JP6252400B2 - 補修用下地塗料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装された鋼構造物、例えば製鐵、化学プラント設備等の鋼製建築物、それらに付随する鋼製の配管の維持管理、長寿命化を図ることを目的とし、塗装塗り替え後の腐食の進行を抑え、残留塩化物の影響を受けにくく塗り替え後の塗装の寿命を延長化し、鋼構造物の信頼性を高める補修用下地塗料組成物に関する。
製鐵、化学プラント設備、それらに付随する鋼製の配管は、一般に防食塗料による塗装が施され防食されている。しかしながら防食塗装も長期に使用されると、太陽光や熱により塗膜が劣化したり鋼材面に達するようなキズがある部位、さらには鋼部材の鋭角な部分で塗膜の膜厚が薄くなる部位では腐食が進行する。これにより塗膜の剥離、さらには剥離に伴い腐食が継続的に進展し、鋼構造物として強度低下を招く。そのため塗装の劣化が進むと、腐食の進展を抑えるために補修塗装が行われる。
新設時の塗装では、非特許文献1に示されるように、橋梁用の塗装と同様、工場等で工業的に鋼材表面をブラスト処理(1種ケレン)により素地調整が行われている。素地調整が塗装の寿命を大きく支配する要因であることは公知である。一方、ディスクサンダー、ワイヤーホイルなどの電動工具による素地調整(2種ケレン以下)では十分な清浄化された鋼材表面が得られず著しく耐久性が劣化することが知られている(非特許文献 II−93)。したがって、近年の橋梁塗り替え塗装においては、ブラスト処理を実施することで塗り替え後の塗装の劣化を防ぎ、長期に渡り塗装による防食機能を発揮させることができる。
ここで、素地調整が十分でない場合に塗り替え後の塗装の防食機能が低下する原因は、表面に残留する不純物、特に塩化物イオンが腐食を促進し、早期に塗装が剥離し腐食が進行することである。そこで橋梁分野においては、50mg/mを超える塩分が付着していると塗装後早期に塗膜欠陥を生じやすいため、50mg/m以下になるまで除去することが望ましいとされている(非特許文献 II−110)。
製鉄、化学プラントにおいても、橋梁分野に準じて同様に塗装塗り替え時の表面の残留塩化物量を低減することが行われている。一般に製鐵、化学プラントは、海の近くにあり、塩化物の影響を受けやすい。また橋梁等に比べて、構造が複雑であることから狭隘部等が多く、現場でのケレン作業が極めて難しい。比較的平面部分の塩分除去は容易であるが、狭隘部のケレン作業が実施しにくい部分では現地でブラストを実施しても十分なケレンができず、塩化物を除去することができない。また高所作業となることもケレンを十分に実施できない要因となる。したがって、補修塗装を実施しても、新設時のように塗装本来の長期の防食性が期待できず、塗装の剥離、腐食が進行し、何度も短期間で補修塗装を繰り返すことになる。その結果、補修コストが大きくなるという問題が発生する。
塗装寿命を延ばすためにブラスト処理を施すためには、粉塵による周辺環境への影響を考慮して飛散防止対策が必要である。また使用済みブラスト研掃材の産業廃棄物処理等により多大なコストがかかる。
補修時の塗装仕様としては、一般に下地処理材として有機ジンクリッチペイントを用いる方法が知られている。有機ジンクリッチペイントはエポキシ樹脂等の結合剤に亜鉛末を多量に含有したものであり、素地調整作業、塗装作業が容易である上に、上塗り適用性が良好である特徴をもっている。しかしなら、有機ジンクリッチペイントを施しても、塗装耐久性の観点からブラストを施すことが望ましいとされており、(非特許文献1 II−94)、上述のように残留塩化物量も50mg/m以下に抑える処理が必要である。そのため、ケレンが十分に実施できない製鉄設備や化学プラントに適用しても、その効果は十分に発揮されないという問題があった。
従来から有機ジンクリッチペイントの改良がなされてきたが、さびや塩化物が残留するとともにケレンが十分施されない鋼材表面では十分な効果が発揮できなかった。
