JP2018008186A - 水不溶性金属捕集剤、貴金属の回収方法および貴金属回収設備 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、捕集剤としては、イオン交換樹脂や活性炭が使用されている。イオン交換樹脂や活性炭は、溶存している金を吸着することで捕集する。
しかし、これらの捕集剤は、吸着速度が遅い、吸着量が少ない、選択性が低い等の問題がある。たとえば、メッキ廃液には、金のほか、コバルト、亜鉛、ニッケル、銅等が含まれており、これらの金属も前記の捕集剤に捕集される。
(1)ポリビニルアミンを1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオールで架橋した0.2−0.5mmの粒状の不溶解性重合体や、該不溶解性重合体にクロロ酢酸ナトリウム塩を反応させた、グリシン構造を有する不溶解性重合体(非特許文献1)。
(2)ポリアリルアミン等のアミン系ポリマーと、ポリビニルアルコール等の親水性ポリマーとを含むポリマーブレンド繊維(特許文献1)。
(3)ポリオレフィン系繊維を材質とする高分子基材に反応活性点を生成させた後、グラフト重合法によりアリルアミン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどの反応性モノマーを重合させてグラフト鎖を形成した吸着材(特許文献2)。
前記(2)のポリマーブレンドは、たとえば繊維状に成形され、金属が溶存した水溶液に浸漬される。これにより溶存する金属がアミン系ポリマーと反応してコンプレックスを形成し、ポリマーブレンド繊維を水溶液中から取り出すことで金属を回収できる。
前記(3)の吸着材も、金属が溶存した水溶液に浸漬させて用いられる。
(4)ポリ(アミノアルキレン)を、逆相懸濁重合条件または逆相乳化重合条件下、≧2の官能価の架橋単位で架橋する該ビーズ状ポリマーマトリックス(特許文献3)。
特許文献1〜2では、コバルト、亜鉛、ニッケル、銅等の他の金属が併存するなかで金、銀、パラジウム等を効率良く選択的に回収することについて検討されていない。
[1]下記式(1)で表される側基を有する構成単位を含む水不溶性重合体からなる水不溶性貴金属捕集剤。
[2]前記水不溶性重合体が架橋構造を有する、[1]に記載の水不溶性金属捕集剤。
[3]前記水不溶性重合体が下記式(2)で表される側基を有する構成単位をさらに含む、[1]または[2]に記載の水不溶性金属捕集剤。
[4]前記水不溶性重合体中のアミノ基の質量が、前記水不溶性重合体の質量に対して0.05倍以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の水不溶性金属捕集剤。
[5]前記水不溶性重合体中のアミノ基の質量が、前記水不溶性重合体の質量に対して0.2倍以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の水不溶性金属捕集剤。
[6]金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)が溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収する方法であって、下記工程(i)および(ii)を含む、貴金属の回収方法。
(i)前記水溶液と、[1]〜[5]のいずれかに記載の水不溶性金属捕集剤とを接触させて、前記貴金属(A)を前記水不溶性金属捕集剤に捕集させる工程;
(ii)前記工程(i)の後、前記水溶液から前記水不溶性金属捕集剤を分離する工程;
[7]金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)と、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属(B)とが溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収する方法であって、下記工程(i)および(ii)を含む、貴金属の回収方法。
(i)前記水溶液と、[1]〜[5]のいずれかに記載の水不溶性金属捕集剤とを接触させて、前記貴金属(A)を前記水不溶性金属捕集剤に捕集させる工程;
(ii)前記工程(i)の後、前記水溶液から前記水不溶性金属捕集剤を分離する工程;
[8]前記工程(i)にて、前記水溶液と前記水不溶性金属捕集剤との接触が、pH0.1〜6.5の条件下で行われる、[6]または[7]に記載に記載の貴金属の回収方法。
[9]前記工程(i)にて、前記水不溶性金属捕集剤と接触させる前に、前記水溶液のpHを、前記水不溶性金属捕集剤と接触させた後のpHが0.1〜6.5となるように調整する、[8]に記載の貴金属の回収方法。
[10]前記工程(i)にて、前記水不溶性金属捕集剤と接触させた後、それらが接触した状態で、前記水溶液のpHを0.1〜6.5に調整する、[8]に記載の貴金属の回収方法。
[11]前記工程(i)における前記pHが5以下である、[8]〜[10]のいずれかに記載の貴金属の回収方法。
[12]前記工程(i)における前記pHが3.5以上である、[8]〜[11]のいずれかに記載の貴金属の回収方法。
[13]下記工程(iii)をさらに含む、[6]〜[12]のいずれかに記載の貴金属の回収方法。
(iii)前記工程(ii)で前記水溶液から分離した水不溶性金属捕集剤と、pHが0.1〜6.5の酸水溶液とを接触させる工程;
[14]前記工程(iii)における前記pHが5以下である、[13]に記載の貴金属の回収方法。
[15]前記工程(iii)における前記pHが3.5以上である、[13]または[14]に記載の貴金属の回収方法。
[16]前記水不溶性金属捕集剤と接触させる前の前記水溶液が、前記貴金属(A)のコロイド粒子をさらに含む、[6]〜[15]のいずれかに記載の貴金属の回収方法。
[17][1]〜[5]のいずれかに記載の水不溶性金属捕集剤が充填された容器と、前記貴金属(A)が溶存している水溶液を前記容器に送液する装置とからなる貴金属回収設備。
[18][1]〜[5]のいずれかに記載の水不溶性金属捕集剤が内部で流動可能に収容された容器と、前記貴金属(A)が溶存している水溶液を前記容器に送液する装置とからなる貴金属回収設備。
「側基」とは、重合体の主鎖に直接結合している基を示す。
「構成単位」とは、重合や架橋に使用された単量体、架橋剤に由来する構造である。この構造は、重合後の反応によって変化していてもよい。
