以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。湯水混合栓10は、本体12、レバーハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24は、切替レバー26を有する。この切替レバー26の操作により、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
更に、ヘッド24は、切替ボタン28と表示部30とを有する。吐出部16には、浄水カートリッジ(図示されず)が内臓されている。切替ボタン28により、浄水カートリッジを透過する流路と、浄水カートリッジを透過しない流路とが切り換えられる。浄水カートリッジを透過する流路に切り換えられると、浄水が吐出される。浄水カートリッジを透過しない流路に切り換えられると、原水が吐出される。表示部30は、吐水が浄水か原水かを表示する。
レバーハンドル14の前後回動(上下回動)により、レバー前後位置が変化する。レバー前後位置により、吐出量が調整される。本実施形態では、レバーハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。図3のレバーハンドル14の位置は、可動範囲の最も下側(止水位置)である。なお、この構成とは逆に、レバーハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。
レバーハンドル14の左右回動により、レバー左右位置が変化する。レバー左右位置により、湯と水との混合割合が変化する。レバーハンドル14の左右回動により、吐出温度の調整が可能である。
湯水混合栓10は、その内部に、レバー組立体38を有する。図4は、レバー組立体38の斜視図である。図5は、レバー組立体38の側面図である。図6は、レバー軸に対して垂直な断面に沿ったレバー組立体38の断面図である。図7は、レバー組立体38の分解斜視図である。
図7が示すように、レバー組立体38は、移動体40、ハウジング42、回動体44、レバー46、レバー軸48、左右クリック用弾性部材50、左右クリック用当接体52、軸54、前後クリック用当接体56、前後クリック用弾性部材58、可動弁体60、整流部材61、固定弁体62、パッキン64、Oリング66、Oリング67及びベース体68を有する。前述のレバーハンドル14は、レバー46に固定されている。
前後クリック用当接体56及び前後クリック用弾性部材58は、移動体40に取り付けられている。前後クリック用当接体56は、前後クリック用弾性部材58(ねじりバネ)に付勢されつつ、前後クリック用係合部に当接している。図示されていないが、前後クリック用係合部は、レバー46の側面59に設けられている。この前後クリック用係合部と当接体56との当接に起因して、レバー46の前後回動に伴うクリック感が生じる。
左右クリック用当接体52及び左右クリック用弾性部材50は、回動体44に取り付けられている。左右クリック用当接体52は、左右クリック用弾性部材50(板バネ)に付勢されつつ、左右クリック用係合部に当接しうる。左右クリック用係合部は図示されていないが、ハウジング42の内面に設けられている。当接体52と左右クリック用係合部との当接に起因して、レバー46の左右回動に伴うクリック感が生じる。
ベース体68は、湯導入口70、水導入口72及び吐出口74を有する。ベース体68の下部には、これら湯導入口70、水導入口72及び吐出口74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
固定弁体62は、ベース体68の上側に固定される。ベース体68には、固定弁体62を固定するための係合凸部76と、ハウジング42を固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
固定弁体62は、湯流入孔80、水流入孔82及び流出孔84を有する。湯流入孔80は、ベース体68の湯導入口70に接続されている。水流入孔82は、ベース体68の水導入口72に接続されている。流出孔84は、ベース体68の吐出口74に接続されている。
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。上側部材86は、凸部90を有する。下側部材88は、凹部92を有する。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体的に成形されていてもよい。
固定弁体62の上面には、平滑面PL1が設けられている。前記孔80、82及び84が存在していない部分に、平滑面PL1が形成されている。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、平滑面PL2が設けられている。平滑面PL1と平滑面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合凹部98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合凹部98に挿入されている。レバー46(レバーハンドル14)の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。レバーハンドル14の左右回動に連動して、可動弁体60は回転する。レバーハンドル14の前後回動に連動して、可動弁体60は移動する。
なお、レバー46とレバー係合凹部98との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー46とレバー係合凹部98との間に他の部材が介在していてもよい。
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている。
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。
レバー組立体38では、レバー46がレバー挿入孔106に挿入されており、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置されている。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48が挿入されている。レバー軸48の挿入により、レバー46が、前後回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の前後回動を許容しうるように設定されている。なお本願では、レバー軸48を回転軸とするレバー46の回動及びそれに伴うレバーハンドル14の回動が、「前後回動」とも称される。
移動体40は、回動体44に、上下移動が可能な状態で保持されている。移動体40は、回動体44に対して上下移動のみが可能であり、回動体44に対して相対回転することはできない。移動体40は、レバーハンドル14の左右回動に連動して回動体44と共に回転し、且つこの回転に連動して上下移動しうるように構成されている。