例えば、特許文献1には、補修塗り替え時の塩分の影響を抑えるため、ジンクリッチペイントに塩分除去剤を添加することが開示されている。特許文献2には、さらにジンクリッチペイント被膜表面の防錆性を高めるために、防錆顔料を添加することが開示されている。特許文献3では、ジンクリッチペイント中の亜鉛粒子の犠牲防食作用を発揮させるため、ジンクリッチペイントの下層に腐食性イオン物質を捕集、固定化し、長期防食性を可能にする素地調整剤を塗布する検討が行われている。しかしながら、これらの技術を適用したとしても、塩化物が残留する鋼材面において、塩分除去剤や素地調整剤等を複雑な鋼構造物全体に均一に施すことは困難であり、また長期の耐久性を十分確保することができない。
一方、特許文献4には酸可溶性のSnイオン供給源物質を含有する塗料により、塗装疵部の耐食性が向上する技術が開示されている。
社団法人 日本道路協会編 鋼道路橋塗装・防食便覧、 丸善株式会社(2005.12.26発行)
特開平10−237417号公報 特開2000−239570号公報 特開2004−35673号公報 特開2006−316139号公報
しかし、そもそも特許文献1〜3に記載の発明のように、塗料中に酸性下で溶出するZn(ジンク)が存在する場合には、早期にジンクが消費されて逆に耐久性が劣ることが想定される。このため、従来の技術では、特許文献1〜3に記載の発明に特許文献4に記載の発明を適用することは考えられなかった。また、仮に適用することができたとしても,溶解した硫酸第一スズは酸性を示すため,ジンクの消費が加速されて逆に耐久性の低下を招くものと考えられていた。
本発明は、塗装塗り替え時に軽度なケレンで長期の防食性を有する補修用下地塗料組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するために、軽度なケレン後においても剥離を抑制することができる下地処理塗料を検討した。その結果、従来の予想に反し、有機ジンクリッチペイント中に特定量の二価のスズイオン(硫酸第一スズ)を含有させると、著しく塗膜の剥離を抑制できることを見出した。
本発明における二価のスズイオンによる錆抑制メカニズムは以下の通りである。
飛来塩分量の多い環境下では、FeCl溶液の乾湿繰り返しが本質的な条件となり、Fe3+の加水分解によりpHが低下した状態でFe3+が酸化剤として作用する。このときの腐食反応は次式で示される。
カソード反応:Fe3++e→Fe2++2e
アノード反応:Fe→Fe2++2e
従って、腐食の総括反応は2Fe3++Fe→3Fe2+となる。
このような腐食反応に対して、Snにより以下のような効果が発揮される。
(1)Snは、Sn2+として溶解すると、2Fe3++Sn2+→2Fe2++Sn4+という反応によってFe3+の濃度を低下させることにより、上記総括反応を抑制する。さらにSnイオンには、アノード溶解を著しく抑制するインヒビター作用がある。これは鉄が溶ける反応自体を抑制する効果である。
(2)酸可溶性のSnを含有することで塗膜の剥離、腐食を抑制可能であることは公知(特許文献4)であるが、有機ジンクリッチペイント中に含有させると、想定を超える効果がある知見を得た。すなわち、通常の塗装の場合、溶出したSnイオンが、キズ部において鉄の溶解反応を抑制するため効果を発揮することになる。
また、SnとZnとが共存すると、以下のようにこれまでにはない効果を発揮することができる。
(3)硫酸Snの溶出により塗装初期はZnの溶解が助長され、溶け出したZnイオンがSnイオンと同様にアノード溶解を抑制するインヒビター作用を有する。
(4)有機ジンクリッチペイントに硫酸第一スズが存在することで、亜鉛の腐食生成物中にSnが含有し、Zn−Snの複合酸化物が生成することとなる。
(5)塗膜キズ部まわりに生成したこの複合酸化物は、極めて高い保護性の有していると考えられる。
