JP2018013633A - 静電潜像現像用トナー、1成分現像剤及び2成分現像剤 - Google Patents

静電潜像現像用トナー、1成分現像剤及び2成分現像剤 Download PDF

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Abstract

【課題】低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることが可能な静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】複数のトナー粒子は、各々、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層と、シェル層を貫通する複数の磁性粉粒子とを有する。磁性粉粒子の各々は、トナー粒子の径方向内側ではトナーコアの表面に埋め込まれ、トナー粒子の径方向外側ではシェル層の表面よりもトナー粒子の径方向外側に突出している。磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aと、シェル層の厚さbと、平均値cとは、下記式(1)及び式(2)を満たす。
0<c≦(a/2)・・・式(1)
10nm≦b≦50nm・・・式(2)
上記式(1)における平均値cは、トナー粒子の径方向における、磁性粉粒子のうちシェル層の表面よりもトナー粒子の径方向外側に位置する部分の長さの平均値を意味する。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電潜像現像用トナー、1成分現像剤及び2成分現像剤に関する。
画像形成装置と静電潜像現像用トナーとを用いて記録媒体(例えば印刷用紙)に画像を形成する場合、静電潜像現像用トナーが記録媒体に転写される。転写された静電潜像現像用トナーに例えば定着ローラーを用いて熱及び圧力が加えられることにより、静電潜像現像用トナーは記録媒体に定着される。定着に必要なエネルギーを少なくしつつ高画質な画像を形成するために、記録媒体に対する静電潜像現像用トナーの定着性を向上させることが望まれている。静電潜像現像用トナーの定着性を向上させるために、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1に記載の静電潜像現像用トナーでは、尿素樹脂でトナーコアの表面が被覆されている。尿素樹脂は、トナーコアを溶融させることなく、濃縮型尿素樹脂前駆体をトナーコアの表面で樹脂化することにより形成される。
特開2004−294468号公報
トナーの低温定着性をさらに向上させることが要求されている。それだけでなく、かぶりの発生を防止すること、及び、低湿環境で画像形成を行った場合における現像性の向上も要求されている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることが可能な静電潜像現像用トナーを提供することである。また、本発明の別の目的は、低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることが可能な1成分現像剤及び2成分現像剤のそれぞれを提供することである。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、トナー粒子を複数含む。前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアの表面を被覆するシェル層と、前記シェル層を貫通する複数の磁性粉粒子とを有する。前記磁性粉粒子の各々は、前記トナー粒子の径方向内側では前記トナーコアの前記表面に埋め込まれ、前記トナー粒子の径方向外側では前記シェル層の表面よりも前記トナー粒子の径方向外側に突出している。前記磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aと、前記シェル層の厚さbと、平均値cとは、下記式(1)及び式(2)を満たす。
0<c≦(a/2)・・・式(1)
10nm≦b≦50nm・・・式(2)
ここで、上記式(1)における前記平均値cは、前記トナー粒子の径方向における、前記磁性粉粒子のうち前記シェル層の表面よりも前記トナー粒子の径方向外側に位置する部分の長さの平均値を意味する。
本発明に係る1成分現像剤は、本発明に係る静電潜像現像用トナーを含む。
本発明に係る2成分現像剤は、本発明に係る静電潜像現像用トナーと、摩擦によって前記静電潜像現像用トナーを正に帯電させる静電潜像現像用キャリアとを含む。
本発明によれば、トナーの低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることができる。
本発明に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子を示す断面図である。 磁性粉粒子の平均ヘイウッド径a、シェル層の厚さb、及び、平均値cを説明するための模式図である。
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称することがある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、平均値は、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。また、粉体(例えば後述する、トナー、トナーコア、トナー粒子及びトナー母粒子)に関する評価値(形状又は物性などを示す値)も、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。数平均値は、相当数の測定対象について測定した値の和を、測定した個数で除算した値である。さらに、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、電子顕微鏡を用いて測定された一次粒子の円相当径である。円相当径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。体積中位径D50は、コールターカウンター法を用いて、体積基準で算出されたメディアン径である。
[静電潜像現像用トナーの構成]
本実施形態に係る静電潜像現像用トナー(以下、「トナー」と記載することがある)は、トナー粒子を複数含む。このようなトナーは、例えば電子写真装置において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、電子写真装置の帯電装置及び露光装置が、画像データに基づいて感光体に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。
現像工程では、感光体の近傍に配置された現像ローラーの現像スリーブが、現像ローラーに内蔵されたマグネットロールの磁力により、トナーを引き付ける。これにより、トナーが現像ローラーの表面に担持される。そして、現像スリーブの回転により、現像スリーブ上のトナーを感光体に供給する。これにより、感光体に形成された静電潜像にトナーが付着し、感光体上にトナー像が形成される。
続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体に転写する。その後、定着装置によりトナーを加熱及び加圧して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。なお、転写方式は、感光体上のトナー像を、中間転写体を介さず、記録媒体に直接転写する直接転写方式であってもよい。また、定着方式は、加熱ローラー及び加圧ローラーによるニップ定着に限定されず、ベルト定着方式であってもよい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層と、シェル層を貫通する複数の磁性粉粒子とを有する。磁性粉粒子の各々は、トナー粒子の径方向内側ではトナーコアの表面に埋め込まれ、トナー粒子の径方向外側ではシェル層の表面よりもトナー粒子の径方向外側に突出している。磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aと、シェル層の厚さbと、平均値cとは、下記式(1)及び式(2)を満たす。
0<c≦(a/2)・・・式(1)
10nm≦b≦50nm・・・式(2)
ここで、上記式(1)における平均値cは、前記トナー粒子の径方向における、磁性粉粒子のうちシェル層の表面よりもトナー粒子の径方向外側に位置する部分の長さの平均値を意味する。
「磁性粉粒子の平均ヘイウッド径a」は、磁性粉粒子の投影面積の円相当径である。磁性粉粒子の平均ヘイウッド径(Heywod径)は、例えば、以下の方法で測定される。走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope)、例えば日本電子株式会社製「JSM−880」)及び画像解析装置を用いて、観察倍率5万倍にて相当数の磁性粉粒子を測定する。測定された全てのヘイウッド径の和を、測定された磁性粉粒子の個数で除算する。これにより、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径(数平均ヘイウッド径)が算出される。
磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aは、例えば、磁性粉粒子に含まれる磁性粉コアの形成時に金属粒子の成長条件を適宜変更することにより、調整することができる。金属粒子の成長条件としては、例えば、金属の水溶液の加熱温度、金属の水溶液に通気させる空気の速度、及び金属の水溶液に空気を通気する時間が挙げられる。
「シェル層の厚さb」とは、トナー粒子の径方向におけるシェル層の大きさを意味し、次に示す方法に従って測定される。まず、トナー粒子の断面TEM(Transmission Electron Microscope)写真を撮影する。次に、トナー粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。詳しくは、トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引く。その2本の直線の各々において、トナーコアとシェル層との界面(トナーコアの表面に相当)からシェル層の表面までの長さ(4箇所)を測定する。このようにして測定された4箇所の長さの平均値を、1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を複数のトナー粒子に対して行い、複数のトナー粒子(測定対象)が備えるシェル層の厚さの平均値を求める。このようにして求められたシェル層の厚さの平均値を「シェル層の厚さb」とする。
トナー粒子の断面TEM写真においてトナーコアとシェル層との境界が不明瞭である場合には、トナー粒子の断面TEM写真を、電子エネルギー損失分光法(EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy))検出器(例えば、ガタン社製「GIF TRIDIEM(登録商標)」)と画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)とを用いて解析することが好ましい。これにより、トナー粒子の断面TEM写真においてトナーコアとシェル層との境界が明瞭となり、よって、シェル層の厚さbを求めることができる。
「トナー粒子の径方向における、磁性粉粒子のうちシェル層の表面よりもトナー粒子の径方向外側に位置する部分の長さの平均値c(以下、磁性粉粒子の突出高さの平均値cと記載することがある)」は、次に示す方法に従って測定される。まず、トナー粒子の断面TEM写真を撮影する。次に、トナー粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。詳しくは、画像解析ソフトウェアにおいて、計測ツールの手動計測のライン長計測を選択する。手動計測のライン長計測を選択した状態で、トナー粒子の断面TEM写真において、トナーコアの表面に埋め込まれている磁性粉粒子を無作為に数個、選択する。そして、選択した磁性粉粒子の各々において磁性粉粒子の突出高さを計測し、その数平均値を算出する。このようにして求められた磁性粉粒子の突出高さの数平均値を「磁性粉粒子の突出高さの平均値c」とする。
図1及び図2を参照して、本実施形態に係るトナー粒子の一例を説明する。図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子1を示す断面図である。図2は、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径a、シェル層の厚さb、及び、磁性粉粒子の突出高さの平均値cを説明するための模式図である。
なお、図2では、トナーコア11の表面11A及びシェル層12の表面12Aを直線で記載しているが、実際のトナー粒子では、トナーコアの表面及びシェル層の表面は球面形状(断面視円形形状)を有する。また、図2に示す方向Drは、トナー粒子1の径方向を意味する。
図1に示す静電潜像現像用トナーは、トナー粒子1を複数含む。トナー粒子1は、トナーコア11と、トナーコア11の表面11Aを被覆するシェル層12と、シェル層12を貫通する複数の磁性粉粒子13とを有する。磁性粉粒子13の各々は、トナー粒子1の径方向における一方の端部(具体的には、トナー粒子1の径方向内側に位置する端部)ではトナーコア11の表面11Aに埋め込まれ、トナー粒子1の径方向における他方の端部(具体的には、トナー粒子1の径方向外側に位置する端部)ではシェル層12の表面12Aよりもトナー粒子1の径方向外側に突出している。例えば、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aと、シェル層の厚さbと、磁性粉粒子の突出高さの平均値cとは、下記式(1)及び式(2)を満たす。
0<c≦(a/2)・・・式(1)
10nm≦b≦50nm・・・式(2)
本実施形態のトナーは、低温定着性に優れる。また、本実施形態のトナーを含む現像剤を用いて画像を形成すれば、かぶりの発生を防止できる。また、本実施形態のトナーを含む現像剤を用いて低湿環境で画像形成を行った場合であっても、現像性を高く維持できる。さらには、本実施形態のトナーを含む現像剤を用いれば、高画質な画像を形成できる。以下、図1を参照しながら、本実施形態に係るトナーをさらに説明する。
