JP4946222B2 - エレクトロクロミック装置 - Google Patents

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Description

本発明は、応答速度、発色効率、表示色純度に優れ、明瞭で鮮鋭な画像形成が可能であり、繰り返し耐久性にも優れたエレクトロクロミック装置に関する。
近年、明るく色純度に優れ、かつ省消費電力で、フルカラー表示への応用が容易な表示色素材料やこれを用いた表示素子への要望が高まってきており、従来においては、CRT、LCD、PDP、ELD等の発光型素子に関する多くの技術の提案がなされている。
しかしながら、上記従来公知の各種発光型素子は、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
また携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、発光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
更に、LCDは、発光型素子の中でも特に需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。
ところで、反射型表示素子に関しては、電子ペーパーの需要向上により、従来から様々な技術の提案がなされている。例えば、反射型LCDや電気泳動方式が挙げられる。
反射型LCDとしては、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらは、従来の発光型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力という利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
他方、電気泳動方式は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
また、近年においては、自動車の調光ミラーや時計等に、エレクトロクロミック(以下、ECと略称する。)素子を用いたものが提案されている。
EC素子を用いた表示は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、発色型で視認性に優れ、構造が簡易でかつ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
EC素子を用いた表示装置としては、対の透明電極の少なくとも一方に半導体ナノ多孔質層を形成し、この半導体ナノ多孔質層にEC色素を担持させた構成の表示装置についての提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。この表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
特開2003−248242号公報 特開2003−270670号公報
しかしながら、上記従来提案されている技術においては、ビオロゲンと称されるビピリジン化合物を反応色素として用いており、これは、波長600nm近傍にブロードな吸収波長幅を有する青色の発消色を行うものであり、また更には、波長400nm近傍にも吸収を有しているものであるため、フルカラー表示を行うための表示装置用としては好適なものとはいえない。
必要な色調であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に発色し、かつ所定の波長に鮮鋭な吸収幅を有する、いわゆるフルカラー化に最適なEC色素については、未だ、技術開示がなされていない。
また、従来提案されている表示装置は色純度が低く、精密で鮮明な画像表示を行うという点において、未だ多くの課題を残している。
そこで本発明においては、上述したような従来のEC素子の技術上の問題点に鑑みて、フルカラー画像形成に寄与し得る色素として、シアンの発消色を可逆的に行うことができる有機EC色素を用いたエレクトロクロミック装置に関する提案を行うこととした。
また更には、有機EC色素の化学構造についても検討を行うことにより、色純度が高く、鮮明な画像形成が可能であり、繰り返し耐久性にも優れたエレクトロクロミック装置を提供することとした。
本発明においては、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が、前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置されており、前記一対の電極構造体を構成する透明電極のうちの少なくとも一方の上に、下記一般式(1)で示されるピリジン化合物が吸着された多孔質電極が形成されており、前記一対の電極構造体間に電圧を印加することにより、シアンの可逆的な発消色を行うこととしたエレクトロクロミック装置を提供する。
Figure 0004946222
但し、一般式(1)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Xb-はb価アニオンを表している。
1、Y2、Y3、Y4の内、少なくとも2つが、トリフルオロメチル基、もしくはシアノ基であり、前記以外のY1、Y2、Y3、Y4は、水素、脂肪族炭化水素基である。
1、A2は、置換されていても良い脂肪族炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基であり、A1、A2のうち少なくともいずれか一方は、多孔質電極へ吸着するための吸着基を有している。
本発明のエレクトロクロミック装置によれば、フルカラー化に寄与し得る明瞭なシアンの色調を多数回繰り返して安定して表示可能で、応答速度、発色効率に優れ、色純度が高く、精密な画像制御が可能となった。
本発明のエレクトロクロミック装置について、図を参照して具体的に説明する。
