以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。本体12の一部は、外カバー13で覆われている。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24では、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
ハンドル14の上下動により、吐出量が調整される(図3の矢印M参照)。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の旋回により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の旋回により、吐水の温度調整が可能である。
図4は、図2のF4−F4線に沿った断面図である。湯水混合栓10は、その内部に、レバー組立体40を有する。レバー組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。ハンドル14は、ネジ30によって、レバー46に固定されている。
図5は、レバー組立体40の斜視図である。図6は、レバー軸に対して垂直な断面に沿ったレバー組立体40の断面図である。図7は、レバー軸に沿ったレバー組立体40の断面図である。図8は、レバー組立体40の分解斜視図である。レバー組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、レバー組立体40は交換可能である。
図8等が示すように、レバー組立体40は、ハウジング42、回動体44、レバー46、レバー軸48、旋回クリック用弾性部材50、旋回クリック用球体52、軸保持体54、前後クリック用球体56、前後クリック用弾性部材58、可動弁体60、固定弁体62、パッキン64、パッキン65、Oリング66及びベース体68を有する。
ベース体68は、湯導入口70、水導入口72及び吐出口74を有する。ベース体68の下部には、これら湯導入口70、水導入口72及び吐出口74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
固定弁体62は、ベース体68の上側に固定される。ベース体68には、固定弁体62を固定するための係合凸部76と、ハウジング42を固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
固定弁体62は、湯用弁孔80、水用弁孔82及び混合水用弁孔84を有する。湯用弁孔80は、ベース体68の湯導入口70に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。水用弁孔82は、ベース体68の水導入口72に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。混合水用弁孔84は、ベース体68の吐出口74に接続されている。パッキン65により、この接続の水密状態が保持されている。
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体成形されていてもよい。
図8では示されていないが、下側部材88の下面には、流路形成凹部94が設けられている(図6及び図7参照)。なお、下側部材88の上面には、レバー46の下端95との干渉を避けるための凹部96が設けられている(図8参照)。
固定弁体62の上面には、平滑面PL1が設けられている(図8参照)。上記孔82、84及び86が存在していない部分が、平滑面PL1である。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、平滑面PL2が設けられている。流路形成凹部94が形成されていない部分に、平滑面PL2が設けられている。平滑面PL1と平滑面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
なお、図8が示すように、パッキン64はパイプ状であるが、図7においては、断面位置の関係で、パッキン64が中実であるかのように図示されている。また、図4及び図6では、レバー軸48及び弾性部材50の記載が省略されている。
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合凹部98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合凹部98に挿入されている。レバー46の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。
上側部材86の上面には、回動体44の裏面と係合しうる係合凸部99が設けられている。この係合凸部99の上面に、弾性部材配置部101が設けられている。この弾性部材配置部101は、前後クリック用弾性部材58と略同一形状の凹部である。この弾性部材配置部101に、弾性部材58(板バネ)が収容されている。
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている。レバー軸48はパイプ状であり、中空部を有する。このレバー軸48の内部に、旋回クリック用弾性部材50が挿通されている。弾性部材50はコイルバネである。レバー軸48の長手方向長さと、弾性部材50の長手方向長さL1とは、略同一である。レバー軸48の両端のそれぞれに、旋回クリック用球体52が配置されている。レバー軸48の中空部の開口部に、球体52が配置されている。同時に、弾性部材50の両端のそれぞれに、球体52が配置されている。なお、弾性部材50の長手方向長さL1は、レバー組立体が組み立てされた状態での弾性部材50の両端部間の長手方向長さであり、後述の弾性部材200の長手方向長さL2についても同様である。弾性部材50の自然長は、長さL1よりも長い。弾性部材200の自然長は、長さL2よりも長い。長さL1及び長さL2については、後述される。
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、球体用貫通孔110を有する。この貫通孔110は長孔である。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。
上部104は、軸保持体54をスライド挿入するための挿入部112と、スライド溝113とを有する。挿入部112は、上部104の側面の、対向する2箇所の位置に設けられている。
レバー46はレバー挿入孔106に挿入されると、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置される。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48及び弾性部材50が挿入される。この挿入により、レバー46が、回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の回動(前後回動)を許容しうるように設定されている。なお本願では、レバー軸48を回転軸とするレバー46の回動が、「前後回動」とも称される。
