以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
[上下方向]
本願では、「上下方向」との文言が用いられる。後述される実施形態では、この上下方向は、鉛直方向に一致している。この上下方向は、鉛直方向に一致していなくてもよい。この上下方向は、後述される上ケースの軸方向である。
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24では、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、流し台、洗面台等に取り付けられ、水栓器具として使用される。湯水混合栓10を含む水栓器具は、流し台等に湯水混合栓10を固定するための固定部23と、湯供給管に接続される接続部25と、水供給管に接続される接続部27とを有している。
ハンドル14の上下回動(前後回動)により、吐出量が調節される(図3の矢印M参照)。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の左右回動(旋回)により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の左右回動により、吐水温度の調節が可能である。
湯水混合栓10は、その内部に、バルブ組立体40(後述)を有する。バルブ組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。ハンドル14は、ネジ(図示されず)によって、レバー46(後述)に固定されている。なお、バルブ組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、バルブ組立体40は交換可能である。
図4及び図5は、バルブ組立体40の斜視図である。図4と図5とで視点が異なる。図6は、バルブ組立体40の分解斜視図である。図7は、バルブ組立体40の断面図である。
図4及び図5が示すように、バルブ組立体40は、バルブ本体v1と、移動部材c1とを有する。
移動部材c1は、本体ch1と、当接部材zt1と、弾性部材zd1とを有する。当接部材zt1及び弾性部材zd1は、前後クリック係合に関与している。弾性部材zd1は、前後クリック用弾性部材の一例である。
図6及び/又は図7が示すように、バルブ本体v1は、上ケース42、回動体44、レバー46、レバー軸48、可動弁体52、固定弁体54、パッキン60及び下ケース62を有する。バルブ本体v1は、バルブユニットy1を有する。バルブユニットy1は、可動弁体52及び固定弁体54によって構成されている。
図示されないが、下ケース62は、湯導入口、水導入口及び吐出口を有する。下ケース62の下部には、これら湯導入口、水導入口及び吐出口のそれぞれに対応した開口が設けられている。これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。更に、下ケース62は、係合凸部64を有する。
固定弁体54は、下ケース62に固定されている。固定弁体54は、下ケース62の上部にはめ込まれている。
図示されないが、固定弁体54は、湯用弁孔、水用弁孔及び混合水用弁孔を有する。湯用弁孔は、下ケース62の湯導入口に接続されている。水用弁孔は、下ケース62の水導入口に接続されている。混合水用弁孔は、下ケース62の吐出口に接続されている。
図7が示すように、可動弁体52は、上側部材86と、Oリング87と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。この場合、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体52は全体として一体成形されていてもよい。
可動弁体52は、流路形成凹部90を有している。この流路形成凹部90は、下側部材88に設けられた貫通孔92の上面開口が上側部材86により塞がれることによって、形成されている。Oリング87により、上側部材86と下側部材88との境界からの水漏れが防止されている。
上側部材86の上面には、レバー46の下端96と係合するレバー係合凹部98が設けられている(図6参照)。レバー46の下端96は、このレバー係合凹部98に挿入されている。レバー46の動きに連動して、可動弁体52が固定弁体54の上を摺動する。
なお、レバー46とレバー係合凹部98との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー46とレバー係合凹部98との間に他の部材が介在していてもよい。
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている(図7参照)。レバー46は、レバー軸48を中心として前後回動する。より詳細には、レバー46は、レバー軸48の軸線を中心として前後回動する。なお図6では、レバー軸48の記載が省略されている。
図8は、レバー46の斜視図である。図9(a)は、レバー46の正面図である。図9(b)は、レバー46の側面図である。図9(c)は、レバー46の背面図である。
レバー46は、前後クリック用第一係合部zk1を有している。前後クリック用第一係合部zk1は、並列した複数の凸部t10を有する。前後クリック用第一係合部zk1は、並列した複数の凹部r10を有する。凸部t10と凹部r10とが交互に配置されている。凸部t10と凹部r10とによって形成されている凹凸面は、第一当接面である。前後クリック用第一係合部zk1は、第一当接面を有している。
図10(a)、図10(b)及び図10(c)は、上ケース42の側面図である。図10(a)と、図10(b)と、図10(c)とで、視点が相違している。図10(d)は、図10(c)のA−A線に沿った断面図である。図11(a)は、上ケース42の平面図である。図11(b)は、上ケース42の底面図である。前述した図6には、上ケース42の斜視図が示されている。
上ケース42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、上ケース42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。
