以下、図1〜図5を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1および図2に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がガラスパッキン2aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が蓋パッキン3aを介して取り付けられている。
この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、図1に示すように、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部BTが設けられている。また、この腕時計ケース1の3時側には、竜頭などのスイッチ装置SW1が設けられており、この腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側には、押釦スイッチSW2がそれぞれ設けられている。
さらに、この腕時計ケース1は、図2に示すように、その内部に時計モジュール4が配置されるように構成されている。この時計モジュール4は、図示ないが、指針の運針によって時刻を指示する時計ムーブメント、時刻や日付などの情報を電気光学的に表示する表示部、これらを電気的に駆動する回路部などの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
ところで、この腕時計ケース1は、図1および図2に示すように、時計モジュール4を収容する本体ケース5と、この本体ケース5の上部に固定されて時計ガラス2がガラスパッキン2aを介して装着する上部ケース6と、を備えている。本体ケース5は、ステンレス、チタンなどの金属で形成されている。
上部ケース6は、図2に示すように、本体ケース5の上部にその内周側に位置した状態で固定される内側ケース7と、本体ケース5の上部にその外周側に位置した状態で配置される外側ケース8と、内側ケース7と外側ケース8との間に設けられて、内側ケース7と外側ケース8とを非接触状態で配置させる緩衝部材9と、を備えている。なお、緩衝部材9は、防水部材としても機能している。
内側ケース7は、図2に示すように、全体がほぼリング形状に形成されている。この内側ケース7は、その内径が本体ケース5の内径よりも小さく形成され、外径が本体ケース5の内径よりも大きく、かつ本体ケース5の外径よりも小さく形成されている。この場合、内側ケース7は、チタンなどの金属で形成されていることが望ましいが、本体ケース5と同様、ステンレスなどの金属で形成されていても良く、また必ずしも本体ケース5と同じ材料である必要はない。
この内側ケース7は、その表面が蒸着などの表面処理によって所定の色、例えば黒色に着色されている。また、この内側ケース7の内周部には、図2に示すように、見切り部10とガラス装着部11とが設けられている。見切り部10は、内側ケース7の内周部の上部側から下部側に向けて次第に内径が小さくなるように傾斜して設けられている。
ガラス装着部11は、図2に示すように、見切り部10の上部における外周縁に起立して設けられた外周壁11aを備え、時計ガラス2の外周側の下面が内側ケース7の上面に配置された状態で、時計ガラス2の外周面がガラスパッキン2aを介して外周壁11aの内周面に圧接するように構成されている。
一方、外側ケース8は、図2に示すように、全体がほぼリング形状に形成されている。すなわち、この外側ケース8は、その内径が内側ケース7の外径と同じか、それよりも少し大きく形成され、外径が本体ケース5の外径よりも大きく形成されている。この場合、外側ケース8は、チタンなどの金属で形成されていることが望ましいが、内側ケース7と同様、ステンレスなどの金属で形成されていても良い。
この場合にも、外側ケース8は、その表面が蒸着などの表面処理によって、内側ケース7と異なる色、例えば青色に着色されていることが望ましいが、内側ケース7と同じ色に着色されていても良い。また、この外側ケース8は、必ずしも金属で形成されている必要はなく、例えばセラミックス、石英ガラス、貴金属(金、銀、プラチナ)、人工宝石(人工サファイア、人工ルビー)などの材料で形成されていても良い。
ところで、上部ケース6は、図2に示すように、本体ケース5の内側上部に固定部12によって固定されるように構成されている。この固定部12は、内側ケース7を本体ケース5の内側上部に配置させて保持する保持部13と、この保持部13に設けられて本体ケース5の内周面にカシメ加工によって固定されるカシメ部14と、を備えている。
保持部13は、図2に示すように、内側ケース7の下面におけるほぼ中間部に垂下して設けられた内周壁13aを備え、内側ケース7の外周部の下面が本体ケース5の内周側の上面に当接した状態で、内周壁13aの外周面が本体ケース5の内周面に接触する状態で配置されるように構成されている。これにより、保持部13は、内側ケース7を本体ケース5の内側上部に配置させて、内側ケース7を本体ケース5の上部に保持するように構成されている。
