以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力価格予測装置1のブロック構成を示すブロック構成図である。電力価格予測装置1は、電力価格を予測する装置である。電力価格予測装置1は、電力価格を予測するための演算、及び過去のデータに基づいて、電力価格を予測する。電力価格予測装置1は、後述の発電情報が入手可能となった後であれば、どのタイミングで電力価格を予測してもよいものである。例えば、電力価格予測装置1は、夜間に翌日の電力価格を予測してよく、早朝に当日の電力価格を予想してもよい。あるいは、発電情報を早期に入手できる場合は、電力価格予測装置1は、数日後の電力価格や、次週の電力価格を予測してもよい。また、例えば、電力価格予測装置1は、一日分(0時から24時まで)の電力価格を予測することができるが、予測する期間は特に限定されるものではなく、一日の中の必要な数時間分だけの電力価格を予測してもよく、一日より長い期間(数日分や一週間分など)の電力価格を予測してもよい。電力価格予測装置1は、演算装置2と、入力部3と、出力部4と、を備える。
入力部3は、ユーザーからの操作によって各種情報を演算装置2へ入力するための機器である。入力部3は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、レバー、ボタン、及びマイクなどの機器によって構成される。出力部4は、演算装置2からの情報をユーザーに対して出力するための機器である。出力部4は、モニタ、及びスピーカなどの機器によって構成される。
演算装置2は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース等を備え、一般的なコンピュータなどの情報端末として構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記録媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記録媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。演算装置2では、では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。演算装置2は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。演算装置2は、発電機情報取得部11と、想定発電出力演算部12と、想定発電単価演算部13と、供給可能電力情報作成部14と、想定電力需要演算部15と、予測部16と、補正部17と、を備える。
発電機情報取得部11は、対象領域内に存在する複数の発電機から、発電機情報を取得する。対象領域とは、例えば、50Hzの東日本エリア、60Hzの西日本エリア、九州エリア、北海道エリアなどのように分けられる。電力価格予測装置1を用いるユーザーが東日本エリアにて電力を使用する場合などは、東日本エリア内の各発電所の発電機の発電機情報を取得する。なお、当該対象領域は、必ずしも東日本エリア及び西日本エリアのような広い範囲で設定されていなくともよく、更に狭い範囲として設定されてもよい。発電機情報は、それぞれの発電機の発電種別、及び稼働状況を少なくとも有する情報である。発電種別とは、発電機がどのような燃料を用いて発電を行うかを示す情報である。発電種別として、例えば、原子力、水力、石炭、副生ガス、LNG(液化天然ガス)、都市ガス、原油、重油、軽油、灯油、その他が挙げられる。また、発電種別は、例えばLNGをLNG複合発電とLNG汽力発電のように更に細分化しても良い。稼働状況は、発電機が稼働しているか、または停止しているかの状況を示す情報である。その他、発電機情報は、発電機が設置されている発電所名、許可出力、発電効率などの情報を有してよい。発電機情報は、一般的に公開(例えば、発電情報公開システム(HJKS)が公開)されており入手可能な情報であることが好ましい。発電機情報取得部11は、例えば、インターネットを介して予測対象となる期間に係る発電機情報を取得する。例えば、翌日の電力価格を予測する場合、発電機情報取得部11は、翌日の発電機情報を取得する。発電機情報取得部11は、対象領域内のすべての発電機についての発電機情報を取得する。
想定発電出力演算部12は、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電出力を演算する。想定発電出力とは、各発電機が発電すると想定される発電出力の想定値である。想定発電出力演算部12は、一つの発電機に対して一つの想定発電出力を演算してよい。具体的には、想定発電出力演算部12は、ある発電機について「許可出力×(1-所内率)×(1-予備率)」という式を用いて想定発電出力を演算してよい。なお、「所内率」とは、発電した電力が発電所内で消費される割合を示す。「予備率」とは、系統の予備力として割り当てられる容量である。ただし、想定発電出力の演算方法は上述の式に限定されず、他の演算方法が採用されてもよい。例えば、各発電種別に対して代表値などを予め設定しておき、想定発電出力演算部12は、演算対象に係る発電機の発電種別を取得した場合、当該発電種別に対して設定された代表値を想定発電出力としてよい。また、想定発電出力演算部12は、HJKSや電気事業便覧に記載されている発電機の平均値を取得して、当該値を想定発電出力としてよい。また、想定発電出力演算部12は、互いに発電条件が近く発電出力が同一であると近似可能な場合などは、複数の発電機に対して一つの想定発電出力を演算してよい。
想定発電単価演算部13は、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電単価を演算する。想定発電単価とは、各発電機によって発電される電力の単価の想定値である。想定発電単価演算部13は、一つの発電機に対して一つの想定発電単価を演算してよい。ここで、想定発電単価を演算する場合の従来の演算方法の一例として、ある発電機について「燃料費+燃料・発電諸経費+起動停止費」という式を用いて想定発電単価を演算する方法が挙げられる。しかしながら、燃料・発電諸経費や起動停止費などの演算項目は、外部から正確な情報を取得することが難しい情報である。また、これらの演算項目を正確に予想して演算を行おうとする場合、演算の負荷が大きくなる。従って、本実施形態における想定発電単価演算部13は、容易に取得可能な情報(例えば、燃料費)に演算項目を絞って、想定発電単価を演算する。なお、発電種別が原子力及び水力の場合は、例えば最低入札価格を想定発電単価とすることが考えられる。ただし、想定発電単価の演算方法は上述の方法に限定されず、他の演算方法が採用されてもよい。また、想定発電単価演算部13は、互いに発電種別が同一であるなどにより、発電単価が同一であると近似可能な場合などは、複数の発電機に対して一つの想定発電単価を演算してよい。想定発電単価演算部13は、稼働予定の発電機の全てについて、想定発電出力及び想定発電単価を演算する。
供給可能電力情報作成部14は、複数の発電機のそれぞれについて想定発電出力を関連付けた状態で、当該複数の発電機を想定発電単価の安い順に配列して供給可能電力情報を作成する。図2は、供給可能電力情報作成部14が作成する供給可能電力情報の一例を示すモデルである。図2(a)は、時間帯と各発電種別の発電機による供給電力との関係を示すモデルである。図2(a)のグラフの横軸は、0時から24時までの時間範囲における時間帯を示し、縦軸は電力を示す。図2(b)は、発電単価順に各発電機の供給電力を積み上げた場合の、電力と想定発電単価との関係を示すグラフである。図2(b)の横軸は電力を示し、縦軸は価格を示す。なお、以降の説明においては、複数の発電機は、発電種別1~7の七種類に分けられるものとして説明する。想定発電単価は、発電種別1から発電種別7の順で高くなる。なお、供給可能電力とは、複数の発電機によって供給可能な電力を示し、各発電機の想定電力出力の合計値によって求められる値である。例えば、「発電種別Xの供給電力」とは、発電種別Xの発電機のうち、稼働予定の発電機の全ての想定発電出力の合計値である。
供給可能電力情報作成部14は、各発電種別の供給電力を示すブロックを想定発電単価の安い順に配列したモデルを作成する。当該モデルは、いわゆるメリットオーダモデルと称されるモデルである。まず、発電種別1の想定発電単価が最も安くなるため、供給可能電力情報作成部14は、図2(a)の最下段に、発電種別1の供給電力を示すブロックを作成する。当該ブロックの縦軸に対する大きさは、発電種別1の発電機(稼働している発電機)による全ての想定発電出力の合計値を示す。なお、本実施形態では、発電機情報取得部11で取得される発電機情報は、ある発電機が稼働しているかどうかだけを示しており、各時間帯における稼働状況の情報までは含んでいなくてよい。従って、供給可能電力情報作成部14は、稼働している発電機が0時から24時まで一定の供給電力を供給するものとしてブロックを作成する。
次に、発電種別2の想定発電単価が二番目に安くなるため、供給可能電力情報作成部14は、発電種別1のブロックの上段に、発電種別2の供給電力を示すブロックを積み上げる。当該ブロックの縦軸に対する大きさは、発電種別2の発電機による全ての想定発電出力の合計値を示す。なお、図2(a)のグラフ中の発電種別2のブロックの電力の絶対値は、発電種別2に属す発電機の供給電力に、既に積み上げられたブロックの供給電力の合計値(ここでは、発電種別1のブロックのみ)を加算したものとなる。同様の趣旨により、供給可能電力情報作成部14は、発電種別3~7の供給電力を示すブロックを、この順で積み上げる。これにより、図2(a)に示すように、下から順に発電種別1~7のブロックが積み上げられたモデルが作成される。
