図に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。電力取引事業者は、電力系統の需給がひっ迫した場合のみならず、卸電力取引価格が高騰した場合にも、電力需給の均衡に貢献することができる。例えば、卸電力価格の高騰した時間枠における需要家群の電力需要を一時的に削減し、他の時間枠で調達した電力で需要家群の電力需要を賄うことで、電力需要のピークをずらすことができる。電力取引事業者は、アグリゲータとも呼ばれる。
例えば、電力取引事業者は、電力取引市場または発電事業者(系統運用者)から、負荷設備に供給するための電力を事前に確保している。以下、負荷設備を設備と呼ぶ場合がある。電力取引事業者は、確保している電力の一部を、卸電力価格の高い時間帯(ピーク時間帯)に、電力取引市場を介して売却する。電力取引市場へ売却した電力量が、需要家群で削減調整すべき電力量となる。以下、需要家群で削減すべき電力量を調整電力量と呼ぶ場合がある。
各需要家は、電力の削減調整を行うピーク時間帯よりも前の時点で、電力を積極的に消費することにより、消費電力を無理なく削減できる。例えば、外気温の低い季節の場合、需要家は、事前に過暖房しておくことで、室温を上げておくことができる。従って、ピーク時間帯に暖房を停止させても、室温が急激に低下するのを抑制できる。同様に、外気温の高い季節の場合、需要家は、事前に過冷房しておくことで、室温を下げておくことができる。従って、ピーク時間帯に冷房を停止させても、室温の急激な上昇を抑制できる。このように、いわゆるピークシフトを行うことで、需要家の負担の少ない需要調整を実現することができる。
そこで電力取引事業者は、卸電力価格の高い時間帯で電力を売却すると同時に、卸電力価格の安い時間において過暖房または過冷房に必要な追加電力を購入する。卸電力価格の高いときに電力を売却して得た金額と、ピークシフトのための追加電力の購入のために支払った金額との差は、電力取引事業者の利益の源泉となる。
このような、いわゆる電力取引市場を介した調整電力量の取引は、小売ライセンスを持つ電力事業者であれば単独で行うことができる。小売ライセンスを持たない事業者であれば、小売事業者を通じて調整電力量を取引する。
ところで、各需要家はそれぞれ個別の事情を抱えているため、電力取引事業者が指定したピーク時間帯での電力調整に参加できない場合がある。過暖房または過冷房によるピークシフトの効果も、各需要家の建物の熱容量や設備の仕様などで大きく異なる。従って、需要家群を束ねて管理する電力取引事業者は、電力取引市場で取引する際に、各需要家で可能な調整電力量の時間変化を事前に考慮する必要がある。ここで、電力取引事業者が取りまとめる対象である需要家群をリソースと呼ぶ場合がある。
本実施形態では、需要家群を取りまとめて電力を市場で売買する場合に特徴的な性質に鑑みて、電力取引管理システム1を提案する。本実施形態の電力取引管理システム1は、例えば、電力取引を管理する電力取引管理装置20と、リソースの可用性を評価するリソース可用性評価装置21とを含む。本実施例の電力取引管理システム1は、リソースの調整能力の時間的な変動を予め評価した上で、卸電力価格の変動に応じた調整量取引を実現する。
リソース可用性評価装置21は、リソースを構成する需要家のうち代表的な需要家について、代表需要家の設備の物理的特性や代表需要家の運用条件に基づいて、調整能力を予測する。リソース可用性評価装置21は、予測した代表需要家の調整能力に基づいて、リソースの調整能力を予測する。リソース可用性評価装置21は、予測した各リソースの調整能力と、リソースの運用に関わる制約条件とに基づいて、所定の時間枠ごとに与えられた目標調整値を充足する調整計画を作成する。
電力取引管理装置20は、市場運用管理装置50から受信した過去の約定結果から未来の所定期間の卸電力取引価格の予測値を計算する。電力取引管理装置20は、予め設定した閾値に基づいて、取引基準を満たす売りと買いの電力商品の対を検出し、リソース可用性評価装置21を用いて取引を実行可能な電力商品対を決定する。電力取引管理装置20は、決定した電力商品対の取引を完了した場合の収益性が予め設定した基準を満たすか否かを判定する。電力取引管理装置20は、収益性の基準を満たす電力商品対を取引するための注文データを作成して、市場運用管理装置50へ送信する。電力取引管理装置20は、市場運用管理装置50から受信した約定状況と、予め定められている調整計画の変更期限とに基づいて、取引計画を修正することもできる。
図1は、電力取引管理システム1を含む全体システムの概念図である。図1では、電力取引市場の参加者が管理するコンピュータの動作の概要を説明する。理解のために、図1では参加者の名前を表示しているが、実際の処理は各参加者の管理するコンピュータにより実行される。
火力発電所、水力発電所、原子力発電所、風力発電所、太陽光発電所などの発電所で発電された電力は、送電線、変電所などを介して各需要家に供給される。ここでは、発電事業者および送配電事業者を区別せずに系統運用者7と呼ぶ。
系統運用者7の管理するコンピュータは、電力取引市場を運用する取引市場運用者5の管理するコンピュータ50(図2参照)に接続されている。図1では、系統運用者7を1つだけ示しているが、複数の系統運用者7が同一の電力取引市場に参加可能である。取引市場運用者5の管理するコンピュータ50には、一つまたは複数の電力小売事業者6(1)、6(2)が管理するコンピュータ60(図2参照)が接続されている。電力小売事業者6は3つ以上存在してもよい。以下、区別しない場合、小売事業者6と呼ぶ。
電力取引事業者1(1)、1(2)の管理するコンピュータ群のうち所定のコンピュータ20(図2参照)は、小売事業者6のコンピュータ60、または、取引市場運用者5のコンピュータ50の、少なくともいずれか一方に接続されている。電力取引事業者1は、一つまたは複数の小売事業者6を介して電力取引市場で電力を取引することもできるし、小売事業者6を介さずに電力取引市場で電力を直接取引することもできる。
図1では、電力取引事業者1(1)、1(2)を2つ示すが、少なくとも1つあればよく、3つ以上存在してもよい。区別しない場合、電力取引事業者1と呼ぶ。電力取引事業者1の管理する一つまたは複数のコンピュータから成るコンピュータプログラムは、電力取引管理システムに該当する。従って、電力取引管理システムと表現する場合がある。
電力取引事業者1の管理するコンピュータ群のうち他の所定のコンピュータ30,31(図2参照)は、需要家4(1)、4(2)の管理するコンピュータ41,42(図2参照)に接続されている。区別しない場合、需要家4と呼ぶ。
電力取引管理システム1は、小売事業者6のコンピュータを介してまたは直接に、取引市場運用者のコンピュータ50と通信し、電力商品を売買する。さらに、電力取引管理システム1は、需要家4の管理するコンピュータ41,42との間で情報を収集したり、電力商品の売買を実現するための電力調整の指示を与えたりする。
詳細は後述するが、電力取引管理システム1は、電力取引市場における電力価格(卸電力価格。以下同様)を予測する機能2006と、各需要家4で削減調整する電力に関する計画を作成する機能2107を有する。さらに、電力取引管理システム1は、予測した電力価格と調整計画に基づいて、電力取引市場で電力商品を取引するための取引計画を作成する機能2008を有する。さらに、電力取引管理システム1は、取引計画の収益を評価する機能2009と、必要な場合に取引計画を修正する機能2011を備える。
電力取引市場では、時間帯ごとの電力価格が時々刻々と変化している。取引市場運用者5の下側に示すグラフは、電力商品の価格である電力価格の変化を示す。縦軸は、一日の時間を所定単位(例えば30分単位、60分単位など)の時間帯で区切っている。各時間帯は隣接しており、隙間はない。例えば、30分単位の場合、一日の時間は、00:00〜00:30、00:30〜01:00、01:00〜01:30、01:30〜02:00...23:00〜23:30、23:30〜00:00のように48個の時間帯に区切られている。図1では、それらの所定単位の時間帯をT1、T2、T3、T4として表示している。
電力価格の変化を示すグラフの横軸は、取引の日付を示す。例えば3日分などの複数の日付が示されている。図1中では、2日前(d0=d2−2日)、1日前(d1=d2−1日)、今日(d2)の3日分の日付を示す。