カシメ部14は、図2および図4に示すように、内側ケース7の保持部13の内周壁13aにおける下端部の複数箇所に設けられた爪部である。このカシメ部14は、内側ケース7の保持部13が本体ケース5の内周側の上部に配置された状態で、カシメ加工によってカシメられた際に、本体ケース5の内周面に設けられた凹部5a内に食い込んで、内側ケース7を本体ケース5に固定するように構成されている。
すなわち、このカシメ部14は、図4(a)に示すように、内側ケース7の保持部13が本体ケース5の内周側の上部に配置された状態で、カシメ加工される前のときに、本体ケース5の内周面に設けられた凹部5aの外部に位置した状態で、本体ケース5の凹部5aに対応して配置されるように構成されている。
また、このカシメ部14は、図4(b)に示すように、本体ケース5の内周面に設けられた凹部5aに対応して配置された状態で、カシメ加工によってカシメられた際に、本体ケース5の内周面に設けられた凹部5a内に食い込むことにより、内側ケース7を本体ケース5に強固に固定するように構成されている。
また、上部ケース6は、図2および図3に示すように、内側ケース7の外周面に設けられて、緩衝部材9を上方から押え付ける押え部15と、外側ケース8の内周面に設けられ、押え部15によって押え付けられた緩衝部材9が上方から押し当てられて本体ケース5の上部に向けて押し付けられる受け部16と、を備えている。
押え部15は、図2および図3に示すように、内側ケース7の見切り部10の上部に対応する外周部に設けられた段差部である。すなわち、内側ケース7の見切り部10に対応する外周部のほぼ中間部には、緩衝部材9が配置される内側切欠き凹部15aが設けられている。このため、押え部15は、内側切欠き凹部15aの上端部に段差部として形成されている。
これにより、押え部15は、図2および図3に示すように、内側ケース7の保持部13が本体ケース5の内周側の上部に配置された際に、内側切欠き凹部15aに配置された緩衝部材9を上方から押え付けて外側ケース8の受け部16に押し付けることにより、外側ケース8を本体ケース5の上部に押え付けるように構成されている。
一方、外側ケース8の受け部16は、図2および図3に示すように、外側ケース8の内周面の下部に設けられた段差突起部であり、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの下側に位置した状態で、外側ケース8の内周部にその内周側に向けて突出して設けられている。すなわち、この受け部16は、内側ケース7の内側切欠き凹部15aに配置された緩衝部材9の下側に位置し、緩衝部材9の下面が配置されるように構成されている。
これにより、受け部16は、図2および図3に示すように、内側ケース7の保持部13が本体ケース5の内周側の上部に配置される際に、受け部16の上面に配置された緩衝部材9が内側ケース7の押え部15によって押え付けられ、この押え付けられた緩衝部材9によって本体ケース5の上部に向けて押え付けられるように構成されている。
この場合、外側ケース8の下端部は、図2および図3に示すように、本体ケース5の上端部に設けられた溝部17内に配置された防水部材18を押し付ける支持突起部19が外側ケース8の下側に突出して設けられている。本体ケース5の溝部17は、本体ケース5の上端面における中間部にリング状に設けられた凹溝である。この溝部17の外周側に位置する本体ケース5の上部には、支持突起部19の外周を隠すための目隠し部5bが上方に突出して設けられている。
支持突起部19は、図2および図3に示すように、外側ケース8の下端面における受け部16の下側に突出した状態で、リング状に形成されている。この支持突起部19は、その径方向の長さが本体ケース5の溝部17の径方向の長さよりも少し短く形成されている。また、この支持突起部19は、その下端面が内側ケース7の下面と同じ高さで、かつ下側に突出する長さが、本体ケース5の上部に設けられた目隠し部5bの高さよりも少し長く形成されている。
防水部材18は、図2および図3に示すように、ゴムなどの弾力を有する合成樹脂によってリング状に形成され、本体ケース5の溝部17内に嵌め込まれるように構成されている。すなわち、この防水部材18は、リング状の溝部17内の形状とほぼ同じ形状でほぼ同じ大きさに形成されている。
これにより、支持突起部19は、図2および図3に示すように、外側ケース8が本体ケース5の上部に配置される際に、支持突起部19の下端部が本体ケース5の溝部17内の防水部材18に対応し、支持突起部19の外周部が本体ケース5の溝部17の外周に位置する目隠し部5bの内周面に非接触状態で対応し、この状態で外側ケース8を本体ケース5の上部に支持するように構成されている。