この移動体40の上下移動は、移動体40とハウジング42との間で形成されたカム機構によって達成されている。移動体40の内周面には、凸部(図示されず)が形成されている。このカム機構は、移動体40に形成された上記凸部と、ハウジング42に設けられた溝112との係合によって構成されている。この溝112は曲がって延在している。この溝112に沿って上記凸部が動くことで、移動体40は回転しながら上下移動する。移動体40が上側に移動すると、前後クリックに係る係合(当接体56と前後クリック用係合部との係合)が解除される。移動体40が下側に移動すると、前後クリックに係る係合が達成される。したがって、レバーハンドル14の左右回動領域において、前後クリックが生じる領域と、前後クリックが生じない領域とが設定されている。
移動体40は、回動体44に対する相対回転が不要な状態で、回動体44に保持されている。移動体40は、回動体44とともに回転する。レバーハンドル14、レバー46、移動体40及び回動体44は、一緒に回転する。
ハウジング42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、ハウジング42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。前述の溝112は、小径円筒部120の外周面に設けられている。
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、ベース体68の係合凸部77と係合している。この係合により、ハウジング42は、ベース体68に固定されている。
回動体44の上部104の円周面部の外径は、小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に、回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面と、小径円筒部120の内周面とが摺動する。大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
図8(a)は、可動弁体60の下側部材88の平面図である。図8(b)は、下側部材88の底面図である。図9(a)は、図8(b)のA−A線に沿った断面図である。図9(b)は、図8(b)のB−B線に沿った断面図である。下側部材88(可動弁体60)の下面には、流路形成凹部94が形成されている。流路形成凹部94は、下方に向かって開口している。流路形成凹部94は有底の凹部である。すなわち、流路形成凹部94の上方は閉じている。下側部材88の下面のうち、流路形成凹部94が形成されていない部分に、前述の平滑面PL2が設けられている。
流路形成凹部94は、下開口線94bを有している。後述されるように、この下開口線94bで囲まれる領域と、固定弁体62の各弁孔の上開口との重なりによって、吐水の仕様が決定される。
本実施形態では、下側部材88のみによって流路形成凹部94が形成されている。2つの部材によって流路形成凹部94が形成されていてもよい。例えば、貫通孔を有する下側部材と、凹部を有する上側部材とによって流路形成凹部94が形成されてもよい。この場合、前記下側部材の前記貫通孔の上側開口を塞ぐように前記上側部材の前記凹部が配置され、これら前記貫通孔と前記凹部とが合体して流路形成凹部94が形成される。
図10(a)は、固定弁体62の平面図(上面図)である。図10(b)は、固定弁体62の側面図である。図10(c)は、固定弁体62の底面図(下面図)である。前述のとおり、固定弁体62は、湯流入孔80、水流入孔82及び流出孔84を有する。
湯流入孔80は、上開口線80aを有する。この上開口線80aは、平滑面PL1における湯流入孔80の輪郭線である。上開口線80aは、湯流入孔80の上開口の輪郭線である。図10(a)が示すように、上開口線80aによって画定される上開口は、曲がった長孔である。更に湯流入孔80は、下開口線80bを有する。下開口線80bは、湯流入孔80の下開口の輪郭線である。
湯流入孔80は、第1傾斜面Y1と、第2傾斜面Y2とを有する。第1傾斜面Y1及び第2傾斜面Y2は、上向きの傾斜面である。第1傾斜面Y1は、湯流入孔80の長手方向における水側の端に位置する。第2傾斜面Y2は、湯流入孔80の長手方向における湯側の端に位置する。第1傾斜面Y1は、水側にいくほど上側となるように傾斜している。第2傾斜面Y2は、湯側にいくほど上側となるように傾斜している。
水流入孔82は、第1傾斜面M1と、第2傾斜面M2とを有する。第1傾斜面M1及び第2傾斜面M2は、上向きの傾斜面である。第1傾斜面M1は、水流入孔82の長手方向における湯側の端に位置する。第2傾斜面M2は、水流入孔82の長手方向における水側の端に位置する。第1傾斜面M1は、湯側にいくほど上側となるように傾斜している。第2傾斜面M2は、水側にいくほど上側となるように傾斜している。
水流入孔82は、上開口線82aを有する。この上開口線82aは、平滑面PL1における水流入孔82の輪郭線である。上開口線82aは、水流入孔82の上開口の輪郭線である。図10(a)が示すように、上開口線82aによって画定される上開口は、曲がった長孔である。更に水流入孔82は、下開口線82bを有する。下開口線82bは、水流入孔82の下開口の輪郭線である。
流出孔84は、上開口線84aを有する。この上開口線84aは、平滑面PL1における流出孔84の輪郭線である。上開口線84aは、流出孔84の上開口の輪郭線である。更に、流出孔84は、下開口線84bを有する。下開口線84bは、流出孔84の下開口の輪郭線である。
図10(a)及び図10(c)において、固定弁体62の縦中心線L1が一点鎖線で示されている。この縦中心線L1は、固定弁体62の平面視(平面図及び底面図)において定義される。固定弁体62の平面視(以下、単に平面視ともいう)において、レバーハンドル14が正面にあるときの当該レバーハンドル14の中心線CH1(図23参照)は、縦中心線L1に一致する。平面視において、縦中心線L1は、上開口線84aの対称軸である。平面視において、縦中心線L1は、固定弁体62の輪郭線96の対称軸である。
図10(a)及び図10(c)において、固定弁体62の横中心線L2が一点鎖線で示されている。この横中心線L2は、固定弁体62の平面視(平面図及び底面図)において定義される。この横中心線L2は、縦中心線L1に対して直角に交わっている。横中心線L2は、後述の中心点VCを通る。
