JP2018021234A - 保護膜の形成方法及び保護膜を有する高耐食性鋼部材 - Google Patents

保護膜の形成方法及び保護膜を有する高耐食性鋼部材 Download PDF

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Abstract

【課題】強アルカリ性及び中性環境下において耐食性が高い保護膜の形成方法及び保護膜を有する高耐食性鋼部材を提供する。【解決手段】鋼部材の表面を亜鉛及びアルミニウムを含む合金浴中でめっきして亜鉛アルミ合金層を形成する工程と、前記亜鉛アルミ合金層が形成された鋼部材をリン酸塩溶液に浸漬してリン酸亜鉛被膜を形成する工程とを含む保護膜の形成方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、強アルカリ性及び中性両環境下においても耐食性が高い、アンカーボルトなどの鋼部材の保護膜に関する。
構造物の基礎などにコンクリートが用いられる。コンクリートは、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属イオンを含むため、コンクリート養生後においては、強アルカリ性を示す。その後、時間の経過とともに、空気中等に含まれる二酸化炭素と接触し、コンクリート中に含まれる水酸化物が炭酸塩に変化する。それにより、コンクリートは、強アルカリ性から中性に近づく(中性化)。そのため、コンクリートに埋設又は接触する鋼部材には、強アルカリ性環境下及び中性環境下の両環境下において、腐食に耐える性質(耐食性)が求められる。また、降雨や糞尿、土壌改良材などによりアルカリ性や中性に変化しうる土壌においても、鋼部材には同様に耐食性が求められる。
鋼部材に高い耐食性を付与するために、アルミニウムを含む合金をめっきして塗膜を形成することが知られている。しかし、アルミニウムはpH4〜8程度の中性領域でしか不動態化しないため、アルミニウムを含む合金をめっきした鋼部材をコンクリートに埋設又は設置しても、強アルカリ性環境下では腐食に耐えることができない。
また、鋼部材に耐食性を付与するために、亜鉛をめっきすることや亜鉛を含む合金をめっきすることが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
特開2004−60020号公報 特開2004−76158号公報 特開平8−325796号公報
しかしながら、亜鉛や亜鉛を含む合金を鋼部材の表面にめっきしても、コンクリートや土壌に埋設又は設置すると強アルカリ性及び中性環境下に曝されうるため、鋼部材が腐食するという問題がある。そこで本発明は、強アルカリ性及び中性環境下において耐食性が高い保護膜の形成方法及び保護膜を有する高耐食性鋼部材を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、強アルカリ性及び中性環境下においても、耐食性が高い保護膜を見出した。すなわち、本発明は、鋼部材の表面を亜鉛及びアルミニウムを含む合金浴中でめっきして亜鉛アルミ合金層を形成する工程と、前記亜鉛アルミ合金層が形成された鋼部材をリン酸塩溶液に浸漬してリン酸亜鉛被膜を形成する工程とを含む保護膜の形成方法である。さらに、本発明は、鋼部材と、亜鉛及びアルミニウムを含む合金を含む亜鉛アルミ合金層と、前記亜鉛アルミ合金層の表層をリン酸塩溶液に浸漬して形成されたリン酸亜鉛被膜とを有する高耐食性鋼部材である。
以上のように、本発明によれば、強アルカリ性及び中性環境下において耐食性が高い保護膜の形成方法及び保護膜を有する高耐食性鋼部材を提供することができる。
図1は、リン酸亜鉛被膜の表面を電子顕微鏡で1000倍に拡大した写真である。 図2は、実施例2で得られた保護膜の断面を電子顕微鏡で拡大した写真である。 図3は、実施例1に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図4は、実施例2に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図5は、比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図6は、比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図7は、比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。
《高耐食性鋼部材》