このため、外側ケース8は、図2に示すように、内側ケース7の押え部15によって押え付けられた緩衝部材9が外側ケース8の受け部16を押し付けた際に、支持突起部19の下端部が防水部材18に押し当てられることにより、外側ケース8が内側ケース7および本体ケース5に接触せず、本体ケース5に対してフローティング状態で配置されるように構成されている。
ところで、緩衝部材9は、図5に示すように、断面がほぼ長方形のリング状に形成されている。すなわち、この緩衝部材9は、その内径が内側ケース7の内側切欠き凹部15aの外径と同じ大きさで、外径が外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面の内径と同じ大きさに形成されている。この緩衝部材9は、ポリアミドなどの弾力性を有する合成樹脂によって形成されている。
これにより、緩衝部材9は、図2および図3に示すように、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの外周面と外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面との間に配置された状態で、内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間に上下方向に挟み付けられた際に、弾力的に変形するように構成されている。
この場合、緩衝部材9の内周面の上部と外周面の下部とには、図5に示すように、それぞれ面取り部9aが設けられている。この緩衝部材9の内周面の上部に設けられた面取り部9aは、内側ケース7の内側切欠き凹部15aに緩衝部材9を装着し易くするように構成されている。また、この緩衝部材9の外周面の下部に設けられた面取り部9aは、外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面に緩衝部材9を装着し易くするように構成されている。
ところで、内側ケース7の外周面には、図2および図3に示すように、外側ケース8の受け部16が径方向に食い込む食込み凹部20が、押え部15の内側切欠き凹部15aの下端部から内側ケース7の保持部13の下面に亘って設けられている。この内側ケース7の食込み凹部20と外側ケース8の受け部16の上面との間には、緩衝部材9が圧縮された際に、緩衝部材9が食い込むための逃げ部21が設けられている。
この逃げ部21は、図2および図3に示すように、外側ケース8の受け部16の上面とこれに対向する内側ケース7の食込み凹部20の下面との間の隙間であり、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの下端部に逃し傾斜部21aが設けられた構成になっている。この逃し傾斜部21aは、緩衝部材9が内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間で圧縮されて変形する際に、その変形する緩衝部材9を逃げ部21に逃し易くするように構成されている。
これにより、緩衝部材9は、図2および図3に示すように、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの外周面と外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面との間に配置された状態で、内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間で挟み付けられて圧縮変形する際に、緩衝部材9の下部が受け部16の上面と食込み凹部20の下面との間の逃げ部21に食い込むように構成されている。このため、この緩衝部材9は、内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間の防水を図るように構成されている。
また、外側ケース8には、図2に示すように、装飾部材23が装着する装着部22が設けられている。この装着部22は、外側ケース8の上部に設けられたリング状の切欠き溝部であり、緩衝部材9よりも上側に位置し、外側ケース8の外周部を除いて内周側および上側に開放された状態で設けられている。これにより、この装着部22は、その内部に上方から装飾部材23が装着するように構成されている。
装飾部材23は、図2に示すように、上部ケース6を装飾するためのものであり、装着部22とほぼ同じ大きさのリング状に形成され、外側ケース8の装着部22内に接着剤(図示せず)によって接着されて固定されるように構成されている。この装飾部材23は、外側ケース8と同様、ステンレス、チタン、セラミックス、石英ガラス、貴金属(金、銀、プラチナ)、人工宝石(人工サファイア、人工ルビー)などの材料で形成されていても良いが、貝、木、石などの天然物、または合成樹脂などの装飾性を有する材料で形成されていても良い。
