる有機EC色素3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に、透明電極7と後述するポリキノン化合物13が担持された多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
以下、構成要素について順次説明する。
エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、後述するピリジン化合物よりなる有機EC色素3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に、透明電極7と後述するポリキノン化合物13が担持された多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
以下、構成要素について順次説明する。
支持基板1、6は、耐熱性に優れ、かつ平面方向の寸法安定性の高い材料が好適であり、具体的には、ガラス材料、透明性樹脂が適用できるが、これに限定されるものではない。
前記透明性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
前記透明性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
透明電極2、7は、所定の透明基板上に透明電極層が積層されたものとする。
透明電極層の形成用材料としては、例えば、In2O3とSnO2との混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn2O3をコーティングした膜等が挙げられる。
また、上記ITO膜や、SnO2 またはIn2O3をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、その他MgOやZnO等も適用できる。
透明電極層の形成用材料としては、例えば、In2O3とSnO2との混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn2O3をコーティングした膜等が挙げられる。
また、上記ITO膜や、SnO2 またはIn2O3をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、その他MgOやZnO等も適用できる。
多孔質電極4は、後述する有機EC色素の高い担持機能を確保するために、表面積が大きい材料により構成することが好適である。例えば、表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状、メソポーラス形状、集合粒子状等となっているものが挙げられる。
多孔質電極4は、金属、各種半導体材料、導電性高分子により形成されているものとする。
酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe2O3、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5、In2O3、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。
複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb2O5−SrTiO3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−ZrO2、Nb2O5−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
最終的に目的とするエレクトロクロミック装置を、カラー表示用として構成するためには、多孔質電極材料は無色透明であることが最適であり、上記材料のうち、特に、TiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好ましい。
多孔質電極4は、金属、各種半導体材料、導電性高分子により形成されているものとする。
酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe2O3、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5、In2O3、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。
複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb2O5−SrTiO3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−ZrO2、Nb2O5−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
最終的に目的とするエレクトロクロミック装置を、カラー表示用として構成するためには、多孔質電極材料は無色透明であることが最適であり、上記材料のうち、特に、TiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好ましい。
次に、有機EC色素3について説明する。
有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、有機EC色素3としては、エレクトロクロミック色素として公知の物が使用できる。ただし、後述する方法で多孔質電極4に吸着させるため、有機EC色素3は多孔質電極へ吸着するための吸着基を有しているのが好ましい。吸着基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基、アミノ基、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられる。また、複数の化合物を混合して用いてもよい。
有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、有機EC色素3としては、エレクトロクロミック色素として公知の物が使用できる。ただし、後述する方法で多孔質電極4に吸着させるため、有機EC色素3は多孔質電極へ吸着するための吸着基を有しているのが好ましい。吸着基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基、アミノ基、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられる。また、複数の化合物を混合して用いてもよい。
なお、本例を説明するための図1においては、色表示用の有機EC色素3は、表示電極構造体11側の多孔質電極4のみに担持させた構成を示したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも、担持させた構成としてもよい。但し、かかる場合、有機EC色素の発消色反応において、酸化・還元反応が、逆となる材料を適用する。
有機EC色素3の具体例を下記式(5)〜(18)に示す。
