以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
本願では、「上下方向」との文言が用いられる。特に説明がない限り、この上下方向は、後述される上ケースの軸方向である。後述される実施形態では、この上下方向は、鉛直方向に一致している。この上下方向は、鉛直方向に一致していなくてもよい。本願では、「軸方向」との文言が用いられる。特に説明がない限り、この「軸方向」は、上ケースの軸方向である。本願では、「周方向」との文言が用いられる。特に説明がない限り、この「周方向」は、上ケースの周方向である。本願では、「径方向」との文言が用いられる。特に説明がない限り、この「径方向」は、上ケースの半径方向である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。吐出部16は、ヘッド24を有する。湯水混合栓10は、例えば、流し台、洗面台等に取り付けられ、水栓器具として使用される。
湯水混合栓10では、シャワー吐出から通常吐出まで連続的に水形を切り替えることができる。ヘッド24は、水形を切り替えるための切替レバー26を有する。湯水混合栓10では、原水と浄水との切替が可能である。ヘッド24は、原水と浄水とを切り替えるための切替ボタン28と、吐水が原水か浄水かを表示する表示部30とを有する。
ハンドル14の上下方向における回動により、吐出量が調節される。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の左右回動(旋回)により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の左右回動により、吐水温度の調節が可能である。ハンドル14の左右位置は、水が吐出される水領域と、湯と水との混合水が吐出される湯水混合領域と、湯が吐出される湯領域とを有している。
なお、上述の通り、ハンドル14は上下方向に回動されるが、これに伴いレバー軸46(後述)は前後方向に回動される。このため、本願では、ハンドル14の上下方向への回動を、「前後回動」とも称する。
図2は、バルブ組立体40の斜視図である。湯水混合栓10は、その内部に、バルブ組立体40を有する。バルブ組立体40は、本体12の内部に配置されている。ハンドル14は、レバー軸(後述)に固定されている。なお、バルブ組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、バルブ組立体40は交換可能である。
図3は、バルブ組立体40の分解斜視図である。図3が示すように、バルブ組立体40は、上ケース42、回転体44、レバー軸46、軸体48、可動弁体50、整流網52、固定弁体54、固定弁体下側部材56、固定リング58及び下ケース60を有する。
レバー軸46は、前後回動可能な状態で、回転体44に取り付けられている。軸体48は、回転体44の軸孔h1と、レバー軸46の軸孔h2とを、貫通している。この軸体48を中心として、レバー軸46は前後回動しうる。ハンドル14の前後回動により、ハンドル14に固定されたレバー軸46は前後回動する。一方、レバー軸46の左右回動により、回転体44は回転する。ハンドル14の左右回動により、レバー軸46も左右回動する。
バルブ組立体40は、各種のOリング62を有する。これらのOリング62は、水密性を高め、水漏れを防止する。
バルブ組立体40は、低摩擦シート64を有する。低摩擦シート64は、上ケース42と回転体44との間に設けられ、摩擦係数の抑制に寄与する。低摩擦シート64は、回転体44の円滑な回転に寄与する。
上ケース42は、上部42aと下部42bとを有する。上部42aは、円筒状である。下部42bは、円筒状である。上部42aの外周面の直径は、下部42bの外周面の直径よりも小さい。上部42aの上側は、開放されている。
可動弁体50は、上側部材50aと、可動弁体本体50bとを有する。上側部材50aは、可動弁体本体50bに固定されている。本実施形態では、上側部材50aと可動弁体本体50bとは、互いに別部材である。この場合、上側部材50aと可動弁体本体50bとのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。もちろん、可動弁体50は全体として一体成形されていてもよい。
可動弁体50は、流路形成凹部(図示されず)を有している。この流路形成凹部は、可動弁体本体50bの下面に設けられている。この流路形成凹部に、整流網52がはめ込まれている。整流網52の外形は、流路形成凹部の形状に対応している。整流網52は、流路形成凹部における水の流れを整え、異音の発生を抑制する。
上側部材50aの上面には、レバー軸46の下端46aと係合するレバー係合凹部53が設けられている。レバー軸46の下端46aは、このレバー係合凹部53に挿入されている。レバー軸46の動きに連動して、可動弁体50が固定弁体54の上を摺動する。可動弁体50の流路形成凹部と固定弁体54との相対的な位置関係に基づいて、吐出量及び湯と水との混合割合が決定される。
なお、レバー軸46とレバー係合凹部53との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー軸46とレバー係合凹部53との間に他の部材が介在していてもよい。
固定弁体54は、湯用弁孔54a、水用弁孔54b及び排出孔54cを有する。流路形成凹部と湯用弁孔54aとが重なると、湯用弁孔54aから流路形成凹部に湯が流入する。流路形成凹部と水用弁孔54bとが重なると、水用弁孔54bから流路形成凹部に水が流入する。湯、水又はそれらの混合流体が、排出孔54cから排出される。
固定弁体下側部材56は、固定弁体54に固定されている。この固定は、固定リング58によって達成されている。固定弁体54は、周方向の複数箇所(3箇所)に、突出部ts1を有する。固定弁体56は、周方向の複数箇所(3箇所)に、突出部ts2を有する。固定リング58は、周方向の複数箇所(3箇所)に、保持部ts3を有する。保持部ts3の内周面には、スライド凹部r3が設けられている。上下に重ねられた突出部ts1及び突出部ts2が、保持部ts3のスライド凹部r3にスライド挿入されている。この結果、突出部ts1及び突出部ts2がスライド凹部r3に保持され、突出部ts1が突出部ts2に固定される。この固定状態では、突出部ts1、突出部ts2及び保持部ts3の位相が一致している。
上記スライド挿入を実施するためには、先ず、突出部ts1及び突出部ts2の位相を一致させて固定弁体54と固定弁体下側部材56とを重ねた重複体を作成する。この重複体では、突出部ts1と突出部ts2とが重なった重複突出部が形成される。次いで、保持部ts3がこの重複突出部同士の間に位置するように、固定リング58を上記重複体に載せる。最後に、固定リング58を上記重複体に対して回転させる。この相対回転により、重複突出部(突出部ts1及び突出部ts2)が、スライド凹部r3にスライド挿入される。
バルブ組立体40は、押上バネ66を有する。押上バネ66は、下ケース60と固定弁体下側部材56との間に配置される。押上バネ66は、固定弁体下側部材56を上側に付勢している。すなわち、押上バネ66は、固定弁体54を上側に付勢している。押上バネ66は、可動弁体50と固定弁体54との間の接触圧を高めている。押上バネ66は、可動弁体50と固定弁体54との当接面からの水漏れを抑制する。
固定弁体下側部材56は、湯導入口56a、水導入口56b及び吐出口56cを有する。下ケース60は、湯導入口60a、水導入口60b及び吐出口60cを有する。湯は、湯導入口60a及び湯導入口56aを経由して、固定弁体54の湯用弁孔54aに至る。水は、水導入口60b及び水導入口56bを経由して、固定弁体54の水用弁孔54bに至る。流路形成凹部からの流体は、排出孔54c及び吐出口56cを経由して、吐出口60cに至る。湯導入口60aに、湯導入管18が接続されている。水導入口60bに、水導入管20が接続されている。吐出口60cに、吐出管22が接続されている。
図2及び図3が示すように、バルブ組立体40は、クリック部材V1を有する。クリック部材V1は、回転体44に回転可能に取り付けられている。
図3が示すように、バルブ組立体40は、クリック弾性体E2を有する。本実施形態では、クリック弾性体E2は、ねじりバネ(ねじりコイルバネ)である。このクリック弾性体E2は、それ自身が相手面(後述のクリック案内面)を叩くことで、クリック感を生じさせる。
図3が示すように、バルブ組立体40は、クリック付勢部材E1を有する。クリック付勢部材E1は、クリック部材V1を、クリック係合が生じる方向に付勢している。
図3が示すように、バルブ組立体40には、プレート70が取り付けられている。プレート70は、上ケース42の上面に形成された凹凸面42cに係合し、且つ、水栓本体12の内面においてこの凹凸面42cに対向する対向面(図示されず)にも係合する。プレート70は、本体12に対するバルブ組立体40の回転を防止する。
図4は、バルブ組立体40の斜視図である。ただし、見やすさを考慮して、この図4では、レバー軸46が除去されている。図5は、バルブ組立体40の上部の斜視図である。ただし、見やすさを考慮して、この図5では、上ケース42が除去されている。
