JP6399535B2 - エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、およびこれを用いた表示素子並びに調光素子 - Google Patents

エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、およびこれを用いた表示素子並びに調光素子 Download PDF

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Description

本発明は、発色時に黒色発色を呈するエレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、および該エレクトロクロミック化合物またはエレクトロクロミック組成物を用いた表示素子および調光素子に関するものである。
近年、紙に替わる電子媒体として、電子ペーパーの開発が盛んに行われている。
電子ペーパーは、表示装置が紙のように用いられるところに特徴があるため、CRTや液晶ディスプレイといった従来の表示装置とは異なった特性が要求される。例えば、反射型表示装置であり、かつ、高い白反射率・高いコントラスト比を有すること、高精細な表示ができること、表示にメモリ効果があること、低電圧でも駆動できること、薄くて軽いこと、安価であること、などの特性が要求される。このうち特に、表示の品質に関わる特性として、紙と同等な白反射率・コントラスト比についての要求度が高い。
これまで、電子ペーパー用途の表示装置として、例えば、反射型液晶を用いる方式、電気泳動を用いる方式、トナー泳動を用いる方式、などが提案されている。その中でも主流なのは電気泳動法であり、現在、製品として市場に出ている電子ペーパーに多く用いられている。しかし、この電気泳動方法における白色反射率は40%程度であり、紙(80%)に比べて著しく低い。
この課題を解決でき、高い白反射率を実現できる方式として、エレクトロクロミック方式がある。電圧を印加することで、その極性に応じて可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。このエレクトロクロミズム現象を引き起こすエレクトロクロミック化合物の発色/消色(以下、発消色)を利用した表示装置が、エレクトロクロミック表示装置である。このエレクトロクロミック表示装置については、反射型の表示装置であること、メモリ効果があること、低電圧で駆動できることから、電子ペーパー用途の表示装置技術の有力な候補として、材料開発からデバイス設計に至るまで、幅広く研究開発が行われている。この方法での白反射率は70%と、ほぼ実際の紙と同等の値を示すことが確認されている。
エレクトロクロミック方式を用いて白黒表示を行うには透明状態と黒色状態を可逆的に色変化できるエレクトロクロミック材料(化合物)が必要である。従来報告されているエレクトロクロミック材料は青色、緑色、イエロー、マゼンタ、シアンといった色を示すものがほとんどであり、黒色を示す材料の報告例はすくない。例えば、特許文献1に記載のエレクトロクロミック化合物は黒色発色しているが、消色状態において少し黄色味があるという課題があった。
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、黒色に発色し、消色時には吸収帯を持たず消色状態が無色であるエレクトロクロミック化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定構造を有するエレクトロクロミック化合物を用いることにより、前記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
即ち、上記課題は、下記一般式(1)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物により解決される。
[式(1)中、X、X、X、X、X、Xは各々独立に水素原子または置換基を有していてもよい一価の基を示し、X〜X6のうち少なくとも3つの基(X)が一般式(a)で表される構造を示す。式(a)中、Y、Y、Y、Yは各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。Aは1価のアニオンを表す。]
本発明によれば、黒色に発色し、消色時には吸収帯を持たず消色状態が無色であるエレクトロクロミック化合物を提供することができる。
本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた表示素子または調光素子の構成例を示す模式図である。 本発明のエレクトロクロミック組成物を用いた別の表示素子の構成例を示す模式図である。 本発明のエレクトロクロミック組成物を用いた別の調光素の構成例を示す模式図である。 実施例1で作製したエレクトロクロミック表示層の消色状態および発色状態における反射スペクトルを示す図である。 実施例1および比較例1で作製したそれぞれのエレクトロクロミック表示層の消色時の反射スペクトルを示す図である。 構造式15のエレクトロクロミック化合物を用いて作製したエレクトロクロミック表示層の消色状態および発色状態における吸収スペクトルを示す図である。 実施例1および実施例6で作製したエレクトロクロミック表示素子の発消色評価(色彩値)結果をa*を横軸にb*を縦軸にプロットした図である。
前述のように本発明のエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とするものである。
[式(1)中、X、X、X、X、X、Xは各々独立に水素原子または置換基を有していてもよい一価の基を示し、X〜X6のうち少なくとも3つの基(X)が一般式(a)で表される構造を示す。式(a)中、Y、Y、Y、Yは各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。Aは1価のアニオンを表す。]
一般式(1)において、X〜XおよびY〜Yで示される置換基を有していてもよい一価の基としては、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、および複素環基から選択される一価の基が挙げられる。
また、一般式(a)において、Rで示される置換基を有していてもよい一価の基としては、各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、およびアリール基から選択される基が挙げられる。一般式(a)中、Aは1価のアニオンを表す。
ここで、置換基を有していてもよい前記カルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノカルボニル基としては、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、モノアリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基等が、前記スルホニル基としては、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノスルホニル基としては、モノアルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、モノアリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基等が、前記アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等がそれぞれ挙げられる。
本発明の化合物の構造の特徴はフェニル基誘導体の中心骨格に4級ピリジニウム塩を3つ以上付与したことである。4級ピリジニウム塩を用いた従来のエレクトロクロミック化合物は4級ピリジニウム塩が2つ付いたジピリジニウム構造であった。この構造では中心の芳香環構造を変えることでイエロー,マゼンタ,シアン,レッド,ブルー,グリーンなど種々の色を発色することができるが,400nm〜750nmの可視域全域に吸収帯が広がったブラックを発色させることは非常に困難である。本発明では、4級ピリジニウム塩を3つ以上付与することで発色状態の吸収帯が広がりブラックを発色(黒色に発色し、消色時には吸収帯を持たず消色状態が無色である)することを見出した。