但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
図1に本発明のエレクトロクロミック装置の一例の概略断面図を示す。
エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に透明電極2と後述するピリジン化合物よりなる有機EC色素3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に透明電極7と多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
なお、図1においては、対向する透明電極2、7のいずれにも多孔質電極4、8が形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させ、この多孔質電極に有機EC色素3を担持させた構成としてもよい。以下、構成要素について順次説明する。
支持基板1、6は、耐熱性に優れ、かつ平面方向の寸法安定性の高い材料が好適であり、具体的には、ガラス材料、透明性樹脂が適用できるが、これに限定されるものではない。
前記透明性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
透明電極2、7は、所定の透明基板上に透明電極層が積層されたものとする。
透明電極層の形成用材料としては、例えば、In23とSnO2との混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn23をコーティングした膜等が挙げられる。
また、上記ITO膜や、SnO2 またはIn23をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、その他MgOやZnO等も適用できる。
多孔質電極4、8は、後述する色素の担持機能を高くさせるために表面積が大きい材料により構成する。
具体的には、表面及び内部に微細孔を有したメソポーラス形状、集合粒子状、ロット形状、ワイヤ形状等となっているものが好ましい。
多孔質電極4、8の材料は、例えば、金属、真性半導体、酸化物半導体、複合酸化物半導体、有機半導体、カーボン等が適用できる。
金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Cu等が挙げられ、真性半導体としては、例えば、Si、Ge、Te等が挙げられる。酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe23、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta25、Nb25、V25、In23、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb25−SrTiO3、Nb25−Ta25、Nb25−ZrO2、Nb25−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられ、特にTiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好適である。また、有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
次に、有機EC色素3について説明する。
有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、本発明においては、特に、下記一般式(1)で示されるピリジン化合物を適用する。
Figure 0004946222
但し、前記一般式(1)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Xb-適宜のb価アニオンを表している。これは、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオン等の無機酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン、テトラシアノキノジメタンイオン等の有機酸イオンから選択されるものとする。
1、Y2、Y3、Y4は、少なくとも2つが、トリフルオロメチル基もしくはシアノ基であるものとする。
1、A2は、置換されていても良い脂肪族炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基で、A1、A2のうち少なくともいずれか一方は、多孔質電極へ吸着するための吸着基を有している。吸着基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基、アミノ基、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられ、特にホスホン酸基が好適である。
上記一般式(1)に示した有機EC色素のピリジン化合物は、例えば下記一般式(2)で表わされるピリジン化合物と、例えば下記一般式(3)で表わされるハロゲン化物(特に臭化物、よう化物が好適)とを、所定の溶媒中で、あるいは直接反応させることによって得られる。
Figure 0004946222
但し、一般式(2)のY1、Y2、Y3、Y4は、少なくとも2つが、トリフルオロメチル基もしくはシアノ基であるものとする。
A−X・・・(3)
但し、Xは、臭素あるいはヨウ素であるものとする。
なお、上記一般式(2)で表わされる化合物は、例えば下記一般式(4)、(5)あるいは(6)で表わされるピリジン化合物と、一般式(7)で表わされるハロゲン化物(特に臭化物、よう化物が好適)とを、パラジウム系触媒と塩基の存在下適当な溶媒中でカップリング反応させることによって得ることができる。
Figure 0004946222
Figure 0004946222
Figure 0004946222