図4及び図5が示すように、回転体44は、回転軸R1を有する。回転軸R1は、上下方向に延びる突起である。回転軸R1は、回転体44に固定されている。クリック部材V1は、回転軸R1に回転可能に固定されている。クリック部材V1は、上下方向に対して垂直な平面に沿って回転する。クリック部材V1は、水平面に沿って回転する。
図5が示すように、レバー軸46は、クリック当接面k1を有する。このクリック当接面k1は、レバー軸46の側面に設けられている。クリック当接面k1は、複数の凹部rs1を有する。これらの凹部rs1により、非平面部が形成されている。この非平面部は、凹凸面である。
図6は、クリック部材V1の平面図である。クリック部材V1は、軸孔Vhと、第1端部Vt1と、第2端部Vt2と、付勢受け部Vfとを有する。第1端部Vt1は、クリック部材V1の一部であって、軸孔Vhよりも一方側の部分である。第2端部Vt2は、クリック部材V1の一部であって、軸孔Vhよりも他方側の部分である。軸孔Vhは、第1端部Vt1と第2端部Vt2との境界に位置している。
第1端部Vt1は、係合当接部kt1を有する。係合当接部kt1は、凹部rs1に入り込みうる形状を有している。係合当接部kt1は、先端が尖った形状を有している。係合当接部kt1が凹部rs1に入り込むことで、クリック係合が達成されている。
第2端部Vt2は、後端当接部kt2を有する。後端当接部kt2は、第2端部Vt2に形成された角部である。後端当接部kt2は、上部42aの内面42dに当接しうる位置にある。
付勢受け部Vfは、クリック部材V1の側面に凹部を形成している。この付勢受け部Vfに、クリック付勢部材E1の端部(作用端)が当接している(図5参照)。付勢受け部Vfは、係合当接部kt1の反対側に設けられている。
軸孔Vhは、貫通孔である。軸孔Vhは、長穴である。軸孔Vhは、例えば、円形孔であってもよい。
図7(a)は、クリック付勢部材E1の側面図である。図7(b)は、クリック付勢部材E1の平面図である。クリック付勢部材E1は、巻回部E10と、第1アームE11と、第2アームE12とを有する。第1アームE11は、基端Et11を有する。第2アームE12は、作用端Et12を有する。なお、図7(a)及び図7(b)は、自然状態(力が作用していない状態)のクリック付勢部材E1を示す。
図8(a)は、クリック弾性体E2の側面図である。図8(b)は、クリック弾性体E2の平面図である。クリック弾性体E2は、巻回部E20と、第1アームE21と、第2アームE22とを有する。第1アームE21は、基端Et21を有する。第2アームE22は、作用端Et22を有する。なお、図8(a)及び図8(b)は、自然状態(力が作用していない状態)のクリック弾性体E2を示す。
図3及び図4が示すように、回転体44は、第1支持部S1を有している。この第1支持部S1は、上下方向に延びる突起である。クリック付勢部材E1は、第1支持部S1に支持されている。クリック付勢部材E1の巻回部E10が、第1支持部S1に支持されている。図5がよく示すように、巻回部E10の内側に第1支持部S1が挿通されている。
図4及び図5が示すように、クリック付勢部材E1の基端Et11は、上ケース42の上部42aの内面42dに当接しうる位置にある。
クリック付勢部材E1の作用端Et22は、クリック部材V1の付勢受け部Vfに当接している(図4及び図5参照)。
図7(b)がよく示すように、基端Et11は、曲げられている。この曲がりの外側部分が、屈曲外側部Ct11とも称される。この屈曲外側部Ct11が、内面42dに当接しうる。当接部分を屈曲外側部Ct11とすることで、当接における摺動抵抗が抑制され、且つ、安定的な当接が可能となる。
図7(a)がよく示すように、作用端Et12は、曲げられている。この曲がりにより、作用端Et12の先端部は付勢受け部Vfを押圧しやすいように配向されている。具体的には、作用端Et12の先端部は、上下方向に配向している(図4及び図5参照)。
図3及び図4が示すように、回転体44は、第2支持部S2を有している。この第2支持部S2は、上下方向に延びる突起である。クリック弾性体E2は、第2支持部S2に支持されている。より詳細には、クリック弾性体E2の巻回部E20に、第2支持部S2が挿通されている。この結果、クリック弾性体E2の巻回部E20が、第2支持部S2に支持されている。
図4から理解されるように、クリック弾性体E2の基端Et21は、レバー軸46(の側面)に当接している。レバー軸46は、クリック当接面k1が設けられている側面と、その反対側の側面とを有するが、基端Et21は、当該反対側の側面に当接している。
図4が示すように、クリック弾性体E2の作用端Et22は、上部42aの内面42dに当接している。
図8(b)がよく示すように、基端Et21は、曲げられている。この曲がりの外側部分が、屈曲外側部Ct21とも称される。この屈曲外側部Ct21が、レバー軸46の側面に当接している。当接部分を屈曲外側部Ct21とすることで、当接における摺動抵抗が抑制され、且つ、安定的な当接が可能となる。
図8(a)及び図8(b)が示すように、作用端Et22は、曲げられている。この曲がりの外側部分が、屈曲外側部Ct22とも称される。この屈曲外側部Ct22が、上部42aの内面42dに当接している。当接部分を屈曲外側部Ct22とすることで、当接における摺動抵抗が抑制され、且つ、安定的な当接が可能となる。
図9は、ハンドル14の左右位置を説明するための図である。ハンドルの左右位置は、平面視におけるハンドル14の回転角度である。ハンドル14の左右位置が正面FTにあるとき、ハンドル14の左右位置は0度である。ハンドル14の左右位置が正面FTから湯側に角度θ1の位置にあるとき、ハンドル14の左右位置は、「湯側θ1度」と称される。ハンドル14の左右位置が正面FTから水側に角度θ2の位置にあるとき、ハンドル14の左右位置は、「水側θ2度」と称される。
図10は、ハンドル14の左右位置が水側30度であるときの、バルブ組立体40の平面図である。図11は、ハンドル14の左右位置が水側10度であるときの、バルブ組立体40の平面図である。図12は、ハンドル14の左右位置が正面(0度)であるときの、バルブ組立体40の平面図である。図13は、ハンドル14の左右位置が湯側10度であるときの、バルブ組立体40の平面図である。図14は、ハンドル14の左右位置が湯側30度であるときの、バルブ組立体40の平面図である。
ただし、図12は、可動端KDが湯側方向D1に動いている状態を示している。
なお本願では、ハンドル14の左右位置が、ハンドル左右位置とも称される。また、ハンドル14の前後位置が、ハンドル前後位置とも称される。また、これらハンドル左右位置とハンドル前後位置とを総称して、ハンドル位置と称する。
前述の通り、ハンドル14が左右回動されると、ハンドル14と共に回転体44が回転する。これに伴い、回転体44に取り付けられているクリック部材V1、クリック付勢部材E1及びクリック弾性体E2も回転する。一方、レバー軸46が左右回動されても、上ケース42は回転しない。従って、クリック付勢部材E1の基端Et11と上ケース42の内面42dとの間で、相対移動が生じる。また、クリック弾性体E2の作用端Et22と上部42aの内面42dとの間で、相対移動が生じる。また、第2端部Vt2(後端当接部kt2)と内面42dとの間で、相対移動が生じる。これらの相対移動を利用して、クリック機構を構成することができる。また、これらの相対移動を利用して、クリック機構が発現するか否かの切替を行うことができる。
ハンドル14が前後回動されると、レバー軸46が前後回動される。これに伴い、レバー軸46のクリック当接面k1(図5参照)がクリック部材V1の係合当接部kt1に対して移動する。この相対移動を利用して、クリック機構が構成されている。
バルブ組立体40は、2つのクリック係合部を有する。これらを区別するため、本願では、これらのクリック係合部が、前後クリック係合部及び左右クリック係合部とも称される。前後クリック係合部に係るクリック係合が、前後クリック係合とも称される。左右クリック係合部に係るクリック係合が、左右クリック係合とも称される。
[前後クリック係合部]
本実施形態において、前後クリック係合部は、ハンドル14の前後回動に伴うクリック(前後クリック)を生じさせる。なお、クリックは、人間によって感知され、例えば音、振動などである。
図5が示すように、前後クリック係合部は、レバー軸46とクリック部材V1とによって構成されている。この前後クリック係合部は、非平面部を含むクリック当接面k1を有している。クリック当接面k1は、複数の凹部rs1を有する。この凹部rs1に、クリック部材V1の係合当接部kt1が係合する。この係合により、前後クリック係合部のクリック機構が発現する。ハンドル14が前後回動されると、クリック当接面k1が係合当接部kt1に対して移動する。この相対移動に伴い、係合当接部kt1は、複数の凹部rs1のそれぞれに順次移動する。この移動の過程で、係合当接部kt1と凹部rs1との係合及び係合解除が繰り返される。この係合が生じた瞬間に、音及び/又は振動が生じる。この音及び/又は振動が、クリック(クリック感)を生じさせる。
[切替機構]