図10(a)及び図10(c)において、固定弁体62の中心点VCが一点鎖線で示されている。固定弁体62の輪郭線96は円弧部分を有している。固定弁体62の中心点VCは、この円弧部分を一部とする円の中心に一致する。平面視において、固定弁体62の全体を含む直径Dの円形領域を考慮するとき、この直径Dが最小となるときの最小円形領域が決定されうる。中心点VCは、この最小円形領域の中心点に一致する。中心点VCは、縦中心線L1と横中心線L2との交点である。
本願では、「流入孔」との文言が用いられる。この流入孔は、湯流入孔80及び水流入孔82を含む概念である。また、本願では、「流路孔」との文言が用いられる。この流路孔は、流入孔80,82及び流出孔84を含む概念である。固定弁体62は、これらの流路孔80,82,84を有している。
図10(a)が示すように、流入孔80,82(上開口線80a,82a)は、左右非対称に配置されている。縦中心線L1に対して、上開口線80aと上開口線82aとは互いに非対称である。上開口線80aのほうが上開口線82aよりも縦中心線L1に近い。
図11(a)は整流部材61の平面図である。図11(b)は整流部材61の側面図である。図11(c)は整流部材61の底面図である。整流部材61は、流路形成凹部94(図8(b)参照)と同様の輪郭形状を有する。整流部材61は、金網よりなる。図11(a)では整流部材61の一部が網状に描かれているが、実際には、整流部材61の全体が、金網である。整流部材61は、成形された金網である。整流部材61は、流路形成凹部94に収容されている。整流部材61は、流路形成凹部94に固定されている。整流部材61は、流路形成凹部94に嵌め込まれている。整流部材61は、流路形成凹部94の少なくとも一部に配置されていればよい。
整流部材61は、流路形成凹部94における流れを整える。整流部材61は、流路形成凹部94における乱流を抑制する。よって、異音が抑制される。
なお、整流部材61は、金網に限定されない。通水性があれば、整流部材61となりうる。整流部材61として、金網、樹脂製の網、不織布(目が粗いもの)が例示される。金網として、織金網、亀甲金網、タフクリーン(菱形金網)、パンチングメタル及びウェッジワイヤースクリーン(溶接金網)が例示される。織金網の織り方として、平織、綾織、平畳織、トンキャップ織、フラットトップ織等が例示される。
整流性、通水性及び成形性の観点から、金網が好ましい。金網では、通水性と整流性とのバランスを考慮して、メッシュ、目開き、線径、空間率等が選定される。
整流部材61は織られていなくてもよい。例えば、整流部材61は、直線状の線部材が平行に並んだ構造であってもよい。整流部材61は、ブラシ状の構造を有していてもよい。
図12、図13、図14及び図15は、可動弁体60(下側部材88)と固定弁体62(固定弁体62h)との重なり状態を示す。換言すれば、これらの図は、流路形成凹部94(流路形成凹部94)と流路孔80,82,84(上開口線80a、上開口線82a、上開口線84a)との重なり状態を示す。これらの図においては、上方から透視された下開口線94b、上開口線80a及び上開口線82aが示されている。各線は破線とされるべきであるが、見やすさを考慮して、下開口線94bは実線で示されている。加えて、上開口線80a及び上開口線82aのうち、流路形成凹部94に重なった部分は実線で示されている。
図12から図15において、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)及び(a8)は、参考例の固定弁体62hを用いた場合の重なり状態を示す。一方、(b1)、(b2)、(b3)、(b4)、(b5)、(b6)、(b7)及び(b8)は、実施形態の固定弁体62を用いた場合の重なり状態を示す。
図12から図15の(a1)〜(a8)が示すように、参考例の固定弁体62hでは、上開口線80a及び上開口線82aが、縦中心線L1を対称軸とした線対称である。一方、図12から図15の(b1)〜(b8)が示すように、実施形態の固定弁体62では、上開口線80a及び上開口線82aが、縦中心線L1を対称軸とした線対称ではない。
図12の(a1)及び(b1)は、レバー左右位置が湯側限界にあり、レバー前後位置が止水位置にあるときの状態を示す。図12の(a2)及び(b2)は、レバー左右位置が湯側限界にあり、レバー前後位置が最大吐出位置にあるときの状態を示す。
図13の(a3)及び(b3)は、レバー左右位置が湯水混合領域にあり、レバー前後位置が止水位置にあるときの状態を示す。図13の(a4)及び(b4)は、レバー左右位置が湯水混合領域にあり、レバー前後位置が最大吐出位置にあるときの状態を示す。
図14の(a5)及び(b5)は、レバー左右位置が正面位置にあり、レバー前後位置が止水位置にあるときの状態を示す。図14の(a6)及び(b6)は、レバー左右位置が正面位置にあり、レバー前後位置が最大吐出位置にあるときの状態を示す。
図15の(a7)及び(b7)は、レバー左右位置が水側限界にあり、レバー前後位置が止水位置にあるときの状態を示す。図15の(a8)及び(b8)は、レバー左右位置が水側限界にあり、レバー前後位置が最大吐出位置にあるときの状態を示す。
図12から図15において、湯流入孔80と流路形成凹部94との重複面積Shが、ハッチングで示されている。また、水流入孔82と流路形成凹部94との重複面積Scが、ハッチングで示されている。重複面積Shに起因して、湯が吐出される。重複面積Scに起因して、水が吐出される。なお、本願において、重複面積Shは、湯側重複面積とも称される。重複面積Scは、水側重複面積とも称される。
図12の(a2)が示すように、参考例においてレバー左右位置が湯側限界の場合、重複面積Shが存在し、重複面積Scは存在しない。すなわちこの場合、湯のみ(湯100%)が吐出される。この点、本願実施形態も同様である。図12の(b2)が示すように、実施形態においてレバー左右位置が湯側限界の場合、重複面積Shが存在し、重複面積Scは存在しない。すなわちこの場合も、湯のみ(湯100%)が吐出される。
図15の(a8)が示すように、参考例においてレバー左右位置が水側限界の場合、重複面積Scが存在し、重複面積Shは存在しない。すなわちこの場合、水のみ(水100%)が吐出される。この点、本願実施形態も同様である。図15の(b8)が示すように、実施形態においてレバー左右位置が水側限界の場合、重複面積Scが存在し、重複面積Shは存在しない。すなわちこの場合も、水のみ(水100%)が吐出される。
図14の(a6)が示すように、参考例においてレバー左右位置が正面位置の場合、重複面積Scが存在し、重複面積Shは存在しない。すなわちこの場合、水のみ(水100%)が吐出される。この点、本願実施形態も同様である。図14の(b6)が示すように、実施形態においてレバー左右位置が正面位置の場合、重複面積Scが存在し、重複面積Shは存在しない。すなわちこの場合も、水のみ(水100%)が吐出される。つまり、レバー左右位置が正面位置であるとき、水のみが吐出される。