次に、供給可能電力情報作成部14は、図2(b)に示すグラフG2を作成する。図2(b)の実線で示すグラフG2は、図2(a)のモデルで積み上げられた各発電種別1~7のブロックの供給電力に対して、発電種別に対応する想定発電単価をプロットすることで、作成される。なお、発電種別が同じ場合であっても、発電機によって若干の想定発電単価の違いが生じる。従って、図2(b)のグラフG2は、同じ発電種別の中で若干傾きが生じている。また、図2(a)のモデルでは、各時間帯における供給電力を一定としたため、図2(b)の実線のグラフG2は、各時間帯において同一となる。また、実線のグラフG2が示す想定発電単価は、補正部17による補正が行われた場合には変化する。例えば、図2(b)の二点鎖線で示すグラフG3,G4は、発電種別4,5に対して補正部17による補正が行われた場合の想定発電単価を示している。
想定電力需要演算部15は、電力供給領域内の想定電力需要を演算する。想定電力需要は、電力供給領域内において、どの程度の電力の需要が想定されるかを示す情報である。当該電力供給領域内において、再生可能エネルギー(太陽光、風力等)による発電がなされる場合、電力需要から当該発電量を差し引いた「見かけの電力需要」が想定電力需要として用いられる。このような想定電力需要としての「見かけの電力需要」の取得方法としては、公知の方法を採用すればよい。例えば、想定電力需要演算部15は、国際公開番号2016-136323号に示すように、領域内に存在する店舗や工場などの施設ごとの電力需要を周知のカルマンフィルターを用いた予測方法で演算し、天気予報に基づく情報から再生可能エネルギーの発電量を演算する。なお、想定電力需要の演算方法はこのような例に限定されるものではなく、他の公知の方法を採用してよい。なお、電力供給領域とは各発電機によって電力供給がなされる範囲を示す。電力供給領域は、発電機情報取得部11が発電機情報を取得した対象領域と同一であってもよいが、必ずしも同一でなくともよい。例えば、対象領域内の発電機が、当該対象領域外に対して電力を供給する場合などは、電力供給領域を対象領域よりも広くしてよい。
想定電力需要演算部15は、各時間帯における想定電力需要を演算してよい。この場合、想定電力需要演算部15は、取得した想定電力需要の時間変化を示すグラフを図2(a)に示すモデル中にプロットする。図2(a)では、各時間帯における想定電力需要の推移は、実線のグラフG1で示される。なお、想定電力需要演算部15は、各時間帯における想定電力需要を演算しなくともよい。例えば、一週間分の電力価格を予測する場合などには、想定電力需要演算部15は、一日あたり一つの想定電力需要の値を演算すればよい。
予測部16は、供給可能電力情報及び想定電力需要に基づいて、電力価格を予測する。すなわち、予測部16は、供給可能電力情報作成部14が作成したモデルと、想定電力需要演算部15が取得した想定電力需要に基づいて電力価格を予測する。所定の時間範囲(例えば0時から24時)の各時間帯における想定電力需要が取得された場合、予測部16は、当該時間範囲の各時間帯における電力価格を予測できる。
例えば、図2を参照して、ある時間帯における価格を予測する手順について説明する。図2(a)に示すように、グラフG1を参照すると、8時における想定電力需要が「53GW」であることが分かる。そして、図2(b)のグラフG2を参照すると、想定電力需要が「53GW」のときの想定発電単価が「12.95円/kWh」であると分かる。これにより、予測部16は、8時における電力価格が「12.95円/kWh」であると予測することができる。後述の補正部17によって補正がなされた場合、予測部16は、補正された想定発電単価を用いて予測する。例えば、図2(b)には、発電種別4,5(図中の「E4,E5」で示す部分)の想定発電単価の補正がなされた様子が示されている。従って、予測部16は、補正後のグラフG3,G4などの想定発電単価を用いる。従って、補正がなされた場合、予測部16は、「53GW」に対応するグラフG4の想定発電単価を電力価格と予測する。予測部16は、当該手順を0時から24時の全ての時間帯について行うことで、0時から24時の時間範囲における各時間帯の電力価格を予測する。なお、発電種別4,5以外の発電種別についても補正がなされるが、補正後のグラフについてはグラフG3,G4と同趣旨であるため省略する。
補正部17は、過去における電力価格の予測結果を用いて、想定発電単価を補正する。補正部17は、過去における電力価格の予測値と、当該過去における電力価格の実績値との間の誤差に基づく補正値を用いて想定発電単価を補正する。補正部17は、供給可能電力情報のモデルにおいて設定されている想定発電単価を補正してよい。例えば、補正部17は、図2(b)に示すグラフG2の想定発電単価を補正する。なお、図2に示す例では、補正部17は、供給可能電力情報のモデルを作成した後に補正を行っているが、補正を行うタイミングは特に限定されず、補正後の想定発電単価を用いて供給可能電力情報が作成されてもよい。具体的に、補正部17は、情報取得部21と、補正値演算部22と、補正処理部23と、判定部24と、格納部25と、を備える。
情報取得部21は、過去における電力価格の予測値と、当該過去における電力価格の実績値と、を示すデータを取得する。情報取得部21は、過去の所定の時間範囲における予測結果を示すデータを取得する。情報取得部21は、前日の一日分の予測結果を示すデータを取得してよい。ただし、情報取得部21が取得するデータは、前日のものに限定されず、数日前や数週間前のデータを取得してもよい。また、時間範囲は一日分の範囲に限定されず、例えば、一日の中の数時間分だけに設定されてよく、あるいは複数日の範囲に設定されてよい。例えば、情報取得部21は、図3に示すような予測結果を取得してよい。図3は、過去の予測結果の一例を示すグラフである。図3では、電力価格の予測対象に係る日の前日の0時から24時までの時間範囲の予測結果が示されている。図3のグラフの横軸は0時から24時の時間範囲における時間帯を示す。縦軸は電力を示している。図3には、予測結果に係る価格を示す予測値EPと、実際の価格を示す実績値RPと、がプロットされている。なお、図3には、図2(a)と同様に、価格が安い順に各電力種別のブロックが積み上げられている。
補正値演算部22は、過去の所定の時間範囲におけるデータを用いて補正値を演算する。補正値演算部22は、過去の所定の時間範囲の中で、各期間において予測値を決定した発電種別を特定すると共に、当該発電種別を関連付けて各期間における誤差を演算する。また、補正値演算部22は、所定の時間範囲において、発電種別が互いに同一となる誤差を抽出すると共に、抽出した誤差に対して演算処理を行う。補正処理部23は、補正値を用いて想定発電単価を補正する。補正処理部23は、想定発電単価を補正するときは、想定発電単価に対応する発電種別での演算処理の結果に基づく補正値を用いて補正を行う。
例えば、図3に示す予測結果を用いる場合、補正値演算部22は、予測値EPと実績値RPとの間の誤差を演算し、当該誤差に基づく補正値を用いて、想定発電単価を補正する。補正値演算部22は、ある時間帯の予測値EPが発電種別1~7のうちのどの発電種別と重なるかを判断し、当該発電種別が予測値EPを決定した発電種別として特定する。例えば、補正値演算部22は、8時において予測値EPを決定したのは発電種別4であると特定する。そして、補正値演算部22は、8時における予測値EPと実績値RPとの間の誤差を発電種別4における誤差として演算する。また、補正値演算部22は、12時において予測値EPを決定したのは発電種別5であると特定する。そして、補正値演算部22は、12時における予測値EPと実績値RPとの間の誤差を発電種別5における誤差として演算する。補正値演算部22は、このような手順により、0時から24時までの全ての時間帯について、発電種別と関連付けた誤差の演算を行う。
補正値演算部22は、前日の0時から24時の範囲で前述の手法で演算した誤差のうち、関連付けられた発電種別が同一のものを抽出する。補正値演算部22は、発電種別4の誤差として、0時から10時の誤差、及び23時の誤差を抽出し、それらの誤差の平均値を演算する。補正処理部23は、図2(b)のグラフG2のうち、発電種別4に属する想定発電単価(図中、「E4」で示す範囲の想定発電単価)を補正する際には、当該平均値を発電種別4の補正値として用いる。また、補正値演算部22は、発電種別5の誤差として、11時から14時、及び22時の誤差を抽出し、それらの誤差の平均を演算する。補正処理部23は、当該平均値を発電種別5の補正値として用いる。補正処理部23は、図2(b)のグラフG2のうち、発電種別5に属する想定発電単価(図中、「E5」で示す範囲の想定発電単価)を補正する際には、当該平均値を発電種別5の補正値として用いる。なお、図2(b)では、発電種別4に対する補正値よりも、発電種別5に対する補正値が大きい場合の例を示している。従って、補正後の発電種別5の想定価格を示すグラフG4は、補正後の発電種別4の想定発電単価を示すグラフG3よりも、グラフG2に対する増加率が大きくなっている。
同様に、補正値演算部22は、発電種別6の誤差として、21時の誤差を抽出し、誤差の平均値を演算する。ただし、発電種別6の誤差は、21時の誤差の一つしかないため、当該21時における誤差を補正値として用いる。補正値演算部22は、発電種別7の誤差として、15時から20時の誤差を抽出し、それらの誤差の平均値を演算する。なお、誤差は、特に限定されないが、例えば、「(実績値-予測値)」などの式によって示される値であってよい。なお、予測値より実績値が大きい場合には誤差はプラスの値となり、予測値より実績値が小さい場合はマイナスの値となる。この場合、補正処理部23は、想定発電単価演算部13が演算した想定発電単価に対して、誤差を足し合わせることによって、補正を行うことができる。あるいは、誤差を「(実績値-予測値)/予測値」として、補正処理部23は、想定発電単価演算部13が演算した想定発電単価に対して、「1+誤差」を掛け合わせることによって、補正を行ってもよい。