次に、この腕時計ケース1の作用について説明する。
この腕時計ケース1を組み立てる場合には、まず、上部ケース6の内側ケース7の外周に外側ケース8を配置して上部ケース6を組み立て、この上部ケース6を本体ケース5の上部に取り付ける。
この場合には、予め、内側ケース7の外周部における押え部15の下側に位置する内側切欠き凹部15aに緩衝部材9を装着させる。このときには、緩衝部材9の内周面の上部に面取り部9aが設けられているので、この面取り部9aによって緩衝部材9を内側ケース7の内側切欠き凹部15aに容易に装着させることができる。また、このときには、外装ケース8の装着部22に装飾部材23を接着剤によって接着させて装着させる。
この状態で、外側ケース8を内側ケース7の外周にその下側から嵌め込んで、内側ケース7と外側ケース8とを組み合わせる。このときには、内側ケース7の押え部15における内側切欠き凹部15aに装着された緩衝部材9の外周面に、外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面を配置させる。この場合には、緩衝部材9の外周面の下部に設けられた面取り部9aによって、外側ケース8を内側ケース7の内側切欠き凹部15aに装着された緩衝部材9に容易に装着させることができる。
これにより、緩衝部材9は、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの外周面と外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面との間に挟まれると共に、内側ケース7の押え部15の下面と外側ケース8の受け部16の上面との間に挟まれる。この状態では、外側ケース8の受け部16が内側ケース7の内側切欠き凹部15aの下側に位置する食込み凹部20に食込み、外側ケース8の受け部16の上面とこれに対応する食込み凹部20の下面との間に逃げ部21が設けられる。
また、この状態では、内側ケース7の下部に位置する保持部13の外周側の上面と外側ケース8の下端部から突出した支持突起部19の下端面とが同じ高さで配置される。さらに、この状態では、内側ケース7のガラス装着部11における外周壁11aの外周面に、外側ケース8の装着部22に装着された装飾部材23の内周面が対応し、内側ケース7のガラス装着部11における外周壁11aの上部と装飾部材23の上部とがほぼ同じ高さで配置される。
これにより、内側ケース7と外側ケース8とが組み合われて、上部ケース6が構成される。そして、この上部ケース6を本体ケース5の上部に取り付ける。このときには、予め、本体ケース5の上部に設けられた溝部17内に防水部材18を配置する。この状態で、内側ケース7の保持部13を本体ケース5の内側上部に対応させると共に、外側ケース8の下端部に位置する支持突起部19を本体ケース5の溝部17内の防水部材18に対応させる。
そして、内側ケース7の保持部13を本体ケース5の内側上部に上方から嵌め込んで、保持部13の下面を本体ケース5の内周側の上面に当接させて、保持部13の内周壁13aの外周面を本体ケース5の内周面に対応させると共に、カシメ部14を本体ケース5の内面に設けられた凹部5aに対応させる。これにより、内側ケース7が本体ケース5の内側上部に保持される。
このときには、内側ケース7の押え部15の下面が緩衝部材9を押え付け、この緩衝部材9が外側ケース8の受け部16の上面を押え付ける。このため、外側ケース8が本体ケース5の上部に押し付けられることにより、この外側ケース8の支持突起部19が本体ケース5の溝部17内に配置された防水部材18を押圧させた状態で、外側ケース8の外周側の下面が本体ケース5の上部の目隠し部5bの上方に配置される。
このため、外側ケース8は、内側ケース7および本体ケース5に非接触状態で、かつ本体ケース5に対してフローティング状態で配置される。この状態で、上部ケース6を本体ケース5の上部に固定する際には、内側ケース7の保持部13の下端部に設けられたカシメ部14をカシメして本体ケース5の凹部5aに食い込ませる。これにより、内側ケース7が本体ケース5に強固に固定され、これに伴って外側ケース8が本体ケース5に対してフローティング状態で固定される。
この状態では、緩衝部材9が内側ケース7の内側切欠き凹部15aの外周面と外側ケース8の受け部16の上側に位置する内周面との間に配置された状態で、内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間で挟み付けられて圧縮変形する。このため、この緩衝部材9によって内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間の防水が図れる。
