JP6250895B2 - オーステナイト系耐熱鋳鋼 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋳鋼

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Description

本発明はオーステナイト系耐熱鋳鋼に関し、特に、被削性と耐熱性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼に関する。
従来、オーステナイト系耐熱鋳鋼は、自動車のエキゾーストマニホールドやタービンハウジング等の排気系部品等に使用されている。このような部品は、使用環境が高温で過酷であることから、優れた熱疲労特性を備えるには、高温強度特性に優れることと、常温から高温までの靱性に優れることが必要である。
このような点から、たとえば、特許文献1には、C:0.2〜0.6質量%、Si:0.1〜2質量%、Mn:0.1〜2質量%、S:0.05〜0.2質量%、Se:0.05質量%以下、Ni:10.0〜45.0質量%、Cr:15.0〜30.0質量%、W:8.0質量%以下、Nb:3.0%質量以下を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、母相がFe−Ni−Crを主体とするオーステナイト相からなるオーステナイト系耐熱鋳鋼が提案されている。
このオーステナイト系耐熱鋳鋼によれば、耐熱鋳鋼の耐熱性を確保するために、C、Ni、Cr、W、およびNbを添加している。一方、耐熱鋳鋼の被削性を確保するために、MnSからなる快削粒子を生成すべく、MnおよびSを添加している。快削元素Seを添加することで、さらなる被削性の向上を図っている。
特許第4504736号公報
上述したように、特許文献1に記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼には、耐熱性を確保するべくC、Ni、Cr、W、およびNbを添加することで、たとえばCrなどの炭化物からなる硬質粒子が生成される。
しかしながら、このような硬質粒子は柔らかいオーステナイト組織に生成されるため、例えば耐熱鋳鋼を切削加工する際には、オーステナイト組織が断続的に切削される。この結果、加工に用いる刃具が著しく摩耗することがある。そこで、特許文献1に記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼には、Mn、S、およびSeなどの快削元素を添加しているが、一定量の硬質粒子が存在している状態では、上述した断続的な切削の影響が大きく、快削元素の効果は十分に得られない。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐熱性と被削性との双方に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼を提供することにある。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼は、C:0.1〜0.4質量%、Si:0.8〜2.5質量%、Mn:0.8〜2.0質量%、S:0.05〜0.30質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.3質量%以下、Zr:0.01〜0.20質量%、Ce:0.01〜0.10質量%、下記(i)〜(iii)の群から選択される、少なくとも(i)を含む一種以上、(i)Cr:14〜24質量%、(ii)Nb:1.5質量%以下、(iii)Mo:3.0質量%以下、および、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼は、上述した範囲で、各元素を含有することにより、耐熱性と被削性との双方に優れている。各元素の範囲を規定した理由は、以下の実施形態で説明する。
より好ましい態様としては、前記(i)に加えさらに前記(ii)を含む。この態様によれば、Nb:1.5質量%以下の範囲で、オーステナイト系耐熱鋳鋼にNbを含むことにより、耐熱性のなかでもクリープ強度を高めることができる。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼によれば、耐熱性と被削性との双方に優れている。