ある一日に着目すると、各時間帯での電力価格はそれぞれ異なる。例えば、冷暖房設備の作動する時間帯、食事を準備する時間帯などでは電力需要が大きいため、それらの時間帯の電力価格は高くなる傾向にある。これに対し、活動が低調になる深夜の時間帯などでは電力需要が少ないため、それらの時間帯の電力価格は低くなる傾向にある。また例えば、夏季や冬季などでは電力需要が大きいため、電力価格は高くなる傾向にある。これに対し、春や秋などでは電力需要が少ないため、電力価格は低くなる傾向にある。さらに、電力取引管理システムが取りまとめる需要家の種類に応じて、電力需要も増減する。需要家の種類としては、例えば、一般家庭、商業施設、病院、工場などである。
電力取引管理システム1の電力価格を予測する機能2006は、将来の数日分の電力価格を予測することができる。グラフの右端に示す丸印は、2日前(d0)に予測した電力価格を示す。白丸は、予測した電力価格と実際の電力価格との差が所定の許容範囲に収まっている場合である。黒丸は、予測した電力価格と実際の電力価格との差が所定の許容範囲に収まらない場合である。
図1中に黒丸で示すように、ある時間帯T3の予測電力価格が現実の電力価格よりもΔD低かった場合を想定する。もし予測した電力価格で電力を売却予定であった場合、実際の価格は予定価格よりΔD低下しているため、赤字になる可能性がある。この場合、電力取引管理システム1の取引計画修正機能2011は、電力取引計画を修正する。
このように、本実施例の電力取引管理システム1は、電力受渡し時間軸における最適化と、取引時間上での最適化との、2つの異なる時間軸上で電力取引の適正化を実現する。電力受渡し時間軸における最適化とは、例えば、電力価格の安い時間帯の電力を市場から購入し、電力価格の高い時間帯で需要家群の消費電力を低減し、その低減した電力を調整電力として市場に売却することである。購入価格よりも売却価格の方が高くなるほど、利益が増大する。その利益は、電力取引事業者の収益になる。さらに、利益の一部は需要家4に還元することもできる。取引計画を履行するために、電力取引管理システム1は、管理下の需要家4に対して、電力消費量を削減調整するように指示する。この指示を受けた需要家4のコンピュータ41(図2参照)は、負荷設備のスイッチを切ったり、設定温度を上下させたりして、電力消費量を削減する。この削減した分の電力(調整電力)は、その時間帯の電力購入を予約している他の電力取引管理システムまたは小売事業者6に売却される。
図2は、電力取引管理システム1を含む全体システムを示す。通信ネットワークCNには、例えば、電力取引管理システム1(電力取引事業者)、需要家4、取引市場運用者5、小売事業者6、気象情報提供者8、系統運用者7(図1にのみ図示)のコンピュータが接続されている。以下、事業者の有するコンピュータと当該事業者とを区別せずに、説明する場合がある。
電力取引管理システム1は、契約に基づいて電力取引事業者がリソース(需要家群)から調達した調整電力を、直接または小売事業者を介して、電力取引市場で取引を行うためのシステムである。
電力取引事業者は、例えば、取引運用管理者とリソース運用管理者を含んで構成することができる。取引運用管理者は、契約に基づいた需要家4からの調整電力の調達と、直接または小売事業者6を介した電力取引市場での取引計画の立案ならびに実行とを行う事業者である。リソース運用管理者は、取引運用管理者が立案したリソースの調整計画を参照して、実際にリソースの運用を実行する事業者である。電力取引事業者は、常に取引運用管理者とリソース運用管理者とに分かれている必要はなく、同一の事業者が取引の運用とリソースの運用の両方を管理してもよい。
取引運用管理システム2は、取引運用管理者の管理するコンピュータシステムであり、例えば、電力取引管理装置20、リソース可用性評価装置21、情報入出力端末22を備える。電力取引管理装置20は、電力取引市場との間で電力取引に必要な情報を交換するコンピュータである。リソース可用性評価装置21は、リソースとしての需要家群が所定の時間帯でどの程度電力を調整できるかを評価するコンピュータである。情報入出力端末22は、各管理装置20,21へ指示や情報を入力したり、各管理装置20,21の処理結果などを表示したりするためのコンピュータである。
リソース運用管理システム3は、リソースである各需要家4の運用を管理するコンピュータシステムであり、例えば、リソース運用管理装置30、リソース情報管理装置31、情報入出力端末32を備える。リソース運用管理装置30は、調整計画に従って、リソースである各需要家4へ電力調整の指示を与えるコンピュータである。リソース運用を実行する際に、リソース運用管理装置30は、需要家4の有する制御装置41に対して制御信号を送信し、需要家4の有する設備を制御する。リソース情報管理装置31は、各需要家4に関する情報を取得するコンピュータである。情報入出力端末32は、各管理装置30,31へ情報を入出力するためのコンピュータである。
電力取引管理システム1の構成は、図2に示す例に限定しない。電力取引管理システム1を一つの物理的コンピュータから構成し、その物理的コンピュータ内に、上述した各管理装置20,21,22,30,31,32と同等の機能を実装する構成でもよい。あるいは、管理装置20,21を一つのコンピュータにまとめたり、管理装置30,31を他の一つのコンピュータにまとめたりする構成でもよい。
需要家4は、図示せぬ負荷設備を有する個人または法人である。負荷設備としては、例えば、照明装置、空調装置、冷蔵庫、冷凍庫、温水貯蔵装置などの電気エネルギを消費する各種装置を挙げることができる。
需要家4は、例えば、情報入出力端末40、制御装置41、計測装置42を備える。需要家4は、保有設備の情報、保有設備の運用に関する情報、建物に関する情報などを、情報入出力端末40を介して、電力取引管理システム1へ送信する。制御装置41は、電力取引管理システム1から受信する制御信号に応じて、需要家4の保有する設備の動作を制御する。計測装置42は、例えば、室温、外気温、日射量、設備稼働状態などの、需要家の環境を示す情報を取得して、電力取引管理システム1へ送信する。なお、上述した情報は一例であり、上記の情報全てを計測装置42が常に取得する必要はない。計測装置42は、適切な電力調整に必要な範囲で情報を取得できればよい。
小売事業者6は、電力取引市場で調達した電力を系統運用者7の運用する配電網を通じて、需要家4に供給する。さらに、小売事業者は、需要家4へ供給を予定していた電力の一部を、電力取引事業者を介して需要家4から買い戻すこともできる。小売事業者6は、電力取引管理システム1や電力取引市場との取引に関する情報を通信するための、取引情報管理装置60を備える。
取引市場運用者5は、電力取引市場を運用する事業者であり、市場運用管理装置50を備える。市場運用管理装置50は、小売事業者6の装置60、電力取引管理システム1、系統運用者7の装置との間で、電力取引に関する情報を交換する。
気象情報提供者8は、気象情報配信装置80を保有している。気象情報配信装置80は、電力取引管理システム1などに対して、気象予測情報や過去の気象情報を配信する。
図3を参照して、電力取引管理システム1の処理の流れと機能の関係を説明する。電力取引管理システム1は、上述のように、リソースとしての需要家群の状況に応じて電力取引の計画を作成し実行する取引運用管理システム2と、需要家群に指示を出して所定のタイミングで電力を調整させるリソース運用管理システム3を備える。取引運用管理システム2は、需要家群の個別的事情を考慮して動的に取引計画を作成するもので、主に、電力取引管理装置20と、リソース可用性評価装置21を備える。
電力取引管理装置20は、例えば、電力価格予測部2006、取引条件設定部2007、取引計画生成部2008、収益性評価部2009、注文実行部2010、取引計画修正部2011、取引計画情報記憶部2012を備える。詳細は図4で後述する。
ここでは概略を述べる。電力取引管理装置20は、過去の約定結果を示す過去約定結果情報5001Aと、調整計画情報2013Aとに基づいて、取引計画情報2012Aを生成する。市場運用管理装置50は、過去約定結果情報5001Aを過去約定結果情報記憶部5001に格納して管理しており、電力取引管理装置20からの求めに応じて過去約定結果情報5001Aを電力取引管理装置20へ送信する。
