JP5949012B2 - エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及び表示素子 - Google Patents

エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及び表示素子 Download PDF

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本発明は、発色時にマゼンタ発色を呈するエレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、及び該エレクトロクロミック化合物又はエレクトロクロミック組成物を用いた表示素子に関するものである。
近年、紙に替わる電子媒体として、電子ペーパーの開発が盛んに行われている。電子ペーパーは、表示装置が紙のように用いられるところに特徴があるため、CRTや液晶ディスプレイといった従来の表示装置とは異なった特性が要求される。例えば、反射型表示装置であり、かつ、高い白反射率・高いコントラスト比を有すること、高精細な表示ができること、表示にメモリ効果があること、低電圧でも駆動できること、薄くて軽いこと、安価であること、などの特性が要求される。このうち特に、表示の品質に関わる特性として、紙と同等な白反射率・コントラスト比、さらにカラー表示についての要求度が高い。
これまで、電子ペーパー用途の表示装置として、例えば、反射型液晶を用いる方式、電気泳動を用いる方式、トナー泳動を用いる方式、などが提案されている。しかしながら、上記のいずれの方式も白反射率・コントラスト比を確保しながら多色表示を行うことは大変困難である。一般に多色カラー表示を行うためには、カラーフィルタを設けるが、カラーフィルタを設けると、カラーフィルタ自身が光を吸収し、反射率が低下する。さらに、カラーフィルタは、一画素をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)に3分割するため、表示装置の反射率が低下し、それに伴ってコントラスト比が低下する。白反射率・コントラスト比が大幅に低下した場合は、視認性が非常に悪くなり、電子ペーパーとして用いることが困難である。
特許文献1、2では、電気泳動素子にカラーフィルタを形成した反射型カラー表示媒体が開示されているが、低い白反射率、低いコントラスト比の表示媒体にカラーフィルタを形成しても良好な画質が得られないことは明白である。さらに、特許文献3、4では、複数の色にそれぞれ着色された粒子を動かすことによってカラー化を行う電気泳動素子が開示されているが、これらの方法を用いても原理的には上記の課題の解決にはならず、高い白反射率と高いコントラスト比を同時に満たすことはできない。
一方、上記のようなカラーフィルタを設けず、反射型の表示装置を実現するための有望な技術として、エレクトロクロミック現象を用いる方式がある。電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。このエレクトロクロミズム現象を引き起こすエレクトロクロミック化合物の発色/消色(以下、発消色)を利用した表示装置が、エレクトロクロミック表示装置である。このエレクトロクロミック表示装置については、反射型の表示装置であること、メモリ効果があること、低電圧で駆動できることから、電子ペーパー用途の表示装置技術の有力な候補として、材料開発からデバイス設計に至るまで、幅広く研究開発が行われている。ただし、エレクトロクロミック表示装置には、酸化還元反応を利用して発消色を行う原理ゆえに、発消色の応答速度が遅いという欠点がある。
特許文献5では、エレクトロクロミック化合物を電極近傍に固定させることによって発消色の応答速度の改善を図った例が記載されている。特許文献5の記載によれば、従来数10秒程度だった発消色に要する時間は、無色から青色への発色時間、青色から無色への消色時間は、ともに1秒程度まで向上している。ただし、これで十分というわけではなく、エレクトロクロミック表示装置の研究開発に際しては、さらなる発消色の応答速度の向上が必要である。
エレクトロクロミック表示装置は、エレクトロクロミック化合物の構造によって様々な色を発色できるため、多色カラー表示装置として期待されている。特に、無色とカラー発色状態を可逆的に変化するため、積層多色構成が実現できる。積層構成でのカラー表示では従来技術のように一画素をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)に3分割する必要がないため、表示装置の反射率、コントラスト比が低下しない。
このようなエレクトロクロミック表示装置を利用した多色表示装置には、いくつか公知になっている例がある。例えば、特許文献6では、複数種のエレクトロクロミック化合物の微粒子を積層したエレクトロクロミック化合物を用いた多色表示装置が開示されている。該文献では、発色を示す電圧の異なる複数の機能性官能基を有する高分子化合物であるエレクトロクロミック化合物を複数積層し、多色表示エレクトロクロミック化合物とした多色表示装置の例が記載されている。
また、特許文献7では、電極上に多層にエレクトロクロミック層を形成し、その発色に必要な電圧値や電流値の差を利用して多色を発色させる表示装置が開示されている。該文献では、異なる色を発色し、且つ発色する閾値電圧及び発色に必要な必要電荷量が異なる複数のエレクトロクロミック化合物を、積層又は混合して形成した表示層を有する多色表示装置の例が記載されている。