なお、特に説明しない限り、本願にいう半径方向とは、上ケース42の半径方向を意味する。
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130は、下ケース62の係合凸部64に係合している(図4及び図5参照)。この係合により、上ケース42は、下ケース62に固定されている。
図11(b)が示すように、上ケース42は、左右クリック用第一係合部sk1を有している。第一係合部sk1は、上ケース42の内周面部に設けられている。本実施形態において、第一係合部sk1は突起である。第一係合部sk1は、大径円筒部122に設けられている。本実施形態では、この第一係合部sk1は凸部である。この第一係合部sk1は、左右クリック係合に関与している。
左右クリック用第一係合部sk1は、バルブユニットy1よりも上側に設けられている。左右クリック用第一係合部sk1は、可動弁体52よりも上側に設けられている。左右クリック用第一係合部sk1は、バルブユニットy1の設計自由度を阻害しない。
図12は、組立状態におけるレバー46及び回動体44が示された斜視図である。回動体44単独の斜視図は、図6に示されている。
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、柱部110とを有する。複数の柱部110が設けられている。柱部110は円柱状である。柱部110は上方に向かって延びている。柱部110の上端は自由端である。図6が示すように、柱部110は、小径柱部112と、大径柱部114とを有する。3つの柱部110が設けられている。2つの小径柱部112が設けられている。1つの大径柱部114が設けられている。柱部110は、スライド突起の一例である。
回動体44の上部104は、外周面部132を有する。この外周面部132の外径は、小径円筒部120の内周面121の直径に略等しい。
レバー46がレバー挿入孔106に挿入されている。この挿入により、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置される。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48が挿入される。レバー軸48の挿入により、レバー46が、前後回動可能な状態で、回動体44に取り付けられる。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の前後回動を許容しうるように設定されている。レバー46が左右回動されると、回動体44が回動(自転)する。すなわち、レバー46の左右回動に連動して、回動体44が回動する。この回動体44の回動に連動して、可動弁体52が回動する。
回動体44は、上ケース42(小径円筒部120)に、回動可能な状態で保持されている。この回動体44の回動では、上部104の外周面部132と、小径円筒部120の内周面121とが摺動する。大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体52及び固定弁体54を収容している。
回動体44は、当接部材保持部kt2と、弾性部材保持部kd2とを有する。更に回動体44は、当接部材st2と、弾性部材sd2とを有する。当接部材st2及び弾性部材sd2は、左右クリック係合に関与している。
当接部材st2は、左右クリック用第二係合部sk2を有している。当接部材st2(第二係合部sk2)は、バルブユニットy1よりも上側に設けられている。当接部材st2(第二係合部sk2)は、可動弁体52よりも上側に設けられている。当接部材st2(第二係合部sk2)は、バルブユニットy1の設計自由度を阻害しない。
本実施形態において、弾性部材sd2は板バネである。弾性部材sd2は板バネでなくてもよい。弾性部材sd2は、当接部材st2を外側に付勢しうる。
図6が示すように、回動体44の当接部材保持部kt2は、当接部材st2がスライド移動しうるスライド溝を形成している。当接部材st2は、当接部材保持部kt2の内部において、スライド移動しうる。
図12が示すように、回動体44の弾性部材sd2は、弾性部材保持部kd2に保持されている。弾性部材保持部kd2は、弾性部材sd2の両端部を支持しうる隙間を有している。この弾性部材保持部kd2の隙間に、弾性部材sd2が挿入されている。弾性部材sd2は、当接部材st2を、第一係合部sk1側に付勢しうる。この付勢により、当接部材st2と第一係合部sk1(凸部)との係合が達成されている。
図13は、移動部材c1の斜視図である。図14(a)は、移動部材c1の本体ch1の平面図である。図14(b)は、本体ch1の底面図である。図14(c)は、図14(a)のc−c線に沿った、本体ch1の断面図である。図15は、組立状態における上ケース42及びレバー46を示す斜視図である。
移動部材c1(本体ch1)は、レバー挿通孔134、外周面部136、内周面部138、受け孔140及び受け溝142を有する。更に、本体ch1は、弾性部材保持部hd1と、当接部材保持部ht1とを有する。弾性部材保持部hd1は、円柱状である。弾性部材保持部hd1の一端は自由端である。弾性部材保持部hd1は水平方向に延びている。受け孔140は、スライド受け部の一例である。受け溝142は、スライド受け部の一例である。
上ケース42の小径円筒部120は、外周面部144を有する。この外周面部144は、バルブ本体v1の外周面部の一例である。移動部材c1の内周面部138は、この外周面部144の一部を覆っている。
図6、図10(a)、図10(b)、図10(c)、図10(d)及び図15が示すように、上ケース42は、ガイド溝g1を有する。ガイド溝g1は、外周面部144に設けられている。本実施形態では、3つのガイド溝g1が設けられている。外周面部144の周方向において、3つのガイド溝g1が均等に配置されている。3つのガイド溝g1は、120度おきに配置されている。ガイド溝g1は、カム用ガイド部の一例である。