上記式中、Meは、メチル基である。
上記式(5)〜(18)の有機EC色素のうち、特に、式(4)、(5)、(8)、(15)、(16)に示す化合物が、低電圧での発色性に優れていることが確かめられた。
上記式(5)〜(18)の有機EC色素のうち、特に、式(4)、(5)、(8)、(15)、(16)に示す化合物が、低電圧での発色性に優れていることが確かめられた。
次に、上記有機EC色素を、多孔質電極4に担持する方法について説明する。
例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。
具体的方法としては、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、自然吸着法、及び多孔質電極表面へ有機EC色素を化学結合させる方法が好適である。
例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。
具体的方法としては、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、自然吸着法、及び多孔質電極表面へ有機EC色素を化学結合させる方法が好適である。
自然吸着法としては、所定の有機EC色素を所定の溶媒に溶解して溶液を作製し、予め乾燥処理を施した多孔質電極4を形成しておいた透明基板を浸漬する方法や、所定の有機EC色素を溶解した溶液を多孔質電極4に塗布する方法が挙げられる。
この自然吸着法において、有機EC色素を多孔質電極4に確実に吸着させるためには、有機EC色素の化学構造中に、吸着性を有する官能基を導入しておくことが必要である。
この吸着性を有する官能基は、多孔質電極4の材料に応じて適宜選定する。例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中の吸着性官能基として、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等を導入しておくことが好ましい。
この自然吸着法において、有機EC色素を多孔質電極4に確実に吸着させるためには、有機EC色素の化学構造中に、吸着性を有する官能基を導入しておくことが必要である。
この吸着性を有する官能基は、多孔質電極4の材料に応じて適宜選定する。例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中の吸着性官能基として、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等を導入しておくことが好ましい。
前記官能基は、有機EC色素の化学構造の骨格に直接導入してもよく、あるいはその他の所定の官能基を介して結合を形成することにより導入してもよい。前記のうち、所定の官能基を介する場合は、例えばアルキル基、フェニル基、エステル、アミド基等を介して吸着性の官能基を導入することができる。
なお、有機EC色素を溶解する溶媒としては、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素等が適用できる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
また、多孔質電極4の表面に前記有機EC色素を化学結合させる際には、多孔質電極4の表面と有機EC色素骨格との間に、所定の官能基を介してもよい。例えば、アルキル基、フェニル基、エステル、アミド等の官能基が挙げられる。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合して形成させるようにしてもよい。
このような表面改質により、有機EC色素が多孔質電極4の材料と化学結合を形成するようになると、有機EC色素の結合力が強まり、例えば、電界質層5の材料として色素溶解性の高いものを使用するような場合に有利になり、有機色素の材料選択性が高まり、エレクトロクロミック装置の耐久性の向上も図られる。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合して形成させるようにしてもよい。
このような表面改質により、有機EC色素が多孔質電極4の材料と化学結合を形成するようになると、有機EC色素の結合力が強まり、例えば、電界質層5の材料として色素溶解性の高いものを使用するような場合に有利になり、有機色素の材料選択性が高まり、エレクトロクロミック装置の耐久性の向上も図られる。
電解質層5は、溶媒に支持電解質が溶解された構成を有している。
支持電解質としては、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えばKCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えばNaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えばフェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。
例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等から適宜選定する。
支持電解質としては、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えばKCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えばNaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えばフェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。
例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等から適宜選定する。
また、電解質層5には、いわゆるマトリックス材を適用してもよい。
マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。
なお、これらを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。
なお、これらを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
電解質層5は、高分子固体電解質層としてもよい。
なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
多孔質電極8は、後述するポリキノン化合物の担持機能を高くするべく、表面積が大きい透明な材料により構成する。例えば、表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状等となっているものが好ましい。
多孔質電極8を形成する材料としては、金属、各種半導体材料、導電性高分子が適用できる。
酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe2O3、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5、In2O3、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb2O5−SrTiO3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−ZrO2、Nb2O5−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられる。
最終的に目的とするエレクトロクロミック装置をカラー表示用として構成するためには、多孔質電極材料は無色透明であることが最適であり、上記材料のうち、特に、TiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好ましい。
多孔質電極8を形成する材料としては、金属、各種半導体材料、導電性高分子が適用できる。
酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe2O3、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5、In2O3、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb2O5−SrTiO3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−ZrO2、Nb2O5−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられる。
最終的に目的とするエレクトロクロミック装置をカラー表示用として構成するためには、多孔質電極材料は無色透明であることが最適であり、上記材料のうち、特に、TiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好ましい。
次に、フェロセン化合物について説明する。
本発明において適用するフェロセン化合物13は、下記一般式(1)、(2)で示される構造を有する。
本発明において適用するフェロセン化合物13は、下記一般式(1)、(2)で示される構造を有する。
但し、式(1)中R1は、下記式(3)、(4)のいずれかである。
但し、上記式(2)中、R2、R3、R4、R5は、H、−PO(OH)2、−CH2−PO(OH)2のいずれかであり、R2〜R5のうち、少なくともいずれか一個は、−PO(OH)2、又は−CH2−PO(OH)2である。
本発明において適用するフェロセン化合物13としては、具体的に、以下に示す化合物が挙げられる。
なお、フェロセ化合物13は、前述した有機EC化合物3と同様の方法により多孔質電極8に吸着させることができる。フェロセン化合物13は、有機EC化合物3と同様に、多孔質電極8へ吸着させるためのホスホン酸吸着基を末端に有している。
なお、フェロセ化合物13は、前述した有機EC化合物3と同様の方法により多孔質電極8に吸着させることができる。フェロセン化合物13は、有機EC化合物3と同様に、多孔質電極8へ吸着させるためのホスホン酸吸着基を末端に有している。
次に、エレクトロクロミック装置10の表示方法について説明する。
図1のエレクトロクロミック装置10の多孔質電極4には、定常状態において可視域に吸収をもたない有機EC色素である所定のピリジン化合物が担持されている。
対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。
この所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持された有機EC色素材料との間に電子の授受がなされ、有機EC色素において電気化学的な還元反応が起き、ラジカル状態となって発色する。
図1のエレクトロクロミック装置10の多孔質電極4には、定常状態において可視域に吸収をもたない有機EC色素である所定のピリジン化合物が担持されている。
対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。
この所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持された有機EC色素材料との間に電子の授受がなされ、有機EC色素において電気化学的な還元反応が起き、ラジカル状態となって発色する。
本発明のエレクトロクロミック装置は、図1に示す、いわゆる単色表示構成に限定されず、多色表示構成に応用することもできる。
すなわち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)に発色する性質の有機EC色素を適用し、これを多孔質電極に担持させてそれぞれ電極構造体を作製し、これら三層を用いて、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
すなわち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)に発色する性質の有機EC色素を適用し、これを多孔質電極に担持させてそれぞれ電極構造体を作製し、これら三層を用いて、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
次に、本発明のエレクトロクロミック装置についての具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明する。
〔表示電極構造体の作製〕
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚5μmの酸化チタン多孔質電極4が形成されたFTO基板が得られた。
上記酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上記式(17)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚5μmの酸化チタン多孔質電極4が形成されたFTO基板が得られた。
上記酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上記式(17)に示した有機EC色素の5mM水溶液に24時間浸漬させ、有機EC色素を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
〔第一の対向電極構造体の作製〕
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、pH=約2.0の塩酸水溶液に1次粒径25nmのITOを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚7μmのITO多孔質電極が形成されたFTO基板を得た。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、pH=約2.0の塩酸水溶液に1次粒径25nmのITOを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚7μmのITO多孔質電極が形成されたFTO基板を得た。