図13の(a4)及び(b4)が示すように、参考例及び実施形態のいずれにおいても、重複面積Sc及び重複面積Shの両方が存在する。すなわちこの場合、水と湯とが混合されて吐出される。
図13では、レバー左右位置は、湯水混合位置における所定位置である。(a4)と(b4)との間で、レバー左右位置は同一である。この同一のレバー左右位置において、実施形態の重複面積Scは、参考例の重複面積Scよりも小さい。同一のレバー左右位置において、実施形態のSh/Scは、参考例のSh/Scよりも大きい。実施形態では、水側重複面積Scが抑制されている。水圧が高い水側の水側重複面積Scが抑制されることで、湯水混合領域における乱流が効果的に抑制される。
図16は、固定弁体62(第1実施形態)を上方から見た平面図である。
図16で示されるように、Lc1は、固定弁体62の中心点VCを起点として固定弁体62の外側に向かって延びる半直線である。半直線Lc1は、上開口線82aにおける最も湯側の点PW2を通る。中心点VCを起点する半直線を、縦中心線L1に重なる位置から水側に向かって点VCを中心として回転させたとき、上開口線82aに最初に接するのが半直線Lc1であり、その接点がPW2である。
図16で示されるように、Lc2は、固定弁体62の中心点VCを起点として固定弁体62の外側に向かって延びる半直線である。半直線Lc2は、上開口線82aにおける最も水側の点を通る。中心点VCを起点する半直線を、縦中心線L1に重なる位置から水側に向かって点VCを中心として回転させたとき、上開口線82aに最後に接するのが半直線Lc2である。
図16で示されるように、Lc3(破線)は、固定弁体62の中心点VCを起点として固定弁体62の外側に向かって延びる半直線である。半直線Lc3は、第1傾斜面M1の下端線における最も湯側の点PW1を通る。中心点VCを起点する半直線を、縦中心線L1に重なる位置から水側に向かって点VCを中心として回転させたとき、第1傾斜面M1の下端線に最初に接するのが半直線Lc3であり、その接点がPW1である。
図16で示されるように、Lh1は、固定弁体62の中心点VCを起点として固定弁体62の外側に向かって延びる半直線である。半直線Lh1は、上開口線80aにおける最も水側の点PH2を通る。中心点VCを起点する半直線を、縦中心線L1に重なる位置から湯側に向かって点VCを中心として回転させたとき、上開口線80aに最初に接するのが半直線Lh1であり、その接点がPH2である。
図16で示されるように、Lh2は、固定弁体62の中心点VCを起点として固定弁体62の外側に向かって延びる半直線である。半直線Lh2は、上開口線80aにおける最も湯側の点を通る。中心点VCを起点する半直線を、縦中心線L1に重なる位置から湯側に向かって点VCを中心として回転させたとき、上開口線80aに最後に接するのが半直線Lh2である。
図16で示されるように、Lh3(破線)は、固定弁体62の中心点VCを起点として固定弁体62の外側に向かって延びる半直線である。半直線Lh3は、第1傾斜面Y1の下端線における最も水側の点PH1を通る。中心点VCを起点する半直線を、縦中心線L1に重なる位置から湯側に向かって点VCを中心として回転させたとき、第1傾斜面Y1の下端線に最初に接するのが半直線Lh3であり、その接点がPH1である。
湯流入孔80及び水流入孔82の上開口線に関して、本願では、中心角θ、中心角θ1、中心角θc1、中心角θh1、中心角θc2及び中心角θh2が定義される。これらの中心角は、いずれも、平面視の固定弁体62における角度である。
中心角θは、θc1、θh1、θc2及びθh2の合計である。中心角θは、θ1、θc2及びθh2の合計でもある。
図16で両矢印θc1で示されているのは、縦中心線L1と水流入孔82との間の中心角である。中心角θc1は、縦中心線L1と半直線Lc1との成す角である。
図16で両矢印θh1で示されているのは、縦中心線L1と湯流入孔80との間の中心角である。中心角θh1は、縦中心線L1と半直線Lh1との成す角である。
図16で両矢印θ1で示されるのは、水流入孔82と湯流入孔80との間の孔間部B1の中心角である。中心角θ1は、θc1とθh1との合計である。
図16で両矢印θc2で示されているのは、水流入孔82の中心角である。中心角θc2は、半直線Lc1と半直線Lc2との成す角である。
図16で両矢印θh2で示されているのは、湯流入孔80の中心角である。中心角θh2は、半直線Lh1と半直線Lh2との成す角である。
固定弁体62では、θh2がθc2よりも大きい。また、θc1がθh1よりも大きい。θh2は、90°よりも大きい。θc2は、90°よりも小さい。
固定弁体62において、上開口線80aは、その水側の端部に、直線部80cを有する。直線部80cは、縦中心線L1に略平行である。上開口線82aは、その湯側の端部に、直線部82cを有する。直線部82cは、縦中心線L1に略平行である。なお、本願において「略平行」とは、2本の直線が平行であるか、又は、2本の直線の成す角が20°以下であることを意味する。
図17は、第2実施形態に係る固定弁体62Aを上方から見た平面図である。
固定弁体62Aでは、θc1がθh1よりも大きい。θh2(図示省略)は、90°よりも小さい。θc2(図示省略)は、90°よりも小さい。
固定弁体62Aにおいて、上開口線80aは、その水側の端部に、直線部80cを有する。直線部80cは、縦中心線L1に略平行である。上開口線82aは、その湯側の端部に、直線部82cを有する。直線部82cは、縦中心線L1に略平行である。
図18は、第3実施形態に係る固定弁体62Bを上方から見た平面図である。
固定弁体62Bでは、θc1がθh1よりも大きい。θh2(図示省略)は、90°よりも大きい。θc2(図示省略)は、90°よりも小さい。
固定弁体62Bにおいて、上開口線80aは、その水側の端部に直線部を有さない。上開口線80aは、その水側の端部に曲線部80dを有する。曲線部80dは、湯流入孔80の外側に向かって凸となるように曲がっている。半直線Lh1は、曲線部80dに接している。
固定弁体62Bにおいて、上開口線82aは、その湯側の端部に直線部を有さない。上開口線82aは、その湯側の端部に曲線部82dを有する。曲線部82dは、水流入孔82の外側に向かって凸となるように曲がっている。半直線Lc1は、曲線部82dに接している。
図19は、第4実施形態に係る固定弁体62Cを上方から見た平面図である。
固定弁体62Cでは、θc1とθh1とがほぼ同じであるが、θc1がθh1よりも大きい。θh2(図示省略)は、90°よりも大きい。θc2(図示省略)は、90°よりも小さい。
固定弁体62Cにおいて、上開口線80aは、その水側の端部に直線部80cを有する。直線部80cは、縦中心線L1に略平行である。
