JP2007047656A - エレクトロクロミック装置及びこれを用いた表示方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】極めて色純度が高く、精密な色制御が可能で、鮮鋭かつ明瞭なフルカラー画像表示が可能なエレクトロクロミック装置を提供する。
【解決手段】支持基板1、6上に少なくとも透明電極2、7が形成されている一対の電極構造体11、12が、透明電極2、7同士が対面するように、電解質層5を挟持して配置されており、一対の透明電極2、7のうちの、少なくとも一方の上に、シアニン化合物よりなる有機EC色素が吸着されている多孔質電極4が形成されており、定常状態において可視光に対し吸収を示し、電気化学的に還元反応を起こすことによって可逆的に無色あるいは淡黄色の状態となるものであるエレクトロクロミック装置を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、フルカラー化が容易で、応答速度、発色効率、表示色純度に優れ、明瞭で鮮鋭な画像形成が可能であり、繰り返し耐久性も良好なエレクトロクロミック装置、及びこれを用いた表示方法に関する。
近年、明るく色純度に優れ、かつ省消費電力でフルカラー表示が容易な材料への要望が高まってきている。
例えば、従来においては、CRT、LCD、PDP、ELD等の発光型素子は明るくて見やすいという特徴を有しており、多くの技術の提案がなされてきた。
しかしながら、上記各種発光型素子は、発光を直視しなければならないため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
また携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、発光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
またLCDは、発光型素子の中でも特に需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられている。
しかしながら、LCDは視野角が狭いという問題を有しており、見やすさの観点からは他の発光型素子に比較すると改善すべき課題を有している。
一方、従来、反射型表示素子に関しては、電子ペーパーの需要向上により様々な技術の提案がなされている。
例えば、反射型LCDや電気泳動方式が挙げられる。
反射型LCDには、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等がある。これらの方式は、従来の発光型LCDと比較して、バックライトを使用しないために省消費電力であるという利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題を有している。
他方、電気泳動方式は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用するため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなるという問題を有している。
また、従来においては、自動車の調光ミラーや、時計等にエレクトロクロミック(以下、ECと略称する。)素子が用いられている。
このEC素子による発光は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、受光型で視認性に優れ、構造が簡易でかつ大型化も容易で、更には、材料の選択によって多様な色調の発光が可能であるという利点を有している。
EC素子でフルカラー表示を行うためには、減法混色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の発色が可能な色素を適用し、C、M、Y発色層を積層した構成とすることにより、フルカラー発色が可能な表示装置が得られる。
また黒色は、C、M、Yを混色することにより表示でき、白色は、各色素を消色状態として透明にし、背景色を白色にすることにより表示できる。
一方、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色において、カラー表示及び黒色表示は容易であるが、白色表示を行う際に、R、G、Bを混色させるとグレーに発色してしまい、鮮鋭な白色を表示することは困難である。
ところで近年、EC素子においては、対の透明電極の少なくとも一方に半導体ナノ多孔質層を設け、この半導体ナノ多孔質層にEC色素を担持させた構成の表示装置に関する技術の提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。
この表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持する電力が不要であり、消費電力の低減化が図られるという利点を有している。
特開2003−248242号公報 特開2003−270670号公報
ところで、上記文献で提案されている技術で適用されているEC色素は、酸化又は還元反応を起こしてラジカル状態となって発色する性質を有している。
しかしながら、ラジカル発色をするEC色素は、ラジカル状態において複数の電子遷移に伴う発色吸収が出現することから、必然的に発色吸収幅が広くなるものであり、全体として精密な色相制御を行うことが困難である。
すなわち、ラジカル発色するEC色素を用いてフルカラー画像の形成を行う従来技術においては、色純度が低く、精密かつ鮮明な色表示を行うことが極めて困難であった。
そこで本発明においては、上述したような従来提案されているEC素子の問題点に鑑みて、色純度が高く、精密で明瞭な発消色性を可能とし、鮮明なフルカラー画像形成を容易に行うことができるエレクトロクロミック装置及びこれを用いた表示方法を提供する。
本発明においては、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が、前記透明電極同士が対面するように、電解質層を挟持して配置されており、前記一対の透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、下記一般式(1)、(2)で示されるシアニン化合物の少なくともいずれかが吸着されている多孔質電極が形成されており、前記シアニン化合物が、定常状態において可視光に対し吸収を示し、電気化学的に還元反応を起こすことによって、可逆的に無色あるいは淡黄色の表示状態となるエレクトロクロミック装置を提供する。