一般式(a)のX〜Xで示す置換基を有していてもよい一価の基により、エレクトロクロミック化合物の溶媒に対する溶解性を付与することができるので素子作製プロセスが容易になる。一方、これらの基により、耐熱性・耐光性などの安定性が低下しやすいので、好ましくは水素原子、ハロゲン、炭素数6以下の置換基がよい。なお、X〜X6のうち少なくとも3つの基(X)は、一般式(a)で表される構造を有する。
一般式(a)のX〜Xのうち少なくとも3つの基(X)は、一般式(a)で表される構造を有するが、これら一般式(a)中の一価の基Rのうち少なくとも一つの基が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基を有することが好ましい。
水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としては、ホスホン酸基、リン酸基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等のシリル基(またはシラノール基)やカルボキシル基が挙げられる。
トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。なかでも、導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いホスホン酸基またはシリル基(トリアルコキシシリル基、あるいはトリヒドキシシリル基)が特に好ましい。
また、一般式(a)に示すAは1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば特に限定されるものではないが、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )等が好ましい。
本発明のエレクトロクロミック化合物の具体例を下記一般式(6)〜(9)に示すが、本発明のエレクトロクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
前述の構造式のエレクトロクロミック化合物はいずれもブラックの発色(黒色)を呈し、さらに消色時の色づきが少ないものであるが,実際に化合物を大量に作るためには原料が安価であり,合成反応がシンプルで速やかにおこる構造が望ましい。
そこで本発明者らはさらに検討を進めた結果、下記一般式(2)に示すフェニル基誘導体の1,2,4,5位に4級ピリジニウム塩が付与している構造、あるいは下記一般式(3)に示すフェニル基誘導体の1,2,5位に4級ピリジニウム塩が付与している構造が、合成が容易であり、安価に材料を提供できる構造であることを見出した。
[式(2)中、X、Xは各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。Y、Y、Y、Y、Y、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12、Y13、Y14、Y15、Y16は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。R、R、R、Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A、B、C、Dは1価のアニオンを表す。]
一般式(2)において、X〜XおよびY〜Y16で示される一価の基としては、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、および複素環基から選択される一価の基が挙げられ、これら一価の基は置換基を有していてもよい。
また、一般式(2)において、R(R、R、R、R)で示される置換基を有していてもよい一価の基としては、各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、およびアリール基から選択される基が挙げられる。一般式(2)中、Aは1価のアニオンを表す。
ここで、置換基を有していてもよい前記カルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノカルボニル基としては、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、モノアリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基等が、前記スルホニル基としては、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノスルホニル基としては、モノアルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、モノアリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基等が、前記アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が、それぞれ挙げられる。
一般式(2)のX〜XおよびY〜Y16で示す置換基を有していてもよい一価の基により、エレクトロクロミック化合物の溶媒に対する溶解性を付与することができるので素子作製プロセスが容易になる。一方、これらの基により、耐熱性・耐光性などの安定性が低下しやすいので、好ましくは水素原子、ハロゲン、炭素数6以下の置換基がよい。
前記一般式(2)に示すR〜Rのうち少なくとも一つの基が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基を有することが好ましい。
水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としては、ホスホン酸基、リン酸基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等のシリル基(またはシラノール基)やカルボキシル基が挙げられる。
トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。なかでも、導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いホスホン酸基またはシリル基(トリアルコキシシリル基、あるいはトリヒドキシシリル基)が特に好ましい。
また、一般式(2)に示すAは1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば特に限定されるものではないが、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )等が好ましい。
本発明のエレクトロクロミック化合物の具体例を下記一般式(10)〜(14)に示すが、本発明のエレクトロクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
下記に一般式(3)で表されるフェニル基誘導体の1,2,5位に4級ピリジニウム塩が付与している構造を有するエレクトロクロミック化合物を示す。
[式(3)中、X、X、X3は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。Y、Y、Y、Y、Y、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。R、R、Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A、B、Cは1価のアニオンを表す。]
一般式(3)において、X〜XおよびY〜Y12で示される一価の基としては、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、および複素環基から選択される一価の基が挙げられ、これら一価の基は置換基を有していてもよい。
また、一般式(3)において、R〜Rで示される置換基を有していてもよい一価の基としては、各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、およびアリール基から選択される基が挙げられる。一般式(3)中、A−、−、は1価のアニオンを表す。