実施例1〜11および比較例1〜13に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼の繰り返し応力の最大値と、熱疲労寿命との関係を示した図。 実施例1〜10および比較例1〜8および13に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼を切削加工したときの刃具摩耗量を示した図。 実施例1〜3、5および比較例3〜8に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼の炭化物の量と刃具摩耗量との関係を示した図。 実施例1〜11および比較例1〜13に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼のパラメータPσと繰り返し応力の最大値との関係を示した図。 実施例1〜11および比較例1〜13に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼のパラメータPσと熱疲労寿命との関係を示した図。 実施例1〜10および比較例1〜8、13に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼のパラメータPmと刃具の摩耗量との関係を示した図。 実施例3および実施例4に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼のクリープ試験の結果を示した図。 実施例12〜15および比較例14〜16に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼のZrの含有量と、高温引張強度、高温耐力、伸びの関係を示した図。 熱疲労試験で行うオーステナイト系耐熱鋳鋼に対する温度制御およびひずみ制御を説明するための図。 熱疲労試験で得らえたオーステナイト系耐熱鋳鋼の応力ひずみ線図の一例を示した図。 熱疲労試験で得らえたオーステナイト系耐熱鋳鋼の繰り返し応力の最大値および熱疲労寿命の算出方法を説明するための図。
以下の本発明の実施形態に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼を説明する。
本実施形態に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼は、C:0.1〜0.4質量%、Si:0.8〜2.5質量%、Mn:0.8〜2.0質量%、S:0.05〜0.30質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.3質量%以下、Zr:0.01〜0.20質量%、Ce:0.01〜0.10質量%、下記(i)〜(iii)の群から選択される、少なくとも(i)を含む一種以上、(i)Cr:14〜24質量%、(ii)Nb:1.5質量%以下、(iii)Mo:3.0質量%以下、および、残部がFeおよび不可避不純物からなる。ここで、以下に各元素とその含有量に関して詳述する。
1.各成分およびその含有量について
<C(炭素):0.1〜0.4質量%>
Cは、上述した範囲で、オーステナイト組織の安定化元素として作用すると共に、高温強度の向上と鋳造性の改善に有効である。ここで、その含有量が0.1質量%未満では、鋳造性の改善効果が少ない。一方、その含有量が0.4質量%を超えると、Cr炭化物からなる硬質粒子が晶出することにより、オーステナイト組織の硬さが増加する。これにより、耐熱鋳鋼の被削性が低下してしまう。
<Si(シリコン):0.8〜2.5質量%>
Siは、上述した範囲で、耐酸化性と鋳造性の改善に有効である。ここで、その含有量が0.8質量%未満では、耐熱鋳鋼の鋳造性が損なわれるおそれがある。一方、その含有量が2.5質量%を超えると、耐熱鋳鋼の被削性が低下する。
<Mn(マンガン):0.8〜2.0質量%>
Mnは、上述した範囲で、オーステナイト組織を安定化させるばかりでなく、オーステナイト組織にMnSからなる快削粒子を生成する。ここで、その含有量が0.8質量%未満では、MnSからなる快削粒子がオーステナイト組織に十分に生成されないため、耐熱鋳鋼の被削性の向上が十分に望めない。また、加工時に、加工誘起マルテンサイトが生じるため、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性が低下する。一方、その含有量が2.0質量%を超えると、鋳造時に酸化ケイ素(SiO)鋳型との反応により、鋳造品に凹凸が形成されて、肌荒れを起こすことがある。
<S(硫黄):0.05〜0.30質量%>
Sは、上述した範囲で、MnSからなる快削粒子が形成され、耐熱鋳鋼の被削性を確保することができる。ここで、その含有量が0.05質量%未満では、MnSからなる快削粒子がオーステナイト組織に十分に生成されないため、耐熱鋳鋼の被削性の向上が十分に望めない。一方、その含有量が0.30質量%を超えると、多量の硫化物が生成されるため、熱疲労寿命を低下させてしまう。
<Ni(ニッケル):5〜20質量%>
Niは、上述した範囲で、オーステナイト組織を安定化させることができる。ここで、その含有量が5質量%未満では、耐酸化性の低下およびオーステナイト組織の安定化が低下することで、熱疲労寿命の低下を引き起こす。その含有量が20質量%を超えると、耐熱鋳鋼の鋳造性は、阻害される。
