JP2018070900A - オーステナイト系耐熱鋳鋼 - Google Patents

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雄三 石川
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Abstract

【課題】熱負荷時のフェライト相の析出を低減させることにより、オーステナイト組織を安定させ、耐熱性を高めることができる。
【解決手段】オーステナイト系耐熱鋳鋼は、C:0.1〜0.6質量%、Si:1.0〜2.5質量%、Mn:1.0〜3.5質量%、S:0.05〜0.2質量%、Cr:14〜24質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.1〜0.3質量%、Zr:0.01〜1.2質量%、Cu:0.01〜1.5質量%、Nb:0.01〜1.5質量%、Ce:0.01〜0.3質量%、残部:鉄および不可避不純物からなり、−1.6Ni+89.9C−3.2Cr−27.1Si+19.7Nb−68.9Cu−124Ce+122≦15を満たす。この式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
【選択図】図3

Description

本発明はオーステナイト系耐熱鋳鋼に関し、特に、耐酸化性、および熱疲労特性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼に関する。
従来、オーステナイト系耐熱鋳鋼は、自動車のエキゾーストマニホールドやタービンハウジング等の排気系部品等に使用されている。このような部品は、使用環境が高温で過酷であることから、優れた熱疲労特性を備えるには、高温強度特性に優れることと、常温から高温までの靱性に優れることが必要である。
このような点から、たとえば、特許文献1には、C:0.1〜0.6質量%、Si:1.0〜2.5質量%、Mn:1.0〜3.5質量%、S:0.05〜0.2質量%、Cr:14〜24質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.1〜0.3質量%、Zr:0.01〜1.2質量%、Cu:0.01〜1.5質量%、Nb:0.01〜1.5質量%、および、残部:鉄および不可避不純物からなるオーステナイト系耐熱鋳鋼が提案されている。
特開2015−151573号公報
しかしながら、特許文献1に示すオーステナイト系耐熱鋳鋼によれば、Ni、Mnを多量に添加しなくとも、オーステナイト組織を安定化することができるが、その耐酸化性は充分ではないことがある。一般に、鋼材の耐酸化性を高めるためにCeを添加することも考えらえるが、発明者らの実験によれば、たとえば、特許文献1に示すオーステナイト系耐熱鋳鋼に、単にCeを添加したとしても、耐酸化性が向上しないことがあった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐酸化性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼を提供することにある。
前記課題を鑑みて、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼は、C:0.1〜0.6質量%、Si:1.0〜2.5質量%、Mn:1.0〜3.5質量%、S:0.05〜0.2質量%、Cr:14〜24質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.1〜0.3質量%、Zr:0.01〜1.2質量%、Cu:0.01〜1.5質量%、Nb:0.01〜1.5質量%、Ce:0.01〜0.3質量%、残部:鉄および不可避不純物からなり、下記(1)式を満たすことを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
−1.6Ni+89.9C−3.2Cr−27.1Si+19.7Nb−68.9Cu−124Ce+122≦15…(1)
ここで、(1)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
本発明によれば、(1)式の関係を満たすことにより、オーステナイト系耐熱鋳鋼の耐酸化性を高めることができる。
実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼の酸化減量を示したグラフ。 実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼に含有するCeの量と、酸化減量との関係を示したグラフ。 実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼のPoxと酸化減量との関係を示したグラフ。 実施例1〜4および比較例5、10、11に係る熱疲労寿命を示したグラフ。 参考例1〜4に係る常温伸びを示したグラフ。 参考例1および参考例4の耐熱鋳鋼の組織写真。