リソース可用性評価装置21は、調整計画情報2013Aを作成し、電力取引管理装置20へ送信する。電力取引管理装置20は、受領した調整計画情報2013Aを、調整計画情報記憶部2013に格納する。なお、調整計画情報2013Aを記憶する記憶部2013は、リソース可用性評価装置21内に設けてもよい。図中では、過去約定結果情報5001Aを過去約定結果5001Aと、調整計画情報2013Aを調整計画情報2013Aと、取引計画情報2012Aを取引計画2012Aと、示している。
電力取引管理装置20は、調整計画情報2013Aを用いて取引計画情報2012Aを生成し、取引計画情報記憶部2012に記憶する。電力取引管理装置20は、取引計画情報2012Aを達成するための注文データを生成し、生成した注文データを市場運用管理装置50へ送信する。市場運用管理装置50は、電力取引管理装置20から受信した注文データを、注文受付部5003で受け付ける。市場運用管理装置50は、受け付けた注文データを、現在取引情報5002Aの一部として、現在取引記憶部5002へ格納して管理する。
上述の通り、電力取引市場には複数の小売事業者6や電力取引事業者が参加しており、かつ、気象の急激な変化や突発的なイベントなどで電力需要も変動するため、電力取引市場の電力価格は日々変化する。従って、電力取引管理システム1の予定した電力価格で、電力商品を売買できるとは限らない。約定予定日において、実際の電力価格が予定した電力価格よりも所定の価格差以上安い場合、赤字になる可能性があるため、電力取引管理システム1は、調整電力を電力取引市場へ売却するわけにはいかない。約定予定日における実際の電力価格が予定した電力価格よりも所定の価格差以上高い場合も、赤字になる可能性があるため、電力取引管理システム1は、消費電力を調整するための事前準備で使用する電力を電力取引市場から購入するわけにはいかない。
このように、電力価格が変動する市場では、最初に作成した取引計画情報2012Aに従って作成した注文データの取引が成立しない場合もありえる。そこで、電力取引管理装置20は、市場運用管理装置50から受信した現在取引情報5002Aと、最初に生成した取引計画情報2012Aとに基づいて、取引計画情報2012Aを修正する。そして、電力取引管理装置20は、取引内容を変更するための注文データを新たに作成し、市場運用管理装置50に送信する。新たな注文データは、現在取引情報5002Aの一部として現在取引記憶部5002へ格納される。
電力取引管理装置20が保持する取引計画情報2012Aの構成例は、図5で説明するが、先に簡単に概要を述べる。取引計画情報2012Aは、例えば、売り注文であるか買い注文であるかを区別するための商品識別子と、売り注文と買い注文との価格差と、注文する取引数量とを含むことができる。電力取引管理装置20が保持する調整計画情報2013Aは、例えば、各リソースの所定時間枠ごとの調整目標値を含むことができる。
リソース可用性評価装置21の概要を説明する。リソース可用性評価装置21は、気象情報配信装置80から受信した情報と、計測装置42から受信した情報と、リソース情報管理装置31から受信した情報とに基づいて、リソースの調整能力を予測する。リソース可用性評価装置21は、リソースの調整能力の予測結果と、リソース仕様情報2019Aと、運用制約情報2110Aとに基づいて、調整計画情報2013Aを生成する。リソース可用性評価装置21は、生成した調整計画情報2013Aを電力取引管理装置20へ送信する。図3では、電力取引管理装置20が調整計画情報2013Aを記憶部2013へ格納する場合を示すが、これに限らず、リソース可用性評価装置21が調整計画情報2013Aを記憶部2013へ格納してもよい。
リソース可用性評価装置21が保持するリソース仕様情報2019Aの構成例は、図8で述べる。先に簡単に説明すると、リソース仕様情報2019Aは、例えば、各リソース(需要家4)についての、調整容量の最大値と最小値、調整電力量の時間的な変化率、調整に要するコスト、貯熱量、および熱量の変化率などを含むことができる。
リソース可用性評価装置21が保持する運用制約情報2110Aの構成例は、図9で述べる。簡単に説明すると、運用制約情報2110Aは、例えば、各リソースについての、調整を実行する際の継続時間の最大値および最小値、調整を休止する際の継続時間の最大値および最小値、調整を実行可能な時間枠の指定条件、時間枠の排他的条件などを含むことができる。時間枠の排他的条件とは、例えば、朝方での消費電力の調整と夕方での消費電力の調整のうちいずれか一方のみ実行可能である、といった条件である。
図4を参照して、電力取引管理装置20およびリソース可用性評価装置21の機能構成の一例を説明する。
電力取引管理装置20は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータなどの情報処理装置として構成される。電力取引管理装置20は、一つの装置として構成されている必要はなく、複数の装置を連携させることで構成してもよい。電力取引管理装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)2001、入力装置2002、出力装置2003、通信装置2004及び記憶装置2005を備えることができる。
「プロセッサ部」としてのCPU2001は、記憶部2005に格納された所定のコンピュータプログラムを読み出して実行することで、電力取引管理装置20の動作を統括的に制御する。
入力装置2002は、オペレータが電力取引管理装置20に情報を入力するための装置である。入力情報には、デーや指示がある。入力装置2002は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声認識装置、動作認識装置などを用いて構成される。出力装置2003は、電力取引管理装置20から外部へ情報を出力する装置である。出力装置2003は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などを用いて構成される。通信装置2004は、通信ネットワークCNを介して通信するための装置である。通信部2004は、例えば、無線LAN(Local Area Network)または有線LANに接続するためのNIC(Network Interface Card)を備えて構成される。
記憶装置2005は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記憶媒体にデータを格納する装置である。図中では、記憶装置2005を一つの装置として示しているが、主記憶装置と補助記憶装置のように、複数の記憶装置から構成することもできる。
「メモリ部」としての記憶装置2005は、コンピュータプログラム群2006〜2011と、データベース群2012,2013とが格納されている。先にコンピュータプログラム群について説明し、次にデータベース群について説明する。
記憶装置2005には、例えば、電力価格予測部2006、取引条件設定部2007、取引計画生成部2008、収益性評価部2009、注文実行部2010、及び取引計画修正部2011などの機能を実現するための所定のコンピュータプログラムを格納する。記憶装置2005は、オペレーティングシステム、デバイスドライバなども格納しているが、図示は省略する。
電力価格予測部2006は、「電力価格予測処理」を実行するプログラムである。詳しくは電力価格予測部2006は、市場運用管理装置50から取得した過去の約定結果情報5001Aに基づいて、電力商品ごとの電力価格を所定の将来期間にわたって予測するプログラムである。
取引条件設定部2007は、電力取引市場で電力を取引するために必要な条件を設定するプログラムである。取引条件として設定する値は、例えば、電力価格差の閾値、および、受渡時間の差の閾値である。
電力取引管理システム1は、電力需要の大きい時間帯においてリソースの消費電力を削減し、リソースで削減した分の電力を電力商品として電力取引市場に売却する。さらに、電力取引管理システム1は、消費電力調整のための事前処理に使用する電力を、電力取引市場から購入する。事前処理とは、例えば、消費電力を調整する前に、室温を強めに下げておく、または強めに上げておく、といった処理である。
このように電力取引管理システム1は、リソースで調達する電力商品を電力取引市場へ売ると共に、リソースに追加供給するための電力商品を電力取引市場から購入する。売り注文する電力商品の電力価格の方が、その売り注文に対応する買い注文する電力商品の電力価格よりも高くなければ、取引結果は赤字となる。そこで、電力取引管理システム1は、取引条件の一つとして、電力価格差の閾値の設定を要求する。