ここで、置換基を有していてもよい前記カルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノカルボニル基としては、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、モノアリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基等が、前記スルホニル基としては、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノスルホニル基としては、モノアルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、モノアリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基等が、前記アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が、それぞれ挙げられる。
一般式(3)のX〜XおよびY〜Y12で示す置換基を有していてもよい一価の基により、エレクトロクロミック化合物の溶媒に対する溶解性を付与することができるので素子作製プロセスが容易になる。一方、これらの基により、耐熱性・耐光性などの安定性が低下しやすいので、好ましくは水素原子、ハロゲン、炭素数6以下の置換基がよい。
前記一般式(3)に示すR〜Rのうち少なくとも一つの基が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基を有することが好ましい。水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としては、ホスホン酸基、リン酸基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等のシリル基(またはシラノール基)やカルボキシル基が挙げられる。トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。なかでも、導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いホスホン酸基またはシリル基(トリアルコキシシリル基、あるいはトリヒドキシシリル基)が特に好ましい。
また、一般式(3)に示すAは1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば特に限定されるものではないが、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )等が好ましい。
本発明のエレクトロクロミック化合物の具体例を下記一般式(15)〜(24)に示すが、本発明のエレクトロクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
本発明のもう1つの特徴は前述の本発明のブラック発色(黒色発色)エレクトロクロミック化合物にマゼンタ色を発色するエレクトロクロミック化合物が含まれるものである。このようなエレクトロクロミック化合物は、フェニル誘導体骨格に3つ以上の4級ピリジニウム塩が付与されたブラック発色(黒色発色)エレクトロクロミック化合物に、マゼンタを発色するエレクトロクロミック化合物を混合させることによって得ることができる。
フェニル誘導体骨格に3つ以上の4級ピリジニウム塩を付与した構造において、発色体は400nm〜750nmの可視域全域に吸収帯が存在するが、550nm近傍の吸光度が他の波長帯よりも少ない。従って、ほぼブラック発色をするが、わずかに緑色が混在して見えることがある。そこで、この550nm近傍の吸収を補完するために発色状態でマゼンタを発色するエレクトロクロミック化合物を混合することで、よりブラック(黒色)の色彩を向上させることができる。
マゼンタを発色するエレクトロクロミック化合物であれば特にどのような化合物を用いても目的は達成できるが、消色状態が透明無色なこと、容易に合成できる(安価なコスト)こと、耐久性が高いことから下記一般式(4)および一般式(5)に示すエレクトロクロミック化合物を用いることが特に望ましい。
[式(4)中、X〜X12は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。R、Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A−,はそれぞれ1価のアニオンを表す。]
一般式(4)において、X〜X12で示される一価の基としては、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、および複素環基から選択される一価の基が挙げられ、これら一価の基は置換基を有していてもよい。
また、一般式(4)中、R、Rで示される一価の基としては、各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基から選択される官能基を有していてもよい一価の基が挙げられ、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A,Bは1価のアニオンを表す。
ここで、置換基を有していてもよい前記カルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノカルボニル基としては、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、モノアリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基等が、前記スルホニル基としては、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノスルホニル基としては、モノアルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、モノアリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基等が、前記アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が、それぞれ挙げられる。
前記一般式(4)に示すR、Rのうち少なくとも一つの基が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基を有することが好ましい。水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としては、ホスホン酸基、リン酸基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等のシリル基(またはシラノール基)やカルボキシル基が挙げられる。トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。なかでも、導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いホスホン酸基またはシリル基(トリアルコキシシリル基、あるいはトリヒドキシシリル基)が特に好ましい。
また、一般式(4)に示すA、Bは1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば特に限定されるものではないが、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )等が好ましい。
本発明において好ましく用いられる一般式(4)で表されるマゼンタを発色するエレクトロクロミック化合物の具体例を下記一般式(25)〜(31)に示すが、本発明のエレクトロクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
次に、一般式(5)で表されるマゼンタを発色するエレクトロクロミック化合物を下記に示す。
[式(5)中、X〜X14は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。R、Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A−,はそれぞれ1価のアニオンを表す。]