(フェロセン化合物の合成:上記式(20))
4−ブロモベンジルホスホン酸ジエチル4.5mmolと、ビニルフェロセン4.72mmol、酢酸パラジウム0.19mmol、トリス(o−トルイル)ホスフィン0.71mmol、トリエチルアミン28.3mmolを、トルエン20ml中で、115℃、48時間反応させた。
反応後、室温まで冷却し、ろ過して、溶媒を除去した。次にジエチルエーテルを展開溶媒として、シリカカラムクロマトグラフィーにより分離し、生成物を得た。
得られた生成物2.36mmolと、ブロモトリメチルシラン7.08mmolを、ジクロロメタン50ml中で、2時間、室温で反応し、その後、溶媒を除去した。
得られたオイル状液体に水37.8mmolを加え、赤い沈殿物を得た。
この沈殿物を65℃でメタノール溶液に溶解し、室温まで冷却した後、−20℃まで冷却した。
ろ過し、固形物をジエチルエーテルで3回洗浄してその後乾燥し、オレンジパウダー状の、上記式(20)に示す化合物を得た。
上記ITO膜よりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を、上記式(20)で表されるフェロセン化合物の5mM水溶液に24時間浸漬させ、ITO電極にフェロセン化合物を吸着させた。
4−ブロモベンジルホスホン酸ジエチル4.5mmolと、ビニルフェロセン4.72mmol、酢酸パラジウム0.19mmol、トリス(o−トルイル)ホスフィン0.71mmol、トリエチルアミン28.3mmolを、トルエン20ml中で、115℃、48時間反応させた。
反応後、室温まで冷却し、ろ過して、溶媒を除去した。次にジエチルエーテルを展開溶媒として、シリカカラムクロマトグラフィーにより分離し、生成物を得た。
得られた生成物2.36mmolと、ブロモトリメチルシラン7.08mmolを、ジクロロメタン50ml中で、2時間、室温で反応し、その後、溶媒を除去した。
得られたオイル状液体に水37.8mmolを加え、赤い沈殿物を得た。
この沈殿物を65℃でメタノール溶液に溶解し、室温まで冷却した後、−20℃まで冷却した。
ろ過し、固形物をジエチルエーテルで3回洗浄してその後乾燥し、オレンジパウダー状の、上記式(20)に示す化合物を得た。
上記ITO膜よりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を、上記式(20)で表されるフェロセン化合物の5mM水溶液に24時間浸漬させ、ITO電極にフェロセン化合物を吸着させた。
〔第二の対向電極構造体の作製〕
(フェロセン化合物の合成:上記式(21))
フェロセン27mmolと、カリウム−tert−ブトキシド5mmolを、100mlTHFに溶解し、室温で20分攪拌した。
その後、−78℃に冷却し、ペンタンに溶解したtert-ブチルリチウム19mmolを滴下して、30分維持した。
更にTHF10mlに溶解したクロロジエチルホスフェート27mmolを滴下し、20分維持した後、室温に戻した。
この黒い溶液を、1MのNaOH水溶液200mlとクロロホルム30mlで洗浄し、クロロホルムを採取した(×3回)。
硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過して、ろ液の溶媒を除去し、乾燥処理を施した。
次に乾燥後の黒い固形物質をジクロロメタン2mlに溶解し、この展開溶媒を用いて、ジクロロメタンでカラムクロマトグラフィーを行った。
フェロセンを除去した後、展開溶媒をジクロロメタン/THF=7:3にし、茶色のオイルを得た。
次に、上記茶色のオイル4.14gと、ブロモトリメチルシラン39mmolをジクロロメタン25mlに溶解し、室温で攪拌する。
12時間後、溶媒を除去し、オイルをアセトニトリル25mlに溶解する。
更に4mlの水を添加して析出させ、これをろ過し、ジクロロメタン、ジエチルエーテルで洗浄し、上記式(21)に示したフェロセン化合物を得た。
上記ITO膜よりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を、上記式(21)で表わされるフェロセン化合物の5mM水溶液に24時間浸漬させ、ITO電極にフェロセン化合物を吸着させた。
(フェロセン化合物の合成:上記式(21))
フェロセン27mmolと、カリウム−tert−ブトキシド5mmolを、100mlTHFに溶解し、室温で20分攪拌した。
その後、−78℃に冷却し、ペンタンに溶解したtert-ブチルリチウム19mmolを滴下して、30分維持した。
更にTHF10mlに溶解したクロロジエチルホスフェート27mmolを滴下し、20分維持した後、室温に戻した。
この黒い溶液を、1MのNaOH水溶液200mlとクロロホルム30mlで洗浄し、クロロホルムを採取した(×3回)。
硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過して、ろ液の溶媒を除去し、乾燥処理を施した。
次に乾燥後の黒い固形物質をジクロロメタン2mlに溶解し、この展開溶媒を用いて、ジクロロメタンでカラムクロマトグラフィーを行った。
フェロセンを除去した後、展開溶媒をジクロロメタン/THF=7:3にし、茶色のオイルを得た。
次に、上記茶色のオイル4.14gと、ブロモトリメチルシラン39mmolをジクロロメタン25mlに溶解し、室温で攪拌する。
12時間後、溶媒を除去し、オイルをアセトニトリル25mlに溶解する。
更に4mlの水を添加して析出させ、これをろ過し、ジクロロメタン、ジエチルエーテルで洗浄し、上記式(21)に示したフェロセン化合物を得た。
上記ITO膜よりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を、上記式(21)で表わされるフェロセン化合物の5mM水溶液に24時間浸漬させ、ITO電極にフェロセン化合物を吸着させた。
(第三の対向電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、水に1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに電気炉で500℃、1時間焼結を行ったところ、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、水に1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに電気炉で500℃、1時間焼結を行ったところ、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