本発明に係る高耐食性鋼部材は、鋼部材と、保護膜とを有する。鋼部材は、強アルカリ性又は中性環境下に曝されうる場所、好ましくは強アルカリ性及び中性環境下に曝されうる場所で利用されるものであればよく、このような場所としては、例えば、コンクリート表面やコンクリート内部、降雨や糞尿、土壌改良材などによりアルカリ性や中性に変化しうる土壌表面や土壌中である。特に、鋼部材とコンクリートや土壌との接触面(いわゆる地際部)が厳しい環境に曝され、腐食しやすいので、地際部の鋼部材に保護膜を備えるのが有効である。このような観点から、鋼部材としては、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に接触して使用されるものが好ましく、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に埋設して使用されるものがより好ましい。鋼部材としては、例えば、アンカーボルト、ベースプレート、基礎支柱材(アングル材、鋼管)、鋼管フランジ、照明・標識・情報板用支柱、マンホール、ハンドホール鋼材、グレーチング、及びトンネル用ケーブルラック金具が挙げられる。鋼部材の材質としては特に制限されないが、価格や電蝕の観点から、ステンレスではないことが好ましい。
保護膜は、少なくとも亜鉛アルミ合金層とリン酸亜鉛皮膜とを含む。保護膜は、鋼部材の表面に直接形成されていてもよく、鋼部材の表面に下処理が施されたその上に形成されていてもよい。
亜鉛アルミ合金層は、亜鉛及びアルミニウムを含む合金を含んでいる層であり、亜鉛及びアルミニウムを含む合金としては、Zn−Al二元系合金が好ましい。亜鉛アルミ合金層の厚さは、好ましくは30〜80μm、より好ましくは35〜70μmである。亜鉛アルミ合金層は、後述の保護膜の形成方法により形成することができる。
リン酸亜鉛被膜は、亜鉛アルミ合金層の表層にリン酸塩溶液を浸漬することにより形成される層である。リン酸亜鉛被膜の厚さは、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜3μmである。リン酸亜鉛被膜は、後述の保護膜の形成方法により形成することができる。
保護膜は、リン酸亜鉛被膜の上にさらに亜鉛塗料塗膜が形成されていてもよい。亜鉛塗料塗膜の膜厚は、20〜60μm程度であればよく、それより厚い膜厚であってもよい。亜鉛塗料被膜は、後述の保護膜の形成方法により形成することができる。
《保護膜の形成方法》
本発明に係る保護膜の形成方法においては、まず、鋼部材の表面を亜鉛及びアルミニウムを含む合金で浴中にてめっきする。鋼部材の表面には、下処理が行われていてもよく、下処理層が形成されていてもよい。亜鉛及びアルミニウムを含む合金としては、Zn−Al二元系合金が好ましい。Zn−Al二元系合金は、Al添加量を増加させるに従い耐食性が向上する傾向があり、特にAl添加量4質量%までは顕著に耐食性が向上する傾向にある。ところが、Al添加量が10質量%を超えると耐食性はむしろ劣る傾向にあり、20質量%まではどのような大気腐食環境においても耐食性能は低下する傾向がある。この観点から、合金中アルミニウムが4〜10質量%であることが好ましく、4〜8質量%であることがより好ましく、6〜8質量%であることが更に好ましい。亜鉛及びアルミニウムを含む合金は、市販品を用いることができる。
亜鉛及びアルミニウムを含む合金をめっきする方法としては、特に制限はないが、溶融浸漬法によりめっきするのが好ましい。溶融浸漬法では、鋼部材の表面に一様にアルミニウムを分散することができる。めっき付着量は、好ましくは250〜350g/mである。膜厚は、後述するリン酸亜鉛被膜が形成された後において、好ましくは30〜80μm、より好ましくは35〜70μmである。膜厚が薄いと、十分な耐食性を得ることができない。亜鉛及びアルミニウムを含む合金をめっきすると、鋼部材の表面に、亜鉛及びアルミニウムを含む合金の層(以下、亜鉛アルミ合金層という。)が形成される。
次に、めっきされた鋼部材をリン酸塩溶液に浸漬する。具体的には、例えば、遊離酸度が2.5〜7.5、全酸度が30〜50、酸比が8〜12中のリン酸塩水溶液にめっきされた鋼部材を4〜6分間浸漬し、30〜60分間空気中で静置して乾燥させる。めっきされた鋼部材をリン酸塩溶液に浸漬することにより、亜鉛アルミ合金層の表層部分にリン酸亜鉛溶液が浸み込み、リン酸亜鉛被膜が形成される。リン酸亜鉛被膜の厚さは、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜3μmである。形成されたリン酸亜鉛被膜の分だけ、亜鉛アルミ合金層は薄くなる。
リン酸亜鉛被膜は、強アルカリ性環境下において耐食性を有する。亜鉛アルミ合金層のみでは、中性環境下においては十分な耐食性を有するものの、強アルカリ性環境下においてはアルミニウム成分が溶出することがある。アルミニウムが溶出すると、耐食性が低下する。そのため、層の表面にリン酸塩処理を行うことにより被膜を形成し、アルミニウムの溶出を抑制すると共に、リン酸亜鉛被膜により強アルカリ性環境下における耐食性を高める。リン酸塩処理は、従来、銀白色のめっき光沢を低光沢化するため、又は黒色化するために行われ、耐食性を高めるために行われていない。しかし、本発明においては、耐食性を高めるためにリン酸塩処理を行う。