なお、補正値演算部22による補正値の演算方法は、上述したような方法に限定されない。また、補正値演算部22が各期間において予測値を決定した発電種別を特定する際には、一時間単位で区分けされた各時間帯について発電種別を特定したが、当該期間は分単位で設定されてもよく、数時間単位で設定されてもよい。あるいは、補正値演算部22は、過去のデータの時間範囲を複数日の範囲(例えば週や月など)に設定した場合、発電種別を特定する期間として、一日または数日を一つの期間として単位を設定してよい。また、補正値演算部22は、演算処理として、誤差の平均値を演算する方法を採用したが、例えば、外れ値の影響を抑えるために中央値などの他の演算処理を採用してもよい。また、補正値演算部22は、閾値以上の誤差となった場合の最新値を補正値としてよい。また、補正値演算部22は、上述の方法では、発電種別6のように一日の中で誤差が一つしか存在していない場合でも新たな補正値の演算を行った。しかし、補正値演算部22は、誤差が所定量以下の発電種別に対しては、新たな補正値を演算しないようにしてもよい。
格納部25は、各発電種別に対する補正値を格納する。補正値演算部22は、特定の発電種別に対する補正値が新たに取得されたタイミングで、格納部25内における、当該発電種別に対する補正値を更新する。例えば、図3に示す予測結果を用いて補正値を演算した場合、発電種別4、発電種別5、発電種別6、及び発電種別7に対する補正値が得られる。従って、補正値演算部22は、格納部25に格納されている補正値のうち、発電種別4、発電種別5、発電種別6、及び発電種別7の補正値を更新する。その一方、図3に示す予測結果では、発電種別1~3に対する誤差の演算がなされていないため、補正値演算部22は、これらの発電種別に対する補正値を更新しない。従って、補正処理部23が発電種別1~3の想定発電単価を補正するときは、既に格納部25に格納されていた補正値を用いる。これらの補正値は、図3の予測結果よりも更に過去の予測結果に基づいて、前回更新された分の補正値である。
判定部24は、想定発電単価を補正するとき(すなわち、電力価格予測装置1での予測を行うとき)の状況を参照し、当該補正を行うか否かの判定を行う。判定部24は、想定発電単価を補正するときの状況として、時間的要素を参照してよい。例えば、判定部24は、時間的要素として曜日を参照してよい。平日と休日とでは、市場価格の値動き、発電所の稼働状況が異なる。従って、休日の電力価格を予測するときに、補正処理部23が、平日の予測結果に基づいて演算された補正値を用いて補正することが必ずしも適切でない場合がある。従って、判定部24は、休日の電力価格を予測するときは、補正を行わないと判定してよい。また、判定部24は、時間的要素として季節を参照してよい。例えば、夏及び冬は電力需要が多くなり易く、より多くの発電機が稼働している状況であり、春及び秋は需要が緩くなるため、多くの発電機の定期点検がなされる状況である。このように、季節によって発電機の稼働状況が変わるため、判定部24は、季節を参照して補正を行うか否かを判定してよい。また、判定部24は、想定発電単価を補正するときの気象状況(気温、特異気象など)を参照してよい。暑い日と寒い日とでは発電機の稼働状況が異なる。また、台風や雪などの日は、電力会社が予備率を多く取りやすく(予備としてとっておく)なるため、市場への入札量が減少する。また、晴れの日は、太陽光発電量が増加し、市場への入札量が増加する。従って、雨の日の電力予測を行う場合は、判定部24は、晴れの日の予測結果に基づいて演算された補正値を用いた補正を行わないようにしてよい。
なお、判定部24が「補正を行う」と判定した場合、補正処理部23は発電種別1~7の全ての想定発電単価を補正する。判定部24が「補正を行わない」と判定した場合、補正処理部23は発電種別1~7の全ての想定発電単価の補正を行わない。ただし、状況によっては、季節や天気などの影響によって特定の発電種別は大きく影響を受ける一方で、他の発電種別はあまり影響を受けないような場合もあり得る。このような場合、判定部24は「発電種別Xについては補正を行う」「発電種別Yについては補正を行わない」などのように、発電種別ごとに判定を行ってもよい。例えば、図2(b)の例において、判定部24が「発電種別4,5だけについては補正を行い、他の発電種別については補正を行わない」と判定した場合、補正処理部23は、発電種別4,5の想定発電単価だけを補正する。その結果、グラフ2Gは、発電種別4,5の箇所だけグラフG3,G4に補正され、その他の箇所は補正がなされない。
なお、補正部17は、状況に合わせて補正値のデータテーブルを複数準備して、格納部25に格納してよい。例えば、補正部17は、平日用の補正値のデータテーブルと、休日用の補正値のデータテーブルとを分けて準備しておいてよい。この場合、補正部17は、休日での予測結果を用いて休日用のデータテーブルの補正値を更新すると共に、休日の電力価格を予測するときに、当該データテーブルの補正値を用いてよい。
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る電力価格予測方法の一例について説明する。図4は、本実施形態に係る電力価格予測方法の処理内容の一例を示すフローチャートである。図5は、補正値を演算する補正値演算処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。ただし、図4及び図5に示す各処理の順序は一例にすぎず、趣旨を逸脱しない範囲で適宜順序を変更してよい。
図4に示すように、まず、発電機情報取得部11が、対象領域内に存在する複数の発電機から、少なくとも当該複数の発電機のそれぞれの発電種別および稼働状況を含む発電機情報を取得する発電機情報取得ステップを実行する(ステップS100)。次に、想定発電出力演算部12が、ステップS100で取得された発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電出力を演算する想定発電出力演算ステップを実行すると共に、想定発電単価演算部13が、ステップS100で取得された発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電単価を演算する想定発電単価演算ステップを実行する(ステップS110)。
次に、供給可能電力情報作成部14が、複数の発電機のそれぞれについて想定発電出力を関連付けた状態で、当該複数の発電機を想定発電単価の安い順に配列して供給可能電力情報を作成する供給可能電力情報作成ステップを実行する(ステップS120)。これにより、例えば図2に示すような供給可能電力情報のモデルが作成される。
次に、補正部17の判定部24は、想定発電単価を補正するときの状況を参照し、当該補正を行うか否かの判定を行う判定ステップを実行する(ステップS130)。ステップS130において、補正部17の判定部24が補正を行わないと判定した場合、後述のステップS150へ移行する。一方、ステップS130において、補正部17の判定部24が補正を行うと判定した場合、補正部17の補正処理部23は、過去における電力価格の予測結果を用いて、想定発電単価を補正する補正ステップを実行する(ステップS140)。例えば、図2(b)に示すように、補正部17の補正処理部23は、発電種別4に対する補正値を用いて、発電種別4に対応する想定発電単価を補正する(グラフG3参照)。また、補正部17の補正処理部23は、発電種別5に対する補正値を用いて、発電種別5に対応する想定発電単価を補正する(グラフG4参照)。他の発電種別に対応する想定発電単価に対しても、同趣旨の補正がなされる。
想定電力需要演算部15は、電力供給領域内の想定電力需要を演算する想定電力需要演算ステップを実行する(ステップS150)。これにより、例えば、図2(a)に示すモデルに対して、想定電力需要の推移を示すグラフG1が設定される。次に、予測部16は、ステップS120で作成された供給可能電力情報およびステップS150で演算された想定電力需要に基づいて、電力価格を予測する予測ステップを実行する(ステップS160)。例えば、予測部16は、図2(a)のモデルから、特定の時間帯の想定需要電力を取得し、当該想定需要電力を図2(b)の補正後の想定需要電力を示すグラフG3,G4(補正がなされない場合はグラフG2)などと照らし合わせることで、想定発電単価を導き出す。予測部16は、当該処理を0時から24時まで行うことにより、各時間帯における電力価格の予測を行う。予測部16は、電力価格の予測結果を出力部4に出力する。以上により、図4に示す処理が終了する。
次に、図5に示す補正値演算処理について説明する。補正値演算処理は、図4に示す処理とは別のタイミングで行われてよい。例えば、電力価格の予測を行った日が終了し、当該日における実績値が取得できた段階で、図5に示す補正値演算処理が行われてよい。図5に示すように、補正部17の情報取得部21は、過去における所定の時間範囲の予測結果を示すデータを取得するデータ取得ステップを実行する(ステップS200)。補正部17の情報取得部21は、例えば、図3に示すように、前日の予測結果を示すデータを取得する。
次に、補正部17の補正値演算部22は、過去における所定の時間範囲の中で、各期間において予測値を決定した発電種別を特定する発電種別特定ステップを実行する(ステップS210)。例えば、補正部17の補正値演算部22は、図3に示す各時間帯における予測値と、発電種別のブロックとを比較して、各時間帯における予測値がどの発電種別で決定されたかを特定する。次に、補正部17の補正値演算部22は、発電種別を関連付けて各期間における誤差を演算する誤差演算ステップを実行する(ステップS220)。補正部17は、図3に示す各時間帯における予測値EPの実績値RPに対する誤差を演算する。例えば、補正部17の補正値演算部22は、8時における誤差を、発電種別4に対する誤差として設定する。