ハウジング42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、ハウジング42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、ベース体68の係合凸部77と係合している。この係合により、ハウジング42は、ベース体68に固定されている。
回動体44の上部104の円周面部の外径は、小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面105と、小径円筒部120の内周面121とが摺動する。なお、軸保持体54が挿入部112に嵌められると、この軸保持体54の外面は、上部104の円周面部と略同一の円周面を形成する。よって軸保持体54は、回動体44の回転を阻害しない。
大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
[湯水の流れ]
湯は、湯導入管18から、湯導入口70を経由して、湯用弁孔80に至る。水は、水導入管20から、水導入口72を経由して、水用弁孔82に至る。
湯用弁孔80に到達した湯は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、流路形成凹部94の開口と湯用弁孔80との重複部Hにより生ずる。可動弁体60の摺動により、重複部Hの面積は変化する。重複部Hが存在しない場合、湯は流路形成凹部94に流入しない。重複部Hが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれていることを意味する。
水用弁孔82に到達した水は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、流路形成凹部94の開口と水用弁孔82との重複部Cにより生ずる。可動弁体60の摺動により、重複部Cの面積は変化する。重複部Cが存在しない場合、水は流路形成凹部94に流入しない。重複部Cが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。
流路形成凹部94に到達した湯及び/又は水は、混合水用弁孔84、吐出口74及び吐出管22を経由して、吐出部16に至る。
湯と水との混合割合は、上記重複部Hと上記重複部Cとの面積比R1によって決まる。ハンドル14の旋回によって、レバー46を介して可動弁体60が回転する。この可動弁体60の回転によって、面積比R1が変化する。この変化によって、水温が調整される。
吐出量は、上記重複部Hと上記重複部Cとの面積合計Saによって決まる。ハンドル14の上下動によって、レバー46が前後回動し、可動弁体60が直線的に移動する。この可動弁体60の移動によって、面積合計Saが変化する。この変化によって、吐出量が調整される。面積合計Saがゼロである場合、吐出がストップする。面積合計Saがゼロである場合とは、平滑面PL2によって湯用弁孔80及び水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。
図9(a)から(h)は、軸保持体54を示す。図9(a)は、上面図である。図9(b)は、内側から見た平面図である。図9(c)は、側面図である。図9(d)は、外側から見た平面図である。図9(e)は、底面図である。図9(f)は、図9(d)のf−f線に沿った断面図である。図9(g)は、図9(d)のg−g線に沿った断面図である。図9(h)は斜視図である。
軸保持体54は、レバー軸保持部134、球保持部136、レール138、球突出用開口140、及び切り欠き142を有する。レール138がスライド溝113に挿入されることで、軸保持体54が回動体44の挿入部112に取り付けられる。軸保持体54が挿入部112に取り付けられた状態が、取付状態とも称される。この取付状態において、レバー軸保持部134は、レバー軸48の端部を保持する。この取付状態において、球保持部136は、球体52を保持する。球体52は、凸部170(後述)との係合の有無に関わらず、弾性部材50によって常に付勢されている。球体52は、弾性部材50によって外側に押圧されている。球体52は、弾性部材50によって球保持部136に押しつけられている。図9(f)及び図9(g)が示すように、球体52の一部は、開口140から突出している。この突出が、旋回クリック機構の発現を可能とする。開口140の直径は、球体52よりも小さくされる。また、開口140の直径は、旋回クリック機構の発現が可能となるような球体52の突出量を考慮して、設定される。
軸保持体54は用いられなくても良い。軸保持体54に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。また、軸保持体54が1つであってもよい。即ち、2つの軸保持体54のうちの一方に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。ただし、軸保持体54を設けることで、回動体44へのレバー46の組み付けが容易となる。この組み付けは、次の工程を含む。
(工程a):弾性部材50が挿入されたレバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入する。又は、レバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入し、このレバー軸48に弾性部材50を挿入する。
(工程b):上記工程aの後、レバー軸48(弾性部材50)の両端のそれぞれに球体52を配置する。
(工程c):上記工程bの後、2つの軸保持体54を挿入部112のそれぞれに挿入する。
上記工程bにおいては、例えばグリースを用いて、2つの球体52を、弾性部材50の両端に仮止めする。その後は、上記工程cがなされればよい。この組み付けでは、上記工程bが示すように、弾性部材50の両端に直接球体52を配置することができる。 軸保持体54が用いられることで、組立の容易性が達成されている。
前述したように、軸保持体54は切り欠き142を有する。この切り欠き142により、上記工程cにおける球体52の脱落が抑制される。即ち、工程bにおける球体52の配置が、工程cにおいて維持されやすい。よって、組立の容易性が更に向上する。
図10は、ハウジング42を下から見た底面図である。よって、この図10には、連結部124の下面125が図示されている。連結部124の下面125は、クリック発現部146と、クリック無発現部148とを有する。更に、下面125は、第1ストッパー150と第2ストッパー152とを有する。
回動体44の基部102は、連結部124の下面125に当接している。回動体44が回転すると、基部102が下面125を摺動する。第1ストッパー150及び第2ストッパー152は、回動体44の回転範囲を規制している。