(6)さらに、Snの供給源として硫酸第一スズを用いると、スズを供給した後の硫酸イオンはFe3+とClとの配位を阻害する効果があると考えられる。
(7)以上のように、有機ジンクリッチペイント中に特定量の二価のスズイオン(硫酸第一スズ)を含有すると、想定される以上の劇的な効果が発揮され、塗膜の剥離並びに腐食深さを抑制する知見を得た。
ここに、本発明は次の通りである。
(1)亜鉛末を主成分とする有機ジンクリッチペイントからなる補修用下地塗料組成物において、前記亜鉛末の含有量が前記組成物の全固形分に対して50〜90質量%であり、さらに前記組成物の全固形分に対して0.5〜3.5質量%の硫酸第一スズを含有することを特徴とする補修用下地塗料組成物。
(2)上記(1)に記載の補修用下地塗料組成物を、残留塩化物量がNaCl換算で50mg/m以上である鋼材の表面に塗装することを特徴とする塗装方法。
(3)前記鋼材の表面に、前記補修用下地塗料組成物からなる下塗り塗料を硬化膜厚が20〜250μmとなるように塗装して、下塗り層を形成した後、該下塗り層上に、有機樹脂を含有する上塗り塗料を硬化膜厚が20μm以上となるように塗装して、上塗り層を形成することを特徴とする上記(2)に記載の塗装方法。
(4)鋼材の表面に形成された、上記(1)に記載の補修用下地塗料組成物からなるとともに硬化膜厚が20〜250μmである下塗り層と、前記下塗り層上に形成された、有機樹脂を含有するとともに硬化膜厚が20μm以上である上塗り層とを備えることを特徴とする鋼構造物。
(5)鋼材の表面に形成された、上記(1)に記載の補修用下地塗料組成物からなるとともに硬化膜厚が20〜250μmである下塗り層と、前記下塗り層上に形成された、有機樹脂を含有するとともに硬化膜厚が20μm以上である上塗り層とを備えることを特徴とする鋼管。
本発明によれば、腐食性の高い過酷な塩化物環境において、十分なケレンが行えず塩化物が残留する鋼からなる鋼構造物や鋼製配管等の表面の深さ方向に進行する錆を効果的に防止することができ、塗装塗り替え時に軽度なケレンで長期の防食性を有する補修用下地塗料組成物を提供することができる。
本発明を詳述する。なお、以下では、「質量%」を単に「%」と記載する。
本発明の補修用下地塗料組成物は、普通鋼材、耐候性鋼材、Sn、Cu、Cr、Niを添加したような、いわゆる低合金耐食鋼からなる鋼構造物または鋼製の配管等の塗装補修時に使用される有機ジンクリッチペイントである。以下では、本発明の補修用下地塗料組成物、塗装方法、この塗装方法により得られた鋼構造物、鋼管について詳述する。
1.補修用下地塗料組成物
(1)亜鉛末
本発明で使用される亜鉛末は、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。たとえば、通常のジンクリッチペイントに使用されている金属亜鉛末や金属亜鉛合金粉が挙げられ、特に金属亜鉛末が好適である。亜鉛末の平均粒径は通常1〜50μm、好ましくは2〜10μmであるがこれらに限定されるものではない。50μmを越えると防食性が低下する場合がる。亜鉛末は、補修用下地塗料組成物の全固形分に対して50〜90%、好ましくは70〜85%である。含有量が50%未満では十分な耐食性が得られず、一方90%を越えると緻密な塗膜が形成できないので好ましくない。アルミニウム粉や銅粉等の他の金属粉を併用してもよい。
(2)有機ジンクリッチペイント
本発明の補修用下地塗料組成物は前述の亜鉛末および有機系結合剤を含有する有機ジンクリッチペイントである。有機系結合剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。中でも、接着性が高く、耐水性にも優れるエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は一般に使用される防食塗料成分であり、特に限定されるものではなく種々のものが用いられるが、三菱化学のエポキシ828、834、1001等が一例として挙げられる。