更に、特許文献8では、一対の透明電極の間にエレクトロクロミック層及び電解質を挟持した構造単位を複数積層してなる多色表示装置の例が記載されている。また、特許文献9では、特許文献8に記載された構造単位を用いてパッシブマトリクスパネル及びアクティブマトリクスパネルを構成し、RGB3色に対応する多色表示装置の例が記載されている。
しかし、特許文献5、6、7では、スチリル系色素は良好なイエロー、マゼンタ、シアン発色するが、発消色の安定性や繰り返し耐久性に問題があった。特許文献8、9、10に例示しているビオロゲン系有機エレクトロクロミック化合物は安定性や繰り返し耐久性が高い化合物であるが、青色、緑色といった色を発色するものであり、フルカラー化に必要なイエロー、マゼンタ、シアンの3原色を発色するものではない。
一方で、特許文献11に例示している2つのピリジン環の間にフラン環、チオフェン環、セレノフェン環、アルキルピロール環を導入した構造は、良好なマゼンタを発色することを示している。しかしながら、この構造は消色状態においてイエローに着色しているため、消色状態における色づきが大きいという課題がある。特許文献12に例示しているフェニルピロール環を導入した構造は、良好なマゼンタを発色することを示し、さらに消色状態のイエローも大幅に低減している。しなしながら、まだ消色状態の色づきはわずかに残っている。
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、発色時にシャープな光吸収スペクトル特性を示し、マゼンタ系に発色を呈し、且つ消色時の色づきが少ないエレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、及び該エレクトロクロミック化合物又はエレクトロクロミック組成物を用いた表示素子を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、少なくとも特定の構造を有するエレクトロクロミック化合物により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決するための本発明に係るエレクトロクロミック化合物及びエレクトロクロミック組成物、並びに該エレクトロクロミック化合物またはエレクトロクロミック組成物を用いた表示素子は、具体的には下記[1]〜[4]に記載の技術的特徴を有する。
[1]下記一般式(I)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物である。
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9及びX10は、それぞれ独立に水素原子又は一価の置換基を表し同一でも異なっていてもよく、L及びLはそれぞれ独立に一価の置換基を表し同一でも異なっていてもよく、A及びBはそれぞれ独立に一価のアニオンを表し同一でも異なっていてもよい。)
[2]前記L及びLの中の少なくとも一方が水酸基に対して直接的又は間接的に結合可能な官能基を有し、
前記水酸基に対して直接的又は間接的に結合可能な官能基が、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基及びモノアルコキシシリル基から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[1]に記載のエレクトロクロミック化合物である。
[3]導電性又は半導体性ナノ構造体と、該ナノ構造体に結合又は吸着されている上記[1]又は[2]に記載のエレクトロクロミック化合物と、を有することを特徴とするエレクトロクロミック組成物である。
[4]表示電極と、該表示電極に対向した状態で離間して設けられた対向電極と、前記表示電極と前記対向電極との間に配置された電解質と、を備え、
前記表示電極における前記対向電極との対向面に表示層を有し、
該表示層は、少なくとも上記[1]あるいは上記[2]に記載のエレクトロクロミック化合物、又は上記[3]に記載のエレクトロクロミック組成物を含むことを特徴とする表示素子である。
本発明によれば、発色時にシャープな光吸収スペクトル特性を示し、マゼンタ系発色を呈し、更に消色時の色づきが少ないエレクトロクロミック化合物あるいはエレクトロクロミック組成物を得ることができる。また、本発明のエレクトロクロミック化合物又はエレクトロクロミック組成物を用いるので、フルカラー表示が可能な表示素子を提供することができる。
本発明に係るエレクトロクロミック化合物を用いた表示素子の構成例を示す概略図[エレクトロクロミック化合物が吸着基を有しない場合(a)、有する場合(b)]である。 図1の吸着基を有するエレクトロクロミック化合物の構成を示す概略模式図である。 本発明に係るエレクトロクロミック組成物を用いた一般的な表示素子の構成例を示す概略図である。 実施例2で作製したエレクトロクロミック表示素子の発色時および消色時の反射スペクトルを示すグラフである。 実施例2で作製したエレクトロクロミック表示素子の発色時及び消色時の吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例2及び比較例2で作製したエレクトロクロミック表示層のそれぞれの電圧印加前における吸収スペクトルを示すグラフである。
<エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物>
本発明のエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(I)で表されることを特徴とするものである。
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9及びX10は、それぞれ独立に水素原子又は一価の置換基を表し同一でも異なっていてもよく、L及びLはそれぞれ独立に一価の置換基を表し同一でも異なっていてもよく、A及びBはそれぞれ独立に一価のアニオンを表し同一でも異なっていてもよい。)
前記一般式(I)において、X〜X10の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。
〜X10で表される基により、エレクトロクロミック化合物の溶媒に対する溶解性を付与することができるので素子作製プロセスが容易になる。また、発色スペクトル(カラー)の調整が可能になる。一方、これらの基により、耐熱性・耐光性などの安定性が低下しやすいので、好ましくは水素原子、ハロゲン、炭素数6以下の置換基がよい。
及びLのそれぞれの具体例としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基などの一価の基(本発明においては「一価の置換基」と呼称する。)が挙げられる。また、L及びLの中の少なくとも一方が水酸基に対して直接的又は間接的に結合可能な官能基を有する一価の基(一価の置換基)であってもよい。
水酸基に対して直接的又は間接的に結合可能な官能基としては、水酸基に対して水素結合、吸着あるいは化学反応により直接的あるいは間接的に結合可能な官能基であればよく、その構造は限定されるものではないが、好ましい例としてはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等が挙げられる。トリアルコキシシリル基としては、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基等が好ましい。なかでも、後述する導電性または半導体性ナノ構造体への結合力が高いトリアルコキシシリル基、ホスホン酸基が特に好ましい。
及びBはそれぞれ独立に一価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば特に限定されるものではないが、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )、CFSOイオン(CFSO )等が好ましい。また、特に好ましくは、Brイオン、Clイオン、ClOイオンであり、A及びBが同一である場合である。
なお、本発明のエレクトロクロミック化合物は、対称的な構造となるようなX〜X10であることが、その合成の容易さ、及び安定性向上の面から望ましい。
以下に、本発明のエレクトロクロミック化合物の具体例を下記構造式(1)〜(17)に示すが、本発明のエレクトロクロミック化合物はこれらに限定されるものではない。
また、本発明に係るエレクトロクロミック組成物は、導電性又は半導体性ナノ構造体と、該ナノ構造体に結合又は吸着されている本発明のエレクトロクロミック化合物[前記一般式(I)で表されるエレクトロクロミック化合物]と、を有することを特徴とするものである。即ち、本発明に係るエレクトロクロミック組成物においては、導電性または半導体性ナノ構造体に本発明のエレクトロクロミック化合物が結合または吸着されて成ることを特徴とする。本発明のエレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック表示素子に用いたとき、発色を呈し、さらに画像のメモリ性すなわち発色画像保持特性に優れたものとなる。なお、導電性または半導体性ナノ構造体とは、ナノ粒子もしくはナノポーラス構造体等、ナノスケールの凹凸を有する構造体である。
本発明のエレクトロクロミック化合物が吸着構造としてスルホン酸基あるいはリン酸基又はカルボキシル基を有するとき、該エレクトロクロミック化合物は容易に前記ナノ構造体と複合化し、発色画像保持性に優れたエレクトロクロミック組成物となる。上記スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基は化合物中に複数有していてもよい。
あるいは、本発明のエレクトロクロミック化合物は、シラノール結合を介して前記ナノ構造体と結合されるとき、その結合は強固なものとなり、やはり安定なエレクトロクロミック組成物が得られる。ここで言うシラノール結合とは、ケイ素原子及び酸素原子を介した化学結合である。また、該エレクトロクロミック組成物は、前記エレクトロクロミック化合物と前記ナノ構造体がシラノール結合を介して結合した構造をしていればよく、特にその結合方法・形態は限定されない。