ガイド溝g1は、水平部ghと傾斜部gkとを有する。水平部ghと傾斜部gkとは繋がっている。水平部gh及び傾斜部gkにおいて、ガイド溝g1の断面形状は一定である。更に、ガイド溝g1は、終端部gfと開放部gpとを有する。開放部gpは、小径円筒部120の上端面に位置する。ガイド溝g1の一端が終端部gfである。ガイド溝g1の他端が開放部gpである。終端部gfは水平部ghに設けられている。ガイド溝g1は、終端部gfから水平部gh及び傾斜部gkを経て開放部gpに至るように、連続している。終端部gfは、移動部材c1の回転を規制しうる。
図12が示すように、レバー挿通孔134には、レバー46が挿通されている。レバー挿通孔134は、レバー46の前後回動を阻害しない。前述の通り、移動部材c1は、当接部材zt1及び弾性部材zd1を有している(図13参照)。
図13が示すように、当接部材zt1は、前後クリック用第二係合部zk2を有している。係合部zk2は、当接部材zt1の下面に設けられている。係合部zk2は、並列した複数の凸部を有する。これらの凸部により、凹凸が形成されている。この凹凸の表面は、第二当接面である。
図13が示すように、当接部材zt1は、溝m1を有している。溝m1は、当接部材zt1の上面に設けられている。
本実施形態では、前後クリック用弾性部材(弾性部材zd1)は、ねじりバネである。図13が示すように、弾性部材zd1の本体部に、弾性部材保持部hd1が挿通されている。弾性部材zd1の一端部e1は、本体ch1に支持されている。弾性部材zd1の他端部e2は、当接部材zt1に当接している。他端部e2は、溝m1に配置されている。溝m1は、他端部e2の位置ズレを防止している。他端部e2は、当接部材zt1を下方に押圧している。
このように、弾性部材zd1は、当接部材zt1を下方に付勢している。弾性部材zd1は、当接部材zt1を、係合部zk1側に付勢している。この付勢により、当接部材zt1の凹凸面(第二当接面)が、係合部zk1の凹凸面(第一当接面)に押し当てられている。この押し当てにより、前後クリック係合が達成されている。
図14(a)及び図14(b)が示すように、当接部材保持部ht1は、第一側面ht10と、第二側面ht12とを有する。第一側面ht10と第二側面ht12の間の隙間に、当接部材zt1が配置されている。当接部材zt1は、当接部材保持部ht1の内部をスライド移動しうる。このスライド移動の方向は、上下方向である。
図14(a)が示すように、当接部材保持部ht1は、第一凹部ht20及び第二凹部ht22を有する。第一凹部ht20は、第一側面ht10に設けられている。第一凹部ht20は、上下方向に延びる溝である。第一凹部ht20は、上方に開放され且つ下端を有する溝である。第二凹部ht22は、第二側面ht12に設けられている。第二凹部ht22は、上下方向に延びる溝である。第二凹部ht22は、上方に開放され且つ下端を有する溝である。
図14(a)及び図14(b)が示すように、移動部材c1(本体ch1)は、カム用凸部p1を有する。本実施形態では、複数のカム用凸部p1が設けられている。本実施形態では、3つのカム用凸部p1が設けられている。カム用凸部p1として、第一カム用凸部p11、第二カム用凸部p12及び第三カム用凸部p13が設けられている。
複数(3つ)のカム用凸部p1は、内周面部138の周方向において、均等に配置されている。3つのカム用凸部p1は120度おきに配置されている。
3つのカム用凸部p1のそれぞれが、3つのガイド溝g1のそれぞれに係合している。カム用凸部p1の外形は、ガイド溝g1の断面形状に対応している。カム用凸部p1は、ガイド溝g1の長手方向に沿って、ガイド溝g1の内部を移動しうる。
なお、開放部gpは、カム用凸部p1をガイド溝g1に入れる際に役立つ。すなわち、カム用凸部p1は、開放部gpからガイド溝g1内に入れられうる。開放部gpにより、移動部材c1を変形させることなく、カム用凸部p1をガイド溝g1内に入れることが可能とされている。よって、カム係合のための組立が容易とされている。
図13が示すように、当接部材zt1は、第一側面突起zt10と、第二側面突起zt12とを有する。第一側面突起zt10は、当接部材zt1の一方の側面に設けられている。第二側面突起zt12は、当接部材zt1の他方の側面に設けられている。第一側面突起zt10は、第一凹部ht20に係合している。第一凹部ht20は、第一側面突起zt10のガイド溝である。第一凹部ht20の下端は、第一側面突起zt10の下方向への移動を規制している。第二側面突起zt12は、第二凹部ht22に係合している。第二凹部ht22は、第二側面突起zt12のガイド溝である。第二凹部ht22の下端は、第二側面突起zt12の下方向への移動を規制している。
このように、第一凹部ht20及び第二凹部ht22は、当接部材zt1の移動方向を上下方向に案内している。また、第一凹部ht20及び第二凹部ht22の下端により、当接部材zt1の下限位置が設定されている。
[カム機構]
上述の通り、上ケース42の外周面部144は、ガイド溝g1を有している(図15等参照)。このガイド溝g1は、外周カム部の一例である。このガイド溝g1は、カム用ガイド部の一例である。なお、外周カム部は、例えば、カム用凸部であってもよい。
上述の通り、移動部材c1の内周面部138は、カム用凸部p1を有している(図14(b)等参照)。このカム用凸部p1は、内周カム部の一例である。なお、内周カム部は、例えば、ガイド溝であってもよい。
本実施形態では、ガイド溝g1とカム用凸部p1との係合により、カム機構が形成されている。
このカム機構は、内周面部138と外周面部144との相対回転を、移動部材c1の上下移動に変換するように構成されている。
より詳細には、このカム機構の原理は次の通りである。レバー46の左右回動にともない、移動部材c1が回転する。この回転は、移動部材c1の自転である。移動部材c1が回転すると、カム用凸部p1が、ガイド溝g1内を移動する。カム用凸部p1は、ガイド溝g1の長手方向に沿って移動する。レバー46の左右位置に関わらず、ガイド溝g1とカム用凸部p1との係合は維持されている。
カム用凸部p1は、ガイド溝g1に案内されながら移動する。カム用凸部p1の上下方向位置は、ガイド溝g1によって規制されている。カム用凸部p1が水平部ghを移動しているとき、移動部材c1の上下方向位置は変わらない。一方、カム用凸部p1が傾斜部gkを移動しているとき、移動部材c1の上下方向は変化する。傾斜部gkにより、カム用凸部p1の上下方向位置が変化する。よって、移動部材c1の上下方向位置が変化する。このような原理で、カム機構が作動している。