以下の本発明の実施形態に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼(以下、耐熱鋳鋼という)を説明する。本実施形態に係る、耐熱鋳鋼は、C:0.1〜0.6質量%、Si:1.0〜2.5質量%、Mn:1.0〜3.5質量%、S:0.05〜0.2質量%、Cr:14〜24質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.1〜0.3質量%、Zr:0.01〜1.2質量%、Cu:0.01〜1.5質量%、Nb:0.01〜1.5質量%、Ce:0.01〜0.3質量%、残部:鉄および不可避不純物からなる。
<C(炭素):0.1〜0.6質量%>
Cは、上述した範囲で、オーステナイト組織の安定化元素として作用すると共に、高温強度の向上と鋳造性の改善に有効である。ここで、その含有量が0.1質量%未満では鋳造性の改善効果が少ない。一方、その含有量が0.6質量%を超えるとCrCの析出により組織硬さが増加するとともに靱性が低下する。これにより、耐熱鋳鋼の被削性が低下することがある。さらに、CrCが過多に析出されると、Crの不動態膜が生成され難くなるため、耐酸化性が低下してしまう。
<Si(シリコン):1.0〜2.5質量%>
Siは、上述した範囲で、耐酸化性と鋳造性の改善に有効である。ここで、その含有量が1.0質量%未満では、鋳造性が損なわれるおそれがあり、一方、その含有量が2.5質量%を超えると耐熱鋳鋼の被削性が低下する。
<Mn(マンガン):1.0〜3.5質量%>
Mnは、上述した範囲で、脱酸反応を促すとともに、オーステナイト組織を安定化させるばかりでなく、オーステナイト組織にMnSからなる快削粒子を生成する。ここで、その含有量が1.0質量%未満では、MnSからなる快削粒子がオーステナイト組織に十分に生成されないため、耐熱鋳鋼の被削性の向上が十分に望めない。一方、その含有量が3.5質量%を超えると、鋳造時に酸化ケイ素(SiO)鋳型との反応により、鋳造品に凹凸が形成されて、肌荒れを起こすことがある。
<S(硫黄):0.05〜0.2質量%>
Sは、上述した範囲で、MnSからなる快削粒子が形成され、耐熱鋳鋼の被削性を確保することができる。ここで、その含有量が0.05質量%未満では、MnSからなる快削粒子がオーステナイト組織に十分に生成されないため、耐熱鋳鋼の被削性の向上が十分に望めない。一方、その含有量が0.2質量%を超えると、多量の硫化物が生成されるため、熱疲労寿命を低下させてしまう。
<Cr(クロム):14〜24質量%>
Crは、上述した範囲で、耐酸化性を高め、高温強度の改善に有効である。ここで、その含有量が14質量%未満では耐酸化性の効果が低下する。一方、その含有量が24質量%を超えると、熱負荷時にフェライト化が促進されてしまう。さらに、CrCが過多に生成することにより、耐熱鋳鋼の延性が低下してしまう。このような観点から、Crの含有量は、20質量%以下であることがより好ましい。
<Ni(ニッケル):5〜20質量%>
Niは、上述した範囲で、耐酸化性を高めつつ、オーステナイト組織を安定化させることができる。ここで、その含有量が5質量%未満では、耐酸化性の低下およびオーステナイト組織の安定化が低下することで、熱疲労寿命が低下を引き起こす。その含有量が20質量%を超えると、鋳造性は、阻害される。また、本実施形態では、含有量が13質量%を超えたとしても、オーステナイト組織の安定化の効果が飽和するため、Niの含有量は、5〜13質量%であることがより好ましい。
<N(窒素):0.1〜0.3質量%>
Nは、上述した範囲で、高温強度の向上とオーステナイト相の安定化、組織の微細化に有効である。ここで、その含有量が0.1質量%未満ではその効果は十分でなく、その含有量が0.3質量%を超えると、歩留まりが極端に低下して、ガス欠陥の原因となる。
<Zr(ジルコニウム):0.01〜1.2質量%>
Zrは、上述した範囲で、オーステナイト結晶粒を微細化させ、結晶粒界に偏析するCr(クロム)を分散させ、オーステナイト組織の安定化を図ることができる。それだけでなく、結晶粒の微細化によってMnSがオーステナイト組織中に細かく分散され、被削性が向上する。ここで、その含有量が0.01質量%未満では、オーステナイト組織の安定化の効果は期待できず、その含有量が1.2質量%を超えると、ZrC,ZrNが生成されてしまうため、オーステナイト結晶粒内のCおよびNの固溶量が低下してしまい、オーステナイト組織が不安定となる。さらに、上述したZrC、ZrNが結晶粒界に介在物として存在するため、耐熱鋳鋼の被削性が低下する。