一般式(5)において、X〜X14で示される一価の基としては、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、および複素環基から選択される一価の基が挙げられ、これら一価の基は置換基を有していてもよい。
また、一般式(5)中、R、Rで示される一価の基としては、各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基から選択される官能基を有していてもよい一価の基が挙げられ、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A、Bは1価のアニオンを表す。
ここで、置換基を有していてもよい前記カルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノカルボニル基としては、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、モノアリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基等が、前記スルホニル基としては、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が、置換基を有していてもよい前記アミノスルホニル基としては、モノアルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、モノアリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基等が、前記アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が、それぞれ挙げられる。
前記一般式(5)に示すR、Rのうち少なくとも一つの基が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基を有することが好ましい。水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としては、ホスホン酸基、リン酸基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等のシリル基(またはシラノール基)やカルボキシル基が挙げられる。トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。なかでも、導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いホスホン酸基またはシリル基(トリアルコキシシリル基、あるいはトリヒドキシシリル基)が特に好ましい。
また、前記一般式(5)に示すA、Bは1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば特に限定されるものではないが、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )等が好ましい。
本発明において好ましく用いられる一般式(5)で表されるマゼンタを発色するエレクトロクロミック化合物の具体例を下記一般式(32)〜(36)に示すが、本発明のエレクトロクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
また、本発明に係るエレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物に導電性または半導体性ナノ構造体が結合されてなることを特徴とするものである。
本発明のエレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック表示素子に用いたとき、黒色発色を呈しさらに画像のメモリ性すなわち発色画像保持特性に優れたものとなる。なお、導電性または半導体性ナノ構造体とは、ナノ粒子もしくはナノポーラス構造体等、ナノスケールの凹凸を有する構造体である。
なお、本発明に係るエレクトロクロミック組成物として、本発明のエレクトロクロミック化合物と、マゼンタ色を発色するエレクトロクロミック化合物の少なくとも2種類のエレクトロクロミック化合物が導電性または半導体性ナノ構造体に結合または吸着されてなることが好ましい。
前述のように一般式(1)におけるX〔一般式(a)〕のR[例えば、一般式(2)のR、R、R、R、あるいは一般式(3)のR、R、Rなど]のうち少なくとも一方の基が水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基を有する場合、例えば、本発明のエレクトロクロミック化合物が、結合または吸着構造としてスルホン酸基またはリン酸基あるいはカルボキシル基を有するとき、該エレクトロクロミック化合物は容易に前記ナノ構造体と複合化し、発色画像保持性に優れたエレクトロクロミック組成物となる。
上記スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基はエレクトロクロミック化合物中に複数有していてもよい。また、本発明のエレクトロクロミック化合物が、シリル基またはシラノール基を有するとき、シロキサン結合を介して前記ナノ構造体と結合されてその結合は強固なものとなり、やはり安定なエレクトロクロミック組成物が得られる。ここで言うシロキサン結合とは、ケイ素原子および酸素原子を介した化学結合である。
また、該エレクトロクロミック組成物は、前記エレクトロクロミック化合物と前記ナノ構造体がシロキサン結合を介して結合した構造をしていればよく、特にその結合方法・形態は限定されない。
前記導電性または半導体性ナノ構造体を構成する材質としては、透明性や導電性の面から金属酸化物が好ましい。このような金属酸化物の例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物が用いられる。また、これらの金属酸化物は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合され用いられてもよい。
電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性を鑑みるに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステン等の金属酸化物から選ばれる一種、もしくはそれらの混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。とりわけ、酸化チタンが用いられたとき、より発消色の応答速度に優れた多色カラー表示が可能である。
前記金属酸化物の形状としては、平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物微粒子であることが好ましい。粒子径が小さいほど金属酸化物に対する光の透過率が向上し、単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」という。)が大きい形状が用いられる。大きな比表面積を有することで、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色カラー表示が可能である。ナノ構造の比表面積は、特に限定されるものではないが、例えば、100m/g以上とすることができる。
次に、本発明に係る表示素子について説明する。
本発明の表示素子は、表示電極と、該表示電極に対して間隔をおいて対向して設けた対向電極と、両電極間に配置された電解質とを備え、該表示電極の対向電極側の表面にエレクトロクロミック化合物を含む表示層を有することを特徴とするものである。
図1の模式図に、本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた一般的な表示素子または調光素子の構成例を示す。
