以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。
湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。本体12の一部は、外カバー13で覆われている。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24では、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
ハンドル14の上下動により、吐出量が調節される(図3の矢印M参照)。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の旋回により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の旋回により、吐水温度の調節が可能である。
図4は、図2のF4−F4線に沿った断面図である。湯水混合栓10は、その内部に、レバー組立体40を有する。レバー組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。ハンドル14は、ネジ30によって、レバー46に固定されている。
なお図4では、吐出部16の記載が省略されている。
図5は、レバー組立体40の斜視図である。図6は、レバー軸線Z1に対して垂直な断面に沿ったレバー組立体40の断面図である。図7は、レバー軸線Z1に沿ったレバー組立体40の断面図である。図8は、レバー組立体40の分解斜視図である。レバー組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、レバー組立体40は交換可能である。
図8等が示すように、レバー組立体40は、ハウジング42、回動体44、レバー46、レバー軸48、左右クリック用弾性部材50、左右クリック用球体52、軸保持体54、クリック係合部56、可動弁体60、固定弁体62、パッキン64、パッキン65、Oリング66及びベース体68を有する。球体52は、左右クリック用当接部材の一例である。左右クリック用当接部材は球体に限定されない。円滑なレバー操作及びクリック感の感触の観点から、左右クリック用当接部材は球体が好ましい。
図4が示すように、外カバー13は、本体12に固定されている。外カバー13は、金属製である。外カバー13は、ハウジング42を覆っている。外カバー13は、ハウジング42の変形を防止している。ハウジング42の変形により、係合当接部E1(後述)の位置が変動しうる。ハウジング42の変形が抑制されることで、前後クリック機構の精度及び耐久性が向上している。
レバー軸48の中心線が、レバー軸線Z1である。レバー46の前後回動は、レバー軸線Z1を中心とした回転である。
弾性部材50と球体52とにより、左右クリック用の出退機構が構成されている。
ベース体68は、湯導入口70、水導入口72及び吐出口74を有する。ベース体68の下部には、これら湯導入口70、水導入口72及び吐出口74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
固定弁体62は、ベース体68の上側に固定される。ベース体68には、固定弁体62を固定するための係合凸部76と、ハウジング42を固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
固定弁体62は、湯用弁孔80、水用弁孔82及び混合水用弁孔84を有する。湯用弁孔80は、ベース体68の湯導入口70に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。水用弁孔82は、ベース体68の水導入口72に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。混合水用弁孔84は、ベース体68の吐出口74に接続されている。パッキン65により、この接続の水密状態が保持されている。
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体成形されていてもよい。
図8では示されていないが、下側部材88の下面には、流路形成凹部94が設けられている(図6及び図7参照)。なお、下側部材88の上面には、レバー46の下端95との干渉を避けるための凹部96が設けられている(図8参照)。
固定弁体62の上面には、平滑面PL1が設けられている(図8参照)。上記孔82、84及び80が存在していない部分が、平滑面PL1である。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、平滑面PL2が設けられている。流路形成凹部94が形成されていない部分に、平滑面PL2が設けられている。平滑面PL1と平滑面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
なお、図4及び図6では、レバー軸48及び弾性部材50の記載が省略されている。
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合孔98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合孔98に挿入されている。レバー46の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。
なお、レバー46とレバー係合孔98との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー46とレバー係合孔98との間に他の部材が介在していてもよい。
上側部材86の上面には、回動体44の裏面と係合しうる係合凸部99が設けられている。
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている。レバー軸48はパイプ状であり、中空部を有する。このレバー軸48の内部に、左右クリック用弾性部材50が挿通されている。弾性部材50はコイルバネである。レバー軸48の長手方向長さと、弾性部材50の長手方向長さL1とは、略同一である。レバー軸48の一端に、左右クリック用球体52が配置されている。レバー軸48の中空部の開口部に、球体52が配置されている。この球体52は、弾性部材50の一端に位置する。
回動体44は、基部102と上部104とを有する(図8参照)。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。
上部104は、軸保持体54をスライド挿入するための挿入部112と、スライド溝113とを有する。挿入部112は、上部104の側面に設けられている。
レバー46がレバー挿入孔106に挿入されると、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置される。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48が挿入される。更にこのレバー軸の内部に、弾性部材50が挿入される。レバー軸48の挿入により、レバー46が、回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の回動(前後回動)を許容しうるように設定されている。なお本願では、レバー軸線Z1(レバー軸48)を回転軸とするレバー46の回動が、「前後回動」とも称される。
図8が示すように、ハウジング42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、ハウジング42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、ベース体68の係合凸部77と係合している。この係合により、ハウジング42は、ベース体68に固定されている。
回動体44の上部104の円周面部の外径は、小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面105と、小径円筒部120の内周面121とが摺動する。なお、軸保持体54が挿入部112に嵌められると、この軸保持体54の外面は、上部104の円周面部と略同一の円周面を形成する。よって軸保持体54は、回動体44の回転を阻害しない。
大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
図9(a)から(h)は、軸保持体54を示す。図9(a)は、上面図である。図9(b)は、内側から見た平面図である。図9(c)は、側面図である。図9(d)は、外側から見た平面図である。図9(e)は、底面図である。図9(f)は、図9(d)のf−f線に沿った断面図である。図9(g)は、図9(d)のg−g線に沿った断面図である。図9(h)は斜視図である。
軸保持体54は、レバー軸保持部134、球保持部136、レール138、球突出用開口140、及び切り欠き142を有する。レール138がスライド溝113に挿入されることで、軸保持体54が回動体44の挿入部112に取り付けられる。軸保持体54が挿入部112に取り付けられた状態が、取付状態とも称される。この取付状態において、レバー軸保持部134は、レバー軸48の一端部を保持する。なおレバー軸48の他端部は、回動体44(上部104)の内面に設けられた凹部107(図7参照)に挿入されつつ保持されている。この取付状態において、球保持部136は、球体52を保持する。球体52は、凸部170(後述)との係合の有無に関わらず、弾性部材50によって常に付勢されている。球体52は、弾性部材50によって外側に押圧されている。球体52は、弾性部材50によって球保持部136に押しつけられている。図9(f)及び図9(g)が示すように、球体52の一部は、開口140から突出している。この突出が、左右クリック感の発現を可能とする。開口140の直径は、球体52よりも小さくされる。また、開口140の直径は、左右クリック感の発現が可能となるような球体52の突出量を考慮して、設定される。
軸保持体54は用いられなくても良い。軸保持体54に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。また、軸保持体54が2つであってもよい。例えば、レバー軸48の両端部が軸保持体54によって保持されてもよい。本実施形態では、軸保持体54が1つとされることで、部品点数が抑制されている。また、軸保持体54を設けることで、回動体44へのレバー46の組み付けが容易となる。この組み付けは、次の工程を含む。
(工程a):弾性部材50が挿入されたレバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入する。又は、レバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入し、このレバー軸48に弾性部材50を挿入する。
(工程b):上記工程aの後、レバー軸48(弾性部材50)の他端部を凹部107に挿入する。
(工程c):上記工程bの後、球体52を、弾性部材50の一端に配置し、この状態で、軸保持体54を挿入部112に挿入する。
上記工程cにより、レバー軸48の一端部が、レバー軸保持部134によって保持される。上記工程cにおける球体52の配置では、例えばグリースを用いて、球体52が、弾性部材50の一端に仮止めされる。
この組み付けでは、弾性部材50の一端に直接球体52を配置することができる。 軸保持体54が用いられることで、組立の容易性が達成されている。
前述したように、軸保持体54は切り欠き142を有する。この切り欠き142により、上記工程cにおける球体52の脱落が抑制される。即ち、弾性部材50の一端への球体52の配置が、工程cにおいて維持されやすい。よって、組立の容易性が更に向上する。
図10(a)は、回動体44の平面図である。図10(b)は、回動体44の側面図である。図10(c)は、回動体44の側面図である。図10(b)と図10(c)とでは、視点が90度相違する。図10(d)は、図10(c)のd−d線に沿った断面図である。図10(e)は、回動体44の底面図である