本発明の水不溶性金属捕集剤(以下「水不溶性貴金属捕集剤(X)」ともいう)は、貴金属を捕集するために用いられる水不溶性の捕集剤である。
水不溶性貴金属捕集剤(X)は、下記式(1)で表される側基(以下「側基(1)」ともいう)を有する構成単位(以下「構成単位(u1)」ともいう)を含む水不溶性重合体からなる。水不溶性貴金属捕集剤(X)を構成する前記水不溶性重合体は1種でもよく2種以上でもよい。
R1としては、貴金属の捕集量の点で、単結合(n=0)またはCH2(n=1)が好ましく、単結合が特に好ましい。
構成単位(u1)としては、上記の中でも、式(1−1)で表される構成単位が好ましい。
電解還元装置で処理された貴金属排水中には、金、銀、パラジウム等の貴金属のコロイド粒子が含まれることが有る。また、パラジウムコロイド粒子含有水溶液が酸素などの酸化剤と接触した場合、パラジウムコロイド粒子が酸化されて、イオンとなり溶解する場合が有る。前記水不溶性重合体が構成単位(u2)をさらに含むと、このような場合において、貴金属のコロイド粒子も効率良く捕集することが出来る。
R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、貴金属のコロイド粒子の捕集能の点で、水素原子またはメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
構成単位(u2)としては、上記の中でも、式(2−1)で表される構成単位が好ましい。
他の構成単位としては、たとえば、以下に例示される単量体に由来する構成単位等が挙げられる。
ビニルエステル、N−置換アクリルアミド、N−置換メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール及び4−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等。
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシイソブチル、メタクリル酸ヒドロキシイソブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−(ジメチルアミノエチル)、メタクリル酸−2−(ジメチルアミノエチル)、アクリル酸−3−(ジエチルアミノエチル)、メタクリル酸−3−(ジエチルアミノエチル)、アクリル酸−3−(ジメチルアミノプロピル)、メタクリル酸−3−(ジメチルアミノプロピル)、3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルメチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート等が挙げられる。
アリルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル,N−エチルアクリルアミド、N−メチル,N−エチルメタクリルアミド、N,N―ジアリルアクリルアミド、N,N―ジアリルメタクリルアミド、N―メチル,N−アリルアクリルアミド、N―メチル,N−アリルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド等が挙げられる。
アミジン基は、N=C−N構造を含む基である。
例えばN−ホルムアミドの重合体(前記式(2−1)中のR1が単結合である構成単位を有する重合体)を酸または塩基で加水分解すると、N−ホルムアミド単位とN−ビニルアミン単位(前記式(1−1)中のR1が単結合である構成単位)とを有する重合体が得られる。酸性または塩基性の条件下では加水分解が進行する一方、中性条件下では隣接するN−ホルムアミド単位のホルムアミド基とN−ビニルアミン単位のアミノ基とが下記のように反応し、各基が結合した炭素原子およびそれらの間の1つの炭素原子とともに6員環のアミジン基を形成することがある。
−NHCHO+H2N− → −N=CH−NH−
メチレンビスアクリルアミド等のアルキレンビスアクリルアミド、N,N’−アクリロイルエチレンジアミン、N,N’−ジビニルエチレン尿素、N,N’−ジビニルプロピレン尿素、エチリデン−ビス−3−(N−ビニルピロリドン)、N,N’−ジビニル−2,2’−ジイミダゾリルブタン、1,1’−ビス(3,3’−ビニルベンズイミダゾリン−2−オン)−1,4−ブタン、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、アクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、アクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジビニルジオキサン及びペンタエリトリチルトリアリルエーテル、エピクロロヒドリン、ジブロモエタン、ジクロロエタン、シュウ酸ジクロリド、マロン酸ジクロリド、コハク酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ピロメリット酸無水物、グリセロールα,α’−ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、トリアリルアミン、トリアリルアミン塩酸等。
これらの中では、架橋部分の安定性の点で1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、グリセロールα,α’−ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩等が好ましい。
前記水不溶性重合体中のアミノ基(−NH2)の質量は、貴金属の捕集効率の点で、前記水不溶性重合体の質量に対して0.05倍以上であることが好ましく、0.2倍以上がより好ましい。
前記水不溶性重合体中のアミノ基の質量の上限は、前記水不溶性重合体が水不溶性である限り特に限定されず、構成単位(u2)や他の構成単位の含有量を考慮して適宜設定される。
構成単位(u1)の含有量の上限は、水不溶性貴金属捕集剤(X)が水不溶性である限り特に限定されず、構成単位(u1)と構成単位(u2)と他の構成単位との合計が100モル%となる範囲で適宜設定される。
