JP2011085773A - エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、及び表示素子 - Google Patents
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電子ペーパーは、表示装置が紙のように用いられるところに特徴があるため、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイといった従来の表示装置とは異なった特性が要求される。例えば、反射型表示装置であり、かつ、高い白反射率・高いコントラスト比を有すること、高精細な表示ができること、表示にメモリ効果があること、低電圧でも駆動できること、薄くて軽いこと、安価であること、などの特性が要求される。このうち特に、表示の品質に関わる特性として、紙と同等な白反射率・コントラスト比、さらにカラー表示についての要求度が高い。
さらに、特許文献3,4では、複数の色にそれぞれ着色された粒子を動かすことによってカラー化をおこなう電気泳動素子が開示されているが、これらの方法を用いても原理的には上記したような反射率・コントラストの問題の解決にはならず、高い白反射率と高いコントラスト比を同時に満たすことは出来ない。
電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。このエレクトロクロミズム現象を引き起こすエレクトロクロミック化合物の発色/消色(以下、発消色)を利用した表示装置が、エレクトロクロミック表示装置である。このエレクトロクロミック表示装置については、反射型の表示装置であること、メモリ効果があること、低電圧で駆動できることから、電子ペーパー用途の表示装置技術の有力な候補として、材料開発からデバイス設計に至るまで、幅広く研究開発が行われている。
また、特許文献8,9,10では、スチリル系色素を用いることによりYMC系の発色を可能としているが、発消色の安定性や繰り返し耐久性に問題があった。
(I):下記構造式(1)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物である。
前記表示電極における前記対向電極との対向面に表示層を有し、
該表示層は、少なくとも上記(I)あるいは上記(II)に記載のエレクトロクロミック化合物、または上記(III)に記載のエレクトロクロミック組成物を含むことを特徴とする表示素子である。
本発明に係るエレクトロクロミック化合物は、下記構造式(1)で表されることを特徴とする。
水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としてはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等が挙げられる。トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。
なかでも、(後述する)導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いトリアルコキシシリル基、ホスホン酸基が特に好ましい。
次に、本発明に係る表示素子について説明する。
図1に、本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた一般的な表示素子の構成例を示す。図1(a)及び図1(b)に示されるように、本発明の表示素子10、20は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔をおいて対向して設けられた対向電極2と、両電極1,2(表示電極1、対向電極2)間に配置された電解質3とを備え、該表示電極1の対向電極2側(対向電極2との対向面側)の表面に、少なくとも本発明のエレクトロクロミック化合物5aを含む表示層4aを有する。
対向電極2として、亜鉛等の金属板が用いられる場合、対向電極2が基板を兼ねる。
さらに、対向電極2の材料が、表示層4のエレクトロクロミック組成物が起こす酸化還元反応と逆の逆反応を起こす材料を含む場合、安定した発消色が可能である。すなわち、エレクトロクロミック組成物が酸化により発色する場合は還元反応を起こし、エレクトロクロミック組成物が還元により発色する場合は酸化反応を起こす材料を対向電極2として用いると、エレクトロクロミック組成物を含む表示層4における発消色の反応がより安定となる。
支持塩として、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的に、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、CF3SO3Li、CF3COOLi、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等を用いることができる。
また、溶媒として、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、等が用いられる。
