JP4894289B2 - エレクトロクロミック装置 - Google Patents
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従来、CRT、LCD、PDP、ELD等の発光型素子に関しての多くの技術の提案がなされてきた。
しかしながら、上記各種発光型素子は、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題がある。
また携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、発光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
更に、LCDは、発光型素子の中でも特に需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは他の発光型素子に比較すると改善すべき課題を有している。
例えば、反射型LCDや電気泳動方式が挙げられる。
反射型LCDとしては、従来、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらの方式は、従来の発光型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力であるという利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
他方、電気泳動方式は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
このEC素子による表示は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、受光型で視認性に優れ、構造が簡易でかつ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
この表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持する電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で特に優れている。
フルカラー化に必要なシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に発色するEC色素については、従来、技術開示がなされていない。
また、従来提案されている表示装置は、色純度が低いという点や、精密かつ鮮明なカラー画像の表示を行うことが困難であるという問題を有していた。
また更には、有機EC色素の化学構造についても検討を行うことにより、色純度が高く、鮮明な画像形成が可能であり、繰り返し耐久性にも優れたエレクトロクロミック装置を提供することとした。
但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、後述するピリジン化合物よりなる有機EC色素3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に、透明電極7と多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
なお、図1においては、対向する透明電極2、7のいずれにも多孔質電極4、8が形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させた構成としてもよい。以下、構成要素について順次説明する。
前記透明性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
透明電極層の形成用材料としては、例えば、In2O3とSnO2との混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn2O3をコーティングした膜等が挙げられる。
また、上記ITO膜や、SnO2 またはIn2O3をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、その他MgOやZnO等も適用できる。
多孔質電極4、8の材料は、例えば、金属、真性半導体、酸化物半導体、複合酸化物半導体、有機半導体、カーボン等が適用できる。
金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Cu等が挙げられ、真性半導体としては、例えば、Si、Ge、Te等が挙げられる。酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、Fe2O3、SrTiO3、WO3、ZnO、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5、In2O3、CdO、MnO、CoO、TiSrO3、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられる。また、複合体酸化物半導体としては、例えば、SnO2−ZnO、Nb2O5−SrTiO3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−ZrO2、Nb2O5−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられ、特にTiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好適である。また、有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
有機EC色素3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、本発明においては、特に、下記一般式(1)で示されるピリジン化合物を適用する。
A1、A2は、置換されていても良い脂肪族炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基であり、A1、A2のうち少なくともいずれか一方は、多孔質電極へ吸着するための吸着基を有している。吸着基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基、アミノ基、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等が挙げられる。
但し、Xは臭素、あるいはヨウ素であるものとする。
Aは、上記A1、A2の構造に従うものとする。
この化合物はこの1価の状態に安定化させることが可能であり、マゼンタ発色用の有機EC色素として極めて優れていることが確かめられた。
上記一般式(1)で表されるピリジン化合物の具体例を下記式(6)〜(13)に示す。
例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法、多孔質電極表面と有機EC色素とを化学的に結合させる方法等、従来公知の技術を適用できる。
具体的方法としては、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート等の塗布法、電界析出法、電界重合法、担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、自然吸着法、及び多孔質電極表面への有機EC色素を化学結合させる方法が好適である。
この自然吸着法において、有機EC色素を多孔質電極4に確実に吸着させるためには、有機EC色素の化学構造中に、吸着性を有する官能基を導しておくことが必要である。
この吸着性を有する官能基は、多孔質電極4の材料に応じて適宜選定する。例えば、多孔質電極4が酸化物半導体により構成されている場合には、有機EC色素の化学構造中の吸着性官能基として、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等を導入しておく。
また、多孔質電極4の表面をシランカップリング剤等によって改質した後に、有機EC色素を化学結合して形成させるようにしてもよい。
このような表面改質により、有機EC色素が多孔質電極4の材料と化学結合を形成するようになると、有機EC色素の結合力が強まり、例えば、電界質層5の材料として色素溶解性の高いものを使用するような場合に有利になり、有機色素の材料選択性が高まり、エレクトロクロミック装置の耐久性の向上も図られる。