この前後クリック係合部は、クリック機構が発現するか否かを切り替える切替機構を有する。この切替機構には、前後クリック係合部に隣接する隣接部が関与する。本実施形態では、この隣接部は、上ケース42における上部42aの内面42dである。なお、本願において隣接部とは、クリック係合に関与しうる位置に存在する部分を意味する広い概念であり、特定の部分に限定されない。
バルブ組立体40は、2つの上記切替機構を有する。これらを区別するため、以下では、第1切替機構及び第2切替機構と称する。
[第1切替機構]
第1切替機構は、ハンドル14の左右位置によって、クリック付勢部材E1による付勢の有無を切り替える機構である。ハンドル14の左右位置は、クリック付勢部材E1の基端Et11が内面42dに当接しているバネ当接領域と、クリック付勢部材E1の基端Et11が内面42dに当接していないバネ非当接領域とを有している。
図10、図11及び図12は、ハンドル14がバネ非当接領域にあるときの状態を示している。一方、図14は、ハンドル14がバネ当接領域にあるときの状態を示している。図13は、ハンドル14がバネ非当接領域と定常的なバネ当接領域との間の移行領域にあるときの状態を示している。ただし、本願では、この移行領域は、バネ当接領域に分類される。
バネ非当接領域では、基端Et11が隣接部に当接していない。バネ非当接領域では、クリック付勢部材E1は自然状態にある。バネ非当接領域では、クリック付勢部材E1にバネ応力が蓄積されず、クリック部材V1は付勢されない。このため、クリック機構が発現しない。一方、バネ当接領域では、基端Et11が隣接部である内面42dに当接する。この当接により、第1アームE11が第2アームE12側に近づく(図7(b)参照)。この当接により、クリック付勢部材E1にバネ応力が蓄積される。バネ当接領域では、作用端Et12がクリック部材V1を押圧し、クリック部材V1は係合方向に付勢される。よって、クリック機構が発現しうる。
バネ非当接領域は、上部42aを部分的に欠落させることによって形成されている(図2参照)。例えば、上部42aの内径を大きくすることによっても、バネ非当接領域が形成されうる。バネ当接領域及びバネ非当接領域の設計自由度は高い。
クリック付勢部材E1は、ねじりバネ(ねじりコイルバネ)に限定されない。クリック付勢部材E1は、クリック部材V1を付勢できればよい。好ましくは、クリック付勢部材E1は、ねじりバネである。ねじりバネを用いることで、第1切替機構を容易に構成することができる。
バネ当接領域において、基端Et11と隣接部(内面42d)との当接位置が複数であってもよい。この当接位置とは、クリック付勢部材E1に蓄積される応力(トルク)を変化させる方向の位置を意味する。上記実施形態において、上記当接位置は、例えば、径方向位置である。例えば、上ケース42の内面42dの径方向位置を変化させることで、上記当接位置が複数とされうる。この複数の当接位置により、クリック付勢部材E1からクリック部材V1に作用する付勢力を変化させることができる。この結果、クリック音の音色を変化させることが可能となる。
[第2切替機構]
第2切替機構は、ハンドル14の左右位置によって、クリック部材V1に対する回転規制の有無を切り替える機構である。ハンドル14の左右位置は、クリック部材V1の第2端部Vt2(後端当接部kt2)が隣接部(内面42d)に当接しクリック部材V1の回転が規制されている規制領域と、クリック部材V1の第2端部Vt2(後端当接部kt2)が隣接部(内面42d)に当接していない規制解除領域とを有している。
図10、図11、図12及び図13は、ハンドル14が規制領域にあるときの状態を示している。一方、図14は、ハンドル14が規制解除領域にあるときの状態を示している。
前述の通り、クリック部材V1は、回転軸R1により回転可能に支持されている。このクリック部材V1では、後端当接部kt2の位置が決まれば、係合当接部kt1の位置も決まる。規制領域では、後端当接部kt2(クリック部材V1)の位置は、係合当接部kt1をクリック当接面k1から離間させる位置に規制されている。
規制解除領域では、クリック部材V1は、その係合当接部kt1がクリック当接面k1に当接するまで回転しうる。クリック付勢部材E1による付勢により、クリック部材V1は、その係合当接部kt1がクリック当接面k1に当接するまで回転する。クリック付勢部材E1による付勢がある限り、規制解除領域では、クリック係合が発現する。
規制領域及び規制解除領域は、上部42aの内面の位置、上部42aの欠落の有無等によって、自由に設計されうる。
[クリック係合領域、クリック非係合領域]
ハンドル14の左右位置は、前後クリック係合が生じるクリック係合領域と、前後クリック係合が生じないクリック非係合領域とを有している。
クリック係合領域では、前後クリック係合が生じる。すなわち、ハンドル14の左右位置がクリック係合領域にあるとき、レバー軸46の前後回動の際にクリック係合が生ずる。一方、クリック非係合領域では、前後クリック係合が生じない。すなわち、ハンドル14の左右位置がクリック非係合領域にあるとき、レバー軸46の前後回動の際にクリック係合が生じない。
クリック係合領域及びクリック非係合領域をどのように配置するかは、限定されない。バルブ組立体40では、湯水混合領域及び湯領域のうちの少なくとも一部が、クリック係合領域である。よって、ハンドル14の左右位置が湯を使用する位置にあるとき、レバー軸46の前後回動の際にクリック機構が発現する。また、バルブ組立体40では、前記水領域の全体が、前記クリック非係合領域である。よって、ハンドル14の前後回動の際に、湯の使用が使用者に告知されうる。この構成は、意図されない湯の使用を抑制し、省エネルギーに寄与する。湯水混合領域及び湯領域の全体が、クリック係合領域であってもよい。
第1切替機構のバネ当接領域は、クリック係合領域の形成に寄与する。規制領域に重複しない限り、バネ当接領域はクリック係合領域である。
第1切替機構のバネ非当接領域は、クリック非係合領域の形成に寄与する。バネ非当接領域は、クリック非係合領域である。第2切替機構の状態に関わらず、バネ非当接領域は、クリック非係合領域である。
第2切替機構の規制領域は、クリック非係合領域の形成に寄与する。規制領域は、クリック非係合領域である。第1切替機構の状態に関わらず、規制領域は、クリック非係合領域である。
第2切替機構の規制解除領域は、クリック係合領域の形成に寄与する。バネ非当接領域に重複しない限り、規制解除領域は、クリック係合領域である。
[第1切替機構と第2切替機構との関係]
ハンドル位置のそれぞれにおいて、第1切替機構と第2切替機構とは、自由に組み合わせることができる。
クリック非係合領域の形成の観点から、好ましくは、次の構成1が採用されうる。
[構成1]:規制領域の少なくとも一部が、バネ非当接領域である。
この構成1では、規制領域とバネ非当接領域とが重複した領域において、より確実にクリック非係合領域が形成される。加えて、この構成1では、規制領域におけるクリック付勢部材E1への付勢力が抑制され、クリック部材V1及びクリック付勢部材E1への負担を軽減される。これらの観点からは、次の構成2がより好ましい。
[構成2]:規制領域の全体が、バネ非当接領域である。
規制領域がバネ当接領域である場合、クリック部材V1への負担は大きい。この場合、クリック部材V1の第2端部Vt2(後端当接部kt2)には時計回り方向の力が作用し、クリック部材V1の第1端部Vt1(付勢受け部Vf)には反時計回り方向の力が作用する。しかも、クリック付勢部材E1の付勢力は、クリック部材V1が規制位置となることによって増幅される。このため、クリック部材V1の両端部に、互いに逆方向の力が作用する。よって、クリック部材V1への負荷は大きい。加えて、クリック付勢部材E1への負荷も大きい。更に、クリック部材V1を支持する回転軸R1への負荷も大きい。てこの原理により、回転軸R1には大きな負荷が作用する。規制領域をバネ非当接領域とすることで、これらの負荷を軽減することができる。
クリック係合領域の形成の観点から、好ましくは、次の構成3が採用されうる。
[構成3]:規制解除領域の全体が、バネ当接領域である。
本実施形態では、上記構成2及び上記構成3が採用されている。
規制解除領域により、係合当接部kt1がクリック当接面k1に当接する位置までクリック部材V1が回転しうる。この観点から、次の構成4が好ましい。
[構成4]:クリック係合領域の全体が、前記規制解除領域である。
規制領域でなくても(規制解除領域であっても)、バネ非当接領域であれば、クリック係合は、通常は生じない。しかし、規制解除領域の場合、クリック部材V1の回転が自由な状態にある。よって、クリック付勢部材E1による付勢がなくても、何らかの理由でクリック部材V1が回転し、係合当接部kt1がクリック当接面k1に当接する可能性がある。不要なクリック係合の発生を防止する観点から、次の構成5が好ましく、構成6がより好ましい。
[構成5]:クリック非係合領域の少なくとも一部が、規制領域である。
[構成6]:クリック非係合領域の全体が、規制領域である。
確実なクリック係合及び明瞭なクリックの観点からは、クリック付勢部材E1による付勢が存在するのが好ましい。この観点から、次の構成7が好ましい。