必要に応じて、リン酸亜鉛被膜の上に亜鉛塗料を塗布する。亜鉛塗料は、亜鉛を含む塗料であればよく、亜鉛の含有量が、好ましくは70〜90質量%、より好ましくは80〜85質量%である。また、コンクリートが固化するまでの養生中は特に強アルカリ環境となり、亜鉛塗料に微量のアルミニウムが含まれると養生中のコンクリートと反応し水素ガスが発生することがある。その結果、コンクリートと保護膜との間に気泡を生じてすき間となることから、亜鉛塗料にはアルミニウムが含まれないことが好ましい。具体的には、亜鉛塗料に含まれるアルミニウムは、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
亜鉛塗料の塗布は、スプレーや刷毛で行うことができる。リン酸亜鉛被膜は鱗片状の微細な凹凸面となっていることから、アンカー効果によって亜鉛塗料との密着性が高い。亜鉛塗料は、膜厚が20〜60μm程度であればよく、それより厚い膜厚であってもよい。亜鉛塗料の塗布は、リン酸亜鉛皮膜上の全面に必ずしも行う必要はなく、コンクリートに接触又は埋設する部分にのみ行ってもよい。
亜鉛塗料を塗布してリン酸亜鉛被膜の上に亜鉛塗膜を形成することにより、コンクリートとの密着性を高めることができる。リン酸亜鉛被膜は、強アルカリ性環境下において耐食性を有する半面、コンクリートとの密着性が低い。密着性が低いと、隙間から水分が侵入し、隙間に水分が滞留することにより腐食を誘発するおそれがある。
上述のような保護膜を有する鋼部材は、強アルカリ性環境下及び中性環境下の両環境下において耐食性を有するので、環境に合わせて保護膜や鋼部材の材質など変えたりする必要がない。
≪実施例1≫
炭素鋼からなるベースプレート及びアンカーボルトの表面をアルミニウム7質量%のZn−Al二元系合金(製品名;タフZ10 那須電機鉄工社製)を用いて溶融浸漬法でめっきし、亜鉛アルミ合金層を形成した。ベースプレート及びアンカーボルト上のそれぞれの亜鉛アルミ合金層の厚さをJIS H 0401に基づいて測定した。結果を表1に示す。めっきされたベースプレート及びアンカーボルトを遊離酸度が5.5、全酸度が40、酸比が10中のリン酸塩水溶液に5分間浸漬し、60分間空気中で静置して乾燥させてリン酸亜鉛被膜を形成した。形成された被膜を電子顕微鏡で撮影したものを、図1に示す。リン酸亜鉛被膜の厚さは、ベースプレート及びアンカーボルト上のそれぞれのリン酸亜鉛被膜から無作為に選んだ5か所の厚さを電子顕微鏡で確認することにより求めた。結果を表2に示す。測定の結果、リン酸亜鉛被膜の平均値は、2.5μmであった。亜鉛アルミ合金層の厚さは、先に測定した層の厚さの平均値からリン酸亜鉛被膜の厚さの平均値を引いた値として求め、67.3μmであった。以上により、実施例1に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。
実施例1に係るベースプレート及びアンカーボルトをコンクリートに埋め込み設置し、複合サイクル試験(JIS H 8502:1999 めっきの耐食性試験方法)を100サイクル実施した後、コンクリートの外部と内部に赤錆が発生していないかどうかを目視により確認した。実施例1に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート外部において腐食はみられなかったものの、コンクリート内部における水が浸入した一部分において赤錆が発生している箇所があった。外観を図3に示す。
≪実施例2≫
実施例1のリン酸亜鉛被膜の上に亜鉛の含有量が81質量%、アルミニウムの含有量が0.5質量%以下の亜鉛末塗料(製品名;ジンキースプレー 日本ペイント防食コーティングス社製)をスプレー塗布して、亜鉛塗料塗膜を形成した。亜鉛塗料塗膜の膜厚は、リン酸亜鉛被膜の膜厚と同様に電子顕微鏡で測定した(ただし、ベースプレートのみ)。結果を表3に示す。亜鉛塗料塗膜の膜厚の平均値は、25μmであった。以上により、実施例2に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。
実施例2で得られた保護膜の断面図を電子顕微鏡で拡大した写真を、図2に示す。図2中、1は亜鉛アルミ合金層、2はリン酸亜鉛被膜、3は亜鉛塗料塗膜である。
実施例2に係るベースプレート及びアンカーボルトをコンクリートに埋め込み設置し、実施例1と同様に複合サイクル試験100サイクル実施した結果、実施例2に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート内部及び外部において、赤錆の発生はなかった。また、ベース地際部においてもコンクリート成分が亜鉛塗膜と密着していたことから水の浸入の形跡も見られなかった。外観を図4に示す。