このときには、緩衝部材9の下部が受け部16の上面と食込み凹部20の下面との間の逃げ部21に食い込む。この場合、逃げ部21は、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの下端部に逃し傾斜部21aが設けられているので、この逃し傾斜部21aによって緩衝部材9が圧縮変形する際に、その変形する緩衝部材9を逃げ部21に容易に逃すことができる。これにより、腕時計ケース1が組み立てられる。
このように組み立てられた腕時計ケース1は、上部ケース6の内側ケース7におけるガラス装着部11に、時計ガラス2がガラスパッキン2aを介して装着される。また、この腕時計ケース1では、本体ケース5の内部に時計モジュール4が配置され、この本体ケース5の下部に裏蓋3が蓋パッキン3aを介して取り付けられる。これにより、腕時計が組み立てられる。
このように組み立てられた腕時計では、腕時計ケース1の外側ケース8が外部から衝撃を受けた際に、その衝撃を内側ケース7と外側ケース8との間の緩衝部材9によって確実にかつ良好に緩衝することができるので、耐衝撃性の高いものを得ることができる。すなわち、内側ケース7と外側ケース8とは、緩衝部材9によって非接触状態で配置されることにより、外側ケース8が外部から衝撃を受けて緩衝部材9が衝撃を緩衝する際に、外側ケース8を衝撃に応じて変位させることができる。
これにより、この腕時計では、外側ケース8が横方向(径方向)から衝撃を受けても、その衝撃を緩衝部材9によって確実にかつ良好に緩衝することができることができるので、外側ケース8が外部から受けた衝撃が内側ケース7に伝わることがない。このため、内側ケース7に装着された時計ガラス2が衝撃によって割れることがなく、時計ガラス2を良好に保護することができると共に、外側ケース8の衝撃が本体ケース5に伝わることがないので、本体ケース5内の時計モジュール4が衝撃によって破損することがない。
また、この腕時計では、外側ケース8が本体ケース5の上部に設けられた防水部材18に押し当てられることにより、本体ケース5に対して外側ケース8がフローティング状態で配置されている。このため、外側ケース8が上下方向(厚み方向)から衝撃を受けても、その衝撃が本体ケース5に伝わることがないので、本体ケース5内に配置された時計モジュール4が衝撃によって破損することがない。
このように、この腕時計ケース1によれば、本体ケース5の上部に固定される上部ケース6が、本体ケース5の上部にその内周側に位置した状態で固定される内側ケース7と、本体ケース5の上部にその外周側に位置した状態で配置される外側ケース8と、内側ケース7と外側ケース8との間に設けられて、内側ケース7と外側ケース8とを非接触状態で配置する緩衝部材9と、を備えていることにより、耐衝撃性に優れたものを提供することができる。
すなわち、この腕時計ケース1では、外側ケース8が外部から衝撃を受けた際に、その衝撃を内側ケース7と外側ケース8との間の緩衝部材9によって確実にかつ良好に緩衝することができる。この場合、内側ケース7と外側ケース8とは、緩衝部材9によって非接触状態で配置されているので、外側ケース8が外部から受けた衝撃を緩衝部材9が緩衝する際に、外側ケース8を衝撃に応じて変位させることができる。このため、緩衝部材9によって衝撃を確実にかつ良好に緩衝することができるので、耐衝撃性に優れたものを提供することができる。
また、この腕時計ケース1では、内側ケース7が固定部12によって本体ケース5の上部に固定されていることにより、内側ケース7に外側ケース8を緩衝部材9によって確実に取り付けることができ、これにより外側ケース8を本体ケース5に対して良好に取り付けることができると共に、内側ケース7に装着された時計ガラス2を本体ケース5に対して確実に固定することができる。
すなわち、固定部12は、内側ケース7を本体ケース5の内側上部に配置させて保持する保持部13と、この保持部13に設けられて本体ケース5の内周面に設けられた凹部5aにカシメ加工によって固定されるカシメ部14と、を備えていることにより、保持部13によって内側ケース7を本体ケース5の上部に確実に保持することができると共に、カシメ部14によって内側ケース7を本体ケース5の上部に強固に固定することができる。
この場合、保持部13は、内側ケース7の下面におけるほぼ中間部に垂下して設けられた内周壁13aを備え、内側ケース7の外周部の下面が本体ケース5の内周側の上面に当接した状態で、内周壁13aの外周面が本体ケース5の内周面に接触する状態で配置される構成であるから、保持部13によって内側ケース7を本体ケース5の内側上部に配置させた状態で、内側ケース7を本体ケース5の上部に確実に保持させることができる。
また、カシメ部14は、内側ケース7の保持部13の内周壁13aにおける下端部の複数箇所に設けられた爪部であり、内側ケース7の保持部13が本体ケース5の内周側の上部に配置された状態で、カシメ加工によって本体ケース5の内周面に設けられた凹部5a内に食い込む構成であるから、内側ケース7を本体ケース5に確実にかつ強固に固定することができる。