図11は、図10のF11−F11線に沿った断面図である。図11は、クリック機構発現部146の断面図である。なお図11は、通常の使用状態(図8)とは上下が逆である。即ち図11では、連結部124の下面125が上側とされている。
クリック機構発現部146は、複数の溝154を有する。クリック機構発現部146は、複数の突条156を有する。これらの溝154及び突条156は、円周に沿って延在している。溝154は、凹部の一例である。突条156は、凸部の一例である。
図12は、前後クリック用弾性部材58の斜視図である。この弾性部材58は、板バネである。図13は、前後クリック用球体56が存在している位置におけるレバー組立体40の断面図である。この弾性部材58は、上側部材86の弾性部材配置部101に配置されている。その弾性部材58の中央部の上側に、前後クリック用球体56が載せられている。球体56は、突条156との係合により、下側に変位しうる。この変位が生じた場合、球体56は、弾性部材58によって上側に付勢される。弾性部材配置部101は、この弾性部材58の中央部が下方に弾性変形することを許容するスペース160を有する。
図14(a)は、上側部材86の平面図である。図14(b)は、上側部材86に弾性部材58が載置された状態の平面図である。図14(c)は、上側部材86に弾性部材58及び前後クリック用球体56が載置された状態の平面図である。図14(d)は、図14(c)の構成に回動体44が載置された状態の平面図である。図14(a)が示すように、弾性部材配置部101は、前述したスペース160と、弾性部材載置面162と、球保持部164とを有する。弾性部材載置面162は、弾性部材58の両端部を下方から支持する。載置面162の周囲には段差があるので、弾性部材58の位置ズレは生じない。球体56は、弾性部材58に載せられつつ、球保持部164によって保持されている。この球保持部164により、球体56の位置ズレは生じない。図13及び図14(d)が示すように、回動体44が載せられた状態において、球体56は、回動体44の貫通孔110から、上方に突出している。即ち、球体56の一部は、回動体44の上面よりも突出した上方突出部である。この上方突出部が連結部124の下面125に当接する。この下面125は、この上方突出部と当接しうる当接面である。この上方に突出した球体56がクリック機構発現部146上を移動することでクリック機構が発現する。
なお、図14(a)から(c)には、長孔状等の多数の凹部166が描かれている。これら凹部166は、図8において記載が省略されている。これら凹部166は、可動弁体60の軽量化に寄与する。
図15は、レバー軸48の中心軸線に沿ったレバー組立体40の断面図である。小径円筒部120の内周面121には、球体摺動面168が設けられている。この球体摺動面168は、球体52と当接しうる当接面である。球体摺動面168が設けられている周方向範囲は、レバー46の旋回可能範囲に対応している。この球体摺動面168には、クリック発現用の凸部170が設けられている。旋回クリック用球体52は、弾性部材50によって、常に、球体摺動面168に押しつけられている。
[レバーの前後回動に伴う各部の動き]
前述したように、吐出量の調整では、ハンドル14が上下に動かされる(図3の矢印M参照)。このハンドル14の動きにより、レバー46の前後回動が生じる。この前後回動に連動して、レバー46の下端95が回動する。この下端95とレバー係合凹部98との係合により、可動弁体60が動かされる。可動弁体60は、固定弁体62の上を直線に沿って摺動する。この摺動の間、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。同時に可動弁体60は、回動体44に対しても摺動する。
可動弁体60の移動方向は、回動体44によって規制されている。この規制により、レバーの前後回動のみによっては湯水の混合割合が変化しない。本実施形態では、複数の移動方向規制機構が採用されている。
第1の移動方向規制機構は、上側部材86の係合凸部99と、回動体44のスライド溝との係合である。詳細な図示は省略されているが、回動体44の裏面には、上側部材86の係合凸部99をスライド移動させるためのスライド溝Gvが設けられている(図13参照)。このスライド移動の方向は、係合凸部99の側面174(図14(a))に沿った方向D1である。係合凸部99は、弾性部材配置部101、弾性部材載置面162、球保持部164等を有しつつ、移動方向の規制にも寄与している。また、上方に突出した係合凸部99の上に弾性部材58及び球体56が載置されることで、弾性部材58及び球体56の位置が高くなる。よって、球体56を基部102の上面よりも上側に突出させるのが容易とされている。このように係合凸部99は、移動方向の規制及び前後クリック機構の発現に寄与している。
なお、前述した貫通孔110は、上記スライド溝Gvの底面に設けられている。即ちスライド溝Gvの形成された部分は、そのスライド溝Gvの深さの分だけ薄くされており、この薄肉部分に貫通孔110が設けられている。よって、貫通孔110の上下方向長さが短くされており、上記上側突出部の形成が容易とされている。
第2の移動方向規制機構は、上側部材86の側面に設けられた平面180(図14(a)及び図8参照)と、回動体44の基部102に設けられた下方凸部182(図8参照)との係合である。この係合による移動方向も、前述した方向D1である。平面180と、前述した側面174とは、平行である。
このように、同一の移動方向D1に対して複数の移動方向規制機構が設けられることで、移動方向がより確実に制御されている。
なお、前述したように貫通孔110は長孔であるが、この長孔の長手方向は、方向D1である(図14(d)参照)。貫通孔110の幅及び深さは一定である。この貫通孔110内において、球体56は方向D1(貫通孔110の長手方向)に沿って動く。この動きによって球体56の位置が変化しても、球体56の突出高さは変わらない。
[レバーの旋回に伴う各部の動き]
前述したように、温度の調整では、ハンドル14が旋回される(後述の図19参照)。このハンドル14の旋回により、レバー46も旋回する。レバー46の下端95とレバー係合凹部98との係合により、可動弁体60が回転する。可動弁体60は、固定弁体62に対して回転する。この回転中において、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。この回転により、上記面積比R1が変化し、吐水の温度が調整される。