水平部gh及び傾斜部gkの配置により、移動部材c1の周方向位置(回転角度)と移動部材c1の上下方向位置との関係が規定されている。傾斜部gkの傾きにより、移動部材c1の回転角度に対する、移動部材c1の上下方向位置の変化率が規定されている。
上述のように、複数(3つ)のガイド溝g1は周方向において均等に配置されている。全てのガイド溝g1は同一である。上述のように、複数(3つ)のカム用凸部p1は周方向において均等に配置されている。全てのカム用凸部p1は同一である。よって複数(3つ)のカム用凸部p1の上下方向位置は、移動部材c1の回転角度(周方向位置)に関わらず、一定である。このため、レバー46の左右位置に関わらず、移動部材c1の姿勢は、一定(水平)である。移動部材c1の姿勢は安定している。移動部材c1は、その姿勢を維持したまま、上下方向に移動しうる。
[係合状態と解除状態との切り換え]
移動部材c1の上下方向位置に起因して、係合状態EPと解除状態NPとの切り換えが可能とされている。前述した図7は、係合状態EPにあるバルブ組立体40の断面図である。一方、図16は、解除状態NPにあるバルブ組立体40の断面図である。図17は、係合状態EPにあるバルブ組立体40の側面図である。図18は、解除状態NPにあるバルブ組立体40の側面図である。
係合状態EPとは、前後クリック係合が達成された状態である。係合状態EPでは、第一係合部zk1と第二係合部zk2とが、係合している。係合状態EPでは、第一係合部zk1の凹凸と第二係合部zk2の凹凸とが、噛み合っている。係合状態EPにおいて、レバー46を前後回動させると、クリック感が生じる。このクリック感は、前後クリック感である。
解除状態NPとは、前後クリック係合が解除された状態である。解除状態NPでは、第一係合部zk1と第二係合部zk2とが、係合していない。解除状態NPにおいて、レバー46を前後回動させても、クリック感は生じない。解除状態NPでは、前後クリック感は生じない。
上記カム機構により、移動部材c1は、上限位置から下限位置まで移動しうる。図7において、移動部材c1は下限位置にある。図16において、移動部材c1は上限位置にある。下限位置から上限位置までの間において、係合状態EPと解除状態NPとの切り換えが生じる。カム用凸部p1が傾斜部gkを移動している途中において、係合状態EPと解除状態NPとの切り換えが生じる。カム用凸部p1が水平部ghにあるとき、係合状態EPが達成されている。
EPガイド溝g1の設計により、係合状態EPにあるときのレバー周位置が設定されうる。ガイド溝g1の設計により、係合状態EPと解除状態NPとの切り換えが生じるときのレバー周位置が設定されうる。ガイド溝g1の設計により、解除状態NPにあるときのレバー周位置が設定されうる。ガイド溝g1の設計だけで、前後クリック感の有無とレバー周位置との関係が、容易に設定されうる。係合状態EP及び解除状態NPの設定の自由度は高い。
上記カム機構により、係合状態EPとなるレバー周位置と、解除状態NPとなるレバー周位置とが設定されうる。よって、レバー周位置によって、前後クリック感の有無を切り換えることができる。
バルブ本体v1は、上下方向に延在する第一規制面を有している。本実施形態において、外周面部144は、この第一規制面を有する。移動部材c1は、上下方向に延在する第二規制面を有している。本実施形態において、移動部材c1の内周面部138が、この第二規制面を有する。
上述の通り、外周面部144は、上記第一規制面を有している。この第一規制面は、バルブ本体v1を構成する部材である上ケース42に、設けられている。上ケース42は、レバー46の操作によって動かない固定部材である。この固定部材は、レバー46の前後回動時に移動せず、且つ、レバー46の左右回動時にも移動しない部材である。バルブ本体v1は上記固定部材を有しており、上記第一規制面は、上記固定部材に設けられている。
なお、上記第一規制面は、外周面部144以外に設けられてもよい。上記第二規制面は、内周面部138以外に設けられてもよい。
移動部材c1の上下方向における移動の際に、上記第一規制面としての外周面部144と、上記第二規制面としての内周面部138とが摺動する。この摺動に起因して、上下方向以外の方向における移動部材c1の移動が規制されている。すなわち、移動部材c1の移動方向は、上下方向のみに規制されている。
本実施形態では、外周面部144と内周面部138との組み合わせが、当接機構Aとも称される。この当接機構Aが、移動部材c1の移動を上下方向のみに規制している。よって、移動部材c1の移動方向が確実に規制されている。このため、製造誤差又は部品の経時劣化による前後クリック感の変化が抑制されうる。また、この当接機構Aは、移動部材c1の姿勢を安定させうる。この安定した姿勢は、前後クリック機構の精度を高めうる。
係合状態EPと解除状態NPとの切り換えが生じるときのレバー周位置が、切り換えレバー位置とも称される。移動部材c1の安定した姿勢は、切り換えレバー位置のばらつきを抑制しうる。
バルブ本体v1は、他の上記第一規制面を更に有している。本実施形態において、柱部110(の外面)は、この第一規制面を有する。このように、上記スライド突起は、第一規制面を有する。移動部材c1は、他の上記第二規制面を更に有している。本実施形態において、移動部材c1の受け孔140の内面が、この第二規制面を有する。更に、受け溝142の内面も、この第二規制面を有する。このように、上記スライド受け部は、第二規制面を有する。
レバー46の前後回動の際に、上記第一規制面としての柱部110と、上記第二規制面としての受け孔140とが摺動する。また、上記第一規制面としての柱部110と、上記第二規制面としての受け溝142とが摺動する。これらの摺動に起因して、上下方向以外の方向における移動部材c1の移動が規制されている。
本実施形態では、柱部110と受け孔140との組み合わせが、当接機構Bとも称される。この当接機構Bと、上記当接機構Aとにより、移動部材c1の移動がより確実に規制されている。このため、製造誤差又は部品の経時劣化による前後クリック感の変化が、より一層抑制されうる。また、移動部材c1の姿勢が一層安定しうる。よって、前後クリック機構の精度が高められ得る。