その他、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質に特に限定されるものではないため、ゲル状の電解質や、ポリマー電解質等の固体電解質も用いられる。たとえば、パーフルオロスルホン酸系高分子膜などの固体系などがある。溶液系はイオン伝導度が高いという利点があり、固体系は劣化がなく高耐久性の素子を作製することに適している。
(A)エレクトロクロミック化合物4:前記化学式4の合成
1)中間体4−1の合成
反応フラスコに1−フェニルピロール0.57gとTHF20mlを仕込み、この混合物をドライアイス/アセトン浴中で−70℃以下まで冷却し、ここにN−ブロモスクシンイミド(NBS)1.4gを撹拌下−73℃〜−68℃で徐々に投入した。投入完了後、ドライアイス/アセトン浴を取り除き、反応混合物の液温が−20℃になるまで撹拌を続けた。撹拌を止め、反応混合物を−10℃に設定した冷凍庫に入れ、21時間静置下で反応した。反応終了後、反応混合物を水で希釈し、生成物をヘキサンで抽出、ヘキサンを留去して中間体4−1を1.3g得た。
反応フラスコに中間体4−1を1.3g、4−ピリジンボロン酸1.0g、炭酸ナトリウム1.3g、1,4−ジオキサン15ml、及び水5mlを仕込み、反応フラスコ内をアルゴンで置換した。ここにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)0.28gを加え、80〜90℃で22時間撹拌した。放冷後、反応混合物を水とクロロホルムの混合物中に排出し、活性炭で処理後、クロロホルム層を分取、無水硫酸ナトリウムで乾燥後クロロホルムを留去した。得られた褐色固体をトルエン/ヘキサンで解し、ろ集、乾燥させて中間体4−2 0.34gを得た。このもののGC/MSを測定したところ、分子イオンピークはM=297であった。
反応フラスコに中間体4−2 0.2g、ブロモエチルホスホン酸ジエチル1.0g、1−プロパノール3ml、及び水6mlを仕込み、この混合物を90℃で40時間撹拌した。放冷後、反応混合物を水15mlと酢酸エチル30mlの混合液中に排出し、水層を分取した。この水層を反応フラスコに仕込み、ここに濃塩酸10mlを加えて90℃で23時間撹拌した。放冷後、反応混合物より水を減圧留去し、タール状の残留物をメタノールに溶解、このメタノール溶液を2−プロパノール/エタノール(容量比;2/1)中に撹拌下に滴下して生成物を結晶化させた。これをろ集、2−プロパノールで洗浄、乾燥して前記式4で示される化合物0.15gを得た。
以上の化学式4で表される化合物の合成フローを以下に示す。
まず、30mm×30mmのガラス基板を準備し、その上面の16mm×23mmの領域に、ITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、表示電極1を形成した。この表示電極1の電極端部間のシート抵抗を測定したところ、約200Ωであった。
次に、表示電極1が形成されたガラス基板上に、酸化チタンナノ粒子分散液(昭和タイタニウム社製 SP210)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成し、引き続いて、前記化学式4で示される化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を塗布液としてスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子表面にエレクトロクロミック化合物を吸着させた表示層4を形成した。
一方、先ほどのガラス基板とは別に30mm×30mmのガラス基板を準備し、その上
面の全面に、ITO膜をスパッタ法により約150nmの厚さになるように成膜することによって、対向電極2を形成した。更に、透明導電性薄膜が全面に形成されたガラス基板の上面に、熱硬化性の導電性カーボンインク(十条ケミカル社製 CH10)に酢酸2−エトキシエチルを25wt%添加して調製した溶液をスピンコート法により塗布し、120℃15分間アニール処理を行うことによって、対向電極2を形成した。
表示基板1と対向基板2を75μmのスペーサを介して貼り合わせ、セルを作製した。次に過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%を溶解させた溶液に、一次粒径300nmの酸化チタン粒子(石原産業株式会社製 CR50)を35wt%分散させ、電解質溶液を調製し、セル内に封入することでエレクトロクロミック表示素子を作製した。
特許文献11(特開2007−241238号公報)に記載されている下記化学式11で示される化合物を合成した。
実施例1で作製したエレクトロクロミック表示素子と比較例1で作製したエレクトロクロミック表示素子について、発消色の比較評価を実施した。
発消色の評価は、大塚電子株式会社製分光測色計LCD―5000を用いて拡散光を照射することにより行った。
消色時の反射スペクトルを図4に示す。また、発色時の反射スペクトルを図5に示す。さらに、これらのスペクトルをCIE表色系座標変換した結果を図6、図7に示す。
図4、図5、図6および図7から実施例1のエレクトロクロミック化合物は比較例1の構造より消色時の色づきが少なく、また発色時は明確なマゼンタ発色を示すことが確認できた。
(A)エレクトロクロミック化合物10:前記化学式10の中間体10の合成