さらに、リソースが消費電力調整のための事前処理を行う時間と、リソースが消費電力を調整する時間帯との時間差が短すぎる場合、リソースは対応できない場合がある。例えば、ある種の設備は、運転開始後ただちに所定の運転状態に移行するのではなく、時間をかけて運転状態に移行する。運転終了後も同様に、時間をかけて運転状態から停止状態へ移行する。従って、電力取引管理システム1は、事前調整の効果を得るために、売り注文の電力商品の受け渡し時間と買い注文の電力商品の受渡し時間との時間差の閾値設定を、取引条件の他の一つとして要求する。
取引計画生成部2008は、オペレータから設定される取引条件と、予測した将来の電力価格とに基づいて、選択した電力商品を電力取引市場で売買するための取引計画を生成するプログラムである。取引計画は、取引計画情報2012Aとして生成され、取引計画情報記憶部2012に格納される。以下、取引計画情報2012Aを取引計画2012Aと略記する場合がある。
取引計画生成部2008は、「電力商品抽出処理」および「取引計画作成処理」を実行する。詳しく説明すると、取引計画生成部2008は、電力価格予測部2006が予測した電力商品ごとの電力価格の予測値に対して、取引条件設定部2007で設定した価格差の閾値および時間差の閾値の両方を満たす電力商品の対を全て検出する。そして、取引計画生成部2008は、検出した電力商品対の中から、例えば価格差の大きい順など予め設定した優先度に基づいて取引すべき電力商品対を決定する。さらに、取引計画生成部2008は、決定した電力取引商品対のうち売り注文を行う時間枠の調整電力量を、リソース可用性評価装置21を用いて計算することで取引可能な数量を決定する。つまり、取引計画生成部2008は、リソース可用性評価装置21の評価結果に従って、売る電力商品の中味である調整電力量を決定する。調整電力量とは、リソースが消費電力を削減調整することで作り出す電力を意味し、調整量または取引量とも呼ぶ。
収益性評価部2009は、「収益予測処理」および「収益性判定処理」を実行するプログラムである。収益性評価部2009は、取引計画生成部2008が生成した取引計画に基づいて予測利益を計算し、その予測利益が予め設定した収益条件を満たすか否かを判定する。
注文実行部2010は、「注文処理」を実行するプログラムである。注文実行部2010は、収益条件を満たす取引計画に基づいて注文データを生成し、市場運用管理装置50に注文データを送信する。さらに、注文実行部2010は、取引計画に対応付けられている調整計画をリソース運用管理装置30に送信する。リソース運用管理装置30は、「調整計画送信処理」を実行することで、リソースに調整計画を送信する。ここで、各需要家4の制御装置41は、自装置41に関連する調整計画のみ受信する。
取引計画修正部2011は、「取引計画修正処理」を実行するプログラムである。取引計画修正部2011は、市場運用管理装置50から取得した現在の約定状況情報5002Aに基づいて、取引計画2012Aを修正する。
記憶装置2005に記憶されるデータベース群について説明する。記憶装置2005には、取引計画情報記憶部2012と、調整計画情報記憶部2013などのデータベースが格納されている。
取引計画情報記憶部2012は、取引計画情報2012Aを保持する。調整計画情報記憶部2013は、調整計画情報2013Aを保持する。取引計画情報2012Aは、取引計画生成部2008が生成した取引計画の情報である。詳細は後述する。調整計画情報2013Aは、リソース可用性評価装置21の作成した調整計画の情報である。詳細は後述する。
リソース可用性評価装置21は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ又はハンドヘルドコンピュータなどの情報処理装置である。リソース可用性評価装置21は、一つの装置として構成されている必要はなく、複数の装置を連携させることで構成してもよい。例えば、リソース可用性評価装置21と電力取引管理装置20を一体化してもよい。
リソース可用性評価装置21は、例えば、CPU2101、入力装置2102、出力装置2103、通信装置2104及び記憶装置2105を備えることができる。
CPU2101は、電力取引管理装置20のCPU2001と共に「プロセッサ部」を構成することができる。CPU2101は、リソース可用性評価装置21の動作を統括的に制御する。
入力装置2102は、電力取引管理装置20の入力装置2002に対応する。出力装置2103は、電力取引管理装置20の出力装置2003に対応する。通信装置2104は、電力取引管理装置20の通信装置2004に対応する。従って、これら装置2102〜2104の説明は省略する。
記憶装置2105は、電力取引管理装置20の記憶装置2005と共に「メモリ部」を構成できる。記憶装置2105には、調整能力予測部2106、調整計画生成部2107、調整計画修正部2108などの各種コンピュータプログラムが格納されている。
調整能力予測部2106は、リソースの建物や設備についての情報と、リソースの過去の環境(室温など) についての情報と、リソース所在地の予測外気温情報とに基づいて、リソースの調整能力を予測するプログラムである。リソースの建物や設備についての情報は、リソース情報管理装置31から取得する。リソースの過去の室温の記録(室温履歴)は、計測装置42から取得する。リソース所在地の予測外気温情報は、気象情報配信装置80から取得する。なお、リソースを構成する需要家4ごとにそれぞれ調整能力を予測してもよいし、あるいは、リソースを代表する需要家を選定し、代表需要家についての調整能力を予測する構成でもよい。後者の場合、代表需要家の調整能力に基づいて、リソース全体の調整能力を算出することができる。本実施例では、後述のように、演算処理の負荷を軽減すべく、代表需要家の調整能力を予測する。
リソースの調整能力とは、例えば、リソースの調整電力量やリソースの内包する熱量などの、物理量で示される情報である。リソースの内包する熱量とは、リソースが消費電力を調整する結果、変動する熱量である。
調整計画生成部2107は、「調整計画作成処理」を実行するプログラムである。調整計画生成部2107は、リソース仕様情報2019A、運用制約情報2110A、及び調整能力予測部2106の予測結果に基づいて、取引計画生成部2008の作成した取引計画を実現するための調整計画情報2013Aを生成する。詳しくは、調整計画生成部2107は、取引計画生成部2008から与えられた時間枠ごとの目標調整値を満たすように、各リソースでの調整電力量を決定する。調整計画情報2013Aは、調整計画情報記憶部2013に格納される。調整計画情報記憶部2013は、電力取引管理装置20内に設けてもよいし、リソース可用性評価装置21内に設けてもよい。あるいは、電力取引管理装置20およびリソース可用性評価装置21のいずれとも異なる別体のストレージ装置内に、調整計画情報記憶部2013などを配置する構成でもよい。電力取引管理装置20およびリソース可用性評価装置21が必要な情報にアクセスして利用できる構成であればよく、図示した構成例に限定されない。
調整計画修正部2108は、「調整計画修正処理」を実行するプログラムである。調整計画修正部2108は、取引計画修正部2011から与えられた情報に基づいて、調整計画情報記憶部2013に保持されている調整計画を修正する。
記憶装置2105には、リソース仕様情報記憶部2109、運用制約情報記憶部2110などのデータベースも格納されている。リソース仕様情報記憶部2109は、リソース仕様情報2109Aを保持する。運用制約情報記憶部2110は、運用制約情報2110Aを保持する。ソース仕様情報2109Aは、消費電力の調整に関わるリソースの仕様に関わる情報である。詳細は後述する。運用制約情報2110Aは、リソースの運用に対する制約に関する情報である。詳細は後述する。
図5は、取引計画情報2012Aの構成例を示す。取引計画情報2012Aは、取引計画生成部2008によって作成される情報であり、所定の条件に合致する電力商品対の候補が記憶される。取引計画情報2012Aは、注文実行部2010が注文データを作成する際に用いられる。さらに、取引計画情報2012Aは、取引計画修正部2011が取引計画を修正する際にも用いられる。
取引計画情報2012Aは、例えば、売り電力の商品識別子欄2012A1と、受渡し時間枠欄2012A2と、買い電力の商品識別子欄2012A3と、受渡し時間枠欄2012A4と、予測価格差欄2012A5と、取引優先度欄2012A6と、取引可能数量欄2012A7とを備える。
