JP2018059125A - セルロース誘導体、樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】特性が改質されたセルロース誘導体を提供する。【解決手段】セルロースのヒドロキシ基の水素原子に代えてエステル化により導入された短鎖有機基と、前記セルロースのヒドロキシ基の水素原子に代えてエステル化により導入された長鎖有機基とを有し、クロロホルムに対する溶解度が10質量%以下であり、前記短鎖有機基が、炭素数2〜4の短鎖アシル基であり、前記長鎖有機基が、炭素数5〜48の長鎖アシル基、又はカルダノール誘導体由来の基である、セルロース誘導体。【選択図】なし
Description
本発明は、セルロース誘導体の製造方法およびセルロース誘導体に関する。
植物を原料とするバイオプラスチックは、石油枯渇対策や温暖化対策に寄与できるため、包装、容器、繊維などの一般製品に加え、電子機器、自動車等の耐久製品への利用も開始されている。
しかし、通常のバイオプラスチック、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカネート、デンプン変性物などは、いずれもデンプン系材料、すなわち可食部を原料としている。そのため、将来の食料不足への懸念から、非可食部を原料とする新しいバイオプラスチックの開発が求められている。
非可食部の原料としては、木材や草木の主要成分であるセルロースが代表的であり、これを利用した種々のバイオプラスチックが開発され、製品化されている。
しかし、セルロースを化学的に改質して樹脂化する工程は複雑で手間がかかり、製造エネルギーも大きいため、セルロース樹脂の製造コストは高い。さらに、製造した樹脂の耐久性(強度、耐熱性、耐水性など)も十分でないため、用途が限定されている。
セルロースは、木材等からリグニンやヘミセルロースを薬剤によって化学的に分離し、パルプとして製造される。または、綿はほぼセルロースでできているため、このまま用いることができる。このようなセルロースは、β−グルコースが重合した高分子であるが、多くのヒドロキシ基を有するために、水素結合による強力な分子間力を持つ。そのため、硬くて脆く、熱可塑性もなく、また、特殊な溶媒を除き、溶媒溶解性も低い。さらに、親水性基であるヒドロキシ基を多く有するため吸水性が高く、耐水性が低い。
このようなセルロースを改質するため、種々の検討が行われている。
セルロースを改質する方法としては、セルロースのヒドロキシ基の水素原子をアセチル基などの短鎖アシル基で置換する方法が知られている。この方法によれば、ヒドロキシ基の数を低減できるため、セルロースの分子間力を下げることができる。さらに、アセチル基のような短鎖アシル基に加えて、より炭素数の多い長鎖有機基を導入し、良好な熱可塑性や耐水性を有するセルロース誘導体を製造することが検討されている。
例えば、特許文献1には、セルロースのヒドロキシ基の水素原子の少なくとも一部が、短鎖アシル基(例えば炭素数2〜4の脂肪族アシル基)及び長鎖アシル基(例えば炭素数5〜20の脂肪族アシル基)で置換されたセルロース誘導体が記載され、このセルロース誘導体は、吸水率が低く、良好な熱可塑性、強度および破断伸度を有し、成形加工に適していることが記載されている。
特許文献2には、カルダノールが導入されたセルロース誘導体が記載され、このセルロース誘導体は、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善されたことが記載されている。
特許文献3には、カルダノール及びアビエチン酸が導入されたセルロース誘導体が記載され、このセルロース誘導体は、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善されたことが記載されている。
上述の関連技術によるセルロース樹脂の製造方法は、生成物の回収工程によるエネルギー負荷が大きいという問題あった。すなわち、この製造方法では、生成物であるセルロース誘導体が反応溶液中に溶解した状態で得られるため、反応溶液へ生成物を溶解しにくい貧溶媒を大量に加えて生成物を沈殿させ固液分離している。このため、貧溶媒により希釈された大量の反応溶液から、溶媒、触媒、反応剤あるいはその誘導体を回収する際に大きなエネルギーが必要になる。
一方で、セルロースの酢酸エステル化は、生成物が溶剤に溶解する溶剤法により行われることが一般的であるが、生成物が溶剤に溶解しない非溶剤法によっても行うことができることが知られている。しかしながらこの方法では、炭素数の少ないアセチル基を結合させることは可能であるが、炭素数の多い長鎖有機基を結合させることは困難であった。
本発明の目的は、特性が改質されたセルロース誘導体を低コストで製造可能な方法を提供することにあり、また、特性が改質されたセルロース誘導体を提供することにある。
本発明の一態様によれば、反応剤と、セルロース又はその誘導体とを固液不均一系において反応させて、炭素数5以上の長鎖有機基が導入されたセルロース誘導体を膨潤状態で形成し、
固液分離を行って前記長鎖有機基が導入されたセルロース誘導体を得ることを特徴とするセルロース誘導体の製造方法が提供される。
固液分離を行って前記長鎖有機基が導入されたセルロース誘導体を得ることを特徴とするセルロース誘導体の製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記の製造方法により製造されたセルロース誘導体が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記のセルロース誘導体を含有する樹脂組成物が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記の樹脂組成物を成形して得られる成形体が提供される。
本発明の実施形態によれば、特性が改質されたセルロース誘導体を低コストで製造可能な方法を提供でき、また、特性が改質されたセルロース誘導体を提供することができる。
本発明の実施形態による製造方法では、セルロース又はその誘導体と反応剤とを固液不均一系において反応させ、その後、固液分離を行って目的のセルロース誘導体を得る。この方法によれば、反応後、目的のセルロース誘導体が溶液状態ではないため、再沈殿のための多量の溶媒を使用する必要がなく、結果、溶媒等の回収工程に要するエネルギーを低減できる。固液分離後の固形分は、必要に応じて洗浄し、通常の方法で乾燥することができる。
この長鎖有機基を導入する不均一系反応は、反応剤をセルロース又はその誘導体に含浸させ、セルロース又はその誘導体が膨潤した状態で行われることが好ましい。反応工程の初期において適度に膨潤していることが好ましいが、反応工程の初期において膨潤していなくてもよく、反応工程の終了までに膨潤状態が形成されていればよい。適度に膨潤した状態となることにより、固液不均一系であっても、炭素数の多い長鎖有機基を導入しやすくなる。その際、セルロース又はその誘導体が液相中へ溶解しにくい条件で行うことが好ましい。
長鎖有機基が導入されたセルロース誘導体の膨潤度は、少なくとも反応工程の終了時(固液分離直前)において、10〜300%の範囲にあることが好ましい。なお、膨潤度は後述の測定方法に従って決定することができる。この膨潤度は、反応性の観点から20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。一方、生成物(固形分)の回収率の観点から、200%以下が好ましく、150%以下がより好ましく、100%以下がさらに好ましい。
さらに、同じく生成物(固形分)の回収率の観点から、長鎖有機基が導入されたセルロース誘導体の反応溶液に対する溶解度は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。この溶解度は、例えば、生成したセルロース誘導体のクロロホルムに対する溶解度を目安とすることができ、この場合、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。ここで溶解度とは、20℃における、飽和溶液の質量に対する飽和溶液に溶けている溶質(長鎖有機基が導入されたセルロース誘導体)の質量の比率(百分率)をいう。
長鎖有機基導入前のセルロース又はその誘導体は、長鎖有機基を導入する反応工程の開始時において、反応性および反応効率をより高める観点から、膨潤していることが好ましい。また、膨潤状態の形成しやすさの点から、長鎖有機基が導入されるセルロース系材料としては、セルロースよりもセルロース誘導体を用いることが好ましい。長鎖有機基を導入する反応工程の開始時の膨潤度は、10〜300%の範囲にあることが好ましい。十分な反応性や反応効率等を得る点から、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。一方、生成物の回収率等の観点から、200%以下が好ましく、100%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
この長鎖有機基を導入する不均一系反応は、反応剤を溶解する溶媒の存在下で行ってもよく、非プロトン性溶媒を好適に用いることができる。また、反応触媒を使用してもよく、特に塩基性触媒が好ましい。なお、反応剤自体が液体の場合は、溶媒を用いないで固液不均一反応を実施することも可能である。
反応前(長鎖有機基導入前)のセルロース又はその誘導体および反応後(長鎖有機基導入後)のセルロース誘導体は、液相への溶解が抑えられ且つ適度な膨潤状態となるように架橋部位を有していることが好ましい。この架橋部位は、プロセスの簡便性の観点からは、セルロースが生来有する分子間結合部位を利用することが好ましい。
上記のような固液不均一系の反応において、セルロース又はその誘導体への長鎖有機基(特に炭素数5以上の有機基)を導入する方法として、以下の二つの方法が挙げられる。
第1の方法(2段反応法)として、セルロースに炭素数4以下の短鎖有機基を導入して短鎖結合セルロース誘導体を形成し(第1工程)、この短鎖結合セルロース誘導体に長鎖有機基を導入する(第2工程)。短鎖結合セルロース誘導体は、セルロースのヒドロキシ基の一部の水素原子が短鎖アシル基で置換された短鎖アシル化セルロース誘導体であることが好ましい。
短鎖有機基としては炭素数2〜4の有機基が好ましく、炭素数2〜4のアシル基がより好ましい。短鎖アシル基は、アセチル基又はプロピオニル基がより好ましく、これらの両方であってもよく、アセチル基が特に好ましい。短鎖有機基を導入するための反応剤(短鎖反応剤)としては、炭素数4以下の有機基を導入する反応剤であることが好ましく、炭素数2〜4の短鎖アシル基を導入する短鎖アシル化剤であることがより好ましい。短鎖アシル化剤は、アセチル基を導入するアシル化剤、又はプロピオニル基を導入するアシル化剤がより好ましく、これらの両方を用いてもよく、アセチル基を導入するアシル化剤が特に好ましい。長鎖有機基を導入するための反応剤(長鎖反応剤)としては、炭素数5以上の有機基を導入する反応剤が好ましく、炭素数5〜48の長鎖アシル基を導入する長鎖アシル化剤がより好ましい。
この短鎖アシル化セルロース誘導体は、液相への溶解を抑える点から、架橋部位を有していることが好ましい。この架橋部位は、原料のセルロースが生来有する分子間結合部位を利用することが好ましい。
第2の方法(1段反応法)としては、セルロースに、固液不均一系で、短鎖有機基を導入する短鎖反応剤の不存在下または存在下で、長鎖有機基を導入する長鎖反応剤を反応させることができる。短鎖反応剤を用いる場合は、長鎖反応剤と短鎖反応剤を同時に加えて反応を実施してもよいし、短鎖反応剤を先に加えてその一部または全部が反応した後に長鎖反応剤を加えてもよい。長鎖反応剤を先に加えてその反応の有無にかかわらず、その後に短鎖反応剤を加えてもよい。
短鎖反応剤は、炭素数4以下の有機基を導入する反応剤であることが好ましく、炭素数2〜4の短鎖アシル基を導入する短鎖アシル化剤であることがより好ましい。短鎖アシル化剤は、アセチル基を導入するアシル化剤、又はプロピオニル基を導入するアシル化剤がより好ましく、これらの両方を用いてもよく、アセチル基を導入するアシル化剤が特に好ましい。長鎖反応剤は、炭素数5以上の有機基を導入する反応剤が好ましく、炭素数5〜48の長鎖アシル基を導入する長鎖アシル化剤であることがより好ましい。
第1の方法では、セルロースに短鎖有機基を導入する工程と、短鎖有機基を導入したセルロース誘導体に長鎖有機基を導入する工程の2ステップを経るのに対して、第2の方法では、短鎖有機基と長鎖有機基の両方を一度に導入している。そのため、第2の方法によれば、プロセスを簡便にすることができる。また、反応前のセルロース又はその誘導体として、そのヒドロキシ基の水素原子が置換されていないセルロースを使用することができ、材料のコストを低減することができる。一方、第1の方法では、長鎖有機基を導入する際の反応性や反応効率が第2の方法に比べて高い。また、短鎖有機基の導入と長鎖有機基の導入を別工程で実施するため、短鎖有機基と長鎖有機基の導入比率の制御が比較的容易になる。
第1の方法および第2の方法において用いられる長鎖アシル化剤は、カルダノール誘導体を用いることができ、このカルダノール誘導体は酸無水物基を有することが好ましい。酸無水物基は、セルロースのヒドロキシ基と反応する官能基として好適である。
上述の製造方法に用いる反応前のセルロース又はその誘導体は、活性化処理を行ってもよい。これにより、反応性を高めることができる。この活性化処理は、セルロースに対して通常行われている活性化処理が適用できる。活性化処理の後は、セルロース又はその誘導体と反応剤との反応を阻害しない液体(例えば非プロトン性溶媒)で、活性化処理に用いた液体(酢酸等のプロトン性溶媒)を置換してもよい。セルロース又はその誘導体と反応剤との固液不均一系反応に溶媒を用いる場合は、その溶媒で置換しておくことができる。
固液不均一反応を行い固液分離を行ってセルロース誘導体を得る本実施形態によれば、溶液状態で反応を行い再沈殿を行って得たセルロース誘導体に対して機械特性が異なるセルロース誘導体を得ることができる。このようなセルロース誘導体を含有する樹脂組成物を用いることにより機械特性が改質された成形体を得ることができる。
また、本実施形態による製造方法では、固液分離後に、架橋部位を解離する工程をさらに実施することができる。これにより、得られたセルロース誘導体の機械特性を改質することができる。
以下、本発明の実施形態についてさらに説明する。
[セルロース]
セルロースは、下記式(1)で示されるβ−グルコースの直鎖状重合物であり、各グルコース単位は三つのヒドロキシ基を有している(式中のnは自然数を示す)。本発明の実施形態による製造方法では、このようなセルロース又はその誘導体に、これらのヒドロキシ基を利用して、短鎖有機基および長鎖有機基を導入することができる。
セルロースは、下記式(1)で示されるβ−グルコースの直鎖状重合物であり、各グルコース単位は三つのヒドロキシ基を有している(式中のnは自然数を示す)。本発明の実施形態による製造方法では、このようなセルロース又はその誘導体に、これらのヒドロキシ基を利用して、短鎖有機基および長鎖有機基を導入することができる。
セルロースは、草木類の主成分であり、草木類からリグニン等の他の成分を分離処理することによって得られる。このように得られたものの他、セルロース含有量の高い綿(例えばコットンリンター)やパルプ(例えば木材パルプ)を精製してあるいはそのまま用いることができる。原料に用いるセルロース又はその誘導体の形状やサイズ、形態は、反応性や固液分離、取り扱い性の点から、適度な粒子サイズ、粒子形状を持つ粉末形態のものを用いることが好ましい。例えば、直径1〜100μm(好ましくは10〜50μm)、長さ10μm〜100mm(好ましくは100μm〜10mm)の繊維状物あるいは粉末状物を用いることができる。
セルロースの重合度は、グルコース重合度(平均重合度)として、50〜5000の範囲が好ましく、100〜3000がより好ましく、500〜3000がさらに好ましい。重合度が低すぎると、製造した樹脂の強度、耐熱性などが十分でない場合がある。逆に、重合度が高すぎると、製造した樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて成形に支障をきたす場合がある。
セルロースには、類似の構造のキチンやキトサンが混合されていてもよく、混合されている場合は、混合物全体に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
上記説明はセルロースを対象としているが、この類縁体として、通常の非食用の多糖類、すなわち、キチン、キトサン、ヘミセルロース、グルコマンナン、カードランなどにも、本発明は適用可能である。
[短鎖有機基]
本発明の実施形態によるセルロース誘導体の製造方法においては、セルロースのヒドロキシ基を利用して、短鎖有機基を導入することができる。