固定弁体62Cにおいて、上開口線82aは、その湯側の端部に直線部を有さない。上開口線82aは、その湯側の端部に曲線部82dを有する。曲線部82dは、水流入孔82の外側に向かって凸となるように曲がっている。半直線Lc1は、曲線部82dに接している。
図20は、第5実施形態に係る固定弁体62Dを上方から見た平面図である。
固定弁体62Dでは、θc1がθh1よりも大きい。θh2(図示省略)は、90°よりも小さい。θc2(図示省略)は、90°よりも小さい。
固定弁体62Dにおいて、上開口線80aは、その水側の端部に直線部80cを有する。直線部80cは、縦中心線L1に略平行である。
固定弁体62Dにおいて、上開口線82aは、その湯側の端部に直線部82cを有する。直線部82cは、縦中心線L1に略平行である。
図21は、第6実施形態に係る固定弁体62Eを上方から見た平面図である。
固定弁体62Eでは、θc1がθh1よりも大きい。θh2(図示省略)は、90°よりも大きい。θc2(図示省略)は、90°よりも大きい。
固定弁体62Eにおいて、上開口線80aは、その水側の端部に直線部80cを有する。直線部80cは、縦中心線L1に略平行である。
固定弁体62Eにおいて、上開口線82aは、その湯側の端部に直線部82cを有する。直線部82cは、縦中心線L1に略平行ではない。直線部82cは、中心点VCから離れるほど縦中心線L1から離れるように傾斜している。
図22(a)は、整流部材61が装着された下側部材88の平面図である。図22(b)は図22(a)のA−A線に沿った断面図であり、図22(c)は図22(a)のB−B線に沿った断面図である。
整流部材61は、流路形成凹部94に収容されている。整流部材61の全体が、流路形成凹部94の内部に収まっている。
この整流部材61は、金網によって形成された部材である(図11参照)。整流部材61は、全体として、金網でできた籠状部材である。整流部材61は、流路形成凹部94に嵌め込まれている。整流部材61は、弾性変形に伴う復元力によって、流路形成凹部94に固定されている(図22(c)参照)。図22(b)及び図22(c)が示すように、整流部材61は、折り曲がり部61aを有している。折り曲がり部61aは、整流部材61の周囲に設けられている。この折り曲がり部61aは、弾性変形が容易である。この折り曲がり部61aを圧縮変形させつつ、整流部材61は流路形成凹部94に嵌め込まれている。
なお、図22(b)及び図22(c)では、整流部材61として1層の断面が示されているが、実際には、前述の通り、整流部材61は金網によって形成されている。
整流部材61の透過に起因して、水流の乱れが抑制される。この結果、異音が抑制される。
図23は、レバー左右位置を説明するための平面図である。レバーハンドル14は、湯側限界MLから水側限界MRまで左右回動可能である。両矢印RT1は、水流入孔82からの水のみが吐出される水領域を示す。両矢印RT1は、水流入孔82からの水のみが吐出される水領域を示す。両矢印RT2は、湯水混合領域を示す。両矢印RT3は、湯流入孔80からの湯のみが吐出される湯領域を示す。なお、湯領域RT3の角度は、0°であってもよい。すなわち、レバー左右位置が湯側限界MLにあるときにのみ、湯のみが吐出されてもよい。
なお、第1実施形態に係る湯水混合栓10では、水領域RT1の角度は55°であり、湯水混合領域RT2の角度は25°であり、湯領域RT3の角度は10°である。
図23の実施形態では、レバーハンドル14の左右回動範囲RFは、正面位置C1に対して左右対称である。左右回動範囲RFは、正面位置C1に対して左右対称でなくてもよい。左右回動範囲RFは、湯側限界MLから水側限界MRまでの角度範囲である。
図23の実施形態では、水領域RT1と湯水混合領域RT2との境界位置K1が、正面位置C1よりも湯側に位置している。レバー左右位置が境界位置K1よりも湯側にあると、湯が混合される。
この実施形態においては、レバー左右位置が正面位置C1にあるとき、水のみが吐出される。第2から第6実施形態のいずれにおいても、レバー左右位置が正面位置C1にあるとき、水のみが吐出される。よって、頻度が高い正面位置C1において水のみが吐出されるため、意図しない湯の混合が抑制される。
図23の実施形態では、水領域RT1と湯水混合領域RT2との境界位置K1が、正面位置C1よりも湯側に位置している。よって、レバー左右位置が正面位置C1から湯側に若干ずれている場合でも、水のみが吐出されうる。このため、意図しない湯の混合がより一層抑制され、省エネルギーに寄与する。
図23において両矢印θkで示されるのは、正面位置C1と境界位置K1との間の角度である。省エネルギーの観点から、角度θkは、1度以上が好ましく、3度以上がより好ましく、5度以上が更に好ましい。水から湯水混合水への切替の操作性を高める観点から、角度θkは、20度以下が好ましく、15度以下がより好ましく、10度以下が更に好ましい。第1実施形態の湯水混合栓10では、この角度θkは5°とされた。
本願の各実施形態では、中心角θ1が大きい。中心角θ1が大きくされることで、湯水混合領域において生じる異音が抑制されうる。
湯水混合領域においては、湯流入孔80と流路形成凹部94との重複面積Shが狭くなる局面がある。この場合、湯と水との流れのバランスが悪くなり、水流の乱れ及びキャビテーションが生じる。また一般に、湯流入孔80に供給される湯は給湯装置から供給されるため、湯流入孔80での水圧は、水流入孔82での水圧よりも低いことが多い。通常、湯流入孔80での水圧は、水流入孔82での水圧の3〜4倍程度である。この湯水圧力差により、湯と水との流れのバランスが更に悪くなり、水流の乱れ及びキャビテーションが更に生じやすい。吐出量が最大の場合に、この傾向が顕著となる。水流の乱れ及びキャビテーションは、異音を生じさせる。
中心角θ1を大きくすることで、湯水混合領域における流量を低下させることができる。この流量の低下により、水流の乱れ及びキャビテーションが抑制され、異音を少なくすることができる。
従来、湯水混合領域においては、前述の湯水圧力差に起因して、水温が上がりにくい場合があった。中心角θ1を大きくすることで、湯水混合領域において水の流れを抑制することができる。この結果、水温を容易に上昇させることができる。大きな中心角θ1は、水温の調節性にも寄与する。
湯水混合領域における異音の抑制及び水温の調節性の観点から、中心角θ1は、20°以上が好ましく、23°以上がより好ましく、26°以上が更に好ましい。中心角θ1が過大である場合、湯水混合領域RT2の角度範囲が減少し、水温の調節性がかえって低下することがある。この観点から、中心角θ1は、35°以下が好ましく、33°以下がより好ましく、31°以下が更に好ましい。