次に、補正部17の補正値演算部22は、発電種別が互いに同一となる期間を抽出する抽出ステップを実行する(ステップS230)。補正部17の補正値演算部22は、例えば、図3に示す例では、発電種別が「発電種別4」で同一となる期間として、0時から10時の時間帯、及び23時の時間帯を抽出する。同様に、補正部17の補正値演算部22は、発電種別が「発電種別5」「発電種別6」「発電種別7」で同一となる期間をそれぞれ抽出する。次に、補正部17の補正値演算部22は、ステップS230における抽出結果に基づき、発電種別が互いに同一となる期間における誤差の平均値を演算し(演算処理)、補正値として取得する補正値取得ステップを実行する(ステップS240)。例えば、図3に示す例では、補正部17の補正値演算部22は、発電種別が発電種別4で同一となる0時から10時の時間帯における誤差、及び23時の時間帯における誤差の平均値を演算する。そして、補正部17の補正値演算部22は、当該平均値を発電種別4に対する補正値として取得する。補正部17の補正値演算部22は、発電種別5,6,7についても同様に平均値を演算して補正値を取得する。補正部17の補正値演算部22は、S240で取得された各発電種別に対する補正値を新たな補正値として更新する更新ステップを実行する(ステップS250)。例えば、補正部17の補正値演算部22は、図3に示すデータに基づいて発電種別4,5,6,7に対する補正値を取得したため、格納部25に発電種別4,5,6,7に対する補正値として格納されている値を、新たに取得された補正値に更新する。以上により、図5に示す処理が終了する。
上述のような電力価格予測方法は、電力価格予測プログラムがコンピュータシステムに実行させる。電力価格予測プログラムは、発電機情報取得モジュールと、想定発電出力演算モジュールと、想定発電単価演算モジュールと、供給可能電力情報作成モジュールと、想定電力需要演算モジュールと、予測モジュールと、補正モジュールと、を含む。これらのモジュールを実行することで、発電機情報取得部11と、想定発電出力演算部12と、想定発電単価演算部13と、供給可能電力情報作成部14と、想定電力需要演算部15と、予測部16と、補正部17と、が実現する。また、補正モジュールは、情報取得モジュールと、補正値演算モジュールと、補正処理モジュールと、判定モジュールと、格納モジュールと、を含む。これらのモジュールを実行することで、情報取得部21と、補正値演算部22と、補正処理部23と、判定部24と、格納部25と、が実現する。
電力価格予測プログラムは、CD-ROMやDVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、電力価格予測プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
次に、本実施形態に係る電力価格予測装置1、電力価格予測方法、電力価格予測プログラム、及びコンピュータ読取可能な記録媒体の作用・効果について説明する。
本実施形態に係る電力価格予測装置1は、対象領域内に存在する複数の発電機から、少なくとも当該複数の発電機のそれぞれの発電種別および稼働状況を含む発電機情報を取得する発電機情報取得部11を備えている。発電機情報は、少なくとも発電種別及び稼働状況が含まれていればよい情報であるため、公開されている情報などから容易に入手可能である。また、発電機情報は、情報量も限定的であるため、想定発電出力演算部12及び想定発電単価演算部13は、少ない演算の負荷にて、想定発電出力及び想定発電単価をそれぞれ演算することができる。その一方、電力価格予測装置1は、過去における電力価格の予測結果を用いて、想定発電単価を補正する補正部17を有している。補正部17は、過去における電力価格の予測結果を用いるため、過剰に演算の負荷を増加することなく、より正確性の高い補正を行うことができる。従って、供給可能電力情報作成部14は、容易に入手可能な発電機情報を用いて少ない演算の負荷で供給可能電力情報を作成しつつも、補正部17で想定発電単価の補正を行うことで、供給可能電力情報の正確性を高めることができる。予測部16は、このような供給可能電力情報を用いることで、電力価格をより正確に予測することができる。以上より、電力価格の予測の容易性及び正確性を高めることができる。
補正部17は、過去における電力価格の予測値と、当該過去における電力価格の実績値との間の誤差に基づく補正値を用いて、想定発電単価を補正してよい。これにより、補正部17は、予測値と実績値との間で実際に生じた誤差に基づいて補正を行うことができる。
補正部17は、過去における所定の時間範囲の中で、各期間において予測値を決定した発電種別を特定すると共に、当該発電種別を関連付けて各期間における誤差を演算し、発電種別が互いに同一となる期間を抽出すると共に、抽出した期間における誤差に対して演算処理を行い、想定発電単価を補正するときは、当該想定発電単価に対応する発電種別での演算処理の結果に基づく補正値を用いて補正を行う。これにより、補正部17は、発電種別ごとに誤差の演算処理がなされた補正値を用いることで、より正確に想定発電単価の補正を行うことができる。
補正部17は、各発電種別に対する補正値を格納する格納部25を有し、特定の発電種別に対する補正値が新たに取得されたタイミングで、当該発電種別に対する補正値を更新してよい。この場合、補正部17は、発電種別ごとに、最新の補正値を用いて想定発電単価の補正を行うことができる。
補正部17は、想定発電単価を補正するときの状況を参照し、当該補正を行うか否かの判定を行う判定部24を有してよい。例えば、曜日、天気及び季節などの状況によっては、補正を行わないほうが良い場合もある。従って、補正部17の判定部24は、補正を行うか否かの判定を行うことにより、状況によっては補正を行わないようにすることができる。
本実施形態に係る電力価格予測方法は、対象領域内に存在する複数の発電機から、少なくとも当該複数の発電機のそれぞれの発電種別および稼働状況を含む発電機情報を取得する発電機情報取得ステップ(ステップS100)と、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電出力を演算する想定発電出力演算ステップ(ステップS110)と、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電単価を演算する想定発電単価演算ステップ(ステップS110)と、複数の発電機のそれぞれについて想定発電出力を関連付けた状態で、当該複数の発電機を想定発電単価の安い順に配列して供給可能電力情報を作成する供給可能電力情報作成ステップ(ステップS120)と、電力供給領域内の想定電力需要を演算する想定電力需要演算ステップ(ステップS150)と、供給可能電力情報および想定電力需要に基づいて、電力価格を予測する予測ステップ(ステップS160)と、過去における電力価格の予測結果を用いて、想定発電単価を補正する補正ステップ(ステップS140)と、を備える。
本実施形態に係る電力価格予測プログラムは、対象領域内に存在する複数の発電機から、少なくとも当該複数の発電機のそれぞれの発電種別および稼働状況を含む発電機情報を取得する発電機情報取得ステップ(ステップS100)と、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電出力を演算する想定発電出力演算ステップ(ステップS110)と、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電単価を演算する想定発電単価演算ステップ(ステップS110)と、複数の発電機のそれぞれについて想定発電出力を関連付けた状態で、当該複数の発電機を想定発電単価の安い順に配列して供給可能電力情報を作成する供給可能電力情報作成ステップ(ステップS120)と、電力供給領域内の想定電力需要を演算する想定電力需要演算ステップ(ステップS150)と、供給可能電力情報および想定電力需要に基づいて、電力価格を予測する予測ステップ(ステップS160)と、過去における電力価格の予測結果を用いて、想定発電単価を補正する補正ステップ(ステップS140)と、をコンピュータシステムに実行させる。
本発明に係るコンピュータ読取可能な記録媒体は、対象領域内に存在する複数の発電機から、少なくとも当該複数の発電機のそれぞれの発電種別および稼働状況を含む発電機情報を取得する発電機情報取得ステップ(ステップS100)と、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電出力を演算する想定発電出力演算ステップ(ステップS110)と、発電機情報に基づいて、各発電機の想定発電単価を演算する想定発電単価演算ステップ(ステップS110)と、複数の発電機のそれぞれについて想定発電出力を関連付けた状態で、当該複数の発電機を想定発電単価の安い順に配列して供給可能電力情報を作成する供給可能電力情報作成ステップ(ステップS120)と、電力供給領域内の想定電力需要を演算する想定電力需要演算ステップ(ステップS150)と、供給可能電力情報および想定電力需要に基づいて、電力価格を予測する予測ステップ(ステップS160)と、過去における電力価格の予測結果を用いて、想定発電単価を補正する補正ステップ(ステップS140)と、をコンピュータシステムに実行させる電力価格予測プログラムを記憶する。
本実施形態に係る電力価格予測方法、電力価格予測プログラム、及びコンピュータ読取可能な記録媒体によれば、上述の電力価格予測装置1と同様な作用・効果を得ることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電力価格予測装置100について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る電力価格予測装置100のブロック構成を示すブロック構成図である。第2実施形態に係る電力価格予測装置100は、演算装置2が判定条件設定部30を備える点で第1実施形態に係る電力価格予測装置1と相違する。判定条件設定部30は、判定部24の判定条件を設定する。判定条件設定部30は、クラスタリング分析を用いて、誤差が大きくなる状況に共通する特徴の抽出を行うことで、条件設定を行う。判定条件設定部30は、過去の複数のデータで構成されるデータセットに対してクラスタリングを行い、誤差分析を行うことで、誤差に対する複数の情報項目との相関を抽出する。図6に示すように、判定条件設定部30は、データセット取得部31と、クラスタリング部32と、評価部33と、設定部34と、を備える。