本実施形態では、柱部110と受け溝142との組み合わせが、当接機構Cとも称される。この当接機構Cと、上記当接機構A及び上記当接機構Bとにより、移動部材c1の移動がより確実に規制されている。このため、製造誤差又は部品の経時劣化による前後クリック感の変化が、より一層抑制されうる。また、移動部材c1の姿勢が一層安定しうる。よって、前後クリック機構の精度が高められ得る。
このように、本実施形態では、移動部材c1の上下方向以外への移動を規制する機構が、簡易な構造で実現されている。また、上記カム機構により、簡易な構造で、移動部材c1を上下に移動させることができる。
移動部材c1の姿勢を安定させる観点から、上記スライド突起及び上記スライド受け部は、複数設けられるのが好ましく、3箇所以上設けられるのがより好ましい。構造の簡素化の観点から、上記スライド突起及び上記スライド受け部は、6箇所以下が好ましく、5箇所以下がより好ましい。
なお、スライド突起(柱部110)及びスライド受け部(受け孔140、受け溝142)の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、移動部材c1がスライド突起を有しており、回動体44がスライド受け部を有していても良い。
上述の通り、レバー46は、前後クリック用第一係合部zk1を有している(図8参照)。この第一係合部zk1は、凸及び/又は凹である。本実施形態の第一係合部zk1では、複数の凸が、レバー46の前後回動軸を中心とする円に沿って並んでいる。第一係合部zk1が有する凸及び/又は凹は、1つであってもよい。
上述の通り、前後クリック用第一係合部zk1は、レバー46に設けられている。この第一係合部zk1は、レバー46とともに回動する部材に、設けられている。本実施形態では、第一係合部zk1は、レバー46に一体成形されている。別途成形された第一係合部zk1がレバー46に取り付けられても良い。
移動部材c1は、前後クリック用第二係合部zk2を有している(図13参照)。この第二係合部zk2は、凸及び/又は凹である。本実施形態の第二係合部zk2では、複数の凸が並列している。第二係合部zk2が有する凸及び/又は凹は、1つであってもよい。
第一係合部zk1の個数及び/又は位置は、1つであってもよいし、複数であってもよい。第二係合部zk2の個数及び/又は位置は、1つであってもよいし、複数であってもよい。レバー46の前後回動範囲において、前後クリック係合が生じる位置及び頻度は自由に変えることができる。前後クリック感が発現する範囲は、レバー46の前後回動範囲の一部であってもよいし、全部であってもよい。
前後クリック感は、第一係合部zk1と第二係合部zk2との係合により生じる。前後クリック機構がバルブ本体v1の外側に設けられているため、バルブ内の設計自由度が高い。バルブユニットy1の内部には、複数の弁体が精密に配置されており、これらの弁体が複雑に組み立てられている。バルブ内のスペースは限られている。このバルブの内部にクリック機構を設けると、バルブ内の設計自由度が低下する。本実施形態では、バルブ本体v1の外側に前後クリック機構が設けられているため、バルブ内部の構造を変更する必要がない。よって、様々なバルブに前後クリック感が付与されうる。
バルブ組立体40は、移動部材c1を取り外して使用することも可能である。移動部材c1の取り外しにより、前後クリック感を無くすことも容易である。
上記実施形態では、バルブ本体v1が、レバー46の左右回動に連動して回動する回動体44を有している。そして、この回動体は、スライド突起(柱部110)を有している。一方、移動部材c1は、スライド受け部(受け孔140、受け溝142)を有する。スライド突起とスライド受け部との係合により、回動体44の回動が移動部材c1に伝達される回動伝達機能が奏される。回動体44と移動部材c1との一体的な回転が確実になされうる。スライド突起及びスライド受け部が複数とされることで、上記回動伝達機能が高められている。なお、この回動伝達機能は、レバー46とレバー挿通孔134との間でも達成されている。
本実施形態において、スライド受け部(受け孔140)は貫通孔である。スライド受け部は、貫通孔でなくてもよい。例えば受け孔は、凹みであってもよい。
前後クリック用第一係合部zk1は、凸のみを有していても良いし、凹のみを有していても良いし、凹凸を有していても良い。前後クリック用第二係合部zk2は、凸のみを有していても良いし、凹のみを有していても良いし、凹凸を有していても良い。前後クリック係合は、あらゆる態様を含む。何らかの前後クリック感を発生させる係合は、前後クリック係合である。この係合は、例えば、乗り越えを含む。
第一係合部zk1と第二係合部zk2との係合によって、レバー46を前後回動する際の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚は、前後クリック感の一例である。また、第一係合部zk1と第二係合部zk2との係合が解除される瞬間に、振動が生じうる。この振動は、典型的な前後クリック感を生じさせる。また、この係合解除の瞬間に、音が生じうる。この音も、前後クリック感の一例である。第一係合部zk1と第二係合部zk2との係合に起因するあらゆる感覚が、前後クリック感に含まれる。
図8が示すように、第一係合部zk1は、複数の凸及び/又は凹を有する。このため、片道1回の前後回動により、複数のクリック感が生じる。片道1回の前後回動によって生じる前後クリック感の回数Nは、自由に設定されうる。また、レバー46の前後回動範囲のうち、前後クリック感が生じる回動範囲は、自由に設定されうる。言うまでもなく、レバー46の前後回動範囲のうちの一部で、前後クリック感が生じてもよい。
左右クリック機構は、レバー46の左右回動に伴うクリック感を生じさせる。このクリック感が、左右クリック感とも称される。
上述の通り、上ケース42は、左右クリック用第一係合部sk1としての凸部を有している(図11(b)参照)。上ケース42は、上記固定部材である。上記固定部材が、第一係合部sk1を有している。