有機系結合剤の含有量は、補修用下地塗料組成物の強度を確保する面から、補修用下地塗料組成物の全固形分に基づいて、少なくとも7%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも10%である。
必要に応じて有機系結合剤に硬化剤を配合してもよい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されるものではない。従来公知のポリアミンやその変性物であり、例えば脂肪族ポリアミン類、脂環族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂環式ポリアミド等が一例として挙げられる。硬化剤の含有量は、有機系結合剤の質量に対して好ましくは5〜30%である。
溶媒は塗装後に自然乾燥により蒸散させることが好ましい。本発明ではそのような溶媒を選択すればよい。たとえば、トルエン,キシレン,イソプロピルアルコール,プロぴ連グリコールモノメチルエーテル,エチルベンゼン,メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
本発明では、さらに必要に応じて改質樹脂、タレ止め剤、分散剤、可塑剤等の塗料用添加剤等を適量配合することができる。
(3)硫酸第一スズ
硫酸第一スズは、Snイオンを溶出してZnイオンとZn−Sn複合酸化物を形成するため、塗膜の剥離の進展、深さ方向の錆の進行を抑制することができる。硫酸第一スズの含有量は、本発明の補修用下地塗料組成物の全固形分に対して0.5〜3.5%、好ましくは1.0〜3.0%である。硫酸第一スズの含有量が0.5%より少ないと、残留塩化物量が多い場合に、塗膜の剥離進展、錆の進行を抑制する効果が得られない。また3.5%より多いと、Znとの反応性が高くなりすぎるために、逆に性能(耐食性)が劣化する場合がある。
(4)適用環境
本発明の補修用下地塗料組成物は、鋼材表面の残留塩化物がNaCl換算で50mg/m以上である場合に特に効果を発揮する。すなわち、塩化物が存在することによる局所的なpHの低下、硫酸第一スズの溶解、亜鉛溶出、さらにはその後の保護的なZn−Sn複合酸化物の形成が防食性に極めて効果があることから、鋼材表面の残留塩化物がNaCl換算で50mg/m以上という過酷な環境下で特に効果が顕著に発揮される。当然のことながら、NaCl換算で50mg/m未満の場合にも優れた防食性を有する。
2.塗布方法
(1)鋼材の表面
本発明の補修用下地塗料組成物からなる塗料が塗装される鋼材の表面は、補修塗装のためにブラスト処理が行われていることが好ましいが、ブラスト処理が完全に行き届かない部位がある。このような部位では残留塩化物が前述のように多量に残存するが、本発明の組成物はこのような部位にも適用可能である。さらに、ディスクサンダー、ワイヤーホイルなどの電動工具による素地調整(2種ケレン以下)では十分な清浄化処理を行うことができない鋼材にも適用できる。
(2)下塗り層の形成
本発明では、前述のような鋼材の表面に、本発明の補修用下地塗料組成物からなる下塗り塗料を、硬化膜厚が20〜250μmとなるように塗装して下塗り層を形成する。
下塗り塗料の作製は、前述の亜鉛末、有機系結合剤、場合によっては硬化剤などを所定量秤量し、さらに使用時に塗装作業に適した粘度になるよう適当な溶媒を所定量秤量し、混合撹拌する。このようにして作製した塗料を、エアースプレー、エアレススプレー、刷毛塗り等の方法で塗装する。
本発明では、補修用下地塗料組成物を下塗り塗料として、単独で複数回、例えば2〜3回塗り重ねて使用することができる。
(3)上塗り層の形成