[構成7]:クリック係合領域の全体が、前記バネ当接領域である。
バネ非当接領域でなくても(バネ当接領域であっても)、規制領域であれば、クリック係合は生じない。しかし、バネ当接領域であって且つ規制領域である場合、前述の通り、回転軸R1、クリック部材V1等に大きな負荷がかかる。この観点から、次の構成8が好ましく、構成9がより好ましい。
[構成8]:クリック非係合領域の少なくとも一部が、バネ非当接領域である。
[構成9]:クリック非係合領域の全体が、バネ非当接領域である。
クリック係合をより確実とするためには、バネ当接領域と規制解除領域とを重複させるのが好ましい。この観点から、次の構成10が好ましく、構成11がより好ましい。
[構成10]:クリック係合領域の少なくとも一部が、バネ当接領域であって且つ規制解除領域である。
[構成11]:クリック係合領域の全体が、バネ当接領域であって且つ規制解除領域である。
クリック非係合をより確実とするためには、バネ非当接領域と規制領域とを重複させるのが好ましい。この観点から、次の構成12が好ましく、構成13がより好ましい。
[構成12]:クリック非係合領域の少なくとも一部が、バネ非当接領域であって且つ規制領域である。
[構成13]:クリック非係合領域の全体が、バネ非当接領域であって且つ規制領域である。
湯の使用の告知機能を重視する場合、各領域は以下のように設定されてもよい。
・バネ当接領域 :湯側θa度から湯側限界位置までの領域
・バネ非当接領域 :水領域の全体を含む、バネ当接領域以外の全領域
・規制領域 :水領域の全体を含む、規制解除領域以外の全領域
・規制解除領域 :湯側θb度から湯側限界位置までの領域
・クリック係合領域 :湯側θc度から湯側限界位置までの領域
・クリック非係合領域:水領域の全体を含む、クリック係合領域以外の全領域
好ましい湯水切替位置(水領域と湯水混合領域との境界のハンドル左右位置)を考慮すると、θaは0度以上10度以下が好ましく、θbは0度以上10度以下が好ましく、θcは0度以上10度以下が好ましい。バルブ組立体40では、θaは5度とされ、θbは5度とされ、θcは5度とされた。
湯の使用の告知機能を高める観点から、次の構成14及び構成15が好ましく、構成16がより好ましい。
[構成14]:水領域の全体が、クリック非係合領域である。
[構成15]:湯水混合領域及び湯領域のうちの少なくとも一部が、クリック係合領域である。
[構成16]:湯水混合領域及び湯領域の全体が、クリック係合領域である。
図5がよく示すように、クリック当接面k1においては、係合当接部kt1の移動方向に沿って、複数(4つ)の凹部rs1が配置されている。ある凹部rs1から抜け出て、次の凹部rs1に入り込むときに、クリック(音及び振動)が生じる。本実施形態では、ハンドル14を止水位置から最大吐出位置まで操作したときに、複数(3回)のクリックが生じる。複数(3つ)のハンドル前後位置で、クリックが生じる。
[左右クリック係合部]
本実施形態において、左右クリック係合部は、ハンドル14の左右回動に伴うクリック(左右クリック)を生じさせる。
左右クリック係合部は、クリック弾性体E2と上ケース42の内面42dとによって構成されている。内面42dは、クリック発生面m20を含むクリック案内面m1を有している。ハンドル14の左右回動に伴い、クリック弾性体E2の作用端Et22(屈曲外側部Ct22)はクリック案内面m1上を移動(摺動)する。クリック弾性体E2は、クリック案内面m1に当接する可動端KDを有する。この可動端KDは、作用端Et22を含む第2アームE22である。
クリック案内面m1に対する可動端KDの移動方向は、第1方向D1と、この第1方向D1の逆方向である第2方向D2とを含む。
本実施形態では、ハンドル14が水側から湯側に回動されるときの上記移動方向が、第1方向D1とされる。説明の便宜上、第1方向D1が湯側方向D1とも称される。本願における「湯側方向D1」との記載の全ては、「第1方向D1」と読み替えて解釈することができる。本実施形態では、ハンドル14が湯側から水側に回動されるときの上記移動方向が、第2方向D2とされる。説明の便宜上、第2方向D2が水側方向D2とも称される。本願における「水側方向D2」との記載の全ては、「第2方向D2」と読み替えて解釈することができる。
図10から図14が示すように、クリック案内面m1は、トレース面m10と、クリック発生面m20とを有する。トレース面m10は、その半径が一定である円周内面m11と底面m12とを有している。可動端KDがトレース面m10上を移動するとき、クリック機構は発現しない。可動端KDは、トレース面m10から離れることなく、トレース面m10の上を摺動する。この摺動において、可動端KDは、円周内面m11と底面m12との両方に接している。一方、可動端KDがクリック発生面m20を通過するとき、クリック機構が発現する。可動端KDがクリック発生面m20を通過するとき、可動端KDの当接面(作用端Et22の屈曲外側部Ct22)は、瞬間的にクリック発生面m20を離れた後、クリック発生面m20に着地する。この着地の際に、可動端KDは、クリック案内面m1を叩く。可動端KDがクリック案内面m1を叩くことで、クリック(音及び振動)が生じる。
クリック発生面m20は、可動端KDがクリック発生面m20を通過するときに当該可動端KDがクリック発生面m20を叩くように構成されている。
図15は、クリック発生面m20の近傍を示す拡大斜視図である。クリック発生面m20は、第1傾斜面f1を有する。第1傾斜面f1は、湯側方向D1に進行するほど上側にいくように傾斜している。第1傾斜面f1の最下縁は、底面m12と滑らかに繋がっている。第1傾斜面f1の上端部では、湯側方向D1に進行するほど第1傾斜面f1の幅が狭くなっている。
クリック発生面m20は、第2傾斜面f2を有する。第2傾斜面f2は、水側方向D2に進行するほど内側(上部42aの中心側)にいくように傾斜している。第2傾斜面f2の幅は、水側方向D2にいくほど狭くなっている。第2傾斜面f2の少なくとも一部は、第1傾斜面f1と同じ周方向位置にある。第2傾斜面f2の上縁の少なくとも一部は、第1傾斜面f1に繋がっている。
クリック発生面m20は、第3傾斜面f3を有する。第3傾斜面f3は、湯側方向D1に進行するほど内側(上部42aの中心側)にいくように傾斜している。第3傾斜面f3の少なくとも一部は、第1傾斜面f1と同じ周方向位置にある。第3傾斜面f3の少なくとも一部は、第2傾斜面f2と同じ周方向位置にある。第3傾斜面f3の水側の端は、トレース面m10に繋がっている。
クリック発生面m20は、第4傾斜面f4を有する。第4傾斜面f4は、湯側方向D1に進行するほど外側(上部42aの外側)にいくように傾斜している。第4傾斜面f4の水側の端は、第3傾斜面f3に繋がっている。更に、第4傾斜面f4の水側の端は、部分的に、第2傾斜面f2に繋がっている。第4傾斜面f4の湯側の端は、トレース面m10に繋がっている。
本実施形態では、第1傾斜面f1と第2傾斜面f2とにより突起が形成されている。この突起を乗り越えるときの可動端KDの経路が、往路と復路とで相違している。また、この突起を乗り越えるときの可動端KDの変形方向が、往路と復路とで相違している。以下で詳細を説明する。
図16は、可動端KDが水側方向D2に移動しているときの状態を示している。クリック発生面m20よりも湯側からクリック発生面m20に侵入する場合、可動端KDは、第2傾斜面f2上を摺動する。このため、可動端KDは、弾性変形により径方向内側に撓む。更に可動端KDが水側方向D2に進行すると、第2傾斜面f2との摺動が解除される。この解除により、可動端KDの径方向における弾性回復が生じ、可動端KDがクリック案内面m1(円周内面m11)を叩く。可動端KDが円周内面m11を叩くことで、クリック(音及び振動)が生じる。可動端KDの当接面は、上記弾性回復により軸方向外側に向かって加速し、上ケース42に衝突する。可動端KDが上ケース42を叩くことで、クリック(音及び振動)が生じる。
図17は、可動端KDが第1方向D1に移動しているときの状態を示している。クリック発生面m20よりも水側からクリック発生面m20に侵入する場合、可動端KDは、第1傾斜面f1上を摺動する。このため、可動端KDは、弾性変形により軸方向上側に撓む。更に可動端KDが第1方向D1に進行すると、第1傾斜面f1との摺動が解除される。この解除により、可動端KDの軸方向における弾性回復が生じ、可動端KDがクリック案内面m1(底面m12)を叩く。可動端KDの当接面は、上記弾性回復により軸方向下側に向かって加速され、上ケース42に衝突する。可動端KDが上ケース42を叩くことで、クリック(音及び振動)が生じる。