すなわち、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも所定の有機EC色素を担持させた構成としてもよい。この場合には、発色反応と消色反応とが、酸化反応、還元反応のうち、それぞれ逆反応に応じて生じるように材料選定することが必要である。
例えば、多孔質電極4に担持させたピリジン色素が還元反応によってラジカル状態となり発色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させたピリジン色素と同色調であり、酸化反応によって発色する有機EC色素を選定する。
このように、両電極構造体11、12において有機EC色素を担持させた構成とすることにより、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
支持電解質としては、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えばKCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えばNaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えばフェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述した有機EC色素を溶解しないものを選択する。
例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等から適宜選定する。
マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。
なお、これらを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
図1のエレクトロクロミック装置10において、多孔質電極4の表面には、定常状態において可視域に吸収をもたない有機EC色素である、一般式(1)に示すピリジン化合物が担持されている。
エレクトロクロミック装置10を構成する対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。
所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持された有機EC色素材料との間に電子の授受がなされ、有機EC色素において電気化学的な還元反応が起き、ラジカル状態となってマゼンタに発色する。
すなわち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、イエロー(Y)、シアン(C)に発色する有機EC色素を所定の多孔質電極に担持させて電極構造体を作製し、全体としてマゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
アルゴン雰囲気下、4−ブロモピリジン6.32g(0.04mol)を、ジエチルエーテル50mlに溶解し、−78℃の温度条件下、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)28mlを徐々に加えて1時間攪拌した。その後、イソニコチン酸エチル5g(0.033mol)をジエチルエーテル30mlに溶解して溶液を作製しこれを滴下し5時間攪拌した。
これを室温に戻し、その後、水を加え酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。
これを酢酸エチルで再結晶し、淡黄色結晶を得た。
この粉末0.37g(2mmol)と、2−ブロモエチルホスホン酸ジエチル1.96g(8mmol)を120℃で24時間反応させ、室温まで冷却した。
その後、水20mlを加えた。
酢酸エチルで3回洗浄し、濃塩酸20mlを加えて更に24時間加熱還流した。
溶媒を留去し、メタノールで再結晶すると、上記式(6)で表した化合物が得られた。
この化合物をNMR測定したところ、下記に示す測定データが得られ、上記式(6)に示す化合物であることが確認された。
1H−NMR(D2O)δ:8.78(4H,d,J=6.3Hz)、8.17(4H,d,J=6.3Hz)、4.68−4.55(8H,m)、2.19−2.11(4H,m)。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。
次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚3μmの酸化チタン多孔質電極4が形成されたFTO基板が得られた。
上記酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上記のようにして作製した所定のピリジン化合物の5mM水溶液に24時間浸漬させ、酸化チタン電極に色素(有機EC色素)を吸着させた。
その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。
次に、酸性水溶液に1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。
次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、さらに、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
電解質層5形成用溶液は、ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを適用した。
上述のようにして作製した表示電極構造体(有機EC色素が吸着した酸化チタン多孔質電極付きの基板)と、対向電極構造体(アンチモンドープ酸化スズ多孔質電極付きの基板)とを、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて、90℃で貼り合わせた。
この際、後述の工程により、電解液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。
前記電解液を、注入口から注入した。
その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止することにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
上述したエレクトロクロミック装置の製造工程に従い、多孔質電極に担持させる有機EC色素について異なるものを適用し、下記実施例、及び比較例のサンプルセルを作製した。
有機EC色素として、上記式(6)のピリジン化合物を適用して、エレクトロクロミック装置を作製した。
このエレクトロクロミック装置の、表示電極と対向電極の間に、−1.8Vの電圧を印加すると、直ちにマゼンタに発色した。図2に発色時のスペクトルを示す。なお表示変更の応答速度は約150msであり、実用上充分に良好な速度であった。
更にこれらの電極間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。表示変更の応答速度は約70msであった。
この実施例におけるエレクトロクロミック装置の表示電極と対向電極の間に、−1.8Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回印加したところ、100万回電圧印加後においても、初期の状態とスペクトル形状の変化が殆ど確認されなかった。このことから、本発明のエレクトロクロミック装置は、実用上極めて優れた耐久性を有していることが確認された。
表示電極と対向電極の間に−1.8Vの電圧を印加すると、直ちにマゼンタの発色が得られた。
上記式(7)、式(10)の化合物よりなる有機EC色素を用いた場合の発色スペクトルをそれぞれ図3、図4に示した。
また、これらの発色応答速度は、150ms〜170ms(−1.8V)、60ms〜70ms(0.5V)であった。
これらの結果から明らかなように、本発明のエレクトロクロミック装置によれば、吸収波長幅が狭く、鮮やかなマゼンタの発消色を可逆的に行うことができた。
有機EC色素として、下記式(14)に示す、従来公知の有機EC色素を適用して、上述した実施例と同様にエレクトロクロミック装置を作製し、上記実施例と同様の発消色評価を行った。
図5から明らかなように、比較例のエレクトロクロミック装置においてはフルカラー表示に要求される発色は得られないことが確かめられた。
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