本実施形態に係るトナー粒子1はトナーコア11の表面11Aを被覆するシェル層12を有しており、シェル層の厚さbは10nm≦b≦50nmを満たしている。シェル層の厚さbが10nm以上であれば、定着時に、トナーコア11に含まれる樹脂成分が溶融することを防止できる。トナーコア11に含まれる樹脂成分としては、例えば、結着樹脂又はワックスが挙げられる。シェル層の厚さbが50nm以下であれば、定着時にはシェル層12に含まれる樹脂成分が溶融するので、定着強度を確保できる。これらのことから、シェル層の厚さbが10nm以上50nm以下であれば、トナーの低温定着性が向上する。
さらに、本実施形態に係るトナーでは、磁性粉粒子13はシェル層12を貫通している。これにより、定着時に熱及び圧力をトナーに加えると、磁性粉粒子13のうちシェル層12を貫通する部分がシェル層12を破壊する起点となり得る。このことからも、トナーの低温定着性が向上する。
また、本実施形態に係るトナーでは、磁性粉粒子13がトナー粒子1の径方向内側においてトナーコア11の表面11Aに埋め込まれているため、トナーコア11の表面11Aからの磁性粉粒子13の脱離を防止できる。その上、本実施形態に係るトナーでは、c≦(a/2)を満たしているため、シェル層12の表面12Aからの磁性粉粒子13の脱離を防止できる。これらのことから、トナー粒子1が磁性粉粒子13を含有した状態で画像形成を行うことができる。よって、トナー粒子1はマグネットロールにより磁気拘束され易くなるため、帯電不良トナー(例えば無帯電トナー)の飛散を防止できる。その結果、かぶりの発生を防止できる。
本実施形態に係るトナーでは、トナー粒子1が磁性粉粒子13を含有した状態で画像形成を行うことができる。また、0<cを満たしている。これらのことから、画像形成時には、磁性粉粒子13が感光体の表面に接触し易く、つまり、シェル層12と感光体の表面との接触面積を小さく抑えることができる。よって、トナー粒子1に含まれる樹脂成分が感光体の表面に付着することを防止できる。それだけでなく、トナー粒子1に含まれる樹脂成分が感光体の表面に付着してしまった場合であっても、磁性粉粒子13が感光体の表面に接触することによって、感光体の表面に付着してしまった樹脂成分が磁性粉粒子13に掻き取られることとなる。これにより、感光体の表面が樹脂成分(トナー粒子1に含まれる樹脂成分)によって汚染されることをより確実に防止できる。このことからも、かぶりの発生を防止できる。
また、本実施形態に係るトナーでは、0<cを満たしているため、トナーに過剰に帯電された電荷が磁性粉粒子13を経由して逃げ易くなる。これにより、チャージアップが起こりやすい環境で画像形成を行った場合であっても、チャージアップの発生を防止できるため、トナーの帯電安定性を高めることができ、よって、現像性を高く維持できる。チャージアップが起こりやすい環境としては例えば低湿環境が挙げられる。そのため、本実施形態に係るトナーでは、低湿環境で画像形成を行った場合であっても現像性を高く維持でき、例えば低湿環境で画像形成を行った場合であっても高い画像濃度を有する画像を形成できる。ここで、チャージアップとは、トナーが過剰に正に帯電する現象を意味する。また、帯電安定性に優れるトナーとは、トナーの帯電量分布がシャープである特性、トナーを用いて画像を形成し始める際にトナーを所望の帯電量に帯電できる特性、及びトナーを用いて連続して画像を形成した場合にトナーを所望の帯電量に維持できる特性を有するトナーを意味する。
また、本実施形態に係るトナーでは、c≦(a/2)を満たしているため、トナー粒子1の表面における凹凸を小さく抑えることができる。これにより、トナー粒子1の流動性を高く維持できる。よって、トナー粒子1の凝集を防止できるため、高画質な画像を形成できる。
なお、トナー粒子1は、トナーコアの表面に埋め込まれていない磁性粉粒子を含んでいても良く、全体がシェル層の内部に位置する磁性粉粒子を含んでいても良い。また、トナーは、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面にシェル層が形成されていないトナー粒子をさらに含んでいても良い。
好ましくは、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aは、100nm以上300nm以下である。磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aが100nm以上であれば、磁性粉粒子13の分散性をより一層高く維持できる。これにより、トナー粒子1の製造時には、磁性粉粒子13はトナーコア11の表面11Aに均一に付着し易くなる。よって、トナーの帯電量分布はシャープとなり易く、また、チャージアップの発生をさらに防止できる。また、磁性粉粒子13がトナーコア11の表面11Aに均一に付着し易ければ、定着時には、磁性粉粒子13のうちシェル層12を貫通する部分がシェル層12の破壊の起点になり易くなる。これにより、トナーの低温定着性がさらに向上する。
磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aが300nm以下であれば、トナーコア11の表面11Aからの磁性粉粒子13の脱離をさらに防止できる。これにより、画像形成時における帯電不良トナー(例えば無帯電トナー)の飛散をさらに防止できる。よって、かぶりの発生をさらに防止できる。
磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aが300nm以下であれば、磁性粉粒子13の粒度分布をシャープに維持できるため、磁性粉粒子13がトナーコア11の表面11Aに均一に付着し易くなる。これにより、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aが100nm以上であることにより得られる効果と同一の効果が得られる。つまり、トナーの低温定着性がさらに向上する。
それだけでなく、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aが300nm以下であれば、トナーコア11の表面11Aに設けられる磁性粉粒子13の量を確保できる。磁性粉粒子13のうちシェル層12を貫通する部分は、定着時には、シェル層12を破壊する起点として機能し得る。そのため、定着時にはシェル層12の破壊が起こり易くなる。このことによっても、トナーの低温定着性がさらに向上する。
好ましくは、磁性粉粒子13は多面体形状を有する。磁性粉粒子13が多面体形状を有する場合には、磁性粉粒子13は頂点及び辺を有することとなる。これにより、画像形成時、磁性粉粒子13の頂点及び辺が感光体の表面に接触することとなる。磁性粉粒子13の頂点及び辺が感光体の表面に接触すれば、磁性粉粒子の面が感光体の表面に接触する場合に比べ、感光体の表面に付着してしまった樹脂成分が掻き取られ易くなる。よって、磁性粉粒子が頂点及び辺を有しない場合に比べ、例えば磁性粉粒子が球形形状を有する場合に比べ、かぶりの発生をさらに防止できる。
また、磁性粉粒子13はシェル層12を貫通する。定着時には、磁性粉粒子13の頂点及び辺の方が、磁性粉粒子13の面よりも、シェル層12を破壊する起点として機能し易くなる。これらのことから、磁性粉粒子13が多面体形状を有していれば、定着時にはシェル層12が破壊され易くなるため、トナーの低温定着性がさらに向上する。
それだけでなく、磁性粉粒子13が頂点及び辺を有する場合には、頂点及び辺から電荷が放出され易い。これにより、多面体形状の磁性粉粒子13を含有するトナー粒子1は、球形形状の磁性粉粒子を含有するトナー粒子に比べ、帯電量の過剰な上昇を防止できる。
多面体形状の例としては、八面体形状又は六面体形状が挙げられる。八面体形状として具体的には、8個の三角形で囲まれた八面体形状が挙げられる。六面体形状として具体的には、6個の四角形で囲まれた六面体形状が挙げられる。多面体形状においては、多面体が備える各頂点及び各辺が尖っていてもよい。或いは、多面体形状は、多面体が備える各頂点及び各辺の一方又は両方が曲面状であると共に、多面体の投影像の外周部に直線とみなせる部分が存在する形状であってもよい。磁性粉粒子の形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製「JSM−880」)を用いて、観察倍率5万倍で磁性粉粒子を観察することにより確認される。
好ましくは、磁性粉粒子13の含有量は100.0質量部のトナーコア11に対し0.5質量部以上3.0質量部以下である。磁性粉粒子13のうちシェル層12を貫通する部分は、定着時には、シェル層12を破壊する起点として機能し得る。磁性粉粒子13の含有量が100.0質量部のトナーコア11に対し0.5質量部以上であれば、定着時にはシェル層12の破壊が起こり易くなる。これにより、トナーの低温定着性がさらに向上する。
磁性粉粒子13は、定着時には、溶融し難い。磁性粉粒子13の含有量が100.0質量部のトナーコア11に対し3.0質量部以下であれば、定着時に溶融し難い成分の含有量を少なく抑えることができる。このことによっても、トナーの低温定着性がさらに向上する。
また、磁性粉粒子13の含有量が100.0質量部のトナーコア11に対し0.5質量部以上であれば、連続印刷を行った場合においてもチャージアップの発生を防止できる。これにより、形成される画像の画像濃度を高く維持できる。磁性粉粒子13の含有量が100.0質量部のトナーコア11に対し3.0質量部以下であれば、連続印刷を行った場合においてもトナーの帯電量を維持できる。
それだけでなく、磁性粉粒子13の含有量が100.0質量部のトナーコア11に対し0.5質量部以上であれば、シェル層12の内部の電気抵抗を所望の値に調整し易い。これにより、トナーの帯電量分布がより一層シャープとなる。
好ましくは、トナーコア11は内添剤として磁性粉粒子を含有しない。トナーコア11が内添剤として磁性粉粒子を含有しない場合であっても、低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることができる。以上、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係るトナーを説明した。以下、トナーの構成をさらに具体的に説明する。
<磁性粉粒子>
磁性粉粒子に含有される金属の例としては、強磁性金属、複数種類の強磁性金属の合金、コバルト又はニッケルを酸化鉄にドーピングした金属、強磁性金属元素を含まないが熱処理により強磁性を示すようになる合金又は二酸化クロムが挙げられる。強磁性金属の例としては、鉄、コバルト又はニッケルが挙げられる。鉄は、酸化鉄(例えば、四酸化三鉄又はフェライト)の形態で使用されてもよい。四酸化三鉄は具体的にはマグネタイトである。磁性粉粒子には、これらの磁性粉粒子の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。トナー粒子の帯電量を調整し易いことから、磁性粉粒子にはマグネタイトが含有されることが好ましい。
磁性粉粒子の表面は、表面処理剤により処理されていることが好ましい。例えば、磁性粉粒子は表面処理剤でコーティングされていることが好ましい。磁性粉粒子の表面が表面処理剤により処理されていれば、シェル層の形成時、磁性粉粒子に含有される金属の一部が水性媒体中で陽イオン化して溶出することを抑制できると考えられる。その結果、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面へのシェル層の原料の付着、及び磁性粉粒子におけるシェル層の原料のin−situ重合が進行し易くなる。
磁性粉粒子の表面が表面処理剤により処理された場合、磁性粉粒子は磁性粉コアと被覆層とを有する。被覆層は、磁性粉コアを被覆するように設けられる。磁性粉コアは、上述の磁性粉粒子に含有される金属を含有する。被覆層は、表面処理剤又は表面処理剤の加水分解物を含有する。
被覆層は、磁性粉コアの表面の少なくとも一部に設けられていればよい。シェル層の形成時において磁性粉粒子に含有される金属の一部が陽イオン化して水性媒体中へ溶出することを抑制するためには、被覆層が磁性粉コアの表面の実質的に全体に設けられることが好ましい。なお、被覆層に含有される表面処理剤の一部は、磁性粉コアが有する基(例えば水酸基)又は磁性粉コアに含有される自由水と化学的に結合していてもよい。
被覆層に含有される表面処理剤の例としては、ケイ素化合物又はリン酸化合物が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ケイ素化合物の例としては、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン又はケイ酸化合物が挙げられる。
アルキルトリアルコキシシランの例としては、n−オクチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン又はデシルトリメトキシシランが挙げられる。
ジアルキルジアルコキシシランの例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン又はジエチルジエトキシシランが挙げられる。
トリアルキルアルコキシシランの例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン又はトリエチルエトキシシランが挙げられる。
アリールトリアルコキシシランの例としては、フェニルトリメトキシシラン又はフェニルトリエトキシシランが挙げられる。
ケイ酸化合物の例としてはアルキルシリケートが挙げられ、より具体的にはメチルシリケート又はエチルシリケートが挙げられる。表面処理剤としてアルキルシリケートが使用される場合、アルキルシリケートが磁性粉粒子の表面で加水分解してシリカが生成していてもよい。そのため、磁性粉粒子の被覆層は、表面処理剤の加水分解物であるシリカを含有していてもよい。アルキルシリケートは、例えば加熱により加水分解される。