<N(窒素):0.3質量%以下>
Nは、上述した範囲で含有した場合、高温強度の向上とオーステナイト相の安定化、組織の微細化に有効である。ここで、その含有量が0.3質量%を超えると、歩留まりが極端に低下して、ガス欠陥の原因となる。また、上述した効果を得ようとした場合、その含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、0.09質量%以上であることがさらに好ましい。
<Zr(ジルコニウム):0.01〜0.20質量%>
Zrは、上述した範囲で、オーステナイト結晶粒が微細化され、結晶粒界に偏析するCr(クロム)を分散させ、オーステナイト組織の安定化を図ることができる。また、結晶粒の微細化によってMnSがオーステナイト組織中に細かく分散され、被削性が向上する。
ここで、その含有量が0.01質量%未満では、オーステナイト結晶粒の細粒化による被削性改善効果が見込めない。一方、その含有量が0.20質量%を超えると、オーステナイト結晶粒の過剰な細粒化により高温強度が低下する。また、Zr酸化物がスラグとして鋳造品にかみ込み、鋳造品質を低下させることがある。
<Ce(セリウム):0.01〜0.10質量%>
Ceは、上述した範囲で、オーステナイト組織にCeSからなる快削粒子を生成する。ここで、その含有量が0.01質量%未満では、CeSからなる快削粒子がオーステナイト組織に十分に生成されないため、耐熱鋳鋼の被削性の向上が十分に望めない。一方、その含有量が0.10質量%を超えると、Ce酸化物が酸化物系介在物として鋳造品にかみ込み、鋳造品質を低下させることがある。
以下に示すCr,Nb,およびMoは、オーステナイト組織中に炭化物を形成する炭化物形成元素であり、オーステナイト系耐熱鋳鋼には、少なくともCrを後述する範囲で含有している。オーステナイト系耐熱鋳鋼にはNbおよびMoは、必ずしも含有させなくてもよいが、これらの元素のいずれか一方を、後述する範囲で含有させた場合には、オーステナイト系耐熱鋳鋼の高温強度および高温耐力を高めることができる。特に、オーステナイト系耐熱鋳鋼に、Nbを後述する範囲で含有すれば、Moを含有させる場合に比べて、オーステナイト系耐熱鋳鋼のクリープ強度をも高めることができる。以下に、Cr,Nb,およびMoの各成分の働きを説明する。
<(i)Cr(クロム):14〜24質量%>
Crは、上述した範囲で、耐酸化性を高め、高温強度の改善に有効であり、オーステナイト系耐熱鋳鋼に含有すべき必須の元素である。ここで、その含有量が14質量%未満では耐酸化性の効果が低下する。一方、その含有量が24質量%を超えると、Cr炭化物からなる硬質粒子が過剰に晶出することにより、オーステナイト組織の硬さが増加する。これにより、耐熱鋳鋼の被削性が低下してしまう。
<(ii)Nb(ニオブ):1.5質量%以下>
Nbは、オーステナイト系耐熱鋳鋼に含有するに好ましい元素であり、上述した範囲で含有した場合、オーステナイト組織中に微細なニオブ炭化物(NbC)を形成し、耐熱性(高温強度、クリープ強度、熱疲労寿命)向上効果が見込める。特にNb添加によりクリープ強度が大きく向上する。ここで、含有量が1.5質量%を超えると、硬質粒子NbCの過剰な生成により被削性を低下させる。また、上述した効果を得ようとした場合、その含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。
<Mo(モリブデン):3.0質量%以下>
Moは、オーステナイト系耐熱鋳鋼に含有するに好ましい元素であり、上述した範囲で含有した場合、高温加熱時のモリブデン炭化物の析出強化により耐熱性(高温強度、クリープ強度、熱疲労寿命)向上効果が見込める。ここで、その含有量が3.0質量%を超えると、MoCからなる硬質粒子が過剰に生成されるので、耐熱鋳鋼の被削性が低下してしまう。また、上述した効果を得ようとした場合、その含有量は0.008質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。
<その他の元素>
不可避不純物の一つとして含有されるPは、0.05質量%以下であることが好ましい。含有量がこれを超えると、加熱冷却の繰り返しによる熱劣化が発生しやすくなり、靱性も低下する。また、含有量がこれを超えると、鋳造割れの原因となる。
本実施形態では、上述した範囲の元素を鉄に含有させることにより、耐熱性と被削性との双方に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼となる。特に、本実施形態に係るオーステナイト系耐熱鋳鋼は、Niの含有量を適切な量としたことにより、オーステナイト組織を安定させ、耐熱鋳鋼の耐熱性(熱疲労寿命)を向上させることができる。