前述の通り、回動体44は凹部107と軸孔108とを有する。凹部107と軸孔108とは同軸である。凹部107及び軸孔108の中心軸は、レバー軸線Z1である。凹部107及び軸孔108が、レバー軸48を保持している。
回動体44は、クリック係合部56を挿通させるためのクリック用開口115を有する(図10(d)及び図8参照)。クリック用開口115の寸法は、クリック係合部56の回動を阻害しないように設定されている。
図11は、レバー組立体40の断面図である。図11は、クリック係合部56の近傍の拡大図である。クリック係合部56は、レバー46の後面47(図8参照)に配置されている。クリック係合部56は、レバー46の後側に突出している。後面47には、クリック係合部56をはめ込むための凹部49が設けられている。この凹部49は、スライド溝51を有する(図11参照)。このスライド溝51に、クリック係合部56がスライド挿入される。後述するように、クリック係合部56は、レバー46の前面に配置されてもよい。クリック係合部56は、レバー46の前側に突出していてもよい。
本実施形態では、クリック係合部56は、レバー46とは別部材である。クリック係合部56は単独で成形されるため、複雑な形状であっても比較的容易に製造することができる。クリック係合部56は、レバー46に着脱可能に取り付けられている。よって、クリック係合部56を装着することで前後クリック感を生じさせることができ、また、クリック係合部56を取り外すことにより、前後クリック感を無くすこともできる。
一方、クリック係合部56をレバー46に一体成形することもできる。この場合、部品点数が減少し、組み立て作業の省略が可能である。
図11が示すように、ハウジング42の内面には、係合当接部E1が設けられている。係合当接部E1は、クリック係合部56と係合しうる位置に設けられている。本実施形態の係合当接部E1は、凸部である。係合当接部E1は、例えば凹部であってもよい。クリック係合部56と係合当接部E1との係合により、前後クリック感が生じる。レバー46の前後回動によって、前後クリック感が生じる。
図12は、ハウジング42の平面図である。図13は、ハウジング42の断面図である。図12が示すように、係合当接部E1は、周方向の所定範囲に設けられている。本実施形態では、係合当接部E1は、角度θaの範囲に設けられている。この角度θaの範囲において、前後クリック感が生じる。係合当接部E1の周方向位置により、前後クリック感が生じる位置が設定されうる。角度θaにより、前後クリック感が生じる角度範囲が設定されうる。
前後クリック感が生じる左右回動範囲は限定されない。好ましい実施形態の一例は、湯が吐出される角度範囲RT2(後述)において前後クリック感が生じ、水のみが吐出される角度範囲RT1(後述)において前後クリック感が生じない構成である。この場合、角度範囲RT2の角度θ2(図21参照)と角度θaとを一致させるのが好ましい。適切な角度範囲RT2を確保する観点からは、角度θaは、30°以上が好ましく、35°以上がより好ましく、40°以上が更に好ましい。適切な角度範囲RT1をも同時に確保する観点からは、角度θaが過大であるのは好ましくない。この観点から、角度θaは、85°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、75°以下が更に好ましい。
なお、図6は、係合当接部E1が存在しない位置での断面図である。よって図6には係合当接部E1が図示されていない。図6では、ハンドル14の左右方向位置が、前後クリック感が生じない位置にある。
図14(a)は、クリック係合部56の斜視図である。図14(b)は、クリック係合部56の側面図である。図14(c)は、クリック係合部56の断面図である。
クリック係合部56は、ベース部56aと、主部56bと、凸部56cとを有する。本実施形態では、クリック係合部56は、複数の凸部56cを有する。クリック係合部56は、5つの凸部56cを有する。
ベース部56aは、クリック係合部56をレバー46に固定する役割を果たす。ベース部56aは、レバー46の凹部49にはめ込まれる(図8参照)。ベース部56aの両縁部は、スライド溝51に挿入される(図11参照)。ベース部56aは、一定の曲率を有する板状部材である。ベース部56aは、レバー軸線Z1を中心とする円に沿った形状である(図11参照)。
クリック係合部56は、中空部HLを有する(図14(c)参照)。中空部HLは、ベース部56aの底面に開口56tを形成している。主部56bの内部は、中空部HLである。中空部HLは、一部の凸部56cにも及んでいる。すなわち、クリック係合部56は、中空凸部56hを有する。本実施形態では、5つの凸部56cのうちの3つが、中空凸部56hである。
図15は、上側部材86の平面図である。上側部材86の上面には、長孔状等の多数の凹部166が設けられている。これらの凹部166は、可動弁体60の軽量化に寄与する。
図16、17、18及び19は、レバー軸線Z1に沿ったレバー組立体40の断面図である。小径円筒部120の内面121には、クリック発現用の凸部170が設けられている。左右クリック用球体52は、弾性部材50によって、常に、内面121側に付勢されている。
[レバーの前後回動に伴う各部の動き]
前述したように、吐出量の調節では、ハンドル14が上下に動かされる(図3の矢印M参照)。このハンドル14の動きにより、レバー46の前後回動が生じる。この前後回動に連動して、レバー46の下端95が回動する。この下端95とレバー係合孔98との係合により、可動弁体60が動かされる。可動弁体60は、固定弁体62の上を直線に沿って摺動する。この摺動の間、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。同時に可動弁体60は、回動体44に対しても摺動する。
可動弁体60の移動方向は、回動体44によって規制されている。この規制により、レバーの前後回動のみによっては湯水の混合割合が変化しない。本実施形態では、複数の移動方向規制機構が採用されている。移動方向規制機構は、回動体44と可動弁体60(上側部材86)との係合である。
この移動方向規制機構には、回動体44が関与している。図10(e)が示すように、回動体44(の基部102)の裏面には、スライド溝Gvが設けられている。このスライド溝Gvは、底面Gv1と、2つの側面Gv2とを有している。このスライド溝Gvに、係合凸部99が嵌められている。
第1の移動方向規制機構は、上側部材86の係合凸部99と、回動体44のスライド溝Gvとの係合である。より詳細には、係合凸部99の側面174(図15参照)が、スライド溝Gvの側面Gv2と摺動する。このスライドの方向は、係合凸部99の側面174に沿った直線方向D1である。
第2の移動方向規制機構は、上側部材86の側面180(図15及び図8参照)と、回動体44の基部102に設けられた下方凸部182(図10(e)参照)との係合である。この下方凸部182は、側面183を有している。この側面183が、上側部材86の側面180と摺動する。この係合による移動方向も、前述した直線方向D1である。側面180と、前述した側面174とは、平行である。
このように、同一の移動方向D1に対して複数の移動方向規制機構が設けられることで、移動方向がより確実に制御されている。
[レバーの左右回動に伴う各部の動き]
前述したように、温度の調節では、ハンドル14が左右回動される。このハンドル14の左右回動により、レバー46も左右回動する。レバー46の左右回動により、可動弁体60が回転する。この回転は、レバー46の下端95とレバー係合孔98との係合により達成される。可動弁体60は、固定弁体62に対して回転する。この回転中において、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。この回転により、湯と水との混合割合が変化し、吐水の温度が調節される。このように、湯水混合栓10は、レバー46の左右回動によって吐水温度を調節しうる温度調節機構を有している。
このようなレバー組立体40は、左右クリック機構と、前後クリック機構とを有する。左右クリック機構とは、レバー46の左右回動に伴うクリック感を発現する機構である。前後クリック機構とは、レバー46の前後回動に伴うクリック感を発現する機構である。
[左右回動操作でのクリック感(左右クリック感)]
左右回動操作でのクリック感は、左右クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単に左右クリック感とも称される。図16から18が示すように、この左右クリック感は、左右クリック用球体52と凸部170との係合又は係合解除によって生じる。レバー46の左右回動により、図16の状態から、図17の状態を経て、図18の状態へと移行する。図17は、球体52が凸部170と係合している状態を示す。図18は、球体52と凸部170との係合が解除された直後の状態を示す。レバー46の左右回動により、図16の非係合状態から、図17の係合状態に移行し、更に図18の係合解除状態に移行する。
図17に示される係合状態では、弾性部材50が圧縮されるとともに、左右回動時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、左右クリック感の一例である。また、係合解除の瞬間に、振動が発生する。この振動は、典型的な左右クリック感を生じさせる。また、この係合解除の瞬間に、音が発生する。この音に起因する感覚も、左右クリック感の一例である。
なお、本実施形態では、図16におけるハンドル14の左右位置は、正面位置S1(後述)である。図17におけるハンドル14の左右位置は、正面位置S1(後述)よりも湯側に5度である。図18におけるハンドル14の左右位置は、正面位置S1(後述)よりも湯側に10度である。図19におけるハンドル14の左右位置は、正面位置S1(後述)よりも湯側に60度である。この湯側の60度の位置は、後述される左限界MLである。
図17の係合状態を除き、左右クリック用球体52は、内面121に当接していない(図16、18及び19参照)。球体(当接体)52は弾性部材50によって常に当接面12側に付勢されているが、左右クリック用球体52の位置は軸保持体54によって制御されている。この制御によって、クリック感が生じない位置では、球体(当接体)52は内面121に当接しない。このように、この左右クリック機構では、クリック感が生じない位置の少なくとも一部において、当接面121と当接体52とが離れるように、当接体52の位置が制御されている。本実施形態の左右クリック機構では、クリック感が生じない位置の全体において、当接面121と当接体52とが離れるように、当接体52の位置が制御されている。この構成により、摺動による摩耗が抑制され、左右クリック感が、長期間に亘って、精度よく維持されうる。一方、制御された当接体52の位置は、クリック発現部(凸部170)に当接しうる位置である。よって左右クリック感は確実に発現する。
なお、言うまでもないが、球体(当接体)52が、左右位置に係わらず内面121に常に当接していてもよい。
[前後回動操作でのクリック感(前後クリック感)]
前後回動操作でのクリック感は、前後クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、前後クリック感とも称される。図11が示すように、凸部56cと係合当接部E1とは互いに係合しうる位置関係にある。レバー46の前後回動に伴い、クリック係合部56がレバー軸線Z1を中心として回動する。このクリック係合部56の回動により、クリック係合部56と係合当接部E1との間にクリック係合が生じる。クリック係合とは、クリック感を生じうる係合を意味する。このクリック係合により前後クリック感が生じる。
凸部56cは、弾性変形部である。クリック係合において、凸部56cに、弾性変形及び変形回復が生じる。係合当接部E1と凸部56cとが当接した状態でクリック係合部56が回動すると、凸部56cが弾性変形により曲げられる。クリック係合部56の回動が更に進行すると、係合当接部E1と凸部56cとの当接が解除される。この解除により、変形回復が生じる。