水不溶性貴金属捕集剤(X)が水不溶性であることにより、貴金属が溶存した水溶液と水不溶性貴金属捕集剤(X)とを接触させて貴金属を水不溶性金属捕集剤(X)に捕集させた後、前記水溶液から水不溶性金属捕集剤(X)を容易に分離できる。
水不溶性貴金属捕集剤(X)の代わりに、構成単位(u1)を含む水溶性重合体を用いた場合、貴金属と水溶性重合体とで錯体を形成するが、水に溶解したままなので、貴金属を回収できない。
水溶性重合体を、貴金属と錯体を形成させて不溶化した後に分離することにより、貴金属を回収する方法があるが、貴金属が過剰の条件では、貴金属の回収率が低くなり、水溶性重合体を過剰量使用すると、過剰量分の水溶性重合体が残存することになる。過剰量の水溶性重合体が残存した水溶液を排水処理設備で処理した場合、本来沈殿しているはずの重金属水酸化物と錯体を作って溶出させることにより、処理後の水の重金属濃度が高くなったり、水溶性重合体の存在が原因で処理後の水のCOD(化学的酸素要求量)が高くなるなどの問題が生じる恐れがある。
以上のような問題が生じない状況であれば、水溶性重合体が水不溶性貴金属捕集剤(X)に含まれていてもよい。また、以上のような問題が生じない量の水溶性重合体が水不溶性貴金属捕集剤(X)に含まれていてもよい。
構成単位(u1)を有し、かつ架橋構造を有する水不溶性重合体としては、構成単位(u1)を含む水溶性重合体(以下「水溶性重合体(Y1)」ともいう)を後架橋した架橋重合体(X1)、構成単位(u1)を含む重合体を製造する際、多官能単量体を共重合させて得られる重合体(X2)等が挙げられる。
水溶性重合体(Y1)の製造方法としては、たとえば、構成単位(u2)を含む重合体を加水分解する方法が挙げられる。構成単位(u2)を含む重合体を加水分解することで、構成単位(u2)の−NHCHOがNH2となり、構成単位(u1)が生成する。加水分解の条件(加水分解に用いる酸または塩基の使用量、加水分解時間等)によって、構成単位(u1)と構成単位(u2)とのモル比を調整できる。
水溶性重合体(Y1)の後架橋方法としては、たとえば、水溶性重合体(Y1)と架橋剤とを反応させる方法が挙げられる。
架橋剤としては、典型的には、アミノ基と反応するものが用いられ、たとえばエピクロロヒドリン、ジブロモエタン、ジクロロエタン、シュウ酸ジクロリド、マロン酸ジクロリド、コハク酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ピロメリット酸無水物等が挙げられる。これらの中では、架橋部分安定性の点で、エピクロロヒドリン、ジブロモエタン、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
架橋剤は、側基(1)が残存し、かつ架橋後の水溶性重合体(Y1)が水不溶性となる量で使用される。
架橋剤の使用量は、水溶性重合体(Y1)中の側基(1)の1モルに対し、0.001〜0.05モルが好ましく、0.005〜0.03モルがより好ましい。
水溶性重合体(Y1)と架橋剤との反応は、公知の方法により実施できる。たとえば水溶性重合体(Y1)の水溶液に架橋剤を添加し、10〜100℃に加熱する方法が挙げられる。
逆相懸濁重合では、界面活性剤および分散剤の存在下、分散媒中に単量体混合物の水溶液を分散させ、重合を行う。
炭化水素系分散媒としては、水と共沸する炭化水素が好ましい。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素、沸点65〜250℃(好ましくは80℃〜180℃)の石油留分の石油留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
分散媒は、単量体混合物の水溶液の全質量に対し、通常0.5〜10質量倍、好ましくは1〜5質量倍の範囲で用いられる。
また、分散媒の使用量は、通常、水の全使用量の20質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
HLBが上記範囲内のノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、モリグリセリド、ソルビトールアルキルエステル、スクロースアルキルエステル等が挙げられる。具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート等が挙げられる。これらのノニオン系界面活性剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましい。
界面活性剤の使用量は、微細な粒子を得るため、分散媒に対し、0.5〜3質量%が好ましく、1〜2.5質量%がより好ましい。界面活性剤の使用量が上記の範囲より多い場合は乳化が生じ易くなり、上記の範囲より少ない場合は粒子径の肥大化を招くおそれがある。
界面活性剤の添加方法は、特に限定されないが、単量体に接触させる以前に分散媒中に添加して分散させる方法が好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、全単量体の合計質量に対し、通常100〜10000質量ppm、好ましくは500〜7000質量ppmの範囲である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されないが、単量体に接触させる以前に分散媒中に添加して分散させる方法が好ましい。
前記添加物の使用量は、全単量体の合計質量に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。
重合時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
なお、重合に際しては、重合熱が発生するため、通常、重合系を冷却することにより、重合温度が上記範囲内に保持されるように調節される。
酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、りん酸、酢酸等が挙げられる。
塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
酸または塩基の量は、構成単位(u2)に対応する単量体(N−ビニルホルムアミド等)に対し、0.05〜10モル当量が好ましく、0.1〜5モル当量がより好ましい。
加水分解温度は、通常30〜120℃、好ましくは50〜100℃である。50℃以上とすることにより、比較的短時間で所望の加水分解率が得られる。100℃以下とすることにより、熱による分子量低下等の副反応を抑制できる。