Figure 2007047656
Figure 2007047656
但し、一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。AおよびBはN原子を含む複素環を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は適宜の対イオンを表す。
また、本発明においては、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が前記透明電極同士が対面するように、電解質層を挟持して配置されており、前記一対の透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、下記一般式(1)、(2)で示されるシアニン化合物の少なくともいずれかが吸着されている多孔質電極が形成されて構成されるエレクトロクロミック層構造体が、二層以上積層されており、
前記シアニン化合物が、定常状態において可視光に対し吸収を示し、電気化学的に還元反応を起こすことによって、可逆的に無色あるいは淡黄色の表示状態となるエレクトロクロミック装置を提供する。
Figure 2007047656
Figure 2007047656
但し、一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。AおよびBはN原子を含む複素環を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は適宜の対イオンを表す。
また、本発明のエレクトロクロミック表示装置を用いた表示方法においては、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が、前記透明電極同士が対面するように、電解質層を挟持して配置されており、前記一対の透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、下記一般式(1)、(2)で示されるシアニン化合物の少なくともいずれかが吸着されている多孔質電極が形成されている構成のエレクトロクロミック装置を用い、前記シアニン化合物が定常状態において可視光に対し吸収を示すことにより、色表示を行い、前記シアニン化合物に電気化学的な還元反応を起こさせることにより、可逆的に、無色あるいは淡黄色の表示を行うこととする。
Figure 2007047656
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但し、一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。AおよびBはN原子を含む複素環を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は適宜の対イオンを表す。
本発明によれば、定常状態において可視域に吸収を有し、電気化学的に還元反応を起こすことによって、ラジカル状態となり、可視域に吸収を失い消色するシアニン化合物を多孔質電極に担持させたことにより、フルカラー化が容易で、応答速度、発色効率に優れ、色純度が高く精密な色制御が可能で、鮮鋭かつ明瞭な表示を繰り返し行うことができるエレクトロクロミック装置が得られた。
以下、本発明のエレクトロクロミック装置と、これを用いた表示方法について、図を参照して具体的に説明する。但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
図1に本発明のエレクトロクロミック装置の一例の概略断面図を示す。
エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、後述するシアニン化合物よりなる有機EC色素3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に、透明電極7と多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
なお、図1においては、対向する透明電極2、7のいずれにも多孔質電極4、8が形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させた構成としてもよい。以下、構成要素について順次説明する。
支持基板1、6は、耐熱性に優れ、かつ平面方向の寸法安定性の高い材料が好適であり、具体的には、ガラス材料、透明性樹脂が適用できるが、これに限定されるものではない。
前記透明性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
透明電極2、7は、所定の透明基板上に透明電極層が積層されたものとする。
透明電極層の形成用材料としては、例えば、In23とSnO2との混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn23をコーティングした膜等が挙げられる。
また、上記ITO膜や、SnO2 またはIn23をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、その他MgOやZnO等も適用できる。
多孔質電極4、8は、表面積が大きい材料により構成することが好適であり、例えば表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状等となっているものとする。
多孔質電極4、8は、例えば、金属、真性半導体、酸化物半導体、複合体酸化物半導体、有機半導体、カーボン等により構成することができる。金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Cu等が挙げられ、真性半導体としては、例えば、Si、Ge、Te等が挙げられる。
酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe23、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta25、Nb25、V25、In23、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。
また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb25−SrTiO3、Nb25−Ta25、Nb25−ZrO2、Nb25−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられ、特にTiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好適である。
また、有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
本発明において表示層を構成する有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、下記一般式(1)又は(2)で示されるシアニン化合物である。
Figure 2007047656
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上記一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。
AおよびBは、N原子を含む複素環を表し、以下の構造が適用できる。また、互いに同じでも異なっていてもよい。
Figure 2007047656
上記において挙げた各式中、Cは、単環式又は多環式の芳香環、若しくは複素環を表し、個々の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等、また、複素環としては、例えば、ピリジン環、キノリン環、キノキサリン環等が挙げられる。
かかる芳香環及び複素環は、例えば、ハロゲン基、短鎖長脂肪族炭化水素、短鎖長エーテル基、芳香族炭化水素基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、さらには、多孔質電極へ吸着させるための、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基などの酸性基等を、単数又は複数有していてもよい。
なお、Cが存在しない場合には、その位置へCと同様の置換基が単数又は複数結合していてもよい。
1、Y2は脂肪族炭化水素基を表す。かかる脂肪族炭化水素基は置換基を、単数又は複数有していてもよい。個々の置換基としては、例えば、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、芳香族炭化水素基、複素環基、さらには、多孔質電極へ吸着させるための、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基が挙げられる。
Rは、水素原子、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。
一般式(1)のX-は、適宜の対イオンを表す。
通常、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオンなどの無機酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン、テトラシアノキノジメタンイオンなどの有機酸イオン、更には、アゾ系、ビスフェニルジチオール系、チオカテコールキレート系、チオビスフェノレートキレート系、ビスジオール−α−ジケトン系等の有機金属錯体イオン等から選択される。
本発明において適用するシアニン色素は、例えば、エフ・エム・ハーマー著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ」、あるいはジョン・ウィリー・アンド・サンズ社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー」、第18章、第14節、第482から515項、記載の方法等に基づいて合成できる。
次に、上記一般式(1)、(2)で表されるシアニン化合物の具体例を下記式(A)〜(R)に示す。
Figure 2007047656
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前記シアニン化合物よりなる有機EC色素を、多孔質電極4に担持する方法としては、例えば、多孔質電極の表面に所定の有機材料を吸着させる方法や、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。
具体的には、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等を適宜選定でき、特に自然吸着法、及び多孔質電極表面への有機EC色素を化学結合させる方法が好適である。
自然吸着法としては、所定の有機EC色素を溶解した溶液中に、予め乾燥処理を施した多孔質電極4を形成しておいた透明基板を浸漬する方法や、所定の有機EC色素を溶解した溶液を多孔質電極4に塗布する方法が挙げられる。
有機EC色素を多孔質電極4に自然吸着させるためには、有機EC色素の化学構造中に吸着性官能基を導入することが必要である。この吸着性官能基は、吸着させる多孔質電極の材料に応じて適宜選定するものとし、例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中に、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等の吸着性官能基を導入しておくことが好ましい。
前記吸着性官能基は、有機EC色素の骨格に直接、あるいはその他の所定の官能基を介して導入してもよい。前記のうち、所定の官能基を介して吸着基を導入する場合は、アルキル基、フェニル基、エステル、アミド基等の官能基を介して吸着基を導入する方法が好適である。
なお、有機EC色素の溶解用溶媒としては、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらは適宜混合して用いてもよい。