ここで、Ni量を上述した範囲で含有すれば、一般的にはオーステナイト組織に固溶するCが少なくなり、Crと結びつくCが多くなるので、Cr炭化物などの金属炭化物からなる硬質粒子が生成されやすい。しかしながら、本実施形態では、これらの硬質粒子の生成量が制限されるように、C、Cr、Nb、およびMoの量を特定し、上述した耐熱性を損なわない範囲で、Mn、S、Zr、およびCeを含有させたので、耐熱鋳鋼の被削性を向上させることができる。
2.耐熱性に寄与する各成分の相関関係について
上述した各元素の含有量から、オーステナイト系耐熱鋳鋼の耐熱性を評価あるいは推定するために各成分の相関関係を特定した。
ここで発明者らは、オーステナイト系耐熱鋳鋼に対して、後述するひずみ制御により熱疲労試験を行ったとき、耐熱鋳鋼に作用する繰り返し応力の最大値(最大応力)σmaxと、破断時の繰り返し数(熱疲労寿命)Nfとに、一定の相関関係があることに着眼した。具体的には、熱疲労試験を行った際に、オーステナイト系耐熱鋳鋼の最大応力σmaxが増加するにしたがって、その熱疲労寿命Nfが低下する。
そこで、発明者らは、オーステナイト系耐熱鋳鋼の最大応力σmaxに影響を与える元素として、C、Ni、Cr、Mo、およびNbに着眼した。そして、これら元素がオーステナイト系耐熱鋳鋼に含有する量をパラメータとして、これらのパラメータから熱疲労試験で得られる最大応力σmaxとなるように、重回帰分析により以下の(1)式(回帰式)を算出した。
Pσ=399.25+129.78C−1.75Ni−6.23Cr−9.88Mo−26.88Nb…(1)
(1)式の左辺のPσは、最大応力σmaxに相当するパラメータ(指標値)である。(1)式の右辺は、C、Ni、Cr、Mo、およびNbの含有量(質量%)を、パラメータとして表した数式であり、この数式に示す元素記号に相当する元素の含有量の値を代入すると、最大応力σmaxに相当するPσの値を算出することができる。ここで、右辺で示された元素の係数は、最大応力σmaxに寄与する程度を示したものである。
発明者らの後述する熱疲労試験から、最大応力σmaxが315MPa以下で、熱疲労寿命が400回(サイクル)を超えることから、Pσ≦310の条件を満たすことが好ましいことがわかった。したがって、Pσ≦310の条件を満たすように、C、Ni、Cr、Mo、およびNbの含有量を特定することにより、オーステナイト系耐熱鋳鋼の熱疲労寿命を向上させることができると考えられる。
3.被削性に寄与する各成分の相関関係について
上述した各元素の含有量から、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性を評価あるいは推定するために各成分の相関関係を特定した。
発明者らは、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性試験を行い、試験に用いた刃具の摩耗量Vbを測定した。次に、刃具の摩耗量Vbに影響を与える元素として、刃具の摩耗を促進させる元素Ni、Cr、Mo、およびNbの群にと、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性を向上させる元素S、Zr、およびCeの群にと分類した。これら元素がオーステナイト系耐熱鋳鋼に含有する量をパラメータとして、これらのパラメータから摩耗量Vbとなるように、重回帰分析により以下の(2)式(回帰式)を算出した。
Pm=(0.0038Ni+0.119C+0.0014Cr+0.0136Mo+0.0344Nb)−(0.3129S+0.0353Zr+0.2966Ce)−0.04225…(2)
ここで、(2)式の左辺のPmは、摩耗量Vbに相当するパラメータ(指標値)である。(2)式の右辺は、Ni、C、Cr、Mo、Nb、S、Zr、およびCeの含有量(質量%)を、パラメータとして表した数式であり、この数式に示す元素記号に相当する元素の含有量の値を代入すると、摩耗量Vbに相当するPm(指標値)を算出することができる。
ここで、右辺に示された元素の係数のうち、Ni、C、Cr、Mo、およびNbの係数は、摩耗量の増加に寄与する程度を示したものであり、S、Zr、およびCeの係数は、摩耗量の減少に寄与する程度を示したものである。
ここで、発明者らの後述する被削性試験から、刃具摩耗量Vbが0.14mm以下で、被削性が良好であると判断でき、この場合Pm≦0.09の関係を満たすことが好ましい。Pm≦0.09となるように、Ni、C、Cr、Mo、Nb、S、Zr、およびCeの含有量を特定することにより、オーステナイト系耐熱鋳鋼の被削性を向上させることができると考えられる。