本発明の実施形態によるセルロース誘導体の製造方法においては、セルロースのヒドロキシ基を利用して、短鎖有機基を導入することができる。
短鎖有機基は、セルロース中のヒドロキシ基と短鎖反応剤とが反応することで導入することができる。この短鎖有機基は、セルロースのヒドロキシ基の水素原子に代えて導入された有機基部分に相当する。この短鎖反応剤は、セルロース中のヒドロキシ基と反応できる官能基を少なくとも一つ持つ化合物であり、例えばカルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基、イソシアネート基、クロロホーメート基、エポキシ基、又はハロゲン基が炭化水素化合物に結合したものが挙げられる。具体的には、脂肪族モノカルボン酸、その酸ハロゲン化物、その酸無水物;脂肪族モノイソシアネート;脂肪族モノクロロホーメート;脂肪族モノエポキシド;脂肪族モノハロゲン化物が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、直鎖状の又は分岐した側鎖をもつ脂肪酸が挙げられる。脂肪族モノイソシアネートとしては、直鎖状の又は分岐した側鎖をもつ脂肪族炭化水素にイソシアネート基が結合したものが挙げられる。脂肪族モノクロロホーメートとしては、直鎖状の又は分岐した側鎖をもつ脂肪族炭化水素にクロロホーメート基が結合したものが挙げられる。脂肪族モノエポキシドとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素にエポキシ基が結合したものが挙げられる。脂肪族モノハロゲン化物としては、直鎖状の又は分岐した側鎖をもつ脂肪族炭化水素にハロゲン基が結合したものが挙げられる。
この短鎖有機基は、その炭素数が2〜4の範囲にあることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。セルロースのヒドロキシ基の水素原子が炭素数2〜4のアシル基で置換されることが好ましく、このアシル基はアセチル基またはプロピオニル基であることが好ましい。このアシル基はこれらの両方を含んでいてもよい。このアシル基はアセチル基であることが特に好ましい。
セルロースのグルコース単位あたりの短鎖有機基の置換度(DSSH)(平均値)、すなわち置換されたヒドロキシ基の個数(水酸基置換度)(平均値)は、0.1〜2.9に設定することができ、0.5〜2.5が好ましい。
上述の短鎖有機基をセルロースに導入することにより、セルロースの分子間力(分子間結合)を低減することができる。さらに、短鎖有機基が導入されたセルロース誘導体は、固液不均一系の反応における溶媒あるいは液相への親和性が向上し、セルロース誘導体を適度に膨潤させることができ、長鎖有機基を導入する際の反応効率を上げることができる。
[長鎖有機基]
本発明の実施形態によるセルロース誘導体の製造方法においては、セルロースのヒドロキシ基を利用して、長鎖有機基を導入することができる。
本発明の実施形態によるセルロース誘導体の製造方法においては、セルロースのヒドロキシ基を利用して、長鎖有機基を導入することができる。
長鎖有機基は、セルロース中のヒドロキシ基と長鎖反応剤とを反応させることで導入することができる。この長鎖有機基は、セルロースのヒドロキシ基の水素原子に代えて導入された有機基部分に相当する。また長鎖有機基は、セルロースとは、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、又はカーボネート結合により結合させることができる。
長鎖反応剤は、セルロース中のヒドロキシ基と反応できる官能基を少なくとも一つ持つ化合物である。前記結合がエステル結合の場合、長鎖反応剤には、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、又はカルボン酸無水物基を有する化合物を用いることができる。前記結合がエーテル結合の場合、長鎖反応剤には、エポキシ基、又はハロゲン基を有する化合物を用いることができる。前記結合がウレタン結合の場合、長鎖反応剤には、イソシアネート基を有する化合物を用いることができる。前記結合がカーボネート結合の場合、長鎖反応剤には、クロロホーメート基を有する化合物を用いることができる。
長鎖反応剤は、さらに、上記官能基とは別に、分子構造中にエステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、カーボネート結合、アミド結合を含んでいてもよい。さらに、長鎖反応剤は、鎖式炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素から選ばれる少なくとも1つの構造を含んでいてもよく、これらを組み合わせた構造を含んでいてもよい。
長鎖反応剤には、例えば、その炭素数が5〜24のカルボン酸、およびそのカルボン酸ハライド又はカルボン酸無水物を用いることができる。これらのカルボン酸又はカルボン酸誘導体の不飽和度、不飽和結合の位置は任意のものとすることができる。カルボン酸の具体例としては、例えば、ペンタン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルシン酸、リグノセリン酸、ヘキサデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、オクタデカペンタエン酸、イコサテトラエン酸、イコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸が挙げられる。さらにカルボン酸としては、環境調和性の観点からは、天然物から得られるカルボン酸であることが好ましい。
また、ヒドロキシ化合物のように、セルロースのヒドロキシ基に対して直接の反応性が高くない化合物を、多官能化合物を利用してセルロースに結合させることによって、長鎖有機基を形成することもできる。例えば、この多官能化合物とヒドロキシ化合物とを、このヒドロキシ化合物のヒドロキシ基とこの多官能化合物の官能基を利用して結合し、得られたヒドロキシ化合物誘導体とセルロースとを、このセルロースのヒドロキシ基とこの多官能化合物由来の官能基を利用して結合することができる。ヒドロキシ化合物としては、アルコールやフェノールを挙げることができる。フェノールとしては、例えば、カルダノール、あるいはカルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が水素添加された誘導体が挙げられる。
上記の多官能化合物は、炭化水素基を含むことが好ましく、この炭化水素基の炭素数は1以上が好ましく、2以上がより好ましく、また炭素数が20以下が好ましく、14以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。炭素数が多すぎると、分子が大きくなりすぎて反応性が低下し、その結果、反応率を上げることが困難となる場合がある。このような炭化水素基としては、2価基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基などの2価の直鎖状脂肪族炭化水素基(特に直鎖状アルキレン基);シクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環などの2価の脂環式炭化水素基;ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニレン基などの2価の芳香族炭化水素基、これらの組み合わせからなる2価基が挙げられる。
上記の多官能化合物の官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン基から選ばれる基が好ましい。中でもカルボキシル基、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)、及びイソシアネート基が好ましい。ヒドロキシ化合物としてカルダノール又は水素添加したカルダノールを用いる場合、そのフェノール性水酸基と反応させる官能基としては、特に、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)及びイソシアネート基が好ましい。セルロースの水酸基と反応させる官能基としては、特にカルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)及びイソシアネート基が好ましい。カルボン酸無水物基は、カルボキシル基を酸無水物変性して形成することができる。カルボン酸ハライド基は、カルボキシル基を酸ハライド化して形成することができる。
このような多官能化合物の具体例としては、ジカルボン酸、カルボン酸無水物、ジカルボン酸ハライド、モノクロロカルボン酸、ジイソシアネート類を挙げることができる。ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸が挙げられ、カルボン酸無水物としてはこれらのジカルボン酸の無水物が挙げられ、ジカルボン酸ハライドとしてはこれらのジカルボン酸の酸ハライドが挙げられる。モノクロロカルボン酸としては、モノクロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸、3−フルオロプロピオン酸、4−クロロ酪酸、4−フルオロ酪酸、5−クロロ吉草酸、5−フルオロ吉草酸、6−クロロヘキサン酸、6−フルオロヘキサン酸、8−クロロオクタン酸、8−フルオロオクタン酸、12−クロロドデカン酸、12−フルオロドデカン酸、18−クロロステアリン酸、18−フルオロステアリン酸が挙げられる。ジイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI:水素添加MDI)が挙げられる。イソシアネート類としては、これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好適に用いることができる。
この長鎖有機基は、炭素数5以上のものが含まれるが、長鎖有機基のより十分な導入効果を得る点から、炭素数が7以上のものが好ましく、8以上のものがより好ましく、12以上のものがさらに好ましく、16以上のものが特に好ましい。長鎖有機基導入時の反応効率の点から、炭素数が48以下のものが好ましく、36以下のものがより好ましく、25以下のものが特に好ましい。この長鎖有機基は一種単独であってもよいし、2種以上を含んでいてもよい。目的のセルロース誘導体が短鎖有機基と長鎖有機基の両方を有する場合、短鎖有機基導入に期待する効果と長鎖有機基導入に期待する効果を十分に得る点から、短鎖有機基の炭素数と長鎖有機基の炭素数との差は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。
セルロースのグルコース単位あたりの長鎖有機基の置換数(DSLO)(平均値)、すなわち置換されたヒドロキシ基の個数(水酸基置換度)(平均値)は、短鎖有機基の構造および導入量、長鎖有機基の構造、目的の生成物に要求される物性に応じて適宜設定することができ、0.1〜2.9とすることができ、0.1〜1.5が好ましい。
上述の長鎖有機基をセルロース又はその誘導体に導入することにより、その特性を改質することができ、例えば耐水性や熱可塑性を向上することができる。
[セルロース誘導体中の架橋部位]
本発明の実施形態による製造方法において、反応前のセルロース又はその誘導体および反応後のセルロース誘導体は、液相(又は溶媒)への溶解が抑えられ且つ適度な膨潤状態となるように架橋部位を有していることが好ましい。
本発明の実施形態による製造方法において、反応前のセルロース又はその誘導体および反応後のセルロース誘導体は、液相(又は溶媒)への溶解が抑えられ且つ適度な膨潤状態となるように架橋部位を有していることが好ましい。
この架橋部位は、セルロース(又はその誘導体)の分子鎖間の結合を意味し、化学的結合および物理的結合を含む。この結合は、例えば、セルロースのヒドロキシ基間の水素結合、セルロース(又はその誘導体)のヒドロキシ基と導入された有機基との間の水素結合が挙げられる。この架橋部位は、セルロースの結晶に由来するものを利用できる。また、この架橋部位は、セルロース(又はその誘導体)の主鎖間の絡み合いによる結合を含み、また、導入された有機基間の絡み合いや、セルロース(又はその誘導体)の主鎖と導入された有機基との間の絡み合いであってもよい。この架橋部位は、有機基が導入されることにより溶媒親和性が変化し、局所的に溶媒との親和性が低下して形成されたセルロース誘導体の一部分の凝集部であってもよい。この架橋部位はまた、セルロースの反応性官能基と結合が可能な架橋剤による結合であってもよく、セルロース分子鎖と物理的な結合が可能な架橋剤による結合であってよい。この架橋剤は、ヘミセルロースやリグニンなどの植物原料由来の不純物であってもよい。架橋部位は、2種以上の結合部位の組み合わせからなっていてもよい。
架橋部位の存在量は、上記の結合の構造によっては直接の計測が困難である場合があるが、間接的には計測でき、所望の範囲に設定可能である。架橋部位の存在量は、セルロース誘導体の親和性溶媒中での膨潤度の測定によって間接的に測定が可能である。例えば、後述の膨潤度の測定方法に従って測定することができる。
[セルロース誘導体中のヒドロキシ基の残存量]
ヒドロキシ基の量が多いほど、セルロース誘導体の最大強度や耐熱性が大きくなる傾向がある一方で、吸水性が高くなる傾向がある。ヒドロキシ基の変換率(置換度)が高いほど、吸水性が低下し、可塑性や破断歪みが増加する傾向がある一方で、最大強度や耐熱性が低下する傾向がある。これらの傾向と、短鎖反応剤、長鎖反応剤の反応条件を考慮して、ヒドロキシ基の変換率を適宜設定することができる。
ヒドロキシ基の量が多いほど、セルロース誘導体の最大強度や耐熱性が大きくなる傾向がある一方で、吸水性が高くなる傾向がある。ヒドロキシ基の変換率(置換度)が高いほど、吸水性が低下し、可塑性や破断歪みが増加する傾向がある一方で、最大強度や耐熱性が低下する傾向がある。これらの傾向と、短鎖反応剤、長鎖反応剤の反応条件を考慮して、ヒドロキシ基の変換率を適宜設定することができる。
長鎖短鎖結合セルロース誘導体のグルコース単位あたりの残存するヒドロキシ基の個数(水酸基残存度)(平均値)は、0〜2.8に設定することができる。ヒドロキシ基は、最大強度や耐熱性等の観点から、残存していてもよく、例えば、水酸基残存度は0.01以上であってもよく、さらに0.1以上であってもよい。
[製造プロセス]
以下、本発明の実施形態による製造プロセスについて説明する。
以下、本発明の実施形態による製造プロセスについて説明する。
[セルロースの活性化]
セルロースに短鎖有機基及び長鎖有機基を導入するための反応工程の前に、セルロースの反応性を上げるために、活性化処理(前処理工程)を行うことができる。この活性化処理は、セルロースのアセチル化の前に通常行われる活性化処理を適用できる。
セルロースに短鎖有機基及び長鎖有機基を導入するための反応工程の前に、セルロースの反応性を上げるために、活性化処理(前処理工程)を行うことができる。この活性化処理は、セルロースのアセチル化の前に通常行われる活性化処理を適用できる。
本発明の実施形態による製造方法で行う活性化処理は、例えば、セルロースに親和する活性化溶媒をセルロースに対して噴霧する方法、あるいはセルロースを活性化溶媒に浸漬する方法(浸漬法)などの湿式法で、セルロースと当該溶媒とを接触させ、セルロースを膨潤させる。これにより、セルロース分子鎖間に反応剤が浸入しやすくなるため(溶媒や触媒を用いている場合はこれらとともに浸入しやすくなるため)、セルロースの反応性が向上する。ここで、活性化溶媒は、例えば、水;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸などのカルボン酸;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、エタノールアミンなどの含窒素化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて使用できる。特に好ましくは、水、酢酸を使用できる。
活性化溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して例えば10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上に設定できる。セルロースを活性化溶媒に浸漬する場合は、セルロースに対して質量で例えば1倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上に設定することができる。前処理後の活性化溶媒の除去の負担や材料コスト低減等の点から300倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましく、50倍以下がさらに好ましい。