図11(b)が示すように、上ケース42は、当接内周面部sm1を有している。当接内周面部sm1は、第一係合部sk1の両側に延在している。
上述の通り、回動体44は、当接部材st2を有している(図12参照)。この当接部材st2は、左右クリック用第二係合部sk2を有している。当接部材st2の先端部が、第二係合部sk2である。
第二係合部sk2(当接部材st2)は、当接内周面部sm1又は第一係合部sk1に当接している。レバー46が左右回動されると、第二係合部sk2は、当接内周面部sm1の上を移動する。レバー周位置が所定の位置に達するとき、第二係合部sk2が第一係合部sk1に係合(当接)する。この係合により、左右クリック感が生じる。第一係合部sk1(凸部)の位置により、左右クリック感が生じるレバー周位置が設定されうる。
第一係合部sk1は、凸のみを有していても良いし、凹のみを有していても良いし、凹凸を有していても良い。第二係合部sk2は、凸のみを有していても良いし、凹のみを有していても良いし、凹凸を有していても良い。左右クリック感を生じさせる。左右クリック係合は、あらゆる態様を含む。何らかの左右クリック感を発生させる係合は、左右クリック係合である。この係合は、例えば、乗り越えを含む。
第一係合部sk1と第二係合部sk2との係合によって、レバー46を左右回動させる際の抵抗力が変化する。この抵抗力の変化に起因する感覚は、左右クリック感の一例である。また、第一係合部sk1と第二係合部sk2との係合が解除される瞬間に、振動が生じうる。この振動は、典型的な左右クリック感を生じさせる。また、この係合解除の瞬間に、音が生じうる。この音も、典型的な左右クリック感を生じさせる。第一係合部sk1と第二係合部sk2との係合に起因するあらゆる感覚が、左右クリック感に含まれる。
図19は、ハンドル14の左右回動について説明するための平面図である。実際に操作されるのは、レバー46ではなくハンドル14である。ただし、レバー46とハンドル14とは一体である。ハンドル14の左右回動は、レバー46の左右回動と同義である。
ハンドル14(レバー46)の左右回動全範囲は、左限界MLから右限界MRまでである。本実施形態では、左右回動全範囲RFの角度がθfである。本実施形態では、レバー46の左右回動全範囲RFは、正面位置S1に対して左右非対称である。本実施形態では、右限界MRと正面位置S1との角度は20°であり、左限界MLと正面位置S1との角度が80°である。言うまでもなく、左右回動全範囲RFは、正面位置S1に対して左右対称であってもよい。
角度範囲RT1では、使用者から見て、右側に位置する。ハンドル14の周位置(レバー周位置)が角度範囲RT1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、水の割合が100%である。範囲RT1は、水吐出位置である。使用者から見た右側は、水側とも称される。
角度範囲RT1は、正面位置S1を含む。レバー周位置が正面位置S1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、レバー周位置が正面位置S1にあるとき、水の割合が100%である。
角度範囲RT2は、使用者から見て、角度範囲RT1よりも左側である。ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、湯が混合される。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、湯と水とが混合されるか、又は、水が無混合(湯が100%)である。範囲RT2は、湯水混合吐出位置及び湯吐出位置である。使用者から見た左側は、湯側とも称される。
省エネルギーの観点から、角度範囲RT2の少なくとも一部で係合状態EPが達成されるのが好ましい。省エネルギーの観点から、角度範囲RT2のうちの高温側で係合状態EPが達成されるのも好ましい。省エネルギーの観点から、角度範囲RT2の全体で係合状態EPが達成されるのが好ましい。これらの構成では、前後クリック感により、湯の吐出が使用者に告知されうる。この告知機能を一層高める観点から、角度範囲RT1の少なくとも一部で解除状態NPが達成されるのが好ましく、角度範囲RT1の全体で解除状態NPが達成されるのがより好ましい。
角度範囲RT2が小さすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が狭くなりすぎて、湯水混合比率の変化が急激になりすぎる場合がある。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、40度以上が好ましく、50度以上がより好ましく、55度以上が特に好ましい。角度範囲RT2が大きすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、100度以下が好ましく、90度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
省エネルギーの観点から、範囲RT1の角度θ1は、10度以上が好ましく、15度以上がより好ましく、20度以上がより好ましい。角度θ1が過大である場合、水の割合が100%である範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、60度以下が好ましく、50度以下がより好ましく、40度以下が特に好ましい。
図19において符号K1で示されるのは、湯を吐出しうる範囲と水のみを吐出しうる範囲との境界である。本実施形態では、この境界K1が、レバー正面位置S1よりも湯側に位置している。よって、レバー周位置が正面位置S1から少しズレた場合でも、湯が吐出されない。よって省エネルギー性が更に高められている。
図19において角度θkで示されているのは、正面位置S1と境界K1との間の回動角度である。省エネルギーの観点から、角度θkは、3°以上が好ましく、5°以上がより好ましい。温度調節性の観点からは、角度θ2が大きいほうがよい。この観点から、角度θkは、10°以下が好ましく、8°以下がより好ましい。