1)中間体10−1の合成
反応フラスコに1mol/L塩化亜鉛エーテル溶液10ml、ジエチルアミン0.36g、tert−ブチルアルコール0.35g、及びトルエン7.5mlを仕込み、反応フラスコ内を窒素置換した後、この混合物を室温で1.5時間撹拌した。次いで、ここに2−ブロモ−1−(4−ブロモフェニル)エタノン1.4gと4’−ブロモアセトフェノン1.5gを加え、室温で42時間撹拌した。反応混合物を水に排出し、希硫酸で弱酸性にして析出した結晶をろ集、トルエン、次いでメタノール/水で洗浄後、乾燥して中間体10−1を0.67g得た。
反応フラスコに中間体10−1を1.0g、アニリン0.5g、及び酢酸13mlを仕込み、この混合物を80℃で12時間撹拌した。放冷後、析出した結晶をろ集、アセトンで洗浄、乾燥して中間体10−2を0.92g得た。
反応フラスコに中間体10−2を0.90g、4−ピリジンボロン酸0.56g、炭酸ナトリウム0.63g、1,4−ジオキサン14ml、及び水4mlを仕込み、反応フラスコ内をアルゴンで置換した。ここにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)0.14gを加え、80〜90℃で4時間撹拌した。放冷後、反応混合物を水とクロロホルムの混合物中に排出し、活性炭で処理後、クロロホルム層を分取、無水硫酸ナトリウムで乾燥後クロロホルムを留去した。得られた固体をトルエン/アセトン(容量比;4/1)を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して中間体10を0.32g得た。このもののLC/MSを測定したところ、分子イオンピークはM=450であった。
以上の中間体10の合成フローを以下に示す。
30mm×30mmのFTO付きガラス基板上の一部に、酸化チタンナノ粒子分散液(昭和タイタニウム社製 SP210)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成した。酸化チタン膜の厚さは約1.5μmであった。
3−ブロモプロピルトリクロロシランの0.2wt%トルエン溶液を調製し、上記の酸化チタン膜を塗布したFTO付きガラス基板を30分間浸し、酸化チタン膜表面に3−ブロモプロピルシランを結合させた。前記(A)で合成した前記化学式10の中間体10の1wt%トルエン溶液を調製し、上記の基板を浸漬させ、120℃で2時間還流させることにより中間体10と3−ブロモプロピルシランを反応させた。
実施例1と同様の方法で対向電極およびエレクトロクロミック表示装置を作製した。
作製したエレクトロクロミック表示素子について、実施例1と同様に発消色の評価を実施した。
表示素子の表示電極に負極を、対向電極に正極を繋ぎ、3.0Vの電圧を1秒印加したところ、表示素子はマゼンタに発色した。さらに逆電圧−2.0Vを1秒印加したところ白色にもどった。
実施例1で合成した中間体4−2に二等量の臭化エチル反応させることにより、エレクトロクロミック化合物2を合成した。次に水/2,2,3,3−テトラフロロプロパノール(10wt%)溶液を用意し、エレクトロクロミック化合物2を1wt%溶解してエレクトロクロミック化合物溶液とした。過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%となるように溶解させた電解液に前記エレクトロクロミック化合物溶液を50wt%添加し、30mm×30mmのSnO2導電膜付きガラス基板(AGCファブリテック社)を表示基板と対向基板として75μmのスペーサを介して貼り合わせたセルに封入することでエレクトロクロミック表示素子10を作製した。
作成した表示素子に2.5Vの電圧を2秒印加したところ、表示素子はマゼンタ発色した。さらに逆電圧−1.5Vを1秒印加したところ消色し透明にもどった。
2 対向電極
3 電解質
4a,4b 表示層
5a 有機エレクトロクロミック化合物
5b 酸化還元発色部
5c 吸着基(結合基)
5d スペーサ部
5e 有機エレクトロクロミック組成物
6 白色反射層
10,20,30 表示素子
Claims (4)
- 前記R1及びR2の中の少なくとも一方が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基であることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物。
- 導電性または半導体性ナノ構造体と、該ナノ構造体に結合または吸着されている請求項2に記載のエレクトロクロミック化合物と、を有することを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
- 表示電極と、該表示電極に対向した状態で離間して設けられた対向電極と、前記表示電極と前記対向電極との間に配置された電解質と、を備え、
前記表示電極における前記対向電極との対向面に表示層を有し、
該表示層は、少なくとも請求項1あるいは2に記載のエレクトロクロミック化合物、または請求項3に記載のエレクトロクロミック組成物を含むことを特徴とする表示素子。
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