また、この腕時計ケース1では、上部ケース6が、内側ケース7の外周面に設けられて緩衝部材9を上方から押え付ける押え部15と、外側ケース8の内周面に設けられ、押え部15によって押え付けられた緩衝部材9が上方から押し当てられて本体ケース5の上部に向けて押し付けられる受け部16と、を備えていることにより、緩衝部材9を内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間に確実にかつ良好に配置することができると共に、押え部15と受け部16とで緩衝部材9を確実に挟んで良好に圧縮させることができる。
すなわち、押え部15は、内側ケース7の外周部におけるほぼ中間部に設けられて緩衝部材9が配置される内側切欠き凹部15aの上端部に、段差部として形成されていることにより、内側ケース7の保持部13が本体ケース5の内周側の上部に配置された際に、内側切欠き凹部15aに配置された緩衝部材9を上方から押え付けて外側ケース8の受け部16に確実に押し付けることができる。
受け部16は、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの下側に位置する外側ケース8の内周面に、その内周側に向けて突出して設けられ、内側ケース7の内側切欠き凹部15aに配置された緩衝部材9の下面が配置されることにより、押え部15によって押え付けられた緩衝部材9を受け部16で確実に受け止めることができる。
このため、この腕時計ケース1では、緩衝部材9を内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16とで確実に挟み付けることができるので、緩衝部材9を確実にかつ良好に圧縮変形させることができると共に、外側ケース8を本体ケース5の上部に向けて確実に押し付けることができる。これにより、この腕時計ケース1では、緩衝部材9によって内側ケース7と外側ケース8との間の防水を確実にかつ良好に図ることができる。
また、この腕時計ケース1では、本体ケース5と外側ケース8との間に設けられた防水部材18に外側ケース8の下部が押し当てられることにより、外側ケース8を本体ケース5に対してフローティング状態で良好に配置することができる。すなわち、外側ケース8は、緩衝部材9を内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16とで挟み付けて、本体ケース5の上部に向けて押し付けられた際に、外側ケース8の下部を防水部材18に確実にかつ良好に押し当てることができ、これにより外側ケース8を本体ケース5に対して非接触状態で良好に配置させることができる。
この場合、外側ケース8は、その下部に支持突起部19が下側に突出して設けられ、この支持突起部19が本体ケース5の上面の溝部17内に配置された防水部材18に押し当てられることにより、外側ケース8を本体ケース5に非接触状態で支持することができ、これにより外側ケース8を本体ケース5に対してフローティング状態で良好に配置させることができる。
このため、この腕時計ケース1では、外側ケース8が上下方向(厚み方向)から衝撃を受けた際に、その衝撃を防水部材18によって確実にかつ良好に緩衝することができ、これにより衝撃が本体ケース5に伝わることがないので、本体ケース5内に配置された時計モジュール4が衝撃によって破損しないように、時計モジュール4を良好に保護することができる。
また、この腕時計ケース1では、上部ケース6が、内側ケース7の外周面に設けられて外側ケース8の受け部16が食い込む食込み凹部20と、この食込み凹部20と受け部16との間に設けられて緩衝部材9が食い込むための逃げ部21と、を備えていることにより、緩衝部材9が内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間に挟み付けられて圧縮変形する際に、緩衝部材9の下部を逃げ部21に食い込ませて逃すことができ、これにより緩衝部材9を確実にかつ良好に圧縮変形させることができる。
この場合、緩衝部材9は、内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間で、かつ内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間に配置される断面ほぼ長方形のリング形状に形成されていることにより、内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間に緩衝部材9を簡単にかつ良好に配置することができると共に、内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面とで緩衝部材9を確実に挟むことができ、これにより内側ケース7の押え部15の下面と外側ケース8の受け部16の上面とによって緩衝部材9を確実にかつ良好に圧縮させることができる。