以下、実施例と比較例により、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1〜11]
実施例1〜11では、以下に示すようにしてオーステナイト系耐熱鋳鋼(以下、耐熱鋳鋼という)からなる試験片を作製した。具体的には、表1に示す組成を持つ、Feをベースとした(残部がFeおよび不可避不純物からなる)耐熱鋳鋼の出発材料となる試料20kgを準備し、高周波誘導炉を用いて大気溶解を行った。得られた溶湯を、1600℃で出湯し、1500〜1530℃で25mm×42mm×230mmの砂型鋳型(余熱なし)に注湯し凝固させて、Y型B号ブロック(JIS規格)の耐熱鋳鋼のブロック片を得た。このブロック片から後述する試験ごとに試験片を切り出した。
実施例1〜11に係る耐熱鋳鋼の各成分の範囲は、C:0.1〜0.4質量%、Si:0.8〜2.5質量%、Mn:0.8〜2.0質量%、S:0.05〜0.30質量%、Ni:5〜20質量%、N:0.3質量%以下、Zr:0.01〜0.20質量%、Ce:0.01〜0.10質量%、下記(i)〜(iii)の群から選択される、少なくとも(i)を含む一種以上、(i)Cr:14〜24質量%、(ii)Nb:1.5質量%以下、(iii)Mo:3.0質量%以下、および、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
なお、実施例2に係る耐熱鋳鋼は、実施例1に比べて、Moの代わりにNbを添加し、NbCを生成させることで耐熱性を高めており、NbCが生成されることによる鋳鋼の被削性の低下を抑えるべく、Ceを増量し、CeSを増加させている。
実施例3に係る耐熱鋳鋼は、実施例1に比べて、Ceを増量することにより、CeSを増加させ、被削性を確保している。
実施例4に係る耐熱鋳鋼は、実施例1に比べて、Moの代わりにNbを添加し、NbCによる耐熱性を確保し、Ceを増量することにより、CeSを増加させ、被削性を確保している。
実施例5に係る耐熱鋳鋼は、実施例1に比べて、Niを減量,Crを減量した代わりに、Moを増量すること、Nbを添加することで耐熱性を確保している。さらにCr炭化物の含有量低減により、Cr炭化物(Cr,Cr23)の低減を図り被削性を確保している。
実施例6に係る耐熱鋳鋼は、実施例1に比べて、Niを減量、Crを減量した代わりに、Siを増量することで耐熱性(耐酸化性)を確保している。さらにCr炭化物の含有量低減により、Cr炭化物(Cr,Cr23)の低減を図り被削性を確保している。
実施例7〜9に係る耐熱鋳鋼は、実施例1に比べて、オーステナイト安定化元素であるNiを減量し、オーステナイト安定化元素である安価なMnを増量し、オーステナイトの安定化を確保し、耐熱性を確保している。
特に、実施例7〜9では、実施例1に比べて、Niを減量,Crを減量した代わりに、Nbを添加したことで耐熱性を確保している。さらにCr炭化物の含有量低減により、Cr炭化物(Cr,Cr23)の低減を図り被削性を確保している。
実施例10は、実施例1に比べて、Cを増量し、Nbをさらに添加することで耐熱性を確保しつつ、Mnの増量と、Zr、Ceの増量により、実施例1と同等の被削性を確保している。
実施例11は、実施例1に比べて、オーステナイト安定化元素であるNiを減量し、代わりにオーステナイト安定化元素である安価なMnを増量してオーステナイトの安定化を確保し、それにより耐熱性を確保している。さらにCr炭化物の含有量低減により、Cr炭化物(Cr,Cr23)の低減を図り被削性を確保している。
[比較例1〜13]
実施例1と同じように、耐熱鋳鋼からなる試験片を作製した。具体的には、表1に示す成分の試料を用いて試験片を鋳造し、実施例1と同じ形状の試験片を切り出した。なお、これらの比較例1〜13は、本発明の各元素のうち、以下に示すように、いくつかの元素が、本発明の含有量の範囲から外れている。なお、Nb,Moは、上述したように、本発明において、選択的に添加されるべき元素である。
比較例1の耐熱鋳鋼は、ZrおよびCeを含有させていない。
比較例2の耐熱鋳鋼は、Ceを含有させず、Zr含有量が本発明の範囲よりも多い。
比較例3の耐熱鋳鋼は、ZrおよびCeを含有させず、Sの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例4,5の耐熱鋳鋼は、Crの含有量が本発明の範囲よりも多い。
比較例6の耐熱鋳鋼は、ZrおよびCeを含有させず、CおよびCrの含有量が本発明の範囲よりも多く、MnおよびSの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例7の耐熱鋳鋼は、ZrおよびCeを含有させず、NiおよびCrの含有量が本発明の範囲よりも多く、Sの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例8の耐熱鋳鋼は、ZrおよびCeを含有させず、NiおよびCrの含有量が本発明の範囲よりも多く、MnおよびSの含有量が本発明の範囲よりも少ない。なお、Niの含有量が本発明の範囲より多いので、凝固時の引け性(収縮)が阻害されるおそれがある。