また、多孔質電極4の表面に前記有機EC色素を化学結合させる際には、多孔質電極4の表面と有機EC色素骨格との間に、所定の官能基を介してもよい。例えば、アルキル基、フェニル基、エステル、アミド等の官能基が好適である。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合を形成させるようにしてもよい。
なお、図1においては、有機EC色素3を表示電極構造体11側の多孔質電極4のみに担持させた例について示したが、本発明のエレクトロクロミック装置はこの構成に限定されるものではない。
すなわち、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも所定の有機EC色素を担持させた構成としてもよい。この場合には、発色反応と消色反応とが、酸化反応、還元反応のうち、それぞれ逆反応に応じて生じるように材料選定することが必要である。
例えば、多孔質電極4に担持させたシアニン色素が還元反応によってラジカル状態となり消色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させたシアニン色素と同色調であり、酸化反応によってラジカル状態となり消色する有機EC色素を選定する。
このように、両電極構造体11、12において有機EC色素を担持させた構成とすることにより、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
電解質層5は、溶媒に支持電解質が溶解された構成を有している。
支持電解質としては、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えばKCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えばNaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えばフェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体などが使用できる。
溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。
例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等から適宜選定する。
また、電解質層5には、いわゆるマトリックス材を適用してもよい。
マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。なお、これらを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
電解質層5は、高分子固体電解質層としてもよい。
なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
次に、上述したエレクトロクロミック装置10を用いた具体的な表示方法について説明する。
図1のエレクトロクロミック装置10において、多孔質電極4の表面には、定常状態において可視域に吸収を有する有機EC色素である、シアニン化合物が担持されているものとする。
エレクトロクロミック装置10を構成する対の電極構造体11,12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。所定のリード線を通じて所定の電圧を印加する。多孔質電極4とこれに担持された有機EC色素材料との間に電子の授受がなされ、有機EC色素において電気化学的な還元反応が起き、可視域における吸収を失い消色する。
なお、本発明のエレクトロクロミック装置は、図1に示した構成に限定されるものではなく、図1に示したエレクトロクロミック構成、すなわち、支持基板上に透明電極が形成されている一対の電極構造体が前記透明電極同士が対面するように電解質層を挟持して配置され、かかる透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、所定のスチリル類似化合物が吸着されている多孔質電極が形成されて構成されるエレクトロクロミック層構造体を、複数層積層させることにより、複数色の組み合わせやこれらの発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
例えば、複数層の各層において、定常状態でシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)に発色するシアニン化合物を吸着させて、フルカラー表示のエレクトロクロミック装置とした場合において、それぞれの層で所定の電圧を印加して有機EC色素の消色反応を起こさせ、全体としては減色の制御を行うことにより、所望のフルカラー画像を表示できる。
次に、本発明のエレクトロクロミック装置についての具体的な実施例と、比較例とを上げて説明する。
(表示電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極)を形成した。
次に、酸性水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを30重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚2umの酸化チタン多孔質電極が形成されたFTO基板が得られた。
(有機EC色素の多孔質電極への吸着)
上記酸化チタン膜が形成されたFTO基板を、シアニン化合物のエタノール溶液に1時間浸漬させ、酸化チタン電極に色素(有機EC色素膜)を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理を行い、乾燥させた。
(対向電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極)を形成した。
次に、酸性水溶液に1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。