加水分解時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜7時間である。
水不溶性貴金属捕集剤(X)は、好適には、金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)と、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属(B)とが溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収するために用いられる。
貴金属を捕集する際の水不溶性貴金属捕集剤(X)の使用形態は特に限定されず、たとえば粒状、ゲル状、繊維状、粉状等が挙げられる。
少量であれば5℃において水100gに対する溶解量が0.05g以上の水溶性貴金属捕集成分が含まれていても問題はないが、前記貴金属(A)の回収量の点で、水溶性貴金属捕集成分を除去することが好ましい。水溶性貴金属捕集成分の除去方法としては、水溶性貴金属捕集成分が全て溶解する量の水で水不溶性貴金属捕集剤(X)を洗浄する等の既知の除去方法が挙げられる。
本発明の水不溶性貴金属捕集剤(X)によれば、貴金属が溶存している水溶液中から貴金属を効率良く選択的に回収できる。例えば、金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)と、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属(B)とが溶存している水溶液から、前記貴金属(A)を効率良く選択的に回収できる。すなわち、水不溶性貴金属捕集剤(X)は、水に溶存している貴金属(A)および金属(B)のうち、貴金属(A)を効率良く捕集することができ、例えば、水不溶性貴金属捕集剤(X)の質量の2倍程度の貴金属(A)を捕集できる。その一方で、金属(B)はほとんど捕集しない。
また、水不溶性貴金属捕集剤(X)は水に不溶性であるため、簡単な操作で水溶液から分離できる。その際、水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集されず水溶液中に溶存している金属(B)は、回収されずに水溶液中に残る。
そのため、前記水溶液と水不溶性貴金属捕集剤(X)とを接触させ、前記水溶液から水不溶性貴金属捕集剤(X)を分離する簡単な操作で、貴金属(A)を効率良く選択的に捕集できる。
本発明の貴金属の回収方法は、金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)が溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収する方法である。
前記水溶液には、さらに、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属(B)が溶存していることが好ましい。すなわち、本発明の貴金属の回収方法は、金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)と、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属(B)とが溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収する方法であることが好ましい。
(i)前記水溶液と、前記水不溶性金属捕集剤(X)とを接触させて、前記貴金属(A)を前記水不溶性金属捕集剤(X)に捕集させる工程。
(ii)前記工程(i)の後、前記水溶液から前記水不溶性金属捕集剤(X)を分離する工程。
(iii)前記工程(ii)で前記水溶液から分離した水不溶性貴金属捕集剤(X)と、pHが0.1〜6.5の酸水溶液とを接触させる工程。
工程(i)で水不溶性貴金属捕集剤(X)と接触させる前の水溶液に溶存している貴金属(A)は、一種でもよく二種以上でもよい。
前記水溶液中の貴金属(A)は、通常、貴金属(A)が安定に溶存できる点から、他の原子または原子団と結合した化合物の形態で存在している。化合物の形態としては、たとえばクロリド錯体、シアノ錯体、亜硫酸錯体等が挙げられる。
水不溶性貴金属捕集剤(X)と接触させる前の水溶液中の貴金属(A)の濃度は特に限定されないが、0.1〜100質量ppmであることが好ましく、0.5〜50質量ppmがより好ましい。貴金属(A)の濃度が前記範囲の下限値以上であれば、貴金属(A)の回収率がより優れ貴金属(A)の回収量がより優れる。
前記水溶液中の金属(B)は、単体の形態で存在していてもよく、化合物の形態で存在していてもよい。
前記水溶液中の金属(B)の濃度は特に限定されないが、0.1質量ppm以上であることが好ましく、0.5〜10000質量ppmがより好ましい。金属(B)の濃度が2ppm以上であれば、本発明の回収方法を適用することの有用性が高い。
金属(B)として複数の金属を含む場合、複数の金属それぞれの含有量が2質量ppm以上であることが好ましい。
前記水溶液には、貴金属(A)および金属(B)以外の他の成分が溶解又は分散していてもよい。
たとえば前記水溶液は、貴金属(A)のコロイド粒子をさらに含んでもよい。本発明では、水溶液中に溶存している貴金属(A)だけでなく、貴金属(A)のコロイド粒子も捕集することができる。
前記水溶液に、貴金属(A)および金属(B)以外の他の金属が含まれてもよい。
前記水溶液としては、例えば、廃メッキ液、メッキ後の基板を洗浄した水、工場(たとえば触媒工場、メッキ試薬製造工場、メッキ工場等)排水、汚染土壌から回収した金属溶液、廃プリント配線基板などの廃棄物から酸などで貴金属を溶出させた液等が挙げられる。
工程(i)では、貴金属(A)が溶存している水溶液と水不溶性貴金属捕集剤(X)とを接触させる。これにより、貴金属(A)が水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集される。
前記水溶液と水不溶性貴金属捕集剤(X)とを接触させる方法としては、特に限定されない。たとえば、
a)前記水溶液に水不溶性貴金属捕集剤(X)を投入する方法、
b)水不溶性貴金属捕集剤(X)が、内部で流動可能に収容された容器に前記水溶液を通液する方法、