レバー旋回の角度範囲は制約されている。前述したように、連結部124の下面125には、第1ストッパー150及び第2ストッパー152が設けられている(図10参照)。一方、回動体44の基部102は、半径方向外側に突出する外側延在部109を有する(図14(d)及び図8参照)。この外側延在部109には、前述した貫通孔110が設けられている。レバー旋回に伴い、この外側延在部109は、第1ストッパー150から第2ストッパー152までの範囲で円周方向に移動する。即ち、外側延在部109は、周位置Rx1からRy1までの範囲で円周方向に移動する(図10参照)。この移動において、この外側延在部109の周方向中心位置の移動範囲は、周位置Rx2からRy2までである。この周位置Rx2からRy2までの角度範囲Rfが、レバー46の旋回角度範囲である。角度範囲Rfは、前後クリック用球体56の移動範囲でもある。
このように、外側延在部109とストッパー150、152との係合が、第1の旋回範囲規制機構である。更に、第2の旋回範囲規制機構が設けられている。図8及び図14(d)が示すように、回動体44の基部102には、第2外側延在部111が設けられている。この第2外側延在部111は、周位置Rx3からRy3までの範囲で円周方向に移動する(図10参照)。
これら2つの旋回範囲規制機構は連動している。外側延在部109が第1ストッパー150に当接しているとき、第2外側延在部111は第2ストッパー152に当接している。外側延在部109が第2ストッパー152に当接しているとき、第2外側延在部111は第1ストッパー150に当接している。2つの旋回範囲規制機構により、レバー46を限界まで旋回したときの衝撃力が分散し、耐久性が向上する。
以上のような構造のレバー組立体40は、旋回クリック機構と、前後クリック機構とを有する。旋回クリック機構とは、レバー46の旋回に伴うクリック感を発現する機構である。前後クリック機構とは、レバー46の前後回動に伴うクリック感を発現する機構である。
[旋回操作でのクリック感A]
旋回操作でのクリック感は、旋回クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単にクリック感Aとも称される。図15から17が示すように、このクリック感Aは、旋回クリック用球体52と凸部170との係合又は係合解除によって生じる。図16は、図15と同様の断面図であり、球体52が凸部170と係合している状態を示す。図17は、図15と同様の断面図であり、球体52と凸部170との係合が解除された状態を示す。レバー46の旋回により、図15の状態から、図16の係合状態に移行し、更に図17の係合解除状態に移行する。図16に示される係合状態によって弾性部材50が圧縮されるとともに、旋回時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、クリック感Aの一例である。また、係合解除の瞬間に、振動が発生する。この振動は、典型的なクリック感Aを生じさせる。また、この係合解除の瞬間に、音が発生する。この音に起因する感覚も、クリック感Aの一例である。
[前後回動操作でのクリック感B]
前後回動操作でのクリック感は、前後クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単にクリック感Bとも称される。図13は、球体56と溝154とが係合した状態を示す。このクリックB感は、球体56と溝154との係合又は係合解除によって生じる。また、このクリック感Bは、球体56と突条156との係合又は係合解除によって生じる。レバー46の前後回動により、球体56はクリック機構発現部146上を半径方向に移動する。この移動により、球体56と第1の溝154との係合が解除され、更に移動すると、球体56と第2の溝154とが係合する。これらの係合により、振動が生じうる。この振動がクリック感Bを生じさせる。これらの係合により、レバー前後回動時の抵抗力が変化する。この抵抗力の変化に起因する感覚も、クリック感Bの一例である。また、この係合の瞬間に、音が発生する。この音に起因する感覚も、クリック感Bの一例である。また、球体56と突条156との係合により、レバー前後回動時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、クリック感Bの一例である。
図18は、図15から17に示される実施形態の変形例である。この実施形態では、弾性部材50に代えて、2つの弾性部材200が用いられている。これらの弾性部材200は、コイルバネである。コイルバネ200の長手方向長さは、コイルバネ50の長手方向長さよりも短い。更に、図18の実施形態は、中間部材202を有する。中間部材202は、円柱状の部材である。中間部材202の材質は、ステンレス鋼である。中間部材202は、スペーサーの役割を果たす。中間部材202により、2つのコイルバネ200の間隔が設定される。中間部材202により、コイルバネ200の圧縮度合いが調整されうる。
中間部材202は、レバー軸48に固定されていない。中間部材202は、レバー軸48に固定されていてもよい。
図19は、ハンドル14の旋回について説明するための平面図である。ハンドル14の旋回可能範囲RFは、前述した図10の角度範囲Rfに対応している。範囲RFの角度θfは、範囲Rfの角度θfに等しい。図19が示すように、この旋回可能範囲RFの中心周位置C1において、ハンドル14は正面を向く。この中心周位置C1は、図10の中心周位置c1に対応している。図19が示すように、ハンドル14の旋回範囲は、正面位置に対して左右対称である。
図19が示すように、角度範囲RT1は、使用者から見て、中心周位置C1よりも右側である。この角度範囲RT1は、図10の角度範囲Rt1に対応している。範囲RT1の角度θ1は、範囲Rt1の角度θ1に等しい。よって角度範囲RT1は、クリック無発現部148の配置によって自在に設定される。ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、水の割合が100%である。本実施形態では、ハンドル14が正面よりも右側にあるとき、湯が混合されない。
図19が示すように、角度範囲RT2は、使用者から見て、中心周位置C1よりも左側である。この角度範囲RT2は、図10の角度範囲Rt2に対応している。範囲RT2の角度θ2は、範囲Rt2の角度θ2に等しい。よって角度範囲RT2は、クリック機構発現部146の配置によって自在に設定される。ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、湯と水とが混合されるか、又は、水が無混合(湯が100%)である。即ち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、水の割合が0%以上100%未満である。
この図19の実施形態では、ハンドル14の旋回可能範囲RFが正面位置に対して左右対称とされたが、左右非対称とされてもよい。例えば、角度範囲RT2の角度θ2が60度とされ、角度範囲RT1の角度θ1が40度とされてもよい。