(第四の対向電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、pH=約2.0の塩酸水溶液に1次粒径25nmの酸化スズを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚8μmの酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
上記酸化スズ膜よりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を、下記式(25)に示すフェノチアジン誘導体の5mM水溶液に24時間浸漬させ、酸化スズ電極にフェノチアジン誘導体を吸着させた。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、pH=約2.0の塩酸水溶液に1次粒径25nmの酸化スズを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚8μmの酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
上記酸化スズ膜よりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を、下記式(25)に示すフェノチアジン誘導体の5mM水溶液に24時間浸漬させ、酸化スズ電極にフェノチアジン誘導体を吸着させた。
(電解質層用の溶液の調製)
電解質層5形成用溶液は、ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを適用した。
電解質層5形成用溶液は、ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを適用した。
(電極構造体の貼り合わせ)
上述のようにして作製した表示電極構造体(色素吸着酸化チタン多孔質電極付き基板)と、第一〜第四の対向電極構造体とを、それぞれ、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて90℃で貼り合わせた。
この際、後述の工程により、電解液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。
上述のようにして作製した表示電極構造体(色素吸着酸化チタン多孔質電極付き基板)と、第一〜第四の対向電極構造体とを、それぞれ、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて90℃で貼り合わせた。
この際、後述の工程により、電解液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。
(電解質溶液の注入)
前記電解液を、注入口から注入した。
その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止することにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
上述したエレクトロクロミック装置の製造工程に従い、多孔質電極に担持させる有機EC色素について異なるものを適用し、下記実施例、及び比較例のサンプルセルを作製した。
前記電解液を、注入口から注入した。
その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止することにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
上述したエレクトロクロミック装置の製造工程に従い、多孔質電極に担持させる有機EC色素について異なるものを適用し、下記実施例、及び比較例のサンプルセルを作製した。
〔実施例1〕
表示電極構造体と第一の対向電極構造体とを組み合わせて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の両電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。
なお表示変更の応答速度は約180msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると、再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約90msであり、実用上充分に良好な速度であった。
図2に、消色時と発色時のスペクトルを示した。この例においては、特に対向電極構造体を構成する多孔質電極として無色の材料のものを用い、かつ担持させるフェロセン化合物も酸化・還元反応により着色しないものを選定したので、消色時には、確実に無色透明状態とすることができ、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行うことができた。
更に、この例におけるエレクトロクロミック装置の表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
表示電極構造体と第一の対向電極構造体とを組み合わせて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の両電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。
なお表示変更の応答速度は約180msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると、再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約90msであり、実用上充分に良好な速度であった。
図2に、消色時と発色時のスペクトルを示した。この例においては、特に対向電極構造体を構成する多孔質電極として無色の材料のものを用い、かつ担持させるフェロセン化合物も酸化・還元反応により着色しないものを選定したので、消色時には、確実に無色透明状態とすることができ、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行うことができた。
更に、この例におけるエレクトロクロミック装置の表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
〔実施例2〕
表示電極構造体と第二の対向電極構造体とを組み合わせて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、両電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。なお表示変更の応答速度は約160msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約80msであり、実用上充分に良好な速度であった。
図3に、消色時と発色時のスペクトルを示した。この例においては、特に対向電極構造体を構成する多孔質電極として無色の材料のものを用い、かつ担持させるフェロセン化合物にも酸化・還元反応により着色しないものを選定したので、消色時には、確実に無色透明状態とすることができ、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行うことができた。