比較例9の耐熱鋳鋼は、N、ZrおよびCeを含有させず、Crの含有量が本発明の範囲よりも多く、MnおよびSの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例10の耐熱鋳鋼は、NおよびCeを含有させず、Crの含有量が本発明の範囲よりも多く、MnおよびSの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例11の耐熱鋳鋼は、ZrおよびCeを含有させず、NiおよびCrの含有量が本発明の範囲よりも多く、MnおよびSの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例12の耐熱鋳鋼は、Ceを含有させず、NiおよびCrの含有量が本発明の範囲よりも多く、MnおよびSの含有量が本発明の範囲よりも少ない。
比較例13の耐熱鋳鋼は、Ceを含有させず、Crの含有量が本発明の範囲よりも多い。
Figure 0006250895
<各元素の元素量の確認>
表1に示す耐熱鋳鋼の炭素および硫黄の含有量を、高周波燃焼−赤外線式炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製 EMIA−3200)を用いて測定した。具体的には、タングステン助燃剤(チップ状:炭素含有率0.01%以下)、過塩素酸マグネシウム(無水:粒径0.7〜1.2mm)、およびアスカライトからなる試料を準備した。この試料と各耐熱鋳鋼を、酸素(純度が99.999%以上の乾燥酸素)の雰囲気下において、高周波るつぼ(セラミックるつぼ)内で溶融し測定を行った。なお、ダストフィルタには、ガラスウールを用いた。
表1に示す耐熱鋳鋼の窒素の含有量を、酸素・窒素分析装置(LECO製 TC−436型)を用いて測定した。具体的には、アンヒドロン(過塩素酸マグネシウム)、およびアスカライト(炭酸ガス吸収剤)、酸化銅(粒状)、金属銅(リボン状)からなる試料を準備した。この試料と各耐熱鋳鋼を、ヘリウム(99.99質量%未満)、アルゴン(99.99質量%未満)を混合した混合ガス雰囲気下において、黒鉛るつぼ内で溶融し、窒素の測定を行った。なお、ダストフィルタには、ガラスウールを用いた。
表1に示す耐熱鋳鋼の珪素の含有量を二酸化珪素重量法により測定した。具体的には、各耐熱鋳鋼からなる試料を王水で分解し、過塩素酸を加え加熱蒸発して珪素を不溶性二酸化珪素とし、濾過後過強熱して恒量とし、次にフッ化水素酸を加えて二酸化珪素を蒸発揮散させ、その減量から珪素を定量した。また、表1に示す耐熱鋳鋼のその他の元素の含有量は、一般的なIPC発光分析法により分析した。
<熱疲労試験>
実施例1〜11および比較例1〜13に係る耐熱鋳鋼の試験片に対して、油圧式熱疲労試験機(島津製作所製サーボパルサ)および冷却機能付き高周波コイルを用いて、熱疲労試験を実施した。これらの試験片として、直径10mm、長さ20mmの平行部を有したダンベル型丸棒中実試験片(n=1)を、上述したY型B号ブロックから切り出した。
図9Aに示すように、試験片の加熱温度を、200〜1000℃の台形波の温度プロフィールとなるように制御し(1サイクル11分)、試験片の拘束条件を50%拘束条件、逆位相(Out−Of−Phase)でのひずみ制御により繰り返し試験を実施した。ここで、50%拘束条件とは、試験片を加熱したときの熱膨張量ΔLのひずみ量の50%で試験片を拘束したものであり、温度が増加するに従って、圧縮側にひずみが増加するようにひずみ制御を行っている。
これにより、図9Bに示すように、各サイクル毎に応力ひずみヒステリシスループが得られ、すべてのサイクルのうち最も大きい応力、繰り返し応力の最大値(最大応力)σmaxを測定した。なお、図9Bには、塑性ひずみεp、全ひずみεT、繰り返し応力の最小値(最小応力)σminも合わせて示した。そして、図9Cには、応力が最大応力σmaxから25%低下した時点でのサイクル数を熱疲労寿命Nfとした。
表2に、実施例1〜11および比較例1〜13に係る耐熱鋳鋼の最大応力σmaxと熱疲労寿命Nfとの測定結果を示した。さらに、図1に、実施例1〜11および比較例1〜13に係る耐熱鋳鋼の繰り返し応力の最大値と、熱疲労寿命との関係を示した。
<被削性試験>
実施例1〜10および比較例1〜8,13に係る耐熱鋳鋼の試験片に対して、被削性試験を行った。試験片として、直径66mm、長さ190mmの丸棒形状の試験片(n=1)を、上述したY型B号ブロックから切り出した。