データセット取得部31は、過去の複数のデータで構成されるデータセットを取得する。データセットは、過去の所定の時間範囲内に存在する複数のデータで構成される。一つあたりのデータは、任意に設定した時間単位における各種情報によって構成される。データセット取得部31は、直近の一年分のデータセットを取得してよい。ただし、データセット取得部31が取得するデータセットは、直近のものに限定されず、数ヶ月前の特定日や数年前の特定日から数えて一年分のものであってもよい。また、時間範囲は一年に限定されず、数ヶ月であってもよく、数年であってもよい。
一つあたりのデータの時間単位は、一時間であってよい。この場合、データセット取得部31が一年分(すなわち8760時間)のデータセットを取得すると、当該データセットの中には8760個のデータが含まれる事となる。ただし、一つあたりのデータの時間単位は特に限定されず、数時間であってもよい。また、時間単位は、分単位であってもよく、日単位でもよい。
個々のデータは、複数の情報項目に係る情報を有している。個々のデータは、少なくとも、補正を行った後の予測電力価格である補正後予測値、補正を行う前の予測電力価格である補正前予測値、及び電力価格の実績値を情報項目として有する。具体的には、個々のデータは、情報項目として、補正後予測値(円/kwh)、補正前予測値(円/kwh)、需要量(kw)、太陽光の発電量(kw)、気温(℃)、各発電種別(水力・石炭・ガスコンバインドサイクル・ガスシングルサイクル・石油)の発電機合計出力(kw)、及び補正項(円/kwh)を有してよい。すなわち、データセット取得部31は、クラスタリング分析の対象として、11次元(11個の情報項目)のデータセットを用意することができる。なお、ここでの補正項とは、補正後予測値と、電力価格の実績値との間の誤差である。このように、電力価格の実績値は、当該実績値が直接情報項目となっていなくともよく、補正項のように、実績値を用いて求められる値が情報項目となっていてよい。なお、データは、ある時間における情報を示すものであるため、月や時間帯などの時間的要素も、情報項目として含まれている。情報項目には、更に多数の情報が含まれてもよく、必ずしも全ての情報項目がクラスタリングのための演算に用いられる必要はなく、クラスタリングに用いられなかった情報はクラスタリングされた後のデータに紐付けられていればよい。
なお、データの各情報項目は、次元やスケールがそれぞれ異なっている。従って、データセット取得部31は、クラスタリングを行えるように、各情報項目の数値を正規化してよい。データセット取得部31は、各情報項目の数値に対し、平均が0、分散が1になるように正規化してよい。なお、当該正規化の処理は、クラスタリング部32が行ってもよい。
クラスタリング部32は、各々のデータが有する複数の情報項目に基づいて、データセットのクラスタリングを行い、複数のデータを複数のクラスタに分ける。クラスタリング部32は、データセットの全てのデータをクラスタリングする。クラスタリングとは、2つ以上のデータがあるとき、類似度や距離(非類似度)を手がかりとして、データを決定したクラスタ数のグループ(このようなグループがクラスタと称される)に分類する方法である。クラスタリング部32がデータセットのクラスタリングを行うことにより、当該データセットに含まれる全てのデータが、複数のクラスタのうちのいずれかに分けられる。
クラスタリングの方法として、大別すると、階層的方法と非階層的方法の二通りの計算方法がある。階層的方法は、まず各標本点を1つのクラスタとして、最も距離の近い標本点から順に合併させ、新たなクラスタを形成していく方法である。階層的方法の例として、最短距離法、最長距離法、群平均法、重心法、メジアン法、ward法などの公知の方法が挙げられる。非階層的方法は、あらかじめいくつのクラスタ数にするかを決めておき、その数に従って標本点を振り分けていく方法である。非階層的方法の例として、k-means法、 k-means++法、超体積法などの公知の方法が挙げられる。クラスタリング部32は、非階層的方法を用いてクラスタリングを行う場合には、公知のクラスタ数決定法を用いて、クタスタ数を決定する。クタスタ数決定法として、例えば、Jain-Dubes(JD)法、x-means 法、Upper Tail 法などの公知の方法が挙げられる。
具体的な例として、2018年4月1日から2019年3月31日までの全8760時間分のデータを有するデータセットを準備した。クラスタリング部32は、クラスタ数決定手法として、Jain-Dubes(JD)法を用いた。このときの最適クラスタ数は10(クラスタ1~クラスタ10)となった。また、クラスタリング部32はクラスタリング手法として、k-means++法を用いて、8760個のデータを「クラスタ1」から「クラスタ10」にクラスタリングした。なお、クラスタ数決定やクラスタリングの際には、Rという統計分析ソフトを用いて行った。以降の説明において、具体的な例を用いて処理内容について説明を行う場合は、上記方法で「クラスタ1」から「クラスタ10」に分類されたデータを用いたものとする。
評価部33は、各々のクラスタについて、補正を行うべきクラスタであったか、補正を行うべきでないクラスタであったかを評価する。すなわち、評価部33は、予めクラスタの分類情報を準備しておき、クラスタがどの分類に属するかを評価する。分類情報では、クラスタの分類として、補正を行うべきか否かに関して複数の分類が設けられている。例えば、分類情報では、クラスタの分類として、「分類1:補正を行うべき分類」「分類2:補正を行うべきでない分類」「分類3:補正を行っても行わなくてもどちらでもよい分類」「分類4:補正を行うべきか否かの判断を要する分類(状況によって補正を行うべき分類)」という分類が設けられてよい。
例えば、あるクラスタにおいて、補正を行うことで誤差が小さくなったデータが多く存在する場合、評価部33は、当該クラスタを補正を行うべきクラスタ(分類1)であったと評価する。また、あるクラスタにおいて、補正を行うことでかえって誤差が大きくなったデータが多く存在する場合、評価部33は、当該クラスタを補正を行うべきでないクタスタ(分類2)であったと評価する。また、あるクラスタにおいて、補正を行っても誤差の変化が少なかったデータが多く存在する場合、評価部33は、当該クラスタを補正を行っても行わなくてもどちらでもよいクラスタ(分類3)であったと評価する。また、あるクラスタにおいて、状況によっては補正を行うことで誤差が小さくなったデータが多く存在し、他の状況によっては補正を行うことで誤差が大きくなったデータが多く存在する場合、状況によって補正を行うべきクラスタ(分類4)であったと評価する。
また、評価部33は、データに含まれる情報項目がどのような特徴を示す場合に、補正を行うべきかどうかなどについても評価を行うことができる。特に、分類4に分類されたクラスタに関し、評価部33は、どのような状況であれば補正を行い、どのような状況であれば補正を行うべきでなかったかについて評価することができる。
評価部33が、各々のクラスタをどのようにして評価するかの一例について説明する。評価部33は、各々のクラスタに含まれる各データの分析を行うことによって、各々のクラスタについての評価を行う。なお、評価部33は、複数の分析方法によって分析を行い、それらの分析結果を総合的に判断して、各々のクラスタについての評価を行ってよい。
<クラスタ別の誤差の傾向の分析>
評価部33は、補正後予測値と実績値との誤差に基づいて、各々のクラスタについての評価を行ってよい。すなわち、評価部33は、各々のクラスタに含まれる各データにおける誤差の大きさを分析することによって、各々のクラスタについての評価を行ってよい。例えば、評価部33は、誤差の大きさを示す複数段階のレベルを設定する。例えば、評価部33は、各クラスタに含まれるデータについて、図7(a)に示すように誤差の程度によって8レベルに分ける。「レベルA」はマイナス側に誤差が大きいことを示し、「レベルE´」はプラス側に誤差が大きいことを示す。そして、「レベルC~レベルD´」は誤差が小さいことを示す。評価部33は、各クラスタについて、各データの誤差の大きさを参照して、それらを該当するレベルに振り分ける。それにより、例えば図7(b)に示すような表が作成される。
例えば、クラスタ1には868個のデータが含まれるが、それらのデータのうち24個のデータが「レベルA」に属し、90個のデータが「レベルB」に属していることが示されている。このように、図7(b)の表では、各クラスタについて、どのレベルに何個のデータが振り分けられているかが示されている。また、図7(b)の表には、各クラスタの合計のデータ数、及び当該データ数の全データ数に対する割合が含まれている。各クラスタのデータ数は「合計」の欄に記載され、データ数の割合は、図7(b)の「合計(%)」の欄に記載されている。また、図7(b)の表には、あるレベルに振り分けられたデータ数の全クラスタにわたる合計が含まれている。レベルに振り分けられたデータ数の合計は、図7(b)の「レベル別合計」に記載されている。例えば、クラスタ1の中のデータ数は、868個である。また、全データ数が8760個であるため、クラスタ1のデータ数の割合は9.9%となる。また、レベルAに振り分けられたデータ数のクラスタ1~クラスタ10の合計値は549個である。