図1に示すように、本発明の表示素子または調光素子10は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔をおいて対向して設けられた対向電極2と、両電極(表示電極1と対向電極2)間に配置し,少なくとも本発明の記載のエレクトロクロミック化合物(有機エレクトロクロミック化合物)4を溶解させた電解質3とを備える。本表示素子ではエレクトロクロミック化合物は電極表面でのみ酸化還元反応により発消色する。
図2の模式図に本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた別の表示素子の構成例を示す。
本発明の表示素子20は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔をおいて対向して設けた対向電極2と、両電極(表示電極1と対向電極2)間に配置された電解質3とを備え、該表示電極1の対向電極2側の表面に、少なくとも本発明のエレクトロクロミック組成物4aを含む表示層5を有する。また、対向電極2の表示電極1側に、白色粒子からなる白色反射層6を有する。
本発明のエレクトロクロミック組成物中のエレクトロクロミック化合物は、分子構造中に水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基(吸着基)、いわゆる、結合基を有しているものを用いることができるので、前記結合基が導電性または半導体性ナノ構造体に結合して、エレクトロクロミック組成物を構成することができる。そして、該エレクトロクロミック組成物が表示電極1上に層状に設けられて、表示層5が形成されている。
以下、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示素子に用いられる構成材料について図1、図2を参照して説明する。
図1、2において、表示電極1を構成する材料としては、透明導電基板を用いることが望ましい。透明導電基板としてはガラス、あるいはプラスチックフィルムに透明導電薄膜をコーティングしたものが望ましい。
透明導電薄膜材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光の透過性を確保する必要があるため、透明且つ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、発色させる色の視認性をより高めることができる。
透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(略:ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(略:FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(略:ATO)等の無機材料を用いることができるが、特に、インジウム酸化物(以下、In酸化物という)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物という)、または亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物という)の何れか1つを含む無機材料であることが好ましい。In酸化物、Sn酸化物およびZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOである。
表示電極1を設ける表示基板(図1、図2の最上層:符号は不表示)を構成する材料としては、ガラスあるいはプラスチック等が挙げられる。表示基板として、プラスチックフィルムを用いれば軽量でフレキシブルな表示素子を作製することができる。
対向電極2としては、ITO、FTO、酸化亜鉛等の透明導電膜、あるいは亜鉛、白金等の導電性金属膜、さらにはカーボンなどが用いられる。対向電極2も一般的には対向基板(図1、図2の最下層:符号は不表示)上に形成する。対向電極基板もガラス、あるいはプラスチックフィルムが望ましい。対向電極2として、亜鉛等の金属板が用いられる場合、対向電極2が基板を兼ねる。
さらに、対向電極2を構成する材料が、表示層5のエレクトロクロミック組成物が起こす酸化還元反応と逆の逆反応を起こす材料を含む場合、安定した発消色が可能である。すなわち、エレクトロクロミック組成物が酸化により発色する場合は還元反応を起こし、エレクトロクロミック組成物が還元により発色する場合は酸化反応を起こす材料を対向電極2として用いると、エレクトロクロミック組成物を含む表示層5における発消色の反応がより安定となる。
電解質3を構成する材料としては、一般的に、支持塩を溶媒に溶解させたものが用いられる。支持塩として、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的な例としては、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、CFSOLi、CFCOOLi、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等を用いることができる。また、溶媒として、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、が用いられる。
その他、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質に特に限定されるものではないため、ゲル状の電解質や、ポリマー電解質等の固体電解質も用いられる。例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子膜などの固体系などがある。溶液系はイオン伝導度が高いという利点があり、固体系は劣化がなく高耐久性の素子を作製することに適している。
また、本発明の表示素子を反射型表示素子として用いる場合、図2に示すように、表示電極1と対向電極2の間に白色反射層6を設けることが望ましい。白色反射層6としては、白色顔料粒子を樹脂に分散させ対向電極2上に塗布することが最も簡便な作製方法である。
白色顔料微粒子としては、一般的な金属酸化物からなる粒子が適用でき、具体的には酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化セシウム、酸化イットリウムなどが挙げられる。また、ポリマー電解質に白色顔料粒子を混合することによって、白色反射層を兼ねることもできる。
表示素子10、20の駆動方法としては、任意の電圧、電流を印加することができればどのような方法を用いても構わない。パッシブ駆動方法を用いれば安価な表示素子を作製することができる。また、アクティブ駆動方法を用いれば高精細、かつ高速な表示をおこなうことができる。対向基板上にアクティブ駆動素子を設けることで容易にアクティブ駆動ができる。
本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた表示素子または調光素子の構成例を示す
図3に、本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた調光素子の構成例を示す。図3に示すように、本発明の調光素子30は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔をおいて対向して設けられた対向電極2と、両電極(表示電極1と対向電極2)間に配置し,少なくとも本発明の記載のエレクトロクロミック化合物(有機エレクトロクロミック化合物)4を溶解させた電解質3とを備える。本表示素子ではエレクトロクロミック化合物は電極表面でのみ酸化還元反応により発消色する。調光素子では、素子全体の透明度が特に重要である。なお、図1に示す構成例も同様に本発明の調光素子として用いることができる。
本発明の調光素子30は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔をおいて対向して設けた対向電極2と、両電極(表示電極1と対向電極2)間に配置された電解質3とを備え、該表示電極1の対向電極2側の表面に、少なくとも本発明のエレクトロクロミック組成物4aを含む表示層5を有する。
本発明のエレクトロクロミック組成物中のエレクトロクロミック化合物は、分子構造中に水酸基に対して直接的または間接的に結合可能な官能基(吸着基)、いわゆる、結合基を有しているものを用いることができるので、前記結合基が導電性または半導体性ナノ構造体に結合して、エレクトロクロミック組成物を構成することができる。そして、該エレクトロクロミック組成物が表示電極1上に層状に設けられて、表示層5が形成されている。