試験片を片側クランプ固定し、もう一方を回転冶具のセンター穴に支持し、試験片を刃具で旋削加工(切削加工)を行った。旋削加工の試験片の周速は、125m/分であり、2km加工した時点での刃具の逃げ面における刃具摩耗量Vbを測定した。表2および図2に実施例1〜10および比較例1〜8,13に係る耐熱鋳鋼の試験片の刃具摩耗量Vbを示した。
<Crの生成量とおよびNbの生成量>
実施例1〜3、実施例5、および比較例3〜8に係る耐熱鋳鋼の各成分の添加量から、耐熱鋳鋼に生成されるCrとCr23の生成量とおよびNbCの生成量を平衡状態図から解析(統合型熱力学計算ソフト(Thermo−Calc.)Thermo−Calc社製市販ソフト)により算出した。この結果、表1に示す。また、図3に、CrとCr23の生成量、およびNbCの生成量の総量(炭化物の量)と刃具摩耗量との関係を示した。
Figure 0006250895
<結果1>
ここで、図1に示すように、実施例1〜11、比較例3〜13に係る耐熱鋳鋼の熱疲労寿命が400サイクル以上であったが、比較例1、2に係る耐熱鋳鋼の熱疲労寿命は、400サイクル未満であった。一方、図2に示すように、実施例1〜10に係る耐熱鋳鋼に対する刃具摩耗量は、比較例3〜8、比較例13のものに比べて、小さかった。なお、比較例9〜12に係る耐熱鋳鋼については、被削性試験を行っていない。しかしながら、比較例9〜12に係る耐熱鋳鋼では、実施例1〜11よりもCrの含有量が多い(24質量%を超えている)ためCr炭化物からなる硬質粒子が生成され易い。これに加え、比較例9〜12に係る耐熱鋳鋼では、実施例1〜11よりも快削元素であるSの量が少なく、Ceが添加されていないので、実施例1〜11よりも、被削性が低いことは明らかである。
ここで、比較例3〜8に係る耐熱鋳鋼は、実施例1〜11に比べて、被削性を向上させる快削元素であるSの含有量が少なく、ZrおよびCeは含有していないので、図3に示すように、実施例1〜3および5のものに比べて、刃具摩耗量が多い。また比較例4は発明の範囲から外れている元素はCrのみであるが、他の元素のバランスから後述するパラメータPmが大きく外れているため、その結果被削性が劣っていると推定される。
<Pσについて>
ここで、図1に示すように、実施例1〜11、比較例1〜13に示す耐熱鋳鋼に作用する繰り返し応力の最大値(最大応力)σmaxと、破断時の繰り返し数(熱疲労寿命)Nfとに、一定の相関関係があり、耐熱鋳鋼の最大応力σmaxが増加するにしたがって、その疲労寿命Nfが低下している。
そこで、耐熱鋳鋼の最大応力σmaxに影響を与える元素として、C、Ni、Cr、Mo、およびNbを選び、耐熱鋳鋼の最大応力σmaxに関して、これらの元素の相互作用を検討した。具体的には、これら元素が耐熱鋳鋼に含有する量をパラメータとして、最大応力σmaxに応じた指標値が算出されるように、重回帰分析により以下の(1)式(回帰式)を算出した。
Pσ=399.25+129.78C−1.75Ni−6.23Cr−9.88Mo−26.88Nb…(1)
この式から、実施例1〜11、比較例1〜13に係る耐熱鋳鋼のPσを算出した。この結果を、表1に示す。なお、図4に、実施例1〜11および比較例1〜13に係る耐熱鋳鋼のPσと繰り返し応力の最大値(最大応力)σmaxとの関係を示す。図4からも明らかなように、Pσと最大応力σmaxとの関係は、略線形であり、C、Ni,Cr、Mo、及びNbの含有量から、(1)式を用いてPσを算出すれば、最大応力σmaxに相当する値を得ることができる。
図5は、実施例1〜11および比較例1〜13に係る耐熱鋳鋼のPσと破断時の繰り返し数(熱疲労寿命)Nfとの関係を示している。図5に示すように、Pσ≦310を満たす実施例1〜11は、確実に、熱疲労寿命Nfを向上させることができる。さらに比較例3〜13もPσ≦310を満たしているので、熱疲労寿命Nfは向上している。ただし、含有元素の内いずれかが本発明の成分範囲から外れているため、熱疲労寿命以外の特性については劣っている。従って、熱疲労寿命に限れば、Pσの値によって特性を評価または推定することが可能である。
<Pmについて>
次に、刃具の摩耗量Vbに影響を与える元素として、摩耗を促進させる元素Ni、C、Cr、Mo、およびNbの群と、被削性を向上させる元素S、Zr、およびCeの群とに分類した。これら元素が耐熱鋳鋼に含有する量をパラメータとして、これらのパラメータから、実施例1〜10および比較例1〜8および13の刃具摩耗量Vbとなるように、重回帰分析により以下の(2)式(回帰式)を算出した。
Pm=(0.0038Ni+0.119C+0.0014Cr+0.0136Mo+0.0344Nb)−(0.3129S+0.0353Zr+0.2966Ce)−0.04225…(2)