売り電力の商品識別子欄2012A1は、売却する電力商品の候補を識別するための識別子を記憶する。受渡し時間枠欄2012A2は、売却対象の電力商品候補を売却する時間帯を示す情報を記憶する。買い電力の商品識別子欄2012A3は、購入する電力商品の候補を識別するための識別子を記憶する。受渡し時間枠欄2012A4は、購入対象の電力商品候補の購入時間帯を示す情報を記憶する。
予測価格差欄2012A5は、売却対象の電力商品候補の予測電力価格と、購入対象の電力商品候補の予測電力価格との差を記憶する。取引優先度欄2012A6は、注文するか否かを決定するために使用する優先度を記憶する。取引優先度は、注文するかしないかを示すフラグ情報として用いることができる。
取引計画生成部2008は、最初に欄2012A1から欄2012A5までの情報を生成する。さらに、取引計画生成部2008は、欄2012A1から欄2012A5までの情報に基づいて、取引優先度欄2012A6の情報を作成する。
取引優先度欄2012A6には、時間枠が重複しない限りにおいて、取引すべき電力商品対の優先度が格納される。図5の例において、取引優先度欄2012A6に「1」「2」「3」が格納された各電力商品対は、電力商品を売却する時間枠および電力商品を購入する時間枠のいずれも、互いに重なっていない。異なる電力商品の受け渡しを同時に実行することは、通常の場合できないためである。取引計画情報2012Aに登録された電力商品対のうち、取引優先度欄2012A6に値が設定された電力商品対は、実際の取引対象として選択される。
最後に、取引計画生成部2008は、取引可能数量欄2012A7に、選択した電力商品対で取引可能な数量(電力)を記憶する。取引計画生成部2008は、リソース可用性評価装置21に対して、取引可能な数量の算出を依頼する。リソース可用性評価装置21は、取引優先度に基づいて、リソースで取引可能な数量を算出し、取引計画生成部2008へ渡す。
図5の例では、5行目に示す売り電力商品識別子「140722−35」と買い電力商品識別子「140722−30」との電力商品対は、予測価格差が最も高いため、取引優先度に「1」が設定される。取引優先度「1」が設定された電力商品対の取引可能数量は、リソース可用性評価装置21の演算した「900kW」である。
なお、本実施例では、売却対象の電力商品の取引可能数量と、購入対象の電力商品の取引可能数量とは等しいものとして示すが、これに限らない。例えば収益条件を満たすのであれば、売却対象の電力商品の取引可能数量と、購入対象の電力商品の取引可能数量とは異なってもよい。
図6および図7を用いて、調整計画情報2013Aの構成例と表示例を示す。調整計画情報2013Aは、リソース可用性評価装置21の調整計画生成部2107によって作成される。
調整計画情報2013Aは、例えば、調整を行う時間枠欄2013A1ごとに、各リソース(各需要家4)での消費電力の調整に関わる状態値欄2013A2と、各リソースに割り当てる調整量を示す調整量欄2013A3とを対応付けて構成される。
時間枠欄2013A1には、取引計画生成部2008から与えられる、消費電力調整の開始時間と終了時間、及び、開始時間から終了時間までの長さが格納される。状態値欄2013A2には、調整計画生成部2107の計算結果である、各リソースの時間枠ごとの調整に関する状態値が格納される。調整量欄2013A3には、調整計画生成部2107の計算結果である、各リソースの時間枠ごとの割当て調整電力量の値が目標調整値として格納される。
例えば図5の例では、「リソース1」は、時間枠「17:00〜17:30」「17:30〜18:00」「18:00〜18:30」の連続する3つの(複数の)時間枠において、状態値に「1」が設定されている。状態値「1」は、その時間枠で消費電力を調整することを示す。それら3つの時間枠に割り当てられた目標調整電力量は、調整量欄2013A3に示すように、「260」「350」「350」と計算されている。
ここで、消費電力の調整終了後の時間枠「18:30〜19:00」以降では、調整を行わないことを意味する状態値「0」が設定されている。しかし、調整終了直後の時間枠「18:30〜19:00」には、状態値「0」が設定されているにに関わらず、「100」の調整電力量が割り当てられている。この調整終了後の調整電力割り当ては、調整終了後の回復段階であることを意味する。例えば集中冷暖房設備などのようなある種の負荷設備には、停止状態から運転状態への移行、および運転状態から停止状態への移行に、時間を要するものがある。
図6中の「リソース2」に着目する。「リソース2」において、連続する2つの(複数の)時間枠「16:00〜16:30」「16:30〜17:00」には、状態値「2」が設定されている。
状態値「2」は、消費電力の調整を実行する本来の時間枠よりも先行して、調整を開始することを意味する。上述のように、集中冷暖房設備のようなある種の負荷設備は調整電力量の変化率が遅いため、早目に調整を開始しなければ、予定した時間枠において目標調整電力量を達成できない可能性がある。そこで、調整電力量の目標値が「0」である、先行時間枠においても調整電力量を割り当てる。図6の例では、先行時間枠「16:00〜16:30」「16:30〜17:00」において、リソース2には、「80kW」「160kW」の調整電力量が割り当てられている。
図7は、図6の調整計画情報2013Aを視覚化した例を示す。グラフの横軸は時間を示す。グラフの縦軸は調整電力量を示す。図7は、運用制約情報2110Aに記載された各リソースの制約条件を満たしながら、図中太い実線で示す目標調整値を充足可能な調整計画が生成されたことを示している。
調整計画情報2013Aの作成結果として得られた、全リソースの各時間枠の調整電力量の値は、取引計画情報2012Aの取引可能数量欄2012A7の対応する時間枠の箇所に格納される。
図8は、リソース仕様情報2109Aの構成例を示す。リソース仕様情報2109Aは、消費電力の調整に参加するリソースの仕様を示す情報であり、例えば、リソース運用管理システム3を管理する管理者によって予め入力される。住宅メーカの運用するコンピュータなどがリソース仕様情報2109Aの一部または全部を作成するために必要な情報を提供する場合、その提供された情報を用いてリソース仕様情報2109Aを、自動的にまたは半自動的に、作成してもよい。
リソース仕様情報2109Aは、例えば、調整容量を示す欄2109A1と、調整量の変化率を示す欄2109A2と、コストを示す欄2109A3と、貯熱量を示す欄2109A4と、熱量変化率を示す欄2109A5とを、リソースごとに管理している。
調整容量欄2109A1は、リソースでの調整電力量の最大値と最小値を格納する。調整量変化率欄2109A2は、リソースでの電力調整の時間的な変化量であるRamp−Up値とRamp−Down値を格納する。
コスト欄2109A3は、リソースで消費電力を調整する場合に電力取引事業者が支払うコストを格納する。そのコストは、調整待機料と調整実施料とに分けられる。調整待機料は、リソース確保のために支払うコストであり、1時間当りの調整電力量(kWh)のコストとして算出される。調整実施料は、実際に消費電力の調整を実行した際の調整電力量(kWh)あたりのコストである。
貯熱量欄2109A4は、リソースにおいて蓄積可能な熱量の最大値および最小値を格納する。熱量変化率欄2109A5は、消費電力を調整する際の熱の消費率と、消費電力の調整の有無に関わらず発生する熱の流入率および流出率とを格納する。このように構成されるリソース仕様情報2109Aは、調整計画生成部2107が調整計画を作成する際に利用される。
図9は、運用制約情報2110Aの構成例を示す。運用制約情報2110Aは、リソースの運用についての制約を示す情報であり、例えばリソース運用管理システム3の管理者によって予め入力される。これに代えて、需要家4が情報入出力端末40を用いて、運用制約に関する情報を電力取引管理システム1へ入力する構成でもよいし、電力取引管理システム1が需要家4の制御装置41から運用制約に関する情報の一部または全部を取得する構成でもよい。
運用制約情報2110Aは、例えば、調整を実行する場合の継続時間を示す欄2110A1と、調整を休止する場合の継続時間を示す欄2110A2と、調整実行可能な時間的条件を示す欄2110A3と、時間の排他条件を示す欄2110A4を含む。