導電性又は半導体性ナノ構造体を構成する材質としては、透明性や導電性の面から金属酸化物が好ましい。該金属酸化物の例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物が用いられる。また、これらの金属酸化物は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合され用いられてもよい。電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性を鑑みるに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステンから選ばれる一種、もしくはそれらの混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。とりわけ、酸化チタンが用いられたとき、より発消色の応答速度に優れた多色カラー表示が可能である。
前記金属酸化物の形状としては、平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物微粒子であることが好ましい。粒子径が小さいほど金属酸化物に対する光の透過率が向上し、単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」という。)が大きい形状となる。大きな比表面積を有することで、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色カラー表示が可能である。ナノ構造の比表面積は、特に限定されるものではないが、例えば、100m/g以上とすることができる。
<表示素子>
次に、本発明に係る表示素子について説明する。
図1に、本発明のエレクトロクロミック化合物を用いた一般的な表示素子の構成例を示す。図1(a)及び図1(b)に示されるように、本発明の表示素子10、20は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔を置いて対向して設けられた対向電極2と、両電極1、2(表示電極1、対向電極2)間に配置された電解質3とを備え、該表示電極1の対向電極2側(対向電極2との対向面側)の表面に、少なくとも本発明のエレクトロクロミック化合物5aを含む表示層4aを有する。
図1(b)の表示素子において、表示層4aは、本発明のエレクトロクロミック化合物5aを用いて表示電極1の対向電極2側の表面に形成される。その形成方法は、浸漬、ディッピング法、蒸着法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等のどのような方法を用いても構わない。図2に示すように、本発明のエレクトロクロミック化合物5aが、分子構造上、吸着基(結合基)5cを有している場合は表示電極1に該吸着基5cが吸着して、表示層4aが形成されている。このとき図2に示すが如く、発色を呈する酸化還元発色部5bが、スペーサ部5dを介して吸着基5cと連結されて成り、これらをもってエレクトロクロミック化合物5aが構成される。
また、図1(a)のように電解質を溶媒に溶解した溶液構成とし、さらに前記溶液中にエレクトロクロミック化合物5aを溶解させることも可能である。この場合、エレクトロクロミック化合物5aは電極表面でのみ酸化還元反応により発消色する。即ち、エレクトロクロミック化合物を含む溶液のうち、表示電極1の対向電極2との対向面側の表面が表示層4aとして機能する。
また、図3に、本発明のエレクトロクロミック組成物5eを用いた一般的な表示素子の構成例を示す。図3に示されるように、本発明の表示素子30は、表示電極1と、該表示電極1に対して間隔をおいて対向して設けられた対向電極2と、両電極1、2(表示電極1、対向電極2)間に配置された電解質3とを備え、該表示電極1の対向電極2側(対向電極2との対向面側)の表面に、少なくとも本発明のエレクトロクロミック組成物5eを含む表示層4bを有する。また、対向電極2の表示電極1側(表示電極1との対向面側)に、白色粒子からなる白色反射層6を有する。
図3に示す表示素子において、表示層4bは、本発明のエレクトロクロミック組成物5eを用いて表示電極1の対向電極2側の表面に形成される。その形成方法は、浸漬、ディッピング法、蒸着法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等のどのような方法を用いても構わない。本発明のエレクトロクロミック組成物5e中のエレクトロクロミック化合物5aは、図2に示すように、分子構造上、結合基5cを有しており、導電性または半導体性ナノ構造体に該結合基5cが結合して、エレクトロクロミック組成物5eを構成している。そして、該エレクトロクロミック組成物5eが表示電極1上に層状に設けられて、表示層4bが形成されている。
続けて、本発明の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示素子10、20、30に用いられる材料について説明する。
表示電極1としては、透明導電基板を用いることが望ましい。透明導電基板としてはガラス、あるいはプラスチックフィルムに透明導電薄膜をコーティングしたものが望ましい。プラスチックフィルムを用いれば軽量でフレキシブルな表示素子を作製することができる。