上述の通り、中心角θは、θc1、θh1、θc2及びθh2の合計である。湯水混合領域における異音の抑制及び水温の調節性の観点から、θ1/θは、0.05以上が好ましく、0.06以上がより好ましく、0.07以上が更に好ましい。中心角θ1が過大である場合、湯水混合領域RT2の角度範囲が減少し、水温の調節性がかえって低下することがある。この観点から、θ1/θは、0.15以下が好ましく、0.14以下がより好ましく、0.13以下が更に好ましい。
湯水混合領域における異音の抑制及び水温の調節性の観点から、θc1/θ1は、0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上が更に好ましい。中心角θc1が過大である場合、正面位置C1で水のみを吐出させにくい。この観点から、θc1/θ1は、1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
中心角θ1を確保する観点から、中心角θh1は、0°を超えるのが好ましい。換言すれば、半直線Lh1は縦中心線L1よりも湯側に位置するのが好ましい(図16参照)。同じ理由で、中心角θh1は、5°以上が好ましく、7°以上がより好ましく、9°以上が更に好ましい。水流の乱れを抑制するには、湯水混合領域RT2において湯の混合割合を確保するのがよい。この観点から、中心角θh1は、15°以下が好ましく、13°以下がより好ましく、11°以下が更に好ましい。
湯水混合領域RT2における流量を抑制するには、水圧が高い水側の流量を抑制するのが効果的である。この観点から、中心角θc1は、13°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、17°以上が更に好ましい。水温の調節性を高める観点から、中心角θc1は、23°以下が好ましく、21°以下がより好ましく、19°以下が更に好ましい。
湯水混合領域RT2における流量を抑制するには、水圧が高い水側の流量を抑制するのが効果的である。この観点から、θc1/θh1は、2.0以上が好ましく、2.3以上がより好ましい。水温調節性の観点から、過大なθc1は好ましくない。この観点から、θc1/θh1は、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましい。
前述の通り、水流入孔82に関して点PW1及び点PW2が定義され、湯流入孔80に関して点PH1及び点PH2が定義される(図16参照)。平面視において、点PW1と点PW2とを結ぶ線分の長さが傾斜幅W1(図示省略)と定義され、点PH1と点PH2とを結ぶ線分の長さが傾斜幅W2(図示省略)と定義される。湯流入孔80と流路形成凹部94との重複面積(湯側重複面積Sh)が小さくなるときに、水流の乱れ及びキャビテーションが生じやすく、これにより異音が生ずる。その時に、湯流入孔80から流路形成凹部94への湯の流れの方向が上下方向に近いほど、湯の流れが阻害されやすい。また、その時の水流入孔82から流路形成凹部94への水の流れが湯流入孔80の方向に向いているほど、湯の流れが阻害されやすくなる。
よって、水流入孔82における傾斜幅W1は、湯流入孔80における傾斜幅W2よりも小さい方がよい。この観点から、W1/W2は、1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましい。なお、W1/W2が過小であると、水流入孔82及び湯流入孔80を限られた固定弁面積の範囲内で構成するのが難しくなる。この観点から、W1/W2は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。
なお、限られた固定弁面積の中で必要とされる水の量を確保する観点から、点PW2は点PW1よりも湯側(湯流入孔側)に位置しているのが好ましい。また、限られた固定弁面積の中で必要とされる湯の量を確保する観点から、点PH2は点PH1よりも水側(水流入孔側)に位置しているのが好ましい。
図16の拡大部が示すように、点PH2と点PW2との距離が最短距離dと定義される。最短距離dを大きくすることで、湯水混合領域における流量を低下させることができる。この流量の低下により、水流の乱れ及びキャビテーションが抑制され、異音を少なくすることができる。この観点から、最短距離dは、3mm以上が好ましく、3.1mm以上がより好ましく、3.2mm以上が更に好ましい。湯水混合領域における流量の観点から、最短距離dは、3.8mm以下が好ましく、3.7mm以下がより好ましい。
図16の拡大部が示すように、前記点PH2と点PW2とを結ぶ直線Ldと前記縦中心線との交点がP1とされ、前記点PH2と前記点P1との距離がd1とされ、前記点PW2と前記点P1との距離がd2とされる。上述の通り、湯水混合領域において、湯と水との流れのバランスが悪くなり、水流の乱れ及びキャビテーションが生じうる。更に、上述の通り、湯水圧力差によって湯と水との流れのバランスが更に悪くなる。このバランスを改善して異音を抑制する観点から、距離d1は、距離d2以下であるのが好ましい。換言すれば、距離d1は、距離d2と同じか又は距離d2よりも小さいのが好ましい。つまり、d1≦d2が成立しているのが好ましい。更には、距離d1が距離d2よりも小さい(d1<d2)のがより好ましい。
異音を抑制する観点から、d1/d2は、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。d1/d2が過小である場合、温度調節性が低下しうる。この観点から、d1/d2は、0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましい。
下記の表1は、第1実施形態の固定弁体62において、最短距離dを変化させて音を測定した結果を示す。レバー左右位置が−40°から0°までの範囲において、5°おきに音が測定された。測定値の単位は、dB(デシベル)である。
計測された固定弁体62は、次の6種類である。
(1)固定弁体62−1:最短距離dが2.0mm(d1が1mm、d2が1mm)
(2)固定弁体62−2:最短距離dが2.5mm(d1が1mm、d2が1.5mm)
(3)固定弁体62−3:最短距離dが3.0mm(d1が1mm、d2が2mm)
(4)固定弁体62−4:最短距離dが3.5mm(d1が1mm、d2が2.5mm)
(5)固定弁体62−5:最短距離dが3.8mm(d1が1mm、d2が2.8mm)
(6)固定弁体62−6:最短距離dが4.0mm(d1が1mm、d2が3mm)
なお、レバー左右位置が−5°(湯5°)における流量は、固定弁体62−1で7.4リットル/分、固定弁体62−2で7.3リットル/分、固定弁体62−3で7.15リットル/分、固定弁体62−4で6.7リットル/分、固定弁体62−5で6.2リットル/分、固定弁体62−6で5.8リットル/分であった。
このように、上記最短距離dの好ましい範囲では、異音が抑制されつつ、流量が確保されている。なお、この結果は、湯流入孔80及び水流入孔82の水圧が共に0.45MPaとされた場合の結果である。実際の使用状態では、前述した湯水圧力差が存在するため、上記データ間の差異がより一層大きくなると考えられる。