本実施形態では、第1方向D1(湯側方向)の相対移動において前記可動端が第1撓み方向に変形し、この変形が回復する際に可動端KDがクリック案内面m1を叩くことでクリックが生じる。また、第2方向D2(水側方向)の相対移動において前記可動端が第2撓み方向に変形し、この変形が回復する際に可動端KDがクリック案内面m1を叩くことでクリックが生じる。上述の通り、本実施形態では、第1撓み方向は、第2撓み方向とは異なる。本実施形態では、第1撓み方向は軸方向であり、第2撓み方向は径方向である。第1撓み方向の撓みは、クリック案内面m1(底面m12)により生じている。更に、第1撓み方向の撓みは、クリック発生面m20(第1傾斜面f1)により生じている。クリック発生面m20(第1傾斜面f1)により、第1撓み方向の撓みが大きくされる。第2撓み方向の撓みは、クリック案内面m1(円周内面m11)により生じている。更に、第2撓み方向の撓みは、クリック発生面m20(第2傾斜面f2)により生じている。クリック発生面m20(第2傾斜面f2)により、第2撓み方向の撓みが大きくされる。
なお、本願では、同一方向であって且つ互いに逆向きである2つの撓みは、「撓み方向が同一」と解釈される。
第1撓み方向への撓みが弾性回復する際に、第1方向D1の前記相対移動におけるクリックが生ずる。第2撓み方向への撓みが弾性回復する際に、第2方向D2の前記相対移動におけるクリックが生ずる。
図18は、第1方向D1(湯側方向)の相対移動における可動端KD(の当接部)の経路を示す概略図である。第1方向D1に移動する可動端KD(の当接部)は、トレース面m10から第1傾斜面f1に乗り上げ(ステップst1)、第1傾斜面f1を登り(ステップst2)、第1傾斜面f1を乗り越えて下方に落ち込み(ステップst3)、トレース面m10に戻る(ステップst4)。ステップst2で可動端KDが軸方向に撓む。ステップst3で、第1傾斜面f1への可動端KDの当接が解除されて、可動端KDが上ケース42を叩く。この結果、左右クリックが生じる。
図19は、第2方向D2(水側方向)の相対移動における可動端KD(の当接部)の経路を示す概略図である。第2方向D2に移動する可動端KD(の当接部)は、トレース面m10から第2傾斜面f2に導かれ(ステップST1)、第2傾斜面f2に沿って移動し(ステップST2)、第2傾斜面f2を乗り越えて径方向外側に移動し(ステップST3)、トレース面m10に戻る(ステップST4)。ステップST2で可動端KDが径方向に撓む。ステップST3で、第2傾斜面f2への可動端KDの当接が解除されて、可動端KDが上ケース42を叩く。この結果、左右クリックが生じる。
本願では、第1方向D1(湯側方向)の相対移動における可動端KDのクリック発生面m20での接触経路が第1経路とも称される。図18は、この第1経路の一例を示している。第1経路は、クリック発生面m20における経路である。本願では、第2方向D2(水側方向)の相対移動における可動端KDのクリック発生面m20での接触経路が第2経路とも称される。図19は、この第2経路の一例を示している。第2経路は、クリック発生面m20における経路である。本実施形態では、第1経路が第2経路とは異なる。クリック発生面m20に起因して、第1経路と第2経路との相違が生じている。
なお、図18及び図19で示される経路は、可動端KDの当接面(すなわち、屈曲外側部Ct22)の正確な経路からは、若干ずれている。これは、第1経路と第2経路との相違を分かりやすく示すためである。
上述の通り、トレース面m10の上での摺動において、可動端KDは、円周内面m11と底面m12との両方に接している。この摺動において、可動端KDは、弾性変形している。この摺動において、可動端KDは、2つの方向(第1撓み方向及び第2撓み方向)に弾性変形している。この弾性変形に伴う弾性回復力により、可動端KDは、トレース面m10上を安定的に(トレース面m10から浮くことなく)摺動する。このように、可動端KDには上記摺動において弾性回復力が蓄積されているので、クリック発生面m20は、単純な形状であってもよい。例えば、クリック発生面m20は、径方向及び/又は軸方向に形成された段差であってもよい。上記摺動中の弾性回復力に起因して、かかる単純な段差であっても、クリックは発生しうる。一方、本実施形態では、上記第1傾斜面f1、第2傾斜面f2、第3傾斜面f3及び第4傾斜面f4を有するクリック発生面m20により、より明瞭で認知性に優れたクリックを生じさせることができる。可動端KDが第1方向D1に移動するとき、可動端KDは、円周内面m11及び底面m12での当接から、円周内面m11及び第1傾斜面f1での当接に移行して軸方向に弾性回復力を蓄積する。このため、底面m12に落下するときに、明瞭なクリックが生じうる(図18参照)。この落下の際に、円周内面m11と可動端KDとが当接していると、落下スピードが低下する。このため第3傾斜面f3により可動端KDを径方向に撓ませて(図17参照)、当該落下において可動端KDが第1傾斜面f11に当接しないようにしている。このように、第3傾斜面f3は、より明瞭なクリックの発生に寄与している。
本実施形態において、左右クリックが生じるときのハンドル左右位置は、湯側5度である。このハンドル左右位置は、湯水切替位置に一致している。もちろん、左右クリックが生じるときのハンドル左右位置は、任意に決定されうる。
本実施形態では、クリック発生面m20は1箇所に設けられている。本実施形態では、ハンドル14を湯側限界位置から水側限界位置まで操作したときに、1回のクリックが生じる。ハンドル14を湯側限界位置から水側限界位置まで操作したときに、複数回のクリックが生じてもよい。
なお、湯側限界位置とは、ハンドル14を最も湯側(本実施形態では、使用者から見て左側)に限界まで回動させたときのハンドル左右位置である。また、水側限界位置とは、ハンドル14を最も水側(本実施形態では、使用者から見て右側)に限界まで回動させたときのハンドル左右位置である。
図2及び図3が示すように、バルブ組立体40では、可動端KDが露出している。したがって、当該可動端KDの振動が外部に伝達されやすい。このため、可動端KDが他部材で覆われている場合と比較して、音及びが振動が大きくなりうる。特に、音が空気を伝搬しやすい。結果として、より明瞭なクリックが得られうる。
クリック弾性体E2は、ねじりバネ(ねじりコイルバネ)に限定されない。例えば、棒状に延びる弾性体であれば、異なる方向に弾性変形することができ、異なる経路を摺動することができる。同様に、自由端を有する片持ち状態の弾性体も好ましい。この自由端は可動端として機能する。ねじりバネの基端は、自由端を有する片持ち状態の弾性体の例である。ねじりバネの作用端は、自由端を有する片持ち状態の弾性体の例である。好ましいクリック弾性体E2の一例は、ねじりバネである。ねじりバネは、巻回部を有するので、容易に支持できる。また、その一端(作用端)を可動端KDとすることができる。更に、その他端(基端)を別部材に当接させることで、作用端の振動を当該別部材に効率的に伝達することができる。
上述の通り、バルブ組立体40では、クリック弾性体E2の基端Et21が、レバー軸46に当接している。このため、可動端KDの振動が効率的にレバー軸46に伝達される。レバー軸46にはハンドル14が固定されているから、レバー軸46の振動はハンドル14に効率的に伝達される。結果として、可動端KDの振動がハンドル14に効率的に伝達され、ひいては、使用者の手に効率的に伝達される。よって、より明瞭なクリックが得られる。
クリック弾性体E2によるレバー軸46への当接は、自重によるハンドル14の下がりを抑制しうる。ハンドル14は、その質量に起因する重力により、自然に下がってしまう(前後回動してしまう)ことがある。このハンドル14の下がりにより、使用者が意図しないにも関わらず、吐出量が変化してしまう。上記当接は、前後回動における抵抗を(僅かに)増加させ、自重によるハンドル14の下がりを抑制する。
図2及び図3が示すように、バルブ組立体40では、クリック部材V1が露出している。したがって、当該クリック部材V1の振動が外部に伝達されやすい。このため、クリック部材V1が他部材で覆われている場合と比較して、音及びが振動が大きくなりうる。特に、音が空気を伝搬しやすい。結果として、より明瞭なクリックが得られうる。
バルブ組立体40では、クリック当接面k1が、レバー軸46に設けられている。よって、クリック係合に係る振動が、レバー軸46で発生する。レバー軸46にはハンドル14が固定されているから、レバー軸46の振動はハンドル14に効率的に伝達される。結果として、レバー軸46で発生した振動がハンドル14に効率的に伝達され、使用者の手に効率的に伝達される。よって、より明瞭なクリックが得られる。
前述の通り、特開2779792号公報は、レバー体の側部に形成された複数の凹部と板バネに形成された凸部とを係合させるクリック機構を開示する。この先行文献では、レバー体(レバー軸)に当接する相手部材そのものが、付勢部材である。これに対して、本実施形態では、レバー軸46に当接する相手部材がクリック部材V1であり、このクリック部材V1がクリック付勢部材E1によって付勢されている。
この先行文献に記載の発明に比較して、本実施形態は優れた効果を有する。上記先行文献では、クリック係合時において、板バネに対して曲げ方向及び圧縮方向の力が交互に作用するため、加工硬化が進行しやすい。このため、寿命が短くなり、長期間に亘る繰り返しの使用において安定的なクリックが得られにくい。また、許容応力を考慮すると、板バネでは、作動量を大きくとることができない。板バネにおける突起を大きくするためには、板バネの腕の長さを大きくする必要がある。この結果、板バネの小型化が困難となる。