評価部33は、各クラスタについて、データの分布の傾向を分析する。例えば評価部33は、分析対象に係るクラスタのデータの分布の傾向を分析するときは、当該分析対象に係るクラスタの中のデータ数の全データ数に対する割合を取得する。前述のように、クラスタ1のデータ数の割合は9.9%となる。また、評価部33は、分析対象に係るクラスタの各レベルに対応するデータ数を取得すると共に、当該データ数のレベル全体での個数の合計値に対する割合を取得する。例えば、評価部33は、クラスタ1のレベルAに属するデータ数(24個)を取得すると共に、当該データ数のレベル全体での個数(549個)に対する割合を取得する。また、評価部33は、あるレベルに属するデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタの割合から、どの程度乖離しているかを分析する。評価部33は、乖離の度合に対して予め閾値を設定しておき、当該閾値を超えるか否かによって、乖離の度合いを分析してよい。
すなわち、分析対象に係るクラスタ内において、各レベルに対して偏りなくデータが存在している場合、各レベルにおけるデータ数の割合は、分析対象に係るクラスタのデータ数の割合に近くなるはずである。これに対し、あるレベルにおけるデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタのデータ数の割合から大きく乖離している場合、当該レベルにデータ数が偏っていると判断することができる。例えば、クラスタ1のデータ数の割合は9.9%であるため、クラスタ1の分布に偏りが無い場合は、レベルA~レベルE´におけるデータ数の割合も9.9%前後の割合になるはずである。しかし、クラスタ1のレベルE´には、当該レベルE´全体のデータ数の1161個に対する21.7%にあたる252個のデータ数が存在している。このように、レベルE´では、クラスタ1のデータ数の割合である9.9%よりも+12%程度も大きくなっている。従って、評価部33は、「クラスタ1は、レベルE´にデータ数が偏ったクラスタである」と分析することができる。
例えば、図7(b)の表では、乖離度合に対して第1の閾値として当該クラスタのデータ数の割合を設定すると共に、第2の閾値として当該クラスタのデータ数の割合+5%を設定する。データ数のうち、第1の閾値を超えるものは太字で示され、更に、第2の閾値を超えるものについては枠内が塗られて表示されている。評価部33は、あるクラスタにおいて、データ数の割合が第1の閾値又は第2の閾値を超えるレベルが存在している場合、当該レベルにデータ数が偏ったクラスタであると分析することができる。このように図7(b)を分析した場合、クラスタ6は誤差が小さいレベルC~レベルD´にデータ数が偏って存在する比較的優秀なクラスタと分析できる。その一方、クラスタ7やクラスタ10には誤差がマイナスに大きいレベルとプラスに大きいレベルにデータ数が混在している特徴的なクラスタであると分析できる。なお、各クラスタにおける誤差の分布の傾向を分析する際の判断基準は上述の例に限定されるものではなく、傾向を分析できるかぎり、あらゆる方法を採用可能である。
<クラスタ別の誤差補正の有効性の分析>
上述のように、補正後誤差の分布を見るだけでは、補正が有効に機能した時間などの条件を抽出し切れない場合がある。従って、評価部33は、補正後予測値と実績値との誤差、及び補正前予測値と実績値との誤差に基づいて、各々のクラスタについての評価を行ってよい。すなわち、評価部33は、各々のクラスタに含まれる各データにおける誤差の絶対値の差を分析することによって、各々のクラスタについての評価を行ってよい。誤差の絶対値の差は「(補正前予測値と実績値との誤差の絶対値)-(補正後予測値と実績値との誤差の絶対値)」という式によって求められる。誤差の絶対値の差は、プラス側に大きくなるほど、補正を行うことによって誤差を小さくすることができた、ということを示す。
例えば、評価部33は、誤差の絶対値の差を示す複数段階のレベルを設定する。例えば、評価部33は、各クラスタに含まれるデータについて、図8(a)に示すように誤差の絶対値の差によって7レベルに分ける。「レベルa~レベルc」に該当するデータは補正によってむしろ、予測精度が悪化してしまったデータ(以下、過補正データと称する場合がある)であることを示す。「レベルd~レベルg」に該当するデータは、補正によって誤差が改善したデータであることを示す。評価部33は、各クラスタについて、各データの誤差の絶対値の差を参照して、それらを該当するレベルに振り分ける。それにより、例えば図8(b)に示すような表が作成される。なお、表の見方については図7(b)と同趣旨である。
評価部33は、各クラスタについて、誤差補正の有効性を分析する。例えば評価部33は、分析対象に係るクラスタの誤差補正の有効性を分析するときは、当該分析対象に係るクラスタの中のデータ数の全データ数に対する割合を取得する。また、評価部33は、分析対象に係るクラスタの各レベルに対応するデータ数を取得すると共に、当該データ数のレベル全体での個数に対する合計値に対する割合を取得する。また、評価部33は、あるレベルに属するデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタの割合から、どの程度乖離しているかを分析する。評価部33は、乖離度合に対して予め閾値を設定しておき、当該閾値を超えるか否かによって、乖離の度合いを分析してよい。これらの分析を行う際の表の見方は、図7(b)で説明したものと同趣旨である。
分析対象に係るクラスタ内において、「レベルd~レベルg」特に「レベルf、レベルg」におけるデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタのデータ数の割合から大きく乖離している場合、当該レベルにデータ数が偏っているため、補正によって誤差が改善した傾向にあると判断することができる。一方、分析対象に係るクラスタ内において、「レベルa~レベルc」特に「レベルa、レベルb」におけるデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタのデータ数の割合から大きく乖離している場合、当該レベルにデータ数が偏っているため、補正によって予測精度が悪化した傾向にあると判断することができる。
例えば、図8(b)の表では、乖離度合に対して第1の閾値として当該クラスタのデータ数の割合を設定すると共に、第2の閾値として当該クラスタのデータ数の割合+5%を設定する。データ数のうち、第1の閾値を超えるものは太字で示され、更に、第2の閾値を超えるものについては枠内が塗られて表示されている。評価部33は、あるクラスタにおいて、データ数の割合が第1の閾値又は第2の閾値を超えるレベルが存在している場合、当該レベルにデータ数が偏ったクラスタであると分析することができる。このように図8(b)を分析した場合、クラスタ2、クラスタ3、及びクラスタ7は、補正によって誤差が大きく改善したデータ数が多いと分析できる。その一方、レベル1は、補正によって予測精度が悪化したデータ数が多いと分析できる。そして、図7(b)の分析でクラスタ7と同様に特徴的であったクラスタ10については、誤差が改善したデータ数も多いものの、予測精度が悪化したデータ数も多いと分析できる。なお、各クラスタにおける誤差補正の有効性を分析する際の判断基準は上述の例に限定されるものではなく、誤差補正の有効性を分析できるかぎり、あらゆる方法を採用可能である。
上述までの分析では、各々のクラスタの誤差の傾向や誤差補正が有効であったかなどについて分析をおこなっていたが、次の分析では、過補正データの発生状況についての分析を行う。図9は、過補正データの発生状況を、クラスタ及び時間帯別にヒストグラムで表したグラフである。図10は、過補正データにおける誤差の絶対値の差をクラスタ及び時間帯別にプロットしたグラフである。まず、図9からわかるように、過補正データが多い時間帯として、早朝と昼ごろに2度ピークが存在している。早朝のピークに多いのはクラスタ5、クラスタ8、クラス9であり、昼ごろのピークに多いのはクラスタ1、クラスタ5である。一方、図10をみると、過補正データの数が多い時間帯と、過補正が大きい時間帯は、必ずしも一致していないことがわかる。さらに、大外し(過補正データの中でも、補正による精度悪化が大きいデータ)に関しては、そのほとんどがクラスタ10に集中していることが読み取れる。つまり、評価部33は、クラスタ10に存在する時間帯に対しては、補正を行うか補正を行わないかについての分析を行うことが好ましい。
<時刻の偏りの分析>
評価部33は、各クラスタのデータに、該当する時刻の偏りが存在するかについての分析を行ってよい。評価部33は、各クラスタについて、各データの時刻を参照して、それらを該当する時刻に振り分ける。それにより、例えば図11に示すような表が作成される。評価部33は、各クラスタについて、時刻の偏りを分析する。例えば評価部33は、分析対象に係るクラスタの時刻の偏りを分析するときは、当該分析対象に係るクラスタの中のデータ数の全データ数に対する割合を取得する。また、評価部33は、分析対象に係るクラスタの各時間帯に対応するデータ数を取得すると共に、当該データ数の時刻全体での個数に対する合計値(1年なので365個に固定される)に対する割合を取得する。また、評価部33は、ある時刻に属するデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタの割合から、どの程度乖離しているかを分析する。評価部33は、乖離度合に対して予め閾値を設定しておき、当該閾値を超えるか否かによって、乖離の度合いを分析してよい。これらの分析を行う際の表の見方は、図7(b)で説明したものと同趣旨である。
例えば、図11の表では、乖離度合に対して第1の閾値として当該クラスタのデータ数の割合を設定すると共に、第2の閾値として当該クラスタのデータ数の割合+5%を設定する。データ数のうち、第1の閾値を超えるものは太字で示され、更に、第2の閾値を超えるものについては枠内が塗られて表示されている。評価部33は、あるクラスタにおいて、データ数の割合が第1の閾値又は第2の閾値を超える月が存在している場合、当該月にデータ数が偏ったクラスタであると分析することができる。図11に示すように、クラスタ3、クラスタ5、クラスタ6、クラスタ8には深夜~早朝にかけてのデータが多く存在していることが分析される。一方、クラスタ1、クラスタ2、クラスタ7には昼あるいは夕方のデータが集中していることが分析される。