<Cu(銅):0.01〜1.5質量%>
Cuは、上述した範囲で、オーステナイト組織の安定化を図ることができる。なお、MnとSとの結合、CとCrとの結合によりオーステナイト組織が不安定になることがあるが、Cuは、このような結合が殆どないため、オーステナイト組織の安定化に直結する。ここで、その含有量が0.01質量%未満ではその効果を期待することが難しく、その含有量が1.5質量%を超えると、耐熱鋳鋼の延性が低下してしまう。
<Nb(ニオブ):0.01〜1.5質量%>
Nbは、オーステナイト組織中に微細な炭化物を形成し、高温強度ならびにクリープ破断強度を高めることができる。ここで、その含有量が0.01質量%未満ではその効果が現れず、その含有量が1.5質量%を超えると、耐酸化性および被削性が低下する。さらに好ましくは0.1〜1.0質量%である。
<Ce(セリウム):0.01〜0.3質量%>
Ceは、上述した範囲で、オーステナイト組織にCeSからなる快削粒子を生成するばかりでなく、耐熱鋳鋼の耐酸化性を向上することができる。ここで、その含有量が0.01質量%未満では、耐熱鋳鋼の耐酸化性の効果を充分期待できない。一方、その含有量が0.3質量%を超えると、Ce酸化物が酸化物系介在物として鋳造品にかみ込み、鋳造品質を低下させることがある。
<その他の元素>
不可避不純物として含有されるPは、0.05質量%以下であることが好ましい。含有量がこれを超えると、加熱冷却の繰り返しによる熱劣化が発生しやすくなり、靱性も低下する。また、含有量がこれを超えると、鋳造割れの原因となる。
ここで、耐酸化特性を向上させる元素であるCeなどの元素を、上述した範囲で含有させたとしても、耐熱鋳鋼の耐酸化性が向上しないことがある。そこで、本実施形態では、耐熱鋳鋼は、下記の(1)式を満たすように、(1)式で示す元素が添加されている。
−1.6Ni+89.9C−3.2Cr−27.1Si+19.7Nb−68.9Cu−124Ce+122≦15…(1)
ここで、(1)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
(1)式の左辺は、後述する発明者らの実験により、後述する酸化減量と成分の添加量から、重回帰分析により回帰式から求めた耐熱鋳鋼の酸化減量に対応した式であり、耐熱鋳鋼の耐酸化性に寄与率の高いNi、C、Cr、Si、Nb、Cu、Ceの元素で表した式である。マイナスの係数が乗算される元素は、耐熱鋳鋼の耐酸化性を向上させる元素であり、プラスの係数が乗算される元素は、耐熱鋳鋼の耐酸化性を低下させる元素である。したがって、耐熱鋳鋼の耐酸化性を向上させる元素は、Ni、Cr、Si、Cu、Ceであり、一方、C、Nbは、耐熱鋳鋼の耐酸化性を低下させる元素である。
後述する発明者らの実験からも明らかなように、(1)式を満たすことにより、耐熱鋳鋼の耐酸化性を高めることができる。
以下、実施例と比較例により、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1〜6]
実施例1〜6では、以下に示すようにしてオーステナイト系耐熱鋳鋼(以下、耐熱鋳鋼という)からなる試験片を作製した。具体的には、表1に示す組成を持つ、Feをベースとした(残部がFeおよび不可避不純物からなる)耐熱鋳鋼の出発材料となる試料20kgを準備し、高周波誘導炉を用いて大気溶解を行った。得られた溶湯を、1600℃で出湯し、1500〜1530℃で25mm×42mm×230mmの砂型鋳型(余熱なし)に注湯し凝固させて、Y型B号ブロック(JIS規格)の耐熱鋳鋼のブロック片を得た。このブロック片から後述する試験ごとに試験片を切り出した。
実施例1〜6に係る耐熱鋳鋼の各成分の範囲は、C:0.1〜0.6質量%、Si:1.0〜2.5質量%、Mn:1.0〜3.5質量%、S:0.05〜0.2質量%、Cr:14〜24質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.1〜0.3質量%、Zr:0.01〜1.2質量%、Cu:0.01〜1.5質量%、Nb:0.01〜1.5質量%、Ce:0.01〜0.3質量%、残部:鉄および不可避不純物であり、本発明の範囲を満たす。
[比較例1〜11]
実施例1と同じように、耐熱鋳鋼からなる試験片を作製した。具体的には、表1に示す成分の試料を用いて試験片を鋳造し、実施例1と同じ形状の試験片を切り出した。なお、これらの比較例1〜11のうち、比較例2〜8、比較例10、11は、本発明の各元素のうち、いくつかの元素が、本発明の含有量の範囲から外れている、または、含有されていない。
比較例2の耐熱鋳鋼は、Nb、Ceを含有していない。
比較例3の耐熱鋳鋼のMn及びSの含有量は本発明の範囲よりも少なく、この耐熱鋳鋼は、Zr、Cu、Ceを含有していない。