これに対して、本実施形態では、クリック付勢部材E1によって回転方向に付勢されたクリック部材V1が用いられている。このため、クリック係合時において、クリック付勢部材E1の付勢方向に沿って力が作用するため、クリック付勢部材E1への負担が少ない。このため、寿命が長くなり、長期間に亘る繰り返しの使用において安定的なクリックが得られやすい。
図20は、クリック部材V1とクリック当接面k1との係合(前後クリック係合)を示す拡大図である。この図20は、クリック係合の最大係合状態を示している。本実施形態では、凹部rs1に対する係合当接部kt1の挿入深さが最大である場合が、最大係合状態である。
図6が示すように、係合当接部kt1は、第1面kt10と第2面kt12とを有する。図20が示すように、凹部rs1は、第1側面rs10と第2側面rs12とを有する。
図20で両矢印D3で示されるのは、係合当接部kt1の移動方向である。
図20において両矢印θxで示されるのは、最大係合状態における、移動方向D3と第1面kt10との成す角度である。図20において両矢印θyで示されるのは、最大係合状態における、移動方向D3と第2面kt12との成す角度である。ハンドル14を上側に回動するときと、ハンドル14を下側に回動するときとで、クリック音は均質であるのが好ましく、回動抵抗も均等であるのが好ましい。これらの観点から、角度θxと角度θyとは同一であるのが好ましい。ただし、この「同一」とは、5%以下の相違を許容する趣旨である。
図20において両矢印θ10で示されるのは、最大係合状態における、第1側面rs10と第1面kt10との成す角度である。図20において両矢印θ12で示されるのは、最大係合状態における、第2側面rs12と第2面kt12との成す角度である。
ハンドル14の往復動作において、クリック音は均質であるのが好ましく、回動抵抗も均等であるのが好ましい。すなわち、ハンドル14を上側に回動するときと、ハンドル14を下側に回動するときとで、クリック音は均質であるのが好ましく、回動抵抗も均等であるのが好ましい。これらの観点から、角度θ10と角度θ12とは同一であるのが好ましい。ただし、この「同一」とは、5%以下の相違を許容する趣旨である。
図20において二点鎖線で示されているのは、クリック当接面k1の接触平面k10である。この接触平面k10は、クリック当接面k1に接する平面である。回転軸R1の中心軸線Z1を接触平面k10に近づけることで、ハンドル14の往復動作において、係合当接部kt1と凹部rs1との間に作用する力が均等化しやすい。このため、クリック音が均質となりやすく、安定的なクリック係合が得られる。この観点から、中心軸線Z1と接触平面k10との距離は、凹部rs1の深さDrよりも小さいのが好ましい。深さDrは、凹部rs1の最深点と接触平面k10との間の距離である。本実施形態では、中心軸線Z1と接触平面k10との距離は0である。すなわち、中心軸線Z1は接触平面k10に含まれている。
図20が示すように、クリック部材V1の軸孔Vhは長穴である。一方、回転軸R1の断面形状は、真円である。軸孔Vhと回転軸R1との間には、隙間gpが形成されている。クリック部材V1に力が作用していない状態(定常状態ともいう)では、回転軸R1は、軸孔Vh内の所定位置(定常位置ともいう)に位置している。本実施形態では、この定常位置は、軸孔Vhの中心である。この定常状態であって且つ上記最大係合状態である状態が、基準状態と称される。この基準状態において、隙間gpは、移動方向D3の一方側に位置する隙間gp1と、移動方向D3の他方側に位置する隙間gp2とを有する。隙間gpに起因して、回転軸R1は軸孔Vh内を(僅かに)移動しうる。
クリック当接面k1が動かされると、クリック当接面k1と係合するクリック部材V1には力が作用する。この力に起因して、回転軸R1は軸孔Vh内を(僅かに)移動する。
クリック係合が形成された状態において、クリック当接面k1が移動方向D3の一方側に動かされると、クリック部材V1も移動方向D3の一方側への力F1を受ける。この力F1により、回転軸R1は、隙間gp1が広くなり且つ隙間gp2が狭くなるように、軸孔Vh内を移動する。係合当接部kt1が凹部rs1から抜け出た瞬間に、この力F1は解消され、回転軸R1は軸孔Vhの中心に戻る。この戻りに起因して、クリック部材V1は移動方向D3の他方側に(僅かに)移動する。この移動とほぼ同時に、係合当接部kt1は、隣りの凹部rs1に落ち込み、クリックが生じる。前記移動により、凹部rs1が凹部rs1に落ち込むときの速度が増加するため、より明瞭なクリック(音及び振動)が得られる。
クリック係合が形成された状態において、クリック当接面k1が移動方向D3の他方側に動かされると、クリック部材V1も移動方向D3の他方側への力F2を受ける。この力F2により、回転軸R1は、隙間gp1が狭くなり且つ隙間gp2が広くなるように、軸孔Vh内を移動する。係合当接部kt1が凹部rs1から抜け出た瞬間に、この力F2は解消され、回転軸R1は軸孔Vhの中心に戻る。この戻りに起因して、クリック部材V1は移動方向D3の一方側に(僅かに)移動する。この移動とほぼ同時に、係合当接部kt1は、隣りの凹部rs1に落ち込み、クリックが生じる。前記移動により、凹部rs1が凹部rs1に落ち込むときの速度が増加するため、より明瞭なクリック(音及び振動)が得られる。
以上の通り、隙間gpは、クリックを明瞭とする効果を有する。更に、隙間gpは、クリック係合時に回転軸R1に作用する力のピーク値を低減する緩衝効果を奏しうる。この緩衝効果により、回転軸R1への負担が低減しうる。
以上に説明された観点から、次の構成17が好ましく、構成18がより好ましい。
[構成17]:軸孔Vhと中心軸線Z1との間に隙間gpが存在し、クリック係合に起因する力により回転軸R1に対してクリック部材V1(軸孔Vh)が移動し、前記力が解消すると、回転軸R1は軸孔Vh内の定常位置に戻る。
[構成18]:軸孔Vhと中心軸線Z1との間に隙間gpが存在し、クリック係合に起因する力F1が一方側に作用すると回転軸R1に対してクリック部材V1(軸孔Vh)が一方側に移動し、前記力F1が解消すると、回転軸R1は軸孔Vh内の定常位置に戻り、クリック係合に起因する力F2が他方側に作用すると回転軸R1に対してクリック部材V1(軸孔Vh)が他方側に移動し、前記力F2が解消すると、回転軸R1は軸孔Vh内の定常位置に戻る。
上記実施形態では、回転軸R1が定常位置にあるときの隙間gpの最大値は、0.6mmであった。上述した効果の観点から、回転軸R1が定常位置にあるときの隙間gpの最大値は、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.9mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましい。なお、この隙間gpの最大値は、隙間gp1の最大値と、隙間gp2の最大値との合計である。
上記実施形態では、前後クリック係合部は、レバー軸46とクリック部材V1とによって構成されている。この構成は、左右クリック係合部にも応用可能である。例えば、クリック部材V1の係合当接部kt1が上ケース42の内面42dに係合する構成が採用されうる。
上記実施形態では、左右クリック係合部は、上ケース42の内面42dとクリック弾性体E2とによって構成されている。この構成は、前後クリック係合部にも応用可能である。例えば、クリック弾性体E2の可動端KDがレバー軸46の側面を摺動するように構成すると共に、このレバー軸46の側面にクリック発生面m20を設ける構成が採用されうる。
図21は第2実施形態に係るバルブ組立体140の正面図であり、図22はこのバルブ組立体140の正面図である。図23は、図22の円内の拡大図である。図24は、図22のA-A線に沿った断面図である。
このバルブ組立体140は、前述したバルブ組立体40の代わりに、湯水混合栓10に組み込まれて使用されうる。このバルブ組立体140と上記バルブ組立体40との違いは、クリック機構にある。
バルブ組立体140は、上ケース142と、回転体144と、レバー軸146と、クリック部材V2と、クリック付勢部材E1と、クリック弾性体E2とを有する。クリック付勢部材E1は、ねじりバネである。このクリック付勢部材E1は、図7(a)及び図7(b)に示されており、第1実施形態で用いられているものと同じである。クリック弾性体E2は、ねじりバネである。このクリック弾性体E2は、図8(a)及び図8(b)に示されており、第1実施形態で用いられているものと同じである。
前述のバルブ組立体40と同様に、バルブ組立体140は、前後クリック係合部及び左右クリック係合部を有している。
[前後クリック係合部]
バルブ組立体140の前後クリック係合部は、レバー軸146と、クリック付勢部材E1とクリック部材V2とを有している。クリック部材V2は、クリック付勢部材E1に回転可能に支持されている。
図24が示すように、レバー軸146は、クリック当接面k1を有する。このクリック当接面k1は、レバー軸146の側面に設けられている。クリック当接面k1は、複数の凹部rs1を有する。これらの凹部rs1により、非平面部が形成されている。この非平面部は、凹凸面である。本実施形態では、5つの凹部rs1が設けられている。凹部rs1は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