角度範囲RT2が小さすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が狭くなりすぎて、湯水混合比率の変化が急激になりすぎる。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、40度以上が好ましく、50度以上がより好ましく、55度以上が特に好ましい。角度範囲RT2が大きすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、100度以下が好ましく、90度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
角度範囲RT1の角度θ1は0度とすることもできる。しかし、通常の湯水混合栓では、角度θ1が0度とはされていないため、θ1を0度とすると、使用者がハンドル14を中心周位置C1よりも右側に過度に操作してしまうことがある。この過度な操作の繰り返しは、湯水混合栓に過度な負担を与え、湯水混合栓の耐久性に悪影響を与える場合がある。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、10度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上が特に好ましい。角度θ1が過大である場合、水の割合が100%である範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、70度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、50度以下が特に好ましい。
角度範囲RT1と角度範囲RT2との角度比(θ1/θ2)が小さすぎると、角度θ1が小さくなりすぎたり、角度θ2が大きくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上が特に好ましい。また、角度比(θ1/θ2)が大きすぎると、角度θ1が大きくなりすぎたり、角度θ2が小さくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
図19の実施形態では、角度範囲RT1が、使用者から見て中心周位置C1よりも右側とされており、中心周位置C1よりも右側で水の割合が100%とされている。更に、角度範囲RT2が、使用者から見て中心周位置C1よりも左側とされており、中心周位置C1よりも左側で水の割合が0%以上100%未満とされている。これらの構成が逆にされてもよい。即ち、角度範囲RT1が、使用者から見て中心周位置C1よりも左側とされており、中心周位置C1よりも左側で水の割合が100%とされ、且つ、角度範囲RT2が、使用者から見て中心周位置C1よりも右側とされており、中心周位置C1よりも右側で水の割合が0%以上100%未満とすることもできる。この場合でも、角度θ1、角度θ2及び/又は角度比(θ1/θ2)に関する前述の数値規定の全てが適用されうる。
ハンドル14の周位置は、レバー46の周位置(レバー周位置)と同じである。角度範囲RT1は、湯が混合されないレバー周位置である。角度範囲RT2は、湯が混合されるレバー周位置である。「湯が混合される」とは、湯が100%である場合を含む。
図10が示すように、角度範囲Rt2の全域に、クリック機構発現部146が設けられている。よって、レバー周位置が角度範囲RT2にあるとき、前後クリック機構が働く。一方、角度範囲Rt1の全域には、クリック機構発現部146が設けられていない。角度範囲Rt1の全域は、クリック無発現部148である。よって、レバー周位置が角度範囲RT1にあるとき、前後クリック機構は働かない。
従って、本実施形態では、湯が混合されないレバー周位置では、前後回動操作においてクリック感Bが発現しない。また、湯が混合されるレバー周位置において、前後回動操作でクリック感Bが発現する。よって、前後回動操作を行えば、クリック感Bの有無によって、湯が混合されているか否かが判別される。
[作用効果]
上記実施形態では、球体52及び球体56が用いられている。これらの球体52、56は、回転可能な状態で支持されている。これらの球体52、56が回転することで、摩耗及び傷が抑制される。よって、使用に伴う経時劣化が抑制され、クリック機構の耐久性が高まる。また、摩耗及び傷が抑制されるので、使用に伴うクリック感A、Bの変動が少ない。信頼性の高いクリック機構が実現される。
旋回クリック機構では、弾性部材として、コイルバネ50、200が用いられている。繰り返しの変形によっても、コイルバネの弾性係数は変化しにくい。コイルバネの使用により、使用に伴う経時劣化が抑制される。よって、クリック機構の耐久性が高まる。また、使用に伴うクリック感Aの変動は少ない。信頼性の高いクリック機構が実現される。
また、コイルバネ50、200は、円滑に変形されやすく、また、大きな変形量が確保されうる。このため、心地よく且つスムースなクリック感Aが実現される。
旋回クリック機構では、球体52と、この球体52を支持するコイルバネ50、200とが用いられているので、部材の寸法誤差又は組立誤差によって生じるクリック感Aのバラツキが抑制される。
前後回動クリック機構では、球体56と、この球体56を支持するバネ部材とが用いられている。よって、部材の寸法誤差又は組立誤差によって生じうるクリック感Bのバラツキは、抑制される。また、板バネ58に球体56を載せたシンプルな構成であるため、製造誤差及び使用中の不具合抑制され、クリック感Bのバラツキが抑制される。
上述の通り、可動弁体60(下側部材88)の下面には平滑面PL2が形成され、固定弁体62の上面には平滑面PL1が形成されている。これら平滑な平面同士の面接触により、水漏れが防止されている。これら平滑な平面同士が面接触しているため、面圧が分散されやすく、摺動による「摩耗」は生じにくい。仮に、この摩耗が生じた場合、摩耗量の分だけ、可動弁体60の位置が下がる。即ち、この摩耗が生じた場合、可動弁体60(上側部材86)の上に配置されている板バネ58及び球体56が、ハウジング42に対して、相対的に下方へと移動する。この移動により、球体56とハウジング42との隙間距離が変化する。この隙間距離の変化により、クリック感Bは変化する。しかし実際には上記の通り、摩耗が生じにくいため、球体56の上下方向位置の変位は起こりにくい。よって、使用に伴うクリック感Bの変動は少ない(効果a)。
上述の通り、可動弁体60と固定弁体62との間では、平滑な平面同士が面接触しているため、面圧が分散されやすい。よって、摺動による「偏摩耗」は生じにくい。仮に、この偏摩耗が生じた場合、可動弁体60が傾斜する。即ち、この偏摩耗が生じた場合、可動弁体60(上側部材86)の上に配置されている球体56の移動方向が傾斜する。そうすると、前後回動に伴う球体56の移動中に、球体56とハウジング42との隙間距離が変化する。この隙間距離の変化により、クリック感Bは変化する。しかし実際には上記の通り、偏摩耗が生じにくいため、球体56の移動方向の傾斜は起こりにくい。よって、使用に伴うクリック感Bの変動は少ない(効果b)。