この式から、実施例1〜10および比較例1〜8および13に係る耐熱鋳鋼のPmを算出した。この結果を、表1および図6に示す。図6は、実施例1〜10および比較例1〜8、13に係る耐熱鋳鋼のPmと刃具の摩耗量との関係を示している。ここで、刃具摩耗量Vbが0.14mm以下で、被削性が良好であると判断でき、この場合Pm≦0.09の関係を満たすことが好ましい。Pm≦0.09となるように、Ni、C、Cr、Mo、Nb、S、Cr、およびCeの含有量を特定することにより、耐熱鋳鋼の被削性を向上させることができる。
また、比較例13では、Pm≦0.09を満たしても、CrおよびCe等の元素の含有量が、上述した範囲(発明の範囲)から外れているので、実施例1〜10に比べて、刃具摩耗量Vbが多い。
さらに比較例1、2もPm≦0.09を満たしているので、被削性(歯具摩耗量Vb)は向上している。ただし、含有元素の内いずれかが本発明の成分範囲から外れているため、被削性以外の特性については劣っている。従って、被削性に限れば、Pm値によって特性を評価または推定することが可能である。
<クリープ試験>
実施例3および実施例4に係る耐熱鋳鋼の試験片に対し、クリープ試験を行った。これらの試験片として、直径6mm、長さ30mmの平行部を有したダンベル型丸棒中実試験片を上述したY型B号ブロック(JIS規格)から切り出した。そして1000℃の高温雰囲気中で試験片両端に引張応力を掛けた状態で、クリープひずみを測定し、時間とクリープひずみの関係(クリープ速度)を把握した。印加した応力は20MPaと30MPaの2水準で実施した。この結果を表3および図7に示す。
Figure 0006250895
<結果2>
Nbを含有しない実施例3に対し、Nbを含有する実施例4は、1000℃で100時間保持した後のクリープひずみすなわちクリープ速度が小さいことが分かる。どちらも前記の試験結果のように熱疲労特性、被削性については同等の特性であるが、クリープ速度についてはNbを含有することにより大きく向上している。従って、このクリープ試験の結果から、熱疲労特性だけでなくクリープ速度も向上させたい場合にはNbを必須として含有することが好ましいことがわかる。
[実施例12〜15]
実施例7と同じように、耐熱鋳鋼からなる試験片を作製した。実施例12〜15が、実施例7と相違する点は、表4に示すようにZrの含有量である。試験片は、直径8mm、長さ124mmの平行部を有したダンベル型丸棒中実試験片であり、上述したY型B号ブロックから切り出した。
[比較例14〜16]
実施例7と同じように、耐熱鋳鋼からなる試験片を作製した。比較例14〜16が、実施例7と相違する点は、表4に示すようにZrの含有量である。
<高温引張試験>
実施例12〜15および比較例14〜16の耐熱鋳鋼の試験片(n=2)を用いて、島津製作所製オートグラフと恒温槽を用い、試験温度900℃、引張速度0.6mm/分一定で、高温引張試験を行った。図8および表4に、実施例12〜15および比較例14〜16の耐熱鋳鋼の引張強度、耐力、伸びを示した。
Figure 0006250895
<結果3>
この結果から、実施例12〜15に示すように、Zrの含有量が0.01〜0.20質量%である場合には、比較例14〜16とは異なり、高温強度(引張強度、耐力)が高い。これは、実施例12〜15に係る耐熱鋳鋼は、適切な量のZrを含有させることにより、オーステナイト結晶粒が微細化され、結晶粒界に偏析するCr(クロム)を分散させ、オーステナイト組織の安定化を図ることができたからであると考えられる。しかしながら、比較例14〜16の耐熱鋳鋼の如く、その含有量が0.20質量%を超えると、オーステナイト結晶粒の過剰な細粒化により高温強度が低下すると考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。

Claims (2)

  1. C:0.1〜0.4質量%、
    Si:0.8〜2.5質量%、
    Mn:0.8〜2.0質量%、
    S:0.05〜0.30質量%、
    Ni:5〜20質量%、
    N:0.3質量%以下、
    Zr:0.01〜0.20質量%、
    Ce:0.01〜0.10質量%、
    下記(i)〜(iii)の群から選択される、少なくとも(i)を含む一種以上、
    (i)Cr:14〜24質量%、(ii)Nb:1.5質量%以下、(iii)Mo:3.0質量%以下、
    および、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
  2. 前記(i)に加えさらに前記(ii)を含むことを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋳鋼。
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