c)水不溶性貴金属捕集剤(X)が充填された容器(カラム、充填塔等)に前記水溶液を通液する方法、
等が挙げられる。
b)の方法、c)の方法では、工程(i)と後述する工程(ii)を連続的に行うことができる(例えば後述する(4)の方法、(5)の方法)。
b)またはc)の方法の場合、水溶液の通液条件は、当該領域または容器と同じ容量の水溶液を通液するのに要する時間を1分以上とすることが好ましく、10分以上とすることがより好ましい。
金属(B)は、水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集されにくい。また、pH0.1〜6.5の条件下では、金属(B)の水に対する溶解性が高く、水溶液中の金属(B)の大部分が溶存している。そのため、次の工程(ii)で水溶液から水不溶性貴金属捕集剤(X)を分離する際、水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集された貴金属(A)が水不溶性貴金属捕集剤(X)とともに水溶液中から回収される一方、水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集されずに溶存している金属(B)は水溶液中に残る。そのため、回収される金属に占める貴金属(A)の割合をより高くすることができる。
pHが6.5超であると、金属(B)の水に対する溶解度が低く、水溶液中で析出することが有る。そのため、次の工程(ii)で水溶液から水不溶性貴金属捕集剤(X)を分離する際、金属(B)が水不溶性貴金属捕集剤(X)に付着した状態で回収されるおそれがある。
(α1)前記水不溶性重合体と接触させる前に、前記水溶液のpHを、前記水不溶性重合体と接触させた後のpHが0.1〜6.5となるように調整する方法。
(α2)前記水溶液と前記水不溶性重合体と接触させた後、それらが接触した状態で、前記水溶液のpHを0.1〜6.5に調整する方法。
前記方法(α2)において、水溶液と水不溶性重合体(X)とを接触させている間のpHは、一定でもよく、0.1〜6.5の範囲内で変動してもよい。
前記pHは、前記水溶液と水不溶性貴金属捕集剤(X)とが接触している間の温度における値である。たとえば20℃で接触させる場合は20℃におけるpHであり、30℃で接触させる場合は30℃におけるpHである。
工程(ii)では、工程(i)で水不溶性貴金属捕集剤(X)と接触させた水溶液から水不溶性貴金属捕集剤(X)を分離する。これにより、水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集された貴金属(A)が、水不溶性貴金属捕集剤(X)とともに回収される。
水不溶性貴金属捕集剤(X)の分離は、公知の方法により実施できる。例えば、(1)フィルターやろ布等を使用して、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離を行い、ろ残を回収するろ過法;(2)精密ろ過膜または限外ろ過膜を使用し、前記水溶液から水と溶解物を分離し、水不溶性貴金属捕集剤(X)のスラリー濃度を高めて回収する膜分離法(MBR法と同様の技術);(3)自然沈殿、遠心沈殿、凝集剤等を使用する沈殿法;(4)成形した水不溶性貴金属捕集剤(X)を容器に充填することにより固定し、該容器に前記水溶液を流通させる方法;(5)成形した水不溶性貴金属捕集剤(X)を容器に、該容器の内部で流動可能に収容し、該容器に前記水溶液を供給し、該水溶液中で前記水溶性貴金属捕集剤(X)を流動させ、その後、前記水不溶性貴金属捕集剤(X)は容器中に留め、前記水溶液のみを容器から流出させる方法;等を使用できる。
膜分離法においては、不溶性貴金属捕集剤(X)の濃度を高めたスラリーをろ過法、沈殿法などで処理してもよい。
前記(4)の方法、(5)の方法はそれぞれ、後述する第一の態様の貴金属回収設備、第二の態様の貴金属回収設備により実施できる。
回収された水不溶性貴金属捕集剤(X)は、圧搾機、遠心機などを使用してさらに脱水してもよい。
工程(iii)では、工程(ii)で前記水溶液から分離した水不溶性貴金属捕集剤(X)と、pHが0.1〜6.5の酸水溶液とを接触させる。これにより、工程(ii)で分離した水不溶性貴金属捕集剤(X)に、前記水溶液中に析出していた金属(B)が付着していても、金属(B)が酸水溶液に溶解して除去され、回収される金属に占める貴金属(A)の割合をより高くすることができる。
また、工程(iii)を行う場合、工程(i)をpH6.5超の条件下で行っても、回収される金属に占める貴金属(A)の割合をより高くすることができる。
回収対象の貴金属(A)が溶存した水溶液のpHを0.1〜6.5とするよりも、工程(iii)を行う方が、酸性の水溶液の取り扱い量を少なくできる点で、工程(i)をpH6.5超の条件下で行い、工程(iii)を行うことが好ましい。
前記pHは、5以下、つまり0.1以上5以下であることがより好ましい。また、水酸化鉄など、溶解度の低い金属を除く目的では、pH4以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。
前記pHは、水不溶性貴金属捕集剤(X)と酸水溶液とが接触している間の温度における値である。
工程(ii)又は(iii)の後、回収された水不溶性貴金属捕集剤(X)に結合した貴金属(A)を回収する工程を行ってもよい。水不溶性貴金属捕集剤(X)からの貴金属(A)の回収は、たとえば、水不溶性貴金属捕集剤(X)を焼却することにより実施できる。
本発明の貴金属の回収方法にあっては、水不溶性貴金属捕集剤(X)を用いることで、貴金属(A)と金属(B)とが溶存している水溶液から貴金属(A)を効率良く選択的に回収できる。すなわち、水不溶性貴金属捕多段流動集剤(X)は、水に溶存している貴金属(A)および金属(B)のうち、貴金属(A)を効率良く捕集することができ、たとえば、水不溶性貴金属捕集剤(X)の質量の2倍程度の貴金属(A)を捕集できる。その一方で、金属(B)はほとんど捕集しない。
また、水不溶性貴金属捕集剤(X)は水に不溶性であるため、簡単な操作で水溶液から分離できる。その際、水不溶性貴金属捕集剤(X)に捕集されず水溶液中に溶存している金属(B)は、回収されずに水溶液中に残る。
そのため、前記水溶液と水不溶性貴金属捕集剤(X)とを接触させ、前記水溶液から水不溶性貴金属捕集剤(X)を分離する簡単な操作で、貴金属(A)を効率良く選択的に捕集できる。