これらの効果a及び効果bが実現したのは、可動弁体60の上側に弾性部材58及び球体56を配置し、この球体56を、ハウジング42の下面に当接させたからである。本実施形態では、可動弁体60と固定弁体62とを水密状態で隙間無く面接触させるという構成を利用して、クリック感Bの変動を抑制することができる。
上述した通り、上記実施形態では、レバー周位置の相違に起因して、前後回動操作における操作感が相違する。上記実施形態では、この操作感の相違が、クリック感Bの有無とされている。クリック感Bの有無は、判別しやすい。上記実施形態では、クリック感Bの有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。
湯が混合されているか否かは、吐水の温度のみからは判別しにくいことがある。例えば、湯の混合割合が少ない場合、水が100%の場合と比較して、温度がそれほど高くならない。よってこの場合、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、湯の混合割合が高い場合であっても、給湯器等からの加熱装置で加温された湯が蛇口に至るまでの間、吐水の温度が上がらない場合がある。この場合も、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、ハンドル14の周位置によっても、湯が混合されているか否かが正確に判別できない場合がある。このような場合、使用者の意図に反して、湯が混合されることがある。即ち使用者は湯が混合されていない(水が100%の)吐水を使用しているつもりであるにも関わらず、実際には湯が混合されていることがある。この場合、エネルギーが無駄となる。上記実施形態では、クリック感Bの有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。よって、エネルギーの無駄が抑制される。
このように、上記実施形態では、レバー周位置の相違に起因して、レバーの回動操作における操作感を相違させることができる(効果c)。この効果cが生じた理由は、前後回動クリック機構を、部材Xと固定部材Zとの係合によって実現したからである。
ここで、部材X、Y及びZの分類が説明される。レバー組立体40を構成する部材は、次の3つに分類されうる。
(1)部材X:レバーの旋回操作に連動して回転し、且つ、レバーの前後回動操作に連動して移動する部材。
(2)部材Y:レバーの旋回操作に連動して旋回するが、レバーの前後回動操作によっては移動しない部材。
(3)固定部材Z:レバーのいかなる操作に対しても動かない部材。
上記(1)の部材Xとして、可動弁体60(上側部材86及び下側部材88)が挙げられる。上記(2)の部材Yとして、回動体44が挙げられる。上記(3)の固定部材Zとして、ハウジング42、固定弁体62及びベース体68が挙げられる。
レバー46の前後回動を可動弁体60の直線移動に変えるため、回動体44は、レバー46の前後回動の際に動いてはならない。一方、レバー46の旋回を可動弁体60に伝達するため、回動体44は、レバー46の旋回によって回転しなければならない。したがって、部材Yとしての回動体44は必須である。したがって、この回動体44(部材Y)が、部材X(可動弁体60)の上側に存在することになる。即ち、回動体44(部材Y)が、部材X(可動弁体60)と部材Z(ハウジング42)の下面との間に介在することになる。よって部材Xと部材Zとを係合させることは難しい。このため、従来技術では、前後回動クリック機構は、レバーと回動体(部材Y)との係合により達成されていた(前述の、特許第2779792号公報参照)。この場合、レバー46を旋回すると、回動体44も一緒に旋回する。レバー46と回動体44との相対関係は、旋回に関わらず、常に同じである。よって、前後回動に伴うクリック感は、レバー周位置に関わらず、一定である。従来技術では、レバー周位置によってクリック感を相違させることはできなかった。
これに対して本実施形態では、部材Y(回動体44)の介在にも関わらず、部材X(可動弁体60)と部材Z(ハウジング42)との係合が達成された。この係合により、クリック感Bを発現するクリック機構が実現された。この構成によって、レバー周位置によってクリック感Bを相違させることが可能となり、上記効果cが達成されている。
本実施形態では、ハウジング42の下面(連結部124の下面125)の仕様を変えることによって、クリック感が生じる角度範囲は自由に設計されうる。例えば、クリック機構発現部146の位置を変えることによって、前後回動操作でのクリック感が発現するレバー周位置を自在に変更することができる(図10参照)。また、クリック感の仕様も自在に設計されうる。例えば、溝154又は突条156の数、間隔、形状、高さ等を変えることで、様々なクリック感が得られうる。クリック感の創出にハウジング42の下面を用いたことで、クリック感の設計自由度は高められている。
クリック感の有無は、使用者にとって、区別しやすい。この観点から、操作感の相違の好ましい態様は、クリック感の有無である。クリック感の有無の設定として、以下が例示される。以下の設定1は、前述した実施形態での設定である。以下では、湯と水との混合割合が百分率(%)で示される。
[設定1]:水の混合割合が100%であるレバー周位置では、クリック感Bが生じない。水の混合割合が100%未満であるレバー周位置では、クリック感Bが生じる。
[設定2]:水の混合割合が100%であるレバー周位置では、クリック感Bが生ずる。水の混合割合が100%未満であるレバー周位置では、クリック感Bが生じない。
操作感の相違として、クリック感Bの有無ではなく、クリック感Bの相違が採用されてもよい。クリック感Bの相違の設定として、以下が例示される。
[設定3]:水の混合割合が100%であるレバー周位置と、水の混合割合が100%未満であるレバー周位置とで、クリック感Bが相違する。
この設定3では、例えば、クリック感Bが2種類である。もちろん、クリック感Bが3種類以上であってもよく、その一例は次の設定4である。
[設定4]:水の混合割合が100%であるレバー周位置では第1のクリック感Bが生じ、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー周位置では第2のクリック感Bが生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー周位置では第3のクリック感Bが生じる。
上記混合割合Wa%は、例えば、人体が直接触れると危険な水温となるような割合に設定されてもよい。この場合、熱いお湯が吐出されるか否かがクリック感によって感知されうる。これは、熱いお湯による事故(やけど等)の防止に役立ちうる。
クリック感の有無と、クリック感の相違とが組み合わされてもよく、その一例は次の設定5である。