湯の吐出についての告知機能を高める観点から、左右クリック感が生じるレバー周位置は、境界K1であるのが好ましい。同様の観点から、左右クリック感が生じるレバー周位置は、境界K1又はその近傍であるのも好ましい。具体的には、境界K1±10°の範囲が好ましく、境界K1±7°の範囲がより好ましく、境界K1±5°の範囲がより好ましく、境界K1±3°の範囲がより好ましい。
湯の吐出についての告知機能を高める観点から、上記切り換えレバー位置は、境界K1であるのが好ましい。同様の観点から、上記切り換えレバー位置は、境界K1又はその近傍であるのも好ましい。具体的には、境界K1±10°の範囲が好ましく、境界K1±7°の範囲がより好ましく、境界K1±5°の範囲がより好ましく、境界K1±3°の範囲がより好ましい。
湯が混合されているか否かは、吐水の温度のみからは判別しにくいことがある。例えば、湯の混合割合が少ない場合、水が100%の場合と比較して、温度がそれほど高くならない。よってこの場合、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、湯の混合割合が高い場合であっても、給湯器等の加熱装置で加温された湯が蛇口に至るまでの間、吐水の温度が上がらない場合がある。この場合も、吐水の温度のみからは、湯の混合に気がつかないことがある。また、ハンドル14の周位置(レバー周位置)によって、湯が混合されているか否かが正確に判別できない場合がある。これらの場合において、使用者の意図に反して、湯が混合されることがある。この場合、エネルギーが無駄となる。上記実施形態では、前後クリック感の有無によって、湯が混合されているか否かが判別される。更に、上記実施形態では、左右クリック感によって、湯が混合されるレバー周位置が判別されうる。よって、エネルギーの無駄が抑制される。
第一係合部zk1及び/又は第二係合部zk2の形状を変更することにより、前後クリック感の仕様は自由に設計されうる。第一係合部sk1及び/又は第二係合部sk2の形状を変更することにより、左右クリック感の仕様は自由に設計されうる。本実施形態では、前後クリック感及び左右クリック感の設計自由度は高い。
クリック感は、人間によって感知される。クリック感は、視覚では得られない様々な情報を使用者に提供しうる。好ましくは、クリック感は、聴覚及び/又は触覚によって感知される。感知性を高める観点から、聴覚と触覚とが併用されてもよい。聴覚により感知されるクリック感として、音が挙げられる。触覚によって感知されるクリック感として、レバー操作時における抵抗感の変化及び振動が例示される。クリック感の継続時間は限定されない。典型的なクリック感として、比較的短時間の抵抗変化及び音が挙げられるが、比較的長時間のクリック感も可能である。
図20は、他の実施形態に係るバルブ組立体400の斜視図である。このバルブ組立体400は、上ケース420と、移動部材c100と、弾性部材cs1とを有している。
図21(a)は、移動部材c100の斜視図である。図21(b)は、上ケース420の斜視図である。
このバルブ組立体400と、前述のバルブ組立体40とでは、カム機構が相違している。図21(a)が示すように、移動部材c100の内周面部に、カム用凸部p100が設けられている。このカム用凸部p100は、内周カム部の一例である。図21(b)が示すように、上ケース420の外周面部に、カム用段差g100が設けられている。このカム用段差g100は、カム用ガイド部の一例である。このカム用段差g100は、外周カム部の一例である。
図21(a)が示すように、カム用凸部p100は、下面p102と傾斜面p104とを有する。図21(a)には図示されていないが、3つのカム用凸部p100が設けられている。これら3つのカム用凸部p100は、周方向に均等に配置されている。
図21(b)が示すように、カム用段差g100は、上面g102と傾斜面g104とを有する。図21(b)には完全に図示されていないが、上面g102と傾斜面g104とのセットが、3セット設けられている。これら3つのセットは、周方向に均等に配置されている。
組み立てられたバルブ組立体400において、下面p102及び上面g102は水平である。下面p102と上面g102とが当接しているとき、移動部材c100は上記下限位置にある。移動部材c100の回転により、下面p102と上面g102とが離れ、傾斜面p104と傾斜面g104とが当接しうる。更に移動部材c100が回転されると、傾斜面p104が傾斜面g104を滑り上がる。このため、移動部材c100が上昇しうる。移動部材c100が逆回転されると、移動部材c100が下降しうる。
このように、バルブ組立体400におけるカム機構は、カム用凸部p100とカム用段差g100との係合によって、移動部材c100の回転運動を移動部材c100の上下移動に変換する。
上記カム機構では、同じカム係合が周方向の複数箇所に均等に配置されている。例えば、バルブ組立体40では、カム用凸部p1とガイド溝g1とのカム係合が、周方向の3箇所に均等に配置されている。また、バルブ組立体400では、カム用凸部p100とカム用段差g100とのカム係合が、周方向の3箇所に均等に配置されている。このような構成により、移動部材の姿勢が安定し、カム機構が安定的に動作しうる。周方向に均等に配置されたカム機構の数がNcとされるとき、バルブ組立体40及びバルブ組立体400では、数Ncが3である。カム機構の安定的な動作の観点から、数Ncは、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。レバー46の左右回動範囲を広げる観点から、数Ncは、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
上記カム機構では、回転運動が、その回転軸に沿った方向の並進運動に変換されている。上記実施形態で例示された2種のカム機構の他、公知のカム機構が採用されてもよい。
上述の通り、バルブ組立体40では、ガイド溝g1が採用されている。ガイド溝g1は、上ケース42に一体成形されていなくてもよい。ガイド溝g1に代えて、平行ピン、スプリングピン等が採用されてもよい。平行ピン及びスプリングピンは、市販されている。組立の容易性及びカム係合の確実性を考慮すると、スプリングピンが好ましい。スプリングピンの材質として、バネ用鋼及びバネ用ステンレスが例示される。耐食性を考慮すると、バネ用ステンレスが好ましい。