複数の凸部56cは、レバー軸線Z1を中心とする回転方向において、所定間隔おきに配置されている。よって、レバー46の前後回動により、複数の凸部56cが、順次、係合当接部E1に係合する。レバー46の前後回動において、第1の凸部56cの係合及び係合解除が生じ、続いて、この第1の凸部56cに隣接する第2の凸部56cの係合及び係合解除が生じる。このように、複数の凸部56cが、順次、係合当接部E1を乗り越えるように構成されている。よって、レバー46の前後回動を一方向に1回行う間に、複数のクリック感が生じる。
凸部56cに弾性変形が生じている状態では、ハンドル14の上下回動の抵抗が増加する。この抵抗の増加は、クリック感の一例である。係合当接部E1と凸部56cとの当接が解除された瞬間に、上記抵抗が減少する。この抵抗の減少は、クリック感の一例である。係合当接部E1と凸部56cとの当接が解除される瞬間に音が生じうる。この音はクリック感の一例である。係合当接部E1と凸部56cとの当接が解除される瞬間に振動が生じうる。この振動はクリック感の一例である。
5つの凸部56cのうち、係合当接部E1を乗り越えるのは、3つの凸部56kである(図14(a)参照)。5つの凸部56cのうち、両端の凸部56cを除く3つの凸部56cが、凸部56kである。このため、後述するように、前後クリック感の回数Nは3である。係合当接部E1を乗り越えうる凸部56kの数は、クリック回数Nと同じである。
前後クリック感が生じるときの状況として、以下が例示される。
[状況1]:凸部56c(凸部56k)が係合当接部E1を乗り越える時に、前後クリック感が生じる。
[状況2]:凸部56cを乗り越えた係合当接部E1が、隣接する凸部56cに当接する時に、前後クリック感が生じる。
[状況3]:状況1と状況2とがほぼ同時に起こることにより、前後クリック感が生じる。
5つの凸部56cのうち、両端(上端及び下端)に位置する凸部56cは、上記状況1におけるクリック感には関与しないが、上記状況2及び状況3におけるクリック感には関与しうる。よって、これら両端の凸部56cも、前後クリック感の確実な発生に寄与しうる。
レバー46が前後回動の限界位置にあるとき、係合当接部E1は、上端又は下端の凸部56cと、この凸部56cに隣接する凸部56kとの間に位置する。このとき、係合当接部E1は、上端又は下端の凸部56cと凸部56kとにより挟まれる。この挟み込みにより、クリック係合部56の位置ズレが防止される。
レバー46の左右位置によって、係合当接部E1とクリック係合部56とが係合しない位置(非係合左右位置)と、係合当接部E1とクリック係合部56とが係合する位置(係合左右位置)とが生じうる。非係合左右位置では、前後クリック感が生じない。係合左右位置では、前後クリック感が生じる。レバー46を非係合左右位置から係合左右位置に左右回動させるとき、係合当接部E1が、互いに隣接する凸部56cの間に入り込む。上端及び下端の凸部56cは、この入り込みを確実とするのに寄与しうる。
図20は、ハンドル14の左右回動について説明するための平面図である。ハンドル14は、左限界MLから右限界MRまで左右回動が可能である。範囲RFは、ハンドル14の左右回動の可能範囲である。この範囲RFの角度が符号θfで示されている。図20の実施形態では、この範囲RFの中心周位置C1が、ハンドル14の正面位置S1である。
なお、ハンドル14の周位置は、レバー46の周位置と同じである。周位置とは左右位置と同義である。角度範囲RT1は、水のみが吐出されるレバー左右位置である。角度範囲RT1では、湯が吐出されない。角度範囲RT2は、湯が吐出されるレバー左右位置である。角度範囲RT2では、湯と水とが混合されるか、又は、湯のみが吐出される。図20が示すように、角度範囲RT1は、使用者から見て、中心周位置C1よりも右側である。図20が示すように、角度範囲RT2は、使用者から見て、中心周位置C1よりも左側である。使用者からみて、角度範囲RT1は、角度範囲RT2の右側である。
ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、水の割合が100%である。範囲RT1は、水吐出位置である。本実施形態では、ハンドル14が正面よりも右側にあるとき、湯が混合されない。
ハンドル14の周位置が中心周位置C1にあるときも、湯が混合されない。即ち、すなわち、ハンドル14の周位置が中心周位置C1(正面位置S1)にあるとき、水の割合が100%である。位置C1(位置S1)は、水吐出位置である。
この図20の実施形態では、ハンドル14の旋回可能範囲RFが正面位置S1に対して左右対称とされたが、左右非対称とされてもよい。
図21は、図20とは異なる実施形態の湯水混合栓を示す。本実施形態では、角度範囲RT1と角度範囲RT2との境界K1が、正面位置S1よりも左側に位置している。境界K1は、正面位置S1よりも湯側に位置する。本実施形態では、レバー左右位置が正面位置S1から湯側にずれている場合でも、水のみが吐出されうる。このため、意図しない湯の混合が抑制され、省エネルギーに寄与しうる。
上記レバー組立体40では、図21の形態が採用されている。
図21において両矢印θkで示されるのは、正面位置S1と境界K1との間の角度である。省エネルギーの観点から、角度θkは、2度以上が好ましく、3度以上がより好ましく、4度以上が更に好ましい。角度範囲RT2が過度に狭くなると、吐水温度が調節しにくい場合がある。この観点から、角度θkは、20度以下が好ましく、15度以下がより好ましく、12度以下が更に好ましい。ただし、用途によって、あらゆる角度θkが可能である。上記実施形態では、角度θkは5度とされた。
境界K1の周位置(角度θk)は、例えば、後述される角度θxによって調整される。もちろん、角度θkは、各弁孔及び流路形成凹部の位置、形状等によって調整されてもよい。
角度範囲RT2が小さすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が狭くなりすぎて、湯水混合比率の変化が急激になりすぎる。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、40度以上が好ましく、50度以上がより好ましく、55度以上が特に好ましい。角度範囲RT2が大きすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、100度以下が好ましく、90度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
角度範囲RT1の角度θ1は0度とすることもできる。しかし、通常の湯水混合栓では、角度θ1が0度とはされていないため、θ1を0度とすると、使用者がハンドル14を中心周位置C1よりも右側に過度に操作してしまうことがある。この過度な操作の繰り返しは、湯水混合栓に過度な負担を与え、湯水混合栓の耐久性に悪影響を与える場合がある。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、10度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上が特に好ましい。角度θ1が過大である場合、水の割合が100%である範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、70度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、50度以下が特に好ましい。
角度範囲RT1と角度範囲RT2との角度比(θ1/θ2)が小さすぎると、角度θ1が小さくなりすぎたり、角度θ2が大きくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上が特に好ましい。また、角度比(θ1/θ2)が大きすぎると、角度θ1が大きくなりすぎたり、角度θ2が小さくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
図21において両矢印RT3で示されるのは、前後クリック感が生じる角度範囲である。この範囲RT3の角度θaについては、前述の通りである。本実施形態では、角度範囲RT3が角度範囲RT2に一致しており、角度範囲RT1では前後クリック感が生じない。逆に、角度範囲RT3が角度範囲RT1に一致しており、角度範囲RT2では前後クリック感が生じない構成も可能である。これらの構成により、前後クリック感の有無によって、湯が吐出されているか否かが判別されうる。よって省エネルギーが達成されうる。
図21において両矢印θbで示されているのは、正面位置S1から、左右位置K2までの角度である。左右位置K2は、前後クリック感が開始される左右位置である。省エネルギーの観点から、角度θbは、2度以上が好ましく、3度以上がより好ましく、4度以上が更に好ましい。利便性の観点から、角度θbは、15度以下が好ましく、12度以下がより好ましく、10度以下が更に好ましい。ただし、用途によって、あらゆる角度θbが可能である。上記実施形態では、角度θbは5度とされた。
図20及び図21の実施形態は例示に過ぎない。レバー周位置と湯の混合割合との関係は多様に設定することができ、それぞれの設定に見合った効果が奏されうる。
図22(a)は、固定弁体62の平面図である。図22(a)は、固定弁体62を上側からみた図である。図22(b)は、固定弁体62の底面図である。図22(b)は、固定弁体62を下側からみた図である。図22(c)は、図22(a)のc−c線に沿った断面図であり、図22(d)は、図22(a)のd−d線に沿った断面図であり、図22(e)は、図22(a)のe−e線に沿った断面図であり、図22(f)は、図22(a)のf−f線に沿った断面図であり、図22(g)は、図22(a)のg−g線に沿った断面図である。
図22(a)が示すように、湯用弁孔80(上面開口線80L)は、曲がった長孔である。水用弁孔82(上面開口線82L)も、曲がった長孔である。
図22(a)が示すように、湯用弁孔80は、上面開口線80Lを有している。上面開口線80Lは、平滑面PL1における湯用弁孔80の開口形状である。水用弁孔82は、上面開口線82Lを有している。上面開口線82Lは、平滑面PL1における水用弁孔82の開口形状である。混合水用弁孔84は、上面開口線84Lを有している。上面開口線84Lは、平滑面PL1における混合水用弁孔84の開口形状である。
図22(b)が示すように、湯用弁孔80は、下面開口線80sを有している。水用弁孔82は、下面開口線82sを有している。混合水用弁孔84は、下面開口線84sを有している。
図22(a)が示すように、水用弁孔82は、その長手方向の一端に第1壁面部W1を有する。水用弁孔82は、その長手方向の他端に第2壁面部W2を有する。湯用弁孔80は、その長手方向の一端に第3壁面部W3を有する。湯用弁孔80は、その長手方向の他端に第4壁面部W4を有する。
これらの壁面部W1からW4の少なくともいずれかが、傾斜面を有しているのが好ましい。図22(a)から(g)が示すように、第1壁面部W1は傾斜面SL1を有している。第2壁面部W2は傾斜面SL2を有している。第3壁面部W3は傾斜面SL3を有している。第4壁面部W4は傾斜面SL4を有している。
これらの傾斜面SL1からSL4は、湯水混合栓10が使用状態にある場合における鉛直方向に対して傾斜している。これらの傾斜面SL1から4は、上方(平滑面PL1)側から見える(図22(a)参照)。
このように、湯用弁孔80の壁面は傾斜面SL3、SL4を有している。また水用弁孔82の壁面は、傾斜面SL1、SL2を有している。
これらの傾斜面SL1からSL4は、ウォーターハンマーの抑制に寄与する。ウォーターハンマーとは、止水状態から吐水状態に切り替えられた際に、水圧の衝撃によって、混合栓の内部で音が発生する現象である。湯用弁孔80又は水用弁孔82に湯又は水が急激に流入することによって、ウォーターハンマーが生じる。
傾斜面SL1からSL4は、この急激な流入を抑制する。よって、ウォーターハンマーが抑制される。湯又は水は、傾斜面に沿って斜めに流入することになるため、水圧の衝撃が緩和される。
また、湯水が斜めに流入することになるため、可動弁体60等に作用する水圧衝撃が緩和される。この緩和により、湯水混合栓10の耐久性が向上しうる。