活性化処理の温度は、例えば0〜100℃の範囲で適宜設定できる。活性化の効率やエネルギーコスト低減の観点から10〜40℃が好ましく、15〜35℃がより好ましい。
活性化処理の時間は、例えば0.1時間〜72時間の範囲で適宜設定できる。十分な活性化を行い且つ処理時間を抑える観点から、0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜3時間がより好ましい。
活性化処理後、過剰な活性化溶媒は吸引濾過などの固液分離方法により除去することができる。
有機基を導入する反応時に溶媒を用いる場合は、活性化処理後、セルロースに含まれる活性化溶媒を反応時に用いる溶媒に置換することができる。例えば、活性化溶媒を反応時に用いる溶媒に代えて上記の活性化処理の浸漬法に従って置換処理を行うことができる。
[短鎖有機基の導入:2段反応法(第1の方法)の第1工程]
セルロース、あるいは上記の活性化処理を行ったセルロースに対して、まず、短鎖有機基を導入する工程(第1工程)を実施、その後に長鎖有機基を導入する工程(第2工程)を実施する。
セルロース、あるいは上記の活性化処理を行ったセルロースに対して、まず、短鎖有機基を導入する工程(第1工程)を実施、その後に長鎖有機基を導入する工程(第2工程)を実施する。
第1工程では、セルロースに対し、前述の短鎖反応剤、および必要に応じて溶媒、触媒を加え、セルロースと短鎖反応剤とを固液不均一系で反応させることができる。その際、必要に応じて加熱や撹拌を行うことができる。この反応においては、短鎖反応剤の仕込み量、反応時間等の反応条件を調整することにより、セルロースのヒドロキシ基をすべて短鎖有機基により置換せず、一部のヒドロキシ基を残存させる。
第1工程では、セルロースを、短鎖反応剤を含む反応液に浸漬し、セルロースを膨潤させた状態で反応を行うことができる。これにより、セルロース分子鎖間に短鎖反応剤が浸入しやすくなるため、反応性が向上する。
反応液の使用量は、セルロースに対して質量で例えば1倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上に設定することができる。反応後の反応溶液除去の負担や材料コスト低減等の点から300倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましく、50倍以下がさらに好ましい。
反応温度は、反応効率等の点から10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。分解反応の抑制やエネルギーコスト低減等の観点から200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
反応時間は、十分に反応を進行させる観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、製造プロセスの効率化等の観点から24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。
第1工程において溶媒を使用する場合は、生成物である短鎖結合セルロース誘導体との親和性が高い溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、架橋部位をもたない通常の短鎖結合セルロース誘導体を溶解する溶媒を用いることができ、例えば、ヘテロ環式化合物、エーテル、アミド、ケトン、エステル、極性ハロゲン化炭化水素、カーボネート、ニトロ化合物、ニトリル、有機硫黄化合物などが挙げられる。ヘテロ環式化合物としては、環状エーテル(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなど)、ヘテロアレーン(ピリジン、キノリンなど)が挙げられる。親和性の高いエーテルとしては、上記の環状エーテルの他に1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの複数のエーテル構造部分を有する非環状エーテル、メチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテルなどのアリール基を有するエーテルなどが挙げられる。アミドとしては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エステルとしては、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテートが挙げられる。極性ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、塩化プロピレン、テトラクロルエタンが挙げられる。カーボネートとしては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどが挙げられる。ニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロプロパンが挙げられる。ニトリルとしては、アセトニトリル、ベンゾニトリルが挙げられる。有機硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物が挙げられる。また、これらの溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。このような溶媒を使用することで、セルロース誘導体が膨潤しやすくなり、また反応性を上げることができる。但し、生成物は、後に行う第2工程の固液不均一系の液相に溶解しないように架橋部位を有していることが望ましい。この架橋部位は、セルロースが有している架橋部位の一部を残存させることが好ましい。架橋剤を用いて架橋部位をさらに付与してもよい。
また、第1工程においては、架橋部位をもたない通常の短鎖結合セルロース誘導体を溶解しにくい溶媒を用いることもできる。このような溶媒を使用することで、生成物の溶媒への溶解量を低減でき、固液分離時の収率を高めることができる。また、回収工程において貧溶媒添加による生成物の沈殿回収をする必要なく、回収工程を簡略化でき、また回収工程に要するエネルギーを低減できる。さらに、生成物中に十分に架橋部位を残すことができる。このような溶解性の低い溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素およびその置換化合物(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂環式化合物(シクロヘキサンなど)、非環状エーテル(ジエチルエーテルなど)、非極性ハロゲン化炭化水素である四塩化炭素が挙げられる。
なお、「架橋部位をもたない通常の短鎖結合セルロース誘導体」とは、生成物を溶解する溶剤を用いて反応を行い、生成物が溶解した反応液に貧溶媒を添加して生成物を沈澱させ、固液分離を行って得られた短鎖結合セルロース誘導体を意味する。
第1工程において触媒を使用する場合は、短鎖反応剤の種類に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、短鎖反応剤がカルボン酸やカルボン酸無水物である場合、酸触媒、塩基触媒、金属系触媒を用いることができる。酸触媒としては、例えば、無機酸(硫酸、過塩素酸、塩酸など)、有機酸(メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸など)が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、ピリジン誘導体(ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジンなど)、イミダゾール類(1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールなど)、アミジン類(ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネンなど)、が挙げられる。反応性の観点からは、DMAPおよびDBUが好ましく、特にDMAPが好ましい。金属系触媒としては、例えば、金属塩化物(塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化インジウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅など)、金属硝酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを硝酸イオンで置換した化合物など)、金属硫酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを硫酸イオンで置換した化合物など)、金属酢酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを酢酸イオンで置換した化合物など)が挙げられる。
溶媒として、セルロース誘導体の残存ヒドロキシ基と水素結合できるプロトン親和性溶媒を使用する場合、塩基触媒が好ましい。
短鎖反応剤がイソシアネートである場合、有機金属触媒や塩基触媒を用いることができる。有機金属触媒としては、例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレートが挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジンが挙げられる。
[長鎖有機基の導入:2段反応法(第1の方法)の第2工程]
上述の短鎖有機基を導入する工程(第1工程)を実施した後、続いて、短鎖結合セルロース誘導体に対し、長鎖有機基を導入する工程(第2工程)を実施する。
上述の短鎖有機基を導入する工程(第1工程)を実施した後、続いて、短鎖結合セルロース誘導体に対し、長鎖有機基を導入する工程(第2工程)を実施する。
第2工程の反応に際し、第1工程に使用した短鎖反応剤、溶媒、触媒などを含む反応溶液は、事前に一部あるいは全部を除去してもよいし、そのまま残存させてもよい。第1工程の反応液を第2工程の前に除去する場合、第2工程の反応に最適な反応条件を設定しやすい。第1工程の反応液を残存させる場合、反応液の除去工程を省略でき、全体のプロセスを簡略化できる。また、第1工程の反応液を残存させて第2工程を行うと、長鎖有機基の導入反応と並行して、短鎖有機基の導入反応を行うことができる。
第2工程では、短鎖結合セルロース誘導体に対し、前述の長鎖反応剤、および必要に応じて溶媒、触媒を加え、短鎖結合セルロース誘導体と長鎖反応剤とを固液不均一系で反応させることができる。その際、必要に応じて加熱や撹拌を行うことができる。
第2工程では、短鎖結合セルロース誘導体を、長鎖反応剤を含む反応液に浸漬し、この短鎖結合セルロース誘導体を膨潤させた状態で反応を行うことができる。これにより、セルロース誘導体の分子鎖間に長鎖反応剤が浸入しやすくなるため、反応性が向上する。
反応液の使用量は、短鎖結合セルロース誘導体に対して質量で例えば1倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上に設定することができる。反応後の反応溶液除去の負担や材料コスト低減等の点から300倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましく、50倍以下がさらに好ましい。
反応温度は、反応効率等の点から10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。分解反応の抑制やエネルギーコスト低減等の観点から200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
反応時間は、十分に反応を進行させる観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、製造プロセスの効率化等の観点から24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。
第2工程において溶媒を使用する場合は、第2工程の反応の出発物質である短鎖結合セルロース誘導体との親和性が高い溶媒を用いることが好ましく、架橋部位をもたない通常の短鎖結合セルロース誘導体を溶解する溶媒を用いることができる。また、この溶媒は、生成する長鎖短鎖結合セルロース誘導体との親和性が高いことが好ましい。このような溶媒としては、短鎖結合セルロース誘導体における残留ヒドロキシ基の量や、短鎖有機基および長鎖有機基の疎水性、導入量に応じて、適宜選択することができ、非プロトン性溶媒が好ましく、特に、セルロースのヒドロキシ基と水素結合を形成するプロトン親和性溶媒が好ましい。
第2工程に使用する溶媒としては、例えば、ヘテロ環式化合物、エーテル、アミド、ケトン、エステル、極性ハロゲン化炭化水素、カーボネート、ニトロ化合物、ニトリル、有機硫黄化合物などが挙げられる。ヘテロ環式化合物としては、環状エーテル(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなど)、ヘテロアレーン(ピリジン、キノリンなど)が挙げられる。親和性の高いエーテルとしては、上記の環状エーテルの他に1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの複数のエーテル構造部分を有する非環状エーテル、メチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテルなどのアリール基を有するエーテルなどが挙げられる。アミドとしては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エステルとしては、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテートが挙げられる。極性ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、塩化プロピレン、テトラクロルエタンが挙げられる。カーボネートとしては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどが挙げられる。ニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロプロパンが挙げられる。ニトリルとしては、アセトニトリル、ベンゾニトリルが挙げられる。有機硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物が挙げられる。また、これらの溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。
上述のような溶媒を使用することで、セルロース誘導体の良好な膨潤状態が形成され、これにより立体障害の影響が小さくなり、長鎖反応剤の反応性を上げることができる。
反応途中において、適宜同種あるいは別種の溶媒を追加してもよい。例えば、生成する長鎖短鎖結合セルロース誘導体が反応前の短鎖結合セルロース誘導体よりも疎水性が高い場合、反応途中でより疎水性の高い溶媒を追加し、溶媒の親和性を高めて、膨潤状態を良好にすることで、反応性を維持あるいは高めることができる。
第2工程において触媒を使用する場合は、長鎖反応剤の種類に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、長鎖反応剤がカルボン酸やカルボン酸無水物である場合、酸触媒、塩基触媒、金属系触媒を用いることができる。酸触媒としては、例えば、無機酸(硫酸、過塩素酸、塩酸など)、有機酸(メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸など)が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、ピリジン誘導体(ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジンなど)、イミダゾール類(1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールなど)、アミジン類(ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネンなど)、が挙げられる。反応性の観点からは、DMAPおよびDBUが好ましく、特にDMAPが好ましい。金属系触媒としては、例えば、金属塩化物(塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化インジウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅など)、金属硝酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを硝酸イオンで置換した化合物など)、金属硫酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを硫酸イオンで置換した化合物など)、金属酢酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを酢酸イオンで置換した化合物など)が挙げられる。