調整実行継続時間欄2110A1は、リソースごとの、調整を実行するに際して継続可能な時間の最大値および最小値を格納する。調整休止継続時間欄2110A2は、リソースごとの、調整を実行しない時間、すなわち休止を継続する時間の最大値および最小値を格納する。
調整実行可能な時間条件欄2110A3は、リソースごとの、調整可能な時間枠、あるいは、調整できない時間枠を区別するためのフラグ値を格納する。図中のバツ印は、消費電力を調整できない時間枠であることを示す。時間の排他条件欄2110A4は、リソースごとの、時間的な排他条件を格納する。例えば、リソースの種類、特徴、性質などにより、一日一回のみ消費電力の調整が可能であるといった条件が存在する場合がある。欄2110A4は、例えば、朝方に調整を実行する場合は夕方は行わない、といった時間枠の排他的な条件を格納する。
図9の例では、「リソース1」は、消費電力の調整を開始する場合、最低「1.5」時間は継続しなければならず、かつ、最大でも「2」時間までしか継続できない。さらに「リソース1」は、消費電力の調整を終了させた場合、少なくとも「1」時間は調整を再開できない。また「リソース1」は、例えば「15:30〜16:00」「16:00〜16:30」「16:30〜17:00」の連続する3つの時間枠では、消費電力を調整できないことが事前にわかっている。さらに「リソース1」には、時間の排他条件が設定されている。その排他条件とは、「17:00〜20:00」までの時間帯と「09:00〜12:00」の時間帯とは電力調整の実行について競合し、いずれか一方の時間帯で電力を調整した場合は、他方の時間帯での電力調整はできない、という条件である。このように構成される運用制約情報2110Aは、調整計画生成部2107が調整計画を作成する際に利用される。
図10〜図14を用いて、電力取引管理システム1の処理を説明する。図10は、電力取引計画を生成する処理の順を示すフローチャートである。本処理は、電力取引管理装置20が電力取引事業者からの入力操作を受け付けた事を契機として開始される。
最初に、電力取引管理装置20は、ステップS101からステップS104までの処理を実行する。次いでリソース可用性評価装置21は、ステップS105からステップS107までの処理を実行する。そして、最後に電力取引管理装置20は、ステップS110からステップS112までの処理を実行する。
ただし、ステップS107の判定結果が「No」の場合、電力取引管理装置20は、ステップS108およびステップS109を実行する。その後、リソース可用性評価装置21は、ステップS106およびステップS107の処理を実行する。
実際には、電力取引管理装置20のCPU2001および記憶装置2005に格納されている各種コンピュータプログラムに基づいて、あるいは、リソース可用性評価装置21のCPU2101および記憶装置2105に格納されている各種コンピュータプログラムに基づいて、各処理が実行される。以下、説明の便宜上、処理主体を、電力取引管理装置20およびリソース可用性評価装置21が有する各種コンピュータプログラムとして説明する。
まず電力価格予測部2006は、市場運用管理装置50から取得した過去の約定結果情報5001Aに基づいて、所定の将来期間における電力商品ごとの電力価格の予測値を算出する(S101)。例えば、電力価格予測部2006は、日付(月、曜日)、気温、原油価格などを説明変数とした重回帰モデルなどを用いた統計的手法や、AR(Auto-regressive)モデルなどを用いた信号処理的手法などにより、電力価格を予測する。
取引計画生成部2008は、ステップS101で算出された電力商品ごとの価格の予測値と、取引条件設定部2007により設定された価格差の閾値および時間差の閾値とに基づいて、取引候補となる、売りと買いの電力商品対を全て検出する(S102)。つまり、取引計画生成部2008は、売却対象の電力商品と購入対象の電力商品とからなるペアを全て抽出する。例えば、取引計画生成部2008は、取引条件設定部2007により設定された価格差の閾値「70ポンド・MWh」と時間差の閾値「3時間」とに基づいて、図5に示す取引計画情報2012Aの12種の電力商品対を検出する。
取引計画生成部2008は、以下のステップS104〜ステップS107またはステップS104〜ステップS109を、候補として検出した電力商品対のそれぞれについて実行する(S103)。
取引計画生成部2008は、取引数量が未決定の電力商品対のうち、予め設定した優先度に基づいて、取引すべき電力商品対を選択し、取引数量上限値を取引数量として設定する(S104)。
例えば、価格差が大きな電力商品対ほどその優先度が高くなる場合、取引計画生成部2008は、図5に示す取引計画情報2012Aの予測価格差欄2012A5のうち、価格差「87ポンド・MWh」である電力商品対を取引対象として選択する。この電力商品対の価格差が最も大きく、優先度が最も高いためである。
本実施例では、リソース仕様情報2019Aの調整容量欄2109A1に記載された、各リソースの調整容量の最大値の合計を取引数量の上限値として使用する。図8の例では、「リソース1」〜「リソース3」の最大調整容量の合計は、900kWである。そこで、取引計画生成部2008は、優先度に従って選択した電力商品対の取引数量を「900kW」に設定する。つまり、電力取引管理システム1の管理下にあるリソースを用いて売却可能な調整電力量の最大値を、取引数量BWの初期値として使用する。
取引計画生成部2008は、取引の対象期間を調整計画の実施期間とする。さらに、取引計画生成部2008は、ステップS104で設定した取引数量の初期値を、売り電力商品の受渡し時間枠における目標調整値とする。取引計画生成部2008は、調整計画の実施期間と目標調整値をリソース可用性評価装置21に送信する(S104)。
調整能力予測部2106は、電力取引管理装置20から送信されてきた調整計画期間におけるリソースの調整能力を予測する(S105)。調整能力予測部2106の処理の詳細は、図11を用いて後述する。
つぎに調整計画生成部2107は、調整能力予測部2106によるリソースの調整能力の予測結果と、リソース仕様情報2109Aと、運用制約情報2110Aとに基づいて、電力取引管理装置20から指示された目標調整値を充足するための調整計画を作成する(S106)。調整計画生成部2107は、実行可能な調整計画を作成できた場合(S107:YES)、その調整計画を電力取引管理装置20へ送信する。調整計画生成部2107は、実行可能な調整計画を作成できなかった場合(S107:NO)、その旨の電文を電力取引管理装置20に送信する。なお、調整計画生成部2107によるステップS106の詳細は、図12を用いて後述する。
電力取引管理装置20は、実行可能な調整計画を作成できない旨の電文を調整計画生成部2107から受領すると(S107:NO)、目標調整値となる取引数量BWを所定量Δbwだけ減少させる(S108)。そして、電力取引管理装置20は、減少させた取引数量を新たな目標調整値として、調整計画生成部2107に対して調整計画の作成を再度指示する(S106)。電力取引管理装置20は、目標調整値となる取引数量BWが0になるまで(S109:YES)、ステップS108において目標調整値となる取引数量BWを所定量Δbwずつ減少させる。
調整計画生成部2107による調整計画の作成後に、収益性評価部2009は、取引対象の電力商品対の予測価格差と、リソース可用性評価装置21が作成した調整計画におけるコスト計算結果とに基づいて、取引計画の予測利益を計算する(S110)。収益性評価部2009は、ステップS110で算出した予測利益が予め設定した収益条件を満たすか否かを判定する(S111)。
例えば、収益性評価部2009は、電力価格予測部2006が算出した予測電力価格に対する分散などのボラティリティと、リソース可用性評価装置21が算出したリソースの調整能力の分散などのボラティリティとに基づいて、モンテカルロシミュレーションを実行する。収益性評価部2009は、モンテカルロシミュレーションの結果として得られた予測利益の分散値、あるいはVaR(Value at Risk)等の指標値が、予め設定した値以下であるか否かを判定する。
注文実行部2010は、取引計画が収益条件を満たすと判定した場合(S111:YES)、ステップS104〜S109を通じて作成した取引計画情報2012Aに基づいて注文データを作成し、注文データを市場運用管理装置50に送信する(S112)。