Figure 0004946222
但し、上記式中、Y1、Y2、Y3、Y4は、少なくとも2つが、トリフルオロメチル基もしくはシアノ基であるものとする。
但し、Xは臭素あるいは、ヨウ素を示す。
上記一般式(1)に表わした化合物は、前記但し書きに示す官能基を付した構造を全て合成することができ、いずれにおいても、本発明の目的である、ラジカル状態でのシアン発色が可能であることが確かめられた。
そして一般式(1)の化合物に関しては、発色色相等の種々の化合物特性を、Y1、Y2、Y3、Y4、A1、A2で表わされる置換基の種類によって制御でき、これらを変更することによって、所望の特性が得られることが確かめられた。
具体的には、Y1、Y2、Y3、Y4に関して、トリフルオロメチル基もしくはシアノ基の数を多くすることにより、吸収波長が長波長側に移行するようになり、発色性の向上が図られること、さらには、トリフルオロメチル基の方がより急峻な吸収波長ピークが得られる傾向があることが解った。
また、A1、A2に関しては、例えばアルキル鎖か芳香環かを選定することにより、表示電位に違いがあることがわかった。芳香環の方がより表示電位が低くなるが、これに関しては、色素の化学構造や吸着させる多孔質電極の最適な酸化還元電位との兼ね合いにより適宜選定することが必要である。
なお、一般式(1)においては、2価として表記されているが、シアン発色を行う際には、還元反応により1価のラジカル状態となる。
このときb価のアニオンが適宜その価数に応じて電解液中に放出されたり、他の有機EC色素化合物のプロトンとイオン結合を形成したりすることにより、電気的なつり合いが取られるようになされる。
この化合物はこの1価の状態に安定化させることが可能であり、シアン発色用の有機EC色素として極めて優れていることが確かめられた。
上記一般式(1)で表されるビピリジン化合物の具体例を下記に示す。
Figure 0004946222
Figure 0004946222
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Figure 0004946222
Figure 0004946222
次に、上記有機EC色素を、多孔質電極4に担持する方法について説明する。
例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。
具体的には、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、自然吸着法、及び多孔質電極表面への有機EC色素の吸着基によって化学結合させる方法が好適である。
自然吸着法としては、所定の有機EC色素を所定の溶媒に溶解して溶液を作製し、予め乾燥処理を施した多孔質電極4を形成しておいた透明基板を浸漬する方法や、所定の有機EC色素を溶解した溶液を多孔質電極4に塗布する方法が挙げられる。
この自然吸着法において、有機EC色素を多孔質電極4に確実に吸着させるためには、有機EC色素の化学構造中に、吸着性を有する官能基を導入しておくことが必要である。
吸着性を有する官能基としては、多孔質電極4の材料に応じて適宜選定する。例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中の吸着性官能基として、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等を導入しておくことが好ましい。
前記吸着性の官能基は、有機EC色素の化学構造の骨格に直接導入してもよく、あるいはその他の所定の官能基を介して結合を形成することにより導入してもよい。前記のうち、所定の官能基を介する場合は、例えばアルキル基、フェニル基、エステル、アミド基等を介して吸着性の官能基を導入することができる。
なお、有機EC色素を溶解する溶媒としては、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素等が適用できる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
また、多孔質電極4の表面に前記有機EC色素を化学結合させる際には、多孔質電極4の表面と有機EC色素骨格との間に、所定の官能基を介してもよい。例えば、アルキル基、フェニル基、エステル、アミド等の官能基が挙げられる。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合して形成させるようにしてもよい。
このような多孔質電極の表面改質処理により、有機EC色素が多孔質電極4の材料と化学結合を形成するようになると、有機EC色素の結合力が強まり、例えば、電界質層5の材料として色素溶解性の高いものを使用するような場合に有利になり、有機色素の材料選択性が高まり、エレクトロクロミック装置の耐久性の向上も図られる。
なお、図1には、有機EC色素3を表示電極構造体11側の多孔質電極4のみに担持させた例について示したが、本発明のエレクトロクロミック装置はこの構成に限定されるものではない。
すなわち、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも所定の有機EC色素を担持させた構成としてもよい。この場合には、発色反応と消色反応とが、酸化反応、還元反応のうち、それぞれ逆反応に応じて生じるように材料選定することが必要である。
例えば、多孔質電極4に担持させたピリジン色素が還元反応によってラジカル状態となり発色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させたピリジン色素と同色調であり、酸化反応によって発色する有機EC色素を選定する。
このように、両電極構造体11、12において有機EC色素を担持させた構成とすることにより、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