プロトン親和性溶媒を使用する場合、塩基触媒が好ましい。
長鎖反応剤がイソシアネートである場合、有機金属触媒や塩基触媒を用いることができる。有機金属触媒としては、例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレートが挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジンが挙げられる。
[1段反応(第2の方法):長鎖有機基/長鎖有機基および短鎖有機基の導入]
セルロース、あるいは上記の活性化処理を行ったセルロースに対して、長鎖有機基あるは短鎖有機基および長鎖有機基を導入する。なお、以下は、短鎖反応剤と長鎖反応剤を用いて短鎖有機基と長鎖有機基を導入する方法を説明するが、短鎖反応剤を用いない以外は同様にして長鎖有機基のみを導入したセルロース誘導体を製造することができる。
セルロース、あるいは上記の活性化処理を行ったセルロースに対して、長鎖有機基あるは短鎖有機基および長鎖有機基を導入する。なお、以下は、短鎖反応剤と長鎖反応剤を用いて短鎖有機基と長鎖有機基を導入する方法を説明するが、短鎖反応剤を用いない以外は同様にして長鎖有機基のみを導入したセルロース誘導体を製造することができる。
この反応工程では、セルロースに対し、前述の短鎖反応剤、長鎖反応剤、および必要に応じて溶媒、触媒を加え、セルロースと短鎖反応剤及び長鎖反応剤とを固液不均一系で反応させることができる。その際、必要に応じて加熱や撹拌を行うことができる。短鎖反応剤および長鎖反応剤の反応性官能基は、同種のものとすることが好ましい。
この反応工程では、セルロースを、短鎖反応剤および長鎖反応剤を含む反応液に浸漬し、セルロースを膨潤させた状態で反応を行うことができる。これにより、セルロース分子鎖間に短鎖反応剤および長鎖反応剤が浸入しやすくなるため、反応性が向上する。
反応液の使用量は、セルロースに対して質量で例えば1倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上に設定することができる。反応後の反応溶液除去の負担や材料コスト低減等の点から300倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましく、50倍以下がさらに好ましい。
反応温度は、反応効率等の点から10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。分解反応の抑制やエネルギーコスト低減等の観点から200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
反応時間は、十分に反応を進行させる観点から0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、製造プロセスの効率化等の観点から24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。
溶媒を使用する場合は、生成する長鎖短鎖結合セルロース誘導体(あるいは長鎖結合セルロース誘導体)との親和性が高い溶媒を用いることが好ましく、架橋部位をもたない通常の短鎖結合セルロース誘導体を溶解する溶媒、あるいは架橋部位をもたない通常の長鎖短鎖結合セルロース誘導体を溶解する溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、セルロース誘導体における残留ヒドロキシ基の量や、短鎖有機基および長鎖有機基の疎水性、導入量に応じて、適宜選択することができ、非プロトン性溶媒が好ましく、特に、セルロースのヒドロキシ基と水素結合を形成するプロトン親和性溶媒が好ましい。
以上のような親和性の高い溶媒としては、例えば、ヘテロ環式化合物、エーテル、アミド、ケトン、エステル、極性ハロゲン化炭化水素、カーボネート、ニトロ化合物、ニトリル、有機硫黄化合物などが挙げられる。ヘテロ環式化合物としては、環状エーテル(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなど)、ヘテロアレーン(ピリジン、キノリンなど)が挙げられる。親和性の高いエーテルとしては、上記の環状エーテルの他に1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの複数のエーテル構造部分を有する非環状エーテル、メチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテルなどのアリール基を有するエーテルなどが挙げられる。アミドとしては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エステルとしては、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテートが挙げられる。極性ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、塩化プロピレン、テトラクロルエタンが挙げられる。カーボネートとしては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどが挙げられる。ニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロプロパンが挙げられる。ニトリルとしては、アセトニトリル、ベンゾニトリルが挙げられる。有機硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物が挙げられる。また、これらの溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。上述のような溶媒を使用することで、セルロース誘導体の良好な膨潤状態が形成され、これにより立体障害の影響が小さくなり、反応剤の反応性を上げることができる。
反応途中において、適宜同種あるいは別種の溶媒を追加してもよい。
なお、「架橋部位をもたない通常の長鎖短鎖結合セルロース誘導体」とは、生成物を溶解する溶剤を用いて反応を行い、生成物が溶解した反応液に貧溶媒を添加して生成物を沈澱させ、固液分離を行って得られた長鎖短鎖結合セルロース誘導体を意味する。
触媒を使用する場合は、短鎖反応剤あるいは長鎖反応財の種類に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、反応剤がカルボン酸やカルボン酸無水物である場合、酸触媒、塩基触媒、金属系触媒を用いることができる。酸触媒としては、例えば、無機酸(硫酸、過塩素酸、塩酸など)、有機酸(メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸など)が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、ピリジン誘導体(ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジンなど)、イミダゾール類(1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールなど)、アミジン類(ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネンなど)が挙げられる。反応性の観点からは、DMAPおよびDBUが好ましく、特にDMAPが好ましい。金属系触媒としては、例えば、金属塩化物(塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化インジウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅など)、金属硝酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを硝酸イオンで置換した化合物など)、金属硫酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを硫酸イオンで置換した化合物など)、金属酢酸塩(前記金属塩化物の塩化物イオンを酢酸イオンで置換した化合物など)が挙げられる。
プロトン親和性溶媒を使用する場合、塩基触媒が好ましい。
反応剤がイソシアネートである場合、有機金属触媒や塩基触媒を用いることができる。有機金属触媒としては、例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレートが挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジンが挙げられる。
[架橋部位の解離]
有機基導入後のセルロース誘導体の架橋部位は、必要に応じて解離させることができる。セルロース誘導体の全体構造に対して架橋部位の割合が小さい場合、架橋部位の解離処理をしないでそのまま樹脂用途として利用できる。架橋部位の占める割合が大きい場合、熱可塑性が低下する場合があり、必要に応じて架橋部位の解離処理をしてもよい。
有機基導入後のセルロース誘導体の架橋部位は、必要に応じて解離させることができる。セルロース誘導体の全体構造に対して架橋部位の割合が小さい場合、架橋部位の解離処理をしないでそのまま樹脂用途として利用できる。架橋部位の占める割合が大きい場合、熱可塑性が低下する場合があり、必要に応じて架橋部位の解離処理をしてもよい。
架橋部位の解離は、長鎖有機基を導入し、後述する生成物の回収工程(固液分離)の後に行うことが好ましい。
架橋部位を解離する方法としては、加熱、可塑剤の添加、溶媒の添加、結合部位と反応し分離させる反応性有機物あるいは無機物の添加、紫外線などの電磁波、電子線、中性子線の照射が挙げられる。加熱あるいは可塑剤の添加は、生成物の溶融、混錬時に行ってもよい。可塑剤としては、後述する各種添加剤を使用することができる。架橋が、セルロース誘導体中のヒドロキシ基が形成する水素結合による場合、水素結合を解離する方法が有効であり、例えば、水素結合を解離する物質を加えることができる。水素結合を解離する物質としては、例えば、ヒドロキシ基と反応してヒドロキシ基を消失させるもの(例えば、ヒドロキシ基の水素原子を置換、ヒドロキシ基が他の官能基に変換)、あるいは可塑剤、イオン液体などが挙げられる。ヒドロキシ基と反応する物質としては、前述の短鎖反応剤、長鎖反応剤を用いることができる。
[生成物の回収:固液分離]
生成物である長鎖短鎖結合セルロース誘導体(または長鎖結合セルロース誘導体)は、架橋部位を有した場合、反応溶液に対する溶解性が低い傾向にある。そのため、通常の固液分離処理で容易に回収することができる。固液分離処理としては、濾過(自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過、およびこれらの熱時ろ過)、自然沈降・浮上、分液、遠心分離、圧搾等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。本発明の実施形態による製造方法によれば、反応溶液に溶解した生成物を大量の貧溶媒により沈殿回収する工程を省略でき、このような沈澱回収が必要な関連技術による製造方法と比べて、回収工程のエネルギー負荷が低い。
生成物である長鎖短鎖結合セルロース誘導体(または長鎖結合セルロース誘導体)は、架橋部位を有した場合、反応溶液に対する溶解性が低い傾向にある。そのため、通常の固液分離処理で容易に回収することができる。固液分離処理としては、濾過(自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過、およびこれらの熱時ろ過)、自然沈降・浮上、分液、遠心分離、圧搾等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。本発明の実施形態による製造方法によれば、反応溶液に溶解した生成物を大量の貧溶媒により沈殿回収する工程を省略でき、このような沈澱回収が必要な関連技術による製造方法と比べて、回収工程のエネルギー負荷が低い。
固液分離処理により得た固形分は、必要に応じて洗浄し、通常の方法で乾燥することができる。
[生成物(有機基導入セルロース誘導体)の物性]
本発明の実施形態による製造方法によって得られたセルロース誘導体は、有機基(短鎖有機基および長鎖有機基、または長鎖有機基)がセルロースのヒドロキシ基を利用して導入されているため、セルロースに比べて分子間力(架橋部位)が低減されている。加えて、導入された長鎖有機基が内部可塑剤として働くため、このような有機基導入セルロース誘導体は、良好な熱可塑性を示すことができる。長鎖有機基に疎水性の高いものを使用すれば、耐水性をさらに高上することができる。
本発明の実施形態による製造方法によって得られたセルロース誘導体は、有機基(短鎖有機基および長鎖有機基、または長鎖有機基)がセルロースのヒドロキシ基を利用して導入されているため、セルロースに比べて分子間力(架橋部位)が低減されている。加えて、導入された長鎖有機基が内部可塑剤として働くため、このような有機基導入セルロース誘導体は、良好な熱可塑性を示すことができる。長鎖有機基に疎水性の高いものを使用すれば、耐水性をさらに高上することができる。
また本発明の実施形態による製造方法によって得られた有機基導入セルロース誘導体は、架橋部位を適度に有した状態で得ることができ、架橋部位を有しないセルロース誘導体に比べて、弾性率を上げることができる。なお、長鎖有機基の導入量や架橋の量を調整することで、低弾性率の場合も含めて、所望の弾性率を得ることができる。
[成形用樹脂組成物および添加剤]
本実施形態により得られた有機基導入セルロース誘導体は、所望の特性に応じて添加剤を加え、成形用材料に好適な樹脂組成物を得ることができる。
本実施形態により得られた有機基導入セルロース誘導体は、所望の特性に応じて添加剤を加え、成形用材料に好適な樹脂組成物を得ることができる。
本発明のセルロース誘導体には、通常の熱可塑性樹脂に使用する各種の添加剤を適用できる。例えば、可塑剤を添加することで、熱可塑性や破断時の伸びを一層向上できる。このような可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ−2−メトキシエチル、エチルフタリル・エチルグリコレート、メチルフタリル・エチルグリコレート等のフタル酸エステル;酒石酸ジブチル等の酒石酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリアセチン、ジアセチルグリセリン、トリプロピオニトリルグリセリン、グリセリンモノステアレートなどの多価アルコールエステル;リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステル;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート等の二塩基性脂肪酸エステル;クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;ヒマシ油およびその誘導体;O−ベンゾイル安息香酸エチル等の安息香酸エステル;セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル等の脂肪族ジカルボン酸エステル;マレイン酸エステル等の不飽和ジカルボン酸エステル;その他、N−エチルトルエンスルホンアミド、トリアセチン、p−トルエンスルホン酸O−クレジル、トリプロピオニンなどが挙げられる。中でも特に、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ベンジル−2ブトキシエトキシエチル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸ジフェニルオクチルなどの可塑剤を添加すると、熱可塑性や破断時の伸びだけでなく、耐衝撃性も効果的に向上させることができる。
その他の可塑剤として、シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−メチルオクチル等のシクロヘキサンジカルボン酸エステル;トリメリット酸ジヘキシル、トリメリット酸ジエチルヘキシル、トリメリット酸ジオクチル等のトリメリット酸エステル;ピロメリット酸ジヘキシル、ピロメリット酸ジエチルヘキシル、ピロメリット酸ジオクチル等のピロメリット酸エステルが挙げられる。