[設定5]:水の混合割合が100%であるレバー周位置ではクリック感Bが生じず、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー周位置では第1のクリック感Bが生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー周位置では第2のクリック感Bが生じる。
クリック感Bをどのように相違させるかは、限定されない。相違させうるクリック感Bの仕様として、以下が例示される。
[仕様1]:吐出ストップ位置から最大吐出位置までレバーを回動させたときのクリック感Bの発生回数N
[仕様2]:クリック感Bの発生時におけるレバーの前後回動操作の抵抗感
[仕様3]:クリック感Bの発生時における音
仕様1に関する一例では、あるレバー周位置では回数Nが3以下とされ、別のレバー周位置では回数Nが4以上とされる。仕様2に関する一例では、あるレバー周位置では上記抵抗感が比較的小さく、別のレバー周位置では上記抵抗感が比較的大きい。仕様3に関する一例は、あるレバー周位置では上記音の周波数が比較的高く、別のレバー周位置では上記音の周波数が比較的低い。
なお、仕様2の抵抗感とは、レバーを前後回動させるために必要な回転モーメントと同義である。
上記設定1から5及び上記仕様1から3は、連結部124の下面125の形状を変更するだけで容易に実現されうる。レバー組立体40では、クリック感の設計自由度が高い。
レバー周位置に起因して、クリック感以外の操作感が相違していてもよい。この操作感の一例として、クリック感Bが発生していない局面におけるレバーの前後回動操作の抵抗感が挙げられる。
繰り返しの使用により、クリック機構は繰り返し働く。クリック感が発生するときに生じうる振動は通常は微細であるが、繰り返しの使用では、この振動が、レバー組立体40に負荷を与えうる。特に、レバー軸48、軸孔100等の回動軸保持部分には負荷がかかりやすい。
図7及び図8が示すように、本実施形態では、旋回クリック機構における弾性部材(コイルバネ)50がレバー軸48の内部に配置されている。弾性部材50の長手方向はレバー軸48の長手方向に等しい。弾性部材50の伸縮方向は、レバー軸48の長手方向に沿っている。弾性部材50の中心軸線が、レバー軸48の中心軸線に等しい。これらの構成は、旋回クリックにおける振動の影響を低下させうる。この構成では、旋回クリックにおける振動が、レバー軸48に略沿って生じる。弾性部材50及び球体52に作用する力は、レバー軸48の内部において作用し、且つ、レバー軸48に沿った方向である。以上より、レバー軸48に対して垂直方向に作用する負荷は生じにくく、回動軸保持部分への負荷が少ない(効果d)。よって、繰り返しの使用によるレバー46のガタ付きが抑制され、レバー組立体40の耐久性が向上しうる。
球体52は、レバー軸48の両端部のうちの一方側のみに配置されてもよい。しかし、本実施形態では、図7及び図15が示すように、球体52は、レバー軸48(弾性部材50)の両端部に配置されている。よって、これら2つの球体52から発生する振動が互いに相殺しうる。よって、上記回動軸保持部分への負担が軽減されうる。図16が示すように、上記実施形態では、第1の球体52が凸部170と係合しているとき、第2の球体52も凸部170と係合している。この場合、弾性部材50に作用する応力が互いに相殺しうる。この構成により、上記効果dが高められている。
上記実施形態では、旋回クリック感を奏するための球体52が複数設けられているため、上記クリック感Aの設計自由度が向上する。図16のように、2つの球体52を同時に凸部170に係合させることで、クリック感を増大させることができる。2つの球体52を同時に凸部170に係合させるか、又は、1つの球体52のみを凸部170に係合させるかが、選択されうる。この選択により、クリック感の強さを設計することができる。また、例えば2回のクリック感Aを生じさせる場合、第1の球体52に1回目のクリック感Aを分担させ、第2の球体52に2回目のクリック感Aを分担させることもできる。クリック感Aの発生を2つの球体52で分担することで、球体52の耐久性が向上しうる。
弾性部材50又は弾性部材58に球体を保持させるという構成により、クリック感の設計自由度は高い。弾性部材50、58の弾性係数を変えるだけで、クリック感の調整が容易に達成されうる。
球体52,56の直径を変化させると、当接面側への球体の突出量が変化しうる。クリック機構の発現に球体52、56を利用することで、球体の直径を変えるだけでも、クリック感の変更が達成されうる。よって、クリック感の調整は容易である。
図18の実施形態では、クリック感Aの設計自由度が更に高められている。この実施形態では、コイルバネ200を変更しなくても、中間部材202の長さを変更するだけで、クリック感Aを設計することができる。したがって、クリック感Aを容易に設定することができる。中間部材202の採用により、コイルバネ200が短くされうる。この短さは、クリック感Aの設計を容易としうる。
前述したように、中間部材202はレバー軸48に固定されていない。よって、第1のコイルバネ200に作用する応力と、第2のコイルバネ200に作用する応力とが均等となるように、中間部材202は移動しうる。この移動により、第1の球体52によって奏されるクリック感Aと、第2の球体52によって奏されるクリック感Aとが均等化される。よって、クリック感Aのバラツキが抑制される。
なお、上記実施形態では、ハウジング42は全体として一体成形されている。ハウジング42は、別個に成形された部材が組み合わされていても良い。上記固定部材Zに属し、且つ、球体52又は球体56に当接しうる部材は、ハウジングに該当する。
図15において両矢印L1で示されているのは、球体52が凸部170に係合していない状態における弾性部材50の長手方向長さである。上部104の直径が小さすぎると、湯水混合栓10に必要な機能が実現できないことがある。この観点から、長さL1は、15mm以上が好ましく、17mm以上がより好ましい。また、過度に大型化された湯水混合栓10では、商品価値が低下する。この観点から、長さL1は、30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。図15の実施形態では、長さL1は19mmとされた。
図18において両矢印L2で示されているのは、球体52が凸部170に係合していない状態における弾性部材200の長手方向長さである。スムースなクリック感Aを得る観点から、上記長さL1に対する長さL2の割合は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。クリック感Aの設計を容易とする観点から、上記長さL1に対する長さL2の割合は、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下が更に好ましい。図18の実施形態では、長さL2の割合は、図15の実施形態の長さL1に対して、30%とされた。