本発明の貴金属回収設備の第一の態様は、前記水不溶性金属捕集剤(X)が充填された容器と、前記貴金属(A)が溶存している水溶液を前記容器に送液する装置とからなる。
第一の態様の貴金属回収設備において、水不溶性金属捕集剤(X)は、該容器に前記水溶液を送液し、容器内を流通させた際に流動しないように、容器に固定される。
容器としては、例えばカラム、充填塔、沈澱槽等が挙げられる。
前記水溶液を容器に送液する装置としては、例えば前記容器に接続された配管と、前記配管に取り付けられた送液ポンプとを備える装置が挙げられる。
本例の貴金属回収設備10は、被処理水(貴金属(A)が溶存している水溶液)の貯槽11と、充填塔13(容器)と、第一の流路15と、第一の流路15に設けられた送液ポンプ17と、第二の流路19と、を備える。
充填塔13には、水不溶性金属捕集剤(X)が充填されている。
第一の流路15の上流端は貯槽11に接続され、下流端は充填塔13の下部に接続されている。送液ポンプ17を動作させることにより、貯槽11内の被処理水を、第一の流路15を介して充填塔13に送液できるようになっている。つまりこの例では、第一の流路15および送液ポンプ17が、被処理水を容器に送液する装置として機能する。
第二の流路19の上流端は充填塔13の上部に接続されており、充填塔13を通過した被処理水(処理水)が充填塔13から流出するようになっている。
第二の態様の貴金属回収設備において、水不溶性金属捕集剤(X)は、容器に固定されておらず、該容器に前記水溶液を送液し、容器内を流通させた際に流動する。
容器としては、例えば流動槽、多段流動槽等が挙げられる。
前記水溶液を容器に送液する装置としては、例えば前記容器に接続された配管と、前記配管に取り付けられた送液ポンプとを備える装置が挙げられる。
本例の貴金属回収設備20は、被処理水(貴金属(A)が溶存している水溶液)の貯槽21と、流動槽23(容器)と、第一の流路25と、第一の流路25に設けられた送液ポンプ27と、第二の流路29と、を備える。
流動槽23は、円筒状の胴部と、胴部の上方に配置された上部と、胴部の下方に配置された下部とを備え、胴部には、水不溶性金属捕集剤(X)が流動可能に収容されている。胴部と上部との境界部分、および胴部と下部との境界部分にはそれぞれ、網23a、23bが設けられている。この網23a、23bによって、胴部内の水不溶性金属捕集剤(X)が流出しないようになっている。
第一の流路25の上流端は貯槽21に接続され、下流端は流動槽23の下部に接続されている。送液ポンプ27を動作させることにより、貯槽21内の被処理水を、第一の流路25を介して流動槽23に送液できるようになっている。つまりこの例では、第一の流路25および送液ポンプ27が、被処理水を容器に送液する装置として機能する。
第二の流路29の上流端は流動槽23の上部に接続されており、流動槽23を通過した被処理水(処理水)が流動槽23から流出するようになっている。
特に記載のない場合、「%」、「ppm」及び「ppb」はそれぞれ「質量%」、「質量ppm」及び「質量ppb」である。
金属濃度は、偏光ゼーマン原子吸光光度計 ZA3700(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を使用して測定した。
攪拌機、滴下ロートおよびジャケットを備えた反応容器にシクロヘキサン480mL、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB14)5.6g、塩化アンモニウム5.5g、水39g、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4gを加え、窒素を混合しながら、55℃加温撹拌下N−ビニルホルムアミド116g、次亜リン酸ナトリウム0.02g、50%ポリエチレングリコール2000水溶液7.6g、ジアリルアミン2.2g(N−ビニルホルムアミドに対して2質量%)、水26gを滴下ロートに入れ3時間かけて滴下し、その後57℃で2時間保持して粒状の架橋N−ビニルホルムアミド重合体を得た。
続いて、攪拌機およびジャケットを備えた反応容器に架橋N−ビニルホルムアミド重合体純分12g、48%水酸化ナトリウム水溶液14.1g、水123g、亜ジチオン酸ナトリウム0.48g、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.12gを加え、50℃で30分間、その後80℃で3時間撹拌した。反応終了後、ろ過、水洗浄して粒状の架橋ポリビニルアミンを得た。膨潤時の粒径はおよそ1〜2mmであった。該架橋ポリビニルアミンを純分で約5mg取り、100gの水に懸濁させたところ、溶解は見られなかった。
13C 核磁気共鳴(NMR)(270MHz、D2O)測定を実施したところ、得られた架橋ポリビニルアミンは、全構成単位(100モル%)に対し、アミノ基が75.7モル%、ホルミル基が9.9モル%、アミジン基が7.2モル%であった。13C NMRスペクトルを図3に示す。
攪拌機、滴下ロートおよびジャケットを備えた反応容器にシクロヘキサン480mL、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB14)5.6g、塩化アンモニウム5.5g、水39g、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4gを加え、窒素を混合しながら、55℃加温撹拌下N−ビニルホルムアミド112g、次亜リン酸ナトリウム0.02g、50%ポリエチレングリコール2000水溶液7.6g、グリセロールα,α’−ジアリルエーテル5.5g(N−ビニルホルムアミドに対して5質量%)、水26gを滴下ロートに入れ3時間かけて滴下し、その後57℃で2時間保持して粒状の架橋N−ビニルホルムアミド重合体を得た。
その後、製造例1と同様の操作を行い粒状の架橋ポリビニルアミンを得た。膨潤時の粒径はおよそ0.5〜2.5mmであった。該架橋ポリビニルアミンを純分で約5mg取り、100gの水に懸濁させたところ、溶解は見られなかった。
13C NMR(270MHz、D2O)測定を実施したところ、得られた架橋ポリビニルアミンは、全構成単位(100モル%)に対し、アミノ基が76.4モル%、ホルミル基が9.3モル%、アミジン基が7.1モル%であった。