更に、この例におけるエレクトロクロミック装置の表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
表示電極構造体と第二の対向電極構造体とを組み合わせて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、両電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。なお表示変更の応答速度は約160msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約80msであり、実用上充分に良好な速度であった。
図3に、消色時と発色時のスペクトルを示した。この例においては、特に対向電極構造体を構成する多孔質電極として無色の材料のものを用い、かつ担持させるフェロセン化合物にも酸化・還元反応により着色しないものを選定したので、消色時には、確実に無色透明状態とすることができ、発色時には鮮やかなシアン色の表示を行うことができた。
更に、この例におけるエレクトロクロミック装置の表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
〔比較例1〕
表示電極構造体と第三の対向電極構造体とを組み合わせて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、両電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、くすんだシアンに発色した。
なお表示変更の応答速度は約130msであった。
さらに、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約60msであった。
図4に消色時と発色時のスペクトルを示した。これによると消色時においても完全に無色透明にはなっていないことが確認される。これは、第三の対向電極構造体を構成する多孔質電極材料であるアンチモンドープ酸化スズが灰色に着色している材料であるためである。よって発色時にはくすんだシアン色に表示されてしまい、本来のEC色素の発色が表現できなかった。
表示電極構造体と第三の対向電極構造体とを組み合わせて、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、両電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、くすんだシアンに発色した。
なお表示変更の応答速度は約130msであった。
さらに、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約60msであった。
図4に消色時と発色時のスペクトルを示した。これによると消色時においても完全に無色透明にはなっていないことが確認される。これは、第三の対向電極構造体を構成する多孔質電極材料であるアンチモンドープ酸化スズが灰色に着色している材料であるためである。よって発色時にはくすんだシアン色に表示されてしまい、本来のEC色素の発色が表現できなかった。
〔比較例2〕
表示電極構造体と、第四の対向電極構造体を適用して、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、青色に発色した。なお表示変更の応答速度は約280msであった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約160msであった。
図5に消色時と発色時のスペクトルを示した。これによると、消色時には、素子はほぼ無色透明状態となることが確認される。
しかしながら、発色操作を行うと、対向電極構造体の多孔質電極に担持させたフェノチアジン誘導体が発色し、これが有機EC色素の発色と混色してしまうため、全体として青色に表示されてしまい、本来のEC色素の発色が表現できなかった。
表示電極構造体と、第四の対向電極構造体を適用して、図1の構成のエレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、電極間に、−1.5Vの電圧を印加すると、青色に発色した。なお表示変更の応答速度は約280msであった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約160msであった。
図5に消色時と発色時のスペクトルを示した。これによると、消色時には、素子はほぼ無色透明状態となることが確認される。
しかしながら、発色操作を行うと、対向電極構造体の多孔質電極に担持させたフェノチアジン誘導体が発色し、これが有機EC色素の発色と混色してしまうため、全体として青色に表示されてしまい、本来のEC色素の発色が表現できなかった。
上述したことから明らかなように、本発明によれば、対向電極構造体を構成する多孔質電極に、所定のフェロセン化合物を担持させたことにより、消色時には、略無色透明状態を確実に確保しながら、発色時には鮮鋭な目的色の表示を行うことができ、高い安定性をもって可逆的な発消色表示を行うことができる、特にフルカラー化への応用を図る上において最適なエレクトロクロミック装置を提供できた。
1,6……支持基板、2……透明電極、3……有機EC色素、4,8……多孔質電極、5……電解質層、10……エレクトロクロミック装置、11……表示電極構造体、12……対向電極構造体、13……フェロセン化合物
Claims (2)
- 支持基板上に、少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、
前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置されており、
前記一対の電極構造体のうちの、少なくとも一方の透明電極上に、
酸化又は還元反応により発色するエレクトロクロミック色素が吸着されている多孔質電極が形成されており、
前記対向電極構造体を構成する透明電極上に、
下記一般式(1)、(2)の少なくともいずれかよりなるフェロセン化合物が、吸着されている多孔質電極が形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
但し、式(1)中R1は、下記式(3)、(4)のいずれかである。
但し、式(2)中、R2、R3、R4、R5は、H、−PO(OH)2、−CH2−PO(OH)2のいずれかであり、R2〜R5のうち、少なくともいずれか一個は、−PO(OH)2、又は−CH2−PO(OH)2である。 - 前記多孔質電極が、メソポーラス形状、集合粒子状、ロット形状、ワイヤ形状の、金属、半導体材料、あるいは導電性高分子により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
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