なお、傾斜面SL1からSL4は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。また、傾斜面SL1からSL4は、滑らかであってもよいし、段階的(例えば階段状)であってもよい。
図22(a)が示すように、湯用弁孔80の上面開口線80L及び水用弁孔82の上面開口線82Lは、左右非対称に形成されている。即ち、図22(a)の平面視において、ある直線を軸として図形を反転させると上面開口線80Lと上面開口線82Lとが重なるような対称軸は存在しない。例えば、レバー前後方向中心ラインLc(図22(a)及び(b)参照)に関して、上面開口線80Lと上面開口線82Lとは対称性を有さない。上方から見た平面視において、レバー前後方向中心ラインLcは、レバー46が中心周位置C1にあるときのレバー46の中心線に一致する(図20及び図21参照)。
もちろん、上面開口線80Lと上面開口線82Lとが左右対称であってもよい。
湯水の切り替え機能の自由度を高める手法の一つは、流路形成凹部94と、湯用弁孔80及び水用弁孔82との位置関係を多様に設計することである。上述した左右対称の構成に限定されないことで、湯用弁孔80及び水用弁孔82の設計自由度が向上する。よって、大きなコスト上昇を招くことなく、多様な湯水切り替え機能が実現されうる。
従来、湯用弁孔80及び水用弁孔82は、左右対称に配置されていた。そして、湯用弁孔80及び水用弁孔82の側面には上記傾斜面SLを設けられておらず、湯用弁孔80の側面は平滑面PL1に対して垂直であった。その結果、湯用弁孔80において、上面開口線と下面開口線とは、同位置で且つ同形状であった。同様に、水用弁孔82において、上面開口線と下面開口線とは、同位置で且つ同形状であった。このような構成では、上面開口線を左右非対称等の特殊な形状とすると、下面開口線も特殊な形状となる。下面開口線が特殊な形状である場合、汎用されているベース体68が当該下面開口線に適合しない。即ち、汎用のベース体68を用いることができない事態が生じる。
これに対して、上記実施形態では、上面開口線80Lと下面開口線80sとで、形状及び配置は相違している。また、上面開口線82Lと下面開口線82sとで、形状及び位置が相違している。前述した傾斜面SL1から4は、これらの相違を生じさせている。この構成では、上面開口線80L、82Lの設計自由度を高めつつ、下面開口線80s、82sの形状を、汎用のベース体68に適合させることができる。この観点から、下面開口線82s及び下面開口線80sは左右対称であるのが好ましい(図22(b)参照)。下面開口線82sと下面開口線80sとは対称(左右対称)であり、その対称軸は、レバー前後方向中心ラインLcである。
図23(a)は、可動弁体60の下側部材88の平面図である。図23(a)は下側部材88を上方から見た図である。図23(b)は、下側部材88の底面図である。図23(b)は下側部材88を下方から見た図である。図23(c)は、図23(b)のc−c線に沿った断面図である。図23(d)は、図23(b)のd−d線に沿った断面図である。
流路形成凹部94は、下面開口線94Lを有する。下面開口線94Lは、平滑面PL2における流路形成凹部94の開口形状である。
図24(a)から(f)は、固定弁体62の上面と、可動弁体60(下側部材88)の下面との重なり状態を示す図である。この図24(a)から(f)では、上方視において固定弁体62によって隠される可動弁体60の線が破線で描かれており、可動弁体60(下側部材88)の下面線が実線で描かれている。図24(a)から(f)では、上面開口線80L及び上面開口線82Lと下面開口線94Lとの重なり状態が示されている。
図24(a)から(f)では、上方からは見ることの出来ない可動弁体60の下面線が実線で示されている。この点は、通常の図面とは相違するので、留意されたい。
図24(a)は、レバー左右位置が左限界MLであり、且つ、レバー前後位置が上限界(吐出ストップ)の状態を示している。図24(b)は、レバー左右位置が左限界MLであり、且つ、レバー前後位置が下限界(吐出最大)の状態を示している。図24(c)は、レバー左右位置が中心周位置C1(正面位置S1)であり、且つ、レバー前後位置が上限界(吐出ストップ)の状態を示している。図24(d)は、レバー左右位置が中心周位置C1(正面位置S1)であり、且つ、レバー前後位置が下限界(吐出最大)の状態を示している。図24(e)は、レバー左右位置が右限界MRであり、且つ、レバー前後位置が上限界(吐出ストップ)の状態を示している。図24(f)は、レバー左右位置が右限界MRであり、且つ、レバー前後位置が下限界(最大吐出位置)の状態を示している。
上面開口線80Lで囲まれた領域Xが、図22(a)において破線ハッチングで示されている。この領域Xは、湯用弁孔80の上面開口領域である。上面開口線82Lで囲まれた領域Yが、図22(a)において破線ハッチングで示されている。この領域Yは、水用弁孔82の上面開口領域である。下面開口線94Lで囲まれた領域Zが、図23(b)において破線ハッチングで示されている。この領域Zは、可動弁体60(下側部材88)における流路形成凹部94の下面開口領域である。
図22(a)において2点鎖線ハッチングで示される領域Eは、混合水用弁孔84の上面開口線84Lで囲まれた領域である。
図24(b)における実線ハッチングは、上記領域Xと上記領域Zとの重なり領域XZを示す。図24(d)におけるハッチングは、上記領域Yと上記領域Zとの重なり領域YZを示す。図24(e)におけるハッチングは、上記領域Yと上記領域Zとの重なり領域YZを示す。
可動領域の全てにおいて、混合水用弁孔84の領域Eは、流路形成凹部94の領域Zに重複している。
[湯水の流れ]
湯は、湯導入部(湯導入管18及び湯導入口70)を経由して、湯用弁孔80に至る。水は、水導入部(水導入管20及び水導入口72)を経由して、水用弁孔82に至る。
湯用弁孔80に到達した湯は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、上記領域XZにより生ずる。可動弁体60の摺動により、領域XZの面積は変化する。領域XZが存在しない場合、湯は流路形成凹部94に流入しない。領域XZが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれている状態の例は、図24(d)及び図24(f)に示される。
水用弁孔82に到達した水は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、上記領域YZにより生ずる。可動弁体60の摺動により、領域YZの面積は変化する。領域YZが存在しない場合、水は流路形成凹部94に流入しない。領域YZが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれている状態の例は、図24(b)に示される。
流路形成凹部94に到達した湯及び/又は水は、混合水用弁孔84、吐出口74及び吐出管22を経由して、吐出部16に至る。
湯と水との混合割合は、上記領域XZと上記領域YZとの面積比R1に依存する。ハンドル14の旋回によって、レバー46を介して可動弁体60が回転する。この可動弁体60の回転によって、面積比R1が変化する。この変化によって、水温が調節される。
吐出量は、上記領域XZと上記領域YZとの面積合計Saに依存する。ハンドル14の上下動によって、レバー46が前後回動し、可動弁体60が直線方向D1方向に移動する。この可動弁体60の移動によって、面積合計Saが変化する。この変化によって、吐出量が調節される。このように、湯水混合栓10は、レバー46の前後回動によって吐出量を調節しうる吐出量調節機構を有する。
面積合計Saがゼロである場合、吐出がストップする。面積合計Saがゼロである場合とは、平滑面PL2によって湯用弁孔80及び水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって湯用弁孔80及び水用弁孔82が完全に塞がれている例は、図24(a)、(c)及び(e)に示される。
図24(b)には、領域YZが存在しない。レバー左右位置が左限界MLである場合、レバーの上下回動位置に関わらず、水は混合されない。即ちこの場合、湯が100%である。
図24(d)には、領域XZが存在しない。レバー左右位置が中心周位置C1である場合、レバーの上下回動位置に関わらず、湯は混合されない。即ちこの場合、水が100%である。よって、給湯器は作動せず、省エネルギーが達成される。一般に、湯水混合栓の使用者は、レバーを中心周位置C1に合わせて使用する傾向にある。湯水混合栓10では、使用される傾向が高い中心周位置C1において、省エネルギーが達成される。
図24(f)には、領域XZが存在しない。レバー左右位置が右限界MRである場合、レバーの上下回動位置に関わらず、湯は混合されない。即ちこの場合、水が100%である。
図25(a)から(f)は、図24(a)から(f)と同じ図である。ただし、図面の理解を容易とする観点から、図25(a)から(f)では、図24(a)から(f)に記載された符号の一部が省略されている。
図25の(a)、(c)及び(e)において両矢印D1で示されるのは、可動弁体60の移動の直線方向である。レバー46の前後回動に伴い、下面開口線94Lは、直線方向D1に沿って移動する。
図25の(a)、(c)及び(e)において両矢印D2で示されるのは、レバー46の前後回動における前後方向である。前後方向D2は、上側から見た平面視におけるレバー46の前後回動方向である。前後方向D2は、レバー軸線Z1に対して垂直な方向である。レバー軸線Z1に対して垂直な平面と平滑面PL2との交線Lm(図示しない)を考えたとき、前後方向D2はこの交線Lmに平行である。
湯水混合栓10では、前後方向D2が直線方向D1に対して平行ではない。図25(a)、(c)及び(e)において両矢印θxで示されるのは、直線方向D1と前後方向D2との成す角度である。角度θxの設定により、吐水仕様の自由度が向上する。
ここで、図25(c)及び(d)に着目する。即ち、レバー左右位置が中心周位置C1である場合に着目する。仮に、可動弁体60が前後方向D2に移動する場合、図25(d)の吐出状態において、領域XZが生じてしまう。即ち、この領域XZにより、湯が混合されてしまう。しかし、本実施形態では、直線方向D1が、前後方向D2に対して傾斜している。しかも、この傾斜の方向は、レバー左右位置が中心周位置C1である状態において、湯用弁孔80との重複を避けるような方向である。よって、レバー左右位置が中心周位置C1である場合において、レバー46を吐出方向に回動させても、可動弁体60が直線方向D1に沿って移動するため、領域YZのみが生じ、領域XZは生じない(図25(d)参照)。
図26(a)は、下面開口線94Lの形状を示す平面図である。この下面開口線94Lは、ストレート状部分STを有する。このストレート状部分STは、直線方向D1に平行である(図25(a)、(c)及び(e)参照)。下面開口線94Lは、湯用弁孔80側に配置されている。吐出量が最大である状態において、水のみが吐出される状態から湯が混合される状態へと移行するとき、下面開口線94Lのうち、上面開口線80Lに最初に重なるのが、このストレート状部分STである。このようなストレート状部分STの配置は、レバー左右位置が中心周位置C1である場合において、湯の混合を防ぐのに寄与している(図25(d)参照)。
ストレート状部分STは、直線方向D1に略平行であるのが好ましい。略平行とは、±5度の誤差角度を許容する主旨である。この誤差角度は、好ましくは±3度であり、更に好ましくは、上記実施形態の如く、ストレート状部分STと直線方向D1とは平行とされる。なお、ストレート状部分STが直線でない場合、ストレート状部分STの両端を結ぶ直線によって、上記誤差角度及び上記平行が判定される。
直線方向D1に沿ったストレート状部分STが設けられることで、中心周位置C1における前後回動の全範囲において、湯の混合が効果的に防止される。よって、使用者の意図に反して湯が混合されることが抑制され、省エネルギーが達成されうる。また、特殊な弁孔形状によって湯の混合を避ける必要が無くなるので、弁孔の設計自由度が向上する。