≪比較例1≫
ベースプレート及びアンカーボルトの表面に溶融亜鉛めっきを施し、ねじ部を除く主要箇所のめっき膜厚が76μm以上となる比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。めっき膜厚はJIS H 0401に従って測定した。比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトについて、実施例1と同様に複合サイクル試験100サイクル実施した結果、赤錆の発生を確認した。比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート内部において腐食はみられなかったものの、外部においては全面に赤錆が発生した。外観を図5に示す。
≪比較例2≫
ベースプレートの表面にアルミニウム7質量%のZn−Al二元系合金(製品名;タフZ10 那須電機鉄工社製)を用いて溶融浸漬法でめっきし、アンカーボルトはステンレス製のものを用いて比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトについて、実施例1と同様に複合サイクル試験100サイクルを実施した結果、赤錆の発生を確認した。比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトは、ステンレス製のネジ部で赤錆が発生していた。また、ベースプレートもコンクリート内部やステンレス接触部近傍で赤錆が発生していた。外観を図6に示す。
≪比較例3≫
ベースプレート及びアンカーボルトの表面にアルミニウム7質量%のZn−Al二元系合金(製品名;タフZ10 那須電機鉄工社製)を用いて溶融浸漬法でめっきして比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトについて、実施例1と同様に複合サイクル試験100サイクルを実施した結果、赤錆の発生を確認した。比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート外部において腐食はみられなかったものの、コンクリート内部において赤錆が発生している箇所があった。外観を図7に示す。
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、強アルカリ性及び中性環境下においても、耐食性が高い保護膜を見出した。すなわち、本発明は、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に接触して使用される鋼部材の表面を亜鉛及びアルミニウムを含む合金浴中でめっきして亜鉛アルミ合金層を形成する工程と、前記亜鉛アルミ合金層が形成された鋼部材をリン酸塩溶液に浸漬してリン酸亜鉛被膜を形成する工程と、前記リン酸亜鉛被膜の上にさらに亜鉛の含有量が70〜90質量%の亜鉛塗料を塗布して亜鉛塗料塗膜を形成する工程とを含む保護膜の形成方法である。さらに、本発明は、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に接触して使用される鋼部材と、亜鉛及びアルミニウムを含む合金を含み、厚さが30〜80μmの亜鉛アルミ合金層と、前記亜鉛アルミ合金層の表層に形成され、厚さが1〜5μmのリン酸亜鉛被膜と、前記リン酸亜鉛被膜の上に形成され、亜鉛の含有量が70〜90質量%、厚さが20〜60μmの亜鉛塗料塗膜を有する高耐食性鋼部材である。
図1は、リン酸亜鉛被膜の表面を電子顕微鏡で1000倍に拡大した写真である。 図2は、実施例で得られた保護膜の断面を電子顕微鏡で拡大した写真である。 図3は、参考例1に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図4は、実施例に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図5は、比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図6は、比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。 図7は、比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトの測定結果であり、(a)は外部(b)は内部の写真である。
《高耐食性鋼部材》