表面処理剤としてはアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルシリケートが使用されることが好ましい。表面処理剤としてアルキルトリアルコキシシランが使用される場合、磁性粉粒子の被覆層はアルキルトリアルコキシシランを含有する。表面処理剤としてアルキルシリケートが使用される場合、磁性粉粒子の被覆層は、アルキルシリケートの加水分解物であるシリカを含有する。表面処理剤としてはアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルシリケートが使用されることにより、磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアの摩擦帯電量を所望の値に調整し易くなる。
表面処理剤としてはn−オクチルトリエトキシシランが使用されることがより好ましい。この場合、磁性粉粒子の被覆層は、n−オクチルトリエトキシシランを含有する。表面処理剤としてn−オクチルトリエトキシシランが使用されることにより、連続して画像を形成した場合であっても、形成される画像の画像濃度を向上させ易くなる。
表面処理剤の含有量は、100.00質量部の磁性粉コアに対して、0.01質量部以上2.00質量部以下であることが好ましい。表面処理剤の含有量がこのような範囲内であると、多数の磁性粉粒子から構成される粉体(以下、磁性粉と記載する)の磁性を維持しながら磁性粉の表面に負帯電性を付与できると考えられる。
<トナーコア>
トナーコアは、例えば結着樹脂、着色剤及び離型剤のうちの1種以上を含有する。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、結着樹脂、着色剤又は離型剤)を割愛してもよい。
(結着樹脂)
結着樹脂は、トナーの調製に用いられる結着樹脂である限り、特に限定されない。結着樹脂としては、トナーの定着性を向上させる観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレンアクリル酸系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル化合物樹脂又はスチレンブタジエン樹脂が挙げられる。
結着樹脂として熱可塑性樹脂が使用される場合、熱可塑性樹脂の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱可塑性樹脂に、架橋剤又は熱硬化性樹脂を添加してもよい。結着樹脂内に部分的に架橋構造を導入することにより、トナーの定着性を確保しながら、トナーの保存安定性、形態保持性及び耐久性を向上させ易くなる。
結着樹脂として官能基の多い熱可塑性樹脂を用いれば、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面にシェル層を形成し易くなる。また、結着樹脂中での着色剤の分散性及びトナーの低温定着性を向上させるためには、トナーコアが、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂は、例えばアルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることにより得られる。ポリエステル樹脂の調製に用いられるアルコールの好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
ジオール類の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸の例としては、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸が挙げられる。
2価カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸又はイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸又はイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸又はエンポール三量体酸が挙げられる。
アルコール及びカルボン酸は、各々1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、カルボン酸をエステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体の例としては、酸ハライド、酸無水物又は低級アルキルエステルが挙げられる。ここで、低級アルキルとは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは15mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、より好ましくは20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である。ポリエステル樹脂の水酸基価の量が20mgKOH/g以上であれば、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面にシェル層を形成し易くなる。ポリエステル樹脂の水酸基価の量が60mgKOH/g以下であれば、シェル層の厚さを所定の厚さに抑えることができ、また、トナーの帯電安定性を高く維持できる。ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば、JIS(日本工業規格)K0070−1992で規定される方法又はこれに準拠する方法に従って測定される。
ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば、ポリエステル樹脂を製造する際のアルコールの使用量とカルボン酸の使用量とを適宜変更することによって調整される。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂の軟化点は、80℃以上150℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点は、30℃以上60℃以下であることが好ましい。結着樹脂の軟化点及びガラス転移点がこのような範囲内であると、トナーの高い定着性を維持しながら、トナーの保存安定性、形態保持性及び耐久性を向上させ易い。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤として黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤としては、例えば黒色顔料又は黒色染料が挙げられる。黒色顔料の具体例としては、カーボンブラックが挙げられる。後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された黒色着色剤が使用されてもよい。
(離型剤)
離型剤は、例えばトナーの定着性及び耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、100質量部の結着樹脂に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
離型剤の例としては、脂肪族炭化水素ワックス、脂肪族炭化水素ワックスの酸化物、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス又は脂肪酸エステルの一部若しくは全部が脱酸化されたワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレワックス(例えば、低分子量ポリエチレン)、ポリプロピレンワックス(例えば、低分子量ポリプロピレン)、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス又はフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスの酸化物の例としては、酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンのブロック共重合体が挙げられる。植物ワックスの例としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう又はライスワックスが挙げられる。動物ワックスの例としては、みつろう、ラノリン又は鯨ろうが挙げられる。鉱物ワックスの例としては、オゾケライト、セレシン又はペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするワックスの例としては、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部若しくは全部が脱酸化されたワックスの例としては、脱酸カルナバワックスが挙げられる。これらの離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<シェル層>
シェル層は、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。シェル層に含有される熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーを重合又は共重合させることにより得られる。シェル層が熱硬化性樹脂を含有する場合、通常、トナーの定着時にトナーに熱及び圧力を加えてもシェル層が破壊され難い。しかし、本実施形態のトナーでは、既に述べたように、トナーの定着時にトナーに熱及び圧力を加えると、磁性粉粒子のうちシェル層を貫通する部分がシェル層を破壊する起点となると考えられる。そのため、シェル層が熱硬化性樹脂を含有する場合であっても、トナーの低温定着性を向上させることができる。
シェル層に含有される熱硬化性樹脂は、カチオン性の基を有することが好ましい。カチオン性の基を有する熱硬化性樹脂は、カチオン性の基を有する熱硬化性樹脂のモノマーを重合又は共重合させることにより得られる。ここで、結着樹脂としてアニオン性を有する樹脂(例えばエステル結合又は水酸基を有する樹脂)を使用する場合、トナーコアは水性媒体中でアニオン性を示す傾向が強くなる。ここで、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面は負帯電性を有するため、磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアは水性媒体中でアニオン性を示す。そのため、熱硬化性樹脂のモノマーがカチオン性の基を有することにより、水性媒体を用いてシェル層を形成する場合には、カチオン性を示す熱硬化性樹脂のモノマーを、アニオン性を示す粒子(磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアの表面に埋め込まれて構成された粒子)の表面に引き付け易くなる。つまり、水性媒体中で正極性に帯電する熱硬化性樹脂のモノマーが、水性媒体中で負極性に帯電する粒子(磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアの表面に埋め込まれて構成された粒子)に電気的に引き寄せられ易くなる。そして、例えばin−situ重合により、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面にシェル層が均一に形成され易くなる。その結果、既に述べたように、トナー粒子の帯電量を均一にでき、トナーの帯電量分布をシャープにすることができる。また、トナーを用いて連続して画像を形成した場合であっても、チャージアップの発生を抑制でき、よって、形成される画像の画像濃度の低下を抑制できる。
熱硬化性樹脂が有するカチオン性の基の例としては、窒素含有基(例えば−NH−又は−N=)が挙げられる。カチオン性の基を有する熱硬化性樹脂としては、例えば窒素含有熱硬化性樹脂が挙げられる。窒素含有熱硬化性樹脂の例としては、メラミン樹脂、尿素樹脂又はグリオキザール樹脂が挙げられ、メラミン樹脂が好ましい。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。メラミン樹脂の形成に使用されるモノマーは、メラミン及びホルムアルデヒドである。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂の形成に使用されるモノマーは、尿素及びホルムアルデヒドである。グリオキザール樹脂は、グリオキサールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂の形成に使用されるモノマーは、グリオキサールと尿素との反応生成物及びホルムアルデヒドである。
熱硬化性樹脂のプレポリマーを使用して、シェル層を形成してもよい。例えば、メラミン、尿素又はグリオキサールと尿素との反応生成物を、プレポリマー(以下、初期重合体と記載することがある)の形態で使用してもよい。ここで、プレポリマーとは、モノマーの重縮合反応を、その重合度がポリマーの重合度に到達する前の段階で停止することにより得られる中間生成物を意味する。
誘導体化された熱硬化性樹脂のモノマーを使用して、シェル層を形成してもよい。例えば、メラミン、尿素及びグリオキサールと反応させる尿素は、公知の変性を受けていてもよい。例えば、熱硬化性樹脂のモノマーを、熱可塑性樹脂と反応させる前に、ホルムアルデヒドによりメチロール化してもよい。
既に述べた熱硬化性樹脂のモノマー、熱硬化性樹脂のプレポリマー及び誘導体化された熱硬化性樹脂のモノマーを、包括的に「熱硬化性樹脂の材料」と記載することがある。熱硬化性樹脂の材料は、カチオン性の基を有することが好ましく、窒素含有基(例えば−NH−又は−N=)を有することがより好ましい。熱硬化性樹脂の材料がカチオン性の基を有することにより、水性媒体中で正極性に帯電する熱硬化性樹脂の材料が、水性媒体中で負極性に帯電する粒子(磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコア)に電気的に引き寄せられ易くなる。そして、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面における熱硬化性樹脂の材料のin−situ重合を進行させ易くなる。