電解質層5は、溶媒に支持電解質が溶解された構成を有している。
支持電解質としては、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えばKCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えばNaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えばフェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。
例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等から適宜選定する。
また、電解質層5には、いわゆるマトリックス材を適用してもよい。
マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。
なお、これらを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
電解質層5は、高分子固体電解質層としてもよい。
なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
次に、本発明のエレクトロクロミック装置10を用いた表示方法について説明する。
図1のエレクトロクロミック装置10において、多孔質電極4の表面には、定常状態において可視域に吸収をもたない有機EC色素である、一般式(1)に示すピリジン化合物が担持されている。
エレクトロクロミック装置10を構成する対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。
所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持された有機EC色素材料との間に電子の授受がなされ、有機EC色素において電気化学的な還元反応が起き、一価のラジカル状態となってシアンに発色する。さらに所定の電圧を印加すると、有機EC色素が定常状態に戻り、この可逆的反応により、シアンの発消色表示を行うことができる。
なお、本発明のエレクトロクロミック装置は、図1に示す、いわゆる単色表示構成に限定されず、多色表示構成に応用することもできる。
すなわち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)に発色する性質の有機EC色素を適用し、これを多孔質電極に担持させてそれぞれ電極構造体を作製し、これら三層を用いて、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
次に、本発明のエレクトロクロミック装置についての具体的な実施例と、比較例を挙げて説明する。
〔実施例〕
次に、本発明のエレクトロクロミック装置についての具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明する。
(有機EC色素化合物:前記式(8)に示す化合物の合成)
4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)ピリジン2.21g(10.8mmol)、1,4-ビス(トリフルオロメチル)-2,5-ジブロモベンゼン1.67g(4.50mmol)、炭酸ナトリウム水溶液12ml(1M)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.158g(0.255mmo)、ジオキサン30mlを加え、アルゴン存在下で、100℃で13 時間加熱攪拌した。
水を加え、生成した沈殿物をろ過し、DMFで再結晶し、白色結晶を得た。
得られた白色結晶0.20gをDMF20mlに溶解し、ブロモエチルホスホン酸ジエチル5mlを加え、120℃で2時間加熱攪拌した。
アセトンを加え、生成した沈殿をろ過し、白色粉末を得た。
生成物をNMR分析したところ、前記式(8)に示す化合物であることが確かめられた。
分析結果を下記に示す。
1H-NMR (DMSO) δ: 9.29 (4H, d, J = 6.3 Hz), 8.30 (6H, t, J = 13.0 Hz), 4.68-4.80 (4H, m, J = 7.2 Hz) ,2.31-2.43 (4H, m, J = 7.3Hz) 。
(有機EC色素化合物:前記式(12)に示す化合物の合成)
4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)ピリジン2.21g(10.8mmol)、1,4-ビス(トリフルオロメチル)-2,5-ジブロモベンゼン1.67g(4.50mmol)、炭酸ナトリウム水溶液12ml(1M)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.158g(0.255mmol)、ジオキサン30mlを加え、アルゴン存在下、100℃で13時間加熱攪拌した。
水を加え、生成した沈殿物をろ過し、DMFで再結晶し、白色結晶を得た。
得られた白色結晶0.2gをDMF10mlに溶解し、ブロモエチル5mlを加え、140℃で24時間加熱攪拌した。
溶媒を留去し、アセトンを加えろ過し、薄黄色粉末を得た。
生成物をNMR分析したところ、前記式(12)に示す化合物であることが確かめられた。
分析結果を下記に示す。
1H-NMR (DMSO) δ: 9.40 (4H, d, J = 6.8 Hz), 8.74 (2H, s), 8.60 (4H, d, J = 6.6 Hz),4.76(4H, q, J = 7.3 Hz), 1.64 (6H, t, J = 7.3 Hz)。
(有機EC色素化合物:前記式(18)に示す化合物の合成)