本発明に係る高耐食性鋼部材は、鋼部材と、保護膜とを有する。鋼部材は、強アルカリ性又は中性環境下に曝されうる場所、好ましくは強アルカリ性及び中性環境下に曝されうる場所で利用されるものであればよく、このような場所としては、例えば、コンクリート表面やコンクリート内部、降雨や糞尿、土壌改良材などによりアルカリ性や中性に変化しうる土壌表面や土壌中である。特に、鋼部材とコンクリートや土壌との接触面(いわゆる地際部)が厳しい環境に曝され、腐食しやすいので、地際部の鋼部材に保護膜を備えるのが有効である。このような観点から、鋼部材としては、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に接触して使用されるものであり、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に埋設して使用されるものがより好ましい。鋼部材としては、例えば、アンカーボルト、ベースプレート、基礎支柱材(アングル材、鋼管)、鋼管フランジ、照明・標識・情報板用支柱、マンホール、ハンドホール鋼材、グレーチング、及びトンネル用ケーブルラック金具が挙げられる。鋼部材の材質としては特に制限されないが、価格や電蝕の観点から、ステンレスではないことが好ましい。
亜鉛アルミ合金層は、亜鉛及びアルミニウムを含む合金を含んでいる層であり、亜鉛及びアルミニウムを含む合金としては、Zn−Al二元系合金が好ましい。亜鉛アルミ合金層の厚さは、30〜80μm、より好ましくは35〜70μmである。亜鉛アルミ合金層は、後述の保護膜の形成方法により形成することができる。
リン酸亜鉛被膜は、亜鉛アルミ合金層の表層にリン酸塩溶液を浸漬することにより形成される層である。リン酸亜鉛被膜の厚さは、1〜5μm、より好ましくは2〜3μmである。リン酸亜鉛被膜は、後述の保護膜の形成方法により形成することができる。
保護膜は、リン酸亜鉛被膜の上にさらに亜鉛塗料塗膜が形成されている。亜鉛塗料塗膜の膜厚は、20〜60μmである。亜鉛塗料膜は、後述の保護膜の形成方法により形成することができる。
ン酸亜鉛被膜の上に亜鉛塗料を塗布する。亜鉛塗料は、亜鉛を含む塗料であればよく、亜鉛の含有量が、70〜90質量%、より好ましくは80〜85質量%である。また、コンクリートが固化するまでの養生中は特に強アルカリ環境となり、亜鉛塗料に微量のアルミニウムが含まれると養生中のコンクリートと反応し水素ガスが発生することがある。その結果、コンクリートと保護膜との間に気泡を生じてすき間となることから、亜鉛塗料にはアルミニウムが含まれないことが好ましい。具体的には、亜鉛塗料に含まれるアルミニウムは、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
参考例1≫
炭素鋼からなるベースプレート及びアンカーボルトの表面をアルミニウム7質量%のZn−Al二元系合金(製品名;タフZ10 那須電機鉄工社製)を用いて溶融浸漬法でめっきし、亜鉛アルミ合金層を形成した。ベースプレート及びアンカーボルト上のそれぞれの亜鉛アルミ合金層の厚さをJIS H 0401に基づいて測定した。結果を表1に示す。めっきされたベースプレート及びアンカーボルトを遊離酸度が5.5、全酸度が40、酸比が10中のリン酸塩水溶液に5分間浸漬し、60分間空気中で静置して乾燥させてリン酸亜鉛被膜を形成した。形成された被膜を電子顕微鏡で撮影したものを、図1に示す。リン酸亜鉛被膜の厚さは、ベースプレート及びアンカーボルト上のそれぞれのリン酸亜鉛被膜から無作為に選んだ5か所の厚さを電子顕微鏡で確認することにより求めた。結果を表2に示す。測定の結果、リン酸亜鉛被膜の平均値は、2.5μmであった。亜鉛アルミ合金層の厚さは、先に測定した層の厚さの平均値からリン酸亜鉛被膜の厚さの平均値を引いた値として求め、67.3μmであった。以上により、参考例1に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。
参考例1に係るベースプレート及びアンカーボルトをコンクリートに埋め込み設置し、複合サイクル試験(JIS H 8502:1999 めっきの耐食性試験方法)を100サイクル実施した後、コンクリートの外部と内部に赤錆が発生していないかどうかを目視により確認した。参考例1に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート外部において腐食はみられなかったものの、コンクリート内部における水が浸入した一部分において赤錆が発生している箇所があった。外観を図3に示す。
≪実施例
参考例1のリン酸亜鉛被膜の上に亜鉛の含有量が81質量%、アルミニウムの含有量が0.5質量%以下の亜鉛末塗料(製品名;ジンキースプレー 日本ペイント防食コーティングス社製)をスプレー塗布して、亜鉛塗料塗膜を形成した。亜鉛塗料塗膜の膜厚は、リン酸亜鉛被膜の膜厚と同様に電子顕微鏡で測定した(ただし、ベースプレートのみ)。結果を表3に示す。亜鉛塗料塗膜の膜厚の平均値は、25μmであった。以上により、実施例に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。