熱硬化性樹脂の材料は、トナーコアが含有する結着樹脂の官能基と反応し得る官能基を有することが好ましい。例えば、結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、熱硬化性樹脂の材料は、ポリエステル樹脂が有する水酸基及びカルボキシル基と反応し得る水酸基を有することが好ましい。
<外添剤>
トナー粒子の表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。なお、外添剤を付着させる前の粒子(トナー粒子)を、トナー母粒子と記載することがある。
外添剤としては、例えば、金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸バリウム)、炭化珪素又はシリカが挙げられる。シリカの具体例としては、コロイダルシリカ又は疎水性シリカが挙げられる。また、外添剤は、必要に応じて、表面処理剤(例えば、アミノシラン、シリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザン、チタネートカップリング剤又はシランカップリング剤)により表面処理されていてもよい。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.00μm以下であることが好ましい。外添剤の含有量は、100質量部のトナー母粒子に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
[一成分現像剤の構成]
本実施形態に係る一成分現像剤は、本実施形態に係るトナーを含む。これにより、本実施形態に係る一成分現像剤を用いて画像形成を行えば、低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることができる。
好ましくは、一成分現像剤は外添剤として無機微粒子を含有する。無機微粒子の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対し0.5質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。無機微粒子としては、例えば、疎水性シリカを用いることができる。疎水性シリカの一例としては、メトキシシランが挙げられる。
[二成分現像剤の構成]
本実施形態に係る二成分現像剤は、本実施形態に係るトナーと、摩擦によって静電潜像現像用トナーを正に帯電させる静電潜像現像用キャリア(以下、「キャリア」と記載することがある)とを含む。これにより、本実施形態に係る二成分現像剤を用いて画像形成を行えば、低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることができる。以下、二成分現像剤に含まれるキャリアをさらに具体的に説明する。
(キャリア)
キャリアの一例として、樹脂で被覆されたキャリアコアが挙げられる。キャリアコアは磁性粒子によって形成される。キャリアの別の例として、樹脂中に磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
磁性粒子の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、若しくはコバルトの粒子;これらの材料とマンガン、亜鉛若しくはアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金の粒子;鉄−コバルト合金の粒子;セラミックスの粒子;又は高誘電率物質の粒子が挙げられる。セラミックスの粒子として使用されるセラミックスとしては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛又はニオブ酸リチウムが挙げられる。高誘電率物質の粒子として使用される高誘電率物質としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム又はロッシェル塩が挙げられる。
キャリアコアを被覆する樹脂及び樹脂キャリアに含有される樹脂の例としては、アクリル酸系重合体、スチレン系重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、オレフィン重合体(例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂又はアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。キャリアの粒子径は、例えば、電子顕微鏡により測定される。
トナーを二成分現像剤において用いる場合、トナーの含有量は、二成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
[トナーの製造方法の一例]
好ましくは、トナーの製造方法は、トナーコアの表面に磁性粉粒子の各々の一部分を埋め込む工程と、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面にシェル層を形成する工程とを含む。トナーの製造方法は、必要に応じて、磁性粉の形成工程、トナーコアの形成工程、洗浄工程、乾燥工程及び外添工程のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
<磁性粉の形成工程>
(磁性粉コアの形成工程)
磁性粉コアの形成工程では、金属の水溶液を塩基性条件下で加熱する。加熱された金属の水溶液に空気を通気させる。これにより、金属を酸化させる。酸化された金属を粉砕する。その結果、磁性粉コアが得られる。
金属の水溶液を加熱する際に、金属の水溶液のpHは塩基性物質を用いて12.0以上13.0以下に調整されることが好ましい。金属の水溶液の加熱温度は、70℃以上100℃以下であることが好ましい。金属の水溶液に通気させる空気の速度は、50L/分以上200L/分以下であることが好ましい。金属の水溶液に空気を通気させる時間は、30分以上600分以下であることが好ましく、200分以上250分以下であることがより好ましい。酸化させた金属の粉砕は、例えば粉砕機(例えば、株式会社奈良機械製作所製「ハンマーミル(HM−5)」)を用いて行われる。
得られた磁性粉コアに対して、必要に応じて、洗浄、ろ過、乾操の1つ以上の操作が実施されてもよい。
(表面処理工程)
表面処理工程では、磁性粉コアの表面を表面処理剤で処理する。これにより磁性粉粒子が得られる。表面処理工程で得られる磁性粉粒子は、磁性粉コアと、磁性粉コアを被覆する被覆層とを有する。形成される被覆層は、表面処理剤又は表面処理剤の加水分解物を含有する。
表面処理剤が、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン又はアリールトリアルコキシシランである場合、表面処理剤による処理は、表面処理剤と磁性粉コアとを例えば混合機(具体的にはホイール型混練機)を用いて混合することにより行われる。混合時間は、5分以上5時間以下であることが好ましく、30分以上2時間以下であることがより好ましい。
表面処理剤がケイ酸化合物である場合、表面処理剤による処理は、表面処理剤(例えば液体状のケイ酸化合物)に磁性粉コアを浸漬させることにより行われる。浸漬時間は、例えば0.1秒以上30分以下であることが好ましい。浸漬させる温度は、例えば0℃以上50℃以下である。
表面処理剤に浸漬された磁性粉コアは、必要に応じて加熱されてもよい。加熱温度は、100℃以上300℃以下であることが好ましい。加熱は減圧下で行われてもよい。
このような表面処理を行うことなく磁性粉を形成してもよい。つまり、磁性粉コアを磁性粉粒子として用いても良い。
<トナーコアの形成工程>
トナーコアは、例えば、凝集法又は粉砕法により形成される。トナーコアが凝集法により形成される場合、トナーコアの形成工程は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナーを構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナーコアを形成する。凝集法によれば、形状が均一であり、粒子径の揃ったトナーコアが得られ易い。
トナーコアが粉砕法により形成される場合、トナーコア形成工程は、例えば混合工程、混練工程、粉砕工程及び分級工程を含む。混合工程では、結着樹脂と着色剤と離型剤とを混合して、混合物を得る。混練工程では、得られた混合物を溶融し混練して、混練物を得る。粉砕工程では、得られた混練物を粉砕して、粉砕物を得る。分級工程では、得られた粉砕物を分級して、トナーコアを得る。粉砕法によれば、比較的容易にトナーコアを調製できる。また、後述するシェル層の形成工程で、加熱によりやや軟化したトナーコアが表面張力によって収縮することで、トナーコアが球形化する傾向がある。したがって、トナーコアを粉砕法で製造する場合であっても、トナー粒子の平均円形度を向上させ易い。
<磁性粉粒子の埋め込み工程>
磁性粉粒子の埋め込みでは、トナーコアの表面に複数の磁性粉粒子の各々の一部分を埋め込む。トナーコアの表面に複数の磁性粉粒子の各々の一部分を機械的に埋め込むことが好ましい。トナーコアの表面に複数の磁性粉粒子の各々の一部分を埋め込む方法としては、混合機(例えば、ハイブリダイゼーションシステム(登録商標))を用いて、トナーコアと磁性粉粒子とを混合する方法が挙げられる。ハイブリダイゼーションシステムを用いてトナーコアと磁性粉粒子とを混合すると、トナーコアと磁性粉粒子との衝突による衝撃力が発生する。これにより、磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアの表面に埋め込まれることとなる。
磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアの表面に埋め込まれるように、混合条件を設定することが好ましい。例えば、ハイブリダイゼーションシステムでの回転速度は2000rpm以上5000rpm以下であることが好ましく、ハイブリダイゼーションシステムでの混合時間は2分以上13分以下であることが好ましい。ハイブリダイゼーションシステムでの回転速度が2000rpm以上であれば、トナーコアと磁性粉粒子との衝突による衝撃力が発生し易く、よって、磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアの表面に埋め込まれ易くなる。ハイブリダイゼーションシステムでの混合時間が2分以上である場合にも同様の効果が得られる。
ハイブリダイゼーションシステムでの回転速度が5000rpm以下であれば、トナーコアと磁性粉粒子との衝突による衝撃力が所定の大きさに抑えられ、よって、磁性粉粒子がトナーコアの表面に完全に埋没されることを防止できる。ハイブリダイゼーションシステムでの混合時間が13分以下である場合にも同様の効果が得られる。
好ましくは、磁性粉粒子の添加量は100.00質量部のトナーコアに対して0.50質量部以上3.00質量部以下である。
<シェル層の形成工程>
シェル層の形成工程では、複数の磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面にシェル層を形成する。好ましくは、複数の磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアを、シェル層の原料を含む液に分散させ、かかるトナーコアの表面でシェル層の原料を重合又は共重合させる。
シェル層の形成は、水性媒体中で行われることが好ましい。これにより、シェル層の形成に用いる溶媒に対する、結着樹脂の溶解及びトナーコアに含有される成分(例えば離型剤)の溶出を防ぐことができる。また、シェル層の形成は、分散剤を含む水性媒体中で行われることが好ましい。分散剤としては、例えばp−トルエンスルホン酸ナトリウム又はポリアクリル酸ナトリウムを使用できる。
水性媒体とは、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体中に含有される極性溶媒の例としては、メタノール又はエタノールが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、水性媒体の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
分散方法としては、分散液を強力に攪拌する装置を用いて、磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアを水性媒体中で機械的に分散させる方法が挙げられる。分散液を強力に攪拌する装置としては、例えば、混合装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスミックス(登録商標)」)が用いられる。
磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアを、熱硬化性樹脂の材料を含む水性媒体に添加する前に、水性媒体のpHを、酸性物質を用いて4程度に調整することが好ましい。水性媒体のpHを酸性側に調整することで、熱硬化性樹脂の材料の重縮合反応が促進され易くなる。磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアは、pH4の水性媒体中でアニオン性を示すことが好ましい。これにより、かかるトナーコア中の磁性粉粒子に含有される金属の一部がイオン化してpH4の水性媒体中へ溶出することを抑制できると考えられる。その結果、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面に対して、均一なシェル層を形成し易くなる。
必要に応じて水性媒体のpHを調整した後、水性媒体中で、熱硬化性樹脂の材料と磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアとを混合する。これにより、磁性粉粒子の各々の一部分が表面に埋め込まれたトナーコアの水性分散液を得る。得られた水性分散液中で、磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面において熱硬化性樹脂の材料の重合反応を進行させる。
シェル層を形成する際の水性媒体の温度は、40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。このような範囲内の温度でシェル層を形成すると、シェル層の形成を進行させ易い。
磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面でシェル層を形成する際の温度は、40℃以上95℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。このような範囲内の温度下でシェル層を形成することで、シェル層の形成が良好に進行する。
磁性粉粒子の各々の一部分が埋め込まれたトナーコアの表面を被覆するようにシェル層が形成されることにより、トナー母粒子を含む水性分散液が得られる。トナー母粒子を含む水性分散液を常温まで冷却する。その後、必要に応じて、後述するトナー母粒子の洗浄工程、乾燥工程及び外添工程から選択される1つ以上の工程を行う。その結果、トナー粒子を含むトナーが得られる。
メラミン樹脂を含むシェル層を形成する場合、メラミン樹脂のモノマーとポリアクリルアミドとがイオン交換水に溶解されて構成された水溶液を用いることが好ましい。これにより、ポリアクリルアミドを含まない水溶液を用いてシェル層を形成した場合に比べ、形成されるシェル層の硬度を低く抑えることができる。よって、厚さが10nm以上50nm以下のシェル層を形成できる。
<洗浄工程>
トナー母粒子は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。洗浄方法の例としては、トナー母粒子を含む水性分散液から、固液分離(例えば、濾過)によりトナー母粒子のウェットケーキを回収し、得られるウェットケーキを、水を用いて洗浄する方法が挙げられる。洗浄方法の別の例としては、分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
<乾燥工程>
トナー母粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー母粒子を乾燥させる方法としては、乾燥機を用いる方法が挙げられる。乾燥機の例としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器又は減圧乾燥機が挙げられる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の乾燥と同時に、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。
<外添工程>
トナー母粒子の表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件で、混合機(例えば、FMミキサー及びナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
トナーの製造方法は、要求されるトナーの特性に応じて任意に変更されてもよい。また、必要のない操作及び工程は割愛してもよい。なお、外添工程を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
[一成分現像剤の製造方法の一例]
好ましくは、一成分現像剤の製造方法は、上述の方法に従って得られたトナーに対し無機微粒子を外添する工程を含む。
[二成分現像剤の製造方法の一例]
好ましくは、一成分現像剤の製造方法は、上述の方法に従って得られたトナーとキャリアとを混合する工程を含む。
本発明の実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
以下に示す方法に従って、表1に示す2成分現像剤D−1〜D−12を製造した。
Figure 2018013633
表1において、「a」には磁性粉に含まれる磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aを記載しており、「b」にはシェル層の厚さbを記載しており、「c」には磁性粉に含まれる磁性粉粒子の突出高さの平均値cを記載している。
「含有量」には、トナーコア100質量部に対する磁性粉の含有量(単位は質量部)を記載している。
「混合条件」とは、ハイブリダイゼーションシステムを用いてトナーコアと磁性粉とを混合する条件を意味する。「混合条件」において、「速度」にはハイブリダイゼーションシステムでの回転速度を記載しており、「時間」には混合時間を記載している。
[磁性粉Aの製造]
まず、磁性粉コアを形成した。詳しくは、鉄イオン(Fe2+)を1.5mol/Lの濃度で含む硫酸第一鉄水溶液20Lと、20mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10Lとを混合した。混合液の温度を90℃まで上昇させ、pH9の水酸化鉄(Fe(OH)2)を含む第一鉄塩水溶液を得た。得られた水溶液の温度を90℃に設定し、100L/分の速度で空気を120分間水溶液に通気させた。これにより、水酸化鉄が酸化して、磁性粉(マグネタイト)が得られた。この水溶液に硫酸水溶液を加えることによって、水溶液のpHを8に調整した。このようにして、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液を得た。
次に、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液に20mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、水溶液のpHを9に調整した。得られた水溶液の温度を90℃に設定し、100L/分の速度で空気を60分間水溶液に通気させた。このようにして、磁性粉が得られた。得られた磁性粉を水で洗浄し、ろ過し、乾操させた。乾燥させた磁性粉を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製「ハンマーミル(HM−5)」)を用いて粉砕することにより、磁性粉A用の磁性粉コアを得た。
続いて、得られた磁性粉コアと、磁性粉コア100質量部に対して300質量部のイオン交換水とを、ホモミキサー(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARK II 2.5型」)に入れて混合した。このようにして、磁性粉コアを含む水性分散液を得た。得られた水性分散液に塩酸を加えることによって、水性分散液のpHを4に調整した。この水性分散液に、水性分散液に含まれる磁性粉コア100質量部に対し2質量部のメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6030」、カップリング剤)を加えた後、混合した。これにより、得られた混合物のカップリング反応が起こった。その結果、磁性粉コアを被覆するように被覆層が形成され、被覆層には表面処理剤としてのメトキシシランが含有されていた。その後、被覆層で被覆された磁性粉コアをろ過し、乾操させた。このようにして、磁性粉Aが得られた。
[磁性粉Bの製造]
以下に示す方法に従って磁性粉B用の磁性粉コアを製造したことを除いては磁性粉Aの製造と同様の方法に従って、磁性粉Bを製造した。
具体的には、鉄イオン(Fe2+)を1.5mol/Lの濃度で含む硫酸第一鉄水溶液20Lと、30mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10Lとを混合した。混合液の温度を90℃まで上昇させ、pH12.5の水酸化鉄(Fe(OH)2)を含む第一鉄塩水溶液を得た。得られた水溶液の温度を90℃に設定し、100L/分の速度で空気を120分間水溶液に通気させた。これにより、水酸化鉄が酸化して、磁性粉(マグネタイト)が得られた。この水溶液に硫酸水溶液を加えることによって、水溶液のpHを8に調整した。このようにして、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液を得た。
次に、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液に30mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、水溶液のpHを10に調整した。得られた水溶液の温度を90℃に設定し、100L/分の速度で空気を60分間水溶液に通気させた。このようにして、磁性粉が得られた。得られた磁性粉を水で洗浄し、ろ過し、乾操させた。乾燥させた磁性粉を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製「ハンマーミル(HM−5)」)を用いて粉砕することにより、磁性粉B用の磁性粉コアを得た。
[磁性粉Cの製造]
以下に示す方法に従って磁性粉C用の磁性粉コアを製造したことを除いては磁性粉Aの製造と同様の方法に従って、磁性粉Cを製造した。
具体的には、鉄イオン(Fe2+)を1.5mol/Lの濃度で含む硫酸第一鉄水溶液20Lと、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10Lとを混合した。混合液の温度を100℃まで上昇させ、pH6.7の水酸化鉄(Fe(OH)2)を含む第一鉄塩水溶液を得た。得られた水溶液の温度を100℃に設定し、100L/分の速度で空気を120分間水溶液に通気させた。これにより、水酸化鉄が酸化して、磁性粉(マグネタイト)が得られた。この水溶液に硫酸水溶液を加えることによって、水溶液のpHを6に調整した。このようにして、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液を得た。
次に、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液に10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、水溶液のpHを10に調整した。得られた水溶液の温度を90℃に設定し、100L/分の速度で空気を60分間水溶液に通気させた。このようにして、磁性粉が得られた。得られた磁性粉を水で洗浄し、ろ過し、乾操させた。乾燥させた磁性粉を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製「ハンマーミル(HM−5)」)を用いて粉砕することにより、磁性粉C用の磁性粉コアを得た。
[磁性粉Dの製造]
以下に示す方法に従って磁性粉D用の磁性粉コアを製造したことを除いては磁性粉Aの製造と同様の方法に従って、磁性粉Dを製造した。
具体的には、鉄イオン(Fe2+)を1.5mol/Lの濃度で含む硫酸第一鉄水溶液20Lと、15mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10Lとを混合した。混合液の温度を80℃まで上昇させ、pH9の水酸化鉄(Fe(OH)2)を含む第一鉄塩水溶液を得た。得られた水溶液の温度を80℃に設定し、100L/分の速度で空気を30分間水溶液に通気させた。これにより、水酸化鉄が酸化して、磁性粉(マグネタイト)が得られた。この水溶液に硫酸水溶液を加えることによって、水溶液のpHを8に調整した。このようにして、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液を得た。
次に、磁性粉(マグネタイト)を含む第一鉄塩水溶液に15mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、水溶液のpHを9に調整した。得られた水溶液の温度を90℃に設定し、100L/分の速度で空気を120分間水溶液に通気させた。このようにして、磁性粉が得られた。得られた磁性粉を水で洗浄し、ろ過し、乾操させた。乾燥させた磁性粉を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製「ハンマーミル(HM−5)」)を用いて粉砕することにより、磁性粉D用の磁性粉コアを得た。
[磁性粉Eの製造]
以下に示す方法に従って磁性粉E用の磁性粉コアを製造したことを除いては磁性粉Aの製造と同様の方法に従って、磁性粉Eを製造した。
具体的には、鉄イオン(Fe2+)を1.5mol/Lの濃度で含む硫酸第一鉄水溶液20Lと、20mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10Lとを混合した。混合液の温度を100℃まで上昇させ、pH9の水酸化鉄(Fe(OH)2)を含む第一鉄塩水溶液を得た。得られた水溶液の温度を100℃に設定し、100L/分の速度で空気を220分間水溶液に通気させた。これにより、水酸化鉄が酸化して、磁性粉(マグネタイト)が得られた。得られた磁性粉を水で洗浄し、ろ過し、乾操させた。乾燥させた磁性粉を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製「ハンマーミル(HM−5)」)を用いて粉砕することにより、磁性粉E用の磁性粉コアを得た。
[磁性粉A〜Eの物性値の測定]
得られた磁性粉A〜Eの各々に含まれる磁性粉粒子について、形状及び平均ヘイウッド径aを以下の方法で測定した。測定結果を表1に示す。
走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製「JSM−880」)を用いて、観察倍率5万倍で測定試料(磁性粉)を観察した。測定試料に含有される磁性粉粒子の中から300個の磁性粉粒子を無作為に選択し、各磁性粉粒子のSEM写真を撮影した。得られたSEM写真から、磁性粉粒子の形状を確認した。また、画像解析装置を用いてSEM写真を画像解析することにより、300個の磁性粉粒子のヘイウッド径を各々測定した。測定された全てのヘイウッド径の和を測定された磁性粉粒子の個数(300個)で除算した。これにより、磁性粉粒子の平均ヘイウッド径(数平均ヘイウッド径)aを算出した。
[トナーT−1の製造]
(トナーコアTcの製造)
まず、ポリエステル樹脂を製造した。詳しくは、テレフタル酸1500gと、イソフタル酸1500gと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物1200gと、エチレングリコール800gとを、4つ口フラスコ(容量:5L)に入れた。次に、フラスコ内部を窒素雰囲気とし、フラスコの内容物を攪拌しながらフラスコ内部の温度を250℃まで上昇させた。その後、常圧及び250℃で4時間、反応を行った。