透明導電薄膜材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光の透過性を確保する必要があるため、透明且つ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、発色させる色の視認性をより高めることができる。透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(以下、ITOという。)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、FTOという。)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、ATOという。)等の無機材料を用いることができるが、特に、インジウム酸化物(以下、In酸化物という。)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物という。)又は亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物という。)の何れか1つを含む無機材料であることが好ましい。In酸化物、Sn酸化物及びZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOである。
対向電極2としては、ITO、FTO、酸化亜鉛等の透明導電膜、あるいは亜鉛、白金等の導電性金属膜、さらにはカーボンなどが用いられる。対向電極2も一般的には基板上に形成する。対向電極基板もガラス、あるいはプラスチックフィルムが望ましい。
対向電極2として、亜鉛等の金属板が用いられる場合、対向電極2が基板を兼ねる。
さらに、対向電極2の材料が、表示層4のエレクトロクロミック組成物が起こす酸化還元反応と逆の逆反応を起こす材料を含む場合、安定した発消色が可能である。すなわち、エレクトロクロミック組成物が酸化により発色する場合は還元反応を起こし、エレクトロクロミック組成物が還元により発色する場合は酸化反応を起こす材料を対向電極2として用いると、エレクトロクロミック組成物を含む表示層4における発消色の反応がより安定となる。
電解質3としては、一般的に、支持塩を溶媒に溶解させたものが用いられる。
支持塩として、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的に、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、CFSOLi、CFCOOLi、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等を用いることができる。
また、溶媒として、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、等が用いられる。
その他、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質に特に限定されるものではないため、ゲル状の電解質や、ポリマー電解質等の固体電解質も用いられる。例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子膜などの固体系などがある。溶液系はイオン伝導度が高いという利点があり、固体系は劣化がなく高耐久性の素子を作製することに適している。
また、本発明の表示素子を反射型表示素子として用いる場合、図3に示すように、表示電極1と対向電極2の間に白色反射層6を設けることが望ましい。白色反射層6としては、白色顔料微粒子を樹脂に分散させ対向電極2上に塗布することが最も簡便な作製方法である。白色顔料微粒子としては、一般的な金属酸化物からなる粒子が適用でき、具体的には酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化セシウム、酸化イットリウムなどが挙げられる。また、ポリマー電解質に白色顔料粒子を混合することによって、白色反射層を兼ねることもできる。
表示素子10、20、30の駆動方法としては、任意の電圧、電流を印加することができればどのような方法を用いても構わない。パッシブ駆動方法を用いれば安価な表示素子を作製することができる。また、アクティブ駆動方法を用いれば高精細、かつ高速な表示をおこなうことができる。対向基板上にアクティブ駆動素子を設けることで容易にアクティブ駆動ができる。
以下、実施例にて本発明のエレクトロクロミック化合物及びエレクトロクロミック組成物、並びにそれらを用いた表示素子について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<エレクトロクロミック化合物[構造式(4)]の合成>
下記合成フロー(a)、(b)に従って構造式(4)で示されるエレクトロクロミック化合物を合成した。
(a)中間体(4−1)の合成
下記合成フロー(a)に従って中間体(4−1)を合成した。
100ml三つ口フラスコに、3,6−ジクロロピリダジン0.447g(3.00mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン1.50g(7.31mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.055g(0.060mmol)、トリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボラート0.053g(0.144mmol)を加え、アルゴンガス置換した後、それぞれアルゴンガスにて脱気した1,4−ジオキサン11ml及び1.27M-リン酸三カリウム水溶液8.5mlを順次加え、105℃で14時間還流した後、反応溶液を室温に戻してから、クロロホルム及び飽和食塩水加えた。この溶液を分液漏斗に移し、有機層を飽和食塩水洗浄した後、この有機層に乾燥剤として硫酸マグネシウムを加え室温にて1時間撹拌して脱水した後、次いで、パラジウムスカベンジャーシリカゲル(アルドリッチ社製)を1g加え室温にて1時間撹拌し、有機層中の残留パラジウムを除去した。上記乾燥剤及びシリカゲルを濾別した後、溶媒を減圧留去した。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/アセトン=1/3)により精製し、目的物である中間体(4−1)を得た。収量0.40g、収率57%。