弁孔の設計自由度の向上により、可動弁体60及び固定弁体62に、前後クリック機構及び/又は左右クリック機構を設けることが容易となる。例えば、可動弁体60に、凹部及び/又は凸部を設けたり、出退機構を設けたりすることが容易とされうる。また、固定弁体62に、凹部及び/又は凸部を設けたり、出退機構を設けたりすることが容易とされうる。よって、クリック感の態様の設計自由度が向上しうる。
本実施形態では、直線方向D1を前後方向D2と相違させることで、領域XZ(図25(b)参照)の発生を制御している。このため、弁孔形状の制約を少なくすることが出来る。よって、弁孔形状の設計自由度が向上する。この設計自由度の向上により、湯水混合比率とレバー旋回操作との関係の設定において、自由度が向上する。また、吐出量とレバー前後回動操作との関係の設定において、自由度が向上する。
一般に、湯用弁孔80に供給される湯の供給圧は、水用弁孔82に供給される水の供給圧よりも低い。これは、湯が給湯装置を経由して湯水混合栓10に到達することに起因する。湯用弁孔80側にストレート状部分STを設けることで、湯側への旋回(図21における左側への旋回)において、少ない旋回角度で領域XZ(図25(b))が増加しやすい。特に、水のみが吐出している状態から湯が混合される状態に切り替わる際に、湯の混合割合が増加しやすい。よって、湯が混合されるレバー左右位置にあるにも関わらず吐水温度が上がりにくいという事態が抑制されうる。このため、温度調節が容易な湯水混合栓10が実現されうる。
直線方向D1と平行な向きにおける下面開口線94Lの長さがLfとされる。本願において、ストレート状部分STとは、曲率半径が長さLfの2倍以上である線によって形成されている部分を意味する。ストレート状部分STにおいて、曲率半径が変化していてもよい。製造及び設計の容易性の観点から、ストレート状部分STは、曲率半径が長さLfの3倍以上である線によって形成されているのが好ましく、最も好ましいストレート状部分STの形状は、直線である。なお、ストレート状部分STの曲率半径は、20mm以上、更には25mm以上とすることもでき、例えば28mmとすることができる。
レバー左右位置が中心周位置C1である場合において湯の混合を防ぎ、且つ各弁孔の設計自由度を高める観点から、上記角度θx(図25(a)等参照)は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上が特に好ましい。レバー46の前後回動操作を円滑とする観点からは、角度θxは、50度以下が好ましく、45度以下がより好ましく、40度以下が特に好ましい。本実施形態では、角度θxは39度である。
なお、下面開口線94Lには、凸状部m1が設けられている。この凸状部m1は、止水状態から吐出状態に移行する際に、湯又は水の流路形成凹部94への急激な流入を緩和しうる。よって、これらの凸状部m1は、ウォーターハンマーの抑制に寄与する。
図26(b)、(c)及び(d)は、下面開口線94Lの変形例である。図26(c)のように、ストレート状部分STが設けられなくても良い。また、図26(d)のように、湯用弁孔80側及び水用弁孔82側の両方にストレート状部分STが設けられても良い。下面開口線94Lの形状によって、吐水仕様を変更することが可能である。
前後方向D2に対する直線方向D1の傾斜を実現させている構成が、前述した移動方向規制機構である。図27(a)は、吐水状態におけるレバー組立体40の断面図である。図27(a)は上側部材86の上面に沿った断面図である。図27(b)は、止水状態におけるレバー組立体40の断面図である。図27(b)は上側部材86の上面に沿った断面図である。
図27(a)が示すように、レバー46の下端部(ハッチング部分)とレバー係合孔98との間には、隙間Gpが設けられている。前述したように、前後回動に伴うレバー46の下端部の移動方向は前後方向D2であるが、可動弁体60(上側部材86)の移動方向は直線方向D1である。隙間Gpは、可動弁体60が直線方向D1に沿って移動することを許容する。隙間Gpの存在により、直線方向D1と前後方向D2とが相違するにも関わらず、レバー46の下端部が可動弁体60の移動を阻害しない。
図27(a)に示されるように、吐出量が最大の状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見てレバー46の右側に位置し、この場合、レバー46の左側には、隙間Gpは実質的に存在しない。 一方、図27(b)に示されるように、止水状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見てレバー46の左側に位置し、この場合、レバー46の右側には、隙間Gpは実質的に存在しない。これらの構成により、隙間Gpの寸法が最小限とされている。なお、図示しないが、最大吐水と止水との中間状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見て、レバー46の右側と左側とに存在する。図27(a)において符号G1で示されるのは、レバー46の右側の隙間距離である。図27(b)において符号G2で示されるのは、レバー46の左側の隙間距離である。[G1+G2]は、レバー46の上下方向の位置に関わらず、一定である。
なお、凹部96(図8及び図23(a)参照)の深さは、レバー46の前後回動の全範囲において、レバー46の下端と可動弁体60(上側部材86)とが接触しないように設定されている。これは、レバー46の前後回動操作を円滑としている。
レバー46の左右回動の円滑性により、左右クリック感の感受性が高まる。例えば、微小な左右クリック感が認識されやすくなる。よって、左右クリック感の設定の自由度が向上しうる。レバー46の前後回動の円滑性により、前後クリック感の感受性が高まる。例えば、微小な前後クリック感が認識されやすくなる。よって、前後クリック感の設定の自由度が向上しうる。
上記実施形態では、レバー左右位置によって、前後回動におけるクリック感(前後クリック感)が相違する。上記実施形態では、この前後クリック感の相違が、前後クリック感の有無とされている。上記実施形態では、角度範囲θa(図12参照)に対応するレバー左右位置で前後クリック感が生じ、それ以外のレバー左右位置では前後クリック感が生じない。上記実施形態では、角度範囲θaは、上記角度範囲RT2(図21参照)に対応している。上記実施形態では、湯が吐出されるレバー左右位置(範囲RT2)において前後クリック感が生じる。上記実施形態では、水のみが吐出されるレバー左右位置(範囲RT1)において前後クリック感が生じない。使用者にとって、前後クリック感の有無は、判別しやすい。上記実施形態では、前後クリック感の有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。
湯が混合されているか否かは、吐水の温度のみからは判別しにくいことがある。例えば、湯の混合割合が少ない場合、水が100%の場合と比較して、温度がそれほど高くならない。よってこの場合、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、湯の混合割合が高い場合であっても、給湯器等からの加熱装置で加温された湯が蛇口に至るまでの間、吐水の温度が上がらない場合がある。この場合も、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、ハンドル14の周位置によっても、湯が混合されているか否かが正確に判別できない場合がある。このような場合、使用者の意図に反して、湯が混合されることがある。使用者が水100%の吐水を使用しているつもりであるにも関わらず、実際には湯が混合されていることがある。この場合、エネルギーが無駄となる。上記実施形態では、前後クリック感の有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。よって、エネルギーの無駄が抑制される。
本実施形態では、係合当接部E1の角度範囲θa(図12参照)を変えることによって、前後クリック感が生じる角度範囲を自由に設計することができる。また、クリック係合部56及び係合当接部E1の仕様を変えることで、前後クリック感の強さ、回数等を容易に変更することができる。本実施形態は、前後クリック感の設計自由度に優れる。
クリック感の有無の設定として、以下が例示される。以下の設定1は、前述した実施形態での設定である。
[設定1]:水のみが吐出されるレバー左右位置(上記範囲RT1)では、前後クリック感が生じない。湯が吐出されるレバー左右位置(上記範囲RT2)では、前後クリック感が生じる。
[設定2]:水のみが吐出されるレバー左右位置では、前後クリック感が生ずる。湯が吐出されるレバー左右位置では、前後クリック感が生じない。
また、クリック感の仕様として、次の設定3も例示される。
[設定3]:水のみが吐出されるレバー左右位置と、湯が吐出されるレバー左右位置とで、前後クリック感が相違する。
この設定3では、例えば、前後クリック感が2種類である。もちろん、前後クリック感が3種類以上であってもよく、その一例は次の設定4である。
[設定4]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置では第1の前後クリック感が生じ、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー左右位置では第2の前後クリック感が生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー左右位置では第3の前後クリック感が生じる。
上記混合割合Wa%は、例えば、人体が直接触れると危険な水温となるような割合に設定されてもよい。この場合、熱いお湯が吐出されるか否かがクリック感によって感知されうる。
クリック感の有無と、クリック感の相違とが組み合わされてもよく、その一例は次の設定5である。
[設定5]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置では前後クリック感が生じず、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー左右位置では第1の前後クリック感が生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー左右位置では第2の前後クリック感が生じる。
レバー左右位置によって前後クリック感を相違させるには、係合当接部E1の仕様を周方向位置によって変更すればよい。この係合当接部E1の仕様として、係合当接部E1の高さHb及び係合当接部E1の突起数Nbが例示される。図11の実施形態では、突起数Nbは1である。
前後クリック感をどのように相違させるかは、限定されない。相違させうる前後クリック感の仕様として、以下が例示される。
[仕様1]:吐出ストップ位置から最大吐出位置までレバーを回動させたときの前後クリック感の回数N
[仕様2]:前後クリック感の発生時におけるレバーの前後回動操作の抵抗感
[仕様3]:前後クリック感の発生時における音
なお、抵抗感とは、レバーを回動させるために必要な回転モーメントと同義である。
左右クリック感の仕様は、凸部170の位置、数及び高さに変更されうる。また、左右クリック感の仕様は、弾性部材50の弾性係数によって変更されうる。左右クリック感の調整は容易である。左右クリック感の設計自由度は高い。
球体52の直径を変化させると、当接面側への球体の突出量が変化しうる。クリック機構の発現に球体52を利用することで、球体の直径を変えるだけでも、クリック感の変更が達成されうる。よって、左右クリック感の調整は容易である。
なお、上記実施形態では、ハウジング42は全体として一体成形されている。ハウジング42は、別個に成形された部材が組み合わされていても良い。レバー46と共に左右回動しない固定部材であって、クリック係合部56が係合しうる部材は、本願にいうハウジングに該当する。
前後クリック感と左右クリック感との組み合わせにより、多様なクリック感が達成されうる。目的に応じて、種々のクリック感を設定することができる。設定可能なクリック感の仕様として、以下が例示される。
(クリック仕様A)レバー左右位置によって、前後クリック感が相違する。
(クリック仕様B)レバー前後位置によって、前後クリック感が相違する。