三酸化アンチモン0.8gと、トリフェニルホスフェート0.5gと、テトラブチルチタネート0.1gとを、フラスコにさらに加えた。フラスコ内部の圧力を0.3mmHgに減圧し、フラスコ内部の温度を280℃まで上昇させた後、6時間、反応を行った。
トリメリット酸(架橋剤)30.0gをフラスコにさらに加えた。フラスコ内部の圧力を常圧に戻し、フラスコ内部の温度を230℃まで降下させた後、1時間、反応を行った。反応が終了した後、反応生成物をフラスコから取り出して冷却した。このようにして、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂では、ガラス転移点が53.8℃であり、軟化点が100.5℃であり、数平均分子量(Mn)が1460であり、分子量分布(Mw/Mn)が12.7であり、酸価が16.8mgKOH/gであり、水酸基価が22.8mgKOH/gであった。
得られたポリエステル樹脂90質量部と、カーボンブラック5質量部(三井化学株式会社製「MA100」)と、カルナバワックス5質量部(株式会社加藤洋行製「特製カルナウバワックス 1号」)とを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、回転速度2400rpmで180秒混合した。得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した(材料供給速度:5kg/時、軸回転速度:150rpm、シリンダー温度:150℃)。得られた混練物を冷却した後、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックスミル(登録商標)」)を用いて粗粉砕し、衝突板式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。このようにして、体積中位径(D50)が8.0μmであるトナーコアTcを得た。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−1の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Aとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、5分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcA−1を用いてトナーT−1を製造した。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバス(アズワン株式会社販売「IWB−250型」)を用いて、フラスコ内部の温度を30℃に保持した。フラスコに希塩酸を加えることによって、フラスコ内の液のpHを4に調整した。フラスコに、メチロールメラミン水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)SM−607」、シェル層の原料)1mLと、ポリアクリルアミド水溶液(和光純薬工業株式会社製、ポリアクリルアミド濃度:10質量%、シェル層の原料)1mLとをさらに加えた。フラスコの内容物を攪拌することによって、上記シェル層の原料をイオン交換水300mLに溶解させた。このようにして、シェル層の原料の水溶液S−1を得た。
シェル層の原料の水溶液S−1に、300gの粒子TcA−1を加えた。フラスコの内容物を、200rpmの回転速度で1時間攪拌した。フラスコに、イオン交換水500mLとp−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液(東京化成工業株式会社製)3mLとをさらに加えた。フラスコの内容物を100rpmの回転速度で撹拌しながら、フラスコ内部の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。フラスコ内部の温度を70℃に保持しながら、100rpmの回転速度でフラスコの内容物を2時間撹拌した。フラスコに水酸化ナトリウムを加えることによって、フラスコの内容物のpHを7に調整した。その後、フラスコの内容物を常温まで冷却した。これにより、トナーコアTcの表面を被覆するシェル層(メラミン樹脂)が形成された。このようにして、トナー母粒子の分散液が得られた。
(洗浄)
得られたトナー母粒子の分散液をブフナー漏斗で濾過し、トナー母粒子のウェットケーキを得た。トナー母粒子のウェットケーキをイオン交換水に分散させた。このようにして、トナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作を、同様の方法で5回繰り返した。
(乾燥)
洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。このようにして得られたスラリーを、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することによって、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。コートマイザーによる乾燥は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分の条件で行った。
(外添)
乾燥させたトナー母粒子100.0質量部と、正帯電性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)0.5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」、容量:10L)に加え、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。このようにして、トナーT−1が得られた。
[トナーT−2の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−2の製造)に示す方法に従って磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだこと及び下記(シェル層の形成)に示す方法に従ってトナー母粒子の分散液を製造したことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−2を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−2の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Aとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、3分間混合した(回転速度:2000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcA−2を用いてトナーT−2を製造した。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバス(アズワン株式会社販売「IWB−250型」)を用いて、フラスコ内部の温度を30℃に保持した。フラスコに希塩酸を加えることによって、フラスコ内の液のpHを4に調整した。フラスコに、メチロール化尿素の水溶液(日本カーバイド工業株式会社製「MX−280」、シェル層の原料)5mLと、ポリアクリルアミド水溶液(和光純薬工業株式会社製、ポリアクリルアミド濃度:10質量%、シェル層の原料)2mLとをさらに加えた。フラスコの内容物を攪拌することによって、上記シェル層の原料をイオン交換水300mLに溶解させた。このようにして、シェル層の原料の水溶液S−2を得た。
シェル層の原料の水溶液S−2に、300gの粒子TcA−2を加えた。フラスコの内容物を、200rpmの回転速度で1時間攪拌した。フラスコに、イオン交換水500mLとp−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液(東京化成工業株式会社製)3mLとをさらに加えた。フラスコの内容物を100rpmの回転速度で撹拌しながら、フラスコ内部の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。フラスコ内部の温度を70℃に保持しながら、100rpmの回転速度でフラスコの内容物を2時間撹拌した。フラスコに水酸化ナトリウムを加えることによって、フラスコの内容物のpHを7に調整した。その後、フラスコの内容物を常温まで冷却した。これにより、トナーコアTcの表面を被覆するシェル層(メラミン樹脂)が形成された。このようにして、トナー母粒子の分散液(トナーT−2用のトナー母粒子の分散液)が得られた。
[トナーT−3の製造]
下記(シェル層の形成)に示す方法に従ってトナー母粒子の分散液を製造したことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−3を製造した。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバス(アズワン株式会社販売「IWB−250型」)を用いて、フラスコ内部の温度を30℃に保持した。次に、フラスコに希塩酸を加えることによって、フラスコ内の液のpHを4に調整した。フラスコに、メチロールメラミン水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベンSM−607」、シェル層の原料)0.5mLと、ポリアクリルアミド水溶液(和光純薬工業株式会社製、ポリアクリルアミド濃度:10質量%、シェル層の原料)1mLとを加えた。フラスコの内容物を攪拌することによって、上記シェル層の原料をイオン交換水300mLに溶解させた。このようにして、シェル層の原料の水溶液S−3を得た。
シェル層の原料の水溶液S−3に、300gの粒子TcA−1を加えた。フラスコの内容物を、200rpmの回転速度で1時間攪拌した。フラスコに、イオン交換水500mLとp−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液(東京化成工業株式会社製)3mLとをさらに加えた。フラスコの内容物を100rpmの回転速度で撹拌しながら、フラスコ内部の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。フラスコ内部の温度を70℃に保持しながら、100rpmの回転速度でフラスコの内容物を2時間撹拌した。フラスコに水酸化ナトリウムを加えることによって、フラスコの内容物のpHを7に調整した。その後、フラスコの内容物を常温まで冷却した。これにより、トナーコアTcの表面を被覆するシェル層(メラミン樹脂)が形成された。このようにして、トナー母粒子の分散液(トナーT−3用のトナー母粒子の分散液)が得られた。
[トナーT−4の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Bの埋め込み:粒子TcB−1の製造)に示す方法に従って磁性粉Bに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−4を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Bの埋め込み:粒子TcB−1の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Bとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、5分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Bに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcB−1を用いてトナーT−4を製造した。
[トナーT−5の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Cの埋め込み:粒子TcC−1の製造)に示す方法に従って磁性粉Cに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−5を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Cの埋め込み:粒子TcC−1の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Cとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、5分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Cに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcC−1を用いてトナーT−5を製造した。
[トナーT−6の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Dの埋め込み:粒子TcD−1の製造)に示す方法に従って磁性粉Dに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−6を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Dの埋め込み:粒子TcD−1の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Dとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、3分間混合した(回転速度:4000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Dに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcD−1を用いてトナーT−6を製造した。