2雰囲気下、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)ピリジン1.72g(8.4mmol)、1,4-ジブロモ-2,5-ジシアノベンゼン1.0g(3.5mmol)、炭酸ナトリウム水溶液9ml(1M)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.139g(0.198mmol)、ジオキサン23mlを加え、130℃で15時間加熱攪拌した。
室温に冷ました後、溶液をろ過し、得られた粉末を塩酸に溶かし酢酸エチルで洗浄し、水層を水酸化ナトリウムでアルカリ性にし、沈殿物をろ過した。
水洗した後乾燥させ、黄色粉末を得た。
得られた黄色粉末0.2g(0.71mmol)を、DMF10mlに溶解し、ブロモエチルホスホン酸ジエチル5mlを加え、140℃で24時間加熱攪拌した。
溶媒を留去し、アセトンを加えろ過し、薄黄色粉末を得た。
生成物をNMR分析したところ、前記式(18)に示す化合物であることが確かめられた。
分析結果を下記に示す。
1H-NMR (DMSO) δ: 9.40 (4H, d, J = 6.8 Hz), 8.74 (2H, s), 8.60 (4H, d, J = 6.6 Hz), 4.68-4.80 (4H, m, J = 7.2 Hz) ,2.31-2.43 (4H, m, J = 7.3Hz)。
上記化合物の他、前記式(9)〜式(11)、式(13)〜式(17)、式(19)〜式(23)に示した化合物についても、上述した合成方法と同様の手法により作製できることが確かめられた。
(表示電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で、80℃15分間の乾燥処理を行い、更に電気炉で500℃1時間焼結を行い、膜厚3μmの酸化チタン多孔質電極4が形成されたFTO基板を得た。
(有機EC色素の多孔質電極への吸着)
酸化チタン膜よりなる多孔質電極が形成されたFTO基板を、上述のようにして作製した有機EC色素化合物それぞれの5mM水溶液に24時間浸漬させ、酸化チタン電極に有機EC色素を吸着させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
(対向電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、酸性水溶液に1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%分散させて得たスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃1時間焼結を行い、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板を得た。
(電解質層用の溶液の調製)
電解質層5形成用溶液は、ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを適用した。
(電極構造体の貼り合わせ)
上述のようにして作製した表示電極構造体(色素吸着酸化チタン多孔質電極付き基板)と、対向電極構造体(アンチモンドープ酸化スズ多孔質電極付き基板)とを、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて、90℃で貼り合わせた。
この際、後述の工程により、電解液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。
(電解質溶液の注入)
前記電解液を、注入口から注入した。
その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止することにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
上述したエレクトロクロミック装置の製造工程に従い、多孔質電極に担持させる有機EC色素について異なるものを適用し、下記実施例、及び比較例のサンプルセルを作製した。
(実施例サンプルの作製)
有機EC色素として、上記式(8)、(12)、(18)の化合物が表示電極構造体を構成する多孔質電極に吸着されたエレクトロクロミック装置をサンプルとした。
上記式(8)の有機EC色素を用いたエレクトロクロミック装置の、表示電極と対向電極の間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。
図2に発色時のスペクトルを示した。
なお表示変更の応答速度は約150msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vの電圧を印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約90msであった。
更に、表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したところ、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
上記式(12)の有機EC色素を用いたエレクトロクロミック装置の、表示電極と対向電極の間に、−1.2Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。
図3に発色時のスペクトルを示した。
なお表示変更の応答速度は約120msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vの電圧を印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約80msであった。
更に、表示電極と対向電極の間に、−1.2Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したところ、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