(クリック仕様C)レバー左右位置によって、左右クリック感が相違する。
クリック仕様Aは、例えば、周方向位置によって係合当接部E1の構成を変更することで達成されうる。変更可能な係合当接部E1の構成として、上記高さHb及び上記突起数Nbが例示される。複数の突起が設けられる場合、これらの突起間の間隔も、変更可能な係合当接部E1の構成である。
クリック仕様Bは、例えば、複数の凸部56cを有する場合において、凸部56cの高さを異ならせることで達成されうる。例えば、図11の実施形態において、第1の凸部56cの高さと第2の凸部56cの高さとを相違させることで、クリック仕様Bが達成されうる。
クリック仕様Cは、例えば、周方向位置によって凸部170の構成を変更することで達成されうる。変更可能な凸部170の構成として、上記高さHa及び凸部形状が例示される。
ここで、部材X、Y及びZの分類が説明される。レバー組立体40を構成する部材は、次の3つに分類されうる。
(1)部材X:レバーの左右回動に連動して回転し、且つ、レバーの前後回動に連動して回動又は移動する部材。
(2)部材Y:レバーの左右回動に連動して回転するが、レバーの前後回動によって移動しない部材。
(3)固定部材Z:レバーのいかなる操作に対しても動かない(移動も回転もしない)部材。
上記部材Xとして、可動弁体60(上側部材86及び下側部材88)が挙げられる。上記部材Yとして、回動体44が挙げられる。上記固定部材Zとして、ハウジング42、固定弁体62及びベース体68が挙げられる。
前後クリック機構は、上記実施形態に限定されない。前後クリック機構は、例えば、レバーの前後回動に伴い相対移動する部材間において構成されうる。この相対移動する部材として、上記部材Xと上記固定部材Zとの組み合わせが例示される。好ましくは、部材Xと固定部材Zとの間で、前後クリック機構が構成される。例えば、部材Xと固定部材Zとの間に、凹部及び/又は凸部と出退機構とを設けることで、前後クリック機構が実現されうる。出退機構は、部材Xに設けられても良いし、固定部材Zに設けられても良い。凹部及び/又は凸部は、部材Xに設けられても良いし、固定部材Zに設けられても良い。クリック感の設計自由度の観点からは、凹部及び/又は凸部の設計自由度が高いのが好ましい。この観点から、凹部及び/又は凸部の設置面積が広いのが好ましい。この設置面積の観点から、凹部及び/又は凸部は、固定部材Zに設けられるのが好ましく、ハウジング42に設けられるのがより好ましい。
上記実施形態では、前後クリック機構に係る部材Xの一例として、クリック係合部56が採用されている。部材Xは、例えば可動弁体60(上側部材86)であってもよい。また、可動弁体60(下側部材88)と固定弁体62との間に前後クリック機構が構成されてもよい。これらの前後クリック機構は、係合当接部E1とクリック係合部56とにより構成される前後クリック機構と組み合わせられてもよい。
左右クリック機構は、例えば、レバーの左右回動に伴い相対回転する部材間において構成されうる。この相対回転する部材として、上記部材Yと上記固定部材Zとの組み合わせが例示される。好ましくは、部材Yと固定部材Zとの間で、左右クリック機構が構成される。例えば、部材Yと固定部材Zとの間に、凹部及び/又は凸部と出退機構とを設けることで、左右クリック機構が実現されうる。上記実施形態では、左右クリック機構に係る部材Yの一例として回動体44が採用されている。上記実施形態では、左右クリック機構に係る固定部材Zの一例としてハウジング42が採用されている。上記実施形態では、出退機構の一例として、弾性体と球体との組み合わせが採用されている。
上記部材Xと上記固定部材Zとにより前後クリック機構を構成する場合、上記部材Xと上記固定部材Zとが直接的に接しているのが好ましいが、両部材の間に他部材が介在していてもよい。同様に、部材Yと固定部材Zとの間の左右クリック機構は、部材Yと固定部材Zとが直接的に接しているのが好ましいが、両部材の間に他部材が介在していてもよい。
クリック感は、人によって感知される。クリック感は、視覚では得られない様々な情報を使用者に提供しうる。好ましくは、クリック感は、聴覚及び/又は触覚によって感知される。感知性を高める観点から、聴覚と触覚とが併用されてもよい。聴覚により感知されるクリック感として、音が挙げられる。触覚によって感知されるクリック感として、レバー操作時における抵抗感の変化及び振動が例示される。クリック感の継続時間は限定されない。典型的なクリック感として、比較的短時間の抵抗変化及び音が挙げられるが、比較的長時間のクリック感も可能である。
クリック感により得られうる情報は、多様である。この情報として、以下が例示される。
[情報1]:吐水温度に関する情報
[情報2]:吐出量に関する情報
[情報3]:湯の混合の有無に関する情報
[情報4]:レバー前後位置に関する情報
[情報5]:レバー左右位置に関する情報
上記情報1に係るクリック感として、以下が例示される。
[1a]:吐水温度が高温になることを知らせる左右クリック感
[1b]:水のみの吐出(湯が非混合)であることを知らせる左右クリック感
[1c]:吐水温度の変化を段階的に知らせる複数の左右クリック感
[1d]:吐水温度が高温であることを知らせる前後クリック感
[1e]:水のみの吐出(湯が非混合)であることを知らせる前後クリック感
[1f]:湯の吐出(湯水混合を含む)を知らせる前後クリック感
左右クリック感1aは、例えば、意図しない高温の吐水を抑制するのに寄与しうる。上記左右クリック感1bは、例えば、省エネルギーに寄与しうる。上記左右クリック感1cは、例えば、好みの温度への設定を容易としうる。前後クリック感1dは、例えば、過度に温度が高い吐水を避けるのに寄与しうる。前後クリック感1e及び1fは、例えば、省エネルギーに寄与しうる。上記実施形態では、前後クリック感1fが達成されている。
上記情報2に係るクリック感として、以下が例示される。
[2a]:給湯器が作動する吐出量に達することを知らせる前後クリック感
[2b]:吐出量の変化を段階的に知らせる複数の前後クリック感
前後クリック感2aは、例えば、省エネルギーに寄与しうる。前後クリック感2bは、例えば、意図しない吐出量を避けるのに寄与しうる。
上記情報3に係るクリック感として、以下が例示される。
[3a]:上記境界K1で発現する左右クリック感
[3b]:上記境界K1の近傍で発現する左右クリック感
左右クリック感3aは、例えば、省エネルギーに寄与しうる。左右クリック感3bは、例えば、省エネルギーに寄与しうる。上記実施形態では、左右クリック感3bが達成されている。
上記3bにおける境界K1の近傍として、境界K1の±10度以内、境界K1の±7度以内、境界K1の±5度以内、境界K1の±3度以内等が例示される。
上記情報4に係る情報として、以下が例示される。
[4a]:レバー前後位置が最大吐出位置に近づいていることを知らせる前後クリック感
[4b]:レバー前後位置が最大吐出位置であることを知らせる前後クリック感
上記前後クリック感4a及び4bは、例えば、レバーが限界位置に達するときの衝撃を緩和するのに寄与しうる。この衝撃の緩和は、繰り返しの使用に伴う劣化を抑制しうる。
上記情報5に係る情報として、以下が例示される。
[5a]:レバー左右位置が右限界MRに近づいていることを知らせる左右クリック感
[5b]:レバー左右位置が左限界MLに近づいていることを知らせる左右クリック感
[5c]:レバー左右位置が右限界MRであることを知らせる左右クリック感
[5d]:レバー左右位置が左限界MLであることを知らせる左右クリック感
上記前後クリック感5a、5b、5c及び5dは、例えば、レバーが限界位置に達するときの衝撃を緩和するのに寄与しうる。この衝撃の緩和は、繰り返しの使用に伴う劣化を抑制しうる。
好ましくは、レバー前後位置及び/又はレバー左右位置によってクリック感が相違する。この相違により、より多くの情報を使用者に伝達することができる。この相違により、例えば、上記情報から選ばれる1又は2以上が、効果的に使用者に伝達される。よって、利便性の高い湯水混合栓が実現しうる。
このクリック感の相違として、以下の(A)、(B)、(C)及び(D)が例示される。
(A)レバー左右位置によって、前後クリック感が相違する。
(B)レバー前後位置によって、前後クリック感が相違する。
(C)レバー左右位置によって、左右クリック感が相違する。
(D)レバー前後位置によって、左右クリック感が相違する。
より好ましい態様は、(A)、(B)及び(C)から選択される少なくとも1つか、又は、2つ以上の組み合わせである。
上記態様(A)は、様々な効果を奏しうる。この態様(A)は、吐水温度(湯の混合割合)に関する情報を使用者に与えうる。例えば、湯の混合割合が多くなるほど前後クリック感を顕著とすれば、エネルギーの節約に役立つ。レバー左右位置を変えずにレバーを前後回動させる動作は実使用において頻度が高い。態様(A)は、この高頻度の動作において省エネルギー効果を奏するので、特に好ましい。また、吐水温度の調節が容易とされうる。
上記態様(B)は、様々な効果を奏しうる。この態様(B)は、吐出量に関する情報を使用者に与えうる。例えば、吐出量が多くなるほど前後クリック感を顕著とすれば、水資源及び/又はエネルギーの節約に役立つ。また、吐水量の調節が容易とされうる。
上記態様(C)は、様々な効果を奏しうる。この態様(C)は、吐水温度(湯の混合割合)に関する情報を使用者に与えうる。例えば、湯の混合割合が多くなるほど左右クリック感を顕著とすれば、エネルギーの節約に役立つ。また、吐水温度の調節が容易とされうる。
上記態様(A)として、以下が例示される。
(A1)水吐出位置(水100%)と、湯混合吐出位置(湯100%を含む)との間で、前後クリック感が相違する。
(A2)水吐出位置(水100%)と、水の割合が高い湯混合吐出位置と、水の割合が低い湯混合吐出位置(湯100%を含む)との間で、前後クリック感が相違する。
(A3)水吐出位置(水100%)と、湯混合吐出位置(湯100%を含まない)と、湯吐出位置(湯100%)との間で、前後クリック感が相違する。
(A4)水吐出位置(水100%)と、水の割合が高い湯混合吐出位置と、水の割合が低い湯混合吐出位置と、湯吐出位置(湯100%)との間で、前後クリック感が相違する。(A5)水吐出位置(水100%)と、使用頻度が高い湯混合吐出位置と、使用頻度が高くない湯混合吐出位置(湯100%を含む)との間で、前後クリック感が相違する。
(A6)水吐出位置(水100%)と、使用頻度が高い湯混合吐出位置と、使用頻度が高くない湯混合吐出位置(湯100%を含まない)と、湯吐出位置(湯100%)との間で、前後クリック感が相違する。
汎用性の観点から、(A1)、(A2)及び(A3)が好ましい。湯の節約の観点からは、湯が使用されているか否かが分かりやすくシンプルな(A1)が好ましい。また、操作性を重視する場合、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)及び(A6)が好ましい。これら(A2)から(A6)では、クリック感の相違により得られる情報量が多く、吐水の状況が分かりやすい。
上記態様(C)として、以下が例示される。
(C1)水吐出位置(水100%)と、湯混合吐出位置(湯100%を含む)との間で、左右クリック感が相違する。
(C2)水吐出位置(水100%)と、水の割合が高い湯混合吐出位置と、水の割合が低い湯混合吐出位置(湯100%を含む)との間で、左右クリック感が相違する。
(C3)水吐出位置(水100%)と、湯混合吐出位置(湯100%を含まない)と、湯吐出位置(湯100%)との間で、左右クリック感が相違する。
(C4)水吐出位置(水100%)と、水の割合が高い湯混合吐出位置と、水の割合が低い湯混合吐出位置と、湯吐出位置(湯100%)との間で、左右クリック感が相違する。(C5)水吐出位置(水100%)と、使用頻度が高い湯混合吐出位置と、使用頻度が高くない湯混合吐出位置(湯100%を含む)との間で、左右クリック感が相違する。
(C6)水吐出位置(水100%)と、使用頻度が高い湯混合吐出位置と、使用頻度が高くない湯混合吐出位置(湯100%を含まない)と、湯吐出位置(湯100%)との間で、左右クリック感が相違する。