[トナーT−7の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Eの埋め込み:粒子TcE−1の製造)に示す方法に従って磁性粉Eに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−7を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Eの埋め込み:粒子TcE−1の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Eとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、3分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Eに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcE−1を用いてトナーT−7を製造した。
[トナーT−8の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−3の製造)に示す方法に従って磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−8を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−3の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと0.50質量部の磁性粉Aとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、5分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcA−3を用いてトナーT−8を製造した。
[トナーT−9の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−4の製造)に示す方法に従って磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−9を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−4の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと3.0質量部の磁性粉Aとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、5分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcA−4を用いてトナーT−9を製造した。
[トナーT−10の製造]
下記(シェル層の形成)に示す方法に従ってトナー母粒子の分散液を製造したことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−10を製造した。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバス(アズワン株式会社販売「IWB−250型」)を用いて、フラスコ内部の温度を30℃に保持した。次に、フラスコに希塩酸を加えることによって、フラスコ内の液のpHを4に調整した。フラスコに、メチロール化尿素の水溶液(日本カーバイド工業株式会社製「MX−280」、シェル層の原料)10mLと、ポリアクリルアミド水溶液(和光純薬工業株式会社製、ポリアクリルアミド濃度:10質量%、シェル層の原料)3mLとを加えた。フラスコの内容物を攪拌することによって、上記シェル層の原料をイオン交換水300mLに溶解させた。このようにして、シェル層の原料の水溶液S−4を得た。
シェル層の原料の水溶液S−4に、300gの粒子TcA−1を加えた。フラスコの内容物を、200rpmの回転速度で1時間攪拌した。フラスコに、イオン交換水500mLとp−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液(東京化成工業株式会社製)3mLとをさらに加えた。フラスコの内容物を100rpmの回転速度で撹拌しながら、フラスコ内部の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。フラスコ内部の温度を70℃に保持しながら、100rpmの回転速度でフラスコの内容物を2時間撹拌した。フラスコに水酸化ナトリウムを加えることによって、フラスコの内容物のpHを7に調整した。その後、フラスコの内容物を常温まで冷却した。これにより、トナーコアTcの表面を被覆するシェル層(メラミン樹脂)が形成された。このようにして、トナー母粒子の分散液(トナーT−10用のトナー母粒子の分散液)が得られた。
[トナーT−11の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−5の製造)に示す方法に従って磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−11を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−5の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Aとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、1分間混合した(回転速度:2000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcA−5を用いてトナーT−11を製造した。
[トナーT−12の製造]
下記(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−6の製造)に示す方法に従って磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分をトナーコアTcの表面に埋め込んだことを除いてはトナーT−1の製造と同様の方法に従って、トナーT−12を製造した。
(トナーコアTcの表面への磁性粉Aの埋め込み:粒子TcA−6の製造)
100.0質量部のトナーコアTcと1.0質量部の磁性粉Aとを、FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20B」)に入れ、5分間混合した(回転速度:800rpm)。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製「NHS−O型」)に入れ、15分間混合した(回転速度:5000rpm、循環気流の温度:10℃)。これにより、磁性粉Aに含まれる多数の磁性粉粒子の各々の一部分がトナーコアTcの表面に埋め込まれた。得られた粒子を、200メッシュの篩を用いて、篩別した。篩を通過した粒子TcA−6を用いてトナーT−12を製造した。
[シェル層の厚さbの測定]
得られたトナーT−1〜T−12の各々に含まれるトナー粒子について、シェル層の厚さbを以下の方法で測定した。測定結果を表1に示す。
まず、上述の方法に従って得られたトナーに含まれるトナー粒子の断面TEM写真を撮影した。詳しくは、トナー粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置した。このようにして得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した。染色された硬化物から、ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、薄片の試料(厚さ200nm)を切り出した。得られた薄片の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて倍率3000倍及び10000倍で観察し、トナー粒子の断面TEM写真を撮影した。
撮影されたトナー粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析した。詳しくは、トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引いた。その2本の直線の各々において、トナーコアとシェル層との界面(トナーコアの表面に相当)からシェル層の表面までの長さ(4箇所)を測定した。このようにして測定された4箇所の長さの算術平均値を、1個のトナー粒子(測定対象)が備えるシェル層の厚さとした。このようなシェル層の厚さの測定を、20個のトナー粒子に対して行い、20個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さの平均値を求めた。求められた平均値を、トナー粒子が備えるシェル層の厚さbとした。
トナー粒子の断面TEM写真においてトナーコアとシェル層との境界が不明瞭であった場合には、トナー粒子の断面TEM写真を、電子エネルギー損失分光法(EELS)検出器(ガタン社製「GIF TRIDIEM」)と画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)とを用いて解析した。
具体的には、まず、上述の方法に従って、トナー粒子の断面TEM写真を撮影した。次に、エネルギー分解能1.0eV、ビーム径1.0nmの電子エネルギー損失分光法(EELS)検出器(ガタン社製「GIF TRIDIEM」)と画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)とを用いてTEM写真を解析し、窒素元素の分布画像を得た。窒素元素はシェル層に含まれる特徴的な元素であるため、窒素元素の分布画像を得ることによってトナーコアとシェル層との境界が明瞭となった。
[磁性粉粒子の突出高さの平均値cの測定]
得られたトナーT−1〜T−12の各々に含まれるトナー粒子について、磁性粉粒子の突出高さの平均値cを以下の方法で測定した。測定結果を表1に示す。
上記[シェル層の厚さbの測定]に記載の方法に従って、トナー粒子の断面TEM写真を撮影した。得られたトナー粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析した。詳しくは、画像解析ソフトウェアにおいて、計測ツールの手動計測のライン長計測を選択した。手動計測のライン長計測を選択した状態で、トナー粒子の断面TEM写真において、トナーコアの表面に埋め込まれている磁性粉粒子を無作為に5個選択した。そして、選択した5個の磁性粉粒子の各々において磁性粉粒子の突出高さを計測し、その数平均値を算出した。このようにして求められた磁性粉粒子の突出高さの数平均値を「磁性粉粒子の突出高さの平均値c」とした。
[トナーの耐熱保存性の評価]
得られたトナーT−1〜T−12について、以下に示す方法に従って耐熱保存性を評価した。
試料(トナー)3gをポリエチレン製容器(容量:20mL)に入れて、その容器を、蓋をせずに、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で12時間静置した。その後、容器に蓋をして、密閉した状態の容器を、60℃に設定されたオーブン内で3時間静置した。その後、オーブンから取り出した容器を室温(約25℃)まで冷却し、容器からトナーを取り出して、評価用トナー(加熱処理されたトナー)を得た。
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の200メッシュの篩に載せた。そして、トナーを含む篩の質量を測定し、篩上のトナーの質量(篩別前のトナーの質量)を求めた。続けて、その篩をパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)にセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。そして、篩別後に、トナーを含む篩の質量を測定することで、篩上に残留したトナーの質量(篩別後のトナーの質量)を求めた。篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量とから、次の式に基づいてトナー粒子の通過率(単位:質量%)を求めた。
トナー粒子の通過率=100−(100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量)
トナー粒子の通過率が90%以上であれば◎(非常に良い)と評価し、トナー粒子の通過率が80%以上90%未満であれば○(良い)と評価した。評価結果を表2に示す。
[2成分現像剤の製造]
(2成分現像剤D−1の製造)
トナー粒子の含有量が10質量%となるように、トナーT−1とCu−Zn系フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製、体積固有抵抗値:107Ωcm、飽和磁化:70emu/g、平均粒子径:35μm)とをボールミルに入れ、30分間混合した。このようにして2成分現像剤D−1が得られた。なお、Cu−Zn系フェライトキャリアでは、フェライト粒子(キャリアコア)の表面には、フェライト粒子100質量部に対して20質量部のフッ素樹脂からなる被覆層が形成されていた。
(2成分現像剤D−2〜D−12の製造)
トナーとしてトナーT−1の代わりにトナーT−2〜T−12を用いたことを除いては2成分現像剤D−1の製造方法と同様の方法に従って、2成分現像剤D−2〜D−12をそれぞれ製造した。
[2成分現像剤の評価]
(低温定着性の評価)
得られた2成分現像剤D−1〜D−12の各々を用いて画像形成を行い、低温定着性を評価した。
定着温度を調節できるようにプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FSC−5250DN」)を改造したものを評価用装置として用いて、低温定着性を評価した。詳しくは、上述の方法に従って得られた2成分現像剤(未使用)を評価用装置の現像装置に入れ、補給用トナー(未使用)を評価用装置のトナーコンテナに入れた。本実施例では、補給用トナーとしては、評価に用いた2成分現像剤(評価用装置の現像装置に入れられた2成分現像剤)に含まれるトナーと同一のトナーを用いた。
次に、評価用装置において線速を200mm/秒に設定しトナー載せ量を1.0mg/cm2に設定して、サンプル画像(未定着画像)を印刷用紙に形成した。形成されたサンプル画像を印刷用紙に定着させた。このとき、定着温度を100℃以上200℃以下の温度範囲で5℃ずつ上昇させて定着を行った。そのため、サンプル画像が定着された印刷用紙が21種類得られた。