注文データの発行と同時に、注文実行部2010は、注文された取引計画に対応する調整計画情報2013Aに基づいて、リソース運用管理装置30に対して調整計画を送信し(S112)、本処理を終了する。
図11は、図10中にステップS105として示した調整能力予測処理のフローチャートである。この処理は、電力取引管理装置20から調整計画の対象期間についての情報を受信したことを契機として、調整能力予測処理部2106およびCPU2101により実行される。説明の便宜上、処理主体を調整能力予測部2106として説明する。
まず調整能力予測部2106は、各リソースに属する需要家群のうち、代表となる需要家を設定する(S201)。調整能力予測部2106は、例えば、電力需要プロファイル、所在地、家族構成、建物情報などの需要家を説明する属性情報に基づいて、統計的な処理に基づいたクラスタリングを行う。調整能力予測部2106は、クラスタの平均に最も近い需要家を代表需要家として選択する(S201)。
次に、調整能力予測部2106は、代表需要家の過去の室温計測履歴情報を、この代表需要家の計測装置42から取得し(S202)、調整計画期間の開始時点における室温の予測値を計算する(S203)。室温の予測値の計算は、重回帰モデルなどの統計的手法でも良いし、ARモデル等を用いた信号処理的な手法でもよい。
調整能力予測部2106は、代表需要家の建物情報および設備情報を、リソース情報管理装置31から取得する(S204)。調整能力予測部2106は、建物情報として、例えば壁の素材や厚さ、床面積、窓の数や窓の向きなどを含む情報を取得する。調整能力予測部2106は、設備情報として、消費電力の調整に用いる設備の、例えば定格消費電力、定格出力、COP(Coefficientof Performance)などを含む情報を取得する。
さらに、調整能力予測部2106は、代表需要家の所在地における、調整計画の開始時点での気象予測情報を、気象情報配信装置80から取得する(S205)。気象予測情報は、例えば、外気温、湿度、露点、日照量などの予測値を含んでよい。
調整能力予測部2106は、室温予測値(S203)と、気象予測値(S205)と、建物情報および設備情報(S204)とを用いて、調整計画の開始時点における代表需要家の躯体蓄熱量を計算する(S206)。躯体蓄熱量の計算は、一般的な熱の移動モデルを用いて計算してもよい。
調整能力予測部2106は、代表需要家の躯体蓄熱量に基づいて、代表需要家が属するリソースの全体の蓄熱量を計算する(S207)。調整能力予測部2106は、例えば、代表需要家での電力需要とリソース全体での電力需要との比率を用いて、代表需要家の躯体蓄熱量からリソース全体の蓄熱量を予測してもよい。
調整能力予測部2106は、処理対象の全てのリソースについて調整能力を予測したか判定し(S208)、未処理のリソースがある場合(S208:NO)、ステップS201へ戻り、上述したステップを繰り返す。
図12は、図10中にステップS106として示した調整計画生成処理のフローチャートである。この処理は、調整能力予測部2106での処理が終了したこと、あるいは電力取引管理装置20から調整計画を作成する期間の情報を受信したことのいずれかを契機として、調整計画生成部2107およびCPU2101により実行される。説明の便宜上、処理主体を調整計画生成部2107として説明する。
まず調整計画生成部2107は、調整計画期間の開始時点での、各リソースの初期状態を設定する(S301)。設定すべき初期状態としては、例えば、調整の実行状態を示す状態値、調整を実行する場合の調整電力量、調整を実行する継続時間、調整を実行しない継続時間、調整能力予測部2106が計算した各リソースの蓄熱量、がある。
次に、調整計画生成部2107は、ステップS301で設定した状態値(調整の実行状態を示す状態値)に基づいて、次の時間枠における各リソースの遷移先の状態値を全て列挙する(S302)。調整計画生成部2107は、列挙した状態値の中から、電力取引管理装置20の指示する目標調整値を満たすと共に、運用制約情報2110Aに記載の各リソースの制約を充足可能な遷移先状態のみを抽出する(S303)。
調整計画生成部2107は、次の時間枠における遷移先状態に基づいて、各リソースの調整電力量の割当て値を計算する(S304)。調整計画生成部2107は、例えば、発電機に対する経済的負荷を配分する手法と同様の手法によって、調整電力量の割り当て値を計算することができる。ただし、調整の状態値が「2」となる遷移を行うリソースに対しては、そのリソースのRamp−Up値を割当て値として設定する。
調整計画生成部2107は、各リソースの遷移先状態(S303)と、各リソースへの割当て調整電力量(S304)とについて、リソース仕様情報2109Aに記載された調整待機料および調整実施料のそれぞれに基づき、電力取引事業者としてのコストを算出する(S305)。
調整計画生成部2107は、ステップS304で計算した各リソースへの割当て調整電力量に対し、リソース仕様情報2109Aに記載の熱量変化率に基づいて、各リソースの次の時間枠での貯熱量を計算する(S306)。
調整計画生成部2107は、ステップS302からステップS306までの処理を、時間枠を一つずつ進めながら調整計画期間の最後まで実施する(S307:YES)。調整計画生成部2107は、コストの累計額が最も小さくなる状態遷移の系列を、調整計画として抽出して(S308)、本処理を終了する。
上述した調整計画生成処理は、動的計画法として一般的に知られている方法である。動的計画法は、発電計画を生成する際に用いられる方法である。しかし、本実施例による調整電力量取引における調整計画の生成は、発電計画の生成とは以下の点で異なる。
第1に、調整計画の生成においては、目標調整値が急激に変化する点で異なる。ある時間枠でゼロであった目標調整値が、次の時間枠では大きな値に急増する。第2に、リソースの調整電力量の変動率は、発電機に比べて極めて遅い点で異なる。そこで、本実施例では、上記の第1、第2の相違点に対応するために、目標調整値が「0」の時間枠であっても、リソースを稼動させるために事前に調整電力量を割り当てている。目標調整値が0の時間枠においても事前に調整電力量を割り当てるという特徴的処理は、発電計画の生成方法には存在しない。この特徴的処理は、例えば、「設備の消費電力の調整に要する調整所要時間が設備特性として設備情報に含まれており、調整計画の開始時よりも前の調整所要時間において、調整計画実行時に求められる調整電力量が得られるように、前記調整計画実行時に求められる調整電力量よりも小さい所定の調整電力量を事前に割り当てる」と表現することができる。
なお、本実施例の調整計画生成処理は、いわゆる組合せ最適化処理であるから、例えば遺伝アルゴリズムなどの、効率的に解を得るための手法を適用してもよい。さらに、組合せ最適化処理では、リソース数および計画期間が増加すると、その組合せの数が膨大となるため、処理時間が長くなる。そこで、例えば、ステップS303で抽出する状態遷移を一定の数までに抑制すれば、処理時間の増大を抑制できる。この場合、最適な組合せとならない可能性があるが、現実的な解を比較的短時間で得ることができる。
図13は、取引計画を修正する処理のフローチャートである。この処理は、取引運用管理者からの入力操作を受け付けたことを契機として、あるいは一定の時間が経過するたびに、もしくはリソースの調整計画の修正期限を迎えたことを契機として、取引計画修正部2011およびCPU2001に基づいて実行される。説明の便宜上、処理主体を取引計画修正部2011として説明する。
まず取引計画修正部2011は、注文実行部2010から市場運用管理装置50へ送信した注文データで示される注文のうち、本処理を開始する時点において約定されずに残っている注文(未約定の注文)を検出する(S401)。なお注文とは、上述の通り、売買対象の電力商品対についての注文である。
取引計画修正部2011は、未約定の注文が、売り注文であるか買い注文であるかを判断する(S402、S403)。本実施例では、まず先に未約定の注文が売り注文であるかを判定する(S402)。つまり、取引計画修正部2011は、電力商品対のうち、売却対象の電力商品が売れ残っているかを判定する。
取引計画修正部2011は、未約定の注文が売り注文である場合(S402:YES)、その売り注文と対を形成する買い注文も未約定であるか判断する(S403)。取引計画修正部2011は、売り注文と買い注文の両方ともが未約定である場合(S403:YES)、それら未約定の売り注文および買い注文を取り消すための注文データを生成して、市場運用管理装置50へ送信する(S404)。