明確なクリック感Aを得る観点から、凸部170(図15参照)の高さHaは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHaが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHaは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部170の高さHaは0.3mmとされた。
明確なクリック感Bを得る観点から、凸部156の高さHbは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHbが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHbは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部156の高さHbは0.3mmとされた。
組立容易性の観点、及び、明確なクリック感Aを得る観点から、球体52の直径Paは、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が更に好ましい。直径Paが過大である場合、レバー軸48の直径が過大となったり、レバー組立体40が過度に大型化することがある。また、この大型化を避けるために、ハウジング42等が過度に薄くされうる。これらの観点から、直径Paは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体52の直径Paは3.0mmとされた。
組立容易性の観点、及び、明確なクリック感Bを得る観点から、球体56の直径Pbは、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が更に好ましい。直径Pbが過大である場合、上側突出部の高さを確保するための貫通孔110の幅が過大となる。また、直径Pbが過大である場合、この球体56に係合しうる溝154の幅も大きくされるが、この場合、限られたスペースの下面125に、必要な数の溝154を設けることが難しくなることがある。これらの観点から、直径Pbは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体56の直径Pbは3.0mmとされた。
[材質]
ハウジングの材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。クリック機構が発現する際に発生する音は、心地よく且つ聞き取りやすいのが好ましい。ハウジングの材質は、この音に影響する。良好な音を得る観点、耐久性、耐錆性、及び衛生面を考慮すると、ハウジングの材質として、ステンレス合金及び繊維強化樹脂が好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。
回転体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、回転体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。
上記軸保持体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、軸保持体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
上記球体の材質として、樹脂及び金属が例示される。クリック機構の音及び耐久性の観点から、金属が特に好ましい。上記実施形態ではステンレス合金が用いられた。
旋回操作時のクリック機構に用いられる上記弾性部材として、ゴム及びコイルバネが例示される。繰り返しの使用による劣化を抑制する観点、及び、クリック感の調整の自由度の観点から、コイルバネが好ましい。このコイルバネの材質としては、バネ鋼材が好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材のコイルバネが用いられた。
前後回動操作時のクリック機構に用いられる上記弾性部材として、ゴム、板バネ及びコイルバネが例示される。上下方向のスペースを抑制する観点から、板バネが好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材の板バネが用いられた。
上記レバー軸の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。水による腐食を抑制する観点から、ステンレス合金及び樹脂が好ましい。上記実施形態では、ステンレス合金が用いられた。
可動弁体の上側部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。不快音回避の観点から、上側部材の材質としては、樹脂が好ましい。また、この上側部材を樹脂とすることで、可動弁体全体としての製造コストが抑制される。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
可動弁体の下側部材の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。固定弁体との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。可動弁体の下面がセラミックで構成されることで、上記効果a及び効果bは一層向上する。
固定弁体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。可動弁体(下側部材)との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。固定弁体の上面がセラミックで構成されることで、上記効果a及び効果bは一層向上する。
パッキン及びOリングの材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。伸縮性により、組立性を向上し、製造誤差(寸法誤差等)が緩和されうる。これらの観点から、ゴム材が好ましい。上記実施形態では、ゴム材が用いられた。
ベース体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。不快音回避及び強度の観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
上記の各部材の材質として樹脂が用いられる場合、POM樹脂及びPPS樹脂が好ましい。POM樹脂は、長時間の使用、及び広い温度範囲での使用において、機械的特性(引張強度等)の経時変化が少ない。また、POM樹脂は、繰り返しの応力負荷に対する耐疲労性に優れる。更にPOM樹脂では、吸水による寸法変化が小さい。PPS樹脂は、強度及び剛性に優れ、耐摩耗性にも優れる。更にPPS樹脂は、成形時の収縮率が小さく、高い寸法精度を達成しうる。これらの特性を更に高めるために、上記樹脂は、ガラス繊維等の短繊維で強化されるのも好ましい。