本実施形態で製造されたセルロース誘導体には、必要に応じて、無機系もしくは有機系の粒状または繊維状の充填剤を添加できる。充填剤を添加することによって、強度や剛性を一層向上できる。充填剤としては、例えば、鉱物質粒子(タルク、マイカ、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレイ、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト(またはウォラストナイト)など)、ホウ素含有化合物(窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタンなど)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属酸化物(酸化マグネシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属炭化物(炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタンなど)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタンなど)、ホワイトカーボン、各種金属箔が挙げられる。繊維状の充填剤としては、有機繊維(天然繊維、紙類など)、無機繊維(ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ウォラストナイト、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維など)、金属繊維などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本実施形態で製造されたセルロース誘導体には、必要に応じて、難燃剤を添加できる。難燃剤を添加することによって、難燃性を付与できる。難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトのような金属水和物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、ゼオライト、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、リン酸系難燃剤(芳香族リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類など)、リンと窒素を含む化合物(フォスファゼン化合物)などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本実施形態で製造されたセルロース誘導体には、必要に応じて、耐衝撃性改良剤を添加できる。耐衝撃性改良剤を添加することによって、耐衝撃性を向上できる。耐衝撃性改良剤としては、ゴム成分やシリコーン化合物を挙げられる。ゴム成分としては、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。また、シリコーン化合物としては、アルキルシロキサン、アルキルフェニルシロキサンなどの重合によって形成された有機ポリシロキサン、もしくは、前記有機ポリシロキサンの側鎖または末端をポリエーテル、メチルスチリル、アルキル、高級脂肪酸エステル、アルコキシ、フッ素、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などで変性した変性シリコーン化合物などが挙げられる。これらの耐衝撃性改良剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
このシリコーン化合物としては、変性シリコーン化合物(変性ポリシロキサン化合物)が好ましい。この変性シリコーン化合物としては、ジメチルシロキサンの繰り返し単位から構成される主鎖を持ち、その側鎖または末端のメチル基の一部が、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、長鎖アルキル基、アラルキル基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基、長鎖脂肪酸エステル基、長鎖脂肪酸アミド基、ポリエーテル基から選ばれる少なくとも1種類の基を含む有機置換基で置換された構造を有するもの変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。変性シリコーン化合物は、このような有機置換基を有することによって、前述のセルロース誘導体に対する親和性が改善され、セルロース誘導体中の分散性が向上し、耐衝撃性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
このような変性シリコーン化合物は、通常の方法に従って製造されるものを用いることができる。
この変性シリコーン化合物に含まれる上記の有機置換基としては、下記式(2)〜(20)で表されるものを挙げることができる。
上記の式中、a、bはそれぞれ1から50の整数を表す。
上記の式中、R1〜R10、R12〜R15、R19、R21は、それぞれ2価の有機基を表す。2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基等のアルキルアリーレン基、−(CH2−CH2−O)c−(cは1から50の整数を表す)、−〔CH2−CH(CH3)−O〕d−(dは1から50の整数を表す)等のオキシアルキレン基やポリオキシアルキレン基、−(CH2)e−NHCO−(eは1から8の整数を表す)を挙げることができる。これらのうち、アルキレン基が好ましく、特に、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
上記の式中、R11、R16〜R18、R20、R22は、それぞれ炭素数20以下のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基などが挙げられる。また、上記アルキル基の構造中に、1つ以上の不飽和結合を有していてもよい。
変性シリコーン化合物中の有機置換基の合計平均含有量は、セルロース誘導体組成物の製造時において、当該変性シリコーン化合物がマトリックスのセルロース誘導体中に適度な粒径(例えば0.1μm以上100μm以下)で分散可能な範囲とすることが望ましい。セルロース誘導体中において、変性シリコーン化合物が適度な粒径で分散すると、弾性率の低いシリコーン領域の周囲への応力集中が効果的に発生し、優れた耐衝撃性を有する樹脂成形体を得ることができる。かかる有機置換基の合計平均含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。変性シリコーン化合物は、有機置換基が適度に含有されていれば、セルロース系樹脂との親和性が向上し、セルロース誘導体中において適度な粒径で分散でき、さらに、成形品において当該変性シリコーン化合物の分離によるブリードアウトを抑制することができる。有機置換基の合計平均含有量が少なすぎると、カルダノール付加セルロース系樹脂中において適度な粒径での分散が困難になる。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がアミノ基、エポキシ基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基の平均含有量は下記式(I)から求めることができる。
有機置換基平均含有量(%)=
(有機置換基の式量/有機置換基当量)×100 (I)
式(I)中、有機置換基当量は、有機置換基1モルあたりの変性シリコーン化合物の質量の平均値である。
(有機置換基の式量/有機置換基当量)×100 (I)
式(I)中、有機置換基当量は、有機置換基1モルあたりの変性シリコーン化合物の質量の平均値である。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、長鎖アルキル基、アラルキル基、長鎖脂肪酸エステル基、長鎖脂肪酸アミド基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基の平均含有量は下記式(II)から求めることができる。
有機置換基平均含有量(%)=
x×w/[(1−x)×74+x×(59+w)]×100 (II)
式(II)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物中の全シロキサン繰り返し単位に対する有機置換基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値であり、wは有機置換基の式量である。
x×w/[(1−x)×74+x×(59+w)]×100 (II)
式(II)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物中の全シロキサン繰り返し単位に対する有機置換基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値であり、wは有機置換基の式量である。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がフェニル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中のフェニル基の平均含有量は下記式(III)から求めることができる。
フェニル基平均含有量(%)=
154×x/[74×(1−x)+198×x]×100 (III)
式(III)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物(A)中の全シロキサン繰り返し単位に対するフェニル基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値である。
154×x/[74×(1−x)+198×x]×100 (III)
式(III)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物(A)中の全シロキサン繰り返し単位に対するフェニル基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値である。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がポリエーテル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中のポリエーテル基の平均含有量は下記式(IV)から求めることができる。
ポリエーテル基平均含有量(%)=HLB値/20×100 (IV)
式(IV)中、HLB値は界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法に基づいて下記の式(V)により定義される。
式(IV)中、HLB値は界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法に基づいて下記の式(V)により定義される。
HLB値=20×(親水部の式量の総和/分子量) (V)
本実施形態のセルロース誘導体へは、当該誘導体に対する親和性が異なる2種類以上の変性シリコーン化合物を添加してもよい。この場合、比較的親和性の低い変性シリコーン化合物(A1)の分散性が、比較的親和性の高い変性シリコーン化合物(A2)によって改善され、より一層優れた耐衝撃性を有するセルロース系樹脂組成物を得ることができる。比較的親和性の低い変性シリコーン化合物(A1)の有機置換基の合計平均含有量としては、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。比較的親和性の高い変性シリコーン化合物(A2)の有機置換基の合計平均含有量は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、また90質量%以下が好ましい。
変性シリコーン化合物(A1)と変性シリコーン化合物(A2)との配合比(質量比)は、10/90〜90/10の範囲で設定できる。
変性シリコーン化合物においては、ジメチルシロキサン繰返し単位および有機置換基含有シロキサン繰り返し単位が、同種のものが連続して接続されても、交互に接続されても、また、ランダムに接続されていてもよい。変性シリコーン化合物は、分岐構造を有していてもよい。
変性シリコーン化合物の数平均分子量は、900以上が好ましく、1000以上がより好ましく、また1000000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、100000以下がさらに好ましい。変性シリコーン化合物の分子量が十分に大きいと、セルロース誘導体組成物の製造時において、溶融した当該セルロース誘導体と混練時に揮発による喪失を抑制することができる。また、変性シリコーン化合物の分子量が大きすぎることなく適度な大きさであると、分散性がよく均一な成形品を得ることができる。
数平均分子量は、試料のクロロホルム0.1%溶液のGPCによる測定値(ポリスチレン標準試料で較正)を採用することができる。
このような変性シリコーン化合物の添加量は、十分な添加効果を得る点から、セルロース誘導体組成物全体に対して1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。セルロース系樹脂の強度等の特性を十分に確保し、またブリードアウトを抑制する点から20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
このような変性シリコーン化合物をセルロース誘導体に添加することにより、樹脂中に変性シリコーン化合物を適度な粒径(例えば0.1〜100μm)で分散させることができ、樹脂組成物の耐衝撃性を向上できる。
本実施形態のセルロース誘導体には、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤など、通常の樹脂組成物に適用される添加剤を添加してもよい。
本実施形態のセルロース誘導体には、必要に応じて、一般的な熱可塑性樹脂を添加してもよい。
特に、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)などの柔軟性に優れる熱可塑性樹脂を添加することにより、耐衝撃性を向上できる。このような熱可塑性樹脂(特にTPU)の添加量は、十分な添加効果を得る点から、本実施形態のセルロース誘導体を含む組成物全体に対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。セルロース系樹脂の強度等の特性を確保し、またブリードアウトを抑える点から、この熱可塑性樹脂の添加量は20質量%以下が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
耐衝撃性向上に好適な熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、ポリオール、ジイソシアネート、および鎖延長剤を用いて調製されるものを用いることができる。
このポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記のポリエステルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)等の多価カルボン酸又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の多価アルコール又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
上記のポリエステルエーテルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)等の多価カルボン酸又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、ジエチレングリコールもしくはアルキレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド付加物等)等のグリコール等又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種または2種以上と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。また、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)とポリヘキサメチレンカーボネート(PHL)との共重合体であってもよい。
上記のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。
TPUの形成に用いられるジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)等が挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好適なものとして用いることができる。