汎用性の観点から、(C1)、(C2)及び(C3)が好ましい。湯の節約の観点からは、湯が使用されているか否かが分かりやすくシンプルな(C1)が好ましい。また、操作性を重視する場合、(C2)、(C3)、(C4)、(C5)及び(C6)が好ましい。これら(C2)から(C6)では、クリック感の相違により得られる情報量が多く、吐水の状況が分かりやすい。
上記(C1)に、次の(C11)が組み合わされても良い。
(C11)水吐出範囲と湯混合吐出位置との境界で、左右クリック感が発現する。
上記(C2)に、次の(C21)が組み合わされても良い。
(C21)水吐出範囲と水の割合が高い湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc1が発現し、水の割合が高い湯混合吐出範囲と水の割合が低い湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc2が発現する。
この(C21)において、左右クリック感kc1と左右クリック感kc2とが相違していてもよい。
上記(C3)に、次の(C31)が組み合わされても良い。
(C31)水吐出範囲と湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc3が発現し、湯混合吐出範囲と湯吐出範囲との境界で左右クリック感kc4が発現する。
この(C31)において、左右クリック感kc3と左右クリック感kc4とが相違していてもよい。
上記(C4)に、次の(C41)が組み合わされても良い。
(C41)水吐出範囲と水の割合が高い湯混合吐出範囲の境界で左右クリック感kc5が発現し、水の割合が高い湯混合吐出範囲と水の割合が低い湯混合吐出範囲との間で左右クリック感kc6が発現し、水の割合が低い湯混合吐出範囲と湯吐出範囲との間で左右クリック感kc7が発現する。
この(C41)において、左右クリック感kc5、左右クリック感kc6及び左右クリック感kc7から選ばれる少なくとも2つ又は3つ全てが相違していてもよい。
上記(C5)に、次の(C51)が組み合わされても良い。
(C51)水吐出範囲と使用頻度が高い湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc8が発現し、使用頻度が高い湯混合吐出範囲と使用頻度が高くない湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc9が発現する。
この(C51)において、左右クリック感kc8と左右クリック感kc9とが相違していてもよい。
上記(C6)に、次の(C61)が組み合わされても良い。
(C61)水吐出範囲と使用頻度が高い湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc10が発現し、使用頻度が高い湯混合吐出範囲と使用頻度が高くない湯混合吐出範囲との境界で左右クリック感kc11が発現し、使用頻度が高くない湯混合吐出範囲と湯吐出範囲との間で左右クリック感kc12が発現する。
この(C61)において、左右クリック感kc10、左右クリック感kc11及び左右クリック感kc12から選ばれる少なくとも2つ又は3つ全てが相違していてもよい。
上記態様(A)では、レバー左右位置を複数の範囲に区分し、これらの範囲ごとに前後クリック感を相違させるのが好ましい。また、上記(C)では、レバー左右位置を複数の範囲に区分し、これらの範囲ごとに左右クリック感を相違させるのが好ましい。また、上記(C11)、(C21)、(C31)、(C41)、(C51)及び(C61)に示されるように、区分された複数の範囲の境界で、左右クリック感を発現させてもよい。この境界における左右クリック感は、本願記載のあらゆる態様と組み合わせることが可能である。
上記態様(A)及び(B)における、前後クリック感の相違として、以下が例示される。
(X1)前後クリック感の有無
(X2)前後クリック感の感覚の相違
(X3)前後クリック感の回数の相違
(X4)前後クリック感の間隔の相違
(X5)上記(X1)から(X4)から選ばれる2以上の組み合わせ
湯の節約を重視する観点からは、感覚の差が顕著な相違(X1)が好ましい。また、レバー左右位置における複数の範囲を認識させたい場合、上記(X5)により、前後クリック感の相違により得られる情報を増やすのが好ましく、例えば相違(X1)と相違(X3)との組み合わせが好ましい。
前後クリック感の感覚としては、触覚による感覚(抵抗感等)及び聴覚による感覚(音)が例示される。上記相違(X2)として、抵抗感の相違及び音の相違が例示される。音の相違として、音の周波数の相違が例示される。
上記相違(X2)は、例えば、凹部の深さ及び/又は凸部の高さを相違させることによって実現しうる。上記相違(X3)は、例えば、凹部及び/又は凸部の数を相違させることによって実現しうる。上記相違(X4)は、例えば、凹部及び/又は凸部の間隔を相違させることによって実現しうる。上記相違(X3)における回数とは、例えば、前後回動の全範囲における前後クリック感の発生回数(前述の回数N)である。
図11の実施形態では、凸部56cの数Naが5である。ただし、係合当接部E1を乗り越えうる凸部56kの数Nkは3である。このため、上記発生回数Nは3である。前後クリック感の認知性の観点から、発生回数Nは、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。発生回数Nが多すぎると、クリック間隔が小さすぎて、クリック感の認知性が低下することがある。この観点から、発生回数Nは、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下が更に好ましい。発生回数Nを好ましい値とする観点から、凸部56cの数Naは、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。同様に、凸部56cの数Naは、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下が更に好ましい。
上述の通り、係合当接部E1の突起数Nbは、複数であってもよい。また、周方向位置によって突起数Nbが変更されてもよい。最適な位置のみに突起数Nbを配置する観点からは、突起数Nbは1であるのが好ましい。
図11の実施形態では、複数の凸部56cが設けられている。レバー軸線Z1から凸部56cの先端までの距離Dcは、全ての凸部56cにおいて等しい。よって、凸部56cのそれぞれから生じる前後クリック感が一定とされている。よって、違和感の少ないクリック感の設定が可能である。また、凸部56cのそれぞれに生ずる弾性変形が一定であるため、使用に伴う凸部56cの劣化を均一化することができる。換言すれば、凸部56cへの負荷が、複数の凸部56cに均等に分散されうる。よって、クリック係合部56の耐久性が向上しうる。
一方、凸部56cごとに距離Dcを相違させれば、凸部56cのそれぞれから生じる前後クリック感を相違させることができる。この場合、前述のクリック仕様Bが達成されうる。
図11の実施形態では、係合当接部E1が凸部t1である。図11において一点鎖線で示されるのは、レバー軸線Z1を含み且つハウジング42の中心軸に対して垂直な平面Ph1である。通常の使用状態では、平面Ph1は水平である。係合当接部E1は、この平面Ph1と交わる位置に配置されている。この配置により、係合当接部E1とレバー軸線Z1との距離を近づけることができる。よって、係合当接部E1が小型化が可能となる。また、他の部位に干渉されることなく、係合当接部E1とクリック係合部56とを確実に係合させることが可能となる。
上記実施形態では、クリック係合部56がレバー46に設けられている。このため、前後クリック機構を設けるためのスペースが抑制されている。また、シンプルな構造により、生産性及び信頼性に優れた前後クリック機構が実現されている。
図6において一点鎖線で示されているのは、レバー軸線Z1を含み且つクリック係合部56の重心を通る平面Ph2である。クリック係合部56は、この平面Ph2に対して対称である。複数の凸部56cは、この平面Ph2に対して対称に配置されている。これらの対称性により、複数で且つ均等なクリック感が得られうる。これらの対称性は、コンパクトなクリック機構の実現に寄与している。
上記実施形態では、クリック係合部56がレバー46の後面に設けられている。クリック係合部56がレバー46の側面53(図8参照)に設けられた場合、側面53とレバー挿入孔106との間にクリック係合部56が介在することになる。この場合、レバー挿入孔106が、レバー46を回動可能に且つ確実に保持することが難しくなる。よってレバー46のがたつき等により、レバー前後回動の精度が低下しやすい。この精度の低下により、前後クリック機構の係合にバラツキが生じうる。レバー前後回動の精度を高める観点からも、クリック係合部は、上記レバーの前面及び/又は後面に配置されているのが好ましい。この配置により、コンパクトで且つシンプルな構造の前後クリック機構が実現されうる。
上記実施形態では、クリック係合部56に中空部が設けられている。この中空部により剛性を調整できるため、弾性変形の度合いを中空部によって調整することができる。よって材料選択の自由度が拡大される。中空部は、クリック係合部56の軽量化にも寄与しうる。
レバー46は、ハンドル14に連結されている。レバー46からの振動は、使用者に伝達されやすい。レバー46にクリック係合部56が取り付けられているため、前後クリック感が使用者に伝わりやすい。
クリック係合において、凸部56cには曲げ変形が生じる(図11参照)。この曲げ変形の方向は、レバー46の前後回動の方向に沿っている。凸部56cの曲げ変形に起因する振動は、レバー46の前後回動の方向に生じやすい。レバー46は前後回動が可能な状態にあるから、前後回動に沿った振動を伝達しやすい。このため、凸部56cの曲げ変形に起因する振動は、使用者に伝わりやすい。
上述の通り、凸部56cの曲げ変形の方向は、レバー46の前後回動の方向に沿っている。クリック係合部56の曲げ変形に起因する振動は、レバー軸線Z1に対して垂直な方向には生じにくい。よって、この振動によるレバー軸48への負荷は小さい。使用によるレバー軸48の劣化が抑制されるため、レバー46の前後回動の精度が長期間維持されうる。よって、前後クリック機構が安定的に維持されうる。
上記実施形態では、前後クリック機構がシンプルな構造であり、介在物が少ない。よって、部材の寸法誤差及び組み付けの誤差によるクリック感のバラツキを抑制することができる。また上述の通り、上記実施形態では、クリック感の設定自由度が高い。
上記実施形態では、クリック係合部56が着脱可能である。よって、クリック係合部56を取り外すことにより、前後クリック感を無くすこともできる。例えば、クリック係合部56の有無だけで、前後クリック感を有する製品と、前後クリック感を有さない製品とを製造することができる。これは、部品の共通化に寄与しうる。
クリック係合部56は、レバー軸線Z1を中心として回動する。従って、クリック係合部56の係合部分(凸部56c)とレバー軸線Z1との距離は変化しない。またレバー46は、ハウジング42に対して回動するが、ハウジング42に対して移動しない。ハウジング42の内面とレバー軸線Z1との距離は実質上変化しない。よって、レバー46の左右回動及び前後回動に係わらず、係合度合いが一定とすることができる。よって、一定の前後クリック感が得られうる。
図28は、第2実施形態に係るレバー組立体400の断面図である。このレバー組立体400では、レバー460の後面470及び前面472に、クリック係合部56が設けられている。ハウジング420は、後面470に設けられたクリック係合部56と係合しうる第1の係合当接部E11と、前面472に設けられたクリック係合部56と係合しうる第2の係合当接部E12とを有している。係合当接部E11と係合当接部E12とは、周方向位置が相違する。このレバー組立体400では、第1の係合当接部E11と第2の係合当接部E12とでクリック感が生じうる。よってクリック感の多様化が可能となる。係合当接部E11に起因するクリック感のタイミングを、係合当接部E12の基づくクリック感のタイミングと相違させてもよい。係合当接部E11に起因するクリック感のタイミングを、係合当接部E12の基づくクリック感のタイミングと一致させてもよい。本実施形態では、クリック感の発生を複数の係合当接部E1で分担させることができ、係合当接部E1の負担を軽減することができる。