<月の偏りの分析>
評価部33は、各クラスタのデータに、該当する月の偏りが存在するかについての分析を行ってよい。評価部33は、各クラスタについて、各データの月を参照して、それらを該当する月に振り分ける。それにより、例えば図12に示すような表が作成される。評価部33は、各クラスタについて、月の偏りを分析する。例えば評価部33は、分析対象に係るクラスタの月の偏りを分析するときは、当該分析対象に係るクラスタの中のデータ数の全データ数に対する割合を取得する。また、評価部33は、分析対象に係るクラスタの各時間帯に対応するデータ数を取得すると共に、当該データ数の月全体での個数に対する合計値に対する割合を取得する。また、評価部33は、ある月に属するデータ数の割合が、分析対象に係るクラスタの割合から、どの程度乖離しているかを分析する。評価部33は、乖離度合に対して予め閾値を設定しておき、当該閾値を超えるか否かによって、乖離の度合いを分析してよい。これらの分析を行う際の表の見方は、図7(b)で説明したものと同趣旨である。
例えば、図12の表では、乖離度合に対して第1の閾値として当該クラスタのデータ数の割合を設定すると共に、第2の閾値として当該クラスタのデータ数の割合+5%を設定する。データ数のうち、第1の閾値を超えるものは太字で示され、更に、第2の閾値を超えるものについては枠内が塗られて表示されている。評価部33は、あるクラスタにおいて、データ数の割合が第1の閾値又は第2の閾値を超える月が存在している場合、当該月にデータ数が偏ったクラスタであると分析することができる。図12に示すように、全てのクラスタに、特定の月のデータが大きく偏って存在しており、時刻のケースよりも強い偏りが確認できた。年間のクラスタリングによって、データの特徴が季節に大きく依存していることが分析される。
<クラスタの特徴の分析>
前述までの分析でまでで得られた、各クラスタの11個の情報項目や誤差などの特徴を図13にまとめ、それぞれの年間の平均値と比較した。枠内を塗ったものは年平均値より高い値、枠内を塗っていないものは年平均値より低い値であることを示す。例えば、図12に示したように、クラスタ3、クラスタ7、クラスタ10には、夏(7月、8月)のデータが集まっているが、そのなかでもクラスタ3は深夜~早朝のデータが多いという特徴が分かる(図11)。さらに、クラスタ7、クラスタ10は全ての項目で似た傾向を持つが、クラスタ10に関しては補正値が極端に大きいという違いがある。評価部33は、誤差が平均より大きいクラスタは夏に偏っていると分析することができる。従って、評価部33は、特定の月(ここでは7,8月)に焦点を当てて分析を行ってよい。
<特定の月における各種分析>
評価部33は、特定の月について、補正項と、補正前後における誤差の絶対値の差と、の関係について分析してよい。図14は、補正項と、補正前後の誤差の絶対値の差と、の関係を示すグラフである。図14に示すように、7,8月において、大外し(誤差の絶対値の差が大きくなること)は補正項が10円/kwhを超えたあたりから多くなる傾向にあり、誤差の絶対値の差が-5円/kwh以下となった時間帯は、すべて補正項の大きさが10円/kwh以上であったと分析できる。
評価部33は、補正対象に係る想定発電単価に対応する発電種別と、補正前後の誤差の大きさとの関係を分析してよい。例えば、評価部33は、発電種別が石油である時間帯は、補正前の誤差が比較的大きく、補正項が大きいほうが適切と考えられる時間帯であると分析することができる。
評価部33は、実際の電力需要と補正前後の誤差の絶対値の差の関係を分析してよい。図15は、実際の電力需要と補正前後の誤差の絶対値の差の関係を示すグラフである。図15より、評価部33は、実際の電力需要が5000万kwhから5500万kwhの範囲に大外しが多く、それを超えると大当たりが多くなると分析できる。
次に、設定部34について説明する。設定部34は、評価部33の評価結果に基づいて判定条件を設定する。設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、補正を行うべきクラスタに属すか否かを判定可能とするために、各々のクラスタの分類情報を判定条件として設定する。判定条件として用いられる分類情報は、評価部33が用いていた分類情報を用いてよい。すなわち、分類情報では、クラスタの分類として、「分類1:補正を行うべき分類」「分類2:補正を行うべきでない分類」「分類3:補正を行っても行わなくてもどちらでもよい分類」「分類4:補正を行うべきか否かの判断を要する分類(状況によって補正を行うべき分類)」という分類が設けられてよい。
設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、分類1~4のどれに属するかを分類できるような判定条件を設定する。例えば、設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、評価部33で評価された複数のクラスタのどれに属するかを判定条件とする。図7~図13で示したような例について評価部33での評価結果を用いる場合、設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、クラスタ2,3,7に属することを、分類1に分類されるための判定条件とする。設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、クラスタ1に属することを、分類2に分類されるための判定条件とする。設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、クラスタ4,5,6,8に属することを、分類3に分類されるための判定条件とする。設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が、クラスタ10に属することを、分類4に分類されるための判定条件とする。
設定部34は、判定部24による判定対象となる状況が分類4に分類された場合において、補正を行うべきか否かの判断を行うための判断情報を設定する。設定部34は、複数の情報項目の中の何れかの情報項目が、所定の条件を満たすか否かという判断情報を設定してよい。設定部34は、月や時間帯などの時間的要素が、所定の条件を満たすか否かという判断情報を設定してよい。例えば、設定部34は、判断対象となる月が7,8月であるか否かを判定情報としてよい。なお、当該判断情報の具体例については、後述の判定部24の処理と共に詳細に説明する。
また、設定部34は、状況によっては、補正値ではなく固定値を用いた補正がなされるような条件、及び固定値を設定してよい。設定部34は、発電種別や想定電力需要などに基づいて、固定値を用いた補正を行うか否かを判定する判定条件を設定してよい。なお、当該判定条件の具体例については、後述の判定部24の処理と共に詳細に説明する。
また、第2実施形態に係る電力価格予測装置100では、判定部24は、評価部33での評価結果に基づいて設定された判定条件を用いて判定を行うことができる。
判定部24は、判定対象となる状況、すなわち補正を行う時の状況が、補正を行うべきクラスタに属すか否かを判定することで、補正するか否かの判定を行う。すなわち、判定部24は、判定を行うときの情報項目について、クラスタリング部32と同様な方法でクラスタリングを行う。そして、判定部24は、判定対象となる状況がクラスタ1~クラスタ10のどのクラスタに属するかを判定し、分類1~分類4のいずれかに分類する。判定部24は、分類1に属すると判定した場合、ただちに補正値を用いて補正を行うように判定する。判定部24は、分類2に属すると判定した場合、ただちに補正を行わないと判定する。判定部24は、分類3に属すると判定した場合、補正を行ってもよく、補正を行わなくともよく、どのようにするかは予め設定されてよい。判定部24は、分類4に属すると判定した場合、補正をおこなうべきか否かの判断を行う。
分類4に属することで、補正を行うべきか否かの判断が必要になった場合は、次のような処理を行う。すなわち、判定部24は、想定発電単価を補正するときの状況が、所定の条件を満たしているか否かを判定する第1の判定を行う。当該判定において所定の条件を満たしていると判定された場合、補正部17は、想定発電単価を補正する。例えば、判定部24は、判定対象となる状況として時間的要素を判定する。具体的には、判定部24は、図6~図13の結果に基づいて、判定を行う時の季節が7,8月であるか否かを判定する。当該季節が7,8月であると判定された場合は、補正部17は補正を行い、7,8月でないと判定された場合は、補正部17は補正を行わない。なお、判定部24の判定対象となる状況は、時間的要素だけでなく、気象条件(例えば、最高気温が30℃以上など)で夏季と判定してもよい、また、判定部24は、寒波や大雪などの異常気象の日であるか否かを判定してもよい。
また、判定部24は、過去における電力価格の予測値と、当該過去における電力価格の実績値との間の誤差に基づく補正値が、閾値(第1の閾値)以下であるか否かを判定する第2の判定を行ってよい。当該判定において閾値以下であると判定された場合、補正部17は、補正値を用いて想定発電単価を補正し、当該判定において閾値を超えると判定された場合、補正部17は、予め設定された固定値を用いて想定発電単価を補正してよい。例えば、図14での分析結果に基づいて、季節が7,8月である場合には、判定部24は、補正項(すなわち補正値)が10円/kwh以下であるか否かを判定する。また、10円/kwhを固定値とする。これにより、補正値が10円/kwh以下であると判定された場合、補正部17は、補正値を用いて補正を行い、補正値が10円/kwhを超える場合、補正部17は、固定値を用いて補正を行う。この場合は、夏場において、大外しと大当たり(補正による制度改善効果が大きいデータ)が両方とも減少するが、大外しの削減の度合いの方が大きいため、平均誤差を低減することができる。なお、閾値と固定値はかならずしも一致していなくともよい。