TPUの形成に用いられる鎖延長剤としては、低分子量ポリオールが使用できる。この低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール;1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールが挙げられる。
これらの材料から得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)に、シリコーン化合物が共重合されていると、さらに優れた耐衝撃性を得ることができる。
これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のセルロース誘導体に各種添加剤や熱可塑性樹脂を添加した樹脂組成物の製造方法については、特に限定はなく、例えば各種添加剤とセルロース系樹脂をハンドミキシングや、公知の混合機、例えばタンブラーミキサー、リボンブレンダー、単軸や多軸混合押出機、混練ニーダー、混練ロール等のコンパウンディング装置で溶融混合し、必要に応じ適当な形状に造粒等を行うことにより製造できる。また別の好適な製造方法として、有機溶媒等の溶剤に分散させた、各種添加剤と樹脂を混合し、さらに必要に応じて、凝固用溶剤を添加して各種添加剤と樹脂の混合組成物を得て、その後、溶剤を蒸発させる製造方法がある。
以上に説明した実施形態によるセルロース誘導体は、成形用材料(樹脂組成物)のベース樹脂として用いることができる。当該セルロース誘導体をベース樹脂として用いた成形用材料は、電子機器用外装などの筺体などの成形体に好適である。
ここでベース樹脂とは、成形用材料中の主成分を意味し、この主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容することを意味し、特にこの主成分の含有割合を特定するものではないが、この主成分が組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を占めることを包含するものである。
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
[第1の方法(2段反応法)の実施例および比較例]
[合成例1]セルロースアセテートの合成(2段反応法の第1工程)
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で無水酢酸を反応させることで、セルロースアセテートを得た。その際、セルロースアセテートの貧溶媒であるトルエンを溶媒として使用することで生成物を不溶状態に保ち、固液分離を行って生成物を回収した。
[合成例1]セルロースアセテートの合成(2段反応法の第1工程)
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で無水酢酸を反応させることで、セルロースアセテートを得た。その際、セルロースアセテートの貧溶媒であるトルエンを溶媒として使用することで生成物を不溶状態に保ち、固液分離を行って生成物を回収した。
まず、以下の方法でセルロースの活性化処理を行った。
セルロース(日本製紙ケミカル製、製品名:KCフロック、銘柄:W−50GK)10.0g(吸着水分を除く質量)を、150mLの純水に分散させた。この分散液を15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって純水を除去した。得られた固形分を150mLの酢酸に分散し、15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって酢酸を除去した。この酢酸への分散と酢酸の除去は、2回行った。これにより、活性化処理済みセルロースを得た。
次に、以下の方法でセルロースアセテートを合成した。
上記の活性化処理済みセルロースに、トルエン150mL、酢酸80mL、過塩素酸80μLの混合溶液を加え、その後、無水酢酸50mLを加え、攪拌した。無水酢酸投入から13分後に、反応混合物を吸引濾過により濾別した。得られた固形分をメタノール150mLで2回洗浄し、さらに水150mLで3回洗浄した。その後、固形分を純水300mLに分散し、炭酸ナトリウムにより残存する酸を中和した。最後に、中和された固形分をさらに純水150mLで2回洗浄し、乾燥して生成物であるセルロースアセテートを得た。
セルロースアセテートのDSAce(アセチル基の置換度)を、以下に示す中和滴定により評価した。上記のセルロースアセテート0.30gをジメチルスルホキシド25mLに分散し、90℃で30分間加熱攪拌した。その後、室温まで冷却し、水酸化カリウム−エタノール溶液25mL(0.5N)を加え、90℃で60分間加熱攪拌した。これにより、セルロースアセテートが加水分解され、酢酸が遊離する。その後、室温まで冷却し、塩酸25mL(0.5N)を加え、30分間攪拌した。最後に、水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)により中和滴定することで、遊離した酢酸の量を求めた。以上の中和滴定操作により、DSAceは2.3と求められた。
[合成例2]長鎖反応剤の原料(カルボキシル化水添カルダノール)の合成
カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が水素化された水添カルダノール(ACROS Organics製、m−n−ペンタデシルフェノール)を原料とし、そのフェノール性水酸基をモノクロロ酢酸と反応させることでカルボキシル基を付与し、カルボキシル化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、カルボキシル化水添カルダノールを作製した。
カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が水素化された水添カルダノール(ACROS Organics製、m−n−ペンタデシルフェノール)を原料とし、そのフェノール性水酸基をモノクロロ酢酸と反応させることでカルボキシル基を付与し、カルボキシル化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、カルボキシル化水添カルダノールを作製した。
まず、水添カルダノール80g(0.26mol)をメタノール120mLに溶解させ、これに、水酸化ナトリウム64g(1.6mol)を蒸留水40mLに溶解させた水溶液を加えた。その後、室温で、関東化学(株)製モノクロロ酢酸66g(0.70mol)をメタノール50mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下完了後、73℃で4時間還流させつつ攪拌を継続した。反応溶液を室温まで冷却後、この反応溶液を、希塩酸でpH=1となるまで酸性化し、メタノール250mLとジエチルエーテル500mL、さらに、蒸留水200mLを加えた。分液漏斗で水層を分離、廃棄し、エーテル層を蒸留水400mLで2回洗浄した。エーテル層に無水マグネシウムを加え乾燥させた後、これを濾別した。濾液(エーテル層)をエバポレーター(90℃/3mmHg)で減圧濃縮し、固形分として黄茶色粉末状の粗生成物を得た。この粗生成物をn−ヘキサンから再結晶し、真空乾燥させることにより、カルボキシル化水添カルダノールの白色粉末46g(0.12mol)を得た。
[合成例3]長鎖反応剤(酸無水物変性水添カルダノール)の合成
合成例2のカルボキシル化水添カルダノールを、無水酢酸により脱水することで、酸無水物変性水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、酸無水物変性水添カルダノールを作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノールを、無水酢酸により脱水することで、酸無水物変性水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、酸無水物変性水添カルダノールを作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノール17.2gを、無水酢酸114mLに加熱溶解し、123℃で1時間、加熱しながら攪拌した。その後、減圧により無水酢酸を留去しながら昇温し、140℃、7Torr(933Pa)で2時間、加熱しながら攪拌した。留去されず残存した成分として、生成物である酸無水物変性水添カルダノールを得た。
得られた酸無水物変性水添カルダノールの純度を液体クロマトグラフ(島津製作所製、製品名:LC−10ADVP)で測定したところ、純度は90質量%であった。
なお、得られた長鎖反応剤(酸無水物変性水添カルダノール)の炭素数は46、後述する実施例で生成する長鎖有機基(セルロースのヒドロキシ基とエステル結合したカルボキシル化水添カルダノール)の炭素数は23である。
[合成例4]長鎖反応剤(酸クロライド変性水添カルダノール)の合成
合成例2で合成したカルボキシル化水添カルダノールを、オキサリルクロライドでクロライド化してカルボキシル基を酸クロライド基へ変換し、酸クロライド化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、酸クロライド化水添カルダノールを作製した。
合成例2で合成したカルボキシル化水添カルダノールを、オキサリルクロライドでクロライド化してカルボキシル基を酸クロライド基へ変換し、酸クロライド化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、酸クロライド化水添カルダノールを作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノール46g(0.12mol)を脱水クロロホルム250mLに溶解させ、オキサリルクロライド24g(0.19mol)とN,N−ジメチルホルムアミド0.25mL(3.2mmol)を加え、室温で72時間撹拌した。クロロホルム、過剰のオキサリルクロライド及びN,N−ジメチルホルムアミドを減圧留去し、酸クロライド化水添カルダノール48g(0.13mol)を得た。
なお、得られた長鎖反応剤(酸クロライド変性カルダノール)の炭素数は23、後述する比較例で生成する長鎖有機基(セルロースのヒドロキシ基とエステル結合したカルボキシル化水添カルダノール)の炭素数は23である。
[実施例1]
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。次に、固液不均一系で、合成例1のセルロースアセテートに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た(第2工程)。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。次に、固液不均一系で、合成例1のセルロースアセテートに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た(第2工程)。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
合成例1のセルロースアセテート1.50g(DSAce=2.3、ヒドロキシ基量4mmol)を乾燥後、脱水ジオキサン20mLに分散させた。この分散液に、ジメチルアミノピリジン(DMAP)185mg(1.5mmol)を脱水ジオキサン5mLに溶解させたジオキサン溶液を加えた。さらに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノール9.7g(12mmol)を脱水ジオキサン20mLに溶解したジオキサン溶液を加えた。
90℃で5時間加熱しながら攪拌した後、攪拌中の懸濁液を25mL分取し、減圧濾過によって濾別を行った。
濾別の後、得られたセルロース誘導体のうち、濾別の残渣として得られた固形分と、濾液に溶解した溶解分とを定量し、濾別時に固形分として回収できたものの質量比率(固形分回収率)を評価した。濾別により得られた固形分については、洗浄、乾燥することで、生成物を956mg得た。洗浄は、分析の観点から、未反応物が残らないように繰り返し行った。具体的にはジオキサン50mLで4回洗浄し、ジエチルエーテル50mLで1回洗浄した。一方で、濾液の溶媒を減圧加熱により除去し、残留した溶解分を液体クロマトグラフ(島津製作所製、製品名:LC−10ADVP)で評価し、濾液中に溶解したセルロース誘導体は、30mgと見積もられた。以上から、固形分回収率は、97%であった。
得られた固形分(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)の長鎖有機基の置換度(DSLO)をIR(赤外分光法)により測定したところ、DSLOは0.7であった。
IR測定による置換度の決定は、ベンゼン環骨格由来の伸縮ピーク(1586cm-1)の強度からDSLOを決定した。このピークの強度は、グルコピラノース環のエーテル結合の伸縮ピークで規格化した。置換度のわかっている試料(均一反応による合成試料:NMRで置換度の評価が可能)で置換度とピーク強度との関係を校正した。
本実施例の工程図を図1に示す。
[実施例2]
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。
次に、固液不均一系で、合成例1のセルロースアセテートに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た(第2工程)。第2工程は、反応温度を100℃とし、溶媒をジオキサンに代えてピリジンとした点以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に固形分回収率を評価したところ、98%であった。
得られた固形分(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)の長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、DSLOは0.5であった。
本実施例の工程図を図1に示す。
[実施例3]
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。
次に、固液不均一系で、合成例1のセルロースアセテートに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た(第2工程)。第2工程は、触媒をDMAPに代えてジアザビシクロウンデセン(DBU)とした点以外は、実施例2と同様に行った。
実施例1と同様に固形分回収率を評価したところ、96%であった。
得られた固形分(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)の長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、DSLOは0.4であった。
本実施例の工程図を図1に示す。
[比較例1]
合成例4の酸クロライド化水添カルダノールと、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)とを溶液状態で反応させ、反応溶液を貧溶媒に添加して生成物を沈殿させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
合成例4の酸クロライド化水添カルダノールと、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)とを溶液状態で反応させ、反応溶液を貧溶媒に添加して生成物を沈殿させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
セルロースアセテート10g(ヒドロキシ基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例4の酸クロライド化水添カルダノール23g(0.054mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱しながら攪拌した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固形分を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することで長鎖短鎖結合セルロース誘導体16gを得た。
得られた長鎖短鎖結合セルロース誘導体の長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、0.5であった。
本比較例の工程図を図2に示す。
[第2の方法(1段反応法)の実施例]
[合成例5]短鎖−長鎖反応剤混合物の合成