この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚2μmのアンチモンドープ酸化スズ多孔質電極が形成されたFTO基板が得られた。
(電解質層用の溶液の調製)
電解質溶液はアセトニトリルに、過塩素酸リチウムを0.2mol/L溶解させたものを用いた。
(電極構造体の貼り合わせ)
上述のようにして作製した表示電極構造体(色素吸着酸化チタン多孔質電極付き基板)と、対向電極構造体(アンチモンドープ酸化スズ多孔質電極付き基板)とを、径50μmの球状ポリスチレンとエポキシ系の熱硬化樹脂を混合した接着剤を用いて貼り合わせた。
この際、後述の工程により、電解液を注入できるように、一部分は接着剤を塗布せずに注入口を形成した。その後、セルを100℃で1時間硬化させた。
(電解質溶液の注入)
前記電解液を、注入口から注入した。
その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止し、再度100℃で、一時間熱硬化処理を行うことにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
上述したエレクトロクロミック装置の製造工程に従い、多孔質電極に担持させる有機EC色素について異なるものを適用し、下記実施例、及び比較例のサンプルセルを作製した。
〔実施例1〕
有機EC色素として、前記式(A)の化合物を適用し、表示電極構造体を構成する多孔質電極に吸着させて、エレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置においては、定常状態で鮮鋭なイエローの発色が得られ、表示電極と対向電極の間に、−1.8Vを印加すると、直ちに消色し透明となった。表示変更の応答速度は約100msであった。また、電極間に0Vを印加すると再び鮮鋭なイエローの発色が得られた。
この例におけるエレクトロクロミック装置の発色状態と消色状態の可視吸収スペクトルを測定し、その結果を図2に示す。
図2から明らかなように、吸収波長幅が狭く、鮮やかな発色色調と透明状態とを可逆的に、極めて明瞭に表示できることが分かった。
〔実施例2〕
有機EC色素として、前記式(B)の化合物を適用し、表示電極構造体を構成する多孔質電極に吸着させて、エレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置においては、定常状態で鮮鋭なマゼンタの発色が得られ、表示電極と対向電極の間に、−1.8Vを印加すると、直ちに消色し透明となった。表示変更の応答速度は約80msであった。また、電極間に0Vを印加すると再び鮮鋭なマゼンタの発色が得られた。
この例におけるエレクトロクロミック装置の発色状態と消色状態の可視吸収スペクトルを測定し、その結果を図3に示す。
図3から明らかなように、吸収波長幅が狭く、鮮やかな発色色調と透明状態とを可逆的に、極めて明瞭に表示できることが分かった。
〔実施例3〕
有機EC色素として、前記式(C)の化合物を適用し、表示電極構造体を構成する多孔質電極に吸着させて、エレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置においては、定常状態で鮮鋭なシアンの発色が得られ、表示電極と対向電極の間に、−1.8Vを印加すると、直ちに消色し透明となった。表示変更の応答速度は約90msであった。また、電極間に0Vを印加すると再び鮮鋭なシアンの発色が得られた。
この例におけるエレクトロクロミック装置の発色状態と消色状態の可視吸収スペクトルを測定し、その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、吸収波長幅が狭く、鮮やかな発色色調と透明状態とを可逆的に、極めて明瞭に表示できることが分かった。
〔実施例4〕
白色反射板上に、上述した実施例1、2、及び3において作製したエレクトロクロミック装置のセル(それぞれ第一〜第三のセルとする)を積層し、全体として三層構造のフルカラーエレクトロクロミック装置を作製した。
この装置は定常状態で、イエロー、マゼンタ、シアンが混色し、黒色表示となった。
第一のセルの表示電極と対向電極の間に、−1.8Vの電圧を印加すると、イエローが消色し、全体ではブルー表示となった。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
第二のセルの表示電極と対向電極との間に、−1.8Vの電圧を印加すると、マゼンタが消色し、全体ではグリーン表示となった。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
第三のセルの表示電極と対向電極との間に、−1.8Vの電圧を印加すると、シアンが消色し、全体ではレッド表示となった。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
同様に、イエローの層(第一のセル)の両電極間、及びマゼンタの層(第二のセル)の両電極間に−1.8Vの電圧を印加すると、装置全体ではシアンの表示がなされた。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
同様に、イエローの層(第一のセル)の両電極間、及びシアンの層(第三のセル)の両電極間に−1.8Vの電圧を印加すると、装置全体ではマゼンタの表示がなされた。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
同様に、マゼンタの層(第二のセル)の両電極間、及びシアンの層(第三のセル)の両電極間に−1.8Vの電圧を印加すると、装置全体ではイエローの表示がなされた。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
さらに、すべての層の両電極間に−1.8Vの電圧を印加すると、装置全体では白色の表示がなされた。電圧を0Vとすると再び黒の表示がなされた。
このように、色調に優れたフルカラーの表示を行うことができた。
〔比較例1〕
有機EC色素として、下記式(S)に示すビオロゲン誘導体を適用し、これを表示電極構造体を構成する多孔質電極に吸着させて、その他の条件は実施例1と同様としてエレクトロクロミック装置を作製した。