つまり、取引計画修正部2011は、計画修正期限が訪れているリソースに割り当てた調整電力量の分だけ、売り注文と買い注文の両方の取引数量を取り消すための注文データを生成し、注文実行部2010を通じて市場運用管理装置50に送信する。同時に、取引計画修正部2011は、注文の修正されたリソースを特定するための識別子を、リソース可用性評価装置21へ送信する(S404)。
リソース可用性評価装置21の調整計画修正部2108は、電力取引管理装置20からリソース識別子を受領する。調整計画修正部2108は、識別子の通知されたリソースについて、注文を取り消した時間枠における調整計画を破棄する(S405)。そして、調整計画修正部2108は、修正した調整計画を電力取引管理装置20へ送信し、調整計画情報2013Aを更新する(S405)。
ところで売り注文は未約定であるが(S402:YES)、その売り注文に対応する買い注文は約定済みである場合(S403:NO)、取引計画修正部2011は、未約定の売り注文については、ステップS404と同様に処理する(S406)。すなわち、取引計画修正部2011は、計画修正期限が訪れているリソースに割り当てた調整電力量の分だけ、取引数量を取り消す注文データを生成し、注文実行部2010を通じて市場運用管理装置50へ送信する。これにより、未約定の売り注文は取り消される。
一方、約定済みの買い注文により確保した追加の電力は、計画修正期限が訪れているリソースに割り当てた調整電力量の分だけ不要となる。つまり、購入してしまった追加の電力は、売れ残った調整電力量の分だけ不要となる。そこで、取引計画修正部2011は、不要となった購入済み電力を、購入時の価格かつ購入時の量で、売却する。すなわち、取引計画修正部2011は、約定された買い注文の時間枠に対して、その買い注文の価格にて、計画修正期限が訪れているリソースに割り当てた調整電力量の分だけ「売り注文」を行う注文データを生成する。取引計画修正部2011は、注文実行部2010を通じて、その注文データを市場運用管理装置50に送信する(S406)。その後、取引計画修正部2011は、上述したステップS405の処理を行う。
ところで、売り注文は約定済みであるが(S402:NO)、買い注文は未約定である場合、消費電力を調整するための事前準備に使用する電力を確保できていない。
上述のように、電力取引管理システム1は、電力需要の大きい時間帯でリソースの消費電力を削減調整して、消費電力の削減に応じた調整電力量を生成し、その調整電力量を売却して利益を得る。できるだけ不便をかけずにリソースでの消費電力削減を進めるため、事前にリソースの設備の稼働状態を制御する。
例えば、外気温が上がって冷房用の電力需要が増大するよりも前に、リソースの冷房設備を用いて予め室内を過冷房にしておけば、外気温の高い時間帯で冷房設備を停止させても、生活上の不便は少ない。同様に、外気温が低下して暖房用の電力需要が増大するよりも前に、リソースの暖房設備を用いて予め室内を過暖房にしておけば、外気温の低い時間帯で暖房設備を停止させても、生活上の不便は少ない。ただし、冷房設備および暖房設備の種類によっては、停止状態から定常運転状態への移行および定常運転状態から停止状態への移行に時間を要するため、予め通電して動作させておく必要がある。本実施例の電力取引管理システム1は、このような設備の特性についても考慮していることは既に述べた通りである。
買い注文が未約定の場合、すなわち事前準備に使用する電力を確保できていない場合は、上述の通り、事前に過暖房や過冷房を行ういわゆるピークシフトのための追加の電力が確保できていないことを意味する。従って、取引計画修正部2011は、できるだけ早く電力を確保する必要がある。
従って、取引計画修正部2011は、現在の気配値に基づいて、買い注文した電力商品の価格を約定可能な価格に引き上げ、注文実行部2010を通じて市場運用管理装置50へ送信する(S407)。この場合、買い注文は直ちに約定されるため、調整計画は修正する必要はない。そこで、ステップS405をスキップして、本処理を終了する。
図14は、学習処理を示すフローチャートである。本処理は、取引計画の生成に使用するパラメータ、および調整計画の生成に使用するパラメータを学習して改善する。
取引計画に関するパラメータの学習については、その処理主体は、電力取引管理装置20となる。調整計画に関するパラメータの学習については、その処理主体は、リソース可用性評価装置21となる。ここでは、取引計画に関するパラメータの学習と調整計画に関するパラメータの学習の両方を一度に説明する。従って、処理主体を電力取引管理システム1とする。
電力取引管理システム1は、取引終了後に、取引結果を電力取引管理装置20から取得する(S501)。電力取引管理システム1は、取引結果に基づいて、取引計画の生成に使用するパラメータのうち修正対象のパラメータを修正して保存する(S502)。修正対象のパラメータには、例えば、図10のステップS102で使用する、価格差の閾値および時間差の閾値がある。市場の最新動向や気象の最新の予測などに応じて、価格差の閾値および時間差の閾値を動的に変更することで、利益の得られる売買注文を効率的に約定できるようになる。
さらに、電力取引管理システム1は、調整計画の実行結果をリソース運用管理装置30から取得する(S503)。電力取引管理システム1は、各リソースの信頼性を算出して保存する(S504)。注文データの発行と同時に各リソースへ調整計画を送信しても、各リソースが受信した調整計画の通りに消費電力を調整するとは限らない。また、リソースの保有する設備が老朽化していたり、保守が悪いために所定の性能を発揮できない場合もある。このような種々の原因により、リソースで確保できる調整電力量は、目標調整値から外れることがある。そこで、電力取引管理システム1は、調整計画の実行結果を解析することで、調整電力量の変動率を算出し、次回の調整計画の立案に役立てる。
このように構成される本実施例の電力取引管理システム1は、リソースの調整能力の時間的な変動を予め評価した上で、電力価格の変動に応じた調整量取引を実現できる。
電力取引管理システム1は、市場運用管理装置50から取得した過去の約定結果の情報5001Aから、取引を行うに値する売りと買いの電力商品の対を検出する。そして、電力取引管理システム1は、検出した電力商品対のうち売り注文を行う電力商品の受渡し時間帯における各リソースの調整能力を、リソースを代表する需要家の気温や室温の予測値、および需要家の建物や設備情報に基づいた物理的観点からの躯体蓄熱量の予測計算により予測する。電力取引管理システム1は、予測したリソースごとの調整能力とリソースの仕様情報2109Aと運用制約2110Aとに基づいた調整計画を生成することで、取引計画情報2012Aおよび調整計画情報2013Aを生成する。
さらに電力取引管理システム1は、現在の取引状況から取引計画情報2012Aおよび調整計画情報2013Aを修正する。これにより、本実施例では、電力価格の変動する市場において、電力取引事業者が取りまとめるリソースの調整能力に関わる時間的な変動を考慮した調整電力量取引を可能としている。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、取引対象の時間枠は、30分単位に限らず、1時間単位、2時間単位、3時間単位、4時間単位などでもよい。また、例えば「平日ピーク」などの定型ブロックの電力商品であっても良い。また、電力取引市場が規定する取引規則に反しない範囲において、異なるブロック商品種を用いても良い。
また、電力価格予測部2006と調整能力予測部2106とは、主にそれぞれ過去の履歴情報のみに基づいて予測演算するものであると説明したが、これに限らず、図14で述べたように、例えば、予測結果と、後日に取得される実績結果との誤差を用いた学習を行っても良い。
また、電力価格予測部2006と調整能力予測部2106とは、点予測の結果を出力する場合を説明したが、これに限らず、例えば分散、標準偏差、信頼区間等のボラティリティを現す情報であってもよい。
また、取引計画生成部2008へ入力する情報は、電力価格の予測値として説明したが、これに限らず、市場運用管理装置から入手可能であり、かつ取引終了期限が訪れていない、現時点で取引中の電力商品の卸価格の気配値であってもよい。
また、各処理部の出力結果や、各処理部の中間結果を、ディスプレイやプリンタなどの出力装置を通じて、適宜出力しても良い。