このため、この緩衝部材9は、内側ケース7の押え部15の下面と外側ケース8の受け部16の上面との間で圧縮された際に、緩衝部材9の下部を逃げ部21に確実にかつ良好に食い込ませることができるので、緩衝部材9を確実にかつ良好に圧縮変形させることができ、この圧縮変形された緩衝部材9によって内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間の防水を確実に図ることができる。
この場合、逃げ部21は、外側ケース8の受け部16の上面とこれに対向する内側ケース7の食込み凹部20の下面との間の隙間であり、内側ケース7の内側切欠き凹部15aの下端部に逃し傾斜部21aが設けられていることにより、緩衝部材9が内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間で圧縮されて変形する際に、逃し傾斜部21aによって緩衝部材9を逃げ部21に逃し易くことができ、これにより緩衝部材9を確実にかつ良好に圧縮変形させることができる。
また、この腕時計ケース1では、外側ケース8の上部に装飾部材23が設けられていることにより、この装飾部材23によって腕時計ケース1を装飾することができ、これにより腕時計ケース1のデザイン性を高めることができる。すなわち、装飾部材23は、外側ケース8の上部に設けられた装着部22内に接着剤(図示せず)によって接着された状態で装着されることにより、外側ケース8の上側に装飾部材23を露出させることができ、この露出した装飾部材23によって上部ケース6の装飾性を高めることができる。
この場合、装飾部材23は、ステンレス、チタン、セラミックス、石英ガラス、貴金属(金、銀、プラチナ)、人工宝石(人工サファイア、人工ルビー)などの材料で形成されていても良いが、貝、木、石などの天然物、または合成樹脂などの装飾性を有する材料で形成されていれば、より一層、上部ケース6の装飾性を高めることができるので、更なるデザイン性の向上を図ることができる。
さらに、この腕時計ケース1では、内側ケース7と外側ケース8とが蒸着などの表面処理によって異なる色に着色されていることにより、色彩が豊富になり、デザイン性を高めることができる。すなわち、内側ケース7と外側ケース8とは、チタンなどの同じ金属で形成されていても、また異なる材料、例えば外側ケース8がセラミックスなどの材料で形成されていても、蒸着などの表面処理によって異なる色に着色することができ、これにより色彩のバリエーションが豊富になり、デザイン性に優れたものを得ることができる。
なお、上述した実施形態では、緩衝部材9は断面がほぼ長方形のリング状に形成されている場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば図6に示す変形例のように構成しても良い。すなわち、この変形例の緩衝部材30は、ポリアミドなどの弾性を有する合成樹脂によって、断面がほぼL字形のリング状に形成されている。
この場合、緩衝部材30は、内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間に配置される第1緩衝部30aと、内側ケース7の外周面に設けられた食込み凹部20と外側ケース8の受け部16との間に設けられた逃げ部21に配置される第2緩衝部30bと、を備え、これらがリング状に形成された構成になっている。
また、この緩衝部材30は、図6に示すように、第1緩衝部30aの内周側の上部と第1緩衝部30aの外周側の下部とにそれぞれ面取り部30cが設けられた構成になっている。このため、この緩衝部材30は、第1緩衝部30aの内周側の上部に設けられた面取り部30cによって内側ケース7の外周面に装着し易く、第1緩衝部30aの外周側の下部に設けられた面取り部30cによって外側ケース8の内周面に装着し易くなるように構成されている。
このような緩衝部材30では、第1緩衝部30aが内側ケース7の外周面と外側ケース8の内周面との間に配置され、第2緩衝部30bが内側ケース7の食込み凹部20と外側ケース8の受け部16との間の逃げ部21に配置され、この状態で内側ケース7の押え部15と外側ケース8の受け部16との間で圧縮されることにより、上述した実施形態と同様、緩衝部材30を確実にかつ良好に圧縮変形させることができる。
また、上述した実施形態およびその変形例では、緩衝部材9、30がポリアミドなどの弾性を有する合成樹脂で形成されている場合について述べたが、この発明はこれに限らず、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エラストマーなどの弾性材料を用いても良い。また、緩衝部材9、30は、防水部材18よりも硬度の高い材料であることが好ましい。