(b)エレクトロクロミック化合物(4)の合成
次に、下記合成フロー(b)に従って構造式(4)で示されるエレクトロクロミック化合物を合成した。
25ml三つ口フラスコに、3,6−ビス(4−ピリジル)−ピリダジン0.117g(0.50mmol)、4−ブロモメチルベンジルホスホン酸0.463g(1.75mmol)、ジメチルホルムアミド3.0mlを加え、90℃で2時間反応させた。室温に戻した後、この溶液を2−プロパノールに排出し、次いで、得られた固形分を2−プロパノール中に分散させた後、回収し、100℃で2日間減圧乾燥して目的物である構造式(4)のエレクトロクロミック化合物を得た。収量0.36g、収率94%。
[比較例1]
特許文献11(特開2007−241238号公報)に記載されている下記の構造式(18)で示されるエレクトロクロミック化合物(発色状態がマゼンタ色を呈する)を合成した。
[実施例2]
〔エレクトロクロミック表示素子の作製〕
(a)表示電極及びエレクトロクロミック表示層の形成
まず、30mm×30mmのガラス基板を準備し、その上面の16mm×23mmの領域に、ITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、表示電極1を形成した。この表示電極1の電極端部間のシート抵抗を測定したところ、約200Ωであった。
次に、表示電極1が形成されたガラス基板上に、酸化チタンナノ粒子分散液(昭和タイタニウム社製 SP210)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子膜を形成し、引き続いて、前記構造式(4)で示されるエレクトロクロミック化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液を塗布液としてスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことによって、酸化チタン粒子表面にエレクトロクロミック化合物を吸着させた表示層4を形成した。
(b)対向電極の形成
一方、先ほどのガラス基板とは別に30mm×30mmのガラス基板を準備し、その上面の全面に、ITO膜をスパッタ法により約150nmの厚さになるように成膜することによって、対向電極2を形成した。更に、透明導電性薄膜が全面に形成されたガラス基板の上面に、熱硬化性の導電性カーボンインク(十条ケミカル社製 CH10)に酢酸2−エトキシエチルを25wt%添加して調製した溶液をスピンコート法により塗布し、120℃15分間アニール処理を行うことによって、対向電極2を形成した。
(c)エレクトロクロミック表示装置の作製
表示基板1と対向基板2を75μmのスペーサを介して貼り合わせ、セルを作製した。次に過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%を溶解させた溶液に、一次粒径300nmの酸化チタン粒子(石原産業株式会社製 CR50)を35wt%分散させ、電解質溶液を調製し、セル内に封入することでエレクトロクロミック表示素子を作製した。
[比較例2]
比較例1で合成したエレクトロクロミック化合物(18)を用いた外は実施例2の(a)〜(c)と全く同じ方法で表示電極及びエレクトロクロミック表示層、エレクトロクロミック表示装置を作製した。
[実施例3]、[比較例3]
〔作製したエレクトロクロミック表示素子の発消色試験〕
実施例2で作製したエレクトロクロミック表示素子について、発消色の比較評価を実施した。
発消色の評価は、大塚電子株式会社製分光測色計LCD―5000を用いて拡散光を照射することにより行った。
表示素子の表示電極1に負極を、対向電極2に正極を繋ぎ、3.0Vの電圧を1秒印加したところ、表示素子は良好なマゼンタを発色した。
発色時及び消色時の反射スペクトルを図4に示す。実施例1のエレクトロクロミック化合物は、消色時の色づきがほとんどなく、また発色時は明確なマゼンタ発色を示すことが確認できた。また、本発明の実施例2は発色電圧(3.0V 2秒)印加後、電源オフ後300秒においても発色状態が保持された。
石英セルに実施例2で作製したエレクトロクロミック表示層を形成した表示電極を入れ、対極として白金電極、参照電極としてAg/Ag+電極(ビー・エー・エス株式会社 RE−7)を用い、過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%となるように溶解させた電解液でセル内を満たした。この石英セルに重水素タングステンハロゲン光(オーシャンオプティクス社 DH−2000)を照射し、透過した光をスペクトロメータ(オーシャンオプティクス社 USB4000)で検出し、吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルを図5に示す。電圧印加前の消色状態では400nm〜800nmの可視域全体で吸収がなく透明であった。次いで、ポテンショスタット(ビー・エー・エス株式会社 ALS−660C)を用いて−1.5V電圧印加したところ、極大吸収波長が570nmになりマゼンタを発色した。