続いて、折擦り試験を行った。詳しくは、サンプル画像が定着された印刷用紙を、サンプル画像を形成した面が内側となるように、半分に折り曲げた。布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、印刷用紙の折り目の上を5往復摩擦した。その後、印刷用紙を広げ、印刷用紙の折り曲げ部のうちサンプル画像が形成された部分におけるトナーの剥がれの長さ(以下、剥がれ幅と記載する)を測定した。剥がれ幅が1.0mm以下であった場合には合格と判定した。そして、合格と判定されたサンプル画像の形成時における定着温度のうち最も低い温度を最低定着温度とした。最低定着温度が140℃以下であれば◎(非常に良い)と評価し、最低定着温度が140℃より高く150℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が150℃より高ければ×(悪い)と評価した。評価結果を表2に示す。
(画像濃度の評価)
得られた2成分現像剤D−1〜D−12の各々を用いて画像形成を行い、画像濃度を評価した。
カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 500ci」)を用いて、画像濃度を評価した。詳しくは、上述の方法に従って得られた2成分現像剤(未使用)をカラープリンターの現像装置に入れ、補給用トナー(未使用)をカラープリンターのトナーコンテナに入れた。カラープリンターにおいて、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧差(ΔV)を250Vに設定し、マグネットロールに印加する交流電圧(Vpp)を2.0kVに設定した。温度10℃かつ湿度10%RHの環境下、印字率4%のサンプル画像を印刷用紙に1000枚連続で印刷した後、印字率100%のサンプル画像(画像濃度評価用サンプル画像)を印刷用紙に形成した。その後、画像濃度(ID)を測定した。このような一連の作業を、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達するまで行った。つまり、印字率4%のサンプル画像を1000枚連続印刷するたびに画像濃度(ID)を測定した。
画像濃度(ID)の測定では、マクベス反射濃度計(X−Rite社製「RD914」)を用いて、印刷後の印刷用紙のソリッド部(形成されたサンプル画像のソリッド部)の反射濃度(ID:画像濃度)を測定した。印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達した時点での画像濃度(ID)が1.20以上であれば◎(非常に良い)と評価し、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達した時点での画像濃度(ID)が1.20未満であれば○(良い)と評価した。一方、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が4000枚に達した時点での画像濃度(ID)が1.20未満であれば、×(悪い)と評価した。評価結果を表2に示す。
(かぶり濃度の評価)
得られた2成分現像剤D−1〜D−12の各々を用いて画像形成を行い、かぶり濃度を評価した。
カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 500ci」)を用いて、かぶり濃度を評価した。詳しくは、上述の方法に従って得られた2成分現像剤(未使用)をカラープリンターの現像装置に入れ、補給用トナー(未使用)をカラープリンターのトナーコンテナに入れた。カラープリンターにおいて、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧差(ΔV)を250Vに設定し、マグネットロールに印加する交流電圧(Vpp)を2.0kVに設定した。温度10℃かつ湿度10%RHの環境下、印字率4%のサンプル画像を印刷用紙に1000枚連続で印刷した後、サンプル画像の印刷を行うことなく白色の印刷用紙をカラープリンターから出力させた。その後、かぶり濃度(FD)を測定した。このような一連の作業を、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達するまで行った。つまり、印字率4%のサンプル画像を1000枚連続印刷するたびにかぶり濃度(FD)を測定した。
かぶり濃度(FD)の測定では、出力された白色の印刷用紙の反射濃度を、カラー反射濃度計(伊原電子工業株式会社製「R710」)を用いて測定した。そして、次の式に基づいて、かぶり濃度(FD)を算出した。
FD=(出力された白色の印刷用紙の反射濃度)−(未印刷紙の反射濃度)
印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達した時点でのかぶり濃度(FD)が0.010未満であれば◎(非常に良い)と評価し、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達した時点でのかぶり濃度(FD)が0.010以上であれば○(良い)と評価した。一方、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が4000枚に達した時点でのかぶり濃度(FD)が0.010以上であれば、×(悪い)と評価した。評価結果を表2に示す。
(感光体の表面へのトナーの耐フィルミング性の評価)
得られた2成分現像剤D−1〜D−12の各々を用いて画像形成を行い、感光体の表面へのトナーの耐フィルミング性を評価した。
カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 500ci」)を用いて、感光体の表面へのトナーの耐フィルミング性を評価した。詳しくは、上述の方法に従って得られた2成分現像剤(未使用)をカラープリンターの現像装置に入れ、補給用トナー(未使用)をカラープリンターのトナーコンテナに入れた。カラープリンターにおいて、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧差(ΔV)を250Vに設定し、マグネットロールに印加する交流電圧(Vpp)を2.0kVに設定した。温度32.5℃かつ湿度80%RHの環境下、印字率4%のサンプル画像を印刷用紙に5000枚連続で印刷した。その後、A4サイズの印刷用紙全面に印字率100%のソリッド画像を印刷し、A4サイズの印刷用紙全面に印字率50%のハーフトーン画像を印刷した。そして、得られたソリッド画像及びハーフトーン画像において、色点及び画像抜けがないか、目視で確認した。また、ソリッド画像及びハーフトーン画像の形成後に、感光体の表面にトナー成分の付着がないか目視で確認した。評価結果を表2に示す。
◎(非常に良い):ソリッド画像及びハーフトーン画像における色点及び画像抜けが確認されず、かつ、感光体の表面におけるトナー成分の付着が確認されなかった。
○(良い):ソリッド画像及びハーフトーン画像における色点及び画像抜けは確認されなかったが、感光体の表面におけるトナー成分の付着が確認された。
×(悪い):ソリッド画像及びハーフトーン画像における色点及び画像抜けが確認され、かつ、感光体の表面におけるトナー成分の付着が確認された。
Figure 2018013633
表2において、「現像剤」は2成分現像剤を意味する。「0<c≦(a/2)」の上段には0<c≦(a/2)を満たすか否かを記載しており、0<c≦(a/2)を満たす場合には「○」と記載し、0<c≦(a/2)を満たさない場合には「×」と記載している。「0<c≦(a/2)」の中段には磁性粉粒子の突出高さの平均値cを記載し、「0<c≦(a/2)」の下段には磁性粉に含まれる磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aを記載している。
「b」には、シェル層の厚さbを記載している。
「低温定着性」の下段には最低定着温度を記載している。
「ID」には、画像濃度の評価結果を記載している。「ID」の中段には印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が4000枚に達した時点での画像濃度(ID)を記載し、「ID」の下段には印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達した時点での画像濃度(ID)を記載している。
「FD」には、かぶり濃度の評価結果を記載している。「FD」の中段には印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が4000枚に達した時点でのかぶり濃度(FD)を記載し、「FD」の下段には印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が5000枚に達した時点でのかぶり濃度(FD)を記載している。
「耐フィルミング性」には、感光体の表面へのトナーの耐フィルミング性の評価結果を記載している。
「耐熱保存性」の下段には、トナー粒子の通過率を記載している。
2成分現像剤D−1〜D−9(実施例1〜9に係る2成分現像剤)はそれぞれ、前述の基本構成を有するトナー粒子を含んでいた。詳しくは、トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層と、シェル層を貫通する複数の磁性粉粒子とを有していた。磁性粉粒子の各々は、トナー粒子の径方向内側ではトナーコアの表面に埋め込まれ、トナー粒子の径方向外側ではシェル層の表面よりもトナー粒子の径方向外側に突出していた。磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aと、シェル層の厚さbと、磁性粉粒子の突出高さの平均値cとは、下記式(1)及び式(2)を満たしていた。
0<c≦(a/2)・・・式(1)
10nm≦b≦50nm・・・式(2)
表2に示されるように、2成分現像剤D−1〜D−9では、それぞれ、トナーの低温定着性に優れ、かぶりの発生を防止でき、さらには低湿環境で画像形成を行った場合における現像性を高めることができた。
2成分現像剤D−10(比較例1に係る2成分現像剤)では、2成分現像剤D−1〜D−9と比較して、低温定着性の評価で劣っていた。詳しくは、最低定着温度が高かった。このような結果が得られた理由としては、2成分現像剤D−10では、シェル層の厚さbが50nmよりも大きかったことが考えられる。
2成分現像剤D−11(比較例2に係る2成分現像剤)では、2成分現像剤D−1〜D−9と比較して、画像濃度(ID)の評価、かぶり濃度(FD)の評価、及び耐フィルミング性の評価で劣っていた。詳しくは、画像濃度の評価では、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が4000枚に達した時点において、画像濃度(ID)が低下していた。かぶり濃度の評価では、印字率4%のサンプル画像の印刷枚数が4000枚に達した時点において、かぶり濃度(FD)が高かった。耐フィルミング性の評価では、ソリッド画像及びハーフトーン画像における色点及び画像抜けが確認され、感光体の表面におけるトナー成分の付着が確認された。このような結果が得られた理由としては、2成分現像剤D−11では、c≦(a/2)が満たされていないことが考えられる。
2成分現像剤D−12(比較例3に係る2成分現像剤)では、耐フィルミング性の評価で劣っていた。詳しくは、ソリッド画像及びハーフトーン画像における色点及び画像抜けが確認され、感光体の表面におけるトナー成分の付着が確認された。このような結果が得られた理由としては、2成分現像剤D−12では、0<cが満たされていないことが考えられる。
本発明に係る静電潜像現像用キャリア、1成分現像剤、及び2成分現像剤は、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
1 トナー粒子
11 トナーコア
11A 表面
12 シェル層
12A 表面
13 磁性粉粒子

Claims (6)

  1. トナー粒子を複数含む、静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアの表面を被覆するシェル層と、前記シェル層を貫通する複数の磁性粉粒子とを有し、
    前記磁性粉粒子の各々は、前記トナー粒子の径方向内側では前記トナーコアの前記表面に埋め込まれ、前記トナー粒子の径方向外側では前記シェル層の表面よりも前記トナー粒子の径方向外側に突出しており、
    前記磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aと、前記シェル層の厚さbと、平均値cとは、下記式(1)及び式(2)を満たす、静電潜像現像用トナー。
    0<c≦(a/2)・・・式(1)
    10nm≦b≦50nm・・・式(2)
    ここで、上記式(1)における前記平均値cは、前記トナー粒子の径方向における、前記磁性粉粒子のうち前記シェル層の表面よりも前記トナー粒子の径方向外側に位置する部分の長さの平均値を意味する。
  2. 前記磁性粉粒子の平均ヘイウッド径aは、100nm以上300nm以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記磁性粉粒子は、多面体形状を有し、
    前記磁性粉粒子の含有量は、前記トナーコア100.0質量部に対し0.5質量部以上3.0質量部以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記トナーコアは、内添剤として磁性粉粒子を含有しない、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナーを含む、1成分現像剤。
  6. 請求項1〜4の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナーと、
    摩擦によって前記静電潜像現像用トナーを正に帯電させる静電潜像現像用キャリアと
    を含む、2成分現像剤。
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