以下、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック調光素子30に用いられる構成材料について説明する。
表示電極1を構成する材料としては、透明導電基板を用いる必要がある。透明導電基板としてはガラス、あるいはプラスチックフィルムに透明導電薄膜をコーティングしたものが望ましい。
透明導電薄膜材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光の透過性を確保する必要があるため、透明且つ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、発色させる色の視認性をより高めることができる。
透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(略:ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(略:FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(略:ATO)等の無機材料を用いることができるが、特に、インジウム酸化物(以下、In酸化物という)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物という)、または亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物という)の何れか1つを含む無機材料であることが好ましい。In酸化物、Sn酸化物およびZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOである。
表示電極1を設ける表示基板(符号は不表示)を構成する材料としては、ガラスあるいはプラスチック等が挙げられる。表示基板として、プラスチックフィルムを用いれば軽量でフレキシブルな表示素子を作製することができる。
対向電極2の場合にも、表示電極1と同様に透明導電基板を用いる必要がある。透明導電基板としてはガラス、あるいはプラスチックフィルムに透明導電薄膜をコーティングしたものが望ましい。
透明導電薄膜材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光の透過性を確保する必要があるため、透明且つ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、発色させる色の視認性をより高めることができる。
透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(略:ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(略:FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(略:ATO)等の無機材料を用いることができるが、特に、インジウム酸化物(以下、In酸化物という)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物という)、または亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物という)の何れか1つを含む無機材料であることが好ましい。In酸化物、Sn酸化物およびZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOである。
対向電極2を設ける表示基板(符号は不表示)を構成する材料としては、表示電極1同様にガラスあるいはプラスチック等が挙げられる。表示基板として、プラスチックフィルムを用いれば軽量でフレキシブルな表示素子を作製することができる。
さらに、対向電極2を構成する材料が、表示層のエレクトロクロミック組成物が起こす酸化還元反応と逆の反応を起こす材料を含む場合、安定した発消色が可能である。すなわち、エレクトロクロミック組成物が酸化により発色する場合は還元反応を起こし、エレクトロクロミック組成物が還元により発色する場合は酸化反応を起こす材料を対向電極2として用いると、エレクトロクロミック組成物を含む表示層5における発消色の反応がより安定となる。
電解質3を構成する材料としては、一般的に、支持塩を溶媒に溶解させたものが用いられる。調光素子の場合、特に、電解質3は無色透明である必要がある。
支持塩として、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的な例としては、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、CFSOLi、CFCOOLi、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等を用いることができる。
また、溶媒として、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、が用いられる。
その他、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質に特に限定されるものではないため、ゲル状の電解質や、ポリマー電解質等の固体電解質も用いられる。例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子膜などの固体系などがある。溶液系はイオン伝導度が高いという利点があり、固体系は劣化がなく高耐久性の素子を作製することに適している。
調光素子30の駆動方法としては、任意の電圧、電流を印加することができればどのような方法を用いても構わない。パッシブ駆動方法を用いれば安価な表示素子を作製することができる。また、アクティブ駆動方法を用いれば高精細、かつ高速な表示をおこなうことができる。対向基板上にアクティブ駆動素子を設けることで容易にアクティブ駆動ができる。
以下、実施例にて本発明のエレクトロクロミック化合物およびエレクトロクロミック組成物、またそれらを用いた表示素子について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<エレクトロクロミック化合物[構造式(10)]の合成>
〈a〉中間体(10−1)の合成
下記反応式(A)に則って中間体(10−1)を合成した。すなわち、100ml三つ口フラスコに、1,2,4,5-テトラブロモベンゼン
0.5g(1.29mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン
2.63g(12.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.165g(0.30mmol)、トリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボラート0.159g(0.30mmol)を加え、アルゴンガス置換した後、アルゴンガスにて脱気した1,4−ジオキサン30mlおよび1.27M-リン酸三カリウム水溶液11mlを順次加え、105℃で17時間還流した後、反応溶液を室温に戻してから、クロロホルムおよびを飽和食塩水加えた。この溶液を分液ロートに移し、有機層を飽和食塩水洗浄した後、この有機層に乾燥剤として硫酸マグネシウムを加え室温にて1時間撹拌して脱水したのち、次いで、パラジウムスカベンジャーシリカゲル(アルドリッチ社製)を1g加え室温にて1時間撹拌し、有機層中の残留パラジウムを除去した。上記乾燥剤およびシリカゲルを濾別した後、溶媒を減圧留去した。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/エタノール=95/5)により精製し、目的物を得た(収量0.30g、収率61%)。
〈b〉エレクトロクロミック化合物[構造式(10)]の合成
下記反応式(B)に則って構造式(10)で示されるエレクトロクロミック化合物を合成した。すなわち、25ml三つ口フラスコに、中間体(10−1)