上記式(18)の有機EC色素を用いたエレクトロクロミック装置の、表示電極と対向電極の間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。
図4に発色時のスペクトルを示した。
なお表示変更の応答速度は約150msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更に、電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約90msであった。
更に、表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したところ、100万回電圧印加を繰り返した後においても初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
上記実施例においては、上記式(8)、式(12)、(18)の有機EC色素を適用してエレクトロクロミック装置を作製したが、その他の式に示す有機EC色素を適用した場合においても同様に電極間に所定の電圧を印加することにより、優れた応答速度で明瞭なシアンの可逆的な発消色表示が可能であることが確かめられた。
上記式(8)〜式(23)の化合物は、本発明の有機エレクトロクロミック装置を構成する有機EC色素の具体的な例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の有機エレクトロクロミック装置においては、電極材料や電極構成等のデバイス構成に応じて適宜、一般式(1)の構造の有機EC色素として種々のものを選択することができる。
特に、式(12)の化合物のように、2つのトリフルオロメチル基を有し、ピリジン環にベンゼン環が結合した構造を有しているものは、シアン発色の吸収波長に急峻なピークが形成され、かつ発色電位も低く抑えられることが確かめられた。
式(18)の化合物のように、2つのシアノ基を有しているものは、図4のように、450〜500nmの領域に若干の吸収が見られたが、650nm近傍に最も大きな吸収ピークを有しているため、実用上、良好なシアン発色が得られた。
〔比較例〕
有機EC色素として、下記式(24)に示す、従来公知の有機EC色素を適用して、上述した実施例と同様にエレクトロクロミック装置のサンプルを作製し、発消色評価を行った。
Figure 0004946222
表示電極と対向電極の間に、−1.5Vの電圧を印加すると、青色の発色を示した。この発色スペクトルを図5に示した。
図5から明らかなように、青色発色領域に吸収幅の広いピークが形成されており、フルカラー表示素子において要求される発色は得られていないことが確かめられた。また、400nm近傍に大きな吸収ピークが見られ、同様の構成を有し発色の異なるエレクトロクロミック装置を積層させて多色表示用の装置を作製した場合を想定しても、この比較例の色素においては確実な単色のコントロールが困難であり、フルカラー表示用の色素としては不適当なものであることが解った。
上述したことから明らかなように、本発明によれば、電極構造体を構成する多孔質電極に担持する有機EC色素として、一般式(1)に示すピリジン化合物を適用したことにより、極めて応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、安定に可逆的な発消色表示を行うことができるシアン発色のエレクトロクロミック装置を提供できた。
本発明のエレクトロクロミック装置の一例の概略断面図を示す。 式(8)の化合物を適用した場合の発色時の可視吸収スペクトルを示す。 式(12)の化合物を適用した場合の発色時の可視吸収スペクトルを示す。 式(18)の化合物を適用した場合の発色時の可視吸収スペクトルを示す。 式(24)の化合物を適用した場合の発色時の可視吸収スペクトルを示す。
符号の説明
1,6……支持基板、2……透明電極、3……有機EC色素、4,8……多孔質電極、5……電解質層、10……エレクトロクロミック装置、11……表示電極構造体、12……対向電極構造体

Claims (2)

  1. 支持基板上に、少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が、前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置されており、
    前記一対の電極構造体を構成する透明電極のうちの少なくとも一方の上に、
    下記一般式(1)で示されるピリジン化合物が吸着されている多孔質電極が形成されており、
    前記一対の電極構造体間に電圧を印加することにより、シアンの可逆的な発消色を行うことを特徴とするエレクトロクロミック装置。
    Figure 0004946222

    但し、一般式(1)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Xb-はb価アニオンを表している。
    1、Y2、Y3、Y4の内の、少なくとも2つが、トリフルオロメチル基、もしくはシアノ基であり、前記以外のY1、Y2、Y3、Y4は、水素、脂肪族炭化水素基からなる。
    1、A2は、置換されていても良い脂肪族炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基であり、A1、A2のうち少なくともいずれか一方は、多孔質電極へ吸着するための吸着基を有している。
  2. 前記多孔質電極が、メソポーラス形状、集合粒子状、ロット形状、ワイヤ形状の、金属、半導体材料、あるいは導電性高分子により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック装置。
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