ディスクアトマイザー式スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製、M型ディスクアトマイザー)を用い、ディスク回転数30000rpm、乾燥装置入り口温度140℃にて、下記の条件でディスク噴霧乾燥処理して、粉体粒子を作製した。
ポリアリルアミン水溶液(濃度40%、ニットーボーメディカル株式会社、製品名:PAA−HCL−10L)に48%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH10にした溶液を15g/minで送液し、エピクロロヒドリン(東京化成工業株式会社)を0.6g/minで送液し、アトマイザの手前で混合させて噴霧した。噴霧乾燥と同時に架橋反応が進行した。
得られた粉体粒子を、洗浄後の水が中性になるまで水で洗浄して、架橋ポリアリルアミンを得た。該架橋ポリアリルアミンを純分で約5mg取り、100gの水に懸濁させたところ、溶解は見られなかった。
1000ppm塩化金(III)酸水溶液を水で希釈し、続いて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH1.6、4.3、6.0に調整し、10ppm金水溶液を調製した。反応容器に10ppm金水溶液40g、貴金属捕集剤として製造例1の架橋ポリビニルアミンを濃度10ppmになるように純分0.4mg加え、室温で6時間撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルターでろ過し、ろ液中の金属濃度(ppm)を分析した。その測定値から、下記式により吸着率(%)を算出した。結果を図4に示す。図4中、PVAMは架橋ポリビニルアミンを示し、以下においても同様である。
吸着率(%)=(貴金属捕集剤添加前の水溶液中の金属濃度−ろ液中の金属濃度)/貴金属捕集剤添加前の水溶液中の金属濃度×100
pH4.0の10ppm金水溶液に架橋ポリビニルアミンを濃度100または200ppmになるように加え、室温で1時間撹拌した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を図5に示す。
pH4.2の1ppm金水溶液に架橋ポリビニルアミンを濃度10ppmになるように加え、室温で3時間撹拌した以外は実施例1と同様の操作を行った。吸着率は66%であった。
金水溶液に代えて塩化パラジウム(II)水溶液を用いてpH2.2、3.1、3.6の10ppmパラジウム水溶液とし、室温で5時間撹拌した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を図6に示す。
製造例1の架橋ポリビニルアミンに代えて製造例3の架橋ポリアリルアミンを濃度10ppmになるように純分0.4mg用い、pH4.0の10ppm金水溶液とし、室温で1時間撹拌した以外は実施例1と同様の操作を行った。ろ液中の金濃度は0.22ppmであり、吸着率は98%であった。
pH4.4の1ppm金水溶液に架橋ポリアリルアミンを濃度10ppmになるように加えた以外は実施例5と同様の操作を行った。ろ液中の金濃度は0.03ppmであり、吸着率は97%であった。
1000ppm塩化金(III)酸水溶液と1000ppm硝酸ニッケル(II)水溶液とを混合し、その混合液を水で希釈し、続いて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.1に調整し、10ppm金・10ppmニッケル水溶液を調製した。反応容器に10ppm金・10ppmニッケル水溶液40g、貴金属捕集剤として製造例1の架橋ポリビニルアミンを濃度10ppmになるように純分0.4mg加え、室温で3時間撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルターでろ過し、ろ液中の金属濃度を分析した。結果を図7に示す。図7に示すように、架橋ポリビニルアミンは金を79%吸着する一方、ニッケルは8%しか吸着せず、金選択性を示した。
架橋ポリビニルアミンの代わりに、イオン交換樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンWA10」)を5倍量(50ppm)使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。結果を併せて図7に示す。図7に示すように、イオン交換樹脂は金を吸着したがニッケルも吸着しており、実施例7と比較して金選択性が低かった。また、架橋ポリビニルアミンの5倍量を使用したにもかかわらず、金吸着量が実施例7よりも少なかった。
架橋ポリビニルアミンの代わりに、活性炭(和光純薬工業社製、顆粒状)を2倍量(20ppm)使用した以外は、実施例7と同様の操作を行った。結果を併せて図7に示す。図7に示すように、活性炭は金を吸着したがニッケルも吸着しており、実施例7と比較して金選択性が低かった。また、架橋ポリビニルアミンの2倍量を使用したにもかかわらず、金吸着量が実施例7よりも少なかった。
ニッケル水溶液に代えて硝酸銅(II)水溶液を用いてpH4.0に調整し、10ppm金・10ppm銅水溶液とした以外は実施例7と同様の操作を行った。結果を図8に示す。図8に示すように、架橋ポリビニルアミンは金選択性を示した。
架橋ポリビニルアミンの代わりに、イオン交換樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンWA10」)を5倍量(50ppm)または活性炭(和光純薬工業社製、顆粒状)を2倍量(20ppm)使用した以外は、実施例8と同様の操作を行った。結果を併せて図8に示す。図8に示すように、イオン交換樹脂と活性炭は実施例8と比較して金選択性が低かった。また、架橋ポリビニルアミンの5倍量または2倍量を使用したにもかかわらず、金吸着量が実施例8よりも少なかった。
ニッケル水溶液に代えて硝酸亜鉛(II)水溶液を用いてpH4.0に調整し、10ppm金・10ppm亜鉛水溶液とした以外は実施例7と同様の操作を行った。結果を図9に示す。図9に示すように、架橋ポリビニルアミンは金選択性を示した。