表2及び表3は、上記第1実施形態における湯側重複面積Sh及び水側重複面積Scを示す。これらの表2及び表3は、レバー前後位置を最大吐出位置としたまま、レバー左右位置を水側限界MRから湯側限界MLまで変化させた場合の、湯側重複面積Sh及び水側重複面積Scを示している。更に、表2及び表3では、合計面積Sが示されている。合計面積Sは、湯側重複面積Shと水側重複面積Scとの合計である。
表2は、レバー左右位置が−50°から0°までの場合における値を示す。図3は、レバー左右位置が0°から50°までの場合における値を示す。レバー左右位置は、正面位置C1からの角度で示されており、正面位置C1よりも湯側の場合にマイナスの値とされ、正面位置C1よりも水側の場合にプラスの値とされ、正面位置C1ではレバー左右位置が0°である。
図24は、第1実施形態における湯側重複面積Sh及び水側重複面積Scを示すグラフである。図24は、表2及び表3に示されたデータをグラフ化したものである。図24の棒グラフにおいて、水側重複面積Scが黒塗りで示されており、湯側重複面積Shはハッチングで示されている。
図24の実施形態では、0°のレバ−左右位置は、水領域RT1である。−5°のレバ−左右位置は、水領域RT1である。−10°のレバ−左右位置は、湯水混合領域RT2である。−15°のレバ−左右位置は、湯水混合領域RT2である。−20°のレバ−左右位置は、湯水混合領域RT2である。合計面積Sが最大となるのは、水領域RT1である。0°以上のレバー左右位置は、水領域RT1である。レバ−左右位置が5°のとき、合計面積Sは最大ではない。レバ−左右位置が10°のとき、合計面積Sは最大ではない。レバ−左右位置が15°のとき、合計面積Sは最大ではない。レバ−左右位置が20°のとき、合計面積Sは最大である。レバ−左右位置が25°のとき、合計面積Sは最大である。
図24が示すように、この第1実施形態では、湯水混合領域の面積Sが、正面位置C1の近傍において抑制されている。前述の通り、重複面積Shが小さい局面では、湯と水との流れのバランスが悪くなり、水流の乱れ及びキャビテーションが生じやすい。しかし、本実施形態では、正面位置C1近傍の湯水混合領域において面積Sが抑制されているので、流量が抑制される。この結果、水流の乱れ及びキャビテーションが低減し、異音の発生が抑制されている。
また、この第1実施形態では、正面位置C1近傍の湯水混合領域において水側重複面積Scが抑制されているため、湯と水との流れのバランスが改善される。このため、湯水圧力差がある場合でも、湯の混合割合を容易に高めることができ、湯温が上昇しやすい。
本願において、最大値Smax及び最小値Sminが定義される。レバー前後位置を最大吐出位置としたまま、レバー左右位置を水側限界MRから湯側限界MLまで変化させる場合において、合計面積Sの最大値がSmaxであり、合計面積Sの最小値がSminである。
本願において、合計面積Sが最小値Sminとなるときの水側重複面積ScがSc1と定義される。合計面積Sが最小値Sminとなるときの湯側重複面積ShがSh1と定義される。
第1実施形態では、合計面積Sが最小値Sminとなるときのレバー左右位置が、湯水混合領域である(図24参照)。前述の通り、湯水混合領域であって湯側重複面積Shが小さい局面では、水流の乱れ等に起因して、異音が生じやすい。合計面積Sが最小値Sminとなるときのレバー左右位置を湯水混合領域に設定することで、異音が起こりやすい局面における流量を抑制することができる。
第1実施形態では、合計面積Sが最小値Sminとなるときのレバー左右位置は、−10°である。このレバー左右位置は、湯水混合領域にある。
異音が発生しやすい局面において流量を抑制する観点から、Smin/Smaxは、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が更に好ましい。流量の確保の観点から、Smin/Smaxは、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
異音が発生しやすい局面において水流入孔82からの流量を抑制することで、湯と水とのバランスが改善される。湯水圧力差を考慮すると、水側の流量を抑制するのが効果的である。水側の流量の抑制により、異音が抑制されるとともに、水温の上昇が容易となる。これらの観点から、Sc1/Smaxは、0.50以下が好ましく、0.47以下がより好ましく、0.44以下が更に好ましい。流量の確保の観点から、Sc1/Smaxは、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。
湯水混合領域のなかでも、特に異音が生じやすいのは、Sh/Smaxが0.50以下の局面であることが判った。湯水圧力差は通常3〜4倍であることから、Sh/Smaxが0.50以下の局面では、湯の流れが少なく、乱流が生じやすい。乱流を抑制する観点から、Sh/Smaxが0.50であるときのレバー左右位置が位置Xとされるとき、次の規定が好ましい。すなわち、レバー左右位置が前記境界位置K1(図23参照)から前記位置Xまでの全範囲において、S/Smaxが、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が更に好ましい。なお、ここでの合計面積Sは、レバー前後位置が最大吐出位置である場合の合計面積である。
流量の確保の観点から、次の規定が好ましい。すなわち、レバー左右位置が前記境界位置K1から前記位置Xまでの全範囲において、S/Smaxは、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。なお、ここでの合計面積Sは、レバー前後位置が最大吐出位置である場合の合計面積である。
湯水混合領域であって且つ湯の混合割合が少ない場合に、乱流が生じやすい。この観点から、レバー左右位置が−20°以上−5°以下の範囲において流量を抑制するのが好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−5°のときの合計面積SがS5とされる。異音を抑制する観点から、S5/Smaxは、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が更に好ましい。流量の確保の観点から、S5/Smaxは、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−10°のときの合計面積SがS10とされる。異音を抑制する観点から、S10/Smaxは、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が更に好ましい。流量の確保の観点から、S10/Smaxは、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−15°のときの合計面積SがS15とされる。異音を抑制する観点から、S15/Smaxは、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が更に好ましい。流量の確保の観点から、S15/Smaxは、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−20°のときの合計面積SがS20とされる。異音を抑制する観点から、S20/Smaxは、0.70以下が好ましく、0.62以下がより好ましく、0.58以下が更に好ましい。流量の確保の観点から、S20/Smaxは、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。