また、上述した実施形態では、内側ケース7と外側ケース8との各表面を蒸着などの表面処理で着色した場合について述べたが、この発明はこれに限らず、内側ケース7と外側ケース8とが金属で形成されている場合には、金、銀、銅などの金属メッキの表面処理で着色しても良い。この場合、内側ケース7と外側ケース8との各表面は、必ずしも異なる色に着色する必要はなく、同じ色に着色しても良い。
また、上述した実施形態では、内側ケース7を本体ケース5の上部に固定する固定部12が、内側ケース7を本体ケース5の内側上部に配置させて保持する保持部13を本体ケース5の内周面にカシメ加工によって固定させるカシメ部14を備えた構成である場合について述べたが、この発明は、必ずしもカシメ部14である必要はなく、例えばねじ部材などの締結部材で固定するように構成しても良い。
さらに、上述した実施形態およびその各変形例では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、例えば携帯電話機、携帯情報端末機などの電子機器にも適用することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、本体ケースと、この本体ケースの上部に固定される上部ケースとを備え、前記上部ケースは、前記本体ケースの上部にその内周側に位置した状態で固定された内側ケースと、前記本体ケースの上部にその外周側に位置した状態で配置された外側ケースと、前記内側ケースと前記外側ケースとの間に設けられて、前記内側ケースと前記外側ケースとを非接触状態で配置させる緩衝部材と、を備えていることを特徴とするケースである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケースにおいて、前記内側ケースを前記本体ケースの内側上部に固定するための固定部を備えていることを特徴とするケースである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のケースにおいて、前記固定部は、前記内側ケースを前記本体ケースの内側上部に配置させて保持する保持部と、前記保持部に設けられて前記本体ケースの内周面にカシメ加工によって固定されるカシメ部と、を備えていることを特徴とするケースである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のケースにおいて、前記上部ケースは、前記内側ケースの外周面に設けられて前記緩衝部材を上方から押え付ける押え部と、前記外側ケースの内周面に設けられ、前記押え部によって押え付けられた前記緩衝部材が上方から押し当てられて前記本体ケースの上部に向けて押し付けられる受け部と、を備えていることを特徴とするケースである。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のケースにおいて、前記外側ケースは、前記本体ケースと前記外側ケースとの間に設けられた防水部材に押し当てられることにより、前記本体ケースに対してフローティング状態で配置されていることを特徴とするケースである。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のケースにおいて、前記上部ケースは、前記内側ケースの外周面に設けられて前記外側ケースの前記受け部が食い込む食込み部と、前記食込み部と前記受け部との間に設けられて前記緩衝部材が食い込む逃げ部と、を備えていることを特徴とするケースである。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のケースにおいて、前記緩衝部材は、前記内側ケースと前記外側ケースとの間に配置され、断面がほぼ長方形のリング状に形成されていることを特徴とするケースである。
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のケースにおいて、前記緩衝部材は、前記内側ケースの前記押え部と前記外側ケースの前記受け部との間に配置される第1緩衝部と、前記内側ケースの前記食込み部と前記外側ケースの前記受け部との間に設けられた前記逃げ部に配置される第2緩衝部と、を備え、これらがリング状に形成されていることを特徴とするケースである。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のケースにおいて、前記外側ケースの上部には、装飾部材が設けられていることを特徴とするケースである。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のケースにおいて、前記内側ケースと前記外側ケースとは、表面処理によって異なる色に着色されていることを特徴とするケースである。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載されたケースを備えていることを特徴とする時計である。