弾性部材cs1は圧縮コイルバネである。弾性部材cs1は、前述のバルブ組立体40には無い部材である。弾性部材cs1は、移動部材c100を、下方に付勢している。弾性部材cs1は、移動部材c100の下降を確実とする。移動部材c100の自重に加えて、弾性部材cs1の付勢力が作用することで、傾斜面p104が傾斜面g104を円滑に滑り降りる。よって、移動部材c100が正確に下降しうる。したがって、移動部材c100の上下移動の精度が高まる。また、弾性部材cs1の付勢力により、第一係合部zk1と第二係合部zk2との係合が確実となる。よって、安定した前後クリック係合が達成されうる。
前述したバルブ組立体40及びバルブ組立体400では、前後クリック用弾性部材zd1として、ねじりバネが採用されている(図13参照)。ねじりバネ以外の弾性部材が採用されてもよい。他の前後クリック用弾性部材zd1として、圧縮コイルバネ及び板バネが例示される。弾性部材zd1は、当接部材zt1(第一係合部zk1)を第二係合部zk2側に付勢できればよい。
部品の公差等に起因して、当接部材zt1には、遊び(ガタ)が生じうる。この遊びを吸収して確実な付勢を達成する観点から、弾性部材zd1として、ねじりバネ又は圧縮コイルバネが好ましい。レイアウトの自由度をも考慮すると、ねじりバネがより好ましい。
前述したバルブ組立体40では、移動部材c1の本体ch1と当接部材zt1とが別部材である。言うまでもなく、前後クリック用第一係合部zk1が、移動部材c1に一体成形されてもよい。この場合、例えば、弾性変形しうる樹脂形成部に凹凸部が設けられてもよい。この凹凸部が前後クリック用第一係合部zk1として機能しうる。この樹脂形成部は、例えば、ブリッジ状に形成されてもよく、このブリッジ状の樹脂形成部の中央に上記凹凸部が配置されてもよい。
図10(d)の拡大部が示すように、ガイド溝g1の断面形状は、テーパーを有している。このテーパーにより、ガイド溝g1に侵入した異物が容易に排出されうる。
図10(d)の拡大部において両矢印θtで示されるのは、ガイド溝g1のテーパー角度である。カム用凸部p1をガイドする機能を高める観点から、テーパー角度θtは、90度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、45度以下がより好ましい。上述の異物排出性を高める観点から、テーパー角度θtは、10度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上がより好ましい。
上記バルブ組立体40では、外周カム部がガイド溝g1(カム用ガイド部)を有しており、内周カム部がカム用凸部p1を有していた。当然ながら、これとは逆の構成も可能である。即ち、外周カム部がカム用凸部p1を有しており、内周カム部がガイド溝g1(カム用ガイド部)を有していてもよい。
上記移動部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。摺動性及び耐摩耗性の観点から、移動部材の材質として、POM樹脂、PA樹脂、PPO樹脂、PPS樹脂及びそれらの繊維強化材が好ましい。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。PA樹脂とは、ポリアミド樹脂である。PPO樹脂とは、ポリフェニレンオキシド樹脂である。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。上記実施形態では、繊維強化POM樹脂が用いられた。
上記上ケースの材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。クリック機構が発現する際に発生する音は、心地よく且つ聞き取りやすいのが好ましい。上ケースの材質は、この音に影響する。良好な音を得る観点、耐久性、耐錆性、及び衛生面を考慮すると、上ケースの材質として、ステンレス合金及び繊維強化樹脂が好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
上記回動体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、回動体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
上記レバー軸の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。水による腐食を抑制する観点から、ステンレス合金及び樹脂が好ましい。上記実施形態では、ステンレス合金が用いられた。
上記可動弁体の上側部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。不快音回避の観点から、上側部材の材質としては、樹脂が好ましい。また、この上側部材を樹脂とすることで、可動弁体全体としての製造コストが抑制される。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
上記可動弁体の下側部材の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。固定弁体との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。
上記固定弁体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。可動弁体(下側部材)との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。
上記パッキン及び上記Oリングの材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。伸縮性により、組立性を向上し、製造誤差(寸法誤差等)が緩和されうる。これらの観点から、ゴム材が好ましい。上記実施形態では、ゴム材が用いられた。
上記下ケースの材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。不快音回避及び強度の観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。