硬化膜厚が20〜250μmとなるように下塗り塗料を塗装した後、硬化後の下塗り層上に膜厚20μm以上の有機樹脂を含有する上塗り層を設ける。一方、所定の膜厚を超えると耐候性の向上があまり見込めない。また、厚すぎると生産性やコストが悪化する。このため、上限は好ましくは200μm以下である。
耐光性が必要な直接太陽光が当たる箇所に適用する場合には、本発明の補修用下地塗料組成物に耐光性に優れた、ふっ素樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料からなる群の少なくとも一種を上塗り塗料として塗装し、耐光性を保持することが好適である。上塗り塗料には、これらの有機樹脂の他に、硬化剤、溶媒、改質樹脂、タレ止め剤、分散剤、可塑剤等の塗料用添加剤等を適量添加してもよい。
また本発明の補修用下地塗料組成物を硬化膜厚が20〜250μmとなるように塗装し硬化した後、上塗り層を形成する前に、さらに他のエポキシ樹脂やウレタン樹脂の塗料を塗装して中塗り層を形成し、多層構造にすることが好ましい。これより一層の防食性が確保できる。
3.鋼構造物、鋼管
本発明の補修用下地塗料組成物や塗布方法は、海岸近くで使用される鋼部材、たとえば製鐵、化学プラント設備等の鋼製建築物に使用される鋼構造物や、それらに付随する鋼管に適用することができる。
これらの鋼構造物や鋼管の表面には、補修用下地塗料組成物からなる硬化膜厚が20〜250μmの下塗り層、および硬化膜厚が20μm以上の有機樹脂を含有する上塗り層が鋼材表面から順に形成されている。これにより、従来のような短期間での補修作業の繰り返しを抑制し、長期に渡り塗装による防食機能を発揮することができる。
さらに中塗り、上塗りの多層構造にすることも可能である.
次に本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
表1に示す普通鋼材(100×60×3mm厚)に後述する塗料を下記のように塗布した。
エポキシ樹脂としてjER1001(三菱化学社製)を5〜15%、本荘ケミカル(株)社製で型番がF−2000亜鉛末を40〜85%、WAKO社製で型番が200−17875の硫酸第一錫を予め乳鉢ですりつぶしたものを硬化後に表1に示す量になるような量、さらに混合溶剤(トルエン/プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル/メチルイソブチルケトン)を2〜20%配合し、混合攪拌して主剤を得た。また硬化剤としてトーマイド215(T&K TOKA製)を用い、溶剤を2〜10%混合した後,硬化剤として上記主剤に5〜15%混合して塗料を得た。得られた塗料を前述の普通鋼材にエアースプレーで塗装を行い、室温で1日間乾燥した。
Figure 0006252400
表1の化学成分をもつブラスト処理(ISO8501−1 Sa 2 1/2)を施した鋼材3枚について、後述のSAE J2334試験を無塗装で実施した。その後カップワイヤケレン、および水洗処理を順に行った。鋼材表面の残留塩化物量については、トールビーカー中に試験片を入れてイオン交換水200mL中に浸漬し、超音波洗浄を2分間実施し、溶液をICP(誘導結合プラズマ分析)により分析し、得られた塩化物量からNaCl換算で残留付着塩化物量(3枚の平均)とした。下記鋼材処理Aを施したブラスト鋼材は鋼構造物の新設時の鋼材に相当し、その他鋼材は塩化物が残留する補修時の鋼材に相当する。
・鋼材処理A:ブラスト処理(Sa 2.5)
・鋼材処理B:残留塩化物量 70mg/m
SAE J2334試験30日後、カップワイヤケレンを行った。その後、試験片をトールビーカー中200mLのイオン交換水に30秒浸漬した。試験片を取り出し、新たに準備したトールビーカー中200mLのイオン交換水に浸漬、超音波洗浄を実施した。
・鋼材処理C:残留塩化物量 210mg/m
SAE J2334試験7日後、カップワイヤケレンを行った。その後、試験片をトールビーカー中200mLのイオン交換水に30秒浸漬した。