比較例4の耐熱鋳鋼は、Nb、Zrを含有していない。
比較例5の耐熱鋳鋼のSiの含有量は本発明の範囲よりも少なく、この耐熱鋳鋼は、Zr、Ceを含有していない。
比較例6の耐熱鋳鋼は、Nb、Ceを含有していない。
比較例7の耐熱鋳鋼は、Cuを含有していない。
比較例8の耐熱鋳鋼は、Zrを含有していない。
比較例10の耐熱鋳鋼のMnの含有量は本発明の範囲よりも多く、この耐熱鋳鋼は、Nb、Zr、Cu、Ceを含有していない。
比較例11の耐熱鋳鋼のCrの含有量は本発明の範囲よりも多く、この耐熱鋳鋼は、Zr、Cu、Ceを含有していない。
<各元素の元素量の確認>
表1に示す耐熱鋳鋼の炭素(C)および硫黄(S)の含有量を、高周波燃焼−赤外線式炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製 EMIA−3200)を用いて測定した。具体的には、タングステン助燃剤(チップ状:炭素含有率0.01%以下)、過塩素酸マグネシウム(無水:粒径0.7〜1.2mm)、およびアスカライトからなる試料を準備した。この試料と各耐熱鋳鋼を、酸素(純度が99.999%以上の乾燥酸素)の雰囲気下において、高周波るつぼ(セラミックるつぼ)内で溶融し測定を行った。なお、ダストフィルタには、ガラスウールを用いた。
表1に示す耐熱鋳鋼の窒素(N)の含有量を、酸素・窒素分析装置(LECO製 TC−436型)を用いて測定した。具体的には、アンヒドロン(過塩素酸マグネシウム)、およびアスカライト(炭酸ガス吸収剤)、酸化銅(粒状)、金属銅(リボン状)からなる試料を準備した。この試料と各耐熱鋳鋼を、ヘリウム(99.99質量%未満)、アルゴン(99.99質量%未満)を混合した混合ガス雰囲気下において、黒鉛るつぼ内で溶融し、窒素の測定を行った。なお、ダストフィルタには、ガラスウールを用いた。
表1に示す耐熱鋳鋼の珪素(Si)の含有量を二酸化珪素重量法により測定した。具体的には、各耐熱鋳鋼からなる試料を王水で分解し、過塩素酸を加え加熱蒸発して珪素を不溶性二酸化珪素とし、濾過後過強熱して恒量とし、次にフッ化水素酸を加えて二酸化珪素を蒸発揮散させ、その減量から珪素を定量した。また、表1に示す耐熱鋳鋼のその他の元素の含有量は、一般的なIPC発光分析法により分析した。
<耐酸化性試験(酸化減量の測定)>
実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼に対して、耐酸化性試験を行い、酸化減量を測定した。具体的には、各試験片の重量Wo(mg)を測定した後、各試験片を、酸素を含むガス雰囲気下において等温保持(1000℃、200時間)で加熱した。次に、試験片の表面に生成された酸化生成物を除去した後、この試験片の重量Wt(mg)を測定した。各試験片の表面積をS(cm)とし、以下の(2)式を用いて、各耐熱鋳鋼の酸化減量を測定(算出)した。
酸化減量(mg/cm)=(Wo−Wt)/S…(2)
この結果を表1および図1,2に示す。図1は、実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼の酸化減量を示したグラフである。図2は、実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼に含有するCeの量と、酸化減量との関係を示したグラフである。
Figure 2018070900
(結果1)
図1に示すように、実施例1〜6の耐熱鋳鋼の酸化減量は、比較例1〜10のものに比べて小さく、実施例1〜6の耐熱鋳鋼は、比較例1〜10のものに比べて耐酸化性が高いといえる。
ここで、一般的に、鋼材にCeを添加すれば、鋼材の耐酸化性は、画期的に向上する。しかしながら、図2および表1に示すように、比較例1、4、8、9の耐熱鋳鋼は、Ceを0.01質量%含有しているにもかかわらず、比較例1、4、8、9の耐熱鋳鋼の酸化減量は、Ceを同程度添加した実施例2、3のものよりも多い。
また、比較例7の耐熱鋳鋼は、Ceを0.02質量%含有している(比較例1、4、8、9の耐熱鋳鋼よりも多く含有している)にもかかわらず、比較例7の耐熱鋳鋼の酸化減量が最も多くなった。さらに、実施例1〜6と同様に、比較例1および比較例9の耐熱鋳鋼の各元素は、本発明の範囲に含まれているのもかからず、実施例1〜6に係る耐熱鋳鋼の酸化減量よりも多くなった。そこで、実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼の各元素の含有量と、これらの酸化減量の結果から、本発明の耐熱鋳鋼をさらに特定した。
<Poxについて>
ここで、耐熱鋳鋼の耐酸化性に影響を与える元素として、Ni、C、Cr、Si、Nb、Cu、Ceに着眼し、これら元素が耐熱鋳鋼に含有する量(質量%)をパラメータとして、これらのパラメータから、実施例1〜6および比較例1〜10の酸化減量となるように、重回帰分析により以下の(3)式(回帰式)を算出した。