0.3g(0.78mmol)、4−ブロモメチルベンジルホスホン酸 0.92g(3.5mmol)、ジメチルホルムアミド 15mlを加え、90℃で7時間反応させた。室温に戻した後、この溶液を2−プロパノールに排出し、次いで、得られた固形分を2−プロパノール中に分散させた後、回収し、2日間減圧乾燥して目的物を得た(収量0.81g、収率88%)。
[実施例2]
〔エレクトロクロミック表示素子の作製〕
図2に示す構成に準じてエレクトロクロミック表示素子を作製した。但し、白色反射層は除く構成とした。
(a)表示電極およびエレクトロクロミック表示層の形成
まず、25mm×30mmのFTO導電膜付きガラス基板(AGCファブリテック社製)を準備し、その上面の19mm×15mmの領域に、酸化チタンナノ粒子分散液(昭和タイタニウム社製:SP210)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成した。この酸化チタン粒子膜に、前記構造式(10)で示されるエレクトロクロミック化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を塗布液に用いてスピンコート法により塗布した後、120℃で10分間アニール処理を行った。この処理により、酸化チタン粒子表面に構造式10のエレクトロクロミック化合物を吸着させた表示層5(図2参照)を形成した。なお、FTO導電膜は表示電極1に相当する。
(b)対向電極の形成
一方、前記ガラス基板とは別に25mm×30mmのITO導電膜付きガラス基板(ジオマテック社製)を準備し、対向基板とした。なお、ITO導電膜は対向電極2に相当する。
(c)エレクトロクロミック表示素子の作製
表示層5を形成したFTO導電膜付きガラス基板(表示基板)とITO導電膜付きガラス基板(対向基板)を75μmのスペーサを介して貼り合わせ、セルを作製した。
次に、過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%を溶解させた溶液に、一次粒径300nmの酸化チタン粒子(石原産業株式会社製:CR50)を35wt%分散させ、電解質溶液を調製し、これをセル内に封入することでエレクトロクロミック表示素子を作製した。
[比較例1]
特許文献1(特開2011−102287号公報)に記載されている下記構造式(37)で示される表されるエレクトロクロミック化合物を合成した。
得られたエレクトロクロミック化合物を用いたほかは実施例1の(a)〜(c)と全く同じ方法で表示電極およびエレクトロクロミック表示層を形成し、エレクトロクロミック表示素子を作製した。
[実施例3]
〈実施例1および比較例1と同様に作製したエレクトロクロミック表示層の発色状態の評価〉
石英セルに実施例1で作製したエレクトロクロミック表示層を形成した表示電極を各々入れ、対極として白金電極、参照電極としてAg/Ag+電極(ビー・エー・エス株式会社 RE−7)を用い、過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに0.1Mを溶解させた電解液でセル内を満たした。
この石英セルに重水素タングステンハロゲン光(オーシャンオプティクス社:DH−2000)を照射し、透過した光をスペクトロメータ(オーシャンオプティクス社:USB4000)で検出し、吸収スペクトルを測定した。消色状態および発色状態における吸収スペクトルを図4に示す。電圧印加前の消色状態では400nm〜700nmの可視域全体で吸収がなく透明であった。ポテンショスタット(ビー・エー・エス株式会社:ALS−660C)を用いて−1.5V電圧印加したところ、黒色発色を示した。
実施例1のエレクトロクロミック表示層と比較例1のエレクトロクロミック表示層との発色状態での吸収スペクトルの比較を図5に示す。比較例1は消色状態でも全波長に渡りわずかな吸収が見られ、実施例1のエレクトロクロミック化合物より消色体に色づきがあった。
[実施例4]
<エレクトロクロミック化合物[構造式(15)]の合成>
〈a〉中間体(15−1)の合成
下記反応式(C)に則って中間体(15−1)を合成した。すなわち、100ml三つ口フラスコに、1,2,5-トリブロモベンゼン
0.5g(1.60mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン 2.63g(12.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.165g(0.30mmol)、トリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボラート0.159g(0.30mmol)を加え、アルゴンガス置換した後、アルゴンガスにて脱気した1,4−ジオキサン30mlおよび1.27M-リン酸三カリウム水溶液11mlを順次加え、105℃で12時間還流した後、反応溶液を室温に戻してから、クロロホルムおよびを飽和食塩水加えた。この溶液を分液ロートに移し、有機層を飽和食塩水洗浄した後、この有機層に乾燥剤として硫酸マグネシウムを加え室温にて1時間撹拌して脱水したのち、次いで、パラジウムスカベンジャーシリカゲル(アルドリッチ社製)を1g加え室温にて1時間撹拌し、有機層中の残留パラジウムを除去した。上記乾燥剤およびシリカゲルを濾別した後、溶媒を減圧留去した。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/エタノール=95/5)により精製し、目的物を得た(収量0.36g、収率74%)。
〈b〉エレクトロクロミック化合物[構造式(15)]の合成
下記反応式(D)に則って構造式(15)で示されるエレクトロクロミック化合物を合成した。すなわち、25ml三つ口フラスコに、中間体(15−1) 0.3g(0.97mmol)、4−ブロモメチルベンジルホスホン酸 0.92g(3.5mmol)、ジメチルホルムアミド
15mlを加え、90℃で5時間反応させた。室温に戻した後、この溶液を2−プロパノールに排出し、次いで、得られた固形分を2−プロパノール中に分散させた後、回収し、2日間減圧乾燥して目的物を得た(収量0.98g、収率92%)。
[実施例5]
〈作製したエレクトロクロミック表示層の発色状態の評価〉
実施例1と同様に構造式15のエレクトロクロミック化合物を用いて表示層を作製した。
石英セルに作製したエレクトロクロミック表示層を形成した表示電極を各々入れ、対極として白金電極、参照電極としてAg/Ag+電極(ビー・エー・エス株式会社:RE−7)を用い、過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに0.1Mを溶解させた電解液でセル内を満たした。この石英セルに重水素タングステンハロゲン光(オーシャンオプティクス社:DH−2000)を照射し、透過した光をスペクトロメータ(オーシャンオプティクス社:USB4000)で検出し、吸収スペクトルを測定した。消色状態および発色状態における吸収スペクトルを図6に示す。電圧印加前の消色状態では400nm〜700nmの可視域全体で吸収がなく透明であった。ポテンショスタット(ビー・エー・エス株式会社:ALS−660C)を用いて−1.5V電圧印加したところ、黒色発色を示した。
[実施例6]
下記構造式(27)で示されるエレクトロクロミック化合物を用意した。なお、構造式(27)で示されるエレクトロクロミック化合物はマゼンタ色を発色する化合物である。
上記構造式(27)で示されるエレクトロクロミック化合物は従来公知の方法により合成することができ、例えば、下記反応式(E)に則って合成することができる。
実施例1で用いた構造式(10)で示されるエレクトロクロミック化合物27mgと構造式(27)で示されるエレクトロクロミック化合物3mgを2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液1gに溶解させ塗布液を調製した。調製した塗布液を用いて実施例1と同様の方法でエレクトロクロミック素子を作製した。
[実施例7]
〈実施例1および実施例6で作製したエレクトロクロミック表示素子の発消色評価〉