図29は、第3実施形態に係るレバー組立体402の断面図である。このレバー組立体402では、レバー462の後面に、クリック係合部562が設けられている。このクリック係合部562は、レバー462と一体成形されている。クリック係合部562は、凸部形成部tk3と、空洞部v3と、接続部s3とを有する。凸部形成部tk3には、複数(5つ)の凸部t3が設けられている。接続部s3は、凸部形成部tk3とレバー462とを繋いでいる。クリック係合においては、弾性変形が、凸部t3及び凸部形成部tk3に生ずる。すなわち、凸部t3及び凸部形成部tk3が弾性変形部である。凸部形成部tk3の弾性変形により、凸部t3の弾性変形量が抑制される。よって、クリック係合部562の耐久性が高められている。
図30は、第4実施形態に係るレバー組立体404の断面図である。このレバー組立体404では、レバー464の後面に、クリック係合部564が設けられている。このクリック係合部564は、レバー464とは別体であり、前述のクリック係合部56と同様に、レバー464に取り付けられている。クリック係合部564は、ベース部564aと凸部564cとを有する。凸部564cは複数である。中央寄りの3つの凸部564cは、係合当接部E1を乗り越えうる凸部564kである。凸部564kは複数である。クリック係合において、凸部564kに弾性変形が生じる。この弾性変形は曲げ変形である。クリック係合部56と異なり、クリック係合部564は中実である。前述の凸部56cには中空部を有するものが含まれていたが、凸部564cは中実である。中実の凸部564cは耐久性に優れる。
図31は、第5実施形態に係るレバー組立体406の断面図である。このレバー組立体406では、レバー466の後面に、クリック係合部566が設けられている。このクリック係合部566は、板バネ566aと出退部材566bとを有する。出退部材566bの先端に、凹凸部566cが設けられている。凹凸部566cが、係合当接部E1と係合する。この係合により、板バネ566aが変形し、出退部材566bが退行方向又は突出方向に移動する。レバー466の前後回動に伴い、係合当接部E1は、凹凸部566cの凸部と凹部とに交互に係合する。これらの係合によりクリック感が生じる。
図32は、第6実施形態に係るレバー組立体408の断面図である。このレバー組立体408では、レバー468の後面に、クリック係合部568が設けられている。このクリック係合部568は、コイルバネ568aと出退部材568bとを有する。出退部材568bの先端に、凸部568cが設けられている。出退部材568bには、収容凹部568dが設けられている。凸部568cが、係合当接部E1と係合する。レバー468にはスライド穴468aが設けられている。コイルバネ568aの一端部は、収容凹部568dに収容されている。出退部材568bは、このスライド穴468aの内部をスライド移動する。コイルバネ568aは、出退部材568bを、突出方向に付勢している。係合当接部E1と凸部568cとの係合により、コイルバネ568aが圧縮変形する。係合当接部E1との係合及び係合解除により、クリック感が生じる。
本実施形態では、係合当接部E1として、第1の係合当接部E21と、第2の係合当接部E22とが設けられている。第1の係合当接部E21の周方向位置は、第2の係合当接部E22の周方向位置と同じである。前述の突起数Nbは2である。よって、凸部568の数Naは1であるが、上記発生回数Nは2である。
これらの実施形態に例示されるように、多様な前後クリック機構が可能である。
第1実施形態に係るクリック係合部56(図11)では、凸部56cが弾性変形部である。第2実施形態に係るクリック係合部56(図28)でも、凸部56cが弾性変形部である。第3実施形態に係るクリック係合部562(図29)では、凸部t3及び凸部形成部tk3が弾性変形部である。第4実施形態に係るクリック係合部564(図30)では、凸部564cが弾性変形部である。第5実施形態に係るクリック係合部566(図31)では、板バネ566aが弾性変形部である。第6実施形態に係るクリック係合部568(図32)では、コイルバネ568aが弾性変形部である。クリック係合において、これらの弾性変形部に、弾性変形及び変形回復が生じる。この弾性変形及び/又は変形回復に伴い、クリック感が生じる。これら実施形態の各弾性変形部は、弾性体であればよく、上記具体例の構造に限定されない。
第5及び第6実施形態では、クリック係合部が出退機構を有している。クリック係合において、この出退機構に突出及び退行が生じる。この突出及び退行により、係合及び係合解除を伴うクリック係合が可能とされている。これに対して、第1、第2、第3及び第4実施形態では、弾性変形が曲げ変形であり、この曲げ変形により、係合及び係合解除を伴うクリック係合が可能とされている。クリック感が奏される限り、係合の態様は限定されない。またクリック係合は、凸部同士の係合に限定されず、例えば、凸部と凹部との係合でもよい。
図33(a)及び図33(b)は、係合当接部E1の変形例である。
図33(a)の実施形態では、ハウジング421に凹部421aが設けられている。この凹部421aに球体b1が配置されている。球体b1の一部は、ハウジング421の内面421bよりも突出している。凹部421aの形状は、球体b1に対応している。この球体b1は、凹部421aに、回転可能な状態で保持されている。この実施形態では、球体b1の回転が可能であるため、クリック係合におけるクリック係合部の摩擦が軽減されうる。よって、使用に伴うクリック機構の劣化が抑制される。
図33(b)の実施形態では、ハウジング423に凹部423aが設けられている。この凹部423aに弾性体sp1が収容されている。弾性体sp1はコイルバネである。このコイルバネsp1の一端に、球体b2が配置されている。球体b2とコイルバネsp1とにより、出退機構が構成されている。球体b2は、回転可能な状態で、コイルバネsp1及び凹部423aに保持されている。本実施形態では、係合当接部E1が出退機構を有している。
このように、係合当接部E1が弾性変形部を有していてもよい。この弾性変形部により、クリック係合部の弾性変形量を軽減することができ、使用に伴うクリック機構の劣化が抑制される。また、クリック係合部における弾性変形が不要とされうる。よって、クリック係合部の設計自由度が向上しうる。
明確な左右クリック感を得る観点から、凸部170(図16等参照)の高さHaは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHaが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHaは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部170の高さHaは0.4mmとされた。
明確な前後クリック感を得る観点から、係合当接部E1の高さHb(図11参照)は、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHbが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHbは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、係合当接部E1の高さHbは0.4mmとされた。
組立容易性の観点、及び、明確な左右クリック感を得る観点から、球体52の直径Paは、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。直径Paが過大である場合、レバー軸48の直径が過大となったり、レバー組立体40が過度に大型化することがある。また、この大型化を避けるために、ハウジング42等が過度に薄くされうる。これらの観点から、直径Paは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体52の直径Paは3.0mmとされた。
クリック係合部の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。弾性の観点からは樹脂が好ましい。樹脂は、クリック係合部を中空としたときの弾性の観点からも好ましい。クリック時の感触及び耐久性の観点から、ポリアセタール樹脂(POM)がより好ましい。上記実施形態では、POMが用いられた。
ハウジングの材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。耐久性、耐錆性、及び衛生面の観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。また、ハウジングのうち、係合当接部E1を別部材とすることもできる。クリック機構により発生する音(クリック音)は、心地よく且つ聞き取りやすいのが好ましい。係合当接部E1の材質は、このクリック音に影響する。良好なクリック音を得る観点及び耐久性の観点から、係合当接部E1の材質は、ステンレス鋼が好ましく、バネ用ステンレス鋼がより好ましい。上記実施形態では、ハウジングは係合当接部E1を含んで一体成形された一体部材とされ、この一体部材の材質はガラス繊維強化樹脂とされた。
回動体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、回動体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOMが用いられた。
上記軸保持体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、軸保持体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
上記球体の材質として、樹脂及び金属が例示される。クリック機構の音及び耐久性の観点から、金属が特に好ましい。上記実施形態ではステンレス合金が用いられた。
左右クリック機構に用いられる上記弾性体として、ゴム及びコイルバネが例示される。繰り返しの使用による劣化を抑制する観点、及び、クリック感の調整の自由度の観点から、コイルバネが好ましい。このコイルバネの材質としては、バネ鋼材が好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材のコイルバネが用いられた。
上記レバー軸の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。水による腐食を抑制する観点から、ステンレス合金及び樹脂が好ましい。上記実施形態では、ステンレス合金が用いられた。
可動弁体の上側部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。不快音回避の観点から、上側部材の材質としては、樹脂が好ましい。また、この上側部材を樹脂とすることで、可動弁体全体としての製造コストが抑制される。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
可動弁体の下側部材の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。固定弁体との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。
固定弁体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。可動弁体(下側部材)との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。
パッキン及びOリングの材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。伸縮性により、組立性が向上し、製造誤差(寸法誤差等)が緩和されうる。これらの観点から、ゴム材が好ましい。上記実施形態では、ゴム材が用いられた。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。