架橋ポリビニルアミンの代わりに、イオン交換樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンWA10」)を5倍量(50ppm)または活性炭(和光純薬工業社製、顆粒状)を2倍量(20ppm)使用した以外は、実施例9と同様の操作を行った。結果を併せて図9に示す。図9に示すように、イオン交換樹脂と活性炭は実施例9と比較して金選択性が低かった。また、架橋ポリビニルアミンの5倍量または2倍量を使用したにもかかわらず、金吸着量が実施例9よりも少なかった。
貴金属捕集剤として製造例2の架橋ポリビニルアミン純分0.23gを内径17.4mmのカラム内に充填した。このカラムを充填塔13として用いて、図1に示す構成の貴金属回収設備を作製した。
1000ppm塩化金(III)酸水溶液を水で希釈し、続いて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0に調整し、10ppm金水溶液を調製した。これを前記カラムの下部から5.3mL/minで通水した。結果を図10に示す。図10は、流出Au濃度(カラム出口から流出した水溶液中の金濃度)(ppb)を縦軸に、通水時間(通水開始からの経過時間)(h)を横軸にとったグラフである。図10に示すように、架橋ポリビニルアミンは金を素早く吸着することがわかった。また、通水時間176時間に達した時点でも飽和状態に達しておらず、架橋ポリビニルアミン1g当たり少なくとも2.5g以上の金を吸着できることがわかった。
貴金属捕集剤として製造例2の架橋ポリビニルアミン純分27gを内径20cm、高さ20cm、上下を40メッシュのステンレス製の網で区切られた円筒形流動槽に入れた。この円筒形流動槽を流動槽23として用いて、図2に示す構成の貴金属回収設備を作製した。
1000ppm塩化金(III)酸水溶液を水で希釈し、0.35ppm金水溶液を調製した。これを前記円筒形流動槽の下部から1L/minで通水し、貴金属捕集剤を流動させた。通水2時間後、流出水を採取し、孔径0.2μmのフィルターでろ過し、ろ液中の金濃度を分析した。金濃度は0.1ppmであった。
11,21 貯槽
13 充填塔
15,25 第一の流路
17,27 送液ポンプ
19,29 第二の流路
23 流動槽
Claims (18)
- 前記水不溶性重合体が架橋構造を有する、請求項1に記載の水不溶性金属捕集剤。
- 前記水不溶性重合体中のアミノ基の質量が、前記水不溶性重合体の質量に対して0.05倍以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水不溶性金属捕集剤。
- 前記水不溶性重合体中のアミノ基の質量が、前記水不溶性重合体の質量に対して0.2倍以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水不溶性金属捕集剤。
- 金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)が溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収する方法であって、下記工程(i)および(ii)を含む、貴金属の回収方法。
(i)前記水溶液と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水不溶性金属捕集剤とを接触させて、前記貴金属(A)を前記水不溶性金属捕集剤に捕集させる工程;
(ii)前記工程(i)の後、前記水溶液から前記水不溶性金属捕集剤を分離する工程; - 金、銀およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属(A)と、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属(B)とが溶存している水溶液から前記貴金属(A)を選択的に回収する方法であって、下記工程(i)および(ii)を含む、貴金属の回収方法。
(i)前記水溶液と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水不溶性金属捕集剤とを接触させて、前記貴金属(A)を前記水不溶性金属捕集剤に捕集させる工程;
(ii)前記工程(i)の後、前記水溶液から前記水不溶性金属捕集剤を分離する工程; - 前記工程(i)にて、前記水溶液と前記水不溶性金属捕集剤との接触が、pH0.1〜6.5の条件下で行われる、請求項6または7に記載に記載の貴金属の回収方法。
- 前記工程(i)にて、前記水不溶性金属捕集剤と接触させる前に、前記水溶液のpHを、前記水不溶性金属捕集剤と接触させた後のpHが0.1〜6.5となるように調整する、請求項8に記載の貴金属の回収方法。
- 前記工程(i)にて、前記水不溶性金属捕集剤と接触させた後、それらが接触した状態で、前記水溶液のpHを0.1〜6.5に調整する、請求項8に記載の貴金属の回収方法。
- 前記工程(i)における前記pHが5以下である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の貴金属の回収方法。
- 前記工程(i)における前記pHが3.5以上である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の貴金属の回収方法。
- 下記工程(iii)をさらに含む、請求項6〜12のいずれか一項に記載の貴金属の回収方法。
(iii)前記工程(ii)で前記水溶液から分離した水不溶性金属捕集剤と、pHが0.1〜6.5の酸水溶液とを接触させる工程; - 前記工程(iii)における前記pHが5以下である、請求項13に記載の貴金属の回収方法。
- 前記工程(iii)における前記pHが3.5以上である、請求項13または14に記載の貴金属の回収方法。
- 前記水不溶性金属捕集剤と接触させる前の前記水溶液が、前記貴金属(A)のコロイド粒子をさらに含む、請求項6〜15のいずれか一項に記載の貴金属の回収方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の水不溶性金属捕集剤が充填された容器と、前記貴金属(A)が溶存している水溶液を前記容器に送液する装置とからなる貴金属回収設備。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の水不溶性金属捕集剤が内部で流動可能に収容された容器と、前記貴金属(A)が溶存している水溶液を前記容器に送液する装置とからなる貴金属回収設備。
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