実施例1と実施例6で作製したエレクトロクロミック表示素子について、発消色の比較評価を実施した。発消色の評価は、大塚電子株式会社製分光測色装置MCPD7700を用いて拡散光を照射することで行った。色彩値はCIE L*a*b*の色空間で評価し、a* vs b*をプロットした。
電圧印加後の発色状態において、実施例1、実施例6のエレクトロクロミック表示素子ともにa* vs b*プロットの原点に近く、色彩の良いブラック発色を示したが、特に実施例6の色彩は実施例1よりもさらに色彩が良好であった。図7にa* vs b*プロットを示す。
[実施例8]
〔エレクトロクロミック調光素子の作製〕
図3に示す構成に準じてエレクトロクロミック調光素子を作製した。
(a)表示電極およびエレクトロクロミック表示層の形成
まず、25mm×30mmのFTO導電膜付きガラス基板(AGCファブリテック製社)を準備し、その上面の19mm×15mmの領域に、酸化チタンナノ粒子分散液(昭和タイタニウム社製 SP210)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成した。
この酸化チタン粒子膜に、前記構造式(10)で示されるエレクトロクロミック化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を塗布液に用いてスピンコート法により塗布した後、120℃で10分間アニール処理を行った。この処理により、酸化チタン粒子表面に構造式10のエレクトロクロミック化合物を吸着させた表示層5(図3参照)を形成した。なお、FTO導電膜は表示電極1に相当する。
(b)対向電極の形成
一方、前記ガラス基板とは別に25mm×30mmのITO導電膜付きガラス基板(ジオマテック社製)を準備し、対向基板とした。なお、ITO導電膜は対向電極2に相当する。
(c)エレクトロクロミック調光素子の作製
表示層5を形成したFTO導電膜付きガラス基板(表示基板)とITO導電膜付きガラス基板(対向基板)を75μmのスペーサを介して貼り合わせ、セルを作製した。
次に、過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%を溶解させた電解質溶液を調製し、セル内に封入することでエレクトロクロミック調光素子を作製した。
[実施例9]
〔実施例8で作製した調光素子の透過性評価〕
実施例8で作製した調光素子に重水素タングステンハロゲン光(オーシャンオプティクス社:DH−2000)を照射し、透過した光をスペクトロメータ(オーシャンオプティクス社:USB4000)で検出し、透過スペクトルを測定した。
電圧印加前の消色状態では400nm〜700nmの可視域全体で吸収がなく透明であった。600nmの透過率は70%を示した。この調光素子に−3.0Vで2秒間、電圧印加したところ、黒色発色を示し、600nmにおける透過率は35%にまで減少していることが確認できた。この結果より、前記構造式(10)で示されるエレクトロクロミック化合物を用いることにより、高コントラストな調光素子ができた。
上記実施例1〜実施例9の結果から、本発明の目的とする黒色に発色し、消色時には吸収帯を持たず消色状態が無色であるエレクトロクロミック化合物が提供されると共に、当該エレクトロクロミック化合物を用いたエレクトロクロミック組成物、表示素子および調光素子が提供可能であることが確認された。
本発明のエレクトロクロミック化合物、またはエレクトロクロミック化合物が導電性または半導体性ナノ構造体に結合または吸着されてなるエレクトロクロミック組成物を表示層に有する表示素子あるいは調光素子は、電界印加により良好な発消色の応答性を示し、メモリ性の維持にも優れている。
すなわち、本発明のエレクトロクロミック化合物は、フルカラー化の原色の一つとして有用であり、これを用いた表示素子は、例えば、書き換えが可能なペーパーライクな装置技術として重要である。
(図1〜図3の符号)
1 表示電極
2 対向電極
3 電界質
4 エレクトロクロミック化合物
4a エレクトロクロミック組成物
5 表示層
6 白色反射層
特開2011−102287号公報

Claims (7)

  1. 下記一般式(2)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
    [式(2)中、X、Xは各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。、Y、Y、Y、Y、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12、Y13、Y14、Y15、Y16は各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。、R、R、Rは各々独立にホスホン酸基又はカルボン酸基を有していてもよいアルキル基又はアラルキル基を示す。、B、C、Dは1価のアニオンを表す。]
  2. 下記一般式(3)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
    [式(3)中、X、X、X3は各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。、Y、Y、Y、Y、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11、Y12は各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。、R、Rは各々独立にホスホン酸基又はカルボン酸基を有していてもよいアルキル基又はアラルキル基を示す。、B、Cは1価のアニオンを表す。]
  3. 請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック化合物とマゼンタ色を発色するエレクトロクロミック化合物とを含んでなることを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
  4. 前記マゼンタ色を発色するエレクトロクロミック化合物が下記一般式(4)または一般式(5)で表されることを特徴とする請求項に記載のエレクトロクロミック組成物。
    [式(4)中、X〜X12は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。R、Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A、Bはそれぞれ1価のアニオンを表す。]
    [式(5)中、X〜X14は各々独立に水素原子または一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。R、Rは各々独立に官能基を有していてもよい一価の基を示し、これら一価の基は置換基を有していてもよい。A、Bはそれぞれ1価のアニオンを表す。]
  5. 請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック化合物あるいは請求項3又は4に記載のエレクトロクロミック組成物中に記載のエレクトロクロミック化合物と、導電性または半導体性ナノ構造体が結合または吸着されてなることを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
  6. 表示電極と、該表示電極に対して間隔をおいて対向して設けた対向電極と、両電極間に配置された電解質とを備え、該表示電極の対向電極側の表面に、少なくとも請求項1乃至5のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物またはエレクトロクロミック組成物を含む表示層を有することを特徴とする表示素子。
  7. 透明な表示電極と、該表示電極に対して間隔をおいて対向して設けた透明な対向電極と、両電極間に配置された透明な電解質とを備え、該表示電極の対向電極側の表面に、少なくとも請求項1乃至5のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物またはエレクトロクロミック組成物を有することを特徴とする調光素子。
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