また、判定部24は、想定発電単価を補正するときにおいて、補正対象に係る想定発電単価に対応する発電種別が特定の発電種別であるか否かを判定する第3の判定を行ってよい。当該判定において特定の発電種別であると判定された場合、補正部17は、第2の判定の結果に関わらず、補正値を用いて想定発電単価を補正する。第3の判定において特定の発電種別でないと判定された場合、補正部17は、第2の判定の結果に基づいて、補正値又は固値を用いて想定発電単価を補正してよい。例えば、評価部33での分析結果に基づいて、判定部24は、補正対象に係る想定発電単価に対応する発電種別が石油である場合、補正値に対して上限値(すなわち固定値)を設けないようにする。これにより、第2の判定のみを行う場合と異なり、大当たりでの補正を可能としつつ、大外しだけを効率よく減らすことができる。
また、判定部24は、電力価格の予測の基となる想定電力需要が閾値(第2の閾値)以下であるかを判定する第4の判定を行ってよい。判定において想定電力需要が閾値以下であると判定された場合、補正部17は、第2の判定の結果に基づいて、補正値又は固定値を用いて想定発電単価を補正する。また、第4の判定において想定電力需要が第2の閾値を超えると判定された場合、補正部17は、第2の判定の結果に関わらず、補正値を用いて想定発電単価を補正してよい。例えば、図15での分析結果に基づいて、想定電力需要が5500万kwh以下であると判定された場合、補正部17は第2の判定に基づいて補正値又は固定値を用いて想定発電結果を補正する。これにより、大当たりでの補正を増やすことができる。
次に、図16を参照して、第2実施形態に係る電力価格予測方法の一例について説明する。図16は、第2実施形態に係る電力価格予測方法うち、判定条件を設定する判定条件設定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。ただし、図16に示す各処理の順序は一例にすぎず、趣旨を逸脱しない範囲で適宜順序を変更してよい。
図16に示すように、まず、データセット取得部31は、過去の複数のデータで構成されるデータセットを取得するデータセット取得ステップを実行する(ステップS300)。次に、クラスタリング部32は、各々のデータが有する複数の情報項目に基づいて、ステップS300で取得したデータセットのクラスタリングを行い、複数のデータを複数のクラスタに分けるクラスタリングステップを実行する(ステップS310)。次に、評価部33は、各々のクラスタについて、補正を行うべきクラスタであったか、補正を行うべきでないクラスタであったかを評価する評価ステップを(ステップS320)。次に、設定部34は、ステップS320での評価部33の評価結果に基づいて判定条件を設定する判定条件設定ステップを実行する(ステップS330)。以上により、図16に示す処理が終了する。
図17は、第2実施形態に係る電力価格予測方法うち、判定対象となる状況が分類4に分類されたときの判定部24の判定内容、及び補正部17の補正処理の内容を示すフローチャートである。ただし、図17に示す各処理の順序は一例にすぎず、趣旨を逸脱しない範囲で適宜順序を変更してよい。
図17に示すように、まず、判定部24は、判定対象となるときの季節が7,8月であるか否かを判定する第1の判定ステップを実行する(ステップS400)。ステップS400において、7,8月ではないと判定された場合、補正部17は補正を行うことなく(ステップS440)、図17に示す処理が終了する。
ステップS400において、7,8月であると判定された場合、判定部24は、想定発電単価を補正するときにおいて、補正対象に係る想定発電単価に対応する発電種別が石油であるか、又は発電種別が石油ではないかを判定する第3の判定ステップを実行する(ステップS410)。ステップS410において発電種別が石油であると判定された場合、補正部17は、固定値ではなく、補正値で補正を行う補正ステップを実行する(ステップS450)。ステップS410において発電種別が石油でないと判定された場合、判定部24は、電力価格の予測の基となる想定電力需要が閾値(第2の閾値)である5500万kwh以下であるか否かを判定する第4の判定ステップを実行する(ステップS420)。ステップS420において、想定電力需要が閾値を超えると判定された場合、補正部17は、固定値ではなく、補正値で補正を行う補正ステップを実行する(ステップS450)。ステップS420において、想定電力需要が閾値以下であると判定された場合、判定部24は、補正値が閾値(第1の閾値)である10円/kwhを超えるか否かを判定する第2の判定ステップを実行する(ステップS430)。ステップS430において、補正値が閾値を超えると判定された場合、補正部17は、固定値である10円/kwhを用いて補正を行う補正ステップを実行する(ステップS460)。一方、ステップS430において、補正値が閾値以下であると判定された場合、補正部17は、補正値で補正を行う補正ステップを実行する(ステップS450)。以上により、図17に示す処理が終了する。
なお、評価部33による評価結果に応じて、ステップS400、S410、S420、S430に係る判定ステップの何れかを適宜省略してよく、各ステップをどのように組み合わせて処理を行ってもよい。また、ステップS400、S410、S420、S430の何れかの判定ステップを単独で行い、他の判定ステップを省略してよい。例えば、判定部24がステップS410だけを行い、発電種別が石油の場合は補正値を用いて補正し、それ以外の発電種別の場合は補正を行わないようにしてもよい。
次に、第2実施形態に係る電力価格予測装置100の作用・効果について説明する。
上述の第2実施形態に係る電力価格予測装置100では、判定部24は、想定発電単価を補正するときの状況が、所定の条件を満たしているか否かを判定する第1の判定を行い、第1の判定において所定の条件を満たしていると判定された場合、補正部17は、想定発電単価を補正してよい。過去の状況を考慮して予め所定の条件を設定しておくことで、判定部24は、補正を行うことでかえって誤差が大きくなるような状況で、補正を行うように判定することを抑制できる。
判定部24は、過去における電力価格の予測値と、当該過去における電力価格の実績値との間の誤差に基づく補正値が、第1の閾値以下であるか否かを判定する第2の判定を行い、第2の判定において第1の閾値以下であると判定された場合、補正部17は、補正値を用いて想定発電単価を補正し、第2の判定において閾値を超えると判定された場合、補正部17は、予め設定された固定値を用いて想定発電単価を補正してよい。これにより、補正部17が、補正を行うことでかえって誤差が大きくなることを抑制することができる。
判定部24は、想定発電単価を補正するときにおいて、補正対象に係る想定発電単価に対応する発電種別が特定の発電種別であるか否かを判定する第3の判定を行い、補正部17は、第3の判定に基づいて想定発電単価を補正してよい。この場合、発電種別を考慮して、適切な補正を行うことができる。
判定部24は、電力価格の予測の基となる想定電力需要が第2の閾値以下であるかを判定する第4の判定を行い、補正部17は、第4の判定に基づいて想定発電単価を補正してよい。この場合、想定電力需要を考慮して、適切な補正を行うことができる。
判定部24の判定条件を設定する判定条件設定部30を更に備え、判定条件設定部30は、過去の複数のデータで構成されるデータセットを取得するデータセット取得部31と、各々のデータが有する複数の情報項目に基づいて、データセットのクラスタリングを行い、複数のデータを複数のクラスタに分けるクラスタリング部32と、各々のクラスタについて、補正を行うべきクラスタであったか、補正を行うべきでないクラスタであったかを評価する評価部33と、を含み、評価部33の評価結果に基づいて判定条件を設定してよい。このように、クラスタリングによって複数に分けられたクラスタを評価した評価結果を用いることで、判定条件設定部30は、補正を行うべき状況で適切な補正を行うことができるような、判定条件を設定できる。
データセットに含まれる個々のデータは、少なくとも、補正を行った後の予測電力価格である補正後予測値、補正を行う前の予測電力価格である補正前予測値、及び電力価格の実績値を情報項目として有し、評価部33は、補正後予測値と実績値との誤差、及び補正前予測値と実績値との誤差に基づいて、各々のクラスタについての評価を行い、判定条件設定部30は、判定部24の判定対象となる状況が、補正を行うべきクラスタに属すか否かを判定可能とするために、各々のクラスタの分類情報を判定条件として設定してよい。これにより判定条件設定部30は、判定対象となる状況が、補正を行うべきクラスタに属するかを判定することができるため、補正を行うべき状況で適切な補正を行うことができるような、判定条件を設定できる。
分類情報では、クラスタの分類として、補正を行うべきか否かの判断を要する分類が設けられており、判定条件設定部30は、補正を行うべきか否かの判断を行うための判断情報として、複数の情報項目の中の何れかの情報項目が、所定の条件を満たすか否かという判断情報を設定してよい。これにより、判定条件設定部30は、判定対象に係るクラスタが、補正を行うべき状況と補正を行うべきでない状況が混在するようなクラスタにおいて、補正を行うべき状況で適切な補正を行うことができるような、判定条件を設定できる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、補正部17は、発電種別ごとに互いに異なる補正値を設定していた。これに代えて、補正部17は、発電種別を区別することなく、同一の補正値を用いて想定発電単価を補正してよい。
上述の実施形態では、補正部17は、想定発電単価を補正するときの状況を参照し、当該補正を行うか否かの判定を行っていた。これに代えて、補正部17は、判定を行うことなく、状況に関わらず一律補正を行ってもよい。ただし、その場合は、補正部17は、状況に応じて補正値を使い分けるような処理を行ってもよい。