・鋼材処理D:残留塩化物量 450mg/m
SAE J2334試験30日後、カップワイヤケレンを行った。その後、試験片をトールビーカー中200mLのイオン交換水に30秒浸漬した。
硬化塗膜の耐食性を比較するため、本発明の補修用下地塗料組成物の乾燥膜厚を30μmとした。硬化塗膜中の成分を表2に示す。なお表2中の硫酸第一スズ量は、塗料作製時の固形分から計算した。塗料の硬化塗膜上に、汎用の変性エポキシ塗料(バンノー200:中国塗料製)を膜厚150μmになるようにスプレー塗装した。
・腐食深さの測定
塗装部耐食性を調査するために、得られた試験片に鋼材に達するキズ(クロスカット)を付与し、SAE(Society of Automotive Engineers)J2334試験により評価した。SAE J2334試験は、湿潤:50℃、100%RH、6時間、塩分付着:0.5%NaCl、0.1%CaCl、0.075%NaHCO水溶液浸漬、0.25時間、乾燥:60℃、50%RH、17.75時間を1サイクル(合計24時間)とした加速試験であり、腐食形態が大気暴露試験に類似しているとされている。SAE J2334試験80サイクル終了後、塗膜のキズ部の腐食深さをポイントマイクロメーターにより15点測定し、腐食深さとした。結果を表2に示す。なお、表2で示す亜鉛末および硫酸第一錫以外の質量は、硬化塗膜中のエポキシ樹脂および硬化剤からなる固形分の質量である。
Figure 0006252400
これらの結果から明らかなように、本発明の補修用下地塗料組成物を使用すると、鋼材表面の残留塩化物量が現状の補修時の基準である50mg/m以上であっても、耐食性に優れ、腐食深さを劇的に低下させることができる。
一方、比較例1〜12では、硫酸第一スズの添加量が範囲から外れるため、腐食深さが増大する。比較例13については、亜鉛末の含有量が多すぎ塗装乾燥後に表面性状が悪化したため、腐食試験を実施しなかった。比較例14では、亜鉛末の含有量が少なすぎるため、腐食深さが増加した。
以上のように、本発明の補修用下地塗料組成物を使用した塗膜は、鋼材表面の残留塩化物量が現状の補修時の基準である50mg/m以上であっても、残留塩化物の影響を受けにくく塗り替え後の塗装の寿命を延長化し、鋼構造物の信頼性を高めることが達成できる。

Claims (5)

  1. 亜鉛末を主成分とする有機ジンクリッチペイントからなる補修用下地塗料組成物において、
    前記亜鉛末の含有量が前記組成物の全固形分に対して50〜90質量%であり、さらに前記組成物の全固形分に対して0.5〜3.5質量%の硫酸第一スズを含有することを特徴とする補修用下地塗料組成物。
  2. 請求項1に記載の補修用下地塗料組成物を、残留塩化物量がNaCl換算で50mg/m以上である鋼材の表面に塗装することを特徴とする塗装方法。
  3. 前記鋼材の表面に、前記補修用下地塗料組成物からなる下塗り塗料を硬化膜厚が20〜250μmとなるように塗装して、下塗り層を形成した後、該下塗り層上に、有機樹脂を含有する上塗り塗料を硬化膜厚が20μm以上となるように塗装して、上塗り層を形成することを特徴とする請求項2に記載の塗装方法。
  4. 鋼材の表面に形成された、請求項1に記載の補修用下地塗料組成物からなるとともに硬化膜厚が20〜250μmである下塗り層と、
    前記下塗り層上に形成された、有機樹脂を含有するとともに硬化膜厚が20μm以上である上塗り層と
    を備えることを特徴とする鋼構造物。
  5. 鋼材の表面に形成された、請求項1に記載の補修用下地塗料組成物からなるとともに硬化膜厚が20〜250μmである下塗り層と、
    前記下塗り層上に形成された、有機樹脂を含有するとともに硬化膜厚が20μm以上である上塗り層と
    を備えることを特徴とする鋼管。
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