乱流を抑制する観点から、Sc1/Sh1は、5.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下が更に好ましい。適切な水温の観点から、Sc1/Sh1は、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−10°のときの湯側重複面積ShがSh10とされる。レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−10°のときの水側重複面積ScがSc10とされる。乱流を抑制する観点から、Sc10/Sh10は、5.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下が更に好ましい。適切な水温の観点から、Sc10/Sh10は、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−15°のときの湯側重複面積ShがSh15とされる。レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−15°のときの水側重複面積ScがSc15とされる。乱流を抑制する観点から、Sc15/Sh15は、2.4以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.6以下が更に好ましい。適切な水温の観点から、Sc15/Sh15は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましい。
レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−20°のときの湯側重複面積ShがSh20とされる。レバー前後位置が最大吐出位置であり、且つレバー左右位置が−20°のときの水側重複面積ScがSc20とされる。乱流を抑制する観点から、Sc20/Sh20は、1.1以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。適切な水温の観点から、Sc20/Sh20は、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。
上述した各実施形態では、流入孔の上開口線(上開口線80a及び上開口線82a)が、縦中心線L1に対して非対称である。しかし、この構成に限定されない。流入孔の上開口線(上開口線80a及び上開口線82a)が、縦中心線L1に対して対称であってもよい。したがって例えば、上記参考例は、本発明からは必ずしも排除されない。
流入孔の上開口線が左右対称であっても、異音が発生しやすい上記局面において流量を低下させることは可能である。例えば、当該対称性を維持しつつ孔間部B1を広くすることができる。また、流量は、上開口線の(80a、82a)の形態のみで決まるものではない。湯流入孔80及び水流入孔82の側面の形状や下開口線80b、82b等によっても、異音が発生しやすい上記局面において流量を制御することは可能である。そのように流量が制御された構成も、本発明に含まれうる。
上記レバー軸の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。水による腐食を抑制する観点から、ステンレス合金及び樹脂が好ましい。上記実施形態では、ステンレス合金が用いられた。
可動弁体の上側部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。不快音回避の観点から、上側部材の材質としては、樹脂が好ましい。また、この上側部材を樹脂とすることで、可動弁体全体としての製造コストが抑制される。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
可動弁体の下側部材の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。固定弁体との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。
固定弁体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。可動弁体(下側部材)との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。
パッキン及びOリングの材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。柔軟性及び伸縮性により、シール性が高まる。また、伸縮性により、組立性が向上し、製造誤差(寸法誤差等)が緩和されうる。これらの観点から、ゴム材が好ましい。上記実施形態では、ゴム材が用いられた。
ベース体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。不快音回避及び強度の観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
上記の各部材の材質として樹脂が用いられる場合、POM樹脂及びPPS樹脂が好ましい。POM樹脂は、長時間の使用、及び広い温度範囲での使用において、機械的特性(引張強度等)の経時変化が少ない。また、POM樹脂は、繰り返しの応力負荷に対する耐疲労性に優れ、摺動性も良好である。更にPOM樹脂では、吸水による寸法変化が小さい。PPS樹脂は、強度及び剛性に優れ、耐摩耗性にも優れる。更にPPS樹脂は、成形時の収縮率が小さく、高い寸法精度を達成しうる。これらの特性を更に高めるために、上記樹脂は、ガラス繊維等の短繊維で強化されるのも好ましい。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
前記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。