合成例2のカルボキシル化水添カルダノールを、無水酢酸と混合し加熱することで、無水酢酸と、酢酸−カルボキシル化水添カルダノール混合無水物(非対称無水物:酢酸とカルボキシル化水添カルダノールとの脱水反応により形成される無水物)と、酸無水物変性カルダノール(対称無水物:カルボキシル化水添カルダノール同士の脱水反応により形成される無水物)との混合物、すなわち短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。具体的には、下記に従って、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。
[合成例5]短鎖−長鎖反応剤混合物の合成
合成例2のカルボキシル化水添カルダノールを、無水酢酸と混合し加熱することで、無水酢酸と、酢酸−カルボキシル化水添カルダノール混合無水物(非対称無水物:酢酸とカルボキシル化水添カルダノールとの脱水反応により形成される無水物)と、酸無水物変性カルダノール(対称無水物:カルボキシル化水添カルダノール同士の脱水反応により形成される無水物)との混合物、すなわち短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。具体的には、下記に従って、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノール21.8gを、脱水ジオキサン10.2mLに加熱溶解し、無水酢酸3.1mLを加えて90℃で0.5時間、加熱しながら攪拌した。これにより、短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。
得られた短鎖−長鎖反応剤混合物を重水素化クロロホルム−重水素化ジメチルスルホキシド混合溶媒(体積比99:1)に溶解し、1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定した。その結果、無水酢酸と、酢酸−カルボキシル化水添カルダノール混合無水物(非対称無水物)と、酸無水物変性カルダノール(対称無水物)とのモル比は、この順で43:36:21であった。
なお、得られた酢酸−カルボキシル化水添カルダノール混合無水物(非対称無水物)の炭素数は25、酸無水物変性カルダノール(対称無水物)の炭素数は46、後述する実施例で生成する長鎖有機基(セルロースのヒドロキシ基とエステル結合したカルボキシル化水添カルダノール)の炭素数は23である。
[実施例4]
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で合成例5の短鎖−長鎖反応剤混合物を反応させることで、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で合成例5の短鎖−長鎖反応剤混合物を反応させることで、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
まず、以下の方法でセルロースの活性化処理を行った。
セルロース(日本製紙ケミカル製、製品名:KCフロック、銘柄:W−50GK)1.74g(吸着水分6.74%を含む重量)を、25mLの純水に分散させた。この分散液を15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって純水を除去した。得られた固形分を25mLの酢酸に分散し、15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって酢酸を除去した。さらに、得られた固形分を25mLの脱水ジオキサンに分散し、15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によってジオキサンを除去した。このジオキサンへの分散とジオキサンの除去は、2回行った。これにより、活性化処理済みセルロースを得た。
次に、以下の方法でセルロース誘導体を合成した。
上記の活性化処理済みセルロースを、脱水ジオキサン10mLに分散させた。この分散液に、ジメチルアミノピリジン459mgを脱水ジオキサン10mLに溶解させたジオキサン溶液を加えた。さらに、合成例5の短鎖−長鎖反応剤混合物を脱水ジオキサン40mLで希釈した溶液を加えた。
90℃で5時間加熱しながら攪拌した後、実施例1と同様に濾別および濾別後の処理を行って生成物(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)を得た。
実施例1と同様に固形分回収率を評価したところ、95%であった。
得られた固形分(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)の短鎖有機基の置換度(DSSH)、長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、DSSHは0.9、DSLOは0.4であった。なお、DSSHは、エステル結合のC=O伸縮ピーク(1750cm-1)の強度を用いて決定したトータルの置換度からDSLOを差し引いた値とした。
本実施例の工程図を図3に示す。
[実施例5]
セルロースに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、次のようにして、長鎖結合セルロース誘導体を得た。第1の工程を行わず、セルロースアセテートに代えてセルロースを使用した点以外は、実施例1と同様にして反応、濾別および濾別後の処理を行って生成物(長鎖結合セルロース誘導体)を得た。セルロースは0.94g(日本製紙ケミカル製、製品名:KCフロック、銘柄:W−50GK、ヒドロキシ基量17.4mmol)使用した。
セルロースに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、次のようにして、長鎖結合セルロース誘導体を得た。第1の工程を行わず、セルロースアセテートに代えてセルロースを使用した点以外は、実施例1と同様にして反応、濾別および濾別後の処理を行って生成物(長鎖結合セルロース誘導体)を得た。セルロースは0.94g(日本製紙ケミカル製、製品名:KCフロック、銘柄:W−50GK、ヒドロキシ基量17.4mmol)使用した。
実施例1と同様に固形分回収率を評価したところ、95%であった。
得られた固形分(長鎖結合セルロース誘導体)の長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、0.2であった。
上述の実施例および比較例について表1にまとめた。
図1及び図3に示す工程と図2に示す工程とを対比すると明らかなように、また、表1からも明らかなように、比較例1では生成物の回収に大量の貧溶媒を必要とするのに対して、実施例1〜5では回収工程にそのような貧溶媒を必要とせず固液分離を行うため、回収工程が簡略化されていることがわかる。さらに、未反応の長鎖反応剤を回収して再利用することができる。
また、実施例1と実施例4及び5とを対比すると明らかなように、短鎖有機基を予め導入することで、セルロースの溶媒への親和性を向上でき、そのため長鎖反応剤との反応性が向上できることがわかる。
図3に示す工程と図1に示す工程とを対比すると明らかなように、短鎖有機基および長鎖有機基の導入を同時に行うことで、製造工程を簡略化できる。
[第1の方法(2段反応法)の実施例]
[実施例6]
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。
[実施例6]
合成例1の通り、セルロースを固液不均一系でアセチル化してセルロースアセテート(短鎖結合セルロース誘導体)を得た(第1工程)。
次に、固液不均一系で、合成例1のセルロースアセテートに、合成例3の酸無水物変性水添カルダノールを反応させ、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た(第2工程)。第2工程は、酸無水物変性水添カルダノールの量を4.8g(6mmol)とした点以外は、実施例1と同様に合成を行った。本実施例の工程図を図1に示す。
[実施例7]
ジメチルアミノピリジンの量を45mg(0.37mmol)とした点以外は、実施例6と同様に合成を行った。
ジメチルアミノピリジンの量を45mg(0.37mmol)とした点以外は、実施例6と同様に合成を行った。
[実施例8]
ジメチルアミノピリジンの量を15mg(0.12mmol)とした点以外は、実施例6と同様に合成を行った。
ジメチルアミノピリジンの量を15mg(0.12mmol)とした点以外は、実施例6と同様に合成を行った。
実施例6〜8の結果を実施例1及び比較例1の結果とともに、表2にまとめた。
図1に示す工程と図2に示す工程とを対比すると明らかなように、また、表2からも明らかなように、比較例1では生成物の回収に大量の貧溶媒を必要とするのに対して、実施例1及び実施例6〜8では回収工程にそのような貧溶媒を必要とせず固液分離を行うため、回収工程が簡略化されていることがわかる。さらに、未反応の長鎖反応剤を回収して再利用することができる。
また、実施例1と実施例6〜8とを対比すると明らかなように、実施例1の条件から酸無水物変性カルダノールやジメチルアミノピリジンの量を低減しても、すなわち、より少ない原料の仕込み量でも、従来法(比較例1)と同等以上に反応が効率よく進むことがわかる。
[第2の方法(1段反応法)の実施例]
[合成例6]短鎖−長鎖反応剤混合物の合成
合成例5と同様に、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。具体的には、下記に従って、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。
[合成例6]短鎖−長鎖反応剤混合物の合成
合成例5と同様に、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。具体的には、下記に従って、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノール40.2g(111mmol)に、無水酢酸21.0mL(222mmol)を加え、100℃で1時間、加熱しながら攪拌した。これにより、短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。
[実施例9]
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で合成例6の短鎖−長鎖反応剤混合物を反応させることで、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で合成例6の短鎖−長鎖反応剤混合物を反応させることで、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
まず、以下の方法でセルロースの活性化処理を行った。
セルロース(日本製紙ケミカル製、製品名:KCフロック、銘柄:W−50GK)6.0g(乾燥重量換算)を、90mLの純水に分散させた。この分散液を15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって純水を除去した。得られた固形分を90mLの酢酸に分散し、15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって酢酸を除去した。この酢酸への分散と酢酸の除去は、2回行った。これにより、活性化処理済みセルロースを得た。
次に、以下の方法でセルロース誘導体を合成した。
上記の活性化処理済みセルロースに、ジメチルアミノピリジン3.0gを脱水ジオキサン150mLに溶解させたジオキサン溶液を加えて分散液を得た。この分散液を、合成例6の短鎖−長鎖反応剤混合物に加えた。
100℃で6時間加熱しながら攪拌した後、反応懸濁液を10mL分取し、遠心分離(700G、5分間)により固液を分離した。遠心分離により得られた固形分を洗浄、乾燥することで、生成物を得た。洗浄は、分析の観点から、未反応物が残らないように繰り返し行った。具体的には、60℃に加熱した20mLのイソプロピルアルコールで3回洗浄した。
得られた固形分(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)の短鎖有機基の置換度(DSSH)、長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、DSSHは1.7、DSLOは0.2であった。
本実施例の工程図を図4に示す。
[実施例10]
反応溶媒に1,2−ジメトキシエタンを使用し、反応温度を83℃とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
反応溶媒に1,2−ジメトキシエタンを使用し、反応温度を83℃とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
[実施例11]
反応溶媒にメチルエチルケトンを使用し、反応温度を80℃とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
反応溶媒にメチルエチルケトンを使用し、反応温度を80℃とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
[実施例12]
反応溶媒に酢酸エチルを使用し、反応温度を77℃とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
反応溶媒に酢酸エチルを使用し、反応温度を77℃とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
実施例9〜12の結果を比較例1の結果とともに表3にまとめた。
図4に示す工程と図2に示す工程とを対比すると明らかなように、また、表3からも明らかなように、比較例1では生成物の回収に大量の貧溶媒を必要とするのに対して、実施例9〜12では回収工程にそのような貧溶媒を必要とせず固液分離を行うため、回収工程が簡略化されていることがわかる。さらに、未反応の長鎖反応剤を回収して再利用することができる。
また、実施例9〜12から明らかなように、本発明では、多様な官能基の溶媒において、長鎖有機基の導入反応が効率よく進むことがわかる。
[実施例13]
長鎖有機基導入の反応時間を15時間とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。本実施例の工程図を図4に示す。
長鎖有機基導入の反応時間を15時間とした点以外は、実施例9と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。本実施例の工程図を図4に示す。
[実施例14]
無水酢酸の使用量を23mL(243mmol)とした点以外は、合成例6と同様にして短鎖−長鎖反応剤混合物を合成した。この短鎖−長鎖反応剤混合物を使用し、実施例13と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
無水酢酸の使用量を23mL(243mmol)とした点以外は、合成例6と同様にして短鎖−長鎖反応剤混合物を合成した。この短鎖−長鎖反応剤混合物を使用し、実施例13と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
[実施例15]
カルボキシル化水添カルダノールの量の使用量を50.0g(138mmol)とした点以外は、合成例6と同様にして短鎖−長鎖反応剤混合物を合成した。この短鎖−長鎖反応剤混合物を使用し、実施例13と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
カルボキシル化水添カルダノールの量の使用量を50.0g(138mmol)とした点以外は、合成例6と同様にして短鎖−長鎖反応剤混合物を合成した。この短鎖−長鎖反応剤混合物を使用し、実施例13と同様して、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
[比較例2]
酸クロライド化水添カルダノールの使用量を15g(0.035mol)とした点以外は、比較例1と同様にして長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。本比較例の工程図を図2に示す。
酸クロライド化水添カルダノールの使用量を15g(0.035mol)とした点以外は、比較例1と同様にして長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。本比較例の工程図を図2に示す。
実施例13〜15及び比較例2の結果を、表4にまとめた。
図4に示す工程と図2に示す工程とを対比すると明らかなように、また、表4からも明らかなように、比較例2では生成物の回収に大量の貧溶媒を必要とするのに対して、実施例13〜15では回収工程にそのような貧溶媒を必要とせず固液分離を行うため、回収工程が簡略化されていることがわかる。さらに、未反応の長鎖反応剤を回収して再利用することができる。