実施例で得られた保護膜の断面図を電子顕微鏡で拡大した写真を、図2に示す。図2
中、1は亜鉛アルミ合金層、2はリン酸亜鉛被膜、3は亜鉛塗料塗膜である。
実施例に係るベースプレート及びアンカーボルトをコンクリートに埋め込み設置し、参考例1と同様に複合サイクル試験100サイクル実施した結果、実施例に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート内部及び外部において、赤錆の発生はなかった。また、ベース地際部においてもコンクリート成分が亜鉛塗膜と密着していたことから水の浸入の形跡も見られなかった。外観を図4に示す。
≪比較例1≫
ベースプレート及びアンカーボルトの表面に溶融亜鉛めっきを施し、ねじ部を除く主要箇所のめっき膜厚が76μm以上となる比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。めっき膜厚はJIS H 0401に従って測定した。比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトについて、参考例1と同様に複合サイクル試験100サイクル実施した結果、赤錆の発生を確認した。比較例1に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート内部において腐食はみられなかったものの、外部においては全面に赤錆が発生した。外観を図5に示す。
≪比較例2≫
ベースプレートの表面にアルミニウム7質量%のZn−Al二元系合金(製品名;タフZ10 那須電機鉄工社製)を用いて溶融浸漬法でめっきし、アンカーボルトはステンレス製のものを用いて比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトについて、参考例1と同様に複合サイクル試験100サイクルを実施した結果、赤錆の発生を確認した。比較例2に係るベースプレート及びアンカーボルトは、ステンレス製のネジ部で赤錆が発生していた。また、ベースプレートもコンクリート内部やステンレス接触部近傍で赤錆が発生していた。外観を図6に示す。
≪比較例3≫
ベースプレート及びアンカーボルトの表面にアルミニウム7質量%のZn−Al二元系合金(製品名;タフZ10 那須電機鉄工社製)を用いて溶融浸漬法でめっきして比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトを得た。比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトについて、参考例1と同様に複合サイクル試験100サイクルを実施した結果、赤錆の発生を確認した。比較例3に係るベースプレート及びアンカーボルトは、コンクリート外部において腐食はみられなかったものの、コンクリート内部において赤錆が発生している箇所があった。外観を図7に示す。

Claims (9)

  1. 鋼部材の表面を亜鉛及びアルミニウムを含む合金浴中でめっきして亜鉛アルミ合金層を形成する工程と、
    前記亜鉛アルミ合金層が形成された鋼部材をリン酸塩溶液に浸漬してリン酸亜鉛被膜を形成する工程と
    を含むことを特徴とする保護膜の形成方法。
  2. 前記リン酸亜鉛被膜の上にさらに亜鉛塗料を塗布する工程を含む請求項1に記載の保護膜の形成方法。
  3. 前記亜鉛塗料に含まれるアルミニウム含有量が2質量%以下である請求項2に記載の保護膜の形成方法。
  4. 前記合金浴中、アルミニウムが4〜10質量%含まれる請求項1乃至3のいずれかに記載の保護膜の形成方法。
  5. 前記鋼部材は、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に接触して使用されるものである請求項1乃至4いずれかに記載の保護膜の形成方法。
  6. 鋼部材と、
    亜鉛及びアルミニウムを含む合金を含む亜鉛アルミ合金層と、
    前記亜鉛アルミ合金層の表層をリン酸塩溶液に浸漬して形成されたリン酸亜鉛被膜と
    を有することを特徴とする高耐食性鋼部材。
  7. 前記リン酸亜鉛被膜の上にさらに亜鉛塗料塗膜を有する請求項6に記載の高耐食性鋼部材。
  8. 前記亜鉛アルミ合金層の厚さが30〜80μm、前記リン酸亜鉛被膜の厚さが1〜5μm、及び亜鉛塗料塗膜の厚さが20〜60μmである請求項7に記載の高耐食性鋼部材。
  9. 前記鋼部材は、少なくとも一部がコンクリート又は土壌に接触して使用されるものである請求項6乃至8のいずれかに記載の高耐食性鋼部材。
JP2016153425A 2016-08-04 2016-08-04 保護膜の形成方法及び保護膜を有する高耐食性鋼部材 Active JP6206995B1 (ja)

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