クリック付勢部材E1は、回転体144に固定されている。回転体144は、上方に向かって延びる軸150を有する(図23参照)。この軸150が、クリック付勢部材E1の巻回部E10に挿入されている。この挿入により、クリック付勢部材E1は回転体144に固定されている。
図23が示すように、クリック部材V2は、厚みが一定の板状部材である。平面視において、このクリック部材V2は、全体として略L字型の形状を呈している(図24参照)。クリック部材V2は、孔Vhと、第1端部Vt1と、第2端部Vt2とを有する。本実施形態では、孔Vhは貫通孔である。
孔Vhに、クリック付勢部材E1の作用端Et12が挿入されている。この挿入により、クリック部材V2は、クリック付勢部材E1の作用端Et12に回転可能に支持されている。クリック部材V2は、作用端Et12(孔Vh)を中心として回転可能である。作用端Et12は、クリック部材V2を回転可能に支持している。
孔Vhの内径は、作用端Et12の外径よりも大きい。作用端Et12は、孔Vhの内部において移動しうる。この構成は、クリック部材V2の動きの自由度を高めている。
第1端部Vt1は、係合当接部kt1を有する。係合当接部kt1は、凹部rs1に入り込みうる凸部を有している。係合当接部kt1は、2つの凸部を有する。凸部は、一つであってもよいし、2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。係合当接部kt1が凹部rs1に入り込むことで、クリック係合が達成されている。
前述した第1実施形態と異なり、この第2実施形態では、クリック部材V2の第2端部Vt2は、隣接部(上ケース142の内面等)に当接しない。ハンドルの左右位置に関わらず、クリック部材V2の第2端部Vt2は、隣接部に当接しない。よって、この第2実施形態は、クリック部材V2の第2端部Vt2が隣接部に当接することでクリック部材V2の回転が規制されている規制領域を有さない。この第2実施形態が、当該規制領域を有していても良い。例えばクリック部材V2の第2端部側を更に延長する等により、この第2端部Vt2を隣接部に当接させることが可能である。
前述した第1実施形態と同様に、この第2実施形態では、ハンドルの左右位置が、バネ当接領域とバネ非当接領域とを有する。バネ非当接領域では、基端Et11が隣接部に当接していない。図24は、ハンドルの左右位置がバネ非当接領域にあるときの断面図である。バネ非当接領域では、クリック付勢部材E1にバネ応力が蓄積されず、クリック部材V2は付勢されない。このため、クリック機構が発現しない。一方、バネ当接領域では、基端Et11が隣接部(上ケース142の内面142d)に当接する。この当接により、クリック付勢部材E1にバネ応力が蓄積される。バネ当接領域では、作用端Et12がクリック部材V2を押圧し、クリック部材V2は係合方向に付勢される。よって、クリック機構が発現しうる。
図23がよく示すように、回転体144は、クリック部材V2の上面に対向する第1対向面160と、クリック部材V2の下面に対向する第2対向面162とを有する。第1対向面160と第2対向面162とは、クリック部材V2の厚みより若干大きい隙間を介して、互いに対向している。クリック部材V2の一部は、第1対向面160と第2対向面162との間に挿入されている。第1対向面160と第2対向面162とにより、クリック部材V2は、移動及び回転が許容されつつ、略水平な姿勢で保持されている。
図24が示すように、クリック部材V2の隣接部(回転体144)は、クリック部材V2が衝突しうる衝突面164を有する。この衝突面164として、第1衝突面166と、第2衝突面168とが設けられている。第1衝突面166と第2衝突面168とは、クリック部材V2の第1端部Vt1が挿入されうる隙間を介して、互いに対向している。クリック部材V2の回転は、衝突面164によって一定の範囲に規制されている。
図24が示すように、クリック部材V2は、隣接部の衝突面164に衝突しうるクリック衝突面170を有する。このクリック衝突面170として、第1クリック衝突面172と、第2クリック衝突面174とが設けられている。第1クリック衝突面172は、第1衝突面166に対向している。第2クリック衝突面174は、第2衝突面168に対向している。
クリック部材V2は、第1対向面160及び第2対向面162により略水平な姿勢に保たれ、且つ、衝突面164により回転の角度範囲が規制されているが、それらを除けば、作用端Et12により付勢されているだけである。よってクリック部材V2は、高い自由度で、回転及び移動することが可能である。
クリック部材V2の回転では、作用端Et12が回転軸となる。ただし、この作用端Et12自体が、移動しうる。第1実施形態のクリック部材V1を回転可能の支持する回転軸R1は固定軸であるのに対して、このクリック部材V2を回転可能に支持する回転軸(作用端Et12)は可動軸である。このため、クリック部材V2の動きの自由度は高い。
図25及び図26は、前後クリックの発生について説明するための図である。図25及び図26に記載の全ての断面図は、ハンドルの左右位置がバネ当接領域にあるときの断面図である。したがって、図25及び図26の全ての断面図では、クリック部材V2がクリック付勢部材E1によって係合方向(図面の左方向)に付勢されている。
図25は、ハンドルを前後方向における止水方向に動かしているときの変化を経時的に示す断面図である。ハンドルを止水方向に動かすと、図25における(1)、(2)、(3)、(4)の順で状態が変化する。
状態(1)からハンドルを止水方向に動かすと、状態(2)に移行し、更には状態(3)に移行する。レバー軸146は矢印の方向(図面の下方向)に移動し、クリック当接面k1と係合当接部kt1との間の凹凸係合が外れていく。この過程では、凸同士の当接によりクリック部材V2は係合方向とは逆の方向(図面の右方向)に移動する。加えて、係合当接部kt1の移動に伴い、クリック部材V2は第1回転方向(図面では反時計回り)に回転する。更にハンドルの操作が進行すると、係合当接部kt1の凸がクリック当接面k1における隣の凹に移動し、新たな凹凸係合が形成される(状態(4))。クリック付勢部材E1による付勢力が存在するため、この新たな凹凸係合が形成される瞬間に、クリック部材V2は一気に第2回転方向(図面では時計回り)に回転する。この新たな凹凸係合が形成される瞬間に、前後クリック(音及び振動)が生じる。係合当接部kt1の凸とクリック当接面k1の凹とが衝突することで、前後クリックが生じる。加えて、第1クリック衝突面172と第1衝突面166との衝突により、前後クリックが生じる。図25の状態(4)では、衝突が生じる位置が黒塗りの丸で示されている。複数の箇所で衝突が生じるため、より大きなクリック音が生じる。
図26は、ハンドルを前後方向における吐水方向に動かしているときの変化を経時的に示す断面図である。ハンドルを吐水方向に動かすと、図26における(5)、(6)、(7)、(8)の順で状態が変化する。
状態(5)からハンドルを吐水方向に動かすと、状態(6)に移行し、更には状態(7)に移行する。レバー軸146は矢印の方向(図面の上方向)に移動し、クリック当接面k1と係合当接部kt1との間の凹凸係合が外れていく。この過程では、凸同士の当接により、クリック部材V2は係合方向とは逆の方向(図面の右方向)に移動する。加えて、係合当接部kt1の移動に伴い、クリック部材V2は第2回転方向(図面では時計回り)に回転する。更にハンドルの操作が進行すると、係合当接部kt1の凸がクリック当接面k1における隣の凹に移動し、新たな凹凸係合が形成される(状態(8))。クリック付勢部材E1による付勢力が存在するため、この新たな凹凸係合が形成される瞬間に、クリック部材V2は一気に第1回転方向(図面では反時計回り)に回転する。この新たな凹凸係合が形成される瞬間に、前後クリック(音及び振動)が生じる。係合当接部kt1の凸とクリック当接面k1の凹とが衝突することで、前後クリックが生じる。加えて、第2クリック衝突面174と第2衝突面168との衝突により、前後クリックが生じる。図26の状態(8)では、衝突が生じる位置が黒塗りの丸で示されている。複数の箇所で衝突が生じるため、より大きなクリック音が生じる。
作用端Et12がクリック部材V2を回転可能に支持することで、クリック部材V2における自由度の高い動きが可能とされている。この自由度の高い動きは、クリック音を高めるのに寄与している。
前述した第1実施形態では、クリック部材V1を回転可能に支持しているのは、クリック付勢部材E1ではない。この第1実施形態では、クリック付勢部材E1は、クリック部材V1を回転方向に付勢している。この回転方向は、クリック部材V1の第1端部Vt1がクリック当接面k1に向かう方向である。一方、第2実施形態では、クリック部材V1を回転可能に支持しているのは、クリック付勢部材E1である。この第2実施形態では、クリック付勢部材E1は、クリック部材V2を並進移動させる方向に付勢している。クリック付勢部材E1の付勢力は、クリック部材V2を回転させない。クリック部材V2の回転は、クリック当接面k1と係合当接部kt1との相対移動によって生ずる。ただし、いずれの実施形態でも、クリック付勢部材E1は、第1端部Vt1がクリック当接面k1に向かうようにクリック部材を付勢している。