また、実施例13〜15から明らかなように、本発明では、反応剤あるいはその原料の仕込み量を変えることで、短鎖有機基および長鎖有機基の結合量を制御することができる。
[合成例7]短鎖−長鎖反応剤混合物の合成
合成例2のカルボキシル化水添カルダノールを、無水プロピオン酸と混合し加熱することで、無水プロピオン酸と、プロピオン酸−カルボキシル化水添カルダノール混合無水物(非対称無水物:プロピオン酸とカルボキシル化水添カルダノールとの脱水反応により形成される無水物)と、酸無水物変性カルダノール(対称無水物:カルボキシル化水添カルダノール同士の脱水反応により形成される無水物)との混合物、すなわち短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。具体的には、下記に従って、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノールを、無水プロピオン酸と混合し加熱することで、無水プロピオン酸と、プロピオン酸−カルボキシル化水添カルダノール混合無水物(非対称無水物:プロピオン酸とカルボキシル化水添カルダノールとの脱水反応により形成される無水物)と、酸無水物変性カルダノール(対称無水物:カルボキシル化水添カルダノール同士の脱水反応により形成される無水物)との混合物、すなわち短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。具体的には、下記に従って、短鎖−長鎖反応剤混合物を作製した。
合成例2のカルボキシル化水添カルダノール22.4gに、無水プロピオン酸143mLを加え、90℃で0.5時間、加熱しながら攪拌した。これにより、短鎖−長鎖反応剤混合物を得た。
[実施例16]
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で合成例7の短鎖−長鎖反応剤混合物を反応させることで、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
セルロースの活性化処理を行った後、固液不均一系で合成例7の短鎖−長鎖反応剤混合物を反応させることで、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を得た。具体的には、下記に従って、長鎖短鎖結合セルロース誘導体を作製した。
まず、以下の方法でセルロースの活性化処理を行った。
セルロース(日本製紙ケミカル製、製品名:KCフロック、銘柄:W−50GK)10.74g(吸着水分6.85%を含む重量)を、150mLの純水に分散させた。この分散液を15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によって純水を除去した。得られた固形分を150mLのプロピオン酸に分散し、15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によってプロピオン酸を除去した。さらに、得られた固形分を150mLの脱水ジオキサンに分散し、15分間攪拌し、5分間の吸引濾過によってジオキサンを除去した。これにより、活性化処理済みセルロースを得た。
次に、以下の方法でセルロース誘導体を合成した。
上記の活性化処理済みセルロースを、脱水ジオキサン30mLに分散させた。この分散液に、合成例7の短鎖−長鎖反応剤混合物を脱水ジオキサン150mLで希釈した溶液を加えた。さらに、ジメチルアミノピリジン1.0gを脱水ジオキサン30mLに溶解させたジオキサン溶液を加えた。
90℃で24時間加熱しながら攪拌した後、反応懸濁液を220mL分取し、濾別した。濾別により得られた固形分を洗浄、乾燥することで、生成物を得た。洗浄は、分析の観点から、未反応物が残らないように繰り返し行った。具体的には、100mLのジオキサンで5回洗浄を行った。
得られた固形分(長鎖短鎖結合セルロース誘導体)の短鎖有機基の置換度(DSSH)、長鎖有機基の置換度(DSLO)をIRにより測定したところ、DSSHは2.1、DSLOは0.4であった。なお、DSSHは、エステル結合のC=O伸縮ピーク(1750cm-1)の強度を用いて決定したトータルの置換度からDSLOを差し引いた値とした。
本実施例の工程図を図5に示す。
実施例16の結果を比較例2の結果とともに表5にまとめた。
図5に示す工程と図2に示す工程とを対比すると明らかなように、また、表5からも明らかなように、比較例2では生成物の回収に大量の貧溶媒を必要とするのに対して、実施例16では回収工程にそのような貧溶媒を必要とせず固液分離を行うため、回収工程が簡略化されていることがわかる。さらに、未反応の長鎖反応剤を回収して再利用することができる。
また、実施例16及び他の実施例の結果から明らかなように、本発明では、短鎖有機基の種類が異なっても、効率的に長鎖有機基を導入することができる。
[膨潤度の測定]
試料の膨潤度を以下の通り測定した。
試料の膨潤度を以下の通り測定した。
まず、膨潤前(乾燥後)の試料をガラス板に載せ、光学顕微鏡(キーエンス社製、商品名:デジタルマイクロスコープ、型式:VHX−500)で観察することで、膨潤前の試料の長さ(本例では繊維の幅)を計測した。
計測の簡便さの観点から、観察画像において、試料の中心を通過する線分と試料の輪郭とが交差する2点の間(端部間)の距離を計測し、最短距離を試料の長さとした。試料の中心は、試料が繊維状であれば長手方向に沿った中心軸上の任意の点に相当し、試料が球状の場合は観察画像の円(輪郭)の中心に相当する。試料が繊維状および球状以外の場合は、観察画像において試料の一粒子の輪郭を、四つの角が全て90度で最小面積の四角形(長方形あるいは正方形)で取り囲み、その四角形の対角線の交点を試料の中心とすることができる。試料が繊維状である場合は、繊維径(幅)が試料の長さに相当する。試料が球状である場合は、直径が試料の長さに相当する。
膨潤前(乾燥状態)の試料の長さを計測した後、溶媒を滴下して試料を溶媒に浸漬し、溶媒浸漬状態で試料の長さを経時的に計測した。膨潤が飽和に達した後の試料の長さを膨潤後の試料の長さとし、以下の式に従って膨潤度を算出した。
膨潤度(%)=100×(膨潤後試料長さ−膨潤前試料長さ)/膨潤前試料長さ。
上記の測定方法にしたがって、合成例1及び実施例1のセルロース誘導体の膨潤度を室温で測定した。試料は繊維状であるため、繊維径(幅)を計測した。試料は、溶媒浸漬から1分以内で膨潤が飽和したため、溶媒浸漬後1分の時点で膨潤度を評価した。なお、溶媒浸漬から10分経過時の長さは1分経過時の長さとほぼ同じであった。得られた結果を表6に示す。
表6に示すように、実施例1の長鎖短鎖結合セルロース誘導体は、ジオキサン(及びピリジン)に対して他の溶媒に比べて高い膨潤度を示し、実施例1の結果(表1)が示すように高い置換度が得られている。このように長鎖短鎖結合セルロース誘導体が高い膨潤度を示すことを可能にする反応液を用いた場合、反応終了に至るまでの間、長鎖反応剤がセルロース誘導体中に十分に含浸した膨潤状態を保つことができるため、高い反応性が得られると考えられる。また、反応前(長鎖有機基導入前)の短鎖結合セルロース誘導体(合成例1)についても、ジオキサン(及びピリジン)に対して他の溶媒に比べて高い膨潤度を示している。このように、反応前のセルロース誘導体が高い膨潤度を示すことを可能にする反応溶液を用いた場合、反応初期においても、長鎖反応剤がセルロース誘導体中に十分に含浸した状態が形成されるため、反応効率も高くなると考えられる。短鎖結合セルロース誘導体は、セルロースに比べて高い膨潤度を示すことができるため、セルロースに直接長鎖有機基を導入する場合より、反応性や反応効率が高いと考えられる。
[成形体の製造および評価]
[実施例17]
実施例13で得たセルロース誘導体を用いて、下記の通り成形体を作製し、その物性の評価を行った。
[実施例17]
実施例13で得たセルロース誘導体を用いて、下記の通り成形体を作製し、その物性の評価を行った。
[混練方法]
混練機(Thermo Electron Corporation製、商品名:HAAKE MiniLab Rheomex CTW5)を使用して、セルロース誘導体6.5gを混錬した。その際、混練機の混練室の設定温度を210℃、回転数を60rpmに設定し、原料を混練機の供給口から投入後、3分間混練した。
混練機(Thermo Electron Corporation製、商品名:HAAKE MiniLab Rheomex CTW5)を使用して、セルロース誘導体6.5gを混錬した。その際、混練機の混練室の設定温度を210℃、回転数を60rpmに設定し、原料を混練機の供給口から投入後、3分間混練した。
[成形方法]
射出成形機(Thermo Electron Corporation製、HAAKE MiniJet IIを使用して、上記の樹脂を用いて、下記形状の成形体を作製した。
射出成形機(Thermo Electron Corporation製、HAAKE MiniJet IIを使用して、上記の樹脂を用いて、下記形状の成形体を作製した。
成形体サイズ:厚み:2mm、幅:13mm、長さ:80mm
その際、成形機のシリンダー温度を220℃、金型温度を110℃、射出圧力1000bar(100MPa)で5秒間、保圧400bar(40MPa)で5秒間の成形条件に設定した。
その際、成形機のシリンダー温度を220℃、金型温度を110℃、射出圧力1000bar(100MPa)で5秒間、保圧400bar(40MPa)で5秒間の成形条件に設定した。
得られた成形体について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。
[実施例18]
実施例14で得たセルロース誘導体を用いて、実施例17と同様にして、成形体を作製し、その物性の評価を行った。
実施例14で得たセルロース誘導体を用いて、実施例17と同様にして、成形体を作製し、その物性の評価を行った。
[実施例19]
実施例15で得たセルロース誘導体を用いて、実施例17と同様にして、成形体を作製し、その物性の評価を行った。
実施例15で得たセルロース誘導体を用いて、実施例17と同様にして、成形体を作製し、その物性の評価を行った。
[実施例20]
実施例16で得たセルロース誘導体を用いて、実施例17と同様にして、成形体を作製し、その物性の評価を行った。ただし、混練時の設定温度は180℃、成形時のシリンダー温度は200℃とした。
実施例16で得たセルロース誘導体を用いて、実施例17と同様にして、成形体を作製し、その物性の評価を行った。ただし、混練時の設定温度は180℃、成形時のシリンダー温度は200℃とした。
[比較例3]
比較例2の長鎖短鎖結合セルロース誘導体を実施例17と同じ条件で成形し、その物性を評価した。
比較例2の長鎖短鎖結合セルロース誘導体を実施例17と同じ条件で成形し、その物性を評価した。
実施例17〜20、比較例3の評価結果を表7に示す。
表7から明らかなように、本発明によれば、高い曲げ弾性率を有する樹脂を得ることができる。また、短鎖有機基および長鎖有機基の種類や導入量によって、曲げ弾性率を制御することができる。
[実施例21]
実施例1と同様にして得たセルロース誘導体を用いて樹脂組成物を形成し、この樹脂組成物を用いて下記の通り成形体を作製し、その物性の評価を行った。
実施例1と同様にして得たセルロース誘導体を用いて樹脂組成物を形成し、この樹脂組成物を用いて下記の通り成形体を作製し、その物性の評価を行った。
[混練方法]
混練機(Thermo Electron Corporation製、商品名:HAAKE MiniLab Rheomex CTW5)を使用して、2種類の原料、すなわち実施例1と同様にして得たセルロース誘導体1.3gと、比較例1と同様にして得たセルロース誘導体5.2gとを混錬した(合計6.5g)。その際、混練機の混練室の設定温度を200℃、回転数を60rpmに設定し、原料を混練機の供給口から投入後、3分間混練し、樹脂組成物を得た。
混練機(Thermo Electron Corporation製、商品名:HAAKE MiniLab Rheomex CTW5)を使用して、2種類の原料、すなわち実施例1と同様にして得たセルロース誘導体1.3gと、比較例1と同様にして得たセルロース誘導体5.2gとを混錬した(合計6.5g)。その際、混練機の混練室の設定温度を200℃、回転数を60rpmに設定し、原料を混練機の供給口から投入後、3分間混練し、樹脂組成物を得た。
[成形方法]
射出成形機(Thermo Electron Corporation製、HAAKE MiniJet IIを使用して、上記の樹脂組成物を用いて、下記2種類の形状の成形体を作製した。
射出成形機(Thermo Electron Corporation製、HAAKE MiniJet IIを使用して、上記の樹脂組成物を用いて、下記2種類の形状の成形体を作製した。
(成形体1)成形体サイズ:厚み:2mm、幅:13mm、長さ:80mm
(成形体2)成形体サイズ:厚み:4mm、幅:10mm、長さ:80mm
その際、成形機のシリンダー温度を210℃、金型温度を110℃、射出圧力1000bar(100MPa)で5秒間、保圧400bar(40MPa)で5秒間の成形条件に設定した。
(成形体2)成形体サイズ:厚み:4mm、幅:10mm、長さ:80mm
その際、成形機のシリンダー温度を210℃、金型温度を110℃、射出圧力1000bar(100MPa)で5秒間、保圧400bar(40MPa)で5秒間の成形条件に設定した。
得られた成形体について下記に従って評価を行った。結果を表8に示す。
[アイゾット衝撃強度の測定]
成形体2について、JIS K7110に準拠してノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。
成形体2について、JIS K7110に準拠してノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。
[曲げ試験]
成形体1について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。
成形体1について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。
[比較例4]
樹脂組成物に代えて比較例1と同様にして得たセルロース誘導体(6.5g)(均一系生成物)を用いて成形を行ったこと以外は、実施例21と同様にして成形体を作製し、その物性の評価を行った。
樹脂組成物に代えて比較例1と同様にして得たセルロース誘導体(6.5g)(均一系生成物)を用いて成形を行ったこと以外は、実施例21と同様にして成形体を作製し、その物性の評価を行った。
この結果から、本実施例によるセルロース誘導体の長鎖有機基の導入量や架橋の程度を調整し、これを添加した樹脂組成物を用いることにより、成形体の衝撃強度を維持したまま、また曲げ強度をそれほど損なうことなく、曲げ弾性率を低下させることができる。本実施例による成形体は、セルロース誘導体同士を混合するものであるため、本実施例によれば、相溶性に優れ、品質の安定した成形体を得ることができる。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2012年5月31日に出願された日本出願特願2012−125284を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
Claims (6)
- セルロースのヒドロキシ基の水素原子に代えてエステル化により導入された短鎖有機基と、前記セルロースのヒドロキシ基の水素原子に代えてエステル化により導入された長鎖有機基とを有し、
クロロホルムに対する溶解度が10質量%以下であり、
前記短鎖有機基が、炭素数2〜4の短鎖アシル基であり、
前記長鎖有機基が、炭素数5〜48の長鎖アシル基、又はカルダノール誘導体由来の基である、セルロース誘導体。 - 前記短鎖有機基の置換度が0.5〜2.5であり、前記長鎖有機基の置換度が0.1〜1.5である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
- 前記短鎖有機基の置換度が0.5〜2.5であり、前記長鎖有機基の置換度が0.2〜1.5である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
- セルロース結晶を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のセルロース誘導体。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載のセルロース誘導体を含有する樹脂組成物。
- 請求項5に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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