Figure 2007047656
上記式(S)の有機EC色素は、従来公知の色素材料であり、定常状態において無色であり化学反応によりラジカル状態となった際に発色するものである。
この例におけるエレクトロクロミック装置に、−1.5Vの電圧を印加すると、ブルーの発色が得られた。このときの応答速度は約200msであった。また、両電極間の電圧を0Vとすると、再び無色となった。
このエレクトロクロミック装置における発色状態と消色状態の可視吸収スペクトルの測定結果を図5に示す。
図5から明らかなように、従来公知の、定常状態で無色で、化学反応によりラジカル状態となった際に発色する有機EC色素を適用すると、吸収波長幅が広いため、例えば上記実施例4のように、イエロー、マゼンタ、シアン発色のセルを積層させたフルカラー表示のエレクトロクロミック装置を作製した場合、上述した実施例4の場合に比較して、明瞭さや鮮明さの点で極めて劣ったものとなった。
上述したことから明らかなように、本発明によれば、電極構造体を構成する多孔質電極に担持する有機EC色素として、特に、定常状態において可視域に吸収を有し電気化学的な還元反応により、ラジカル状態となって、可視域における吸収を失い消色状態となるシアニン化合物を適用したことにより、極めて応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、可逆的な発消色を行うことができるエレクトロクロミック装置を提供できた。
本発明のエレクトロクロミック装置の一例の概略断面図を示す。 実施例1の装置の可視吸収スペクトルを測定した結果を示す。 実施例2の装置の可視吸収スペクトルを測定した結果を示す。 実施例3の装置の可視吸収スペクトルを測定した結果を示す。 比較例1の装置の可視吸収スペクトルを測定した結果を示す。
符号の説明
1,6……支持基板、2……透明電極、3……有機EC色素、4,8……多孔質電極、5……電解質層、10……エレクトロクロミック装置、11……表示電極構造体、12……対向電極構造体

Claims (4)

  1. 支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が、前記透明電極同士が対面するように、電解質層を挟持して配置されており、
    前記一対の透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、下記一般式(1)、(2)で示されるシアニン化合物の少なくともいずれかが吸着されている多孔質電極が形成されており、
    前記シアニン化合物が、定常状態において可視光に対し吸収を示し、電気化学的に還元反応を起こすことによって、可逆的に無色あるいは淡黄色の表示状態となることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
    Figure 2007047656

    Figure 2007047656

    但し、一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。AおよびBはN原子を含む複素環を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は適宜の対イオンを表す。
  2. 支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が前記透明電極同士が対面するように、電解質層を挟持して配置されており、前記一対の透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、下記一般式(1)、(2)で示されるシアニン化合物の少なくともいずれかが吸着されている多孔質電極が形成されて構成されるエレクトロクロミック層構造体が、二層以上積層されており、
    前記シアニン化合物が、定常状態において可視光に対し吸収を示し、電気化学的に還元反応を起こすことによって、可逆的に無色あるいは淡黄色の表示状態となることを特徴とするエレクトロクロミック装置。
    Figure 2007047656

    Figure 2007047656

    但し、一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。AおよびBはN原子を含む複素環を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は適宜の対イオンを表す。
  3. 支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体が、前記透明電極同士が対面するように、電解質層を挟持して配置されており、前記一対の透明電極のうちの、少なくとも一方の上に、下記一般式(1)、(2)で示されるシアニン化合物の少なくともいずれかが吸着されている多孔質電極が形成されている構成のエレクトロクロミック装置を用い、
    前記シアニン化合物が定常状態において可視光に対し吸収を示すことにより、色表示を行い、
    前記シアニン化合物に電気化学的な還元反応を起こさせることにより、可逆的に、無色あるいは淡黄色の表示を行うことを特徴とするエレクトロクロミック装置の表示方法。
    Figure 2007047656

    Figure 2007047656

    但し、一般式(1)、(2)において、nは0、1、または2を表す。AおよびBはN原子を含む複素環を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、エーテル基、アシル基、ハロゲン基又はシアノ基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は適宜の対イオンを表す。
  4. 前記多孔質電極が、メソポーラス形状、粒子状、ロット形状、ワイヤ形状の、金属、半導体材料、あるいは導電性高分子により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック装置。
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