[左右クリック係合部]
バルブ組立体140では、左右クリック係合部は、2つ設けられている。
第1の左右クリック係合部は、第1実施形態のバルブ組立体40における左右クリック係合部と同じである。すなわち、第1の左右クリック係合部では、可動端KDがクリック案内面m1を叩くことで左右クリックが生じる(図24参照)。
更に、バルブ組立体140では、第2の左右クリック係合部が設けられている。
上ケース142は、クリック係合部180を有する。クリック係合部180は凸部である。クリック係合部180は、上ケース142に設けられている。クリック係合部180は、上ケース142の内面142dに設けられている。内面142dは、円周面である。クリック係合部180は、ハンドルの操作に関わらず移動しない。クリック係合部180は、固定クリック係合部とも称される。固定クリック係合部180は、上ケース142の中心に向かって突出している。
回転体144は、クリック係合部182を有する。クリック係合部182は凸部である。クリック係合部182は、回転体144に設けられている。クリック係合部182は、上方向に延びる上方延在部184に設けられている。上方延在部184の材質は、樹脂である。ハンドルの左右回動に伴い、回転体144が回転する。回転体144の回転に伴いクリック係合部182は、内面142dに沿って円周上を移動する。クリック係合部182は、移動クリック係合部とも称される。
移動クリック係合部182が固定クリック係合部180を乗り越える際に、上方延在部184は、回転体144の回転中心側に倒れるように変形する。この変形は、弾性変形である。移動クリック係合部182が固定クリック係合部180を乗り越える際に、ハンドルの左右回動における抵抗が増加する。この抵抗は、ハンドルを操作する手に伝達される。この抵抗は、第2の左右クリック係合部による左右クリックである。第2の左右クリック係合部において左右クリックが生ずるときのハンドルの左右位置は、第1の左右クリック係合部において左右クリックが生ずるときのハンドルの左右位置と同じである。第2の左右クリック係合部による左右クリックは、第1の左右クリック係合部による左右クリックと同時に発生する。第2の左右クリック係合部は、第1の左右クリック係合部と同時に発現する。なお、本願において「同時」に発現という場合、ハンドルの左右位置において±2°の誤差が許容される。すなわち、第1の左右クリック係合部が発現するときのハンドルの左右位置と、第2の左右クリック係合部が発現するときのハンドルの左右位置との差が4°以内であれば、同時に発現すると解釈される。この程度の差異であれば、使用者(人間)は通常、同時と感じる。
第2の左右クリック係合部は、凸部と凸部との係合である。この凸部と凸部との係合は、弾性変形を伴う。この弾性変形は、上ケース142又は回転体144における樹脂部分の弾性変形である。上述の通り、本実施形態では、上方延在部184が弾性変形する。この弾性変形は、ハンドル抵抗を増加させる。第2の左右クリック係合部が発現するときのハンドル抵抗の増加は、第1の左右クリック係合部が発現するときのハンドル抵抗の増加よりも大きい。ハンドル抵抗とは、ハンドルを操作するときの抵抗力を意味する。本実施形態では、ハンドル抵抗は、ハンドルを左右回動するときの抵抗力である。
第2の左右クリック係合部が発現するときに発生する音は、第1の左右クリック係合部が発現するときに発生する音よりも小さい。この音の大小は、音圧により判断される。この音圧は、所定の位置で測定されうる。この所定の位置は、例えば、ハンドルの上方であって、ハンドルの左右回動の回転軸線上であり、且つ上ケースからの最短距離が30cmである位置とされうる。
前述の通り、第1の左右クリック係合部では、可動端KDがクリック案内面m1を叩くことで、音及び振動が生じる。更に、第2の左右クリック係合部により、手に伝わる抵抗感が生ずる。これら2つのクリック係合部による相乗効果で、使用者は、左右クリックをより明確に認知することができる。第1の左右クリック係合部では、音は大きいが、手に伝わる感覚は少ない。第2の左右クリック係合部では、手に伝わる感覚が大きい。これら2つの左右クリック係合部の相乗効果により、左右クリックの発生が、より確実に使用者に伝わる。
クリック弾性体E2の材質として、金属及び樹脂が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。この樹脂として、POM樹脂、PA樹脂、PPO樹脂、PPS樹脂及びそれらの繊維強化材が挙げられる。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。PA樹脂とは、ポリアミド樹脂である。PPO樹脂とは、ポリフェニレンオキシド樹脂である。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。
より好ましくは、クリック弾性体E2の材質は、金属である。金属とすることで、より明瞭なクリック(音及び振動)が得られる。例えば金属音は、クリック音として良好である。水による腐食を抑制する観点から、好ましい金属は、ステンレス合金である。ねじりバネが採用される場合、ばね用ステンレス鋼線が好ましい。上記実施形態では、クリック弾性体E2の材質として、SUS304-WPBが用いられた。
クリック付勢部材E1の材質として、金属及び樹脂が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。この樹脂として、POM樹脂、PA樹脂、PPO樹脂、PPS樹脂及びそれらの繊維強化材が挙げられる。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。PA樹脂とは、ポリアミド樹脂である。PPO樹脂とは、ポリフェニレンオキシド樹脂である。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。
より好ましくは、クリック付勢部材E1の材質は、金属である。金属とすることで、充分な付勢力が得られやすい。水による腐食を抑制する観点から、好ましい金属は、ステンレス合金である。ねじりバネが採用される場合、ばね用ステンレス鋼線が好ましい。上記実施形態では、クリック付勢部材E1の材質として、SUS304-WPBが用いられた。
レバー軸46の材質として、金属及び樹脂が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。この樹脂として、POM樹脂、PA樹脂、PPO樹脂、PPS樹脂及びそれらの繊維強化材が挙げられる。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。PA樹脂とは、ポリアミド樹脂である。PPO樹脂とは、ポリフェニレンオキシド樹脂である。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。
より好ましくは、レバー軸46の材質は、金属である。金属とすることで、より明瞭なクリック(音及び振動)が得られる。水による腐食を抑制する観点から、好ましい金属は、ステンレス合金である。上記実施形態では、レバー軸46の材質として、SUS304が用いられた。
クリック部材V1、V2の材質として、金属及び樹脂が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。この樹脂として、POM樹脂、PA樹脂、PPO樹脂、PPS樹脂及びそれらの繊維強化材が挙げられる。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。PA樹脂とは、ポリアミド樹脂である。PPO樹脂とは、ポリフェニレンオキシド樹脂である。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。上記実施形態では、クリック部材V1の材質として、POM樹脂が用いられた。
クリック部材V1、V2は、金属とされるのも好ましい。金属とすることで、より明瞭なクリック(音及び振動)が得られやすい。好ましい金属は、ステンレス合金である。
より明瞭なクリックを得る観点から、クリック部材V1、V2の材質を金属とし、且つ、レバー軸46の材質を金属とするのも好ましい。金属同士をクリック係合させることで、より明瞭なクリック音が得られうる。
軸体48の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー軸46で生じた振動を大きくする観点から、軸体48の材質は、金属が好ましい。水による腐食を抑制する観点から、好ましい金属は、ステンレス合金である。上記実施形態では、軸体48の材質として、SUS304が用いられた。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
前記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。