Pox=−1.6Ni+89.9C−3.2Cr−27.1Si+19.7Nb−68.9Cu−124Ce+122…(3)
この式から、実施例1〜6および比較例1〜11の耐熱鋳鋼のPoxを算出した。この結果を、表1および図3に示す。図3は、実施例1〜6および比較例1〜10に係る耐熱鋳鋼のPoxと酸化減量との関係を示したグラフである。ここで、耐熱鋳鋼のPoxが15以下で、耐熱鋳鋼の耐酸化性が良好であると判断できる。したがって、Pox≦15の関係を満たすように、Ni、C、Cr、Si、Nb、Cu、Ceの含有量を特定することにより、耐熱鋳鋼の耐酸化性を向上させることができる。
<熱疲労試験>
実施例1〜4および比較例5、10、11の耐熱鋳鋼の試験片に対して、油圧式熱疲労試験機(島津製作所製サーボパルサ)および冷却機能付き高周波コイルを用いて、熱疲労試験を実施した。これらの試験片として、直径10mm、長さ20mmの平行部を有したダンベル型丸棒中実試験片(n=1)を、上述したY型B号ブロックから切り出した。
各試験片の加熱温度を、200〜1000℃の台形波の温度プロフィールとなるように制御し(1サイクル12分)、試験片の拘束条件を100%拘束条件、逆位相(Out−Of−Phase)でのひずみ制御により繰り返し試験を実施した。ここで、100%拘束条件とは、試験片を加熱したときの熱膨張量ΔLのひずみ量の100%で試験片を拘束したものであり、温度が増加するに従って、圧縮側にひずみが増加するようにひずみ制御を行っている。
これにより、各サイクル毎に応力ひずみヒステリシスループが得られ、応力が最大応力σmaxから25%低下した時点でのサイクル数を熱疲労寿命Nfとした。表2および図4に、実施例1〜4および比較例5、10、11に係る熱疲労寿命の結果を示す。図4は、実施例1〜4および比較例5、10、11に係る熱疲労寿命を示したグラフである。
Figure 2018070900
表2および図4に示すように、比較例5、10、11の耐熱鋳鋼の疲労寿命は、実施例1〜4のものに比べて短かった。これは、比較例5、10、11の耐熱鋳鋼のCrの含有量が、実施例1〜4のものに比べて多い(具体的には、20質量%を超えている)ことにより、比較例5、10、11の耐熱鋳鋼には、過多の炭化クロムが生成されているからであると考えられる。
この点を確認すべく、以下の確認試験を行った。具体的には、参考例1〜4では、表3に示す成分の試料を用いて試験片を鋳造し、実施例1と同じ形状の試験片を切り出した。参考例1〜3の耐熱鋳鋼は、元素の含有量が、本発明の範囲を満たす。参考例4の耐熱鋳鋼のCrの含有量は本発明の範囲よりも多く、この耐熱鋳鋼は、Zr、Cu、Ceを含有していない。
Figure 2018070900
参考例1〜4に係る耐熱鋳鋼に対して、常温において引張試験を行った。この結果を、図5に示す。図5は、参考例1〜4に係る常温伸びを示したグラフである。さらに、参考例1および参考例4の耐熱鋳鋼の組織を、顕微鏡で観察した。この結果を、図6に示す。図6は、参考例1および参考例4の耐熱鋳鋼の組織写真である。
図5に示すように、Crの含有量が20質量%を超えている、参考例3および4に係る耐熱鋳鋼の常温伸びは、参考例1および2のものよりも小さかった。そして、図6に示すように、参考例1の耐熱鋳鋼の組織には、粗大なCr炭化物は存在していなかったが、参考例4の耐熱鋳鋼の組織には、粗大なCr炭化物は存在していた。以上のことから、耐熱鋳鋼のCrの含有量は、20質量%以下であることが好ましいと考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。

Claims (1)

  1. C:0.1〜0.6質量%、
    Si:1.0〜2.5質量%、
    Mn:1.0〜3.5質量%、
    S:0.05〜0.2質量%、
    Cr:14〜24質量%、
    Ni:5〜20質量%、
    N:0.1〜0.3質量%、
    Zr:0.01〜1.2質量%、
    Cu:0.01〜1.5質量%、
    Nb:0.01〜1.5質量%、
    Ce:0.01〜0.3質量%、
    残部:鉄および不可避不純物からなり、
    下記の(1)式を満たすことを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
    −1.6Ni+89.9C−3.2Cr−27.1Si+19.7Nb−68.9Cu−124Ce+122≦15…(1)
    ここで、(1)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
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