[比較例2]で作製したエレクトロクロミック表示装置についても同様に評価を行った。比較例1のエレクトロクロミック化合物を用いた場合[比較例2]のエレクトロクロミック表示層と、実施例1のエレクトロクロミック化合物を用いた場合[実施例2]の消色状態での吸収スペクトルの比較を図6に示す。比較例2(比較例1のエレクトロクロミック化合物)では吸収帯が450nmあたりまでわずかに吸収が存在し、[実施例2](実施例1のエレクトロクロミック化合物)の方がより消色状態の透明性が高かった。
[実施例4]
実施例1で合成した中間体4−1に二等量の臭化エチル反応させることにより、エレクトロクロミック化合物(1)を合成した。
次に、水/2,2,3,3−テトラフロロプロパノール(10wt%)溶液を用意し、エレクトロクロミック化合物(1)を1wt%溶解してエレクトロクロミック化合物溶液とした。過塩素酸テトラブチルアンモニウムをジメチルスルホキシドに20wt%となるように溶解させた電解液に前記エレクトロクロミック化合物溶液を50wt%添加し、30mm×30mmのSnO導電膜付きガラス基板(AGCファブリテック社)を表示基板と対向基板として75μmのスペーサを介して貼り合わせたセルに封入することでエレクトロクロミック表示素子10を作製した。
作製した表示素子に2.5Vの電圧を2秒印加したところ、表示素子はマゼンタ発色した。さらに逆電圧−1.5Vを1秒印加したところ消色し透明に戻った。
上記評価結果から、本発明のエレクトロクロミック化合物は、発色時にシャープな光吸収スペクトル特性を示し、マゼンタ系に発色を呈し、しかも消色時の色づきが少ないことが確認された。本発明のエレクトロクロミック化合物、またはエレクトロクロミック化合物が導電性または半導体性ナノ構造体に結合または吸着されてなるエレクトロクロミック組成物を表示層に有する表示素子は、電界印加により良好な発消色(マゼンタ発色または消色)の応答性を示し、画像保持性(メモリー性の維持)にも優れている。すなわち、本発明のエレクトロクロミック化合物は、フルカラー化に必要な3原色の一つとして有用であり、これを用いた表示素子は、例えば、書き換えが可能なペーパーライクな装置技術として重要である。
(図1の符号)
1 表示電極
2 対向電極
3 電解質
4a 表示層
5a エレクトロクロミック化合物
10 表示素子
20 表示素子
(図2の符号)
5a エレクトロクロミック化合物
5b 酸化還元発色部
5c 吸着基(結合基)
5d スペーサ部
(図3の符号)
1 表示電極
2 対向電極
3 電解質
4b 表示層
5e エレクトロクロミック組成物
30 表示素子
特開2003−161964号公報 特開2004−361514号公報 特表2004−520621号公報 特表2004−536344号公報(特許第4093958号公報) 特表2001−510590号公報(特許第3955641号公報) 特開2003−121883号公報 特開2006−106669号公報 特開2003−270671号公報 特開2004−151265号公報 特開2008−122578号公報 特開2007−241238号公報 特開2011−085773号公報

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
    (式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9及びX10は、それぞれ独立に水素原子又は一価の置換基を表し同一でも異なっていてもよく、L及びLはそれぞれ独立に一価の置換基を表し同一でも異なっていてもよく、A及びBはそれぞれ独立に一価のアニオンを表し同一でも異なっていてもよい。)
  2. 前記L及びLの中の少なくとも一方が水酸基に対して直接的又は間接的に結合可能な官能基を有し、
    前記水酸基に対して直接的又は間接的に結合可能な官能基が、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基及びモノアルコキシシリル基から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物。
  3. 導電性又は半導体性ナノ構造体と、該ナノ構造体に結合又は吸着されている請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック化合物と、を有することを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
  4. 表示電極と、該表示電極に対向した状態で離間して設けられた対向電極と、前記表示電極と前記対向電極との間に配置された電解質と、を備え、
    前記表示電極における前記対向電極との対向面に表示層を有し、
    該表示層は、少なくとも請求項1あるいは2に記載のエレクトロクロミック化合物、又は請求項3に記載のエレクトロクロミック組成物を含むことを特徴とする表示素子。
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